JP4315318B2 - 開口容易缶蓋 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、飲料缶等で缶容器の天板側の端壁として缶胴に巻締固着される開口容易缶蓋に関し、特に、略円板状のパネル部に部分的に開口片が形成されているパーシャルオープンタイプの開口容易缶蓋で、タブの操作により開口片をパネル部と繋がった状態のまま缶内に押し下げて開口するようにしたステイオンタブ方式の開口容易缶蓋に関する。
【0002】
【従来の技術】
飲料缶用の缶容器では、その天板側の端壁として缶胴に巻締固着される開口容易缶蓋(イージーオープンエンド)として、缶蓋の略円板状のパネル部を全面的に開口するフルオープンタイプではなく、缶蓋のパネル部の一部分を飲み口として部分的に開口するパーシャルオープンタイプの開口容易缶蓋が一般的に使用されている。そのような飲料缶用のパーシャルオープンタイプの開口容易缶蓋として、以前は、タブの操作によりタブと開口片を缶蓋のパネル部から完全に切り離すようなプルトップタブ方式の缶蓋が多く使用されていたが、缶から切り離されたタブと開口片が不用意に捨てられて、資源の回収や環境美化という点で問題があったことから、現在では、タブの操作によりパネル部と繋がった状態のまま開口片を缶内に押し下げて、タブや開口片を缶から切り離すことなく開口するステイオンタブ方式の缶蓋が多く使用されている。
【0003】
そのようなステイオンタブ方式の開口容易缶蓋では、タブにより開口片を押し下げる際に、パネル部が撓んだり変形したりすると、タブによるてこ作用を缶蓋の所要部分(タブを固着するリベット部の近傍)に効率良く伝達することができず、その結果、スコア線を破断し難くなって開口性が悪くなるという虞がある。そのような問題に対処するために、ステイオンタブ方式の開口容易缶蓋においては、従来から一般的に、缶蓋のパネル部に対して、傾斜面と該傾斜面で囲まれた底面とを有する凹部を、タブと開口片の領域を内包するように形成することで、開口する前の缶蓋のパネル部上面からタブが上方に突出するのを抑えると共に、パネル部に張りを持たせるようにして、タブによる開口片の押し下げ時にパネル部が撓んだり変形したりするのを防止するようにしている。
【0004】
なお、そのようなステイオンタブ方式の開口容易缶蓋について、例えば、特開2000−16424号公報には、内圧が負荷されたときの破断開口部(開口片)先端での曲げ変形を抑え、スコアでの割れによる破裂を防止することを目的として、破断開口部(開口片)の先端部に相当する段差部(凹部とカウンターシンク部の間の部分)を部分的に切り欠くとともに、当該切り欠き部分に缶蓋の径方向に延在する壁部を形成するという構成が記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、タブと開口片の領域を内包するような凹部がパネル部に形成されているステイオンタブ方式の開口容易缶蓋においては、凹部の底面に対する傾斜面の傾斜角度(凹部の底面に対する傾斜面の折れ曲がり角度)が大きい程、パネル部の張りが良くなって、タブによるてこ作用を缶蓋の所要部分に効率良く伝達させることができ、スコア線の破断による開口時の開口性を向上させることができる。その一方、炭酸ガス等のガスを含有した飲料を内蔵する飲料缶の場合には、振動や衝撃や温度上昇等により内圧が上昇し易くなるが、上昇した内圧により缶蓋がリベット部を頂点とするドーム状に膨らまされた時には、凹部の底面に対する傾斜面の傾斜角度を大きくする程、その部分での折れ曲がりの程度が大きくなって強度が増すことで変形が起き難くなる。
【0006】
