本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る生体情報計測収集システムの全体の構成例の概略を示したもので、大きく分けて、健康管理センターに設けられた生体情報収集装置1と、各ユーザ宅に設置される生体計測装置とから構成される。なお、図1では、生体計測装置は、家庭内で用いる一般的な電話機2に搭載され、特に、電話機2の受話器に生体計測装置が内蔵されている場合を示している。
図1に示した生体情報計測収集システムは、健康管理センターがユーザへ電話をかけ、これを受けて当該ユーザが通話を行っている最中に、電話機2の受話器の所定箇所に設けられた第1および第2の接触面にユーザの耳朶や手の平がそれぞれ接触することで、受話器に内蔵された脈拍測定部201,皮膚発汗測定部202で、当該ユーザの脈拍や皮膚導電率の測定を行い、測定結果としての生体情報(第1の計測データと第2の計測データ)を健康管理センターへ送信するものである。
なお、生体情報収集装置1には、実際には、複数のユーザそれぞれに対応する生体計測装置を搭載した電話機2が接続されているが、ここでは、説明の簡単のため、1ユーザについて、当該ユーザから生体情報を収集する場合について説明する。
図1に示すように、健康管理センターに設置された生体情報収集装置1は、判定部101と対話制御部102と通信部103と記憶部104と診断部105とから構成されている。
対話制御部102は、図5に示すように、例えば、各ユーザ毎に予め定められた時間毎に、通信部103を用いてユーザ宅の電話機2に接続を行う発呼制御部302と、ユーザとの対話に用いる複数種類のメッセージ文のパターン(対話テンプレート)を記憶した対話テンプレート記憶部304と、音声認識部303と、制御部301などから構成されている。
制御部301は、主に、ユーザとの間の対話を行うためのもので、例えば、対話テンプレート記憶部304に記憶された複数の対話テンプレートの中から適当な対話テンプレートを選択して、当該対話テンプレート中の変数にその時々で必要なデータをセットしてメッセージ文を作成し、当該メッセージ文を音声に変換してユーザに送信したり、音声認識部303で認識された当該ユーザからの音声を基に、適当なメッセージを作成して通話を行ったりする。また、判定部101での判定結果を基に、対話テンプレート記憶部304から当該判定結果に適した対話テンプレートを選択して、ユーザと対話を行いながら、必要なデータを収集する。さらに、対話制御部102とユーザとの通話中に、当該ユーザの生体計測装置から送信されてきた生体情報は、通信部103で受信され、対話制御部102の制御部301を通じて判定部101に送られる。
なお、対話制御部102には、音声信号を符号化してディジタル信号に変換する機能と、例えば、ユーザ側から送信されてきたデータを復号して音声信号を復元する機能とを有しているものとする。
判定部101では、通信部103で受信した生体情報(第1の計測データと第2の計測データ)を対話制御部102を通じて受け取り、それを記憶部104に格納するとともに、受信した生体情報のデータが、ユーザの健康を診断するのに適しているか否かを、少なくとも当該データ量と当該データに含まれるノイズの量とから判定する。この判定結果を基に、対話制御部102は、当該ユーザとの対話に用いるメッセージを選択するようになっている。
診断部105は、記憶部104に記憶された生体情報を基に、当該ユーザの健康状態などを診断するようになっている。ここでの診断結果は、対話制御部102に送られ、対話制御部102でメッセージに含ませて当該ユーザに音声にて通知するようにしてもよい。
通信部103は、例えば、IP(Internet Protocol)パケットとして受信したデータを対話制御部102などに送るとともに、対話制御部102などから送られてきた送信データをIPパケットに変換し、宛先アドレスなどを含むヘッダを付与して、例えばインターネット、IP網等のネットワークへ送出する。
健康管理センターでは、この生体情報収集装置1が複数設けられていてもよい。各生体情報収集装置1は、ルータ6に接続されている。このルータ6は、いわゆるブロードバンド・ルータであり、健康管理センター内の各生体情報収集装置1をインターネットやIP網などに接続するようになっている。
