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JP4326916B2 - 球状鋳物砂 - Google Patents

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Description

本発明は、鋳鋼、鋳鉄、アルミニウム、銅およびこれらの合金等の鋳造用鋳型に使用される球状鋳物砂およびその製造方法、ならびに鋳造用鋳型に関する。
従来から鋳物砂として珪砂が広く使用されている。珪砂は鉱産物であるため形態が不定形であり、流動性に欠け、充填性が悪い。それゆえ、珪砂からなる鋳型の表面は荒く、従って、鋳造品(鋳物)の表面が荒れ、後工程である研磨工程への負荷が大きくなる。また、珪砂の構成鉱物である石英は鋳造時の熱負荷によりクリストバライト等へ結晶変態し、その時の体積変化により崩壊するため、珪砂は鋳物砂としての再生効率が低い。これらの問題を解決する手段として、球状鋳物砂(たとえば、特許文献1参照)や、高珪酸質球状鋳物砂およびその製造方法(たとえば、特許文献2参照)が開示されている。これらは、原料組成物を球形に造粒した後、ロータリーキルン等で焼成するものである。しかしながら、得られる鋳物砂の球形度は低く、そのため流動性および充填性は不充分であり、鋳物表面の荒れを改善する効果は小さい。また、焼結法であるため多くの開気孔が存在した吸水率の大きい多孔質のものしか得られない。その結果、鋳型の強度が不充分であったり、鋳型作製時に多量のバインダーを必要とするため、鋳物砂としての再生が困難となる。
特開平4−367349号公報(第2頁) 特開平5−169184号公報(第2頁)
本発明は、流動性に優れ、高強度かつ表面が平滑な鋳造用鋳型を製造することができる球状鋳物砂およびその製造方法、ならびに該鋳造用鋳型を提供することを課題とする。
本発明者らは、特定の成分組成および粒径を持ち、球形度が大きく、さらには吸水率が小さい耐火性粒子が鋳物砂として優れた性能を発揮することを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨は、
〔1〕 Al2 3 およびSiO2 を主成分として含有してなり、Al2 3 /SiO2 重量比率が1〜15、平均粒径が0.05〜1.5mmである火炎溶融法で製造された球状鋳物砂、
〔2〕 Al2 3 およびSiO2 を主成分として含有してなり、Al2 3 /SiO2 重量比率が1〜15、平均粒径が0.05〜0.5mm、球形度が0.95以上である火炎溶融法で製造された球状鋳物砂、
〔3〕 Al2 3 およびSiO2 を主成分として含有してなり、Al2 3 /SiO2 重量比率が1〜15、平均粒径が0.05〜1.5mm、球形度が0.95以上である球状鋳物砂、
〔4〕 球形度が0.98以上である前記〔1〕〜〔3〕いずれかに記載の球状鋳物砂を50体積%以上含む鋳物砂、
〔5〕 Al2 3 およびSiO2 を主成分とする、Al2 3 /SiO2 重量比率が0.9〜17、平均粒径が0.05〜2mmの粉末粒子を、火炎中で溶融して球状化する工程を含む、前記〔1〕〜〔3〕いずれかに記載の球状鋳物砂の製造方法、
〔6〕 前記〔1〕〜〔3〕いずれかに記載の球状鋳物砂または前記〔4〕に記載の鋳物砂を含んでなる鋳造用鋳型、
〔7〕 前記〔6〕に記載の鋳型を用いて鋳造された鋳物、ならびに
〔8〕 前記〔7〕に記載の鋳物からなる構造物、
に関する。
本発明の球状鋳物砂は流動性に優れており、当該鋳物砂によれば、高強度かつ表面が平滑な鋳造用鋳型が得られる。
本発明の球状鋳物砂は大きく2つの態様からなる。第1の態様は、Al2 3 およびSiO2 を主成分として含有してなり、Al2 3 /SiO2 重量比率が1〜15、平均粒径が0.05〜1.5mmである、火炎溶融法で製造された球状鋳物砂である。また、第2の態様は、Al2 3 およびSiO2 を主成分として含有してなり、Al2 3 /SiO2 重量比率が1〜15、平均粒径が0.05〜1.5mm、球形度が0.95以上である球状鋳物砂である。
