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JP4444494B2 - 電子検出器 - Google Patents

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  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Analysing Materials By The Use Of Radiation (AREA)

Description

【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、電子検出器に関し、特に(しかし、これに限定するつもりはないが)、電子顕微鏡に用いる電子検出器に関する。
【0002】
【発明の背景】
観察中の試料に衝突するための、電子プローブと言うように呼ばれる、合焦した電子ビームは公知である。このプローブは、調節可能な寸法の視野にわたって走査を行い、試料から放射されて検知された信号電子は、電子プローブと同期して走査されたCRTモニタに送られ、その結果、両走査フィールドの寸法比によって与えられる倍率で画像がモニタ・スクリーン上に形成される。
電子プローブによって励起されたすべての可能性ある信号から得られる、いわゆるオージェ電子は特に重要である。オージェ電子は、電子プローブからの電子によって内側シェルで最初にイオン化された原子から放出される。次に、空格子点が同じあるいは異なった原子の任意他の外側シェルからの別の電子によって満たされ、エネルギ差が再度電子に伝えられ、この電子がそれへのエネルギ特性をもって原子から去る。したがって、信号電子のエネルギを分析すれば、表面元素組成を知ることができる。精密に合焦された電子プローブによって、高い空間解像度でこれを行うことができる。エネルギ分析は、電子スペクトロメータ、すなわち、或る種の特殊な形態の静電界または磁界あるいはこれらのフィールドの組み合わせによって行われ、電子エネルギによる電子軌跡の空間分散を確保し、その結果、適当な開口でスクリーニングすることによって、狭いエネルギ・ウィンドウのみを濾過することができる。あるいは、すべての放射された電子を並列検出することもできる。
【0003】
シリアル検出を利用する可能性のあるスペクトロメータ形態のうち、いわゆる円筒形ミラー・アナライザ(CMA)が普及しており、よく使われている。このミラー・アナラーザは2つの同軸のシリンダからなり、その外側のシリンダが負のバイアスをかけられているので、内側シリンダ壁にある適当なスリットを通るシリンダ軸線上の特定された入口点から出て行く電子が、第2のスリットおよび最終小開口を通して出口点でシリンダ軸線上に再び後方反射される。その結果、エネルギ・ウィンドウ内に達した電子のみが通過する。
【0004】
走査型オージェ顕微鏡(SAM)による検査を実施するためには、すなわち、高空間解像度で元素表面分析を達成するためには、電子銃がCMAの内側シリンダ内に同軸に設置され、入口点で直角にあるいは傾斜して装置軸線上に設定された試料を照射するのに使用される。電子銃は、非常に精密に合焦させた電子プローブを持ち、被走査フィールド内でプローブを走査する設備を備えた高品質電子銃でなければならない。現在利用可能なこのような高性能電子銃、すなわち、走査カラムは、電界放出単結晶チップ陰極と、1つまたは2つの電子レンズとを備えている。走査カラムは、スペクトロメータ・シリンダに取り囲まれた非常に限定された場所内に装着することが重要なことなので、そのため、その場所に機械的なアクチュエータや、ライトパイプなどの接続具等を全く入れることができなくなる。外部に対するすべての接続部は全て電気的でなければならないので、走査カラムは、その付近に、スペクトロメータ作用を妨げることになる電磁界を発生させることは全く許されない、。
【0005】
オージェ電子は、その固定エネルギ値に従って認識されるために、エネルギ変化を生じさせる更なるスキャッタリング・イベントから受けないときにのみ検出され得る。つまり、これは、試料の表面で、2,3の最上部原子層内で放出されたオージェ電子だけが信号に貢献することができ、このような超薄表面層だけの元素組成を信頼性をもってマッピングすることができる、ということを意味するのである。それにもかかわらず、代表的な電子プローブは一般に試料内へかなり深く侵入することになり、かなりの数の励起電子が、追加のオージェ電子を励起するに充分な、種々のエネルギをもって表面から後方へ反射される。しばしば、試料は深さが異なっており、後方反射した電子は追加のオージェ電子の量と共に局部的に変化し、深さに関する異質性の試料は、それ自身を、表面の基本的マッピングに仮に投影する。この信号の寄与度を抑制するために、別の深さ感応信号が利用可能でなければいけない。オージェ・マッピングに固有の第2の最も重要な問題は、元素マッピングに対する表面形状の影響である。ここで再び、マッピングは表面レリーフを示す別の顕微鏡信号に相関させなければならない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
