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JP4440337B2 - 熱硬化性樹脂の分解および分解生成物の回収方法 - Google Patents

熱硬化性樹脂の分解および分解生成物の回収方法 Download PDF

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Description

本特許出願は、日本国特許出願第2007−332514号(出願日:2007年12月25日)について優先権を主張するものであり、ここに参照することによって、その全体が本明細書中へ組み込まれるものとする。
本発明は、熱硬化性樹脂を亜臨界水で分解して再利用可能な分解生成物(例えばモノマー類、スチレン−フマル酸共重合体など)を回収する方法に関するものである。
従来、プラスチック廃棄物はそのほとんどが埋立処分あるいは焼却処分されており、資源として有効活用されていなかった。また、埋立処分では、埋立用地の確保が困難であることや埋立後の地盤が不安定化するといった問題点があり、一方、焼却処分では、炉の損傷、有機ガスや悪臭の発生、COの発生といった問題点があった。
そのため、日本国において、平成7年に容器包装廃棄法が制定され、プラスチックの回収再利用が義務付けられるようになった。さらに、各種リサイクル法の施行にともない、プラスチックを含む製品の回収リサイクルの流れは加速する傾向にある。
これらの状況に合わせて、近年、プラスチック廃棄物を再資源化することが試みられており、その一つとして、超臨界水または亜臨界水を反応媒体としてプラスチックを分解して再利用可能な分解生成物を回収する方法が提案されている(特許文献1〜5参照)。
しかしながら、これらの方法ではプラスチックがランダムに分解されるために、一定品質の分解生成物を得ることが困難であった。
この問題点を解決する技術として、多価アルコールと多塩基酸からなるポリエステルを架橋剤で架橋した熱硬化性樹脂を、亜臨界水を用いて熱硬化性樹脂の熱分解温度未満で分解させることで、熱硬化性樹脂の原料として再利用できるモノマーと共に、スチレン−フマル酸共重合体を得る技術が提案されている(特許文献6参照)。
特表昭56−501205号公報 特開昭57−4225号公報 特開平5−31000号公報 特開平6−279762号公報 特開平10−67991号公報 国際公開WO2005/092962号パンフレット
上記特許文献6の方法においては、アルカリを含有する亜臨界水で熱硬化性樹脂を分解することにより、この分解反応により生成したスチレン−フマル酸共重合体は塩として水溶液中に溶解させる。そして、この水溶液に塩酸や硫酸等を加えてスチレン−フマル酸共重合体を析出させ、これを分離回収している。
しかしながら、スチレン−フマル酸共重合体の分離回収の際、フィルタープレス等によって濾過しようとするとフィルターが目詰まりを起こしてしまい濾過が円滑に進まないという問題があった。また遠心分離機等を用いて固液分離を行おうとすると、スチレン−フマル酸共重合体の一部が水中に残存したり、スチレン−フマル酸共重合体が凝集して装置内で閉塞が生じたりする問題があった。さらにいずれの方法でも、固液分離した後のスチレン−フマル酸共重合体が含有している水分を除去するために、長時間の乾燥を要するという課題がある。
そこで、本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、熱硬化性樹脂の分解生成物から、再利用可能なポリエステル由来の酸残基と架橋部を含んでなる化合物(例えばスチレン−フマル酸共重合体)などを容易に分離して効率よく回収することができる方法を提供することを課題としている。
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の[1]〜[3]の発明を含む:
[1] ポリエステル部とその架橋部を含む熱硬化性樹脂を分解して再利用可能な分解生成物を回収する方法であって、
(A)該熱硬化性樹脂を、アルカリを共存させた亜臨界水で分解する工程と、
(B)得られた分解生成物を固液分離して、ポリエステル由来の酸残基と架橋部を含んでなる化合物のアルカリ塩を含む水溶液を回収する工程と、
(C)回収した水溶液に、酸を供給して前記化合物を析出させ、さらに前記化合物を溶解し且つ難水溶性の溶媒を供給して析出した前記化合物を前記溶媒に溶解して回収する工程と
を含む、方法。
[2] 前記化合物を溶解し且つ難水溶性の溶媒は、アルコールを含んでなる、上記[1]に記載の方法。
