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JP4338114B2 - ポリスチレン系樹脂発泡体/ポリオレフィン系樹脂多層体 - Google Patents

ポリスチレン系樹脂発泡体/ポリオレフィン系樹脂多層体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主にトレイ、カップ、弁当箱、丼等に二次加工される食品包装用容器素材として好適に使用される低温耐衝撃性に優れた、シート状又は板状のポリスチレン系樹脂発泡体/ポリオレフィン系樹脂多層体(以下、単に多層シートとも言う)に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、発泡ポリスチレンシートは、熱成形されてトレイ、弁当箱、丼、カップ等の各種容器に広く使用されている。特に電子レンジの普及により、冷凍食品用容器として要望が高まっている。しかし、発泡ポリスチレンシートは耐熱性、耐油性に劣る上、また低温耐衝撃性にも劣り冷凍食品用容器として使用することは難しかった。
そこで、発泡ポリスチレンシートの耐熱性、耐油性の欠点を改良することを目的として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の樹脂フィルムを発泡ポリスチレンシートの片面や両面に貼りあわせた多層シートが検討されている。
実公昭59−17628号公報では、ポリスチレン系樹脂40〜60重量%とポリオレフィン系樹脂60〜40重量%との溶融混合物を接着剤として用いて、発泡ポリスチレンシートの片面または両面にポリオレフィン系樹脂フィルムを接着してなる多層シートが提案されているが、低温耐衝撃性についてはなんら検討はなされていなかった。
また、実公平7−8409号公報には、輸送中の衝撃により割れ、あるいは穴のあかない発泡スチロールトレイについて記載され、そこに開示された技術は、リニア低密度ポリエチレン及びガスバリヤ性フィルムを積層した発泡スチロールシートを、深さが10mmから25mm、底の角および側壁の角のアールが15mmから50mmとなるように成形した発泡スチロールトレイである。
この多層シートは、特定の深さ、特定の範囲をもったアール部を有する発泡スチロールトレイ用として有用であるが、複雑な形状や、深絞り形状の容器を成形すると容器に薄い部分や破れが発生するものであった。さらに、低温耐衝撃性についてはなんら検討されていないものであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は従来のポリスチレン系樹脂発泡多層体以上の低温耐衝撃性を有し、なおかつ耐熱性、耐油性に優れたポリスチレン系樹脂発泡体/ポリオレフィン系樹脂多層体を提供することをその課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決すべく種々検討した結果、ポリスチレン系樹脂発泡体/ポリオレフィン系樹脂多層体におけるそのポリオレフィン系樹脂層として−20℃におけるアイゾット衝撃値が10KJ/m2以上のポリオレフィン系樹脂またはポリオレフィン系樹脂組成物を使用し、該多層体の低温での落錘衝撃試験による50%破壊エネルギーが0.3J以上であることにより、低温輸送中の衝撃による割れの発生や冷凍雰囲気中から室温雰囲気中へ取出す際、容器を落としても割れが発生しない等の低温耐衝撃性を有するポリスチレン系樹脂発泡体/ポリオレフィン系樹脂多層体が得られることを見い出すとともに、そのポリオレフィン系樹脂のビカット軟化点が100℃以上のものを使用することにより電子レンジでの加熱に耐えうる耐熱性を有するポリスチレン系樹脂発泡体/ポリオレフィン系樹脂多層体が得られることを見い出し、さらにポリスチレン系樹脂発泡体/ポリオレフィン系樹脂多層体におけるそのポリスチレン系樹脂発泡体層の基材がビカット軟化点110℃以上のポリスチレン系樹脂を使用することにより、冷凍状態から直接電子レンジで調理可能な耐熱性を有するポリスチレン系樹脂発泡体/ポリオレフィン系樹脂多層体が得られることを見い出した。
即ち、本発明によれば、ポリスチレン系樹脂発泡体層(X)の少なくとも片面に、接着層(Y)を介して−20℃でのアイゾット衝撃値が10KJ/m2以上、かつ、ビカット軟化点が100℃以上のポリオレフィン系樹脂またはポリオレフィン系樹脂組成物からなるポリオレフィン系樹脂層(Z)が積層された多層体であって、該多層体の低温での落錘衝撃試験による50%破壊エネレギーが0.3J以上であることを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡体/ポリオレフィン系樹脂多層体が提供される。