本発明の球状鋳物砂は、特定の成分組成および平均粒径を持ち、球形度が大きい点に大きな特徴の1つを有する。かかる構成を有することから、流動性に優れ、高強度かつ表面が平滑な鋳造用鋳型の製造が可能となる。また、従来に比べて少ないバインダー量で鋳型を製造することができ、再生が容易である。
本発明の球状鋳物砂の形状である球状とは、球形度0.88以上、好ましくは0.90以上のものをいう。球状であるか否かについては、たとえば、後述の実施例に記載するように、鋳物砂を光学顕微鏡やデジタルスコープ(たとえば、キーエンス社製、VH−8000型)等で観察し、判定することができる。
本発明の球状鋳物砂はAl2 3 およびSiO2 を主成分とするが、ここで「主成分」とは、Al2 3 およびSiO2 が合計量で鋳物砂全体の全成分中に80重量%以上含有されていることをいう。
本発明の球状鋳物砂の主成分であるAl2 3 およびSiO2 の含有量としては、耐火性の向上という観点から、それらの合計量として、球状鋳物砂の全成分中、好ましくは85〜100重量%、より好ましくは90〜100重量%である。
また、Al2 3 /SiO2 重量比率は1〜15である。耐火性および鋳物砂の再生効率の向上の観点から、1.2〜12が好ましく、1.5〜9がより好ましい。
なお、本発明の球状鋳物砂に主成分以外の成分として含まれ得るものとしては、たとえば、CaO、MgO、Fe2 3 、TiO2 、K2 O、Na2 O等の金属酸化物が挙げられる。これらは、出発原料として使用する、たとえば、後述の原料に由来するものである。CaOとMgOが含まれる場合、球状鋳物砂の耐火性の向上の観点から、それらの含有量としては合計量として5重量%以下が好ましい。Fe2 3 とTiO2 が含まれる場合、それらの含有量としてはそれぞれ5重量%以下が好ましい。また、Feの含有量は2.5重量%以下がより好ましく、2重量%以下がさらに好ましい。K2 OとNa2 Oが含まれる場合、それらの含有量としては合計量として3重量%以下が好ましく、より好ましくは1重量%以下である。
本発明の球状鋳物砂の平均粒径(mm)は0.05〜1.5mmの範囲である。0.05mm未満になると鋳型の製造に多くのバインダーを必要とし、鋳物砂として再生するのが困難となるため好ましくない。一方、1.5mmを超えると鋳型の空隙率が大きくなり、鋳型強度の低下に繋がることから好ましくない。球状鋳物砂の再生効率を高める観点から、0.075〜1.5mmが好ましく、一方、鋳型強度を高める観点から、0.05〜1mmが好ましい。再生効率と鋳型強度の両者を高める観点から、0.05〜0.5mmがより好ましく、0.05〜0.35mmがさらに好ましい。
前記平均粒径は以下のようにして求めることができる。すなわち、球状鋳物砂粒子の粒子投影断面からの球形度=1の場合は直径(mm)を測定し、一方、球形度<1の場合はランダムに配向させた球状鋳物砂粒子の長軸径(mm)と短軸径(mm)を測定して(長軸径+短軸径)/2を求め、任意の100個の球状鋳物砂粒子につき、それぞれ得られた値を平均して平均粒径(mm)とする。長軸径と短軸径は、以下のように定義される。粒子を平面上に安定させ、その粒子の平面上への投影像を2本の平行線ではさんだとき、その平行線の間隔が最小となる粒子の幅を短軸径といい、一方、この平行線に直角な方向の2本の平行線で粒子をはさむときの距離を長軸径という。
なお、球状鋳物砂粒子の長軸径と短軸径は、光学顕微鏡またはデジタルスコープ(例えば、キーエンス社製、VH−8000型)により該粒子の像(写真)を得、得られた像を画像解析することにより求めることができる。また、球形度は、得られた像を画像解析することにより、該粒子の粒子投影断面の面積および該断面の周囲長を求め、次いで、〔粒子投影断面の面積(mm2 )と同じ面積の真円の円周長(mm)〕/〔粒子投影断面の周囲長(mm)〕を計算し、任意の50個の球状鋳物砂粒子につき、それぞれ得られた値を平均して求める。