図1に示すように、ユーザ宅の電話機は、電話機本来の機能を実現するための通話部204の他、本実施形態に係る生体計測装置を構成する脈拍測定部201と皮膚発刊測定部202と通話部203とから構成されている。
脈拍測定部21は、光電脈波により脈拍を測定するものであり、これは、公知効用技術で構成することができるものである。この脈拍測定部21で測定された脈拍の計測データ(第1の計測データ)は、通信部203へ送られる。
皮膚発刊測定部202は、GSR(Galvanic Skin Reflex; 皮膚電気反射)として皮膚導電率を測定するものであり、これも公知効用技術で構成することができるものである。この皮膚発汗測定部202で測定された皮膚導電率の計測データ(第2の計測データ)は、通信部203へ送られる。
ユーザが受話器を取って通話を行う際に、受話器がユーザに接する部分のうち、人体において光電脈波がはかりやすい箇所、すなわち、耳が接触する部分に第1の接触面が設けられていて、脈拍測定部201は、この第1の接触面に耳が接触することで、この耳(耳朶)から脈拍を測定するようになっている。すなわち、図2に示すように、人が受話器をもって通話を行う際に耳が接触する箇所に第1の接触面が設けられていて、この第1の接触面にユーザが通話を行う目的で耳が接触することで、脈拍を測定することができるようになっている。
同様に、ユーザが受話器を取って通話を行う際に、受話器がユーザに接する部分のうち、人体において、皮膚導電率がはかりやすい箇所、すなわち、ユーザの手の平、指が接触する部分に第2の接触面が設けられていて、皮膚発汗測定部202は、この第2の接触面に手の平、指が接触することで皮膚導電率を測定することができるようになっている。すなわち、図2に示すように、受話器の把持部に第2の接触面が設けられていて、ユーザが通話を行う目的で、この把持部を握ることで第2の接触面に手の平、指が接触して、皮膚導電率が測定できるようになっている。なお、図2では、ユーザが受話器の把持部を握っているときの様子を示している。従って、皮膚発汗測定部202の第2の接触面は、ちょうどユーザの手で把持されている部分に設けられているため、図2ではユーザの手で隠れて見えないようになっている。
電話機2(の電話機本来の機能を実現する通話部204)は、VoIP(Voice over IP)ゲートウェイ4に接続され、ここでは、受話器のマイクから入力した音声信号がIPパケット化される。また、VoIPゲートウェイ4(以下簡単にGW4と呼ぶ)に入力したIPパケットは、音声信号に復号されて電話機2(通話部204)へ送られるようになっている。VoIPゲートウェイ4は、ルータ5に接続されている。
本実施形態では、健康管理センターがユーザへ電話をかけ、これを受けて当該ユーザが通話を行っている間に、受話器に内蔵された脈拍測定部201,皮膚発汗測定部202で、当該ユーザの脈拍や皮膚導電率の測定を行い、測定結果(第1の計測データと第2の計測データ)を健康管理センターへ送信するものである。従って、ユーザと健康管理センターとの間で通話を行っている間に上記測定結果が健康管理センターへ送信されることが好ましい。このため、通信部203は、ルータ5に無線通信にて接続し、第1の計測データと第2の計測データをIPパケット化した後に、ルータ5に無線信号として直接送信する。ルータ5はいわゆるブロードバンド・ルータであり、通信部203から送信されたIPパケットと、GW4から送信されたIPパケットとをインターネットやIP網などを介して健康管理センターの生体情報収集装置1宛てに送信するとともに、インターネットやIP網などを介して受信した例えば健康管理センターからのIPパケットをGW4や通信部203へ出力する。この場合、通信部204に対応するIPアドレスと、生体計測装置の通信部203に対応するIPアドレスは異なる。
このように、ユーザ宅にある電話機2は、インターネット電話、あるいはIP電話を用いていることが望ましい。なお、通信部203と、ルータ5との間の通信は、無線通信であることが望ましく、またその方式は、例えば、Bluetooth(登録商標)であってもよい。
脈拍測定部201と皮膚発汗測定部202にて計測されたデータの一例を図3に示す。脈拍は、1秒間あたりの回数で計られている。通常、脈拍は60〜70回/秒でうたれている。同様に、皮膚発汗測定部202で計測されたGSRは、単位面積あたりの皮膚導電率としてμ/Sで計測されている。図3では、上方に示されているグラフが計測された脈拍のデータであり(第2の計測データ)、下方に示されているグラフがGSR(皮膚導電率)の計測データ(第1の計測データ)である。
