JP4328940B2 - 投影光学系、露光装置、および露光方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、投影光学系、露光装置、および露光方法に関し、特に半導体素子や液晶表示素子などのマイクロデバイスをフォトリソグラフィ工程で製造する際に使用される露光装置に好適な投影光学系に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体素子等を製造する際に、マスクとしてのレチクルのパターン像を、投影光学系を介して、レジストの塗布されたウェハ(またはガラスプレート等)上に転写する露光装置が使用されている。この種の露光装置では、半導体集積回路等のパターンの微細化が進むに従って、投影光学系に対する解像力の向上が望まれている。投影光学系の解像力を向上させるには、露光光の波長をより短くするか、あるいは開口数をより大きくすることが考えられる。近年、露光光の短波長化のために、たとえばArFエキシマレーザー光源(193nm)が用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ArFエキシマレーザー光源では、狭帯域化が進められているものの、依然として数分の1pm程度の半値幅がある。したがって、すべての光学部材が石英で形成されている投影光学系に対してArFエキシマレーザー光源を用いると、無視することのできない量の色収差が発生する。その結果、投影光学系を介して形成される像のコントラストが低下し、像の劣化の原因となる。
【0004】
そこで、ArFエキシマレーザー光源のさらなる狭帯域化が望まれるが、狭帯域化にも限界がありその改善も困難であるため、石英からなる光学部材(以下、単に「石英レンズ成分」という)と蛍石からなる光学部材(以下、単に「蛍石レンズ成分」という)とを組み合わせて色収差を補正する方法が考えられる。しかしながら、蛍石は、固有複屈折性を有し、また均質性の良いレンズ成分を製造することが難しく、フレアなどの原因になる可能性があるとされている。したがって、投影光学系において蛍石レンズ成分を無制限に用いることは好ましくない。
【0005】
一方、石英レンズ成分では、ArFエキシマレーザー光の影響により、体積収縮による局所的屈折率変化すなわちコンパクションが起こると考えられている。換言すれば、光エネルギーの比較的大きい位置に石英レンズ成分を配置すると、コンパクションが起こり易く、投影光学系の結像性能が低下する可能性がある。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたものであり、石英レンズ成分と蛍石レンズ成分との適切な組み合わせにより、蛍石の固有複屈折や石英のコンパクションなどの影響を良好に抑えつつ、色収差の良好に補正された結像性能の高い投影光学系を提供することを目的とする。また、本発明は、たとえばArFエキシマレーザー光に対して高い結像性能を有する投影光学系を用いて、高い解像力で良好な投影露光を行うことのできる露光装置および露光方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明の第1形態では、第1面の像を第2面上に形成する投影光学系において、
前記投影光学系中の複数のレンズのうち最も第2面側に配置されて蛍石で形成された第1蛍石レンズと、該第1蛍石レンズの前記第1面側に隣接して配置されて蛍石で形成された第2蛍石レンズとを含み、
前記第1蛍石レンズの屈折力をP1とし、前記第2蛍石レンズの屈折力をP2とし、前記第1面と前記第2面との距離をLとするとき、
0.125<P1・L<6.25
0.125<P2・L<6.25
の条件を満足することを特徴とする投影光学系を提供する。
【0008】
第1形態の好ましい態様によれば、前記第2蛍石レンズの有効径をφ2とし、前記第1面と前記第2面との距離をLとするとき、0.1<φ2/L<0.2の条件を満足する。
【0009】
本発明の第2形態では、第1面の像を第2面上に形成する投影光学系において、
最も第2面側に配置されて蛍石で形成された第1蛍石レンズと、該第1蛍石レンズの前記第1面側に隣接して配置されて蛍石で形成された第2蛍石レンズとを含み、
前記第2蛍石レンズの有効径をφ2とし、前記第1面と前記第2面との距離をLとするとき、
0.1<φ2/L<0.2
の条件を満足することを特徴とする投影光学系を提供する。