そのように、凹部の底面に対する傾斜面の折れ曲がり角度が大きく、凹部の底面と傾斜面との境界部分が変形し難くなっていると、その分、内圧による缶蓋の外方への曲げ応力は、凹部の底面に位置するスコア線に集中的に作用することとなり、その結果、特に、開口片の先端近傍(缶蓋の外周に近い部分)では、図5(A)に示すように、缶蓋の半径方向に対して略直交するようにスコア線7が位置していることで、図5(B)に示すように、断面略V字状に刻設されたスコア線7の溝の両側壁の角度を拡げるように、スコア線7の部分で山折りに折れ曲がり、それによってスコア線7が破断され易くなることから、缶蓋の他の部分が外方に角出し変形(所謂バックリング)するよりも前に、内圧によりスコア線7が破断されて内容物が吹き出してしまうという可能性がある。
【0007】
この点について、既に述べたように、特開2000−16424号公報には、破断開口部(開口片)の先端部に相当する段差部(凹部とカウンターシンク部の間の部分)を部分的に切り欠くとともに、その切り欠き部分に缶蓋の径方向に延在する壁部を形成することで、内圧が負荷された時の破断開口部(開口片)の先端部付近での曲げ変形を抑えて、スコア線での割れ(曲げ変形による破断)を防止するということが記載されているものの、そのような構成では、内圧を受けることで缶蓋が外方に膨らもうとする力による曲げ変形や曲げ応力に対しては耐圧強度が向上するとしても、その耐圧強度を超える内圧が缶蓋に作用したときに、切り欠き部分がバックリングの起点となり易い(例えば、特開平5−112357号公報には、エンボスやコイニング等の座屈部を形成した部分でバックリングが発生し易いということが記載されている。)ことから、切り欠き部でバックリングが起きて、その近傍のスコア線が破断され易くなるという虞がある。
【0008】
本発明は、上記のような問題の解消を課題とするものであり、具体的には、ステイオンタブ方式の開口容易缶蓋において、開口時には、タブによる操作を缶蓋の所要部分に効率良く伝達してスコア線を破断し易くすることができ、しかも、未開口の状態で缶の内圧が高くなった時には、内圧によるスコア線の破断が起こり難いようにすることを課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記のような課題を解決するために、カウンターシンク部によって囲まれた略円板状のパネル部で、スコア線によって囲まれた開口片が、スコア線の両端部の間をヒンジ部分として残すように、略円板状のパネル部の片側に偏って部分的に形成され、開口片を押し下げるためのタブが、その一端側が押し下げ端として開口片の上方に位置し、その他端側が把持部として開口片から離れて位置するように、パネル部の略中央で開口片の領域外にリベット部で固着されていると共に、傾斜面と該傾斜面で囲まれた底面とを有する凹部が、タブと開口片の領域を内包するようにパネル部に形成されている開口容易缶蓋において、凹部の傾斜面に沿ったスコア線の外側での、凹部の底面とそれに続く傾斜面との折れ曲がり角度を、リベット部から最も離れた開口片の先端付近で、その他の部分と比べて部分的に小さくすることを特徴とするものである。
【0010】
上記のような構成によれば、傾斜面と該傾斜面で囲まれた底面とを有する凹部を形成して、パネル部の張りを良くしていることで、開口時には、タブの操作を缶蓋の所要部分に効率良く伝達させることができて、スコア線が破断し易くなっていると共に、未開口の状態で缶の内圧が高くなった時には、特に、スコア線の外側での凹部の底面に対する傾斜面の折れ曲がり角度を、スコア線の破断が起き易い開口部の先端付近(缶蓋の外周に近い部分)の部分で他の部分よりも小さくして、この部分での変形を容易にしていることにより、内圧による缶蓋の外方への曲げ応力がスコア線の部分に集中するのを緩和することができて、内圧によるスコア線の破断が起こり難くなっている。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の開口容易缶蓋の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明の開口容易缶蓋の一実施形態について、図1は、缶蓋(缶胴に巻締め固着される前)の上面の全体を示し、図2は、タブを省略した缶蓋の上面の開口片がある側を拡大して部分的に示し、図3は、缶蓋の開口片先端付近の断面形状について、(A)通常の場合と(B)内圧で変形した場合とをそれぞれ示し、図4は、缶蓋の開口片先端付近の成形状態を示すものである。また、開口容易缶蓋の従来例について、図5は、缶蓋の開口片先端付近の断面形状について、(A)通常の場合と(B)内圧で変形した場合とをそれぞれ示し、図6は、缶蓋の開口片先端付近の成形状態を示すものである。