本実施形態によれば、ユーザは、通常の生活においては、特に生体計測装置など身につける必要はない。
次に、図4に示すフローチャートを参照して、図1の生体情報計測収集システムの処理動作について説明する。
例えば、毎食後や就寝まえなど、ある計測対象のユーザに対し予め定められた時刻になると(ステップS1)、対話制御部102が、接続開始を通信部103に対し指示する(ステップS2)。通信部103は、当該ユーザに対応する生体計測装置が内蔵されている電話機2に向けて発呼する(ステップS3)。
ユーザが当該電話機2の受話器をとり、健康管理センターの生体情報収集装置1(の対話制御部102)との間で通話が開始される。まず、対話制御部102では、通話により、現在通話している相手が、計測対象のユーザであるか否かを確認する(ステップS4)。例えば、名前などを質問するなどして、通話している相手が計測対象のユーザであると確認できたときは、脈拍測定部201と皮膚発汗測定部202での測定を開始する(ステップS5)。すなわち、対話制御部102は、通信部203を通じて、ユーザ側の生体計測装置に対し計測開始を指示するためのコマンドメッセージをIPパケットとして送信する。
脈拍測定部201と皮膚発汗測定部202で測定された結果得られた計測データは、図3に示すようなものであれば、これが、通信部203を通じて、健康管理センターに送信される。このとき、ユーザが例えば万歩計(登録商標)などの携帯型の運動量測定機器であって、所定の無線通信機能を有していて、当該運動量測定機器にて測定された当該ユーザの運動量の計測データが定期的に通信部203あるいはルータ5に送られていて、蓄積されている場合には、そのような運動量の計測データ(第3の計測データ)もあわせて送信をするようにしてもよい。計測データは、当該ユーザとの通話中、例えば、所定間隔毎に送信される。
生体情報収集装置1では、通信部103を介して受信した上記のような第1および第2の計測データは、対話制御部102を通じて、判定部101へ渡される。
判定部101では、計測データを受け取ると、例えば、当該計測データのデータ量や当該計測データに含まれるノイズの量とから、当該計測データがユーザの健康を診断するのに適しているか否かを判定する。
例えば、脈拍測定部201や皮膚発汗測定部202のそれぞれに対応する第1および第2の接触面が計測対象のユーザの耳や手の平や指などに正しく接触していない場合には、計測データにはノイズが多く、正確な診断が行えない可能性がある。そこで、ステップS7において、判定部101は、まず、受け取った図3に示したような計測データにノイズが多いか否かをチェックする。
脈拍測定部201で測定された第2の計測データにノイズが多ければ(例えば、判定部101にて、予め定められたある閾値以上のノイズが検知できたときは)、対話制御部102では、ユーザの耳と受話器に設けられた脈拍測定部201の第1の接触面とがより広い面積でしっかり密着するように、対話にて誘導する(ステップS8)。例えば、健康管理センターからの音量が小さければ、当該ユーザが受話器を耳に密着させようとするであろうから、対話制御部102では、送信する音声メッセージの音量を小さくする。あるいは、「耳にきっちりと密着させてください」といった音声メッセージを送信するようにしてもよい。また、皮膚発汗測定部202で測定された第1の計測データにノイズが多ければ(例えば、判定部101にて、予め定められたある閾値以上のノイズが検知できたときは)、対話制御部102では、「受話器をもう少し強く握って下さい」といった音声メッセージを送信する。
一方、受け取った計測データにはノイズは多くないが、計測時間が短く、診断に必要な十分なデータ量でない場合には(ステップS9)、対話制御部102は、対話が途切れないように、たとえば、「本日の天気予報は、XXXですが、○○○ですか」、「本日の最高気温はYYY度で、暑かった(寒かった)ですね」、「明日は何をする予定ですか」、「運動量が少ないようですね、仕事が忙しいですか」、「最近はよく運動できてますね。歩くことに慣れましたか?」、といった世間話などの一般的な話をすることで、対話時間を長く引き延ばして、脈拍測定部210や皮膚発汗測定部202での計測時間を延ばし、脈拍測定部210や皮膚発汗測定部202で十分なデータ量の計測データが得られるようにする(ステップS10)。