現在、電子顕微鏡法では、電子プローブにおける電子エネルギを下げることが一般的な傾向である。この理由としては、更に高い二次電子信号の達成(その最大値はほぼ数百eV乃至数keVの間である)、非導電性試料の荷電低下の達成(まとまりつつある放射電子の全産出量のせいによる。そうすると、放射電子の内ほんの僅かの割合しか試料内で消失しない)、そして、小さいレリーフ突起及び隆起のより良好な解像度(電子プローブの相互作用体積が小さく、浸透深さが短いということによる)がある。それにもかかわらず、いくつかの主たる障害のために、数百eVより下では公知のプローブを作動させることができない。障害としては、電子銃陰極からの電子抽出の劣化、そしてその結果として、電子プローブ電流がさらに低下し、電子波長がより長くなり、電子プローブのエネルギの相対変動がもっと高くなり(回折および色収差の増大により大きなスポット・サイズが生じさせる)、電子プローブの形状寸法をゆがめる厳しい交流電磁界の影響の増大する、ということがある。電子プローブの約200〜500eVエネルギで作動するいわゆる低電圧顕微鏡は、現在、非常に魅力的であり、よく売れている。それにもかかわらず、このようなエネルギ範囲の下では、数十単位のeVで、多くの新しい極めて興味のあるコントラストが現れ、表面結晶学的構造、真空レベルより上のエネルギ帯構造、潜在的なバリア形状およびその変化などを視覚化することは良く知られている。
【0007】
数十単位のeV範囲において非常に低いエネルギ顕微鏡法を実現する唯一の公知の方法は、陰極レンズを使用することである。陰極レンズは放出電子顕微鏡(EEM)の重要な構成要素であり、試料それ自体が電子を放出し、必要な加速後に、電子は放出面の拡大画像を形成する投影電子光学システムを通過する。原則として、陰極レンズは、2つの電極からなる静電レンズである。すなわち、陰極、つまり試料表面それ自体と、中央開口部を有する最適に整形された陽極とからなる。試料/陰極の高い負のバイアスによってほとんど生成される、電極間の軸線方向の均一な静電界は、放射された電子を加速するように作用する。陽極開口部に侵入するフィールドの不均一な部分は発散レンズを形成する。そして、この発散レンズが、或る種の付加的な発散レンズ、すなわち、EEM対物レンズと組み合わされる。、このような組み合わせは、収差係数が非常に低いために、非常に低いエネルギにおいてさえも、幅の広いビームの放射電子が像形成バンドルにコリメートされるので、長い間受入れられてきた。
【0008】
ここ30年ほど、試料表面の直ぐ上にある電子プローブの減速のために反対方向にも陰極レンズを利用する試みが何度かなされてきたが、にもかかわらず、これらの試みのどれもたいした成功を成し遂げなかったし、非常な低エネルギの走査画像を得ることは全くできなかった。重要な例外としては、35年前に発明されたいわゆる低エネルギ電子顕微鏡(LEEM)があり、80年代に実現に成功している[E.Bauer, Rep. Progr. Phys, 57(1994), 895]。しかし、これは走査装置ではなく、コヒーレント扁平電子波の衝撃によって励起される試料照射を行うEEMである。陰極レンズは、減速されつつある電子波によって最初に、次いで、反対方向の放射電子によって、計2回通過される。LEEMの実施で、表面研究に対する、非常に低いエネルギ範囲の上記した魅力的な特徴が明らかになった。しかし、世界中でもほんの2,3の研究所でしか利用できないLEEM器具は、サイズが大きくて、LEEM信号の検出のために必須の静電レンズと磁気レンズとの両方を包含している。このことは、もっと非常に単純な装置によって類似した結果をもたらすことのできるLEEM(SLEEM)のスキャニング・バージョンには有利である。
【0009】
SLEEM設計・操作の領域では、最近、重要な進歩が陰極レンズの改良理論[M.Lenc, I.Mulerova, Ultramicroscory 45 (1992), 159]に基づいてなされた。そして、数十keVからそれ以下の単位のeVまでの全エネルギ・スケールに沿って首尾一貫した品質を示した、最初の顕微鏡写真シリーズが公開された。その後、SLEEM方法へ標準の市販走査型電子顕微鏡(SEM)を適用させる方法が苦心して仕上げられた[I.Mulerova, L.Frank, Scanning 15 (1993), 193]。簡単に説明すると、このやり方は、試料を絶縁し、バイアスさせ、その上に陽極を導入することによって特徴付けることができるが、主たる問題は、検出システムをその形態に合わせることである。それにもかかわらず、基本装置は、依然としてなお、普通の電磁気レンズおよびコイルを備えるフル装備のSEMシステムである。