【0010】
第1形態および第2形態の好ましい態様によれば、前記第1蛍石レンズの結晶軸と前記第2蛍石レンズの結晶軸とが所定方位関係を満たすように配置されている。また、前記投影光学系中の複数のレンズのうち、前記第1蛍石レンズおよび前記第2蛍石レンズだけが蛍石で形成されていることが好ましい。さらに、前記第2面側の開口数が0.85以上であり、前記第2面における最大像高が13.75mm以上であることが好ましい。
【0011】
本発明の第3形態では、前記第1面に配置されたマスクを照明するための照明系と、前記マスクに形成されたパターンの像を前記第2面に配置された感光性基板上に形成するための第1形態または第2形態の投影光学系とを備えていることを特徴とする露光装置を提供する。
【0012】
本発明の第4形態では、前記第1面に配置されたマスクを照明し、前記マスクに形成されたパターンを第1形態または第2形態の投影光学系を介して前記第2面に配置された感光性基板上に投影露光することを特徴とする露光方法を提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】
ArFエキシマレーザー光を用いる投影光学系において、石英のコンパクションの影響を抑えるには、光エネルギー密度が高くなる部位に石英レンズ成分ではなく蛍石レンズ成分を配置することが効果的である。すなわち、投影光学系を構成する複数のレンズのうち、最も像側(第2面側)に蛍石レンズ成分を配置することが効果的である。
【0014】
一方、蛍石の固有複屈折の影響を抑えるには、互いに隣接する一対の蛍石レンズ成分の結晶軸が所定の方位関係を満たすように配置することが効果的である。すなわち、実施例において具体的に後述するように、一対の蛍石レンズ成分のある結晶軸が投影光学系の光軸とほぼ一致し、且つ一対の蛍石レンズ成分の別の結晶軸が光軸廻りに相対的な所定の回転角度関係を満たすように配置することが効果的である。
【0015】
以上の理由から、本発明の投影光学系では、最も像側(第2面側)のレンズとして第1蛍石レンズを配置し、この第1蛍石レンズの物体側(第1面側)に隣接して第2蛍石レンズを配置している。そして、本発明では、この基本的構成において、第1蛍石レンズおよび第2蛍石レンズが次の条件式(1)および(2)をそれぞれ満足する。
0.125<P1・L<6.25 (1)
0.125<P2・L<6.25 (2)
【0016】
ここで、P1は第1蛍石レンズの屈折力(パワー)であり、P2は第2蛍石レンズの屈折力であり、Lは物体面(第1面)と像面(第2面)との距離すなわち物像間距離である。条件式(1)および(2)の下限値を下回ると、第1蛍石レンズの屈折力および第2蛍石レンズの屈折力が小さくなりすぎて、投影光学系の最大径を小さくすることが困難になるだけでなく、軸上色収差を小さくすることも困難になってしまう。また、第1蛍石レンズおよび第2蛍石レンズへの入射角を小さくすることが困難になり、蛍石の固有複屈折の影響が大きくなる。また、コートによる光量損失の低減が困難になってしまう。
【0017】
一方、条件式(1)および(2)の上限値を上回ると、第1蛍石レンズの屈折力および第2蛍石レンズの屈折力が大きくなりすぎて、倍率色収差の悪化を防ぐことが困難になるだけでなく、気圧変化による収差変動を光の波長変化により補正することが困難になってしまう。なお、気圧変化による収差変動を光の波長変化により補正する技術の詳細については、たとえば特開2000−75493号公報(特に段落[0030]など)を参照することができる。
【0018】
また、本発明では、上述の基本的構成において、第2蛍石レンズが次の条件式(3)を満足する。なお、条件式(3)において、φ2は第2蛍石レンズの有効径(直径)である。
0.1<φ2/L<0.2 (3)
【0019】
条件式(3)の上限値を上回ると、第2蛍石レンズの有効径が大きくなりすぎて、全体に亘って均質性の良好な蛍石成分を製造することが困難になってしまう。一方、条件式(3)の下限値を下回ると、第2蛍石レンズの有効径が小さくなりすぎて、たとえば第2蛍石レンズに隣接する石英レンズ成分の有効径も比較的小さくなり、この石英レンズ成分に照射される光のエネルギー密度が高くなってコンパクションが発生し易くなってしまう。
【0020】
