〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について図1〜図21に基づいて説明すれば、以下の通りである。
本実施形態の光ピックアップ装置は、対応する対物レンズの開口数が異なる光ディスクに対して、同一波長の光ビームを集光することにより、記録または再生を行うものである。本実施形態では、上記光ディスクに集光する同一波長の光ビームとして、波長405nmの光ビームを用いている。しかしながら、上記同一波長の光ビームは、これに限定されるものではなく、従来公知の任意の波長の光ビームを用いることが可能である。
本実施形態においては、光ディスク(光記録媒体)として、対応する対物レンズの開口数が、それぞれ0.85、及び、0.65であり、かつ、カバーガラス厚が、それぞれ0.1mm、及び、0.6mmのものを用いた。しかしながら、本実施形態で用いる光ディスクは、これに限定されず、対応する対物レンズの開口数が異なる光ディスクであれば任意のものでよい。
なお、ここでは、対応する対物レンズの開口数が大きい場合、一般的には相対的に光ディスクの記録密度が高いことから、対応する対物レンズの開口数が大きい光ディスク(開口数0.85のもの)を、高密度光ディスクと呼び、対応する対物レンズの開口数が小さい光ディスク(開口数0.65のもの)を低密度光ディスクと呼ぶことにする。
また、本実施形態において使用する高密度光ディスク、及び、低密度光ディスクは、2つの記録層を有している。そして、高密度光ディスク、及び、低密度光ディスクにおける2つ記録層間に存在する中間層の厚みは、それぞれ25μm、及び、20μmである。
図1に、本実施形態の光ピックアップ装置100の要部の概略構成を示す。図1に示すように、光ピックアップ装置100は、光源13、コリメートレンズ3、整形プリズム4、TN型の液晶素子(偏光方向切替手段)5、偏光レンズ素子6、ビームエキスパンダー(球面収差補正手段)7、λ/4波長板8、及び、光源13からの光ビームを光ディスク12(低密度光ディスク、または、高密度光ディスク)に集光する対物レンズユニット18を備えている。
光源13は、ホログラムレーザ光源であり、光ビーム照射手段としての半導体レーザー1とホログラム素子2と受光素子21とを備えている。半導体レーザー1は、X方向の直線偏光であり、かつ、波長405nmの青紫色の光ビームを出射する。ホログラム素子2は、半導体レーザー1が光ビームを出射する側に設けられている。そして、ホログラム素子2の半導体レーザー1側の面には、ラジアル信号の検出に用いる3ビーム発生用回折格子2bが形成されている。また、ホログラム素子2の半導体レーザー1側と反対側の面には、光ディスク12にて反射された光ビームを回折するための、3分割ホログラム2aが形成されている。さらに、受光素子28は、光源13内に備えられており、光ディスク12にて反射された光ビームを受光する。
また、光源13における光ビーム照射手段は、所定方向の直線偏光を出射する半導体レーザー1に限定されるものではない。光ビーム照射手段としては、例えば、固体レーザー光源やガスレーザ光源であってもよい。また、光ビーム照射手段としては、無偏光の光ビームを出射するようなものでもよい。ただし、光ビーム照射手段として無偏光の光ビームを出射するものを用いた場合、光源13と偏光レンズ素子6との間に偏光板を配置することで、所定方向の直線偏光の光束が得られるようにすればよい。
半導体レーザー1から出射した光ビームは、ホログラム素子2の半導体レーザー1側の面に形成された3ビーム発生用回折格子2bにより、0次回折光と±1次回折光との3つの光ビームに分割される。そして、この光ビームは、コリメートレンズ3に入射して平行光となる。そして、コリメートレンズ3から出射した光ビームは、整形プリズム4に入射して、光束の強度分布が概ね円形の強度分布になるように、X方向の光束径が拡大される。
整形プリズム4から出射した光ビームは、液晶素子5に入射する。液晶素子5に入射する光ビームはX方向の直線偏光である。
液晶素子5は、上記光ディスク12の種類、すなわち、高密度光ディスクまたは低密度光ディスクに応じて、光ビームを、X方向の直線偏光、あるいは、Y方向の直線偏光として、偏光レンズ素子6へ出射する。
なお、光軸方向をZ方向、Z方向に対し垂直な平面をにXY面としている。
液晶素子5から出射した光ビームは、平行光のまま、偏光レンズ素子6に入射する。偏光レンズ素子6は、偏光レンズ(第1の偏光レンズ)14及び偏光レンズ(第2の偏光レンズ)15という、2つの偏光レンズからなる。偏光レンズ素子6は、X方向の直線偏光に対してレンズとして機能しており、偏光レンズ14は光源13側に設けられており、偏光レンズ15は光源13と反対側に設けられている。偏光レンズ14は、X方向の直線偏光に対して、凹レンズとして機能している。また、偏光レンズ15は、X方向の直線偏光に対して、凸レンズとして機能している。そして、偏光レンズ素子6では、入射した平行光の光束径よりも大きい光束径を有する光ビームが平行光となって出射するように、偏光レンズ14及び偏光レンズ15それぞれの焦点距離と、互いのレンズ間隔とが設定されている。この設定条件については、後述する。
偏光レンズ素子6から出射した光ビームは、平行光のまま、ビームエキスパンダー7に入射する。ビームエキスパンダー7は、凹レンズ16と凸レンズ17とレンズを光軸方向に駆動する駆動手段とレンズ間隔制御部61とを備えている。ビームエキスパンダー7において、凹レンズ16は、入射側に設けられており、凸レンズ17は出射側に設けられている。従って、ビームエキスパンダーに入射した平行光は拡大された平行光となって出射される。また、レンズ間隔制御部61は、後述する球面収差の調整手法に基づいて、凹レンズ16と凸レンズ17とのレンズ間隔を制御し、対物レンズにより記録層に集光された光ビームの球面収差を補正している。
ビームエキスパンダー7から出射した光ビームは、λ/4波長板8に入射し、偏光方向が円偏光となって、出射される。そして、λ/4波長板8から出射した光ビームは、対物レンズユニット18に入射する。
対物レンズユニット18は、対物レンズホルダー9と、アパーチャ10と、対物レンズ(集光手段)11とを備えている。対物レンズホルダー9は、対物レンズ11を保持する。また、アパーチャ10は、入射する光ビームにおいて、光束の外周部の光ビームを遮光する。このため、λ/4波長板8から出射した光ビームは、アパーチャ10により、光束の外周部の光ビームが遮光されて、対物レンズ11に入射し、光ディスク12に集光される。なお、ここでは、半導体レーザー1から出射した光ビームが、対物レンズ11により光ディスク12に集光されるまでの光路を往路とする。
対物レンズ11としては、光ディスク12に集光させることが可能なものであれば、特に限定されるものではなく、従来公知の対物レンズを用いることができる。光ピックアップ装置100では、光ディスク12として、図20または図21にて説明したような、リング状の段差19を有する、特殊対物レンズ方式の互換対物レンズを用いている。なお、この特殊対物レンズでは、CDの記録層に対して集光した集光ビーム径から計算される実効的な開口数と、対物レンズに設けられた段差の直径から求められる開口数が若干異なるが、以降の説明では、対物レンズの外形形状により決定される、つまり、段差部分の直径から求められる開口数をCDに対する実効的な開口数として取り扱う。但し、実効的な開口数として集光ビーム径より計算した開口数を実効的な開口数として取り扱っても本発明の効果はかわりない。
次に、光ディスク12に集光した後、光ディスク12にて反射された光ビーム(以下、戻り光ビームと記す)の光路(以下、復路と記す)について説明する。
光ディスク12にて反射した戻り光ビームは、対物レンズユニット18を通過し、λ/4波長板8に入射する。そして、λ/4波長板8にて、往路とは偏光方向が90度異なる偏光方向を有する平行光になる。そして、λ/4波長板8から出射した戻り光ビームは、ビームエキスパンダー7に入射し、さらに、偏光レンズ素子6に入射する。
そして、偏光レンズ素子6から出射した戻り光ビームは、液晶素子5に入射し、整形プリズム4、及び、コリメートレンズ3を経て、光源13に入射する。光源13にて、戻り光ビームは、ホログラム素子2の半導体レーザー1と反対側の面に形成された3分割ホログラム2aにより回折され、受光素子28に導かれる。
受光素子28にて受光された戻り光ビームは、電気信号に変換され、得られた電気信号が演算処理される。そして、演算処理の結果、RF信号と呼ばれる情報信号と、フォーカス誤差信号及びラジアル誤差信号などのサーボ信号が検出される。
光ピックアップ装置100では、検出されたRF信号を信号処理することにより、光ディスク12の再生と球面収差の調整用の信号検出が行なわれている。また、検出されたフォーカス誤差信号、または、ラジアル誤差信号に基づいて、図示しない対物レンズ駆動手段により対物レンズホルダー9を駆動することで、対物レンズ11をフォーカス方向、または、ラジアル方向に駆動している。
次に、図2及び図3を参照して、光ディスク12として低密度光ディスク、または、高密度光ディスクを用いた場合における、光ピックアップ装置100の各部材を透過する光ビームの偏光方向の状態について、以下に詳述する。図2は、光ディスク12として高密度光ディスク20を用いた場合における、光ピックアップ装置100の各部材を透過する光ビームの偏光方向の状態を示した断面図であり、図2(a)は、往路を示し、図2(b)は、復路を示す。また、図3は、光ディスク12として低密度光ディスク30を用いた場合における、光ピックアップ装置100の各部材を透過する光ビームの偏光方向の状態を示した断面図であり、図3(a)は、往路を示し、図3(b)は、復路を示す。なお、図2及び図3では、光ピックアップ装置100における、液晶素子5から光源13までの部材について省略している。
まず、光ディスク12として高密度光ディスク20を用いた光ピックアップ装置100において、光源13から出射した光ビームが液晶素子5を出射するまでの往路の偏光方向の状態について説明する。光源13から出射した光ビームは、コリメートレンズ3、及び、整形プリズム4を経て、偏光方向をX方向に保持した状態で、液晶素子5に入射する。液晶素子5には、図示しない電圧印加手段が備えられている。この電圧印加手段が、液晶素子5の内部に設けられた液晶層に電圧を印加することで、当該液晶層に存在する液晶分子の長軸がZ方向に向く。このとき、液晶素子5を透過した光ビームは、その偏光方向を変化させずに、偏光レンズ素子6へ入射する。すなわち、光ディスク12として高密度光ディスクを用いた場合、光ピックアップ装置100では、液晶素子5から出射した光ビームがX方向の直線偏光になるようになっている。
液晶素子5から出射した光ビームは、図2(a)に示すように、X方向の直線偏光のまま、偏光レンズ素子6に入射する。上述したように、偏光レンズ素子6は、X方向の直線偏光に対して凹レンズとして機能する偏光レンズ14と、X方向の直線偏光に対して凸レンズとして機能する凹レンズ15とを備えている。それゆえ、偏光レンズ素子6に入射した光ビームは、まず、偏光レンズ14にて、光束径が拡大されて発散光になる。そして、偏光レンズ15にて、再び平行光となって、偏光レンズ素子6から出射される。すなわち、偏光レンズ素子6に入射した光ビームは、偏光レンズ14及び偏光レンズ15により、光束径が拡大されることになる。
そして、偏光レンズ素子6から出射された光ビームは、ビームエキスパンダー7により、さらに光束径が拡大され、λ/4波長板8により偏光方向が左回りである円偏光になる。そして、λ/4波長板8から出射した光ビームは、対物レンズホルダー9に設けられたアパーチャ10により、その外周部の光ビームが遮光され、対物レンズ11の有効径相当の光束が、対物レンズ11へ入射する。
また、光ピックアップ装置100では、高密度光ディスク20に対応する対物レンズ11は無限系対物レンズになっている。このため、光ピックアップ装置100では、対物レンズホルダー9に備えられたアパーチャ10が、対物レンズ11の有効径、すなわち開口数を決定している。換言すれば、アパーチャ10の内径において最も外側の部分を通過した光ビームが、対物レンズ11で集光される際に最も大きな角度を有する光線、すなわち開口数を決定する光線となっている。また、一般的に、対物レンズ11が無限系対物レンズである場合、アパーチャ10は、その内径が対物レンズ11の有効径と一致するものが使用されている。それゆえ、光ピックアップ装置100においても、アパーチャ10の内径と対物レンズ11の有効径とは一致している。なお、ここでいう、対物レンズ11の有効径とは、入射した光ビームがほぼ無収差でかつ良好に集光されるように、対物レンズ11の設計時に設定した径のことである。また、上記有効径と一致する光束径の光ビームが対物レンズ11に入射した場合、その開口数は、対物レンズ11本来の開口数となる。