[3] 工程(C)において、前記化合物を溶解し且つ難水溶性の溶媒と共に、前記化合物を溶解し且つ水溶性の補助溶媒を供給する、上記[1]または[2]に記載の方法。
本発明によれば、ポリエステル由来の酸残基と架橋部を含んでなる化合物(例えばスチレン−フマル酸共重合体)を溶解し且つ難水溶性の溶媒を用いることにより、水溶液中に析出した前記化合物を前記溶媒に溶解させて前記化合物を容易に分離することができる。そして、前記溶媒と水とを分離することで、溶媒に溶解した前記化合物を効率よく回収することができる。
上記方法において、前記化合物を溶解し且つ難水溶性の溶媒としてアルコールを使用することにより、前記化合物を効率よく改質(エステル化)して熱硬化性樹脂の低収縮剤を製造する改質プロセスを効果的なものとすることができる。
また、上記方法において、前記化合物を溶解し且つ難水溶性の溶媒と共に、前記化合物を溶解し且つ水溶性の補助溶媒を供給することにより、前記溶媒への前記化合物の溶解を促進させることができる。したがって、前記化合物をより一層効率よく回収することができる。
本発明の方法の一実施形態の操作を工程順に示したフローチャートである。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において分解対象となる熱硬化性樹脂は、ポリエステルを架橋して得られたものであり、ポリエステル部とその架橋部を含むものである。
ポリエステル部は、多価アルコールと多塩基酸とを重縮合させることにより多価アルコール残基と多塩基酸残基とがエステル結合を介して互いに連結したポリエステルに由来する。ポリエステル部は、不飽和多塩基酸に由来する二重結合を含んでいてもよい。
架橋部は、ポリエステル部を架橋する部分である。架橋部は、例えば架橋剤に由来する部分であるが、特に限定されない。架橋部は、1個の架橋剤に由来する部分であってもよく、複数の架橋剤が重合したオリゴマーまたはポリマーに由来する部分であってもよい。また、架橋部とポリエステル部の結合位置および結合様式も特に限定されない。
したがって、「ポリエステル部とその架橋部を含む熱硬化性樹脂」とは、多価アルコールと多塩基酸から得られるポリエステルが架橋部を介して架橋された網状の熱硬化性樹脂(網状ポリエステル樹脂)である。このような熱硬化性樹脂としては、本発明を適用したときに上記した効果を得ることができるものであれば、いかなる態様の樹脂であってもよい。すなわち、樹脂の種類と構造、架橋部(架橋剤)の種類、量および架橋度などに制限はない。
本発明が適用される熱硬化性樹脂は、主として加熱等により硬化(架橋)された樹脂であるが、本発明を適用したときに上記した効果を得ることができるものであれば、加熱等により硬化(架橋)が進行する未硬化の樹脂または部分的に硬化された樹脂であってもよい。
本発明が好適に適用される熱硬化性樹脂としては、多価アルコールと不飽和多塩基酸からなる不飽和ポリエステルが架橋剤により架橋された網状ポリエステル樹脂が挙げられる。
ポリエステル部の原料である多価アルコールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類などが挙げられる。これらは1種単独で、あるいは2種以上を併用して用いることができる。
ポリエステル部の原料である多塩基酸の具体例としては、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族不飽和二塩基酸などが挙げられる。これらは1種単独で、あるいは2種以上を併用して用いることができる。また、無水フタル酸などの飽和多塩基酸を不飽和多塩基酸と併用してもよい。
多価アルコールと多塩基酸の共重合体であるポリエステルを架橋する架橋剤には、スチレンなどが含まれるが、その他、メタクリル酸メチル等の重合性ビニルモノマーなど、他の架橋剤を併用してもよい。
また、本発明において分解対象となる熱硬化性樹脂には、炭酸カルシウムや水酸化アルミニウム等の無機充填材や、ロービングを切断したチョップドストランド等のガラス繊維等の他の成分が含有されていてもよい。
本発明では、以下の工程(A)〜(C)により、上記の熱硬化性樹脂を分解し、再利用可能な分解生成物であるポリエステル由来の酸残基と架橋部を含んでなる化合物(以下、「化合物(I)」と称する。)を回収する。例えば、熱硬化性樹脂がフマル酸やマレイン酸を多塩基酸として使用し、且つ、スチレンを架橋剤として使用して得られたものである場合、化合物(I)としてスチレン−フマル酸共重合体が回収される。
以下、図1のフローチャートを参照しながら本発明の方法を工程順に説明する。
