JP4323133B2 - 大型車両用ラジアルタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、大型車両用ラジアルタイヤ、特に大型建設車両用ラジアルタイヤに関する。特に、本発明は、耐久性を向上させた大型車両用ラジアルタイヤ、大型建設車両用ラジアルタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
スチールコードと該スチールコードのコーティングゴムとからなるベルト層を有する大型車両用ラジアルタイヤの該コーティングゴムには、次の2点が少なくとも要求される。即ち、ラジアル構造に伴うベルトのたが締めによるタイヤ形状確保に必要な高弾性と、タイヤの耐久性向上のための耐亀裂生長性である。従来、コーティングゴムのイオウ架橋の度合、該ゴムへのカーボンブラック添加量を制御することにより、この2つの性能を提供してきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、昨今、車両、特に建設車両の大型化に伴い、それに用いるタイヤも更なる大型化が求められている。タイヤが大型化すると、タイヤ製造工程における加硫時間が長時間となる。この場合、特に従来のイオウ架橋法を用いる場合、耐熱性が不十分であるため、コーティングゴム性能の悪化、特に弾性率の低下を招くことがある。
【0004】
一方、例えばカーボンブラックなどの充填剤の添加量を増加させることにより、長時間の加硫を行ったとしても、弾性率の低下を抑えられることが知られている。しかしながら、この方法は、ゴム組成物の耐発熱性を低下させてしまい、発熱に起因するタイヤの故障増加が懸念される。同様に、加硫促進剤を増量することにより、弾性率の低下を抑えることができるが、タイヤの耐亀裂生長性及び/又は耐久性を低下させることになる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決することにある。
具体的には、本発明の目的は、長時間の加硫によっても高弾性を維持し、且つ耐発熱性及び耐亀裂生長性を有するコーティングゴム、該ゴムを有するゴム−スチールコード複合体、及び/又は本発明のゴム組成物とスチールコードとからなるベルト層を有する大型車両用ラジアルタイヤを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明者らは、鋭意検討した結果、トランスポリブタジエンと耐熱性架橋剤である1,6−ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウム・二水和物とを併用し、かつ該耐熱性架橋剤をある特定の比率で用いることにより、得られたゴム組成物は、長時間加硫を行っても優れた耐亀裂生長性を有することを見出し、以下の発明を想到した。
【0007】
<1> スチールコードと該スチールコードのコーティングゴムとからなるベルト層を有する大型車両用ラジアルタイヤであって、前記コーティングゴムは、イソプレンゴムとトランスポリブタジエンとからなるゴム成分;及び1,6−ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウム・二水和物を配合してなり、該1,6−ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウム・二水和物の配合量が前記ゴム成分中のトランスポリブタジエンの重量の30%以下であるゴム組成物からなることを特徴とする大型車両用ラジアルタイヤ。
【0008】
<2> 上記<1>において、1,6−ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウム・二水和物がゴム成分100重量部あたり0.3〜2.0重量部であるのがよい。
<3> 上記<1>又は<2>において、コーティングゴムは、加硫後、100%伸長時の引張応力が3.5MPa(メガパスカル)以上であり、かつ25℃で歪2%の条件下で測定したときのtanδが0.200以下であるのがよい。
【0009】
<4> 上記<1>〜<3>のいずれかにおいて、トランスポリブタジエンは、そのトランス結合含有量が82〜98モル%であり且つ重量平均分子量が30,000から200,000であるのがよい。
【0010】
<5> スチールコード用コーティングゴムに用いるゴム組成物であって、イソプレンゴムとトランスポリブタジエンとからなるゴム成分;及び1,6−ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウム・二水和物を配合してなり、該1,6−ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウム・二水和物の配合量が前記トランスポリブタジエンの重量の30%以下であることを特徴とする、上記ゴム組成物。
【0011】