対話制御部102は、上に挙げたような複数種類の対話テンプレートを対話テンプレート記憶部304に記憶しており、これと、例えば、リアルタイムにインターネットを検索して得られた、その日の天候や温度などを上記テンプレート中の変数に対応する「XXX」や「○○○」に代入して、メッセージ文を作成し、これを音声に変換して、当該ユーザと対話を行う。
対話制御部102から送信されたメッセージに対する、当該ユーザからの応答は、音声認識部303により認識されて、その結果が、判定部101、記憶部104へ送られる。
十分なデータ量が得られたが、例えば、ユーザによっては、健康状態の診断のために、上記第1および第2の計測データ以外にも、たとえば、食事量などに関するデータも必要である場合がある。このような第1および第2の計測データ以外の他のデータは、当該ユーザとの対話を通して取得する(ステップS11、ステップS12)。
たとえば、「夕食はいかがでした?すべて食べられましたか?」、「朝は眠いですが、朝食はおいしく食べられましたか?」、「忙しかったでしょう。今日もお昼はおそばで済ませたのですか?」、といった、食事に関する対話テンプレートが対話テンプレート記憶部304に記憶されており、これをもとに対話制御部102は、メッセージ文を生成して、当該ユーザと対話を行う。この対話の最中に当該ユーザから送信された回答が音声認識部303により認識され、認識結果が、判定部101、記憶部104に送られる。
以上のようにして、通信相手の計測対象のユーザとの間の対話を通じて、第1および第2の計測データや、その他のデータといった、当該ユーザの健康状態についての診断に必要なデータが獲得されると、対話制御部103は、診断部105に記憶部104に記憶したデータを基に所定の処理を行う指示を発するとともに、対話を終了する。
診断部105は、記憶部104に記憶された、通信相手の計測対象のユーザとの間の対話を通じて取得した、第1および第2の計測データや、その他のデータなどを基に、所定の処理を行い、当該ユーザの健康状態についての診断を行う。この診断結果は、記憶部104に記憶するとともに、対話制御部102に送られ、対話制御部102でメッセージに含ませて当該ユーザに音声にて通知するようにしてもよい。その後、対話制御部102は、健康管理センター100の通信部103と、当該計測対象のユーザ宅の電話機2の通話部204および通信部203との間の通信を終了する(ステップS13)。
なお、ステップS10において、計測時間を長くするための対話を引き延ばすときに、ステップS13において当該ユーザから聞き出すべき内容、すなわち、例えば、食事に関する事柄を聞き出すようにしてもよい。この場合、ステップS11では、診断のために必要な他のデータがすでに得られていると判断されるので、ステップS12は省略される。
また、本実施形態では、脈拍と皮膚導電率を測定しているが、必ずしも、これに限定されるものではない。たとえば、生体計測装置として、携帯可能な小型血圧測定部計を用いて血圧測定部を設けて血圧を測定したり、非侵襲の血糖値センサを用いて血糖値測定部を設けて血糖値を測定するようなものであってもよい。その場合には、人体のどの場所で測定するかに応じて、接触面や接触方法を変更することで対応が可能である。
また、図1では、家庭内の所定箇所に固定して用いる電話機に搭載された生体計測装置の場合を示しているが、携帯可能な電話機(携帯電話機)に搭載された生体計測装置の場合もほぼ同様である。すなわち、この場合の携帯電話機の構成は、図1の電話機2の構成において通話部204が通信部203の機能を兼ね、計測データは通話部204を通じて、生体情報収集装置1へ送信する。この場合、例えば、通話と計測データの送信とを交互に(例えば、通話時と計測データの送信時とが重ならないように分けて)行うようにすれば、1回線の通信回線でも適用可能である。また、図1の場合と同様、脈拍測定部201の第1の接触面は携帯電話本体の、ユーザの耳が接する部分に設け、皮膚発汗測定部202の第2の接触面は、携帯電話を手で支え持つ部分に設けるようにすればよい。
図1は、生体計測装置が電話機に搭載された場合について説明したが、必ずしもこれに限定されるわけではない。例えば、図6に示すように、ペットロボット7に埋め込む(ペットロボットに搭載された)ような形態であってもよい。図6に示した実施形態の場合、計測対象のユーザが手の平で、のどをなぜる動作で脈拍が測定できるように、図7に示したように、ペットロボットののどの部分に脈拍測定部201の第1の接触面を設けている。また、「よしよし」と背中をなぜるしぐさで、皮膚発汗が測定できるように、図7に示したように、ペットロボットの背の部分に皮膚発汗測定部202の第2の接触面が設けられている。