また、本発明によれば、前記ポリスチレン系樹脂発泡体/ポリオレフィン系樹脂多層体において、該ポリスチレン系樹脂発泡体層(X)の基材がビカット軟化点110℃以上のポリスチレン系樹脂からなるポリスチレン系樹脂発泡体/ポリオレフィン系樹脂多層体が提供される。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明で用いるポリオレフィン系樹脂層(以下、単に樹脂層ともいう)を構成するポリオレフィン系樹脂またはポリオレフィン系樹脂組成物には、オレフィンの単独重合体、オレフィン同士の共重合体(ランダム共重合体、ブロック共重合体等)、オレフィン単位成分を50重量%以上含有するオレフィンと他のモノマーとの共重合体(ランダム共重合体、ブロック共重合体等)、上記単独重合体及び上記共重合体から選ばれた2以上の混合物、上記単独重合体及び上記共重合体の少なくとも1種と、それらとは異なる熱可塑性樹脂又は及び熱可塑性エラストマーとの混合物であって混合物中のオレフィン単位成分割合が50重量%以上のもの、或いは上記単独重合体、上記共重合体、又は上記混合物50重量%以上と、酸化防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、難燃剤、耐電防止剤、充填剤等の樹脂添加剤50重量%以下との混合物等が包含される。本発明では、特に、低温での耐衝撃性の点から本発明で用いる樹脂層を構成するポリオレフィン系樹脂またはポリオレフィン系樹脂組成物は、−20℃でのアイゾット衝撃値が10KJ/m2以上のものであり、かつ、耐熱性の点から、ビカット軟化点が100℃以上のものであり、好ましくは112℃以上である。該軟化点の上限値は特に限定されないが160℃程度である。前記した点からポリオレフィン系樹脂の中でもアイゾット衝撃値とビカット軟化点を満足するポリエチレン系樹脂が好ましく、特に高密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレンの使用が好ましい。前記した−20℃でのアイゾット衝撃値が10KJ/m2未満では、多層シートの低温での十分な耐衝撃性が得られない。
尚、本明細書において、基材樹脂の−20℃でのアイゾット衝撃値は、樹脂層を構成するポリオレフィン系樹脂またはポリオレフィン系樹脂組成物を、充分に乾燥させ(水分含有量が0.1重量%以下になるまで)、次いで、温度230℃、圧力490N/cm2の条件で10分間鋼板に挟んで加熱圧縮した後、直ちに、鋼板に挟んだ状態で30℃の冷却プレス間へ移動させて充分冷却することにより、厚み2.5mmの樹脂板を作製し、その樹脂板より、JIS K 7110−1984に規定された1号A試験片(ただし試験片の幅は2.5mmとする)を作製し、その試験片を使用してJIS K 7110−1984に従って測定された値である。尚、試験条件の詳細は次の通りである。
試験機・・・株式会社東洋精機製作所製のNo.612アイゾットインパクトテスター(機械番号121903304)。
ハンマ重量・・・784g。
ハンマの回転軸中心線から重心までの距離・・・6.85cm。
ハンマの回転軸中心線から衝撃刃の刃縁までの距離・・・30.7cm。
ひょう量・・・1J。
ハンマの持上げ角度・・・150°。
ハンマの衝撃速度・・・3.35m/秒。
衝撃の方向・・・エッジワイズ衝撃。
試験片の状態調節等・・・試験片を−20℃の温度下に24時間放置し、気温23℃、相対湿度50%の室内に取り出して試験片に衝撃を与えるまでの時間を3.5秒±0.5秒とする。
試験片の数・・・5個。本発明におけるアイゾット衝撃値はこれら5試験片の測定値に基づく相加平均値が採用される。
尚、以上の測定条件で試験片が破壊されない場合には、本発明においてはアイゾット衝撃値は少なくとも31kJ/m2であると見なされる。
また、本明細書において、樹脂のビカット軟化点はJlS K7206(試験荷重はA法、伝熱媒体の昇温速度は50℃/時の条件)にて求められる値を指す。
【0006】
本発明の多層シートにおいて、前記したポリオレフィン系樹脂層を積層した多層シートであって、その低温での落錘衝撃試験における50%破壊エネルギーは、0.3J以上である。さらに低温耐衝撃性の向上の点で0.7J以上が好ましい。前記50%破壊エネルギーが0.3Jより小さい場合、この多層シートは、低温輸送中の衝撃による割れや冷凍雰囲気中から室温雰囲気中に取り出す際、落として割れる等の低温耐衝撃性が低下する。