本発明の第1の態様の球状鋳物砂は火炎溶融法により得られるものである。従って、球形度が高く、緻密であるという構造的特徴を有する。当該構造的特徴は、流動性、鋳型強度、鋳造された鋳物の表面平滑性の向上に大きく寄与する。
本発明の第1の態様の球状鋳物砂としては、流動性の向上の観点から、その球形度が、0.95以上であるものが好ましく、0.98以上であるものがより好ましく、0.99以上であるものがさらに好ましい。よって、本発明の第1の態様の球状鋳物砂としては、たとえば、Al2 3 およびSiO2 を主成分として含有してなり、Al2 3 /SiO2 重量比率が1〜15、平均粒径が0.05〜0.5mm、球形度が0.95以上である火炎溶融法でつくられた球状鋳物砂が好適である。
一方、本発明の第2の態様の球状鋳物砂の球形度は0.95以上である。流動性の向上の観点から、0.98以上が好ましく、0.99以上がより好ましい。
また、本発明の球状鋳物砂の吸水率(重量%)としては、鋳型の製造の際に使用するバインダーの鋳物砂内部への吸収によるバインダー使用量の増加の抑制や、鋳型強度の向上等の観点から、3重量%以下が好ましく、0.8重量%以下がより好ましく、0.3重量%以下がさらに好ましい。吸水率はJIS A1109細骨材の吸水率測定方法に従って測定することができる。
なお、球状鋳物砂の吸水率は、火炎溶融法により該砂を調製した場合、該方法以外の焼成方法により調製した砂と比べて、同じ球形度であれば、通常、吸水率は低くなる。
一方、本発明の球状鋳物砂の球形度が0.98以上である場合、かかる球状鋳物砂が、珪砂等の流動性の低い公知の鋳物砂との混合物中に好ましくは50体積%以上含有されておれば、該混合物からなる鋳物砂は充分に本発明の所望の効果を発揮し得る。すなわち、前記のような公知の鋳物砂に本発明の球状鋳物砂を徐々に添加していけば、添加量に応じて本発明の所望の効果を発揮するようになるが、前記混合物からなる鋳物砂中に、前記所定の球形度を有する本発明の球状鋳物砂が50体積%以上含まれると、その効果は顕著になる。なお、当該混合物からなる鋳物砂中の、球形度が0.98以上である本発明の球状鋳物砂の含有量としては、より好ましくは60体積%以上、さらに好ましくは80体積%以上である。従って、本発明の球状鋳物砂としては、その利用性に優れることから、球形度が0.98以上であるものが特に好適である。また、かかる球状鋳物砂を50体積%以上含む鋳物砂は、本発明の球状鋳物砂と同等の効果を発揮し得ることから、かかる鋳物砂も本発明に包含される。
前記の通り、本発明の第1の態様の球状鋳物砂は火炎溶融法により製造される。一方、本発明の第2の態様の球状鋳物砂は、たとえば、造粒して焼結する方法、電融アトマイズ法等の公知の方法により製造することが可能であるが、中でも、本発明の第1の態様の球状鋳物砂と同様に火炎溶融法により製造するのが好適である。そこで、以下においては、火炎溶融法による、本発明の球状鋳物砂の製造方法の一例を説明する。なお、当該製造方法も本発明に包含される。
本発明の球状鋳物砂の製造方法は、Al2 3 およびSiO2 を主成分とする、Al2 3 /SiO2 重量比率が0.9〜17、平均粒径が0.05〜2mmの粉末粒子を出発原料とし、当該粉末粒子を火炎中で溶融して球状化する工程を含むものである。
なお、ここで「Al2 3 およびSiO2 を主成分とする」とは、出発原料としての粉末粒子全体における全成分中にAl2 3 およびSiO2 が合計量で80重量%以上含有されていることをいう。よって、「Al2 3 およびSiO2 を主成分とする」限り、当該粉末粒子としては、後述するようなAl2 3 源としての原料とSiO2 源としての原料の混合物からなるものであっても、(Al2 3 +SiO2 )源としての原料単独からなるものであっても、また、Al2 3 源としての原料および/またはSiO2 源としての原料と(Al2 3 +SiO2 )源としての原料との混合物であってもよい。