以上のように、本発明では、石英レンズ成分と蛍石レンズ成分との適切な組み合わせにより、蛍石の固有複屈折や石英のコンパクションなどの影響を良好に抑えつつ、色収差の良好に補正された結像性能の高い投影光学系を実現することができる。したがって、本発明の露光装置および露光方法では、たとえばArFエキシマレーザー光に対して高い結像性能を有する投影光学系を用いて、高い解像力で良好な投影露光を行うことができ、ひいては高い解像力で良好なマイクロデバイスを製造することができる。
【0021】
本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態にかかる投影光学系を備えた露光装置の構成を概略的に示す図である。なお、図1において、投影光学系PLの光軸AXに平行にZ軸を、光軸AXに垂直な面内において図1の紙面に平行にY軸を、光軸AXに垂直な面内において図1の紙面に垂直にX軸を設定している。
【0022】
図1に示す露光装置は、照明光を供給するための光源LSとして、たとえばArFエキシマレーザー光源(波長193.3nm)を備えている。光源LSから射出された光は、照明光学系ILを介して、所定のパターンが形成された投影原版としてのレチクル(マスク)Rを照明する。照明光学系ILは、露光光の照度分布を均一化するためのフライアイレンズ、照明開口絞り、可変視野絞り(レチクルブラインド)、コンデンサレンズ系等から構成されている。
【0023】
レチクルRは、レチクルホルダRHを介して、レチクルステージRS上においてXY平面に平行に保持されている。レチクルステージRSは、図示を省略した駆動系の作用により、レチクル面(すなわちXY平面)に沿って二次元的に移動可能であり、その位置座標はレチクル移動鏡RMを用いた干渉計RIFによって計測され且つ位置制御されるように構成されている。レチクルRに形成されたパターンからの光は、投影光学系PLを介して、フォトレジストの塗布されたウェハW(感光性基板)上にレチクルパターン像を形成する。
【0024】
投影光学系PLは、その瞳位置の近傍に配置された可変の開口絞りAS(図1では不図示)を有し、レチクルR側およびウェハW側の双方において実質的にテレセントリックに構成されている。そして、投影光学系PLの瞳位置には照明光学系の照明瞳面における二次光源の像が形成され、投影光学系PLを介した光によってウェハWがケーラー照明される。ウェハWは、ウェハテーブル(ウェハホルダ)WTを介して、ウェハステージWS上においてXY平面に平行に保持されている。
【0025】
ウェハステージWSは、図示を省略した駆動系の作用によりウェハ面(すなわちXY平面)に沿って二次元的に移動可能であり、その位置座標はウェハ移動鏡WMを用いた干渉計WIFによって計測され且つ位置制御されるように構成されている。こうして、本実施形態では、投影光学系PLの光軸AXと直交する平面内においてウェハWを二次元的に駆動制御しながら各露光領域に対してレチクルRのパターンを一括的に露光する動作を繰り返すことにより、すなわちステップ・アンド・リピート方式により、ウェハWの各露光領域にはレチクルRのパターンが逐次露光される。
【0026】
以下、具体的な数値例に基づいて、本実施形態の投影光学系PLの各実施例を説明する。各実施例において、投影光学系PLを構成するレンズ成分は石英(SiO2)または蛍石(CaF2)で形成されている。また、光源LSから供給されるArFエキシマレーザー光の中心波長は193.306であり、この中心波長に対する蛍石の屈折率は1.5014548であり、石英の屈折率は1.5603261である。そして、193.306nm+0.3pm=193.3063nmの波長に対する蛍石の屈折率は1.5014545であり、石英の屈折率は1.5603254である。一方、193.306nm−0.3pm=193.3057nmの波長に対する蛍石の屈折率は1.5014551であり、石英の屈折率は1.5603264である。
【0027】
また、各実施例において、非球面は、光軸に垂直な方向の高さをyとし、非球面の頂点における接平面から高さyにおける非球面上の位置までの光軸に沿った距離(サグ量)をzとし、頂点曲率半径をrとし、円錐係数をκとし、n次の非球面係数をCnとしたとき、以下の数式(a)で表される。後述の表(1)および(2)において、非球面形状に形成されたレンズ面には面番号の右側に*印を付している。
【0028】
【数1】
z=(y2/r)/[1+{1−(1+κ)・y2/r2}1/2]