前記50%破壊エネルギーが0.3J以上の多層シートとするには、−20℃でのアイゾット衝撃値が10KJ/m2以上のポリオレフィン系樹脂またはポリオレフィン系樹脂組成物からなるポリオレフィン系樹脂層を採用し、後述するポリオレフィン系樹脂層の厚さ、ポリスチレン系樹脂発泡体層(以下、単に発泡体層ともいう)の厚さ、発泡体層の密度、樹脂層と発泡体層との接着強度、発泡体層の連続気泡率を調整することにより得ることができる。
なお、本明細書において、多層シートの低温での落錘衝撃試験における50%破壊エネルギーは、−40℃の低温槽で6時間冷凍したサイズ縦150m、横120mmの長方形の多層シートを、その低温槽を収容している温度23℃、湿度55%の恒温、恒湿室内に取り出し、ポリオレフィン系樹脂層側から落錘衝撃試験を1サンプルにつき20個の試験片について行い、JIS K7211での計算方法により求める。この時、各試験片を低温槽から取りだしてから測定までを2秒以内で行う。また試験機は(株)東洋精機製作所製No.621落錘衝撃試験機を使用し、使用した重錘は直径36.5mm、質量198.5gの球形の重錘を用いる。
【0007】
本発明で用いるポリスチレン系樹脂において、その溶融粘度は、190℃剪断速度100sec-1の条件下での溶融粘度で、200poise以上で100000poise未満、好ましくは1000〜50000poiseである。その溶融粘度が前記範囲より小さいと、発泡体成形時にダイスより押出された溶融樹脂が垂れてしまい、成形困難になる慮れがある。一方、前記範囲を超えると、粘度が高すぎて押出圧力が上昇して押出成形が困難になり、良質のポリスチレン系樹脂発泡体層が成形できなくなるおそれがある。
【0008】
本発明で用いるポリスチレン系樹脂には、スチレンの単独重合体及び共重合体が包含され、その重合体中に含まれるスチレン系モノマー単位は少なくとも25重量%以上、好ましくは50重量%以上である。本発明で用いる好ましいポリスチレン系樹脂は、下記の一般式(1)で表される構造単位を樹脂中に少なくとも25重量%含有する樹脂である。
【化1】
Figure 0004338114
前記一般式(1)において、Rは水素原子またはメチル基を示し、Zはハロゲン原子またはメチル基を示し、pは0または1〜3の整数である。
前記ポリスチレン系樹脂としては、ポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリスチレン−ポリフェニレンエーテル共重合体、ポリスチレンとポリフェニレンエーテルとの混合物などが例示される。これらの樹脂に脆性改善等を目的としてスチレン共役ジエンブロック共重合体やその水添物等のエラストマー、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体等の弾性成分、リサイクル樹脂の混合等を考慮してポリプロピレン系樹脂や高密度ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂を30重量%以下の割合で混合したものも使用することができる。なお、ビカット軟化点が110℃以上のポリスチレン系樹脂を使用することにより、本発明多層シートの耐熱性を向上させることができる。
【0009】
次に、本発明の多層シートの層構成について詳述する。
本発明の多層シートは、ポリスチレン系樹脂発泡体層を有する。この発泡体層において、その密度は0.02〜0.7g/cm3、好ましくは0.03〜0.5g/cm3であり、特に熱成形用のものは0.04〜0.5g/cm3のものが好ましい。また、その厚みは0.3〜7mm、好ましくは0.5〜5mmであり、特に熱成形用のものは0.5〜4mmである。この発泡体層の連続気泡率(ASTM D2856、手順C)は40%以下、好ましくは30%以下、更に好ましくは20%以下である。その密度が前記範囲より小さくなると、その多層シートを熱成形して得られる成形体の強度が不足するばかりでなく、加熱真空成形するときに伸び不足を生じて成形体に透孔を生じることがある。一方、その密度が前記範囲よりも大きくなると、経済的に不利になる他、低温耐衝撃性が低下するという問題があり、さらに、成形体の断熱性が悪くなるため、容器等の成形体に熱湯を入れたときに、その容器を手で持つことができなくなる。また、前記発泡体層の厚みが余りにも薄くなると、真空成形等により得られる成形体の壁厚が不十分となり、強度や断熱性の点で劣ったものとなり、低温耐衝撃性が低下する。一方、その厚みが大きくなりすぎると、加熱真空成形の際に、シートの内部と外部の加熱ムラが起りやすく、精密な温度制御が必要となる。発泡体層の連続気泡率は熱成形時の二次発泡性や得られる成形体の品質(強度や低温衝撃性等の物性)に影響を与えるので、前記の通りに規定するのがよい。