脈拍測定部201の第1の接触面や皮膚発汗測定部202の第2の接触面を設ける部分は、なにもペットロボットの、のどや背に限定されるものではない。例えば、ペットロボットが犬型の場合には、「お手」のしぐさで、計測対象のユーザの手の平にペットロボットの前脚をのせるので、このとき、皮膚発汗と脈拍とを同時に測定できるように、「お手」のしぐさで前脚の当該ユーザの手の平に接触する部分(例えば、前足の裏側)に皮膚発汗測定部202の第2の接触面を、表側に脈拍測定部201の第1の接触面を設けるようにしてもよい。
ペットロボットが犬型でなく、猫や熊など他の形状の場合には、その形状にあわせて、ユーザが手でよく触ったりする部分に脈拍測定部201や、皮膚発汗測定部202の第1、第2の接触面を設けるようにする。
このように、生体計測装置をペットロボットに組み込む(内蔵する)場合、ユーザがペットロボットを触る際に、ユーザが思わず接触したくなるようなペットロボットの部分(ユーザの手の平がよく接触する部分)にこれら測定部対応の接触面を設けることにより、ユーザがペットロボットをかわいがるついでに(ユーザが意識することなく)脈拍や皮膚導電率を測定することができるのである。なお、生体計測装置を組み込むものは、ペットロボットでなくとも、近寄ってくれば、思わず接触したくなるような形状のものであれば何でもよい。
図6において、図1と同一部分には同一符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。
生体計測装置がペットロボット7に内蔵されている場合、ペットロボット7自体の動作を制御する動作制御部205が通信部203に接続されている。また、図1に示した電話機2に内蔵されている場合には、健康管理センターに設けられた生体情報収集装置1との間で計測対象のユーザと電話で対話を行う間に、生体情報を収集していたが、図6に示した構成の場合には、生体情報収集装置1がペットロボットの動きを通信部203を通じて制御を行い、ペットロボット7が飼い主のもとにいき、体を摺り付け、身体に触ってもらうように働きかける動作を行わせることで、生体情報を収集するようになっている。
動作制御部205には、ペットロボット7と計測対象のユーザが対話できるように、マイク、スピーカを有していてもよい。この場合、ペットロボット7は、生体情報収集装置1からの動作制御に基づき対話を行い、ペットロボットが発したメッセージに対するユーザの反応としての音声は、通信部203を通じて情報収集装置1に送信される。
なお、図1の場合と同様、生体情報収集装置1には、実際には、複数のユーザそれぞれに対応するペットロボット7(生体計測装置を含む)が接続されているが、ここでは、説明の簡単のため、1ユーザについて、当該ユーザから生体情報を収集する場合について説明する。さらに、健康管理センターでは、この生体情報収集装置1が複数設けられていてもよい。各生体情報収集装置1は、例えば、ルータ(ブロードバンド・ルータ)6に接続されて、健康管理センター内の各生体情報収集装置1をインターネットやIP網などを通じて、各ペットロボット7の通信部203に接続するようになっていてもよい。
さて、図6の説明に戻り、健康管理センターに設置されている生体情報収集装置1は、図1の対話制御部102の構成が異なる。すなわち、図8に示すように、対話制御部102は、発呼制御部302に代えてペットロボット動作制御部305が設けられている。
ペットロボット動作制御部305は、計測対象のユーザから所望の生体情報を収集するために、図1における発呼の代わりにペットロボット7の動きや対話を制御するためのものである。
図9は、図6の示した生体情報計測収集システムの処理動作を説明するためのフローチャートである。なお、図9において、図4と同一部分には同一符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。すなわち、図9では、図4のステップS3に代えて、ステップS3aにおいて、対話制御部102による接続開始の指示で、通信部103からペットロボット7に対し、ペットロボット7が飼い主のもとにいき、体を摺り付け、身体に触ってもらうように働きかける動作を行うように指示する。そして、図4のステップS4に代えて、ステップS4aとして、飼い主である計測対象のユーザがペットロボット7に触っているかどうかの判定をおこなう。飼い主がペットロボット7に触っている場合には、ステップS5へ進み、前述同様、生体情報の計測を開始する。