+C4・y4+C6・y6+C8・y8+C10・y10+・・・ (a)
【0029】
[第1実施例]
図2は、第1実施例にかかる投影光学系のレンズ構成を示す図である。図2を参照すると、第1実施例の投影光学系PLは、レチクル側から順に、ウェハ側に非球面形状の凹面を向けた平凹レンズL1と、レチクル側に凹面を向けた負メニスカスレンズL2と、レチクル側に非球面形状の凹面を向けた正メニスカスレンズL3と、レチクル側に凹面を向けた正メニスカスレンズL4と、両凸レンズL5と、レチクル側に凸面を向けた正メニスカスレンズL6と、レチクル側に凸面を向けた正メニスカスレンズL7と、ウェハ側に非球面形状の凹面を向けた正メニスカスレンズL8と、レチクル側に凸面を向けた負メニスカスレンズL9と、レチクル側に凸面を向けた負メニスカスレンズL10と、ウェハ側に非球面形状の凹面を向けた負メニスカスレンズL11と、両凹レンズL12と、レチクル側に非球面形状の凹面を向けた負メニスカスレンズL13と、両凸レンズL14と、ウェハ側に非球面形状の凹面を向けた両凹レンズL15と、レチクル側に凹面を向けた正メニスカスレンズL16と、レチクル側に凸面を向けた正メニスカスレンズL17と、開口絞りASと、両凹レンズL18と、両凸レンズL19と、レチクル側に凹面を向けた正メニスカスレンズL20と、レチクル側に凸面を向けた正メニスカスレンズL21と、レチクル側に凸面を向けた正メニスカスレンズL22と、ウェハ側に非球面形状の凹面を向けた正メニスカスレンズL23と、レチクル側に凸面を向けた正メニスカスレンズL24と、レチクル側に凸面を向けた平凸レンズL25とにより構成されている。第1実施例では、投影光学系PLを構成する25個のレンズ成分L1〜L25のうち、2つのレンズL24およびL25だけが蛍石で形成され、その他の23個のレンズL1〜L23は石英で形成されている。
【0030】
次の表(1)に、第1実施例にかかる投影光学系の諸元の値を掲げる。表(1)の主要諸元において、λは露光光の中心波長を、βは投影倍率を、NAは像側(ウェハ側)開口数を、Y0は最大像高(イメージフィールド半径)をそれぞれ表している。また、表(1)の光学部材諸元において、面番号はレチクル側からの面の順序を、rは各面の曲率半径(非球面の場合には頂点曲率半径:mm)を、dは各面の軸上間隔すなわち面間隔(mm)を、nは露光光の中心波長に対する屈折率をそれぞれ示している。上述の表記は、以降の表(2)においても同様である。
【0031】
【表1】
(主要諸元)
λ=193.306nm
β=−1/4
NA=0.85
Y0=13.85mm
(非球面データ)
2面
κ=0
C4=−1.1125×10-7 C6=3.34964×10-12
C8=−1.42684×10-16 C10=3.9882×10-21
C12=8.17347×10-25 C14=−6.87665×10-29
5面
κ=0
C4=5.34237×10-9 C6=−9.72667×10-14
C8=−5.84808×10-18 C10=2.99174×10-22
C12=1.01762×10-26 C14=−6.74726×10-31
16面
κ=0
C4=6.19191×10-8 C6=−1.21235×10-12
C8=6.91135×10-17 C10=−2.36561×10-21
C12=9.73120×10-26 C14=−7.46736×10-31
22面
κ=0
C4=−9.31073×10-8 C6=1.78564×10-12
C8=−2.04348×10-16 C10=2.06669×10-21
C12=−9.25172×10-27 C14=−1.78357×10-28
25面
κ=0
C4=3.05599×10-8 C6=1.37059×10-12
C8=5.03086×10-17 C10=6.8284×10-21
C12=−1.43214×10-25 C14=8.69884×10-29
30面
κ=0
C4=4.18743×10-8 C6=−3.11379×10-13
C8=−8.18948×10-18 C10=2.43208×10-22
C12=−9.63937×10-29 C14=−6.69019×10-32
47面
κ=0
C4=4.47622×10-9 C6=1.15439×10-13
C8=−1.90126×10-17 C10=8.91857×10-22
C12=−3.27673×10-26 C14=8.56793×10-31