本明細書において、多層シートの厚みは多層シートの押出方向に対し、垂直な幅方向の断面厚みを顕微鏡により等間隔で10点撮影する。次いで撮影した写真より多層シートの厚みを測定しその平均値を採用する。
本明細書において、発泡体層の密度は下記に示す方法で行う。予め前記した多層シートの厚みと坪量を測定し、顕微鏡により多層シートの押出方向に対し、垂直な幅方向の多層シートの断面を等間隔で10点撮影し、撮影した写真より測定された樹脂層の厚みと接着層の厚みの平均値を算出する。前記各層の厚みを多層シートの厚みから引いた値を発泡体層の厚みとした。次いで樹脂層の厚みと接着層の厚みに各層を構成している樹脂密度をかけ単位換算して樹脂層及び接着層の坪量を算出する。前記の最外層と接着層の坪量を多層シートの坪量から引いた値を発泡体層の坪量とする。この発泡体層の坪量を前記した発泡体層の厚みで割った値を単位換算し発泡体層の密度として採用する。
【0010】
接着層としては、変性ポリオレフィン樹脂、変性エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂等の接着性樹脂が用いられ、その他、リサイクル性、コスト面で好ましいポリオレフィン系樹脂とポリスチレン系樹脂との混合物、更に該混合物に相溶化させるため添加剤を添加したものも採用することができる。前記接着層は、ポリスチレン系樹脂85〜40重量%、好ましくは80〜45重量%、更に好ましくは75〜50重量%と、ポリオレフィン系樹脂15〜60重量%、好ましくは20〜55重量%、更に好ましくは25〜50重量%との混合樹脂からなる。但し、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂との合計が100重量%とする。なお、接着層に使用されるポリオレフィン系樹脂としては、接着層の上面に積層されるポリオレフィン系樹脂層に用いられるポリオレフィン系樹脂と同一の樹脂、もしくは熱融着可能な同種のポリオレフィン系樹脂が好ましく用いられる。この接着層において、そのポリスチレン系樹脂の含有率が前記範囲より高くなると、その接着層と発泡体層との間の接着強度は満足するものの、その接着層とポリオレフィン系樹脂層との間の接着強度が不十分になる。一方、そのポリスチレン系樹脂の含有率が前記範囲より低くなると、逆に、その接着層とポリオレフィン系樹脂層との間の接着強度は満足するものの、その発泡体層と接着層との間の接着強度が不十分となる。さらに熱成形する際、多層シートに破れや透孔が発生し、成形性が悪くなる。接着層において、その厚みは0.015〜0.2mm、好ましくは0.02〜0.15mmであり、その発泡体層の厚みに対する割合は、3〜50%、好ましくは5〜40%である。接着層の厚みが前記範囲よりも小さくなると、接着性が不十分となり、一方、前記範囲を超えると、発泡体層の連続気泡率が高くなる傾向にあり、また、コストアップの原因となる。
【0011】
本発明の多層シートは、その接着層の上面に形成されたポリオレフィン系樹脂層を有する。このポリオレフィン系樹脂層において、その厚みは0.01〜0.5mmが好ましく、さらに、熱成形用として0.015〜0.4mmが好ましい。特に0.015〜0.3mmが好ましい。その発泡体層の厚みに対する割合は3〜50%、好ましくは5〜40%である。このポリオレフィン系樹脂層の厚みが前記範囲よりも小さくなると、低温耐衝撃性が低下する。また、熱成形時に多層シートに透孔や破れを生じるので好ましくない。一方、余りにも厚くなりすぎると、コストアップになるばかりか、そのポリオレフィン系樹脂層の加熱成形時間と発泡体層の加熱成形時間との差が開きすぎて、そのポリオレフィン系樹脂層に最適な加熱時間で多層シートを成形すると、その発泡体層が溶融したりする。
【0012】