最初に、熱硬化性樹脂を、アルカリを共存させた亜臨界水中で分解する(工程(A))。ここで、アルカリとしては特に制限はないが、第1A族(アルカリ金属)や塩基性リン酸塩等が好ましく、なかでも分解性能やコスト等を考慮して、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムが望ましい。また、アルカリ水中アルカリ濃度は特に限定されるものではないが、0.5〜2規定(N)の範囲が好ましい。
この工程では、アルカリを共存させた水を熱硬化性樹脂に加え、温度と圧力を上昇させて水を亜臨界状態にして熱硬化性樹脂を分解する。熱硬化性樹脂に対する水の添加量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して好ましくは200〜500質量部の範囲である。
亜臨界水によるプラスチックの分解処理は、一般的に熱分解反応および加水分解反応によって起こるものであり、多価アルコールと多塩基酸を含む原料により製造された熱硬化性のプラスチックにおいても同様であるが、加水分解反応が支配的になる。亜臨界水の温度や圧力を適切な条件とすることにより、選択的に加水分解反応が起こり、多価アルコールと多塩基酸のモノマーあるいはこれらが複数個結合したオリゴマーに分解される。
したがって、本発明においても、上記の熱硬化性樹脂を亜臨界水に接触させて処理することにより、多価アルコールと多塩基酸および化合物(I)に分解することができる。分解して得られたモノマーやオリゴマーは、回収してプラスチックの製造原料として再利用することができる。
本発明において「亜臨界水」とは、水の温度が水の臨界温度(374.4℃)以下であって、且つ、140℃以上であり、その時の圧力が0.36MPa(140℃の飽和蒸気圧)以上の範囲にある状態の水をいう。この場合、イオン積が常温常圧の水の約100〜1000倍になる。また、亜臨界水の誘電率は有機溶媒並みに下がることから、亜臨界水の熱硬化性樹脂表面に対する濡れ性が向上する。これらの効果によって加水分解が促進され、熱硬化性樹脂をモノマー化および/またはオリゴマー化することができる。
本発明において、分解反応時における亜臨界水の温度は、分解の対象である熱硬化性樹脂の熱分解温度未満であり、好ましくは180〜300℃の範囲である。分解反応時の温度が180℃未満であると、分解処理に多大な時間を要するため処理コストが高くなる場合があり、さらに化合物(I)の収率が低くなる傾向がある。分解反応時の温度が300℃を超えると、化合物(I)の熱分解が著しくなり、化合物(I)が低分子化されて多種多様な誘導体が生成され、化合物(I)として回収することが困難になる傾向がある。
亜臨界水による処理時間は、反応温度などの条件によって異なるが、通常は1〜4時間である。分解反応時における圧力は、反応温度などの条件によって異なるが、好ましくは2〜15MPaの範囲である。
以上のように、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリを共存させた亜臨界水中で熱硬化性樹脂を分解することで、化合物(I)の塩と、熱硬化性樹脂の原料モノマーであるグリコール類等の多価アルコールと、同じく熱硬化性樹脂の原料モノマーであるマレイン酸やフマル酸等の有機酸の塩を含有する水溶液を得ることができる。化合物(I)の塩は、ポリエステル由来の酸残基の骨格および架橋部の骨格(化合物(I)がスチレン−フマル酸共重合体である場合、スチレン骨格およびフマル酸骨格)を有し、カルボキシル基にカリウムやナトリウム等のアルカリ金属が結合した状態(COOやCOONa)のカリウム塩やナトリウム塩等のアルカリ金属塩であり、水溶性を示すものである。マレイン酸やフマル酸等の有機酸の塩もカリウム塩やナトリウム塩等のアルカリ金属塩である。一方、熱硬化性樹脂に含まれる他の無機物や未分解の熱硬化性樹脂は固形分として残る。
次に、図1にも示すように、得られた分解生成物を固液分離して、化合物(I)のアルカリ塩を含む水溶液を回収する(工程(B))。
具体的には、亜臨界水と分解生成物を含む反応容器を冷却した後、濾過等の方法で容器の内容物を固液分離する。これにより、化合物(I)のアルカリ塩、多価アルコール、有機酸のアルカリ塩が水可溶成分として溶解している水溶液が分離濾液として分離される。一方、熱硬化性樹脂に含まれていた他の無機物、例えば炭酸カルシウム、ガラス繊維や、未分解の熱硬化性樹脂は固形分として分離される。
次に、図1にも示すように、工程(B)で回収した水溶液に、酸を供給して化合物(I)を析出させ、さらに化合物(I)を溶解し且つ難水溶性の溶媒を供給して析出した化合物(I)を前記溶媒に溶解して回収する(工程(C))。