(条件式対応値)
P1=0.0002mm-1
P2=0.0006mm-1
L=1250mm
φ2=180.6mm
(1)P1・L=0.25
(2)P2・L=0.75
(3)φ2/L=0.1445
【0032】
図3は、第1実施例における球面収差、非点収差および歪曲収差を示す図である。また、図4は、第1実施例における横収差を示す図である。各収差図において、NAは像側の開口数を、Yは像高(mm)をそれぞれ示している。また、非点収差を示す収差図において、実線はサジタル像面を示し、破線はメリディオナル像面を示している。さらに、各収差図は中心波長に対する収差を示しているが、横収差を示す収差図において、線C+は193.306nm+0.3pm=193.3063nmの波長を、線C−は193.306nm−0.3pm=193.3057nmの波長をそれぞれ示している。上述の表記は、以降の図6および図7においても同様である。各収差図から明らかなように、第1実施例では、0.85という大きな開口数および13.85mmという大きな最大像高を確保しているにもかかわらず、波長幅が193.306nm±0.3pmの露光光に対して色収差および単色収差が良好に補正されていることがわかる。
【0033】
[第2実施例]
図5は、第2実施例にかかる投影光学系のレンズ構成を示す図である。図5を参照すると、第2実施例の投影光学系PLは、レチクル側から順に、ウェハ側に非球面形状の凹面を向けた平凹レンズL1と、両凹レンズL2と、両凸レンズL3と、レチクル側に非球面形状の凹面を向けた正メニスカスレンズL4と、両凸レンズL5と、レチクル側に凸面を向けた正メニスカスレンズL6と、レチクル側に凸面を向けた正メニスカスレンズL7と、レチクル側に凸面を向けた正メニスカスレンズL8と、レチクル側に凸面を向けた負メニスカスレンズL9と、レチクル側に非球面形状の凹面を向けた両凹レンズL10と、ウェハ側に非球面形状の凹面を向けた負メニスカスレンズL11と、ウェハ側に非球面形状の凹面を向けた両凹レンズL12と、両凸レンズL13と、ウェハ側に非球面形状の凹面を向けた両凹レンズL14と、レチクル側に凹面を向けた正メニスカスレンズL15と、レチクル側に凸面を向けた正メニスカスレンズL16と、開口絞りASと、両凹レンズL17と、両凸レンズL18と、レチクル側に凹面を向けた正メニスカスレンズL19と、レチクル側に凸面を向けた正メニスカスレンズL20と、ウェハ側に非球面形状の凹面を向けた正メニスカスレンズL21と、レチクル側に凸面を向けた正メニスカスレンズL22と、レチクル側に凸面を向けた平凸レンズL23とにより構成されている。
【0034】
第2実施例では、投影光学系PLを構成する23個のレンズ成分L1〜L23のうち、2つのレンズL22およびL23だけが蛍石で形成され、その他の21個のレンズL1〜L21は石英で形成されている。次の表(2)に、第2実施例にかかる投影光学系の諸元の値を掲げる。
【0035】
【表2】
(主要諸元)
λ=193.306nm
β=−1/4
NA=0.85
Y0=13.75mm
(非球面データ)
2面
κ=0
C4=−0.114952×10-6 C6=3.71431×10-12
C8=−1.66805×10-16 C10=1.05×10-20
C12=−0.429970×10-24 C14=−8.32548×10-30
7面
κ=0
C4=−0.103308×10-7 C6=−2.04742×10-13
C8=−3.45232×10-18 C10=−2.63624×10-22
C12=0.104723×10-25 C14=−6.59663×10-31
19面
κ=0
C4=−0.230297×10-6 C6=2.02837×10-11
C8=−6.87271×10-16 C10=−3.75481×10-20
C12=0.358526×10-23 C14=−1.21413×10-28
22面
κ=0
C4=−2.32073×10-7 C6=1.42948×10-11
C8=1.81243×10-16 C10=−4.79967×10-20
C12=1.11896×10-23 C14=−1.97549×10-27
24面
κ=0
C4=6.20263×10-8 C6=−1.7178×10-12
C8=−4.97632×10-16 C10=3.95868×10-21
C12=3.40873×10-24 C14=−1.68614×10-28