本発明の多層シートにおいて、その発泡体層の両面に前記接着層を介してポリオレフィン系樹脂層を積層させることができるが、必ずしもその両面に接着層を介してポリオレフィン系樹脂層を積層させる必要はなく、その発泡体層の一方の片面は、未積層面とすることができ、また、ポリスチレン系樹脂層や接着層等の樹脂層を積層することができる。そのポリスチレン系樹脂層や接着層において、その厚みは0.015〜0.35mm、好ましくは0.02〜0.25mmであり、その発泡体層の厚みに対する割合は3〜50%、好ましくは5〜40%である。その発泡体層の片面にポリスチレン系樹脂層が積層されているものは、そのポリスチレン系樹脂層が印刷性、光沢性にすぐれているので、熱成形された成形体の外側の印刷面とすることができる。一方、その発泡体層の片面に接着層として接着層が積層されているものは、その接着層が印刷適性にすぐれ、また光沢性にもすぐれているので、熱成形された成形体の外側の印刷面として有利に用いることができると共に、共押出法により発泡体層の両面に形成する2つの接着層を同じ押出機を使用して同時に積層することができる為、生産性において優れる。
【0013】
本発明の多層シートにおいて、その接着層としての接着層には、相溶化させるために相溶化成分を添加することができる。この場合の相溶化成分としては、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを相溶化し得るものであればよく、従来公知の各種のものを用いることができる。このようなものとしては、特にスチレン系熱可塑性エラストマーの使用が好ましい。このスチレン系熱可塑性エラストマーには、SEBS系やSEPS系のものや、SBS系又はSlS系のもの等が包含される。SBS系又はSIS系のものは、ハードセグメントとしてポリスチレンの結晶相を有し、ソフトセグメントとしてポリブタジエン又はポリイソプレンがブロック的に共重合された構造を有する。一方、SEBS系やSEPS系のものは、前記SBS系やSIS系のものに含まれているポリブタジエン、ポリイソプレンを高度に水素化してその主鎖中の二重結合を飽和させたものである。これらのSEBS系や、SEPS系、SBS系及びSIS系等のスチレン系熱可塑性エラストマーについては、「プラスチックエージ」、第101頁〜第106頁(June 1985)に詳述されている。
【0014】
相溶化成分は、接着層中の接着100重量部当たり、0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜10重量部の割合で添加するのが好ましい。特に、スチレン系熱可塑性エラストマーの場合には、2〜10重量部添加するのが好ましい。この相溶化成分の添加により、発泡体層とポリオレフィン系樹脂層との接着性、多層シートの衝撃強度や脆性がさらに改善される。
本発明の多層シートにおいて、その接着層及び発泡体層には、脆性改善を目的に弾性成分を添加することができる。弾性成分としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等のスチレン成分とブタジエンやイソプロピレン系ジエン成分からなるランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体又はこれらの共重合体同士の混合物、或いはこれらの共重合体とこれらの共重合体以外のポリスチレン系樹脂との混合物が挙げられる。
前記弾性成分は、接着層の混合樹脂100重量部あたり2〜50重量部、好ましくは、5〜30重量部添加することが好ましい。
一方、発泡体層への弾性成分は、基材樹脂100重量部あたり0.5〜30重量部、好ましくは、1〜20重量部添加することが好ましい。
よって、スチレン系熱可塑性エラストマーは特定量を樹脂組成物に添加することにより、相溶化成分及び弾性成分として作用させることができるため特に好ましい。
【0015】
本発明の多層シートにおいて、その発泡体層とポリオレフィン系樹脂層との間の接着強度は、接着層として接着層を用いた場合100gf/25mm以上、特に好ましくは300gf/25mm以上、更には500gf/25mm以上という大きな接着強度を有する。その接着強度の上限値は、通常、2500gf/25mm程度である。
接着強度が100gf/25mmより小さい場合、多層シートを熱成形した際に発泡体とポリオレフィン系樹脂層が剥離したり、多層シートの低温耐衝撃性が低下する虞がある。
【0016】
本発明の多層シートは、従来公知の方法で製造することができる。その代表的な方法としては、予め発泡体層を製造し、その後製造ライン上または別ラインでポリオレフィン系樹脂層と接着層を別な押出機より供給して接着する方法、発泡体層を製造し、製造ライン上または別ラインでポリオレフィン系樹脂層としてポリオレフィン系樹脂フィルムを導入し、接着層を別な押出機より供給して接着する方法、多層共押出法によって発泡体層の少なくとも片面に接着層及びポリオレフィン系樹脂層を設けて押出製造する方法等がある。