【0010】
SLEEM信号(SAMの表面感度と同様な深さ感度を有する試料情報を運ぶ)は、上述したようなゆゆしきSAM問題を解決するのに必要な、相補的な像形成装置に対し理想的に替わり得る物を表わす。一方、全く異質で、多結晶で、類似の試料のSLEEM像は、しばしば、コントラストで満たされており、それについての直接的な解釈は、さらなる情報を、特に、SAMによって仲介されるような表面要素組成に関する情報を利用できない限り、困難であり、不可能ですらある。故に、SAMおよびSLEEMは、必要条件を満たしているSLEEMカラムが、CMAベースのオージェ顕微鏡の走査カラム、すなわち、コンパクトな設計の集積検出システムを備えるミニチュア純静電SLEEMカラム上に設置される必要のある超高真空デバイスにおいて、本来の位置に組み込まれるのに極めて適している。
これらの条件に応じた検出原理は、これまで全く提案されて来なかった。本発明の好ましい実施例はこのような原理を実現する装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の一特徴によれば、主軸線を有する電子検出器であって、試料から放射される電子を加速すると共に、前記電子が通過する開口を有するアクセラレータ・プレートと、前記開口を通過した後に前記電子を、の偏向表面に衝突する前記電子に応答して二次電子が放出されるプロセスにより、偏向させるように構成された偏向電極と、前記試料と前記偏向電極との間に配置されて、前記偏向電極によって偏向された電子を集めるように構成されたコレクタとを包含し、前記偏向電極の前記偏向表面は、前記試料側の方向から測ったとき、前記主軸線に対して鈍角をもって傾斜され、前記試料の表面から放出される電子が、前記主軸線から外方へとそらされながら進んで前記偏向表面に衝突することにより、さらなる二次電子が発生し、その二次電子が次いで前記コレクタに向かって進み、そして、前記電子検出器が前記主軸線の周りに回転対称性を有する、ことを特徴とする。
【0012】
好ましくは、前記偏向電極は、前記試料から放射される前記電子を偏向させる前記偏向表面に電子増倍材料を備えており、この電子増倍材料は使用時に前記偏向させられた電子を増倍する。
好ましくは、前記検出器は主軸線を有し、前記偏向電極は、前記主軸線の半径方向外方へ前記電子を偏向させるように配置してある。
好ましくは、前記偏向電極は開口を形成した偏向板を包含し、この開口は前記アクセラレータ・プレートの開口より小さくなっている。
【0013】
上記の電子検出器は、さらに、照射ビームによって試料を照射してこの試料から前記電子の放射を生じさせる照射手段を包含してもよい。
好ましくは、前記照射手段は、前記アクセラレータ・プレートおよび偏向電極の前記開口を通過する照射光線を発生するように配置してある。
【0014】
上記電子検出器は、前記照射光線を合焦する手段を包含し得る。
好ましくは、前記照射手段は電子銃からなる。
【0015】
好ましくは、前記アクセラレータ・プレートおよび前記試料は陰極レンズを形成している。
【0016】
【本発明の好ましい実施形態】
本発明のより良く理解して貰うために、そして、本発明の実施例が実際にどのように実施するかを示すために、ただ1枚の添付図面を参照して、以下に説明する。添付図面は、走査型低エネルギ電子顕微鏡における、本発明の一実施例による電子検出器の一例を示している。
【0017】
図示の電子検出器は、多レンズ電界放出電子カラムに基づいており、その内の最終レンズが検出器を組み入れるように作られている。陰極レンズが、銃電極8と試料9の間に形成される。電子カラムの一部をなすプローブによって創り出され、レンズ1,2,3によって適切に合焦され、適切なるデフレクタ/スチグマトール電極2によって走査されるようになる電子プローブ11は、陰極レンズ・フィールド内で減速され、その最終的なランディング・エネルギは、試料の負バイアスによって精密に調節され得る。放射された二次電子は、同一フィールド内で再加速され、このフィールドの均一性により、二次電子はその軸線方向速度のみを高めるために、狭い信号ビームにコリメートされる。コリメートされた信号ビームは、そのほとんとが、電極8の開口18内に嵌まり、ここにおいて、銃と、2個のアース(接地)電極7,8によって囲まれた中央アース(接地)電極6からなる最終レンズとに入射する。信号ビームは、特別なミラー電極4に接近し、このミラー電極のフィールドが減速し、さらに電子を軸線から偏向させ、それらを試料へ戻す。電子は、最終レンズ・フィールドにおいて再び再加速され、チャネル・プレート電子増倍5に衝突し、増幅後、信号電子ビームはコレクタ7に衝突し、マルチチャネル検出のための適切な部分に分割され得る。