<6> 上記<5>において、1,6−ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウム・二水和物の配合量がゴム成分100重量部あたり0.3〜2.0重量部であるのがよい。
<7> 上記<5>又は<6>において、加硫後、100%伸長時の引張応力が3.5MPa(メガパスカル)以上であり、かつ25℃で歪2%の条件下で測定したときのtanδが0.200以下であるのがよい。
【0012】
<8> 上記<5>〜<7>のいずれかにおいて、トランスポリブタジエンは、そのトランス結合含有量が82〜98モル%であり且つ重量平均分子量が30,000から200,000であるのがよい。
<9> ゴム組成物とスチールコードとから成るゴム−スチールコード複合体であって、該ゴム組成物は、ポリイソプレンゴムとトランスポリブタジエンとからなるゴム成分;及び1,6−ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウム・二水和物を配合してなり、該1,6−ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウム・二水和物の配合量が前記ゴム成分中のトランスポリブタジエンの配合量の30%以下である、上記複合体。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、スチールコードと該スチールコードのコーティングゴムとからなるベルト層を有する大型車両用ラジアルタイヤに関する。次に、ベルト層に用いられるコーティングゴムについて、まず説明する。
【0014】
本発明に用いるコーティングゴムは、ゴム成分と1,6−ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウム・二水和物(以下、「HTS」と略記する)とを配合してなる。このうち、ゴム成分は、イソプレンゴムとトランスポリブタジエンとからなる。
本発明に用いられるイソプレンゴムは一般に入手できるすべての天然ゴム及び合成ポリイソプレンを用いることができるが、天然ゴムを用いるのが好ましい。イソプレンゴムは、ゴム成分100重量部中、90〜99重量部、好ましくは95〜99重量部であるのがよい。
【0015】
本発明に用いられるトランスポリブタジエンは、そのトランス結合含有量が82〜98モル%であることが好ましく、より好ましくは86〜98%であるのがよい。このトランス結合含量が高いほど、イソプレンゴムの伸張結晶性の促進効果を高くする傾向が生じる。一方、この含量が低すぎると、イソプレンゴムの伸張結晶性の促進効果が十分得られず、好ましくない。なお、この含量が98モル%を越えるものは合成上、困難である。
【0016】
また、このトランスポリブタジエンの重量平均分子量は3×104〜20×104であるのが好ましく、より好ましくは5×104〜15×104であるのがよい。分子量がこの範囲にあると、コーティングゴム用ゴム組成物の未加硫時の加工性と加硫時の物性バランスがよい。一方、分子量が低くなると弾性率が低下する傾向があり、分子量が高くなると作業性が低下する傾向がある。
【0017】
さらに、トランスポリブタジエンの配合量は、ゴム成分100重量部中、1〜10重量部であるのが好ましく、より好ましくは1〜5重量部であるのがよい。配合量が少ないと、長時間加硫による耐熱性の改良効果が小さくなる傾向がある。また、コーティングゴム用ゴム組成物の未加硫時の加工性が低下する傾向がある。一方、配合量が多くなると、耐発熱性が低下する傾向がある。また、イソプレンゴムとの相溶性が低下する、加硫ゴムの耐亀裂生長性の改良効果が十分に得られない等の不具合が生じることがある。
【0018】
本発明で用いられるトランスポリブタジエンは、市販品を用いても、合成により得られたものを用いてもよい。その製造方法を例示すれば、溶媒中でブタジエンモノマーを、ニッケルボロアシレート、トリブチルアルミニウム、トリフェニルホスファイト、トリフルオロ酢酸の4元系触媒に接触させて重合する方法を挙げることができる。
ゴム成分は、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲であれば、他のゴムを含んでいてもよい。他のゴムとして、例えばSBR、その他BRなどのジエン系ゴムであるのが好ましい。
【0019】
また、本発明に用いるコーティングゴムは、以下の式で表される1,6−ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウム・二水和物(HTS)を配合してなる。なお、HTSは、イオウ架橋と比較して、熱的に安定な架橋構造を与えるため、耐熱架橋剤として知られている。
【0020】
【化1】
【0021】