出発原料としての前記粉末粒子においては、主成分であるAl2 3 およびSiO2 の合計量としての含有量は、得られる球状鋳物砂中のAl2 3 およびSiO2 の合計量が全成分中80重量%以上になるようにする観点から、好ましくは75重量%以上であり、より好ましくは80重量%以上であり、さらに好ましくは85〜100重量%、特に好ましくは90〜100重量%である。Al2 3 /SiO2 重量比率としては、得られる球状鋳物砂中のAl2 3 /SiO2 重量比率が1〜15になるようにする観点から、0.9〜17であり、好ましくは1〜15である。平均粒径としては、単分散の球状鋳物砂を得る観点から0.05mm以上であり、所望の球形度を有する鋳物砂を得る観点から2mm以下であり、それらの両観点を満たすため0.05〜2mmである。また、得られる鋳物砂の球形度の向上という観点からは、0.05〜1.5mmが好ましい。
Al2 3 /SiO2 重量比率が、原料粉末粒子と得られる球状鋳物砂とで異なるのは、原料によってAl2 3 の逸失量とSiO2 の逸失量とが異なるためである。また、原料粉末粒子の平均粒径については、不定型の粉末は球状になることで粒径が減少するが、もともと球状の粉末は粒径が変化しないので、上記範囲であればよい。
本発明の球状鋳物砂を得るためには、出発原料としての粉末粒子は、溶融時の成分蒸発を考慮し、Al2 3 /SiO2 重量比率および平均粒径が上記範囲内になるよう調製して使用する。
出発原料である粉末粒子を溶融する際、当該粒子に水分が含まれると、該水分が蒸発するため、得られる鋳物砂には当該水分の蒸発に伴って多数の開孔が形成されることになる。当該開孔の形成は、鋳物砂の吸水率の増加や、球形度の低下をもたらす。従って、出発原料の含水率(重量%)としては、得られる球状鋳物砂の吸水率および球形度を適切な範囲に調節する観点から、10重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましく、1重量%以下がさらに好ましい。含水率は粉末粒子10gを800℃で1時間加熱した時の減量により測定する。
出発原料は、たとえば、耐火性を有する鉱産原料および合成原料から選ぶことができる。Al2 3 源としての原料として、ボーキサイト、バン土頁岩、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム等を挙げることができる。また、SiO2 源としての原料として、珪石、珪砂、石英、クリストバライト、非晶質シリカ、長石、パイロフィライト等を挙げることができる。また、(Al2 3 +SiO2 )源としての原料として、カオリン、バン土頁岩、ボーキサイト、雲母、シリマナイト、アンダルサイト、ムライト、ゼオライト、モンモリロナイト、ハイロサイト等を挙げることができる。これらの原料はそれぞれ単独で、もしくは2種以上を混合して使用することができる。選択された出発原料は、その含水率を低下させるため、あるいはその溶融を容易にするために仮焼して使用するのが好ましい。仮焼された原料粉末粒子としては、仮焼バン頁、仮焼ムライト、仮焼ボーキサイト、仮焼した水酸化アルミニウムとカオリンとの混合物等が例示される。
出発原料としての粉末粒子を火炎中で溶融して球状化する工程では、上記のような出発原料を酸素等のキャリアガスに分散させ、火炎中に投入することによって溶融し、球状化を行う(火炎溶融法)。好適な態様においては、下記火炎中に、投入する。
用いる火炎はプロパン、ブタン、メタン、天然液化ガス、LPG、重油、灯油、軽油、微粉炭等の燃料を酸素と燃焼させることによって発生させる。燃料の対酸素比は完全燃焼の観点から容量比で1.01〜1.3が好ましい。高温の火炎を発生させる観点から、酸素・ガスバーナーが好適である。特にバーナーの構造は限定するものではないが、特開平7−48118号公報、特開平11−132421号公報、特開2000−205523号公報または特開2000−346318号公報で開示されているバーナーが例示される。