28面
κ=0
C4=1.2696×10-8 C6=−4.1291×10-13
C8=6.43965×10-18 C10=1.84702×10-22
C12=−7.92142×10-27 C14=9.34802×10-32
43面
κ=0
C4=−1.50863×10-8 C6=−1.68851×10-13
C8=−1.26413×10-18 C10=−8.84061×10-23
C12=−3.62395×10-27 C14=3.74689×10-31
(条件式対応値)
P1=0.0002mm-1
P2=0.0023mm-1
L=1250mm
φ2=182.0mm
(1)P1・L=0.25
(2)P2・L=2.875
(3)φ2/L=0.1456
【0036】
図6は、第2実施例における球面収差、非点収差および歪曲収差を示す図である。また、図7は、第2実施例における横収差を示す図である。各収差図から明らかなように、第2実施例においても第1実施例と同様に、0.85という大きな開口数および13.75mmという大きな最大像高を確保しているにもかかわらず、波長幅が193.306nm±0.3pmの露光光に対して色収差および単色収差が良好に補正されていることがわかる。
【0037】
ところで、第1実施例および第2実施例では、一対の蛍石レンズ(第1蛍石レンズおよび第2蛍石レンズ)の結晶軸が所定の方位関係を満たすように設定することにより、蛍石の固有複屈折の結像性能への影響を低減することができる。以下、蛍石の固有複屈折の影響を受けにくいレンズ構成を実現する典型的な手法について簡単に説明する。
【0038】
第1手法では、一対の蛍石レンズの光軸と結晶軸[111](または結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸)とを一致させ、且つ光軸を中心として一対の蛍石レンズを約60度だけ相対的に回転させる。ここで、結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸とは、たとえば結晶軸[−111],[1−11],[11−1]である。また、一方の蛍石レンズと他方の蛍石レンズとを光軸を中心として約60度だけ相対的に回転させるとは、一方の蛍石レンズおよび他方の蛍石レンズにおける光軸とは異なる方向に向けられる所定の結晶軸(たとえば結晶軸[−111]、[11−1]、または[1−11])同士の光軸を中心とした相対的な角度が約60度であることを意味する。
【0039】
具体的には、たとえば一方の蛍石レンズにおける結晶軸[−111]と、他方の蛍石レンズにおける結晶軸[−111]との光軸を中心とした相対的な角度が約60度であることを意味する。そして、光軸を中心として約60度だけ相対的に回転させるということは、光軸を中心として約60度+(n×120度)だけ相対的に回転させること、すなわち60度、180度、または300度・・・だけ相対的に回転させることと同じ意味である(ここで、nは整数である)。
【0040】
第2手法では、一対の蛍石レンズの光軸と結晶軸[100](または結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸)とを一致させ、且つ光軸を中心として一対の蛍石レンズを約45度だけ相対的に回転させる。ここで、結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸とは、たとえば結晶軸[010],[001]である。また、一方の蛍石レンズと他方の蛍石レンズとを光軸を中心として約45度だけ相対的に回転させるとは、一方の蛍石レンズおよび他方の蛍石レンズにおける光軸とは異なる方向に向けられる所定の結晶軸(たとえば結晶軸[010],[001],[011]または[01−1])同士の光軸を中心とした相対的な角度が約45度であることを意味する。
【0041】
具体的には、たとえば一方の蛍石レンズにおける結晶軸[010]と、他方の蛍石レンズにおける結晶軸[010]との光軸を中心とした相対的な角度が約45度であることを意味する。そして、光軸を中心として約45度だけ相対的に回転させるということは、光軸を中心として約45度+(n×90度)だけ相対的に回転させること、すなわち45度、135度、225度、または315度・・・だけ相対的に回転させることと同じ意味である(ここで、nは整数である)。
【0042】