また、光ピックアップ装置100では、Rim強度を、アパーチャ10の内径の最も外側の部分を通過して対物レンズ11に入射した光ビームの強度と、対物レンズ11の中心に入射した光ビームの強度との比として規定している。
光ピックアップ装置100では、Rim強度がラジアル方向、及び、タンジェンシャル方向ともに0.6になるように、各種部材が設計されている。以下に設計方法について、説明する。
一般的には、レーザーの放射角は、強度分布の中心の強度(I)の半分の強度(I/2)となる、光線のなす角度(θ半値全角)により定義されている。従って、光軸に対して
±θ半値全角/2
の角度でレーザーから出射された光線は、強度分布の中心の強度(I)の半分の強度(I/2)となる。なお、θ半値全角は観測する点とレーザーとの距離が変わっても変化しない。
また、強度分布の中心の強度の60%の強度(0.6×I)となる角度は、実際にはガウス分布を示す強度分布の関数式と、前述の半値全角から、算出することができる。ここで、光軸に対し
±θ0.6/2
の角度でレーザーから出射された光線は、強度分布の中心の強度(I)の60%の強度となっている。
レーザーの強度分布を観測した点は、レーザーから光軸方向前方にfの距離にあり、そこにはコリメートレンズが配置されており、レーザーから出射された発散光が平行光になっている。従って、コリメートレンズの焦点距離はfとなる。また、さらに前方に対物レンズが配置されている。
コリメートレンズから出射された光束において、強度が0.6×Iとなる光線を両端に持つ光束の径をΦ0.6とすると、光束径は以下の式で求められる。
Φ0.6=2×f×sin(θ0.6/2)・・・・・・(6)
コリメートレンズの前方に配置された対物レンズとして有効径がΦ0.6のものを使用した場合には、対物レンズの中心を通る光線の強度Iに対し、対物レンズの最外周部を通る光線の強度は0.6×Iになるため、Rim強度は0.6となる。
なお、実際には、半導体レーザーの放射角度は、個々の半導体レーザーによってばらつきがある。このため、半導体レーザー1の放射角度として、個々の半導体レーザーについて放射角度を測定した値を適用する、もしくは、予め個々の半導体レーザーについて放射角度を測定しておき、そのばらつきの平均値を適用することで、光ピックアップ装置100の設計を行うことになる。
次に、高密度光ディスク20にて反射された戻り光ビームが、光源13へ入射するまでの復路における、偏光方向の状態について説明する。
高密度光ディスク20に集光した後、反射された戻り光ビームは、図2(b)に示すように、右回りの円偏光になり、λ/4波長板8に入射する。そして、戻り光ビームは、λ/4波長板8にて、Y方向の直線偏光になる。λ/4波長板8から出射した戻り光ビームは、ビームエキスパンダー7にて、光束径が縮小されて偏光レンズ素子6に入射する。
偏光レンズ素子6は、Y方向の直線偏光に対して、レンズとしての機能を有しておらず、単なる平行平板として機能する。このため、偏光レンズ素子6に入射した戻り光ビームは、光束径を保持した状態で、偏光レンズ素子6を透過する。そして、偏光レンズ素子6から出射した戻り光ビームは、液晶素子5、整形プリズム4、及び、コリメートレンズ3を経て、光源13に入射する。なお、復路の戻り光ビームは、上記の偏光レンズ素子6の作用により、往路の光ビームにおける光束径よりも大きい光束径となって、光源13に入射される。
次に、光ディスク12として低密度光ディスク30を用いた光ピックアップ装置100において、光源13から出射した光ビームが液晶素子5を出射するまでの往路の偏光方向の状態について説明する。光源13から出射した光ビームは、コリメートレンズ3、及び、整形プリズム4を経て、偏光方向をX方向に保持した状態で、液晶素子5に入射する。
光ディスク12として低密度光ディスク30を用いた場合、液晶素子5の電圧印加手段は、液晶素子5の内部に設けられた液晶層に電圧を印加しないようになっている。このため、液晶素子5を透過した光ビームは、その偏光方向が90度変化して、偏光レンズ素子6へ入射する。すなわち、光ディスク12として低密度光ディスク30を用いた場合、光ピックアップ装置100では、液晶素子5から出射した光ビームがY方向の直線偏光になるようになっている。
液晶素子5から出射した光ビームは、図3(a)に示すように、Y方向の直線偏光のまま、偏光レンズ素子6に入射する。上述したように、偏光レンズ素子6は、Y方向の直線偏光に対して、レンズとしての機能を有しておらず、単なる平行平板として機能する。このため、偏光レンズ素子6に入射した光ビームは、光束径を保持した状態で、偏光レンズ素子6を透過する。
そして、偏光レンズ素子6から出射された光ビームは、ビームエキスパンダー7により、光束径が拡大され、λ/4波長板8により偏光方向が右回りである円偏光になる。そして、λ/4波長板8から出射した光ビームは、対物レンズホルダー9に設けられたアパーチャ10により、その外周部の光ビームが遮光され、対物レンズ11の有効径相当の光束が、対物レンズ11へ入射する。
光ディスク12として低密度光ディスク30を用いた場合、光ピックアップ装置100では、対物レンズ11に設けられたリング状の段差19の部分、及び、段差19の内周側の領域に入射した光ビームが、低密度光ディスク30の記録層に集光されている。また、段差19において外周部に入射した光ビームは、フレアとなり、低密度光ディスク30の記録あるいは再生に用いられない。すなわち、光ディスク12として低密度光ディスク30を用いた場合、対応する対物レンズの開口数は、実効的には、段差19により決定される。光ピックアップ装置100では、段差19は、対物レンズ11の開口数が0.6〜0.65の部分に設けられている。それゆえ、対物レンズの実効的な開口数は、段差19における外周部の直径に相当する、0.65としている。したがって、光ピックアップ装置100では、Rim強度を対物レンズの開口数0.65に対応して設定している。そして、光ピックアップ装置100では、Rim強度がラジアル方向、及び、タンジェンシャル方向ともに0.6になるように、各種部材が設計されている。
なお、実際にはアパーチャ10の直径より大きい光束径の光束がアパーチャ29に入射しているが、本願発明の内容をより理解しやすくするために、実効的な開口数に相当する光束径の部分のみを図示している。
次に、低密度光ディスク30にて反射された戻り光ビームが、光源13へ入射するまでの復路における、偏光方向の状態について説明する。
低密度光ディスク30に集光した後、反射された戻り光ビームは、図3(b)に示すように、左回りの円偏光になり、λ/4波長板8に入射する。そして、戻り光ビームは、λ/4波長板8にて、X方向の直線偏光になる。λ/4波長板8から出射した戻り光ビームは、ビームエキスパンダー7にて、光束径が縮小されて偏光レンズ素子6に入射する。
偏光レンズ素子6は、上述したように、X方向の直線偏光に対して凹レンズとして機能する偏光レンズ14と、X方向の直線偏光に対して凸レンズとして機能する偏光レンズ15とを備えている。それゆえ、偏光レンズ素子6に入射した戻り光ビームは、まず、偏光レンズ15にて、光束径が縮小されて収束光になる。そして、偏光レンズ15にて、再び平行光となって、偏光レンズ素子6から出射される。すなわち、偏光レンズ素子6に入射した戻り光ビームは、偏光レンズ15及び偏光レンズ14により、光束径が縮小されることになる。なお、偏光レンズ素子6に平行光で入射した戻り光ビームは、平行光のまま出射される。
そして、偏光レンズ素子6から出射した戻り光ビームは、液晶素子5にてその偏光方向が90度変化し、Y方向の直線偏光になる。そして、液晶素子5から出射した戻り光ビームは、整形プリズム4、及び、コリメートレンズ3を経て、光源13の3分割ホログラム2aに入射する。
このように、偏光レンズ素子6は、所定方向の直線偏光が入射した場合には、入射する光の光束径とは異なる光束径を有する光を出射する一方、入射する光の偏光方向が上記所定方向と直交する方向である場合には、入射する光の光束径と同一の光束径を有する光を出射する。それゆえ、入射する光の光束径の変換倍率を変化させることができる。その結果、光ピックアップ装置100では、記録・再生が最適になるようにRim強度を設定することができる。そして、結合効率の低下を防止するとともに、結合効率を相対的に高くすることができる。結合効率が相対的に高くなることにより、最大出力が同じ半導体レーザー光源を使用した場合に、対物レンズから出射される光量を大きくすることできる。一方、光ディスクの記録レートを高速化するには、光ディスクをより早く回転させ、単位時間当たりにより多くの情報を記録する必要があるが、光ディスクを高速回転させると、情報記録層の記録膜に照射させる光の積算光量(照射される光量×照射時間)が小さくなる。しかしながら、上述のように、光ピックアップ装置100では、対物レンズから出射される光量を大きくすることができるため、積算光量の低下を防止することができる。すなわち、記録レートの高速化が可能となる。ここで、上記「直交する方向」および上記「同一の光束径」とは、実使用上の光ピックアップ装置の設計範囲内であれば良い。
以下に、(1)偏光レンズ素子6の構成及びその製造方法、(2)光源13の具体的構成とその信号検出方法、(3)偏光方向切替素子、(4)球面収差補正素子、(5)適用可能な光ディスク、(6)本発明の偏光レンズ素子、及び、(7)従来の光ピックアップ装置と本実施形態の光ピックアップ装置100との比較について、説明する
(1)偏光レンズ素子6の構成及びその製造方法
次に、光ピックアップ装置100における偏光レンズ素子6の構成及びその製造方法について、図4を参照して、以下に詳述する。図4は、光ピックアップ装置100における偏光レンズ素子6の構成を示す図であり、図4(a)は、平面図であり、図4(b)は、断面図である。
偏光レンズ素子6は、図4(b)に示すように、偏光レンズ14、偏光レンズ15、ガラス基板21、保護用ガラス板22、及び、保護用ガラス板23を備えている。偏光レンズ14と偏光レンズ15との間に、平行平板であるガラス基板(光透過部材)21が設けられている。また、偏光レンズ14においてガラス基板21側と反対側の面には、保護用ガラス板22が設けられている。偏光レンズ15においてガラス基板21側と反対側の面には、保護用ガラス板23が設けられている。
偏光レンズ14は、ブレーズホログラム24と、等方材料である光硬化性樹脂からなる充填層25とを備えている。そして、充填層25のガラス基板21と対向する面に、ブレーズホログラム24が形成されている。また、偏光レンズ15は、ブレーズホログラム26と、等方材料である光硬化性樹脂からなる充填層27とを備えている。そして、充填層27のガラス基板21と対向する面に、ブレーズホログラム26が形成されている。
ブレーズホログラム24・26は、複屈折材料である高分子液晶24a・26aからなる。また、図4(a)に示すように、ブレーズホログラム24・26は、光軸に対して、同心円状にホログラムが形成されている。ブレーズホログラム24・26のホログラムの断面形状は、図4(b)に示すように、鋸歯形状である。ホログラムの断面形状を鋸歯形状とすることで、ブレーズホログラム24・26にて、±1次のうち何れか一方の回折光が回折される。なお、図4に示すブレーズホログラム24・26は、概略構成であり、実際には、これらブレーズホログラムは、数十本から数百本の鋸歯形状の格子から形成されている。
高分子液晶26aは、屈折率異方性を有しており、X方向の直線偏光における屈折率、及び、Y方向の直線偏光における屈折率をそれぞれ、Nx、及び、Nyとすると
Nx≠Ny・・・・・(7)
であり、ここでは、
Nx>Ny・・・・・(8)
である。
また、充填層27の屈折率をNとすると、
N=Ny・・・・・(9)
となるように設定されている。