また、図9では、ステップS7で、第1および第2の計測データにノイズが多い場合には、接触をより密着にしかも接触面積が広くなるようにユーザを誘導するために、図4のステップS8に代えてステップS8aとして、ペットロボット7のしぐさでユーザを誘導する。同様に、図9では、ステップS9で、計測時間が短く、診断に必要な十分なデータ量でない場合には、図4のステップS10に代えてステップS10aとして、単に対話だけでなく、ペットロボット7の動作(しぐさ)で、ペットロボット7への接触を長引かせるようになっている。さらに、図9では、ステップS11で、第1および第2の計測データ以外の他のデータが必要である場合には、図4のステップS12に代えてステップS12aとして、前述したような単なる対話だけでなく、ペットロボット7の動作(しぐさ)も交えて、必要なデータを収集する。
生体計測装置が電話機2やペットロボット7に搭載(内蔵)されている場合であっても、計測対象のユーザとの対話は、全て、対話制御部102にて行う必要はない、例えば、週1回とか、月1回など、定期的に、訪問看護婦、あるいはカウンセラー、あるいはホームヘルパー、介護プランナーなどが、利用者の生の情報を獲得するために、人間自身が、電話機402を通じて対話し、情報収集を行うようにすることも可能である。
また、図6に示した構成の場合、図9のステップS12aにおいて、ペットロボット7と計測対象のユーザとの対話を行うことなく、健康管理センター側から看護婦などの人間が当該ユーザに電話をかけて上記他のデータを収集するようにしてもよい。
以上説明したように、上記第1の実施形態によれば、ユーザは、生体計測装置を身につける必要なく、また自分で計測時刻などを管理する必要なく、電話で通話している最中に、あるいはペットロボットと遊ぶ最中に、といった通常の生活行動の中で、特別な注意をはらう必要なく(意識することなく)、ユーザに全く負担をかけずに、定期的に、健康管理に必要な生体に関するデータの計測と収集が行える。
さらに、高齢者などは、計測のためとはいえ、定常的に他者、あるいはペットロボットなどとのふれあいをもつので、身体的に異常があって、電話をとることができないといった緊急事態を、高齢者にプライバシーが侵されているという警戒感を抱かせることなく、自然に検知をおこなうことが可能となる。
なお、上記第1の実施形態では、人間の健康管理を目的として、人間の生体情報を計測・収集するためのものであったが、同様にして、ペットの健康管理を目的として、計測対象を人間ではなく動物の場合であっても、本発明の生体情報計測収集システムは適用可能である。
そこで、次に、計測対象を動物とした場合の、生体情報計測・収集システムについて説明する。
図10は、ねこや犬や小鳥などのペットとして動物を計測対象とする生体情報計測・収集システムの全体の構成例の概略を示したものである。なお、図1において、図10と同一部分には同一符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。すなわち、図10において、脈拍測定部201や皮膚発汗測定部202などを有する生体計測装置は、ペットがいやがらずに通常身につけていることのできる首輪などの装身具に設けられている(図11参照)。以下、一例として首輪10と一体化されている場合について説明する。この場合、ペットの日常的な動きを計測することのできる加速度測定部206が設けられていることが望ましい(しかし、必ずしも有している必要はない)。
首輪10には、通信部201が設けられ、ここから、脈拍測定部201や皮膚発汗測定部202、加速度測定部206での測定結果としての生体情報(第1〜第3の計測データ)が生体情報収集装置1に送信されるとともに、生体情報収集装置1からの各種指示が、脈拍測定部201や皮膚発汗測定部202、加速度測定部206に伝えられる。
首輪10のペットの首に接触する面には、脈拍測定部201で脈拍を測定するための第1の接触面、皮膚発汗測定部202で皮膚導電率を測定するための第2の接触面が設けられている。なお、第1および第2の接触面が1つの接触面として設けられていてもよい。
