JP4334205B2 - プレート型熱交換器およびその防汚装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術の分野】
この発明は、プレート型熱交換器およびその防汚装置に関する。さらに詳細には、海水冷却水系に設置した場合にも、海生付着生物、スライムおよびスケールなどの汚れが表面に付着しないプレート型熱交換器およびその防汚装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱交換器は、温度の異なる流体の熱的な接触によって熱エネルギーの交換を行なう装置であり、流体を介して各種装置の冷却、加温を行なったり、流体の覆水、気化などに広く用いられている。なかでもプレート型熱交換器は、省スペースが可能で機器の重量が軽く、熱効率の高い熱交換器として各種産業で利用されている。
【0003】
海水を冷却水として利用する火力発電所や石油精製工場などでは、その冷却水系にムラサキイガイ、フジツボ、ヒドロムシ、コケムシなどの海生付着生物やスライムなどが付着して各種障害が生じるという問題がある。特に熱交換器に付着した場合には、熱交換率を著しく低下させ、さらに剥離した海生付着生物やスライムがストレーナを閉塞させるなどの障害が生じる。
【0004】
上記障害を防止するために、熱交換器の金属表面を陽極とし、陰極を対置し、それと接触する水を電解して、該陽極表面より水素イオンと酸素を発生させて、生物またはスケールの沈積物の形成を防止する方法(特許文献1参照)や、海水と接する構造物の海水側表面に電気的触媒を設け、電気的触媒から酸素を発生させて海生生物の付着を防止する海水に接する構造物の防汚装置(特許文献2参照)などが提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特公平1−46595号公報(特許請求の範囲第1項)
【特許文献2】
特開2002−167725号公報(【0006】)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、海水冷却水系にプレート型熱交換器を設置した場合に、伝熱プレート間距離が狭いため、少量の付着物により熱効換率の低下などの障害が生じる可能性があり、海水冷却水系では該プレート型熱交換器の使用が懸念されていた。
また、海水を電気分解することによって該熱交換器表面への海生付着生物等の付着を防止するには、作用極および対極を設置する必要があり、プレート型熱交換器を作用極とする場合には、該熱交換器表面全体をほぼ全面にわたって電極として作用させる必要があるために、熱交換器面積に相当する面積を有する対極を伝熱プレートの間に入れることが必要となる。また、別途電解槽を設け海生生物付着防止剤などの薬剤による処理を行なう場合には、設置スペースが必要になり、プレート型熱交換器の利点である省スペース化が不可能となる。
【0008】
この発明は、上記のような問題点に鑑み、プレート型熱交換器を海水冷却水系に設置した場合にも、該熱交換器表面への海生付着生物、スライムおよびスケールなどの汚れの付着を防止して、省スペースを確保し、なおかつ長期間にわたり熱交換能を持続させることが可能なプレート型熱交換器およびその防汚装置を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明の発明者らは、プレート型熱交換器の防汚技術について鋭意研究した結果、プレート型熱交換器の各伝熱プレートの接触部分が短絡しないように絶縁処理を施した上で、該プレート型熱交換器の伝熱プレートを電極として直流電流を印加する電源を設け、陽極プレートと陰極プレートとを交互に配置することにより、海水冷却水系にプレート型熱交換器を設置した場合においても、該熱交換器表面への海生付着生物、スライムおよびスケールなどの汚れの付着を防止して、長期間にわたり熱交換能を持続させることができる事実を見出し、この発明を完成するに到った。
【0010】