それゆえ、Y方向の直線偏光が偏光レンズ15に入射した場合、ブレーズホログラム26と充填層27とにおいて、(9)式より屈折率が一致しているので、偏光レンズ15は、Y方向の直線偏光に対して、単なる平行平板として機能し、レンズとしての機能を有しない。一方、X方向の直線偏光が偏光レンズ15に入射した場合、高分子液晶26aからなるブレーズホログラム26の屈折率Nxが、充填層27の屈折率Nよりも大きくなっている。このため、偏光レンズ15は、レンズとしての機能を有する。
このように、偏光レンズ素子6は、X方向の直線偏光に対してレンズとして機能している。また、偏光レンズ素子6では、入射側に、X方向の直線偏光に対して凹レンズとして機能する偏光レンズ14が設けられており、出射側に、X方向の直線偏光に対して凸レンズとして機能する偏光レンズ15が設けられている。それゆえ、光ディスク12として高密度光ディスク20を用いた場合には、液晶素子5から出射する光ビームの光束径が、往路において、所定の倍率(βとする)で拡大される。一方、光ディスク12として低密度光ディスク30を用いた場合には、低密度光ディスク30から反射された戻り光ビームの光束径が、復路において、所定の倍率βで縮小される。以下、光ピックアップ装置100の偏光レンズ素子6における、偏光レンズ14と偏光レンズ15との焦点距離、及び、レンズ間隔の設定について、図5及び図6を参照して、説明する。図5は、偏光レンズ14と偏光レンズ15とにおいて、焦点距離及びレンズ間隔を示す断面図である。
まず、偏光レンズ素子6における、所定の倍率βの設定について説明する。
高密度光ディスク20の開口数(以下、Naとする)に相当する対物レンズ11の有効径をΦaとする。また、低密度光ディスク30の開口数(以下、Nbとする)に相当する有効径をΦbとする。さらに、ビームエキスパンダー7は、所定の倍率αで光ビームの光束径を拡大させるとする。また、本実施形態においては、高密度光ディスク20と低密度光ディスク30とで、集光する光ビームのRim強度が同じになるように設定した。それゆえ、高密度光ディスク20と低密度光ディスク30とのそれぞれにおいて、コリメートレンズ3から出射された光ビームのうち同じ光束径の光ビームが、対物レンズ11に入射する際に、それぞれ所定の開口数Na及びNbに相当する有効径の光束となるように、偏光レンズ素子6の所定の倍率βを決定すればよい。
まず、偏光レンズ素子6が往路でレンズとして機能しない、すなわち、光ディスク12として低密度光ディスク30を用いた場合の、ビームエキスパンダー7の光束径拡大倍率を考える。低密度光ディスク30に対応した対物レンズの開口数に相当する有効径Φbの光束径となる偏光レンズ素子入射光束径ΦPLとすると、ΦPLは下記(10)式のように表わされる。
ΦPL=Φb/(α)・・・・(10)
なお、ここで述べる偏光レンズ入射光束径ΦPLとは、対物レンズ11の実効的な有効径に対応する光束径のことであり、実際には対物レンズ11がラジアル方向にシフトすること考慮し、さらに大きな光束径の光束が偏光レンズ素子6に入射し、出射されている。
光ディスク12として高密度光ディスク20を用いた場合には、光ビームの往路で、偏光レンズ素子6がレンズとして機能する。それゆえ、ΦPLの光束が、偏光レンズ素子6で拡大され、さらに、ビームエキスパンダー7で拡大されて対物レンズ11に入射する際、Φaの光束径となればよいので、偏光レンズ素子6の所定の倍率βは、下記の式(11)を満たし、
ΦPL×β×α=Φa・・・・(11)
より、偏光レンズ素子6の所定の倍率βは、
β=Φb/(ΦPL×α)・・・・(12)
となる。
なお、本実施形態では、一例として、低密度光ディスク30に対応した対物レンズの開口数に相当する有効径ΦbをΦ2.29、αを1.5とした場合、(10)式に基づき、偏光レンズ入射光束径ΦPLは、Φ1.53となる。さらに、Φ1.53の光束が、偏光レンズ素子6で拡大され、さらに、ビームエキスパンダー7で拡大されて対物レンズ11に入射する際、Φa=Φ3の光束径となればよいので、偏光レンズ素子6の所定の倍率βは、式(12)より、β=1.31となる。
本実施形態においては、対物レンズ11を異なる開口数で使用する場合に、ともに無限系で使用しているため、偏光レンズ素子6の倍率βは開口数の比、あるいは、有効径の比と一致している。このようにすることにより、互いに異なる実効的な有効径を有する対物レンズに対して、Rim強度を一致させた状態で、光を入射させることが可能である。
本実施形態では、偏光レンズ素子6の倍率βを変化させることにより、Rim強度を変化させることが可能になる。例えば、倍率β=1.31において、Rim強度が一致する場合、偏光レンズ素子6を倍率βが1.31よりも大きくなるように設計すると、光束径が拡がり、対物レンズの実効的な有効径に入射する光の強度分布において、中心部と外周部との強度差が小さくなるので、Rim強度は大きくなる。
また、偏光レンズ素子6を倍率βが1.31よりも小さくなるように設計すると、光束径が縮まり、対物レンズの実効的な有効径に入射する光の強度分布において、中心部と外周部との強度差が大きくなるので、Rim強度は小さくなる。
そこで、偏光レンズ素子6に対し、偏光レンズ素子6がレンズ効果を有する直線偏光が入射する際の、光源側の入射光束径をDi、対物レンズ側の光束径をDoとすると、偏光レンズ素子6の所定の倍率βは、下記の式(13)で表わされる。
β=Do/Di・・・・・(13)
また、偏光レンズ素子6における光源側の偏光レンズ14の焦点距離をfi、対物レンズ側の偏光レンズ15の焦点距離をfo、そして偏光レンズ14と偏光レンズ15との間隔をsとすると、下記(14)及び(15)式の関係を満たす。
fi+s=fo・・・・・(14)
β=fo/fi・・・・・(15)
なお、偏光レンズ素子6を構成する偏光レンズ14と偏光レンズ15との間には、ガラス基板21が設けられている。このため、偏光レンズ14と偏光レンズ15との間隔がsである場合、ガラス基板21の厚みdは、空気換算厚みを考慮に入れる。すなわち、sは、ガラス基板の屈折率nを考慮し、ガラス基板の厚みをdとすると、下記(16)式のようになる。
s=d/n・・・・・(16)
なお、以上の焦点距離fi・foやレンズ間隔sの関係式は、レンズの近軸公式に基づくものであり、実際には光線収差を考慮した設計を行ってもよい。
また、偏光レンズ14の焦点距離fi、及び、偏光レンズ15の焦点距離foは、偏光レンズ素子6における光ビームの所定の倍率β、入射光束径、出射光束径、または、レンズ間隔に関連して、設定される。
また、本実施形態では、偏光レンズ素子として、X方向の偏光方向の光に対して、入射側に凹レンズとして機能する偏光レンズ14と、出射側に凸レンズ効果を有する偏光レンズ15とを配置したが、偏光レンズ素子6の構成は、これに限定されるものではなく、X方向の直線偏光に対して、光束を拡大させるような構成であればよい。例えば、偏光レンズ素子の構成としては、入射側及び出射側ともに、X方向の直線偏光に対して凸レンズとして機能する偏光レンズを設けた構成であってもよい。
以下、偏光レンズ素子として、入射側及び出射側ともに、X方向の直線偏光に対して凸レンズとして機能する偏光レンズを設けた構成について、図6を参照して説明する。図6は、本実施形態における偏光レンズ素子の別の構成を示す断面図である。
図6に示すように、偏光レンズ素子66は、上述した偏光レンズ素子6における偏光レンズ14及び偏光レンズ15の構成が異なる以外、偏光レンズ素子6を同様の構成を有する。同図に示すように、偏光レンズ素子66は、X方向の直線偏光に対して凸レンズとして機能する偏光レンズ614、及び、偏光レンズ615を備えており、当該偏光レンズ614と偏光レンズ615との間に、光ビームの焦点が位置するように設けられている。
また、偏光レンズ614・615は、それぞれブレーズホログラム624・626を備えている。それゆえ、偏光レンズ素子66に入射した光ビームは、偏光レンズ614を通過しガラス基板621内で集光した後、偏光レンズ615にて光束径が拡大されて出射する。
また、偏光レンズ614の焦点距離をfi、偏光レンズ615の焦点距離をfo、そして偏光レンズ614と偏光レンズ615との間隔をsとすると、下記(17)式のようになる。
fi+fo=s・・・・・(17)
そして、上記(17)式に基づき、偏光レンズ614の焦点距離及び偏光レンズ615の焦点距離を決定することができる。また、2つ偏光レンズの間隔sとガラス基板621の厚みdの関係は上記式(16)を採用することができる。
偏光レンズ素子66において、ビーム径の変換倍率βが同じであり、かつ、偏光レンズ614と偏光レンズ615との間隔の距離を、凹レンズと凸レンズの組み合わせの場合と同じ距離にするためには、偏光レンズ614の焦点距離及び偏光レンズ615それぞれの焦点距離をより短くする必要がある。偏光レンズ614の焦点距離及び偏光レンズ615それぞれの焦点距離が短くなると、ブレーズホログラム624・626の周辺部分は光ビームの方向をより大きく変化させるために、回折格子のピッチが狭くなる。このため、エッチングなどのブレーズホログラム作成時の誤差による光量ロスが多くなる恐れがある。
また、逆に、2つの偏光レンズそれぞれの焦点距離が長い場合には、2つの偏光レンズそれぞれの焦点距離が短い場合と比較して、光ビームの方向を小さく変化させるために、回折格子のピッチが広くなる。
このため、偏光レンズ素子6の構成としては、凹レンズと凸レンズの組み合わせによる構成がより望ましい。偏光レンズ素子を凹レンズと凸レンズの組み合わせとした場合、2つの偏光レンズを凸レンズで構成する場合と比較すると、レンズの焦点距離を長くすることができるため、ブレーズホログラムの周辺部のピッチを広くすることができ、エッチングなどのブレーズホログラム作成時の誤差による光量ロスを低減させることができる。また、ブレーズホログラムを作成する際のフォトマスクの位置合わせ精度を緩和できることから、レンズの製造コストを低減することが可能である。さらに、2つの偏光レンズ間の光軸ずれによるコマ収差の発生量が相対的に小さいという効果が得られる。
また、ガラス基板内部で光が集光しないため、集光スポット付近で発生する熱によるガラス基板の劣化を防止することができる。また、光を透過する平板であるガラス基板の両面に偏光レンズが一体的に形成されているため、偏光レンズ素子を光記録再生装置や照明装置などの、他の装置(光学的装置)に対して組み付けが容易である。つまり、あらかじめ2つのレンズ間の位置調整を行い、固定したものを設置するため組み付け時、あるいは、組み付け後の環境温度の変化などによるレンズ間の光軸中心ずれが発生しにくく、収差の発生などの問題を抑制できる。なお、これらの効果はホログラムレンズに限らず、通常の屈折タイプのレンズであっても同様の効果が得られる。
以下、偏光レンズ素子6における偏光レンズの製造方法について、図7を参照して説明する。一例として、偏光レンズ15の製造方法について説明する。図7(a)〜(d)は、偏光レンズ素子6の製造工程の一例を示す断面図である。
まず、図7(a)に示すように、配向膜を形成したガラス基板21と、該ガラス基板21と対向する面に配向膜を形成したガラス板116との間に、高分子液晶26aを塗布する。そして、この工程で、ガラス基板21及びガラス板116に設けられた配向膜の作用により高分子液晶26aの配向方向が決定される。
次に、図7(b)に示すように、光照射により高分子液晶26aを硬化させ、ガラス板116と配向膜とを除去する。
そして、図7(c)に示すように、硬化した高分子液晶26aをエッチングすることにより、ブレーズホログラム26の形状を形成する。
次に、図7(d)に示すように、等方性材料である光硬化樹脂からなる充填剤をブレーズホログラム26上に塗布する。そして、保護用ガラス板23を密着させ、光を照射することで、充填剤を硬化させて、充填層27を形成する。
なお、偏光レンズ素子6では、ガラス基板21の両面に偏光レンズ14、及び、偏光レンズ15を形成しているが、ブレーズホログラムの形状が異なるだけで、上記と同様のプロセスを用いて作成することができる。
また、偏光レンズ14及び偏光レンズ15では、ブレーズホログラムの形状はいわゆる鋸歯状であるが、階段状のものであってもよい。一般的なホログラムレンズの設計方法により設計することができる。さらには、回折を利用したホログラムレンズではなく、屈折タイプのものであってもよい。その場合、ブレーズホログラムレンズと同様に複屈折性を有する高分子液晶材料や水晶などの材料をエッチングや研磨プロセスで形状を作成し、一方の屈折率と一致した屈折率を有する等方性材料を充填させて構成すればよい。但し、本実施の形態でブレーズホログラムレンズとしたのは、屈折型の偏光レンズに比べて、光軸方向の厚みをより薄くできるからである。