HTSの量は、ゴム成分中に含まれるトランスポリブタジエンの重量の30重量%以下でなければならない。また、HTSの量は、ゴム成分100重量部に対して、0.3〜2.0重量部であるのが好ましく、0.3〜1重量部であるのがさらに好ましい。HTSの量が多くなると、耐亀裂生長性が低下する傾向があり、加硫後のゴム組成物中にHTSが未反応のまま残存する傾向が生じ、その結果、HTSの特徴である安定な架橋形態を生成して、耐熱老化性を高める効果が損なわれることがある。一方、HTS量が少なくなると、長時間加硫による耐発熱性の低下の抑制効果が十分でないことがある。
【0022】
本発明に用いられるコーティングゴムは、該ゴム用組成物として、上記ゴム成分及びHTSの他に、ゴム工業で通常使用されている種々の成分を含むことができる。例えば、種々の成分として、充填剤(例えば、カーボンブラック、シリカ等の補強性充填剤;並びに炭酸カルシウム、炭酸カルシウムなどの無機充填剤);加硫促進剤;老化防止剤;酸化亜鉛;ステアリン酸;軟化剤;及びオゾン劣化防止剤等の添加剤を挙げることができる。なお、加硫促進剤として、M(2−メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)及びCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)等のチアゾール系加硫促進剤;TT(テトラメチルチウラムスルフィド)等のチウラム系加硫促進剤;並びにDPG(ジフェニルグアニジン)等のグアニジン系の加硫促進剤等を挙げることができる。
【0023】
本発明のゴム組成物は、次のような特性を有するのがよい。即ち、加硫後、100%伸長時の引張応力が3.5MPa(メガパスカル)以上、好ましくは3.5〜4.0MPaであるのがよい。なお、引張応力の測定は、JIS K6251−1993に準拠して測定することができる。
上記引張応力が小さくなると、ベルト層の入力である定応力時のベルト層の歪みを増大させて、耐亀裂生長性の低下を招く傾向が生じる。
【0024】
また、本発明のゴム組成物は、25℃で歪み2%の条件下で測定したときのtanδが0.200以下、好ましくは0.16〜0.2、より好ましくは0.18〜0.2であるのがよい。なお、tanδは、ヒステリシスロス性の指標であり、tanδが大きいほど、高ヒステリシスロス性であり、発熱量が多くなる。即ち、tanδが大きくなると、ベルトコーティングゴムの耐発熱性が低下する傾向にある。なお、tanδの測定は、例えば粘弾性測定装置(東洋精機社製スペクトロメーターなど)を用いて、周波数:52Hzという条件で行うことができる。
【0025】
本発明のゴム−スチールコード複合体は、常法により、本発明のゴム組成物をスチールコードに被覆することにより得ることができる。
用いられるスチールコードの材質、構造などは、特に制限されず、通常用いられるものから、用途に応じて適宜選択することができる。
本発明のゴム−スチールコード複合体は、例えば各種車両用タイヤのベルト層、カーカス層、ビード部、インサート、チェーファ等、その他の工業用品に好適に用いることができる。
【0026】
本発明の大型車両用ラジアルタイヤは、本発明のゴム組成物とスチールコードとからなるベルト層を有し、例えば本発明のゴム−スチールコード複合体をベルト層に用いることにより製造することができる。
【0027】
なお、本発明のベルト層は、上記スチールコード及びコーティングゴムの他に、他の層を有していてもよい。
本発明のラジアルタイヤは、大型車両、特に大型建設車両に用いられるタイヤであるのが好ましいが、その他の車両に用いられるタイヤであっても構わない。
【0028】
【実施例】
以下、実施例を用いて、本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0029】
(トランスポリブタジエンの調製)
乾燥し、窒素置換された800cm3の耐圧ガラス容器に、シクロヘキサン300g、1,3−ブタジエン50gを注入し、これにランタントリス(ノニルフェノキシド)0.3mmolを加えた。これに続いてn−ブチルリチウム0.9mmolを加えた後、50℃で2時間重合を行った。重合系は、重合開始から終了まで、全く沈殿は見られず、均一に透明であった。重合転化率は、約95%であった。重合溶液の一部をサンプリングし、イソプロパノールを加えて、固形物を乾燥し、白色粉末の重合体を得た。
【0030】
この後、重合系をさらに2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールのイソプロパノール5重量%溶液0.5cm3を加えて、反応の停止を行い、さらに常法に従い乾燥することによりトランスポリブタジエンの重合体を得た。
この重合体は、1,4−トランス含量:92%;及び1,2−ビニル含量:5%のミクロ構造を有し、分子量Mw:6.4×104及び分子量分布Mw/Mn:1.3を有していた。
【0031】
(実施例1及び2並びに比較例1〜比較例8)
表1記載の組成にしたがって、各成分を混練し、145℃で60分間加硫を行い、得られた加硫物の物性を評価した。なお、TR−BRは、上述で得たものを用いた。評価に際して、以下の1)100%伸長時の引張応力、2)tanδ、及び3)耐亀裂生長性を測定した。次にそれぞれの測定条件等を記載する。