なかでも多層共押出法によって得られる多層シートは、他の方法に比べて工程がシンプルで低コスト化が可能であり、また発泡体層と接着層、接着層とポリオレフィン系樹脂層との接着強度が高くなるので好ましい。
また、特に片面にハイインパクトポリスチレン(HIPS)等のポリスチレン系樹脂を積層した本発明多層シートを製造する方法としては、前記共押出法等にてポリスチレン系樹脂発泡体層の片面に接着層を介してポリオレフィン系樹脂を積層した多層シートを得て、次にTダイスを使用してハイインパクトポリスチレン溶融物を該発泡体層のポリオレフィン系樹脂層が積層されていない面側に押出ラミネート法により積層する方法等が採用される。
接着層として用いるポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂および相溶化成分はペレット状でドライブレンドした後、そのまま押出機の投入口に入れても良く、また予め溶融混練して用いても良い。
【0017】
ポリスチレン系樹脂発泡体層を製造する場合に用いる発泡剤としては、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ブタンとi−ブタンとの混合物、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロブタン、シクロペンタン等の環式脂肪族炭化水素、トリクロロフロロメタン、ジクロロジフロロメタン、1,1−ジフルオロエタン、1,1−ジフルオロ−1−クロロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、メチルクロライド、エチルクロライド、メチレンクロライド等のハロゲン化炭化水素およびこれらの混合物等が挙げられる。
更に、発泡剤としては、分解型発泡剤を用いることができるが、その具体例としては、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾビスイソブチロニトリル、重炭酸ナトリウム等が挙げられる。また、二酸化炭素等の無機ガスや水も挙げられる。これらの発泡剤は適宜混合して用いることができる。
このなかでもハロゲン化水素を含まないオゾン層の破壊等環境への影響の少ないものを使用することが好ましい。
発泡剤の使用量は、特に限定されないが、おおむね樹脂100gあたり0.01〜0.1モルで目標のシート密度に対し自由に選択することができる。
【0018】
本発明の多層シートに用いられるポリスチレン系樹脂およびポリオレフィン系樹脂には、本発明の目的を著しく損なわない範囲で、必要に応じて各種の添加剤、例えば、造核剤、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、導電性付与剤、耐候剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、無機充填剤等を添加することができる。
【0019】
本発明の多層シートは、雄型及び/又は雌型からなる金型を使用して熱成形することができる。熱成形する方法としては、例えば、真空成形、圧空成形や、これらの応用としてフリードローイング成形、プラグ・アンド・リッジ成形、リッジ成形、マッチド・モールド成形、ストレート成形、ドレープ成形、リバースドロー成形、エアスリップ成形、プラグアシスト成形、プラグアシストリバースドロー成形等やこれらを組み合わせた成形方法等が挙げられる。前記のような成形方法を用いて所望の容器等の成形体に成形することができる。また、このように成形体を得る熱成形方法は、短時間に連続して成形体を得ることができるため好ましい。
【0020】
本発明の多層シートは、浅い形状の成形体から深絞り形状の成形体まで成形できる。具体的に例えば、トレイ、弁当箱、カップ、丼等が挙げられる。
【0021】
【実施例】
次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
【0022】
実施例1〜5、比較例1〜2
表1に示す構成の多層シートを作製した。また、表2には、この多層シートにおける発泡体層の密度(g/cm3)、発泡体層の連続気泡率(%)、多層シート厚み(mm)についても示した。さらに表2には、その多層シートの耐油性、多層シートを熱成形して得られた成形体の耐熱性及び低温耐衝撃性についても示した。
【0023】
表2に示した多層シートにおいて、ポリオレフィン系樹脂層(Z1)はその表面層を示し、ポリオレフィン系樹脂層(Z2)は裏面層を示した。
【0024】
多層シートの製法の具体的内容は以下の通りである。
実施例1〜4、比較例1〜2