本発明の製造方法で用いる0.05〜2mmの範囲にある大きな平均粒径をもつ上記耐火性の原料粉末を球状化するには以下の手法が好適である。
火炎中への粉末粒子の投入は、キャリアガス中に分散して行なう。キャリアガスとしては、酸素が好適に用いられる。この場合、キャリアガスの酸素は燃料燃焼用として消費できる利点がある。ガス中の粉体濃度は、粉末粒子の充分な分散性を確保する観点から、0.1〜20kg/Nmが好ましく、0.2〜10kg/Nmがより好ましい。
さらに、火炎中に投入する際には、メッシュ、スタティックミキサー等を通過させて分散性を高めることがより好ましい。
火炎中での球状化を速やかに行なうと共に、単分散した球状鋳物砂を得る観点から、原料粉末粒子の形状と組成を選択することが好ましい。形状としては、火炎中での滞留時間確保や溶融、球状化を速やかに行なう観点から、原料粉末粒子の長軸径/短軸径比が9以下であるのが好ましく、より好ましくは4以下、さらに好ましくは2以下である。一方、組成としては、融着していない単分散の球状粒子を得る観点から、Al2 3 /SiO2 重量比率が1.5〜10であるのが特に好適である。
また、粉末粒子は、N2 不活性ガス等を電離させて生じるプラズマジェット火炎中でも好適に溶融し、球状化できる。
以上の方法により、本発明の所望の球状鋳物砂を得ることができる。当該鋳物砂は、流動性に非常に優れたものである。また、前記の通り、本発明の球状鋳物砂が所定の割合で含まれるように、該鋳物砂と公知の鋳物砂とを適宜混合することにより、本発明の球状鋳物砂と同等の効果を発揮し得る鋳物砂を得ることができる。鋳型の製造においてこれらの鋳物砂を用いると、使用するバインダーの量を少なくできることから、それらの鋳物砂は、鋳物砂として効率的に再生することができる。
本発明の球状鋳物砂および該鋳物砂と公知の鋳物砂との混合物からなる鋳物砂(以下、これらの鋳物砂を本発明の鋳物砂と略記する)は、鋳鋼、鋳鉄、アルミニウム、銅およびこれらの合金等の鋳型用途に好適に使用されうる。また、金属、プラスチック等への充填材としても使用することができる。
本発明の鋳物砂は、単独で、もしくは珪砂等のその他の公知の鋳物砂や耐火性骨材と組み合わせて、粘土、水ガラス、シリカゾル等の無機質バインダー、またはフラン樹脂、フェノール樹脂、フランフェノール樹脂等の有機質バインダーと混合され、所望の鋳造用鋳型を用いて公知の方法に従って造型され得る。高強度の鋳造用鋳型を得る観点から、バインダーの使用量としては、鋳物砂100重量部に対して、バインダーを0.05〜5重量部使用するのが好適である。このようにして得られる鋳型は、高強度であり、しかもその表面が平滑である。従って、この鋳造用鋳型で鋳造すると、表面荒れが小さく、後工程である研磨工程への負荷が小さい鋳物が得られる。
鋳造用鋳型の製造に使用する観点から、本発明の鋳物砂の粒子密度(g/cm3 )としては、1〜3.5g/cm3 の範囲であるのが好ましい。より高強度の鋳型を所望する場合、該粒子密度としては2.5〜3.5g/cm3 の範囲であるのが好ましい。この範囲のものは中実で緻密であり高強度の鋳型が得られる。また、軽量な鋳型を所望する場合、該粒子密度としては1〜2.5g/cm3 の範囲であるのが好ましい。この範囲のものは内部に空間を有する多孔質であり軽量な鋳型が得られる。粒子密度は、JIS R1620の粒子密度測定法に従って測定することができる。
また、前記鋳物をさらに適宜加工することにより、表面および内面欠陥の少ない構造物が得られる。当該構造物としては、たとえば、金型、エンジン部材、工作機械部材、建築部材等が挙げられる。
以上のような、優れた性質を有する鋳造用鋳型、鋳物および構造物は、本発明に包含される。
実施例1