すなわちこの発明においては、プレート型熱交換器の各伝熱プレートの接触部分が短絡しないように絶縁処理を施しこれらを電極とすることから電極面積が広く、さらに陽極プレートと陰極プレートとを交互に配置することで、電極間の距離が狭く溶液抵抗が小さくなるため電流の流れが非常によい。また、印加電流が小さい範囲であれば、電極表面には冷却水の水流があることから、電極から発生するH+イオンやOH−イオンが電極表面に滞留せず、電極周辺のpH変化が少なくなる。よって、電極周辺のpH低下による塩素発生や、電極周辺のpH上昇によるスケール発生・沈着といった問題を生じることなく、伝熱プレート電極からの酸素あるいは水素の発生により海生付着生物やスライムの付着が抑制され、長期間にわたり熱交換能を持続させることができる。
【0011】
かくしてこの発明によれば、プレート型熱交換器において、各伝熱プレートの接触部分が短絡しないように絶縁処理を施し、各プレートを電極として直流電流を印加する電源を設け、陽極プレートと陰極プレートとを交互に配置するとともに、直流電流を印加する電源が、電流方向を定期的に逆転することを特徴とするプレート型熱交換器の防汚装置が提供される。
【0012】
【発明の実施の形態】
この発明のプレート型熱交換器は、各伝熱プレートの接触部分が短絡しないように絶縁処理を施すことを特徴とする。絶縁処理としては、塩化ビニル、特に耐酸化性に優れ劣化しない素材のもの、または繊維強化プラスチックからなる絶縁性シートまたは絶縁性接着剤を介する処理などが挙げられる。
【0013】
この発明におけるプレート型熱交換器としては、ヘリンボンパターン、コルゲートパターンなど種々の伝面形状のプレートが装備されたプレート型熱交換器を好適に使用することができる。
【0014】
また、この発明におけるプレート型熱交換器のプレートの材質としては、冷却水の種類や水質によって異なるが、チタンおよびチタン合金、ステンレス、銅および銅合金、ニッケルおよびニッケル合金などを好適に使用することができ、チタンまたはチタン合金を使用するのが好ましい。
【0015】
またこの発明においては、上記プレート型熱交換器の伝熱プレートを電極として直流電流を印加する電源を設け、陽極プレートと陰極プレートとを交互に配置することを特徴とするプレート型熱交換器の防汚装置が提供される。電源は直流電源であればよく、伝熱プレート電極間に通電可能なように接続され、電圧あるいは電流を設定できるものであればよい。電池あるいはコンデンサーなどを電源として用いることもできる。印加する直流電流は、0.0001〜3A/dm2、好ましくは0.01〜1A/dm2の範囲とするのが、伝熱プレート電極から酸素あるいは水素イオンが発生して、該熱交換器表面への汚れ付着防止効果が得られる点からよい。
【0016】
この発明の装置において、プレート型熱交換器の伝熱プレート電極の少なくとも冷却水通路側の一部の表面に、白金族元素の単体、白金族金属酸化物またはマンガン、スズ、タンタルもしくはそれらの酸化物を含有する被覆処理を施すことにより、陽極プレートからの電極材質の溶出を抑えることができることから好ましい実施態様である。このとき、冷却水通路側の伝熱プレート電極面積の30%以上に被覆処理を施すのが好ましく、50%以上に被覆処理を施すのがさらに好ましい。また、白金族金属としては、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウムなどが挙げられる。
【0017】
さらにこの発明の装置においては、印加する直流電流の方向を定期的に逆転し、伝熱プレート電極の極性を反転させることが、電極の耐久性および電極へのスケール汚れ付着防止の点から好ましい実施態様である。前記電極極性の反転の間隔に特に制限はないが、通常1〜1000時間、好ましくは1〜750時間、さらに好ましくは1〜250時間とするのがよい。1時間より短いと反転の回数が増加し電流の反転に伴う電極としての消耗が増加することから好ましくなく、また1000時間より長いと伝熱プレート電極表面に付着物が増加して伝熱効率が悪くなったり、電流を反転した場合にも付着物の除去が不能あるいは不十分となってしまうことから好ましくない。
【0018】
また、この発明のプレート型熱交換器およびその防汚装置を特に海水冷却水系に設置する場合には、この発明の効果を阻害しない限りにおいて、海水冷却水系に過酸化水素や塩素剤、臭素剤などの海生生物付着防止剤等の薬剤を注入する冷却水処理を適宜併用することができる。