発泡体層用の押出機として直径65mmと直径90mmの2台の押出機を、ポリオレフィン系樹脂層用の押出機としては直径50mmの押出機を、接着層用としては直径40mmの押出機を用い、口金(ダイス)としては、直径84mm、厚み0.5mmの円筒状細隙を有するものを用いた。
発泡体層は直径65mmの押出機で原料投入口より所定の量の樹脂および樹脂100重量部あたりタルク1重量部と表1で示したように樹脂100重量部あたりの添加剤の量を必要に応じて添加して加熱混練し、約200℃に調整された樹脂混合物に対して表2に示す発泡剤を表2に示すポリスチレン系樹脂100重量部あたりの量で圧入し、次いで、直径90mmの押出機に供給した。一方、ポリオレフィン系樹脂層は直径50mmの押出機より、接着層は直径40mmの押出機よりそれぞれポリスチレン系樹脂発泡体層形成用溶融物の片面又は両面に必要に応じて供給し、ダイス内部で発泡体層形成用溶融物と合流させ共押出した。なお、接着層には必要に応じて添加剤を、表1に示したようにポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂との混合樹脂100重量部あたりの量で添加した。
【0025】
実施例5
片面に接着層を介してポリオレフィン系樹脂層を形成し、もう一方の面は、接着層のみとした他は実施例1と同様に共押出を行った。
前記実施例1〜5、比較例1〜2にて押出された円筒状積層発泡体を、冷却された円筒に沿わせて引取り、切り開くことにより、多層シートとなし、これを巻き取った。
【0026】
表1の発泡体層(X)に関して符号で示したPS樹脂(ポリスチレン系樹脂)の具体的内容は後記に示すものを用いた。また、PS樹脂に配合したタルクは松村産業(株)製ハイフィラー#12を用いた。
【0027】
表1のPO樹脂(Z)に関して符号で示したPO樹脂の具体的内容は後記において示すものを用いた。
【0028】
表2に多層シートを構成する発泡体層(X)、接着層(Y)及びポリオレフィン系樹脂層(Z)の具体的内容について示した。
表2で示した発泡剤の、ブタンはn−ブタン70wt%とiso−ブタン30wt%からなるブタン混合物を示した。
表2の接着層(Y1、Y2)に関してPO樹脂(ポリオレフィン系樹脂)及び表1の添加剤の具体的内容は、後記に示すものを用いた。
なお、接着層(Y1)と接着層(Y2)の成分組成は同じものを用いた。
なお、表2のPO層(Z1)とPO層(Z2)の成分組成は同じものを用いた。
【0029】
前記多層シートに関して表2の耐油性、多層シートを熱成形して得られた成形体の耐熱性及び低温耐衝撃性の評価法は以下の通りで行なった。
(耐油性)
25mm×40mmの多層シートのポリオレフィン系樹脂層側を上にしてその中央に米炊飯調味油(フレッシュロールホワイト、(株)ローリング製)を0.025ml滴下し均一に延ばした後、80℃で5分間加熱し前後の変化を調べた。
○・・・・変化なし
×・・・シート表面に侵食有り
(耐熱性)
実施例及び比較例で得られた多層シートを単発成形機(三和興業株式会社製のPLAVAC−FE36HP型)にて開口部形状が直径150mmの円形、深さ70mmの容器(絞り比0.47)成形用金型を取り付けて真空成形を行った。この容器に水を500m1入れ、電子レンジ(500w)にて10分間加熱を行い、加熱前後の容器の変化を調べた。
○・・・・10分間加熱しても容器の変化なし
△・・・・5分間加熱しても容器の変形なし
×・・・・5分未満で容器の変化あり
(低温耐衝撃性)
実施例及び比較例で得られた多層シートを単発成形機(三和興業株式会社製のPLAVAC−FE36HP型〉にて開口部形状が縦150mm、横120mm、深さ30mmの容器(絞り比0.19)成形用金型を取り付けて真空成形を行った。この容器に内容物として150gの米飯を入れ、開口部を蓋材にてシールする。その後−25℃に2時間保持した後、室温(温度23℃、湿度55%)に取り出して2秒以内に高さ100cmからステンレス盤上に落下させた。この時の容器の破損状況を調べた。
○・・・・変化なしまたは容器にへこみが入るがわれは発生せず。
×・・・・容器に穴が開くまたは容器内側に亀裂が入る。
(接着強度)
表2におけるポリスチレン系樹脂発泡体層(X)とポリオレフィン系樹脂層(Z)との間の接着強度は多層シートより押出方向に平行な短冊状で幅25mmの試験片を切り出し、JIS Z0237に準拠し、剥離速度300mm/minの条件にて90°剥離試験にて測定して求めた値(gf/25mm)を接着強度(gf/25mm)とした。尚、本明細書において接着強度は上記の通り測定すればよいが、幅25mmの試験片が切り出せない場合は、できるだけ広幅の試験片を切り出し切り出した試験片について上記測定を行ない得られた値(gf)に(25/試験片の幅(mm))を掛け算して接着強度(gf/25mm)とする。