また、光ピックアップ装置100では、偏光レンズ素子6は、平行光で入射した光が平行光で出射するように、偏光レンズ14と偏光レンズ15との焦点距離、及び、レンズ間隔(すなわち、ガラス基板21の厚み)が設定されていることが好ましい。以下にその理由を、図8を参照して、説明する。図8は、偏光レンズ素子6として、非平行光の光ビームが出射するように設計した場合における、光ピックアップ装置101の各部材を透過する光ビームの偏光方向の状態を示した断面図であり、図8(a)は、往路を示し、図8(b)は、復路を示す。
図8(a)に示すように、光ピックアップ装置101では、偏光レンズ素子36に入射した平行光が発散光として出射されるように、偏光レンズ14と偏光レンズ15との焦点距離やレンズ間隔が設定されている。この場合、図8(b)に示すように、光ディスク12からの戻り光ビームの復路において、偏光レンズ素子36から出射した戻り光ビームは、集束光となって整形プリズム4に向かう。
ここで、整形プリズム4に集束光が入射することにより、コマ収差や非点収差が発生ししてしまう。このため、光源13にて受光される戻り光ビームの集光ビーム径が広がってしまい、サーボ信号検出に問題が生ずる。
また、光ピックアップ装置101では、光源13に到達するまでに、戻り光ビームが集光してしまい、光源13内に備えられた受光素子に到達する戻り光ビームは発散光となる。このため、サーボ信号やRF信号検出に問題が生ずる。このことは、光ピックアップ装置101において、整形プリズム4を使用しない場合でも同じような問題が生ずる。したがって、光ピックアップ装置101では、光源13として、例えば、ホログラムレーザ光源のような光源と受光素子とが一体となった受発光素子を用いることが困難になる。
これに対して、光ピックアップ装置100では、偏光レンズ素子6は、平行光で入射した光が平行光で出射するように、偏光レンズ14と偏光レンズ15との焦点距離、及び、レンズ間隔が設定されている。このため、光ディスク12として高密度光ディスク20と低密度光ディスク30とのいずれを使用した場合においても、往路と復路との何れか一方において偏光レンズ素子6はレンズとして機能しないにもかかわらず、光ディスク12として高密度光ディスク20と低密度光ディスク30とのいずれを使用した場合においても、戻り光ビームの復路において、偏光レンズ素子6から出射した戻り光ビームは、平行光の状態で、整形プリズム4に入射する。このため、光源13として、ホログラムレーザ光源などの光源と受光素子が一体となった受発光素子が使用可能となる。
一般に、光源13としてのホログラムレーザ光源に配置されている受光素子は、レーザー(半導体レーザー1)と光軸方向であるZ方向とがほぼ同じ位置になるように配置されている。これにより、一体化されたパッケージ内に光源と受光素子を配置することが可能となっている。
以上のように、偏光レンズ素子6は、平行光で入射した光が平行光で出射するように、偏光レンズ14と偏光レンズ15との焦点距離、及び、レンズ間隔が設定されているので、ホログラムレーザ光源などのレーザーと受光素子が一体となった受発光素子が使用可能となる。また、図8(a)に示すように、偏光レンズ素子36が発散光束中、または、集束光束中に配置されている場合、コマ収差等の発生により、X・Y面内の位置調整精度が厳しくなる。しかしながら、光ピックアップ装置100では、偏光レンズ素子6のX、Y面内の位置調整精度を緩和することができる。
(2)光源13の具体的構成とその信号検出方法
次に、図9及び図10を参照して、光源13の構成及びその信号検出方法について、以下に説明する。図9は、光源13の概略構成を示す断面図である。
図9に示すように、光源13は、レーザパッケージ31とホログラム素子2とを備えている。レーザパッケージ31の出射面には、ホログラム素子2が設けられている。またレーザパッケージ31内には、半導体レーザー1と、フォトディテクタが配置された受光素子28とが配置されている。また、ホログラム素子2の出射面には、3分割ホログラム2aが形成されており、ホログラム素子2の出射面と反対側の面には、3ビーム発生用回折格子2bが形成されている。また、レーザパッケージ31の出射面と反対側の面には、ピン端子31aが形成されており、ピン端子31aは、信号検出部(信号検出手段)62と接続している。
光ディスク12からの戻り光ビームは、ホログラム素子2の3分割ホログラム2aにて回折されて、受光素子28にて受光される。そして、受光素子28にて、受光された戻り光ビームの電気信号がピン端子31aから出力される。そして、信号検出部(信号検出手段)62は、この電気信号の出力により、ラジアル誤差信号(RES信号)、フォーカス誤差信号(FES)、及び、再生信号(RF信号)と再生信号をもとにした球面収差の調整用の信号を検出する。なお、上記電気信号を出力することができるピン端子31aの数は、レーザパッケージの設計等により、適宜設定しうる。
以下、上記各種信号の生成方法について、図10を参照にして説明する。図10は、ホログラム素子2に形成された3分割ホログラム2a、及び、受光素子28を、光源13が光ビームを出射する側からみた平面図であり、図10において左側は、3分割ホログラム2aの平面図であり、右側は、受光素子28の平面図である。
なお、図10では、フォトディテクタa〜hで受光される光スポットパターンが半円形、あるいは、4分の1円形となっているが、これは、3分割ホログラム2aの各領域と受光素子28の各フォトディテクタとの関係を理解しやすくするためであり、実際には、ほぼ集光された光がフォトディテクタa〜hに入射するように設計されている。
3分割ホログラム2aは、図10に示すように、領域291〜293に3分割されている。それぞれの領域は、光ディスクのラジアル方向に相当する分割線L1により、領域291と他の領域(292+293)とに2分割され、さらに、分割された領域は、光ディスクのタンジェンシャル方向に相当する分割線L2により、領域292と領域293とに2分割されている。
また、受光素子28は、図10に示すように、受光部R291〜R293を備えている。これらの受光部は、領域291〜293にて回折された戻り光ビームを受光する。受光部R291は、フォトディテクタa及びbからなる2分割フォトディテクタであり、領域291にて回折した戻り光ビームを受光する。また、受光部R292は、フォトディテクタc〜eからなり、領域292にて回折した戻り光ビームを受光する。さらに、受光部R293は、フォトディテクタf〜hからなり、領域293にて回折した戻り光ビームを受光する。フォトディテクタa〜hから出力された電気信号を、それぞれVa〜Vhとすると、ラジアル誤差信号(RES信号)、フォーカス誤差信号(FES)、及び、再生信号(RF信号)は、下記演算式により検出される。
FES=Va−Vb・・・・(18)
RES(DPP)=Phase{(Vd−Vg)}・・・・・(19)
RES(DPD)=(Vd−Vg)−k{(Vc−Vf)+(Ve−Vh)}・・・(20)
RF=Va+Vb+Vd+Vg・・・・・(21)
なお、上記演算式(18)〜(21)において、「Phase」は出力された電気信号波形間の位相差の出力のことを意味し、また、定数kは往路において3ビーム発生用回折格子29bで回折された0次回折光を3分割ホログラム2aで回折した光ビームを受光素子で受光し得られた出力より演算されたプッシュプル信号(Vd−Vg)と、±1次回折光を受光素子で受光し得られた出力より演算されたプッシュプル信号の和((Vc−Vf)+(Ve−Vh))との出力比を意味する。
受光部R291から出力された電気信号の差動出力より、フォーカス誤差信号(FES信号)が検出される。なお、ここでは、ホログラムパターンを利用した、ナイフエッジ法によってフォーカス誤差信号の検出を行っている。また、3ビーム発生用回折格子29bは、往路の光ビーム、すなわち半導体レーザー1から出射された光ビームを、0次回折光、及び、±1次回折光に回折する。このため、受光部R291は、3ビーム発生用回折格子29bにて回折された往路の光ビームのうち、±1次回折光も受光することになる。受光部R291では、これらの±1次回折光は、フォトディテクタa及びbのタンジェンタル方向に相当する方向に入射するようになる。しかしながら、フォーカス誤差信号の検出では、±1次回折光を検出信号として利用することがなく、0次回折光を検出信号として利用する。このため、受光部R291において、上記±1次回折光が入射する位置に、フォトディテクタが配置されていない。
また、受光部R292及びR293から出力された電気信号を、上記演算式(14)または(15)に基づいて、演算処理することにより、ラジアル誤差信号(RES信号)が検出される。なお、ここでは、DPP法、または、DPD法により、ラジアル誤差信号を検出している。3ビーム発生用回折格子29bは、上記のように、往路の光ビームを0次回折光、及び、±1次回折光に回折する。ラジアル誤差信号を検出する場合、3ビーム発生用回折格子29bにて回折された0次回折光、及び、±1次回折光を検出信号として利用する。このため、受光部R292では、0次回折光を受光するフォトディテクタとして、フォトディテクタdが、±1次回折光を受光するフォトディテクタとして、フォトディテクタc及びeが配置されている。また、受光部R293についても同様に、0次回折光を受光するフォトディテクタとして、フォトディテクタgが、±1次回折光を受光するフォトディテクタとして、フォトディテクタf及びhが配置されている。
また、再生信号(RF信号)は、上記演算式(16)に基づいて、フォトディテクタa、フォトディテクタb、フォトディテクタd、及び、フォトディテクタgから出力された信号の和として検出される。
また、球面収差の調整はRF信号をもとに、次のような方法で検出している。受光素子28で検出されたRF信号の振幅は球面収差量の影響を受ける。すなわち、球面収差量が大きいと、RF信号の振幅は小さくなり、球面収差量が小さいと、RF信号の振幅は大きくなる。そこで、本実施の形態では、制御手段により駆動手段を制御し、球面収差補正素子であるビームエキスパンダーを構成する2つのレンズの一方を光軸方向に移動させ、RF信号振幅が最大となるように調整している。
また、本実施形態においては、フォーカス誤差信号の検出方法として、ナイフエッジ法を用いているが、これに限定されるものではない。例えば、フォーカス誤差信号の検出方法として、非点収差法を適用してもよい。
ナイフエッジ法や非点収差法を用いる場合、ビームサイズ法(スポットサイズ法ともいう)を用いる場合に比べて次の理由から望ましい。なお、ここでいうビームサイズ法とは、対物レンズと光ディスクとの相対位置の変化に応じて、受光素子上のビームサイズが変化することを利用して、フォーカス誤差信号を検出する方法である。
光ピックアップ装置100のように、2つの異なる種類の光ディスクに対応して、1つの対物レンズを異なる開口数で使用しており、さらに、復路において偏光レンズ素子によるビーム径の縮小作用が異なる(一方の光ディスクの場合には偏光レンズ素子の前後でビーム径は変化さず、他方では変化する)ため、戻り光の光束径も異なる。それゆえ、戻り光の光束径そのものが異なる場合には、対物レンズと光ディスクとの相対位置関係が適切であっても、2つの光ディスクのいずれか一方に適切に設計された受光素子の場合、他方の光ディスクに対してはデフォーカス(フォーカスオフセットとも言う)として検出してしまう恐れがある。この問題を回避する方法としては、例えば、5分割のフォトディテクタを用い、戻り光の光束径が大きい高密度光ディスクの場合には5分割のフォトディテクタを全て使用し、戻り光の光束径が小さい低密度光ディスクの場合には内側の3分割のフォトディテクタを利用する方法が挙げられる。
このように5分割フォトディテクタを用いてフォーカス誤差信号を検出する光源について、図11を参照して、以下に説明する。図11は、5分割フォトディテクタを用いてフォーカス誤差信号を検出する光源213の概略構成を示す断面図である。
図11に示すように、光源213は、レーザパッケージ231とホログラム素子32とを備えている。レーザパッケージ231内には、半導体レーザー1と、フォトディテクタが配置された受光素子38a及び38bが配置されている。また、ホログラム素子32の出射側の面には、3分割ホログラム32aが形成されており、ホログラム素子32の出射面と反対側の面には、3ビーム発生用回折格子32bが形成されている。