Al2 3 とSiO2 を合計量で97重量%含有する、Al2 3 /SiO2 重量比率が1.7、含水率が0重量%、平均粒径が0.31mm、長軸径/短軸径比が1.5、のムライト粉末(柴田セラミックス製合成ムライト粉末)を出発原料とし、当該粉末を、酸素をキャリアガスとして用い、LPG(プロパンガス)を対酸素比(容量比)1.1で燃焼させた火炎(約2000℃)中に投入し、単分散した球状鋳物砂を得た。得られた鋳物砂は、Al2 3 とSiO2 を合計量で97重量%含有しており、Al2 3 /SiO2 重量比率が1.7、平均粒径が0.26mm、球形度が0.99、吸水率が0重量%、粒子密度が2.9g/cm3 であった。該鋳物砂の反射顕微鏡((株)ニコン製)写真(倍率:100倍)を図1に示す。当該図より、いずれの鋳物砂粒子も球状であることが分かる。
実施例2
出発原料の平均粒径を0.9mm、長軸径/短軸径比を1.7とした以外は実施例1と同様な操作で単分散した球状鋳物砂を得た。得られた鋳物砂は、Al2 3 とSiO2 を合計量で97重量%含有しており、Al2 3 /SiO2 重量比率が1.7、平均粒径が0.69mm、球形度が0.97、吸水率が0重量%、粒子密度が2.8g/cm3 であった。
実施例3
Al2 3 とSiO2 を合計量で97重量%含有する、Al2 3 /SiO2 重量比率が2.7、含水率が0.1重量%、平均粒径が0.25mm、長軸径/短軸径比が1.3のムライト粉末(柴田セラミックス製合成ムライト粉末) を出発原料とした以外は、実施例1と同様な操作で単分散した球状鋳物砂を得た。得られた鋳物砂は、Al2 3 とSiO2 を合計量で98重量%含有しており、Al2 3 /SiO2 重量比率が2.7、平均粒径が0.21mm、球形度が0.99、吸水率が0重量%、粒子密度が3.1g/cm3 であった。
実施例4
Al2 3 とSiO2 を合計量で95重量%含有する、Al2 3 /SiO2 重量比率が1.64、含水率0.2重量%、平均粒径が0.45mm、長軸径/短軸径比が1.6のシリマナイトサンドを出発原料とした以外は、実施例1と同様な操作で単分散した球状鋳物砂を得た。得られた鋳物砂は、Al2 3 とSiO2 を合計量で95重量%含有しており、Al2 3 /SiO2 重量比率が1.6、平均粒径が0.35mm、球形度が0.98、吸水率が0重量%、粒子密度が2.8g/cm3 であった。
実施例5
Al2 3 /SiO2 重量比率が2.5となるよう水酸化アルミニウムとカオリンを混合したものを電気炉にて700℃で1時間仮焼し、Al2 3 とSiO2 を合計量で96重量%含有する、含水率1.9重量%、平均粒径が0.2mm、長軸径/短軸径比が1.8の粉末粒子を出発原料とした以外は、実施例1と同様な操作で単分散した球状鋳物砂を得た。得られた鋳物砂は、Al2 3 とSiO2 を合計量で95重量%含有しており、Al2 3 /SiO2 重量比率が2.6、平均粒径が0.19mm、球形度が0.97、吸水率が0.1重量%、粒子密度が2.7g/cm3 であった。
実施例6
Al2 3 とSiO2 を合計量で93重量%含有する、Al2 3 /SiO2 重量比率が1.56、含水率0.1重量%、平均粒径が0.15mm、長軸径/短軸径比が1.4の仮焼バン頁粉末を出発原料として実施例1と同様な操作で単分散した球状鋳物砂を得た。得られた鋳物砂は、Al2 3 とSiO2 を合計量で93重量%含有しており、Al2 3 /SiO2 重量比率が1.55、Fe含有量は1.7重量%、平均粒径が0.14mm、球形度が0.988、吸水率が0重量%であった。
実施例7
Al2 3 とSiO2 を合計量で95重量%含有する、Al2 3 /SiO2 重量比率が3.36、含水率0.1重量%、平均粒径が0.13mm、長軸径/短軸径比が1.2の仮焼バン頁粉末を出発原料として実施例1と同様な操作で単分散した球状鋳物砂を得た。得られた鋳物砂は、Al2 3 とSiO2 を合計量で93重量%含有しており、Al2 3 /SiO2 重量比率が3.35、Fe含有量は1.01重量%、平均粒径が0.12mm、球形度が0.998、吸水率が0重量%であった。
実施例8