次に、図12に示すフローチャートを参照して、図10の生体情報計測・収集システムの処理動作について簡単に説明する。
ある計測対象のペットに対し予め定められた時刻になると(ステップS101)、対話制御部102が、接続開始を通信部103に対し指示する(ステップS102)。通信部103は、当該ペットに対応する生体計測装置が内蔵されている首輪10に内蔵されている通信部203と通信を行うことにより、脈拍測定部201、皮膚発汗測定部202、加速度測定部206での測定を開始させる。そして、脈拍測定部201、皮膚発汗測定部202、加速度測定部206のそれぞれにおける測定結果(第1〜第3の計測データ)は、通信部203を通じて、健康管理センターの生体情報収集装置1に送信される(ステップS103)。あるいは、それまでに計測されて、予め蓄積された第1〜第3の計測データを生体情報収集装置1に送信するよう指示するようにしてもよい。
生体情報収集装置1では、通信部103を介して受信した上記のような第1〜第3の計測データは、対話制御部102を通じて、判定部101へ渡される。
判定部101において、当該計測データに予め定められたある閾値以上のノイズを検知したときは(ステップS106、ステップS107)対話制御部102は、飼い主のユーザに対し発呼して、電話を用いた通話により、首輪10の装着状態をチェックさせ、例えば、首輪10に設けられた第1および第2の接触面がペットの首に密着するようにつけなおしてもらう(ステップS108)。
上記第1〜第3の計測データ以外の、たとえば、食事量などに関する他のデータも必要である場合には、対話制御部102は、飼い主と、電話を用いた通話により、当該他のデータを取得する(ステップS111、ステップS112)。このとき、飼い主に向けて発呼する必要がるときは、発呼を行う。
以上のようにして、第1〜第3の計測データや、その他のデータといった、当該ペットの健康状態についての診断に必要なデータが獲得されると、対話制御部103は、診断部105に記憶部104に記憶したデータを基に所定の処理を行う指示を発するとともに、飼い主との対話を終了する(ステップS113)。
なお、首輪10に内蔵された生体計測装置は、充電式であることが想定されるので、その場合には、ステップS109〜ステップS110に示したように、例えば、ペットに装着してから所定期間経過後に、電池の残量についてのチェックを行うために、飼い主に電話で問い合わせるようにしてもよい。また、ステップS104〜ステップS105に示したように、クレードル(cladle)のような首輪10を充電するための充電機器が備わっているならば、クレードルに首輪が置かれて充電中であることを確認できるようにしてもよい。充電中の場合には、生体情報の計測は不可能であるから、例えば、所定時間経過してもまだ充電中である場合には、対話制御部102は、飼い主に電話でペットに装着すよう促すようにしてもよい。
以上説明したように、図10に示したような生体情報計測・収集システムを用いれば、飼い主に負担をかけずにペットの生体情報を定期的に計測・収集することができる。
(第2の実施形態)
上記のような生体情報計測・収集システムは、例えば、家庭内で用いることを前提とし、人やペットの健康管理(生体情報の収集と計測)を定期的を行うものであった。
次に、上記生体情報計測・収集システムの応用例として、例えば、マラソンなどのイベントへの参加や、テーマパークなどにある遊戯施設(娯楽施設)を利用する際の、身体的な条件が満足されているかどうかを、人間に違和感なく検査する生体検査システムに適用した場合について説明する。
図13は、第2の実施形態に係るテーマパークにある遊具施設への入場者や利用者を検査するための生体検査システム全体の構成例を概略的に示したもので、主に、入場口に配置される検査ロボット501と、この検査ロボット501から検査結果についてのデータを収集・管理するイベント管理センター内に設置される端末装置502とから構成されている。なお、検査ロボット501は、複数の入場口のそれぞれに配置されて、各検査ロボット501から送信されてきたデータを端末502にて一元管理するようになっていてもよい。
検査ロボット501は、テーマパークの遊具施設などの利用者、あるいはマラソンなどのイベントの参加者に対して、身長、血圧、体温、血中アルコール度などの条件が問題ないかどうかを判定するものである。