光ディスク12からの戻り光ビームは、ホログラム素子32の3分割ホログラム32aにて回折されて、受光素子38a及び38bにて受光される。3ビーム発生用回折格子32bは、往路の光ビーム、すなわち半導体レーザー1から出射された光ビームを、0次回折光、及び、±1次回折光に回折する。受光素子38aは、3分割ホログラム32aにて回折された往路の光ビームのうち、+1次回折光を受光する。一方、受光素子38bは、−1次回折光を受光する。図11に示すように、光源213は、3分割ホログラム32aにより回折された±1次回折光の集光点の位置が、受光素子38a及び38bに対して、光軸方向にずれた位置となるように設定された構成である。
そして、光源213では、受光素子38a及び39bにて、受光された戻り光ビームの電気信号が出力される。光源213では、この電気信号の出力を演算することにより、ラジアル誤差信号(RES信号)、フォーカス誤差信号(FES)、及び、再生信号(RF信号)が検出される。
以下、光源213におけるフォーカス誤差信号の生成方法について、図12を参照にして説明する。図12は、ホログラム素子222に形成された3分割ホログラム32a、及び、+1次回折光を受光する受光素子38aを、光源213の出射側からみた平面図であり、図12において左側は、3分割ホログラム32aの平面図であり、右側は、受光素子38aの平面図である。なお、受光素子38aは、図10に示した受光素子28と異なり、フォトディテクタ上のビームのサイズは、実際のビームサイズを反映した平面図となっている。これは、よりビームの大きさの違いをより理解しやすくするためのものである。
すなわち、図12では、ラジアル誤差信号を検出するフォトディテクタに入射する集光ビームは、実際のように集光されているように小さな点で描いており、また、フォーカス誤差信号を検出する5分割のフォトディテクタに入射する光ビームも実際のように大きな半円として描いている。
3分割ホログラム32aは、図12に示すように、領域391〜393に3分割されている。それぞれの領域は、光ディスクのラジアル方向に相当する分割線L1により、領域391と他の領域(392+393)とに2分割され、さらに、分割された領域は、光ディスクのタンジェンシャル方向に相当する分割線L2により、領域392と領域393とに2分割されている。
また、受光素子38aは、図12に示すように、受光部R391〜R393を備えている。これらの受光部は、領域391〜393にて回折された戻り光ビームのうち、+1次回折光を受光する。受光部R391は、フォトディテクタa’〜f’からなる5分割フォトディテクタであり、領域391にて回折した戻り光ビームを受光する。また、受光部R392は、フォトディテクタg’〜i’からなり、領域392にて回折した戻り光ビームを受光する。さらに、受光部R393は、フォトディテクタj’〜l’からなり、領域393にて回折した戻り光ビームを受光する。
また、図12では、受光部R391のフォトディテクタa’〜f’において点線で示した光スポットは、高密度光ディスクからの戻り光ビームに対応した光スポットである。一方、実線で示した光スポットは、低密度光ディスクからの戻り光ビームに対応した光スポットである。すなわち、点線で示した光スポットは、使用する2種類の光ディスクのうち、対応する開口数が大きい対物レンズ11を使用した場合における戻り光ビームの光スポットであり、実線で示した光スポットは、対応する開口数が小さい対物レンズ11を使用した場合における戻り光ビームの光スポットである。
このように、対応する対物レンズの実効的な有効径、あるいは、開口数が異なる2種類の光ディスクを用いる場合、受光部R391のフォトディテクタa’〜f’上に集光する光スポットの大きさが異なる。このため、光源213による検出方法では、開口数の大きさに応じて、演算方式を切り替えるという工夫を行っている。光源213では、フォトディテクタa’〜e’から出力された電気信号を、それぞれV2a’〜V2e’とすると、フォーカス誤差信号(FES)は、下記演算式により検出される。
対応する開口数が大きい場合(高密度光ディスクを用いた場合)
FES=(V2a’+V2b’+V2c’)−(V2d’+V2e’)・・・・・・(22)
対応する開口数が小さい場合(低密度光ディスクを用いた場合)
FES=(V2a’)−(V2b’+V2c’+V2d’+V2e’)・・・・・・(23)
すなわち、高密度光ディスクを用いる場合、受光部R391の5分割フォトディテクタのうち、内側にあるフォトディテクタa’〜c’からの出力と、フォトディテクタa’〜c’の外側にあるフォトディテクタd’及びe’からの出力との差をフォーカス誤差信号としている。一方、低密度光ディスクを用いる場合、受光部R391の5分割フォトディテクタのうち、中心にあるフォトディテクタa’からの出力と、フォトディテクタa’の外側にあるフォトディテクタb’〜e’からの出力との差をフォーカス誤差信号としている。
このように、光源213では、受光部R391のフォトディテクタの数を増やし、対物レンズの開口数の大きさ、すなわち戻り光ビームの光束径の大きさに応じて、フォーカス誤差信号を検出するための演算式を切り替えている。こうすることで、戻り光の光束径そのものが異なる場合に、対物レンズと光ディスクとの相対位置関係が適切であっても、デフォーカスとして検出してしまうことがない。また、フォーカス誤差信号検出を行う出力を得るフォトディテクタを切り替えるなどの制御ならびに回路が不要である。しかしながら、受光部R391のフォトディテクタの数が増えると、全てのフォトディテクタからの出力信号の和として再生信号(RF信号)が検出されるため、各フォトディテクタからの信号の遅延差などの影響により信号がエラーデータとして検出される恐れがある。それゆえ、フォーカス誤差信号を検出する受光部R391のフォトディテクタの数としては、より少ない方が好ましい。
また、非点収差法によりフォーカス誤差信号を検出する場合、光ピックアップ装置は、図13に示すように、復路の戻り光ビームを分離してフォーカス誤差信号を検出するような構成であってもよい。
図13に示すように、光ピックアップ装置102は、偏光ビームスプリッタ32と、複合レンズ33と、受光素子34とを備えている。偏光ビームスプリッタ32と受光素子34との間に、複合レンズ33が配置されている。
偏光ビームスプリッタ32は、光ディスク12からの戻り光ビームを分離する。また、複合レンズ33は、凸レンズとシリンドリカルレンズとからなり、偏光ビームスプリッタ32にて分離された戻り光ビームを受光素子34へ導く。受光素子34は、田の字型の4分割フォトディテクタを備えており、入射する戻り光ビームを受光する。そして、光ピックアップ装置102では、受光素子34の4分割フォトディテクタからの出力に基づいて、フォーカス誤差信号が検出される。
上述のように、ナイフエッジ法や非点収差法の場合、ビームサイズ法と異なりビームのサイズに依存してフォーカス誤差信号を検出するわけではないため、フォトディテクタで受光するビームの大きさの影響によりオフセットを発生することがなく、より好ましい。
また、本願発明では光源として半導体レーザーを使用した。半導体レーザーから出射される光にはRINノイズなどとよばれる出力変動ノイズがあり、一般的には低出力の場合にRINノイズは大きく、高出力になることにより小さくなる。光ピックアップ装置に使用される半導体レーザーのRINノイズの許容値としては−125dB/Hz^(1/2)、あるいは、−130dB/Hz^(1/2)以下であることが望まれているが、現在開発されている青紫半導体レーザーでは再生時、すなわち、低出力(1〜6mW程度)時に上記ノイズの許容値を超えてしまう場合がある。そのような場合には、光の結合効率をわざと悪くすることで再生時の出力を増やし、RINノイズを低減する方法がとられる場合がある。その場合には逆に記録時に大きな出力が必要となり、半導体レーザー開発の課題となっている。
このような場合において、例えば、光ピックアップ装置に使用する集光手段である対物レンズとして1つの種類の有効径のみを有するものを使用し、本願発明の偏光レンズ素子により、対物レンズに入射する光束径を変化させることにより、光記録媒体の情報再生時と情報記録時とで光の結合効率を変化させることが可能になる。
すなわち、光記録媒体の情報再生時に、偏光レンズ素子から出射される直線偏光の中で光束径が相対的に大きい直線偏光を利用することで、Rim強度が大きくすることが可能になる。そして、Rim強度を大きくすることにより、光の結合効率が低くなる。このように、光記録媒体の情報再生時に低い光の結合効率とすることで、より高い出力で半導体レーザーを発光させて、ノイズを低減させることが可能になる。また、光記録媒体の情報記録時に、偏光レンズ素子から出射される直線偏光の中で光束径が相対的に小さい直線偏光を利用することで、Rim強度を小さくすることが可能になる。そして、Rim強度を小さくすることにより、光の結合効率が高くなる。このように、光記録媒体の情報記録時に高い光の結合効率とすることで、半導体レーザーの最大出力を低減することが可能となる。
このように、情報再生時には結合効率を低く、情報記録時には高くすることで、半導体レーザーとしてより低出力なものでも記録パワーを確保することが可能となる。
なお、上記の効果は対物レンズとして1つの有効径を有するものに限らない。本実施形態で使用した互いに実効的に異なる有効径を1つの対物レンズにおいて有するものであってもよいし、さらには2つの対物レンズを備えた光ピックアップ装置において、それぞれ有効径が異なる対物レンズであってもよい。
すなわち、上記集光手段において、相対的に大きい実効的な有効径が、偏光レンズ素子から出射される直線偏光の中で光束径が相対的に大きい直線偏光に対応している場合、光記録媒体が、対物レンズにおける対応する実効的な有効径が異なる複数種類の光記録媒体から選択され、その複数種類の光記録媒体のうち、対応する実効的な有効径が相対的に大きい光記録媒体に対して、情報再生時に集光する光が、上記偏光レンズ素子から出射される直線偏光の中で光束径が相対的に大きい直線偏光に対応し、かつ、情報記録時に集光する光が上記偏光レンズ素子から出射される直線偏光の中で光束径が相対的に小さい直線偏光に対応していてもよい。
また、上記集光手段において、相対的に小さい実効的な有効径が、偏光レンズ素子から出射される直線偏光の中で光束径が相対的に大きい直線偏光に対応している場合には、光記録媒体がそれぞれ、対物レンズにおける対応する実効的な有効径が異なる複数種類の光記録媒体から選択され、その複数種類の光記録媒体のうち、対応する実効的な有効径が相対的に小さい光記録媒体に対して、情報再生時に集光する光が、上記偏光レンズ素子から出射される直線偏光の中で光束径が相対的に大きい直線偏光に対応し、かつ、情報記録時に集光する光が上記偏光レンズ素子から出射される直線偏光の中で光束径が相対的に小さい直線偏光に対応していてもよい。
(3)偏光方向切替素子
また、光ピックアップ装置100では、偏光レンズ素子6と光源13との間に、偏光方向切替素子としてTN型の液晶素子5が設けられている。これにより、光源13から出射した所定方向の直線偏光を、2方向の直線偏光に変換させることが可能になる。
上記偏光方向切替素子としては、所定方向と他の方向の2方向の直線偏光の光を切り替えて偏光レンズ素子6に入射させるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、図14に示すような構成であっても、所定方向と他の方向の2方向の直線偏光の光を切り替えて偏光レンズ素子6に入射させることが可能になる。以下に、別の構成の偏光方向切替素子を備えた光ピックアップ装置について、説明する。
図14に示すように、光ピックアップ装置103は、光源13a・13bという2つの光源を備えた構成である。そして、光ピックアップ装置103は、コリメートレンズ3a・3b、整形プリズム4a・4b、ビームスプリッタ42、及び、光源照射制御部43を備えている。