Al2 3 とSiO2 を合計量で91重量%含有する、Al2 3 /SiO2 重量比率が9.83、含水率0.1重量%、平均粒径が0.14mm、長軸径/短軸径比が1.3の仮焼バン頁粉末を出発原料として実施例1と同様な操作で単分散した球状鋳物砂を得た。得られた鋳物砂は、Al2 3 とSiO2 を合計量で91.5重量%含有しており、Al2 3 /SiO2 重量比率が9.39、Fe含有量は1.87重量%、平均粒径が0.13mm、球形度が0.996、吸水率が0重量%であった。
実施例9
Al2 3 とSiO2 を合計量で95重量%含有する、Al2 3 /SiO2 重量比率が2.21、含水率0重量%、平均粒径が0.16mm、長軸径/短軸径比が1.4の仮焼ムライト粉末を出発原料として実施例1と同様な操作で単分散した球状鋳物砂を得た。得られた鋳物砂は、Al2 3 とSiO2 を合計量で95.3重量%含有しており、Al2 3 /SiO2 重量比率が2.19、Fe含有量は1.21重量%、平均粒径が0.13mm、球形度が0.995、吸水率が0重量%であった。
比較例1
Al2 3 /SiO2 重量比率が2.7となるよう水酸化アルミニウムとカオリンを混合し、スプレードライヤーを用いて平均粒径0.2mmの球状にした粉末粒子(Al2 3 とSiO2 を合計量で96重量%含有)を電気炉中にて1500℃で1時間焼成することにより球状鋳物砂を得た。得られた鋳物砂は、Al2 3 とSiO2 を合計量で97重量%含有しており、Al2 3 /SiO2 重量比率が2.7、平均粒径が0.18mm、球形度が0.89、吸水率が1.2重量%、粒子密度が2.7g/cm3 であった。該鋳物砂の反射顕微鏡((株)ニコン製)写真(倍率:100倍)を図2に示す。当該図より、本鋳物砂粒子の形状は球状化率が低く、球形度が低いことが分かる。
比較例2
Al2 3 /SiO2 重量比率が25となるよう水酸化アルミニウムとカオリンを混合し、電気炉にて700℃で1 時間仮焼して得た、Al2 3 とSiO2 を合計量で97重量%含有する、含水率が2.9重量%、平均粒径が0.2mmの粉末粒子を出発原料とした以外は、実施例1と同様な操作で球状鋳物砂を得た。得られた鋳物砂は、Al2 3 とSiO2 を合計量で97重量%含有しており、Al2 3 /SiO2 重量比率が26、平均粒径が0.19mm、球形度が0.88、吸水率が1重量%、粒子密度が3.3g/cm3 であった。
比較例3
Al2 3 /SiO2 重量比率が0.5となるよう珪石粉とカオリンを混合し、電気炉にて700℃で1時間仮焼して得た、Al2 3 とSiO2 を合計量で97重量%含有する、含水率が0.9重量%、平均粒径が0.2mmの粉末粒子を出発原料とした以外は、実施例1と同様な操作で鋳物砂を得た。ほとんどが不定形化し、球状のものはほとんど得られなかった。
比較例4
SiO含有量99重量%、平均粒径0.13mmの珪砂(不定形)を出発原料として実施例1と同様な操作で鋳物砂を得た。得られた鋳物砂は不定形なものであり、その吸水率は0.1重量%であった。
試験例1
実施例1、3および5と比較例1〜2で得られた鋳物砂の流動性、ならびに当該鋳物砂から得られた鋳型の強度および表面肌の状態を調べた。
(1)鋳物砂の流動性
JIS K6721の漏斗を用い、流動時間(秒)をもとめた。流動時間が短いほうが流動性に優れる。
(2)鋳型の強度
鋳物砂を74〜250μmに分級後、成形バインダーとしてカオーステップS660(花王クエーカー製)を鋳物砂100重量部に対して1.2重量部添加し、自硬性鋳型造型法に従って成形(直径50mm×高さ50mm)し鋳型を得た。次いで、24時間、室温で養生後、圧縮試験機を用い、鋳型の圧縮強度(MPa)を測定した(25℃、湿度55%)。
(3)鋳型の表面肌
以下の評価基準に従って鋳型から脱型後の鋳物表面を目視観察により評価し、当該評価結果を鋳型の表面肌の評価結果として用いた。すなわち、鋳物表面の状態が平滑であれば、鋳型の表面肌も平滑である。なお、鋳物は、鋳鉄FC−250を高周波炉により1400℃で溶融し、50mm×50mm×400mmの直方体の形状のものを作製した。
〔評価基準〕
○: 鋳物砂跡がなく、 平滑な面を示す
△: 鋳物砂跡が少し認められ、 やや平滑な面を示す