【0032】
1)100%伸長時の引張応力
得られた加硫物からJIS3号試験片を作成し、JIS K6251−1993に従って測定した。
【0033】
2)tanδ
得られた加硫物の試験片について、粘弾性測定装置(東洋精機社製スペクトロメーター)を用い、温度25℃;歪み2%;及び周波数52Hzの条件下で測定した。
【0034】
3)耐亀裂生長性
試料として、その形状をダンベル型の3号試験片(JIS#3)に切り出した。この試料を用いて、クリープ試験機(島津製作所製)で定荷重モードテストを行った。即ち、試験条件:繰り返し引張試験;荷重:1.5kg;周波数:5Hzであった。その際の破断までの繰り返し引張回数を、比較例1の結果を100として、実施例1及び2、並びに比較例2〜8の値を指数表示した。
これら上記1)〜3)の測定結果も共に表1に示す。なお、表1中、1)の値は、「100%MOD」と略記する。
【0035】
【表1】
【0036】
表1から明らかなように、実施例1及び2は、耐亀裂生長性が著しく向上していることがわかる。
【0037】
【発明の効果】
本発明により、長時間の加硫によっても高弾性を維持し、且つ耐発熱性及び耐亀裂生長性を有するコーティングゴム、該ゴムを有するベルト層、及び/又は該ベルト層を有する大型車両用ラジアルタイヤを提供することができる。
Claims (10)
- スチールコードと該スチールコードのコーティングゴムとからなるベルト層を有するラジアルタイヤであって、前記コーティングゴムは、イソプレンゴムとトランスポリブタジエンとからなるゴム成分;及び1,6−ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウム・二水和物を配合してなり、該1,6−ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウム・二水和物の配合量が前記ゴム成分中のトランスポリブタジエンの重量の30%以下であるゴム組成物からなり、前記トランスポリブタジエンは、そのトランス結合含有量が82〜98モル%であることを特徴とするラジアルタイヤ。
- 前記1,6−ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウム・二水和物が前記ゴム成分100重量部あたり0.3〜2.0重量部である請求項1記載のタイヤ。
- 前記コーティングゴムは、加硫後、100%伸長時の引張応力が3.5MPa(メガパスカル)以上であり、かつ25℃で歪2%の条件下で測定したときのtanδが0.200以下である請求項1又は請求項2記載のタイヤ。
- 前記トランスポリブタジエンは、その重量平均分子量が30,000から200,000である請求項1〜請求項3のいずれか1項記載のタイヤ。
- 前記ラジアルタイヤが大型車両用ラジアルタイヤである請求項1〜請求項4のいずれか1項記載のタイヤ。
- スチールコード用コーティングゴムに用いるゴム組成物であって、イソプレンゴムとトランスポリブタジエンとからなるゴム成分;及び1,6−ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウム・二水和物を配合してなり、該1,6−ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウム・二水和物の配合量が前記トランスポリブタジエンの重量の30%以下であり、前記トランスポリブタジエンは、そのトランス結合含有量が82〜98モル%であることを特徴とする、上記ゴム組成物。
- 前記1,6−ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウム・二水和物の配合量が前記ゴム成分100重量部あたり0.3〜2.0重量部である請求項6記載のゴム組成物。
- 加硫後、100%伸長時の引張応力が3.5MPa(メガパスカル)以上であり、かつ25℃で歪2%の条件下で測定したときのtanδが0.200以下である請求項6又は請求項7記載のゴム組成物。
- 前記トランスポリブタジエンは、その重量平均分子量が30,000から200,000である請求項6〜請求項8のいずれか1項記載のゴム組成物。
- ゴム組成物とスチールコードとから成るゴム−スチールコード複合体であって、該ゴム組成物は、ポリイソプレンゴムとトランスポリブタジエンとからなるゴム成分;及び1,6−ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウム・二水和物を配合してなり、該1,6−ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウム・二水和物の配合量が前記ゴム成分中のトランスポリブタジエンの配合量の30%以下である、上記複合体。
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