光ピックアップ装置103では、光源13aと光源13bとから出射した光ビームの偏光方向が、互いに直交方向となるように、配置されている。すなわち、光ピックアップ装置103では、光源13aは、X方向の直線偏光を出射する一方、光源13bは、Y方向の直線偏光を出射する。また、光源照射制御部43は、適用する光ディスク12の種類に応じて、光源13aと光源13bとの何れかを発光させるかを制御する。あるいは必要とされる光束径に応じて、2つの光源の何れを発光させるかを制御する。例えば、記録と再生において結合効率を切り替える場合には、記録時と再生時で発光させる光源を切り替える。
光ピックアップ装置103では、光源13aから出射した光ビーム(X方向の直線偏光)は、コリメートレンズ3a及び整形プリズム4aを経て、ビームスプリッタ42を通過して、偏光レンズ素子6に入射する。一方、光源13bから出射した光ビーム(Y方向の直線偏光)は、コリメートレンズ3b及び整形プリズム4bを経て、ビームスプリッタ42にて、反射されて偏光レンズ素子6へ入射する。そして、光源照射制御部43が、光ディスク12の種類に応じて、光源13a及び光源13bの何れを発光させるかを制御することで、偏光レンズ素子6に入射する光ビームの偏光方向を切り替えることが可能になる。
また、光ピックアップ装置103は、光源13a・13bが、同一の偏光方向の直線偏光を出射するような構成であってもよい。この場合、光ピックアップ装置103には、光源13a・13bから出射する光ビームの何れか一方について、偏光方向を回転させるようなλ/2波長板が設けられている。
しかしながら、上述のように、偏光方向切替素子として2つの光源を備えた構成よりも、偏光方向切替素子としてTN型の液晶素子5を備えた構成のほうが、構成する部品点数も少なく、低コストであり、また、光ピックアップ装置の小型化にも有利である。それゆえ、偏光方向切替素子は、TN型の液晶素子5であることがより好ましい。
また、偏光方向切替素子としては、上記構成のほかに、ファラデーローテータなどを使用することが可能である。しかしながら、ファラデーローテータよりも、液晶素子の方が透過率が高いため、結合効率の向上に有利である。また、小型であることから、光ピックアップの小型化に有利である。
(4)球面収差補正素子
通常、対物レンズ11は、所定の厚みのカバーガラスを透過した集光スポットにおいて、球面収差が小さくなるように設計されている。より厳密には、球面収差は、光ディスク12のカバーガラスを構成する硝材の屈折率にも影響される。このため、対物レンズ11は、カバーガラスを構成する硝材の屈折率も考慮に入れて、設計される。
一方、対物レンズ11を設計するときに想定したカバーガラスの厚み、または、構成する硝材の屈折率とは異なる光ディスクを適用した場合、光ディスク12の記録層に集光した光スポットには球面収差が発生する。この球面収差(3次の球面収差)は、カバーガラス厚み誤差、または、屈折率誤差に対して、開口数の4乗に比例する。このため、この球面収差は、対物レンズ11の開口数が大きくなるにつれて、その影響が大きくなる。
また、単一の記録層を有する光ディスクを想定して対物レンズ11を設計する場合には、光ディスクのカバーガラスの厚み誤差が対象となる。しかしながら、2つの記録層を有する光ディスクの場合には、2つの記録層の間の中間層の厚みも、球面収差を発生させる要因となる。例えば、2つの記録層を有する光ディスクとして、図1に示す光ディスク12が挙げられる。
図1に示すように、光ディスク12は、第1記録層12aと第2記録層12bとを備えている。光ディスク12において、対物レンズ11側の面に近いほうから、第1記録層12a、及び、第2記録層12bの順で形成されている。また、第1記録層12aと第2記録層12bとの間に、中間層12cが形成されている。光ディスク12の第1記録層12aに集光した光スポットの球面収差が小さくなるように、対物レンズ11が設計されている場合、光ディスク12の第2記録層12bに光ビームを集光すると球面収差が発生する。この球面収差の量が大きい場合、光ディスク12に記録された信号を再生するに際し、エラーレートが悪化するなどの影響がある。このため、第1記録層12a及び第2記録層12bにおける球面収差量は、信号の記録、または、再生に問題がない程度に低減する必要がある。
光ピックアップ装置100では、ビームエキスパンダーを使用することにより、カバーガラスの厚み誤差、2つの記録層の間の中間層の厚み、あるいは、それらの屈折率誤差により発生する球面収差を補正している。
以下に、光ピックアップ装置100におけるビームエキスパンダー7の構成について、図1を参照して説明する。
図1に示すように、ビームエキスパンダー7は、凹レンズ16と凸レンズ17とからなる。凹レンズ16は光源13側に配置されており、凸レンズ17は対物レンズ11側に配置されている。このため、ビームエキスパンダー7は、光源13側から入射した光ビームの光束を拡大して出射するような構成となっており、凹レンズ16と凸レンズ17とのレンズ間隔を調整することで、光ディスク12に発生する球面収差を補正するようになっている。また、ビームエキスパンダー7の基準の状態では、光源13側から入射した平行光が、対物レンズ11側へ平行光で出射されるように、凹レンズ16と凸レンズ17との焦点距離やレンズ間隔が設定されている。
また、ビームエキスパンダー7は、凹レンズ16と凸レンズ17とのレンズ間隔を変化させることで、対物レンズ11側に、発散光あるいは集束光を出射させることができる。このような発散角度を有する光ビームを対物レンズ11へ入射させることにより、光ディスク12のカバーガラス厚の誤差による球面収差を補正することができる。
また、対物レンズ11は、平行光が入射し、かつ、第1記録層12aと第2記録層12bとの間のほぼ中央付近、すなわち、中間層12cの中央付近に光ビームを集光したときに、発生する球面収差が、高密度光ディスクで最も小さくなるように設計されている。このため、光ディスク12が高密度光ディスクである場合、第1記録層12aに光ビームを集光した場合、ビームエキスパンダー7は、凹レンズ16と凸レンズ17とのレンズ間隔を広げることで、集束光を対物レンズ11に入射させて、球面収差を補正している。また、第2記録層12bに光を集光する場合には、ビームエキスパンダー7は、凹レンズ16と凸レンズ17とのレンズ間隔を狭くすることで、発散光を対物レンズ11に入射させて、球面収差を補正している。
一方、光ディスク12が高密度光ディスクよりカバーガラス厚が厚い、低密度光ディスクである場合、対物レンズ11に設けられた段差の効果により、実効的な開口数を制限しているため、低密度光ディスクに集光される光ビームにおける球面収差も低減されている。しかし、対物レンズ11は高密度光ディスクの中間層の中央付近に光ビームを集光したときに発生する球面収差が小さくなるように設計されているため、低密度光ディスクに備えられた2つの記録層のいずれに光ビームを集光させた場合でも、オーバーな球面収差が発生する。よって、低密度光ディスクの記録層に光を集光させる際には、ビームエキスパンダー7は凹レンズ16と凸レンズ17とのレンズ間隔を狭くすることで、発散光を対物レンズ11に入射させて、球面収差を低減させることが可能である。
なお、ここでは、対物レンズ11が、高密度光ディスクで、中間層12cの中央付近での球面収差が最も小さくなる設計されていたが、これに限定されるものではなく、その他の方法で設計された対物レンズあってもよい。
本実施の形態のように、低密度光ディスクは、高密度光ディスクに比べてカバーガラスの厚みが厚い光ディスクとなっていることが多い。このため、実効的な開口数を小さくしても、残存する球面収差が大きく、かつ、オーバーな球面収差となる場合がある。本実施の形態ではより薄いカバーガラス厚を有する高密度光ディスクの2つの記録層の中間層において球面収差が小さくなるような対物レンズを使用したが、例えば、対物レンズ11は、低密度光ディスクの第1記録層12aに集光する光ビームの球面収差が最も小さくなるように設計されていてもよい。この場合、ビームエキスパンダー7の凹レンズ16と凸レンズ17とのレンズ間隔を狭くして、対物レンズ11に発散光を入射されることで、低密度光ディスクの他の第2記録層12bに光を集光した光ビームの球面収差を補正することができ、また、高密度光ディスクの2つの記録層に集光された光ビームの球面収差を補正するためには、凹レンズ16と凸レンズ17とのレンズ間隔を広くして、収束光を対物レンズ11に入射させればよい。
さらに、対物レンズ11は、低密度光ディスクの第1記録層12aと高密度光ディスクの第2記録層12bの間のいずれかの位置に光を集光した光ビームの球面収差が小さくなるように設計されていてもよい。この場合には、ビームエキスパンダー7が、凹レンズ16と凸レンズ17とのレンズ間隔を狭くして、対物レンズ11に発散光を入射されることで、低密度光ディスクの第1記録層12aまたは第2記録層12bに光を集光した光ビームの球面収差を補正することができる。また、凹レンズ16と凸レンズ17とのレンズ間隔を広くして、対物レンズ11に発散光を入射されることで、高密度光ディスクの第1記録層12aまたは第2記録層12bに光を集光した光ビームの球面収差を補正することができる。
球面収差補正素子としては、上述のビームエキスパンダー7に限定されるものではなく、従来公知の球面収差補正素子であれば、光ピックアップ装置100に適用することが可能である。例えば、球面収差補正素子としては、液晶素子を備えたものが挙げられる。
以下に、液晶素子を備えた液晶型球面収差補正素子の構成について、図15を参照にして説明する。図15は、液晶型球面収差補正素子47の概略構成を示す平面図である。
液晶型球面収差補正素子47は、一対のガラス基板で液晶層が狭持されている液晶素子44と、電極パターン45とを備えている。電極パターン45は、液晶素子44の一対のガラス基板一方に設けられている。また、液晶素子44は、電界複屈折型の液晶素子である。電極パターン45は、図15に示すように、円環状の電極パターンを有している。
液晶型球面収差補正素子47では、補正する球面収差量に応じて電極パターン45に印加する電圧を変化させている。これにより、液晶素子44を透過する光の波面に位相分布が生じ、球面収差が補正される。
このように、光ピックアップ装置100では、液晶型球面収差補正素子47を球面収差補正素子として用いることが可能である。しかしながら、光ピックアップ装置100では、ビームエキスパンダー7のように、2つのレンズの間隔を変化させることにより球面収差を補正するものがより好ましい。以下に、この理由を説明する。
上記電極パターン45には、入射する光ビームの光束径に対応した円環状の電極パターンが形成されている。それゆえ、対応する光束径、あるいは、開口数が互いに異なる、2種類の光ディスクで発生する球面収差を補正するためには、電極パターン45に、開口数の大きさに応じて2種類の光束径に対応した電極パターンを形成しなければならない(図15には1種類の光ディスクに対応した電極パターンのみ記載しているが、2種類の光ディスクに対応するためには相似形状の電極パターンがもう一組必要となる)。このため、電極パターン45の電極パターンの本数が増加してしまい、この電極パターンに対して、外部の電源から電流を供給するために電極パターンに接続する給電ワイヤーの本数も増加するという問題がある。また、電極パターンにより光が遮光されるため透過率が低下するなどのデメリットがある。
また、液晶素子44を透過する光ビームに大きな位相分布を発生させるために、液晶素子44の液晶層の厚みを大きくする必要がある。液晶素子44の応答時間は、液晶層の厚みの2乗に比例して長くなる。このため、液晶型球面収差補正素子47の中には、発生させる位相差量を低減させるために、発生させる位相分布W(ρ)を下記(24)式で与えられるような波面に近似したようなものがある。
W(ρ)=6ρ^4−6ρ^2+1・・・・・(24)
ρは電極パターンの中心から径方向の距離をあらわす。
一方、球面収差補正素子としてビームエキスパンダー7を用いた場合、ビームエキスパンダー7で発生する位相分布W(ρ)が下記(25)式で近似されるような波面となっている。
W(ρ)=2ρ^2−1・・・・・(25)
上記(24)式の波面の場合には対物レンズ11中心と液晶素子の電極パターン45の中心とがずれることによるコマ収差の発生量が大きく、対物レンズ11がラジアル方向に駆動された場合に問題となる。また、球面収差補正素子として液晶型球面収差補正素子47を用いた場合、液晶素子44は、対物レンズ11と一体的に駆動されるように対物レンズホルダーに搭載されることが多い。このため、駆動される部分から固定部(駆動されない部分)に対して、多くの給電ワイヤーが締結されている。それゆえ、対物レンズホルダーの可動部の周波数特性に影響を与える恐れがある。