×: 鋳物砂跡が明確で、 荒れた面を示す
以上の各試験結果を表1に示す。
Figure 0004326916
表1に示す結果より、比較例1〜2の鋳物砂に比べ、実施例1、3および5の鋳物砂は優れた流動性を有することが分かる。また、得られた鋳型についても、比較例のものと比べ、実施例のものは強度に優れ、また、表面肌が平滑であることが分かる。実施例1、3および5の鋳物砂から製造された鋳型で鋳造された鋳物は後工程である研磨工程を充分軽減できる程に表面は平滑であった。
試験例2
実施例9と比較例1、4で得られた鋳物砂を用い、バインダーをカオーライトナー34OB(花王クエーカー製)とした以外は試験例1と同様にして鋳型の強度試験を0.5〜24時間の経時で行なった。図3にそれらの鋳物砂から作製した鋳型の経時的な強度試験の結果を示す。該図に示すように実施例9の鋳物砂を用いた場合、短時間で鋳型強度が実用強度(2MPa程度)に達した。それゆえ、脱型が早く行なえ、作業効率が向上した。
また、実施例9と比較例1で得られた鋳物砂を用いて作製した鋳型の表面と、該鋳型を用いて作製した鋳物の表面の平滑性を表面粗さ測定器(小坂研究所製、サーフコーダSE−30H)により表面粗さ(中心線平均粗さ:Ra)として測定した。Raが小さい程、表面平滑性に優れる。結果を表2に示す。表2より、実施例9の鋳物砂を用いた場合、比較例1の鋳物砂を用いた場合と比べ、表面平滑性に優れた鋳型が得られ、それを用いて作製した鋳物の表面も平滑性に優れることが分かる。
Figure 0004326916
試験例3
実施例3、9と比較例1、4で得られた鋳物砂について、鋳物砂の再生効率の指標となる耐粉砕性を比較した。各鋳物砂1kgをアルミナボールミルにそれぞれ投入し、60分間処理した後の平均粒径変化率〔(処理前の平均粒径/処理後の平均粒径)×100〕を耐粉砕性の指標とした。該変化率が小さい程、耐粉砕性に優れる。結果を表3に示す。
Figure 0004326916
表3より、実施例3と9の鋳物砂は、比較例1と4の鋳物砂に比べ、耐粉砕性に優れることが分かる。従って、使用するバインダーを少なくすることができ、使用後の砂中の残存炭素量が少なく、培焼再生が容易となる。培焼再生では粉化(摩耗粉になる)しないため、実施例3と9の鋳物砂は、再生効率に優れると言える。
試験例4
実施例3の鋳物砂50体積%と比較例1の鋳物砂50体積%とからなる鋳物砂、および実施例9の鋳物砂80体積%と比較例4の鋳物砂20体積%とからなる鋳物砂をそれぞれ得て、試験例1に準じて試験したところ、それらの鋳物砂は優れた流動性を有しており、また、該鋳物砂から得られた鋳型は、強度に優れ、表面肌が平滑であった。
以上の実施例が示すように本発明の球状鋳物砂は、鋳物砂に要求される諸特性に優れており、産業上有用である。
図1は、実施例1で得られた鋳物砂の反射顕微鏡写真(倍率:100倍)である。 図2は、比較例1で得られた鋳物砂の反射顕微鏡写真(倍率:100倍)である。 図3は、実施例9と比較例1、4で得られた鋳物砂からそれぞれ作製した鋳型の経時的な強度試験の結果を示すグラフである。

Claims (4)

  1. Al2 3 およびSiO2 を主成分として含有してなり、Al2 3 /SiO2 重量比率が1〜15、平均粒径が0.05〜1.5mmである火炎溶融法で製造された球状鋳物砂。
  2. Al2 3 およびSiO2 を主成分として含有してなり、Al2 3 /SiO2 重量比率が1〜15、平均粒径が0.05〜0.5mm、球形度が0.95以上である火炎溶融法で製造された球状鋳物砂。
  3. 吸水率が0.8重量%以下である請求項1又は2記載の球状鋳物砂。
  4. Al2 3 およびSiO2 を主成分とする、Al2 3 /SiO2 重量比率が0.9〜17、平均粒径が0.05〜2mmの粉末粒子を、火炎中で溶融して球状化する工程を含む、請求項1〜いずれかに記載の球状鋳物砂の製造方法。
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