具体的には、回収した水溶液に塩酸、硫酸、硝酸等の無機の強酸を供給して化合物(I)の固形分を析出させる。析出した化合物(I)はスラリー状となる。酸の供給は、化合物(I)の固形分を完全に析出させるためにも前記水溶液のpHが4以下となるように供給することが好ましいが、pHが小さいほど化合物(I)の固形分が析出しやすいので、好ましくはpHが2以下となるように供給することが考慮される。pHの下限は特に設定されず、0である。
化合物(I)が析出した後は、化合物(I)を溶解し且つ難水溶性の溶媒を供給する。これによって、析出した化合物(I)を前記溶媒に溶解させる。化合物(I)の前記溶媒への溶解は、加熱条件下(例えば70〜90℃)、撹拌しながら行うことが好ましい。次いで、化合物(I)が溶解した溶媒を分液ロート等で水と分離することで化合物(I)を回収する。
ここで、化合物(I)を溶解し且つ難水溶性の溶媒とは、化合物(I)を溶解し、且つ、水(25℃)に対する溶解度が300g/L未満、好ましくは120g/L未満である溶媒を意味する。
このような溶媒としては、上記要件を満たすものであれば特に制限されないが、化合物(I)の溶解度、水への溶解性、化合物(I)との反応性、化合物(I)を効率よく改質(エステル化)して熱硬化性樹脂の硬化収縮を抑制する低収縮剤として再利用できる利便性等を考慮すると、好ましくは、炭素数4以上(好ましくは炭素数4〜8)のアルコールを例示することができる。前記アルコールは、その分子中にアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ベンジル基等の置換基を有していてもよい。これらのアルコールの中でも、第1級または第2級アルコールが好ましい。
特に、化合物(I)の改質剤として使用できると共に、熱硬化性樹脂の低収縮剤としての再利用時において、他成分との親和性等の点から、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、1−オクタノール、2−オクタノール等の飽和アルコールが好ましい。
また、溶媒の供給量としては、例えば、析出した化合物(I)の重量に対して1〜5倍程度、好適には2〜5倍程度、さらに好適には3〜4倍程度であることが考慮される。
なお、これらの溶媒は、1種単独で、あるいは2種以上を併用して用いることができる。
さらに本発明では、工程(C)において、化合物(I)を溶解し且つ難水溶性の溶媒と共に、回収した水溶液に、化合物(I)を溶解し且つ水溶性の補助溶媒を供給するようにしてもよい。化合物(I)の溶媒への溶解を促進させるためである。したがって、補助溶媒の使用により、化合物(I)をより一層効率よく回収することができる。
ここで、化合物(I)を溶解し且つ水溶性の補助溶媒とは、化合物(I)を溶解し、且つ、水(25℃)に対する溶解度が300g/L以上、好ましくは水と任意に相溶する溶媒を意味する。
このような補助溶媒としては、上記要件を満たすものであれば特に制限されないが、例えば、アセトンやメチルエチルケトン等を例示することができる。また、補助溶媒の供給量としては、例えば、析出した化合物(I)の重量に対して1〜3倍程度であることが考慮される。
なお、これらの補助溶媒は、1種単独で、あるいは2種以上を併用して用いることができる。
本発明の方法により回収される化合物(I)は、改質して熱硬化性樹脂の原材料との相溶性を付与することによって、熱硬化性樹脂の硬化収縮を抑制する低収縮剤として再利用可能であり、またアルカリ塩の状態では、セメントや顔料等の分散剤、洗剤ビルダー等に再利用が可能である
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例1>
プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、およびジプロピレングリコールからなるグリコール類と、無水マレイン酸とを等モル量で重縮合させて不飽和ポリエステルを合成した。この不飽和ポリエステルのワニス(溶剤未添加)に架橋剤のスチレンを等モル量配合した液状樹脂100質量部に、炭酸カルシウム165質量部とガラス繊維90質量部を配合し、これを硬化させて不飽和ポリエステル樹脂成形品(以下、「熱硬化性樹脂」という。)を得た。
この熱硬化性樹脂4gと、1N水酸化ナトリウム水溶液16gを反応管に仕込み、230℃の恒温槽に浸漬し、亜臨界状態にして2時間浸漬したまま放置し、熱硬化性樹脂の分解処理を行った。