これに対して、ビームエキスパンダー7は、凹レンズ16と凸レンズ17とのレンズ間隔を変化させることで球面収差を補正するので、異なる光束径の光であっても特に問題なく使用できる。それゆえ、球面収差補正素子としては、液晶型球面収差補正素子47よりもビームエキスパンダー7がより好ましい。
また、ビームエキスパンダー7は、凹レンズと凸レンズからなる構成であるが、これに限定されるものではなく、2つの凸レンズからなる構成であってもよい。以下に、図16を参照して、2つの凸レンズからなるビームエキスパンダー57について説明する。
図16に示すように、ビームエキスパンダー57は、凸レンズ516と凸レンズ517とを備えている。凸レンズ516は光源13側に配置されており、凸レンズ517は対物レンズ11側に配置されている。ビームエキスパンダー57は、光源13側から入射した光ビームの光束を拡大して出射するような構成となっており、凸レンズ516と凸レンズ517とのレンズ間隔を調整することで、光ディスク12に発生する球面収差を補正するようになっている。また、ビームエキスパンダー57の基準の状態では、光源13側から入射した平行光が、対物レンズ11側へ平行光で出射されるように、凸レンズ516と凸レンズ517との焦点距離やレンズ間隔が設定されている。
また、ビームエキスパンダー57は、凸レンズ516と凸レンズ517のレンズ間隔を変化させることで、対物レンズ11側に、発散光あるいは集束光を出射させることができる。このような発散角度を有する光ビームを対物レンズ11へ入射させることにより、光ディスク12のカバーガラス厚の誤差による球面収差を補正することができる。
以上のように、球面収差補正素子は、複数の記録層を有する光ディスクの場合でも球面収差を補正することができ、さらに、対応する開口数の異なる対物レンズを使用し、カバーガラス厚の異なる光ディスクを使用する場合であっても、球面収差を補正することが可能であるため、記録・再生における信号品質を高めることが可能となる。
また、球面収差補正素子は、出射光束の発散度を変化させて球面収差を補正している。また、この球面収差補正素子は偏光レンズ素子6と対物レンズ11との間に配置されている。このため、光ピックアップ装置100では、往路・復路ともに、偏光レンズ素子6に平行光を入射させることができる。2つのレンズから構成されるビームエキスパンダー方式の球面収差補正素子だけではなく、液晶素子方式の場合でも、作用する偏光方向が互いに直交する2つの液晶素子を使用し、さらに、液晶素子と対物レンズの間にλ/4波長板を用いることにより上記作用を実現することができる。
球面収差補正素子を偏光レンズ素子より光源側に配置した場合、光ディスクの記録層に集光した光ビームにおける球面収差を補正するために、球面収差補正素子から光ディスクに向かう光は発散光、あるいは、収束光となるが、例えば、光ピックアップ装置100では、光ビームの往路において、発散光が偏光レンズ素子6に入射し、偏光レンズ素子6のレンズ効果により光束径の拡がった発散光が偏光レンズ素子から出射された場合、光ディスクからの戻り光に対しては、偏光レンズ素子はレンズ効果を有しないので、球面収差の補正量に応じて偏光レンズ素子を通過した光の集光点位置が光軸上で変化するため、フォーカス誤差信号検出においてオフセットが発生する。本実施形態の構成ではフォーカス誤差信号におけるオフセットの発生を防止することができる。従って、球面収差補正素子を偏光レンズ素子と対物レンズとの間に配置することが望ましい。
(5)適用可能な光ディスク
また、光ディスク12として、2つの記録層を有する光ディスクについて説明したが、光ピックアップ装置100に適用されうる光ディスクは、これに限定されるものではない。例えば、光ディスク12としては、さらに多くの記録層を備えた光ディスクであってもよいし、単一の記録層を有する光ディスクであってもよい。また、2種類の光ディスク間で、記録層の数が異なったものであってもよい。また、1つの光ディスクが複数の記録層を有し、互いに記録密度が異なっているものでもよい。
また、光ピックアップ装置100は、異なる開口数を必要とする、複数種類の光ディスクを1つの対物レンズで互換する場合に、それぞれの光ディスクに適したRim強度の対物レンズ入射光強度分布とし、記録・再生時の光利用効率の低下を抑制するものである。このため、本実施形態では、異なる2種類の光ディスクとして、記録密度が異なる、高密度光ディスクと低密度光ディスクを使用した場合について説明したが、光ディスク12としては、異なる種類の光ディスクの記録密度が同じである光ディスクであってもよい。また、光ディスク12は、カバーガラス厚や、記録層の間の中間層の厚みや屈折率が同じである光ディスクであってもよい。また、異なる開口数のうち、一方の開口数が対応する光ディスクとして、例えば、カバーガラス厚や、記録層の間の中間層の厚みや屈折率が異なる複数種類の光ディスクであってもよい。
また、集光手段である対物レンズは1つの対物レンズとして実効的に異なる開口数を有する対物レンズについて説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、それぞれ異なる開口数を有する2つの対物レンズを切り替えて使用しても良い。
また、光ピックアップ装置100は、異なる開口数を必要とする、少なくとも2種類、すなわち、2種類以上の光ディスクに対応することも可能である。例えば、対応する開口数が相対的に大きい光ディスクが1種類、対応する開口数が相対的に小さい光ディスクが2種類の合計3種類の光ディスクにも適用可能である。このような場合、対応する開口数が相対的に大きい光ディスクを所定方向の直線偏光に対応させる一方、対応する開口数が相対的に小さい光ディスクを上記所定方向とは直交する方向の直線偏光に対応させることにより、光ディスクの互換性を実現することが可能になる。
ここで、開口数が相対的に小さい2種類の光ディスクとしては、例えば、記録層数が異なるもの、トラックピッチが異なるもの、記録データのフォーマットが異なるもの、再生専用のもの、または、記録再生が可能なものなど様々なものに対して対応可能である。また、開口数が相対的に大きい光ディスク2種類と開口数が相対的に小なる1種類の光ディスクにも対応可能である。また、さらに多くの種類の光ディスクにも対応可能である。
また、光ディスク12としては、対応する集光手段の有効径や開口数が同じである光ディスクであってもよい。例えば、1つの対物レンズと偏光レンズ素子を有する光ピックアップ装置において、偏光レンズ素子から出射する光束径を切り替えて使用することにより、光の結合効率を変化させることができる。これにより、光源から出射される出力は一定とし、光束径の切替えにより対物レンズより光ディスクに集光される出力を変化させ、記録再生のパワー切替えを行うことも可能である。さらに、光ディスクとして2つの記録層を有し、かつ、記録層ごとの記録密度が異なる場合では、偏光レンズ素子による光束径の切替えにより対物レンズに入射する光束の強度分布、すなわち、Rim強度が変化することを利用し、各記録層に集光される集光ビーム径を変化させ、異なる記録密度に対応するようにすることも可能である。
また、光ディスク12としては、対応する集光手段の有効径は異なるが開口数が同じものであってもよい。有効径が同じ集光手段の場合には偏光レンズ素子による光束径の切替えによって、Rim強度は変化するこが、有効径が異なる場合には、互いの場合のRim強度を一致させることが可能となる。
(6)本発明の偏光レンズ素子
また、上記偏光レンズ素子60は、光ピックアップ装置に限定されるものではなく、ビーム径の変換光学系として利用可能である。
その場合、偏光レンズ素子6は、上述したように、光源側から入射した一方向の直線偏光に対してレンズとして機能する2つの偏光レンズを備え、偏光レンズ素子に対し光源側から平行光が入射し、かつ、入射光束の偏光方向が上記直線偏光の方向と同一の場合には、偏光レンズ素子から出射する光束は入射光束の光束径とは異なる光束径の平行光となるよう、各々の偏光レンズの焦点距離と、偏光レンズの間の距離が設定しておけばよい。このように設定しておくことにより、偏光レンズ素子に入射する光束の偏光方向が上記直線偏光と直交する場合には、入射光束の光束径と同一の光束径の平行光が出射されるため、それぞれ直交する偏光方向の直線偏光を発する2つの光源を備えている場合には、点灯する光源を切り替えることにより、偏光レンズ素子から出射される光束径を切り替えることができる。従って、2つの通常のレンズで構成されたビームエキスパンダー(例えば、本発明の球面収差補正素子として利用したもの)の場合、出射光束径を変化させるためにはレンズ間隔を変えるための駆動機構が必要であり、また、光束径の変化とともに、出射光の発散角度も変化するが、本発明の偏光レンズ素子はそれぞれ光束径の異なる平行光を出射することが可能であり、かつ、駆動機構も不要である。
また、平行光で入射した光が平行光で出射するように2つの偏光レンズの焦点距離と2つの偏光レンズの距離を設定しているため、例えば、発散光束中、あるいは、集束光束中に配置する構成とした場合、コマ収差等の発生により、X・Y面内の位置調整精度が厳しくなるが、その場合に比べて、偏光レンズ素子のX、Y面内の位置調整精度を緩和することができる。
また、偏光レンズ素子6として、1枚の光を透過するガラス基板の両側に2つの偏光レンズを一体に形成し、一方向の直線偏光に対して凹レンズとして機能する第1の偏光レンズと、上記直線偏光と同一方向の直線偏光に対し、凸レンズとして機能する第2の偏光レンズからなる偏光レンズ素子としてもよい。2つの偏光レンズの間のガラス基板の厚みを同じものとした場合、2つの偏光レンズを凸レンズで構成する場合と比較すると、レンズの焦点距離を長くすることができるため、ブレーズホログラムの場合には周辺部のピッチを広くすることができ、エッチングなどのブレーズホログラム作成時の誤差による光量ロスを低減させることができる。また、通常の屈折タイプのレンズの場合には焦点距離を長くできるため、レンズの曲率半径を大きくすることができ、より低コスト化が図れる。また、2つのレンズ間の光軸ずれによるコマ収差の発生量を低減することができる。また、ガラス基板内部で光が集光しないため、集光スポット付近で発生する熱によるガラス基板の劣化を防止することができる。また、ブレーズホログラムの場合には、屈折タイプの偏光レンズに対し薄くすることができるので、装置の小型化に有利である。
また、上記偏光レンズ素子6と光源13との間に、光源側から入射した直線偏光の光の偏光方向を、同じ方向の直線偏光として出射するか、直交する直線偏光として出射するかを切り替える偏光方向切替素子を備えてもよい。偏光方向切替素子を使用した場合には、例えば、互いに直交する偏光方向の光を発する複数の光源を備える必要がなくなる。従って、構成する部品点数も少なく、低コストであり、光学系をコンパクトにすることが可能である。
また、偏光方向切替素子は液晶素子としてもよい。偏光方向切替素子としては、ファラデーローテータなどを使用することが可能であるが、液晶素子の方が透過率が高いため、結合効率の向上に有利である。また、小型であることから、光学系のコンパクト化に有利である。
このように、光ピックアップ装置100は、入射する光ビームの偏光方向に応じて、光束径を変換する偏光レンズ素子60を備えている。このため、入射する光ビームの光束径の変換倍率を、それぞれ対応する集光手段である対物レンズの有効径と開口数がともに異なる高密度光ディスクと低密度光ディスクに応じて設定することができる。その結果、光ピックアップ装置100では、2種類の光ディスクにおいて、互いのRim強度が同じになるように設定することでき、結合効率も、互いに同じになるようにすることが可能になる。
また、光ピックアップ装置100では、異なる種類の光ディスクを1つの対物レンズで互換するに際し、双方の光ディスクでRim強度を適切に設定できる。このため、双方の光ディスクの集光スポットを適切な大きさにすることができ、記録・再生における安定性を高めることができる。
また、結合効率の低下を防ぐことができるため、消費電力の低減、光ディスクの記録レートの高速化、光ディスクの多層化に有利である。