上述の実施形態の露光装置では、照明系によってレチクル(マスク)を照明し(照明工程)、投影光学系を用いてマスクに形成された転写用のパターンを感光性基板に露光する(露光工程)ことにより、マイクロデバイス(半導体素子、撮像素子、液晶表示素子、薄膜磁気ヘッド等)を製造することができる。以下、本実施形態の露光装置を用いて感光性基板としてのウェハ等に所定の回路パターンを形成することによって、マイクロデバイスとしての半導体デバイスを得る際の手法の一例につき図8のフローチャートを参照して説明する。
【0043】
先ず、図8のステップ301において、1ロットのウェハ上に金属膜が蒸着される。次のステップ302において、そのlロットのウェハ上の金属膜上にフォトレジストが塗布される。その後、ステップ303において、本実施形態の露光装置を用いて、マスク上のパターンの像がその投影光学系を介して、その1ロットのウェハ上の各ショット領域に順次露光転写される。その後、ステップ304において、その1ロットのウェハ上のフォトレジストの現像が行われた後、ステップ305において、その1ロットのウェハ上でレジストパターンをマスクとしてエッチングを行うことによって、マスク上のパターンに対応する回路パターンが、各ウェハ上の各ショット領域に形成される。
【0044】
その後、更に上のレイヤの回路パターンの形成等を行うことによって、半導体素子等のデバイスが製造される。上述の半導体デバイス製造方法によれば、極めて微細な回路パターンを有する半導体デバイスをスループット良く得ることができる。なお、ステップ301〜ステップ305では、ウェハ上に金属を蒸着し、その金属膜上にレジストを塗布、そして露光、現像、エッチングの各工程を行っているが、これらの工程に先立って、ウェハ上にシリコンの酸化膜を形成後、そのシリコンの酸化膜上にレジストを塗布、そして露光、現像、エッチング等の各工程を行っても良いことはいうまでもない。
【0045】
また、本実施形態の露光装置では、プレート(ガラス基板)上に所定のパターン(回路パターン、電極パターン等)を形成することによって、マイクロデバイスとしての液晶表示素子を得ることもできる。以下、図9のフローチャートを参照して、このときの手法の一例につき説明する。図9において、パターン形成工程401では、本実施形態の露光装置を用いてマスクのパターンを感光性基板(レジストが塗布されたガラス基板等)に転写露光する、所謂光リソグラフィ工程が実行される。この光リソグラフィー工程によって、感光性基板上には多数の電極等を含む所定パターンが形成される。その後、露光された基板は、現像工程、エッチング工程、レジスト剥離工程等の各工程を経ることによって、基板上に所定のパターンが形成され、次のカラーフィルター形成工程402へ移行する。
【0046】
次に、カラーフィルター形成工程402では、R(Red)、G(Green)、B(Blue)に対応した3つのドットの組がマトリックス状に多数配列されたり、またはR、G、Bの3本のストライプのフィルターの組を複数水平走査線方向に配列されたりしたカラーフィルターを形成する。そして、カラーフィルター形成工程402の後に、セル組み立て工程403が実行される。セル組み立て工程403では、パターン形成工程401にて得られた所定パターンを有する基板、およびカラーフィルター形成工程402にて得られたカラーフィルター等を用いて液晶パネル(液晶セル)を組み立てる。セル組み立て工程403では、例えば、パターン形成工程401にて得られた所定パターンを有する基板とカラーフィルター形成工程402にて得られたカラーフィルターとの間に液晶を注入して、液晶パネル(液晶セル)を製造する。
【0047】
その後、モジュール組み立て工程404にて、組み立てられた液晶パネル(液晶セル)の表示動作を行わせる電気回路、バックライト等の各部品を取り付けて液晶表示素子として完成させる。上述の液晶表示素子の製造方法によれば、極めて微細な回路パターンを有する液晶表示素子をスループット良く得ることができる。
【0048】
なお、上述の実施形態では、ウェハWの各露光領域に対してレチクルRのパターンを一括的に露光するステップ・アンド・リピート方式の露光装置に本発明を適用しているが、これに限定されることなく、ウェハWとレチクルRとを投影光学系PLに対して相対移動させつつウェハWの各露光領域に対してレチクルRのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の露光装置に本発明を適用することもできる。