その後、反応管を恒温槽から取り出して冷却槽に浸漬し、反応管を急冷して室温まで戻した。分解処理後の反応管の内容物は、水可溶成分と未溶解樹脂残渣と炭酸カルシウムとガラス繊維であり、この内容物を濾過することにより水溶液と固形分を分離して反応管から回収した。
次に、水溶液に1N硫酸をpH2になるまで加え、スチレン−フマル酸共重合体を析出させた後、溶媒として1−オクタノール(沸点195℃)を、析出したスチレン−フマル酸共重合体の重量に対して1.86倍添加し、90℃に加熱しながら攪拌して、スチレン−フマル酸共重合体を1−オクタノールに抽出させた。
その後、1時間静置して、溶媒(1−オクタノール)層と水層を上下に分かれさせ、下層の水層を除去してスチレン−フマル酸共重合体の1−オクタノール溶液を得た。
溶媒層へのスチレン−フマル酸共重合体抽出率は、以下の式で算出した。
溶媒層へのスチレン−フマル酸共重合体抽出率={(水溶液に含まれるスチレン−フマル酸共重合体量)−(抽出過程で容器に付着するスチレン−フマル酸共重合体量)−(水層中に含まれるスチレン−フマル酸共重合体量)}/(水溶液に含まれるスチレン−フマル酸共重合体量)
上記の式において、「水溶液に含まれるスチレン−フマル酸共重合体量」は、分離濾液に酸を添加して析出させたスチレン−フマル酸共重合体を固液分離し、乾燥させた後、重量を測定することで求めた。「抽出過程で容器に付着するスチレン−フマル酸共重合体量」は、容器に付着したスチレン−フマル酸共重合体をアセトンまたはメタノールで洗い流し、乾燥させた後、重量を測定することで求めた。「水層中に含まれるスチレン−フマル酸共重合体量」は、溶媒層と水層を分離した後残った水層を濾過し、回収されたスチレン−フマル酸共重合体を乾燥させた後、重量を測定することで求めた。
<実施例2>
溶媒として1−オクタノール(沸点195℃)を使用し、析出したスチレン−フマル酸共重合体の重量に対して1−オクタノールを4倍添加し、90℃に加熱しながら攪拌してスチレン−フマル酸共重合体を1−オクタノールに抽出させた以外は、実施例1と同様の条件で処理し、1−オクタノール層へのスチレン−フマル酸共重合体抽出率を求めた。
<実施例3>
溶媒として1−ブタノール(沸点117℃)を使用し、析出したスチレン−フマル酸共重合体の重量に対して1−ブタノールを1.86倍添加し、90℃に加熱しながら攪拌してスチレン−フマル酸共重合体を1−ブタノールに抽出させた以外は、実施例1と同様の条件で処理し、1−ブタノール層へのスチレン−フマル酸共重合体抽出率を求めた。
<実施例4>
溶媒と共に補助溶媒としてアセトンを使用し、析出したスチレン−フマル酸共重合体の重量に対して、アセトンを1.5倍添加した以外は、実施例1と同様の条件で処理し、1−オクタノール層へのスチレン−フマル酸共重合体抽出率を求めた。
試験条件、スチレン−フマル酸共重合体抽出率等の結果を表1に示す。
Figure 0004440337
表1の結果より、実施例1〜4では、スチレン−フマル酸共重合体を溶解し且つ難水溶性の溶媒を供給することにより、溶媒にスチレン−フマル酸共重合体が抽出されて効率よくスチレン−フマル酸共重合体を回収できることが示された。
なかでも補助溶媒を用いた実施例4の場合は、より一層高いスチレン−フマル酸共重合体抽出率でスチレン−フマル酸共重合体を回収できることが示された。また、析出したスチレン−フマル酸共重合体の重量に対して溶媒を4倍添加した実施例2についても、高いスチレン−フマル酸共重合体抽出率でスチレン−フマル酸共重合体を回収できることが確認された。

Claims (1)

  1. ポリエステル部とその架橋部を含む熱硬化性樹脂を分解して再利用可能な分解生成物を回収する方法であって、
    (A)該熱硬化性樹脂を、アルカリを共存させた亜臨界水で分解する工程と、
    (B)得られた分解生成物を固液分離して、ポリエステル由来の酸残基と架橋部を含んでなる化合物のアルカリ塩を含む水溶液を回収する工程と、
    (C)回収した水溶液に、酸を供給して前記化合物を析出させ、さらに前記化合物を溶解し且つ難水溶性の溶媒を供給して析出した前記化合物を前記溶媒に溶解して回収する工程と
    を含み、
    前記化合物を溶解し且つ難水溶性の溶媒は、炭素数4以上の飽和アルコールを含んでなり、
    工程(C)において、前記化合物を溶解し且つ難水溶性の溶媒と共に、前記化合物を溶解し且つ水(25℃)に対する溶解度が300g/L以上の水溶性の補助溶媒を供給する、ことを特徴とする方法。
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