また、光ピックアップ装置100では、偏光レンズ素子6は、入射する直線偏光の方向に応じて異なる光束径の光ビームを出射し、実効的に異なる有効径を備えた集光手段である対物レンズに光を入射する構成となっている。このような構成において、例えば、互いに実効的に異なる有効径を有する集光手段において、実効的な有効径が相対的に小さい場合に対し、偏光レンズ素子から出射される光の中で光束径が相対的に大きい直線偏光に対応させた場合、実効的な有効径が相対的に大きな場合には、必然的には、実効的な有効径が相対的に小さい場合と比較してRim強度が小さくなり、異なる有効径の場合においてRim強度を一致させることができない。
しかしながら、互いに実効的に異なる有効径を有する集光手段において、実効的な有効径が相対的に大きい場合に対し、偏光レンズ素子から出射される直線偏光の中で光束径が相対的に大きい光を対応させることにより、異なる有効径の場合においてRim強度を一致させることができる。また、有効径の小さい場合に比較し、有効径の大きい場合のRim強度を大きくもできるし、小さくもできる。すなわち偏光レンズ素子によって設定できるRim強度の範囲を拡げることが可能になるので、望ましい。
以下に、図22を参照して、さらに詳述する。図22は、対物レンズの実効的な有効径とRim強度との関係を示す説明図であり、図22(a)は、対物レンズの相対的に小さい実効的な有効径を、偏光レンズ素子から出射される直線偏光の中で光束径が相対的に大きい直線偏光に対応させた場合(以下、Type.1と記す)を示し、図22(b)は、対物レンズの相対的に大きい実効的な有効径を、偏光レンズ素子から出射される直線偏光の中で光束径が相対的に小さい直線偏光に対応させた場合(以下、Type.2と記す)を示し、図22(c)は、対物レンズの相対的に大きい実効的な有効径を、偏光レンズ素子から出射される直線偏光の中で光束径が相対的に大きい直線偏光に対応させた場合(以下、Type.3と記す)を示し、図22(d)は、対物レンズの相対的に小さい実効的な有効径を、偏光レンズ素子から出射される直線偏光の中で光束径が相対的に小さい直線偏光に対応させた場合(以下、Type.4と記す)を示す。
図22において、Type.1とType.2とが一つの組み合わせである。また、Type.3とType.4とが別の組み合わせである。
まず、Type.1とType.2との組み合わせの場合、Type.2の場合に対して、Type.1の場合は、対物レンズの有効径が小さく、偏光レンズ素子から出射される直線偏光の光束径が大きいため、必然的にType.1の場合におけるRim強度は、Type.2の場合と比較して大きくなる。また、このRim強度の関係は、偏光レンズ素子から出射される直線偏光の変換倍率を変化させても、変わらない。その理由としては、Type.1の場合における偏光レンズ素子から出射される直線偏光の光束径は、Type.2の場合よりも大きいという条件があり、かつ、Type.1の場合における対物レンズの有効径は、Type.2の場合より小さいという条件があるためである。
次に、Type.3とType.4との組み合わせの場合、Type.4の場合に対して、Type.3の場合は、対物レンズの有効径が大きく、偏光レンズ素子から出射される直線偏光の光束径が大きい。このため、対物レンズの互いに異なる有効径の比と、偏光レンズ素子から出射される直線偏光の光束径の比とを一致させた場合には、Type.3の場合とType.4の場合とでRim強度が一致する。図22(c)及び(d)は、そのような状態を表した図である。Rim強度が一致するような有効径の比と光束径の比の関係に対し、Type.3の場合において、偏光レンズ素子から出射される直線偏光の光束径を小さくすると、Type.3の場合におけるRim強度は、Type.4の場合に比べて、小さくなる。逆に、Type.3の場合において、偏光レンズ素子から出射される直線偏光の光束径を大きくすると、Type.3の場合におけるRim強度は、Type.4の場合に比べて、大きくなる。すなわち、Type.3とType.4との組み合わせにおいて、一方のTypeの場合におけるRim強度に対して、他方のTypeのRim強度を大きくもできるし、小さくすることもできる。また、両方のTypeの場合におけるRim強度を一致させることが可能である。
したがって、実効的な有効径が相対的に大きい場合に対し、偏光レンズ素子から出射される光の中で光束径が相対的に大きい光を対応させる場合、異なる有効径の場合においてRim強度を一致させることができる。また、有効径の小さい場合に比較し、有効径の大きい場合のRim強度を大きくもできるし、小さくもできる。すなわち偏光レンズ素子によって設定できるRim強度の範囲を拡げることが可能になる。
〔実施の形態2〕
本発明の実施の他の形態について図17に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施の形態では、主に、上記実施の形態1との相違点について説明するものとし、上記実施の形態1で用いた構成要素と同一の機能を有する構成要素には同一の番号を付し、その説明を省略する。また、上記実施の形態1で述べた各種の特徴点については、本実施の形態についても組み合わせて適用し得るものとする。図17は、本実施形態に係る光ピックアップ装置104の概略構成を示した断面図であり、図17(a)は光ディスク12として高密度光ディスク20を用いた場合を示し、図17(b)は光ディスク12として低密度光ディスク30を用いた場合を示す。
上記実施の形態1の光ピックアップ装置100は、対物レンズ11として段差19を有するものを備えた構成である。これに対して、本実施の形態の光ピックアップ装置104の対物レンズは段差を有したものではない。また、光ピックアップ装置104は、上記実施の形態1の光ピックアップ装置100と異なり、偏光開口制限手段を備えた構成となっている。また、光ピックアップ装置104は、λ/4波長板を備えていない点も、光ピックアップ装置100の構成と異なる。また、光ピックアップ装置104では、光ディスク12として、2つの記録層を有するものを使用している。
図17(a)に示すように、光ピックアップ装置104は、対物レンズ211と偏光開口制限素子208とを備えている。
対物レンズ211は、高密度光ディスク20に対応した開口数が0.85であり、かつ有効径がΦ3である一方、低密度光ディスク30に対応した開口数が0.65であり、かつ、有効径がΦ2.29である対物レンズである。
また、対物レンズ211は、高密度光ディスク20を用いた場合に球面収差が小さくなるように設計している。また、対物レンズ211は、中間層20cの中央付近よりも第2記録層20bに近い位置(第2記録層20bも含む)に集光した光ビームにより発生する球面収差が小さくなるように設計されている。この場合、高密度光ディスク20の第2記録層20bは、高密度光ディスク20表面から125μmの位置にある。一方、低密度光ディスク30の第1記録層30aは、低密度光ディスク30表面から600μmの位置にある。このため、光ピックアップ装置104では、光ディスク12として低密度光ディスク30を用いた場合、第1記録層30a及び第2記録層30bの何れかに光ビームを集光させた場合にも、オーバーの球面収差が発生する。このため、光ディスク12として低密度光ディスク30を用いた場合、球面収差補正素子であるビームエキスパンダー7の2つのレンズ間隔を調整することにより球面収差を補正する。
また、光ピックアップ装置104において、2種類の光ディスクに対応した開口数を実現する開口制限方法は以下の通りである。光ディスク12として高密度光ディスク20を用いた場合、光ピックアップ装置104では、上記実施形態と同様に、対物レンズホルダー9に備えられたアパーチャ10が入射光束を遮蔽することにより開口制限が行われている。すなわち、光ピックアップ装置104は、対物レンズ211の有効径Φ3の光束が対物レンズ211に入射するような構成である。さらに、光ピックアップ装置104の対物レンズホルダー9には、偏光開口制限素子208が設けられている。
偏光開口制限素子208は、偏光板201とガラス基板202と位相補正膜203とを備えている。また、ガラス基板202のビームエキスパンダー7側の面の中央部には、位相補正膜203が設けられており、位相補正膜203の周辺部に偏光板201が設けられている。
また、図17(b)に示すように、偏光板201の内径は、低密度光ディスク30に対応した対物レンズ211の開口数0.65に相当する直径になっている。すなわち、偏光板201の内径は、対物レンズ211の有効径Φ2.29に対応した直径になっている。光ピックアップ装置104では、光ビームは対物レンズ211に対して発散光として入射するため、偏光板201の内径は、対物レンズ211の有効径Φ2.29よりも小さな直径となっている。しかしながら、偏光板201の内径は、これに限定されるものではなく、光ビームが対物レンズ1606に対して平行光として入射する場合、対物レンズ211の有効径Φ2.29と同じ直径とすればよい。
偏光板201は、Y方向の直線偏光を吸収する一方、X方向の直線偏光を透過するものであり、対物レンズ211に向かう光ビームの光束の外周部分のY方向の偏光方向の光ビームを吸収するようになっている。
それゆえ、光ディスク12として低密度光ディスク30を用いた場合、対物レンズ211に向かう光ビームの光束の外周部が、偏光板201に吸収されることにより遮光される。このため、光ディスク12として低密度光ディスク30を用いた場合、対物レンズ211には、光ビームの光束の中央部の光のみが入射する。
一方、光ディスク12として高密度光ディスク20を用いた場合、対物レンズ211に向かう光ビームはX方向の直線偏光である。このため、光ディスク12として高密度光ディスク20を用いた場合、光ビームは偏光板201により吸収されず、アパーチャ10を通過した光ビームがそのまま対物レンズ211に入射する。この場合、偏光板201を透過する光と、光ビーム光束の中央部を透過する光との間に位相差が生じる。位相補正膜203は、このような位相差が生じないように、偏光板201を通過した光ビームと光束の中央部分を透過する光ビームとの位相差を補正する。なお、位相補正膜203は、TiO2やSiO2などの誘電体膜であってもよいし、等方性の樹脂材料からなるフィルムを接着したものであってもよい。
また、光ピックアップ装置104では、λ/4波長板が設けられていない。このため、偏光開口制限素子208に入射する光ビームの偏光方向と、光ディスクで反射し偏光開口制限素子208に入射する戻り光ビームとは、互いに偏光方向が同じである。
逆に、λ/4波長板が設けられている場合には、光ディスク12として高密度光ディスク20を用いると、光ビームの往路でX方向の偏光方向であった光が、戻り光ビームの復路で、Y方向の偏光方向の光となる。このため、戻り光ビームの光束の外周部が偏光板201により遮光されてしまう。したがって、光ディスク12として高密度光ディスク20を用いた場合、戻り光の光量が失われるためS/Nが低下する。また、ラジアル誤差信号検出に利用している、高密度光ディスク20における回折光の干渉パターン(ボールパターンとも言われる)が失われることになり、ラジアル誤差信号検出にも影響を与える。
光ピックアップ装置104では、偏光方向切替素子であるTN型の液晶素子5により、偏光レンズ素子6及び偏光開口制限素子208に入射する偏光方向が切り替えられている。すなわち、光ピックアップ装置104では、高密度光ディスク20及び低密度光ディスク30の各々の光ディスクに対応した偏光方向への切替えを行っている。それゆえ、個別に偏光方向切替素子を使用する場合に対し、部品点数を削減することができる。
また、球面収差補正素子である、ビームエキスパンダー7を用いることにより、カバーガラスの厚みが異なる光ディスクにおいて発生する球面収差を、効果的に補正しすることができる。
なお、光ピックアップ装置104では、偏光開口制限素子として一方向の直線偏光を吸収する偏光板201が設けられていたが、偏光開口制限素子は、これに限定されるものではない。例えば、一方向の偏光方向の光のみを回折する偏光回折素子を備えた偏光開口制限素子であってもよい。その場合、光ディスク12として低密度光ディスク30を用いた場合に、光束の外周部の光を回折するが回折した光が対物レンズに入射しない、または、入射しても記録層上ではフレアになるように回折角度や回折方向を設定すればよい。また偏光開口制限素子は、一方向の直線偏光を反射する反射型の偏光板であってもよい。