【0019】
【実施例】
この発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、この発明はこれらの実施例により限定されるものではなく、この発明の技術範囲において種々の変形例を含むものである。
【0020】
実施例1
図1は実施例1に係るモデルプレート型熱交換器およびその防汚装置の構成図であり、矢印は海水冷却水および被冷却媒体の流れを示す。直流電源1はモデルプレート型熱交換器に通電可能なように接続され、電流を可変させることによって、電流印加条件を変えることができるものである。図2は実施例1に係るモデルプレート型熱交換器のうち、3枚のチタン製伝熱プレート電極の拡大図であり、矢印は海水冷却水および被冷却媒体の流れを示す。符号3で代表されるチタン製伝熱プレート電極の接触部分には、エポキシ樹脂による絶縁処理を施し、また海水冷却水通路側のチタン製伝熱プレート電極4の絶縁処理が施されていない部分に、表1に示す金属物質による被覆処理を施した。実施例1の熱交換器およびその防汚装置に、冷却水として1m3/hrの海水量を通過させ、表1に示す電流密度の直流電流を印加して、所定の周期で極性を反転させながら30日間試験を行なった。試験終了後、海水冷却水通路側の伝熱プレートに海生生物、スライムおよびスケールによる汚れの付着は見られなかった。
【0021】
【表1】
【0022】
比較例1
図3は比較例1に係るチューブ型熱交換装置のモデル図である。矢印は海水冷却水の流れを示し、直流電源5はチューブ型熱交換装置に通電可能なように接続され、電流を可変させることによって、電流印加条件を変えることができるものである。陽極7として表2に示す各種金属を使用し、また陰極としてチタン製熱交換器チューブ6、あるいはチタン製熱交換器チューブ6内面全面に表2に示す金属物質による被覆処理を施したものを使用した。また、比較例1の装置に1m3/hrの海水量を通過させ、表2に示す電流密度の直流電流を印加し、所定の周期で極性を反転させながら30日間試験を行なった。試験終了後、チタン製熱交換器チューブ6の内面にスケールによる汚れの付着が見られた。
【0023】
【表2】
【0024】
【発明の効果】
この発明のプレート型熱交換器およびその防汚装置は、特別な設備を要することなく海水冷却水系にも設置でき、該熱交換器には海生付着生物、スライムおよびスケールなどの汚れが付着することなく、長期間にわたり熱交換能が持続できるため、産業上極めて有用である。
【0025】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1に係るモデルプレート型熱交換器およびその防汚装置の構成図である。
【図2】実施例1に係るモデルプレート型熱交換器の3枚のチタン製伝熱プレート電極の拡大図である。
【図3】比較例1に係るチューブ型熱交換装置のモデル図である。
【符号の説明】
1 直流電源
2 チタン製伝熱プレート電極
3 絶縁処理が施されたチタン製伝熱プレート電極の接触部分
4 海水冷却水通路側のチタン製伝熱プレート電極
5 直流電源
6 熱交換器チューブ(陰極)
7 陽極
8 フランジ
Claims (3)
- プレート型熱交換器において、各伝熱プレートの接触部分が短絡しないように絶縁処理を施し、各プレートを電極として直流電流を印加する電源を設け、陽極プレートと陰極プレートとを交互に配置するとともに、直流電流を印加する電源が、電流方向を定期的に逆転することを特徴とするプレート型熱交換器の防汚装置。
- プレート型熱交換器の伝熱プレートがチタンまたはチタン合金製であり、該伝熱プレートの少なくとも冷却水通路側の一部の表面に白金族金属元素の単体、白金族金属酸化物またはマンガン、スズ、タンタルもしくはそれらの酸化物を含有する被覆処理が施された請求項1記載の装置。
- 海水冷却水系に設置された請求項1または2のいずれかに記載の装置。
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