【0030】
表1において符号で示した樹脂の具体的内容を下記に示した。
(1)樹脂A
出光石油化学(株)製、「310E」(高密度ポリエチレン(HDPE)、溶融粘度ポイズ16500、密度0.965g/cm3
(2)樹脂B
出光石油化学(株)製、「520MB」(HDPE、溶融粘度ポイズ19000、密度0.964g/cm3
(3)樹脂C
三井化学(株)製、「5000S」 (HDPE、溶融粘度ポイズ21000、密度0.954g/cm3
(4)樹脂D
日本ポリオレフイン(株)製、「A820FS」(直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、溶融粘度ポイズ165000、密度0.929g/cm3
(5)樹脂E
出光石油化学(株)製、「210JZ」 (HDPE、溶融粘度8200ポイズ、密度0.968g/cm3
(6)樹脂F
出光石油化学(株)製、「MK211」(プロピレン−エチレンブロック共重合体、溶融粘度8000ポイズ、密度0.9g/cm3
(7)樹脂H
旭化成工業(株)製、「タフプレン125」(スチレンブタジエンスチレンエラストマー、溶融粘度12100ポイズ、密度0.95g/cm3
(8)樹脂I
エー・アンド・エム スチレン(株)、「G9001」(スチレン−メタクリル酸共重合体、溶融粘度26800ポイズ、密度1.1g/cm3
(9)樹脂J
出光石油化学(株)製、「HH32」(ポリスチレン、汎用ポリスチレン(GPPS)、溶融粘度20400ポイズ、密度1.05g/cm3
【0031】
前記樹脂に関して示したその溶融粘度は下記のようにして測定した。
(樹脂の溶融粘度)
剪断速度100sec-1の条件下の溶融粘度は、ノズル内径(D)が1.0mm、L/D=10(Lはノズル長(mm))のノズルを用い樹脂温度190℃の条件にてチアスト社製レオビス2100で測定した。
【0032】
【表1】
Figure 0004338114
【0033】
【表2】
Figure 0004338114
【0034】
【発明の効果】
ポリスチレン系樹脂発泡体層(X)の少なくとも片面に、接着層(Y)を介して−20℃でのアイゾット衝撃値が10KJ/m2以上、かつ、ビカット軟化点が100℃以上のポリオレフィン系樹脂またはポリオレフィン系樹脂組成物からなるポリオレフィン系樹脂層(Z)が積層された多層体であって、該多層体の低温での落錘衝撃試験による50%破壊エネルギーが0.3J以上であることを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡体/ポリオレフィン系樹脂多層体であることから、低温輸送中の衝撃による割れや冷凍雰囲気中から室温雰囲気中へ取出す際、落としても割れない等の低温耐衝撃性を有し、かつ、電子レンジでの加熱に耐えうる耐熱性や耐油性を有する多層体である。
さらにポリスチレン系樹脂発泡体層(X)の基材がビカット軟化点110℃以上のポリスチレン系樹脂からなることを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡体/ポリオレフィン系樹脂多層体であることから、電子レンジの加熱の際、長時間の加熱であっても発泡体層の熱変形がない優れた耐熱性を有する多層体である。

Claims (2)

  1. ポリスチレン系樹脂発泡体層(X)の少なくとも片面に、接着層(Y)を介して−20℃でのアイゾット衝撃値が10KJ/m2以上、かつ、ビカット軟化点がl00℃以上のポリオレフィン系樹脂またはポリオレフィン系樹脂組成物からなるポリオレフィン系樹脂層(Z)が積層された多層体であって、該多層体の低温での落錘衝撃試験による50%破壊エネルギーが0.3J以上であることを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡体/ポリオレフィン系樹脂多層体。
  2. ポリスチレン系樹脂発泡体層(X)の基材がビカット軟化点110℃以上のポリスチレン系樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載のポリスチレン系樹脂発泡体/ポリオレフィン系樹脂多層体。
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