【0018】
図は、この実施例の重要な特徴である最終レンズ/検出器部分を示している。これはカラムの一部を形成しているプローブ11に取り付けられており、1バージョンでは、電界放出チップ陰極ベースの銃12および1つの静電レンズによって形成され、予合焦式電子プローブを産出する。レンズ/検出器部分は、最終レンズの第1要素としてのアース(接地)電極1と、組になったスチグマトール/偏向板2と、からなる。後者は、光軸のまわりに配置されており(1つのバージョンでは8個ある)、交流及び直流複合電圧によってバイアスをかけられる。これらの複合電圧は、電子プローブを静的に偏向させて整列させるように調節される。これらは、(カラムの軸線方向非点収差を訂正するために)軸線まわりに回転することのできる円筒レンズを形成し、最終的には、被走査フィールドを横切って電子プローブを走査させる。
【0019】
さらに、光軸に沿って、中央負バイアス合焦電極3があり、そのバイアスが焦点距離を支配し、試料9の表面だけに電子プローブを合焦させる。それに続いて、検出器の最も重要な部分として、ミラー電極4がある。これの形状は重要であり、1つのバージョンでは直径が数十ミリの小さい中央ボア14と、水平面に対して角度θ傾斜したコーン24と、周辺の高くなったリム34と、からなる。角度θは、ミラー電極4の機能にとって重要であるが、その値は、使われる電圧およびカラム作動距離に従って、非常に広い範囲にわたって変化し、実質的に0からπ/2の全範囲にわたって変わる。ミラー電極4も調節可能な電位まで負にバイアスされる。
【0020】
ミラー面上方のフィールドは、入射した電子を減速するように作用し、その半径方向成分は、光軸に沿って正確に移動する電子を除いて、電子の大部分を光軸からそらせる。したがって、電子は光軸から充分な距離のところに到達してからミラー面に入射する。これら信号電子のある部分は、中央コーンを「すべり」、周縁リムに、あるいは、どこかの間に衝突する。こうして、ミラー電極は電子によって集中して衝撃を与えられるようになるが、そのエネルギは使用される電圧による。この衝撃の下に、ミラー表面は、ほとんどほんの数eVのエネルギを持つ二次(あるいは、この例では、三次)信号電子10を放出する。1つのバージョンにおいて、二次(三次)電子生成率は、ミラー電極面を高い二次(三次)電子生成率産を有する適切な材料によって被覆することによって向上する。遅い二次(三次)電子10は、ここで再び、チャネル・プレート電子増倍体5(たとえば、プレート垂線に対してやや傾斜しており、内壁面を非常に高い二次電子生成率を持つ材料で被覆した非常に薄い焼結ガラス管からなるプレート)の上面に向かって加速される。
【0021】
その機能のためには、チャネル・プレート電子増倍(CP)は、その表面間に電位差を印加し、入口表面が出口表面に関して負のバイアスをかけられるようにする必要がある。それにもかかわらず、上方入口表面の電位は、ミラー4ほど負にならず、ミラー電極4から放射される遅い電子10が加速され、そして、ミラー4のコーン部分上方の半径方向フィールド成分により、さらに光軸から離れるように偏向されるが、同時に、ミラー4の周縁リムの影響で、電子が光軸からの最適距離を超えることがなく、大部分の電子がCP5に衝突する。
【0022】
コレクタ7を担持している電極6がCP5に続く。この電極6は、最終レンズの第2のアース電極であり、1つのバージョンの薄肉同軸チューブでは、CP電位差によりフィールドから光軸をスクリーニングするような形状となっている。コレクタ7は、絶縁材料で作くられていて、その上にセグメント構造が配置され、偏向された電子の方位角すなわち半径方向距離に従って検知された信号をソートする。コレクタ7,電極6は、共に、アース電位に保持されるが、CP5の出口底面は若干低い負の電位にある。
【0023】
組立体全体は、中央ボアを有するカラム・カップとして機能する電極8で閉じられる。電極8は、再びアースされ、陰極レンズの陽極として機能する。この陰極レンズの陰極は、試料9それ自体で形成され、(これにより、調整に必要なミラー像形成を行うために)少なくともわずかに公称銃電圧を超える負電位の安定した精密調整可能な高電圧供給源に接続されている。
【0024】