【0049】
また、上述の実施形態では、193nmの波長光を供給するArFエキシマレーザー光源を用いているが、これに限定されることなく、たとえば248.4nmの波長光を供給するKrFエキシマレーザー光源など、他の適当な光源に対して本発明を適用することもできる。
【0050】
さらに、上述の実施形態では、露光装置に搭載される投影光学系に対して本発明を適用しているが、これに限定されることなく、他の一般的な投影光学系に対して本発明を適用することもできる。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、石英レンズ成分と蛍石レンズ成分との適切な組み合わせにより、蛍石の固有複屈折や石英のコンパクションなどの影響を良好に抑えつつ、色収差の良好に補正された結像性能の高い投影光学系を実現することができる。したがって、本発明の露光装置および露光方法では、たとえばArFエキシマレーザー光に対して高い結像性能を有する投影光学系を用いて、高い解像力で良好な投影露光を行うことができ、ひいては高い解像力で良好なマイクロデバイスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態にかかる投影光学系を備えた露光装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】第1実施例にかかる投影光学系のレンズ構成を示す図である。
【図3】第1実施例における球面収差、非点収差および歪曲収差を示す図である。
【図4】第1実施例における横収差を示す図である。
【図5】第2実施例にかかる投影光学系のレンズ構成を示す図である。
【図6】第2実施例における球面収差、非点収差および歪曲収差を示す図である。
【図7】第2実施例における横収差を示す図である。
【図8】マイクロデバイスとしての半導体デバイスを得る際の手法のフローチャートである。
【図9】マイクロデバイスとしての液晶表示素子を得る際の手法のフローチャートである。
【符号の説明】
LS 光源
IL 照明光学系
R レチクル
RS レチクルステージ
PL 投影光学系
W ウェハ
WS ウェハステージ
AS 開口絞り
Li レンズ成分
Claims (6)
- 第1面の像を第2面上に形成する投影光学系において、
前記投影光学系中の複数のレンズのうち最も第2面側に配置されて蛍石で形成された第1蛍石レンズと、該第1蛍石レンズの前記第1面側に隣接して配置されて蛍石で形成された第2蛍石レンズとを含み、
前記第1蛍石レンズの屈折力をP1とし、前記第2蛍石レンズの屈折力をP2とし、前記第2蛍石レンズの有効径をφ2とし、前記第1面と前記第2面との距離をLとするとき、
0.125<P1・L<6.25
0.125<P2・L<6.25
0.1<φ2/L<0.2
の条件を満足し、
前記投影光学系中の前記複数のレンズのうち、前記第1蛍石レンズおよび前記第2蛍石レンズだけが蛍石で形成され、その他のレンズは石英で形成されていることを特徴とする投影光学系。 - 前記第1蛍石レンズの結晶軸と前記第2蛍石レンズの結晶軸とが所定方位関係を満たすように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の投影光学系。
- 前記投影光学系は、ArFエキシマレーザ光源からの光に基づいて、前記第1面の前記像を前記第2面上に形成することを特徴とする請求項1または2に記載の投影光学系。
- 前記第2面側の開口数が0.85以上であり、前記第2面における最大像高が13.75mm以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の投影光学系。
- 前記第1面に配置されたマスクを照明するための照明系と、前記マスクに形成されたパターンの像を前記第2面に配置された感光性基板上に形成するための請求項1乃至4のいずれか1項に記載の投影光学系とを備えていることを特徴とする露光装置。
- 前記第1面に配置されたマスクを照明し、前記マスクに形成されたパターンを請求項1乃至4のいずれか1項に記載の投影光学系を介して前記第2面に配置された感光性基板上に投影露光することを特徴とする露光方法。
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