以下、テーマパークの遊具施設の入場口に配置されて、当該遊具施設を利用しようとする利用者それぞれについて、当該遊具施設の利用可能できる条件を満たしているか否かを検査する場合を例にとり説明する。
検札ロボット501は、利用者の血圧や体温、血中アルコールなどの生体計測を行うための生体計測部511と、予め定められた当該遊具施設を利用することのできる、年齢、身長、血圧値や体温などの基準値を利用条件として記憶する条件記憶部512と、利用者との間で対話を行って、年齢などを聞き出すなど、生体計測部511で得たデータでは不十分な場合や、生体計測部511で得たデータにノイズが多く含まれている場合などに、利用者との間で対話で必要なデータを収集するための対話制御部514、生体計測部511で計測された利用者の血圧値や体温など、対話を通じて得られたデータなどが、条件記憶部512に記憶されている利用条件を満たしているか否か(入場可能か否か)を判定するための判定部512、この判定部512での判定結果をイベント管理センター内の端末502に送信するための通信部516、逆に端末502からの指示などを通信部516で受信すると、当該受信された指示内容に基づき検査ロボット501の動作を制御するための動作制御部515から構成されている。
生体計測部511は、利用者の身長を計測する身長計測部が含まれていてもよい。例えば、対話制御部514にて、利用者と対話を行いながら、センサなどを用いて当該利用者に気づかれることなく身長を測定するようになっていてもよい。
判定部512では、生体計測部511で測定したデータ中のノイズの量をチェックする機能を有している。ここで、計測データ中に予め定められたある閾値以上のノイズが検知できたときは、対話制御部514を通じて対話により利用者から必要なデータ収集するといった動作が行われる。
対話制御部514も第1の実施形態と同様、各種対話が行えるように、複数種類の対話テンプレートを記憶する対話テンプレート記憶部、利用者の発言を音声認識する音声認識部などを有している。
また、対話制御部514における対話により、例えば、検査対象の利用者に呼気で風船を膨らますように催促して、生体計測部511で膨らんだ風船内の呼気のアルコール含有量を測定するといった生体情報の測定方法も可能である。
生体計測部511で計測される生体情報には、例えば、脈拍のように、利用者に接触しないと測定できないものもある。そのような生体情報を測定するためには、対話制御部514における対話と、検査ロボット501の動作により、例えば、利用者と握手して、その間に生体情報を測定するようにすればよい。このような生体情報を収集するためのロボットの動作制御などは、動作制御部515にて行われる。また、握手を行うことで利用者の手と接触して生体情報を計測する場合、ロボットの手の平対応する部分に当該生体情報を計測するための接触面を設けておく。また、この接触面は、検査対象の利用者が思わす接触したくなるような形状や材質で構成されていることが望ましい。そのような接触面であれば、何も「握手」という行動を行うことなく、検査対象の利用者が自らの意志で接触しようとするからである。
イベント管理センターは、通信部521と、通信部521で受信した判定結果を蓄積管理するための管理部522から構成されている。管理部522は、さらに、所定の条件を満たし、入場可と判定された利用者は入場させ、入場不可と判定された利用者を入場させないように、門扉の開閉などの制御を行う制御部が接続されていてもよい。また、管理部522は、遊具施設の混雑度などから入場制限などの指示を、通信部521を介して、検査ロボット515に行うようにしてもよい。
テーマパークなどに設けられた遊具施設の利用、入場に際しては、単に入場券などのチェック(検札)だけでなく、身長や血圧が適正か、酒気を帯びていないかなどの利用者、入場者の身体に関しても所定の条件を満たしているか否かをチェックする必要がある。また、マラソンの参加者に対しては、平熱かどうか、血圧は正常化などのチェックが必要である。しかし、混雑時などは、一人一人チェックすることが不可能に近い。
しかし、上記第2の実施形態に係る検査システムによれば、利用者が順番待ちをしている間に、利用者を退屈させないばかりか、利用者に負担をかけずに、各利用者について、その身体的、生体・生理的な事柄が予め定められた条件を満たすか否かを容易にチェックすることができるのである。