1つのバージョンにおいて、組立体全体は銃キャップ内に埋設される。この銃キャップは、CMA13によって受け入れられる中空の円錐形電子ビームの内側形状に合った円錐形状を有する。個々の要素は、適切にはバイアスに関して相互に絶縁されている。絶縁インサートは、1つのバージョンにおいて、機械加工可能なガラス・セラミック材料で作られており、機械的に予め位置決めされ、銃の底端でコネクタ・ピンに電気的に接続された要素を有し、カラム全体が試料の反対側でCMA内側シリンダに固定されたソケットに簡単に挿入され、CMAアナライザの出口電子ビームの横切る形状とは離れる。
【0025】
装置は、試料9になんらバイアスを印加しなくても機能できる。この場合、後方散乱電子(BSE)が、信号電子(すなわち、電極8の中央開口部により限定されるスペース角度にぴたりと合う信号電子)として検知される。銃の内方へこの開口部を通過した後、電子は、上述したように、SLEEMモードにおける再加速された信号電子と同じように作用する。BSE像形成信号は、小さい許容角度により、SLEEM像形成信号よりもかなり低い。
【0026】
上記の方法および装置は、SAMマッピングを生成するCMAスペクトロメータまたは同様の装置内で作動するのに適した走査カラムの要求を完全に満たすものであり、これは、純粋に静電的であり、非常にコンパクトな設計であり、その付近にスプリアス電磁界を発生させず、SLEEMモードにおける信号電子の励起および検出に効果的である。電子プローブは、数キロ電子ボルトからプローブが試料面のすぐ上方で反射されるゼロ衝撃エネルギまでのエネルギで作動するものである。本装置は、それに加えて、非バイアス試料を持つBSEモードにおいても作動できる。これは、非常に低いエネルギ電子顕微鏡装置の可能性を与える。
【0027】
図示実施例は電子顕微鏡と共に使用するものであるが、本発明の別の実施例は他の用途も持ち得る。電子銃以外の手段を利用して試料から電子の放出を刺激するために利用できる。
【0028】
図示実施例では、試料9が装置の光軸に沿って通過する照射光線によって励起されるのが好ましいが、試料9を励起する別の手段も使用し得る。たとえば、表面に90度未満の角度で入射する1つまたはそれ以上の光線によって試料を照射してもよい。
【0029】
図示のような検出器は、1eV放射電子の場合に80%、10eV放射電子の場合に97%、100eV放射電子の場合に20%、1000eV照射電子の場合に2%の効率で電子を検知することがわかっている。低電子エネルギを使用することによって、カラム解像度は、Cs〜150mm、Cc〜50mmを有する一実施例において、2次数の大きさ、たとえば、5000nm〜50nmで先に提案された装置を通じて向上することがわかっている。
【0030】
本発明の実施例による検出器は、UHV用途に適している。すなわち、CMAと組み合わせたときの表面分析用途、特に最終レンズが静電的あるいは磁気との複合で静電的であるときに一般的なSEM用途および放射線感光材料/サンプル用途に適している。他の用途としては、非電性試料、たとえば、フォトレジスト材料の表面の像形成がある。その結果、適当に選定したエネルギで非導電性表面、たとえば、レジストの非電荷像形成のために高解像度を得ることができる。
【0031】
「アース電位」という用語(あるいは「接地」電位又は電圧のような類似の用語)は、便宜上、この明細書では、基準電位を示すのに使用される。当業者には理解できるように、このような基準電位が代表的に0電位である可能性があるが、ゼロであるか、ゼロ以外の基準電位であるかは本質的なことではない。
【0032】
この明細書において、絶対方位に関する用語は、便宜上、通常の使用、あるいは添付図面に示す使用、もしくはこれら両方の使用における通常の用語の方位を示すのに使用される。しかしながら、このような用語は、他の方位でも使用でき、本明細書の文脈では、絶対方位の用語、たとえば、「上」、「底」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」などは、このような別の方位を含むように解釈されるべきである。
【0033】
この明細書においては、動詞「包含する(comprise)」はその通常の辞書上の意味を有し、非排他的な包含を示すのに使用されている。すなわち、1つまたはそれ以上の特徴を含む単語「包含する」(あるいは任意のその派生語)はさらに別の特徴も含む可能性を排除するものではない。
【0034】
ここで、本願に関連して本明細書と同時あるいはそれに先だって提出されたすべての書面、書類および本願の公衆審査のために公開されたすべての書面、書類に注目されたい。これらすべての書面、書類の内容は、ここに、参考資料として、援用する。
【0035】
本明細書(添付の特許請求の範囲、アブストラクト、図面を含む)に開示されたすべての特徴またはそこに開示された任意の方法あるいはプロセスのステップのすべては、そのうちの少なくともいくつかが相互に排他的となる組み合わせを除いて、任意の組み合わせで用いることができるものである。
【0036】
本明細書(添付の特許請求の範囲、アブストラクト、図面を含む)に開示された各特徴は、明白に説明されていない限り、同じ、均等あるいは同様の目的を果たす代替の特徴と代えることができる。したがって、明白に説明していない限り、開示された各特徴は一般的なシリーズの均等または同様の特徴のほんの一例である。
【0037】
本発明は、前述の実施例の細部に限定されるものではない。本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲、アブストラクト、図面を含む)に開示された特徴のうち任意新規な特徴あるいは任意新規な組み合わせ、もしくは、ここに開示された任意の方法またはプロセスのうちのステップのうち任意新規なステップまたは任意新規な組み合わせにまで敷衍するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この図は、走査型低エネルギ電子顕微鏡における、本発明の一実施例による電子検出器の一例を示している。

Claims (12)

  1. 主軸線を有する電子検出器であって、
    試料(9)から放射される電子を加速すると共に、前記電子が通過する開口(18)を有するアクセラレータ・プレート(8)と、
    前記開口を通過した後に前記電子を、の偏向表面(24)に衝突する前記電子に応答して二次電子が放出されるプロセスにより、偏向させるように構成された偏向電極(4)と、
    前記試料(9)と前記偏向電極(4)との間に配置されて、前記偏向電極によって偏向された電子を集めるように構成されたコレクタ(7)とを包含し、
    前記偏向電極(4)の前記偏向表面(24)は、前記試料側の方向から測ったとき、前記主軸線に対して鈍角(θ+(π/2))をもって傾斜され、前記試料(9)の表面から放出される電子が、前記主軸線から外方へとそらされながら進んで前記偏向表面(24)に衝突することにより、さらなる二次電子が発生し、その二次電子が次いで前記コレクタ(7)に向かって進み、そして、前記電子検出器が前記主軸線の周りに回転対称性を有する、ことを特徴とする電子検出器。
  2. 請求項1に記載の電子検出器において、前記偏向電極(4)が、前記試料から放射される前記電子を偏向させる前記偏向表面(24)に電子増倍材料を備えており、この電子増倍材料が使用時に前記偏向させられた電子を増倍することを特徴とする電子検出器。
  3. 請求項1または2に記載の電子検出器において、前記偏向電極(4)が、前記主軸線の半径方向外方へ前記電子を偏向させるように配置してあることを特徴とする電子検出器。
  4. 請求項1、2、または3に記載の電子検出器において、前記偏向電極(4)が開口(14)を形成した偏向板を包含し、この開口が前記アクセラレータ・プレート(8)の開口より小さいことを特徴とする電子検出器。
  5. 請求項4に記載の電子検出器において、さらに、試料(9)を照射ビーム(11)により照射してこの試料(9)から前記電子の放射を生じさせる照射手段(12)を包含することを特徴とする電子検出器。
  6. 請求項5に記載の電子検出器において、前記照射手段(12)が、前記アクセラレータ・プレートおよび偏向電極(8,4)の前記開口(18,14)を通過する照射ビーム(11)を発生するように配置してあることを特徴とする電子検出器。
  7. 請求項5または6に記載の電子検出器において、前記照射ビーム(11)を合焦する手段(1,2,3)を包含することを特徴とする電子検出器。
  8. 請求項5、6、または7に記載の電子検出器において、前記照射手段(12)が電子銃からなることを特徴とする電子検出器。
  9. 請求項8に記載の電子検出器において、前記アクセラレータ・プレート(8)および前記試料(9)が陰極レンズを形成していることを特徴とする電子検出器。
  10. 請求項1〜9のうちいずれか1つに記載の電子検出器において、前記試料(9)に対して調節可能なバイアスを与える手段を有することを特徴とする電子検出器。
  11. 請求項1〜10のうちいずれか1つに記載の電子検出器を備えた走査型電子顕微鏡。
  12. 請求項11に記載の走査型電子顕微鏡において、前記検出器が、顕微鏡の主軸線上に同軸かつ対称的に装着されていることを特徴とする走査型電子顕微鏡。
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