【0012】
本実施形態の缶蓋1は、アルミニウム合金の薄板からプレス成形されるものであって、図1に示すように、パネル部2とカウンターシンク部3とフランジ部4とが一体的に形成された本体部分に対して、それとは別体に形成された開口操作用のタブ6が、略円板状のパネル部2の略中央に形成されたリベット部5によって固着されている。なお、図示していないが、缶蓋1の内面には、食品衛生性や耐食性や加工性やフレーバー性等の観点から、エポキシ−フェノール樹脂,エポキシ−アクリル樹脂,塩化ビニル系樹脂等の塗料や、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリエステル,ポリアミド,アイオノマー等の熱可塑性樹脂の1種又は2種以上から構成される樹脂フィルムによる有機被膜が形成されており(なお、樹脂フィルムの場合には、1層であっても、2層以上であっても良いし、二軸延伸フィルムであっても、無延伸フィルムであっても良い)、また、缶胴との巻締固着部分となるフランジ部4の裏面側には、有機高分子製のシール剤が塗布されて付着される。
【0013】
そのような缶蓋1の略円板状のパネル部2には、図2に示すように、パネル部2の中心から片側に偏った範囲で、リベット部5の近傍からパネル部2の外周部近傍にまで延び、半径方向の長さがそれと直交する方向の長さよりも長く形成されるような開口部の形状に沿って、始端7aから終端7bに連続するスコア線7(なお、開口時に破断する外側の主スコア線7に対して、スコア線の成形時に主スコア線7への応力の集中を緩和するための破断しない副スコア線8が、二重線の状態で内側に設けられている)が刻設されており、スコア線7(開口時に破断する主スコア線)によって囲まれた領域が、開口時に缶内に押し下げられる開口片10の部分になっていて、スコア線7の両端部7a,7bの間は、開口時にパネル部2と開口片10を繋ぐヒンジ部分9となる。
【0014】
そのようにスコア線7で囲まれた開口片10が、略円板状のパネル部2の中心から片側に偏って部分的に形成されているのに対して、図1に示すように、開口片10の部分を押し下げるためのタブ6は、その一端側が押し下げ端6aとして開口片10の上方に位置し、その他端側が把持部6bとして開口片10から離れて(リベット部5を挟んで開口片10とは反対側に)位置するように、開口片10の領域外で、パネル部2の略中央に位置するリベット部5によって固着されている。
【0015】
また、リベット部5によりタブ6が固着され、スコア線7に囲まれて開口片10が形成されているパネル部2には、タブ6と開口片10の領域を内包するように、傾斜面11bと該傾斜面11bで囲まれた底面11aとを有する凹部11が形成されており、タブ6と開口片10の領域は、連続した傾斜面11bにより完全に囲まれた状態となっていて、スコア線7やリベット部5は、底面11aに形成された状態となっている。なお、パネル部2の凹部11の底面11aには、開口片10の領域内に、開口片10の部分に剛性を持たせるための馬蹄形の補強突起12が形成され、また、開口片10の領域外で、タブの把持部6bの端部近傍に、タブの把持部6bを摘み易くするための指入れ凹部13が、凹部11の傾斜面11bの一部分と連なった状態で、凹部11の底面11aから更に下方に凹むように形成されている。
【0016】
なお、凹部11の傾斜面11bについて、本実施形態では、タブ6と開口片10の領域を連続して完全に囲むようにしているが、そのような構造に限らず、開口片10の周辺に沿って傾斜面11bを連続させることは必要であるが、タブの把持部6bの近傍では、凹部11とカウンターシンク部3との間の部分を切り欠くようにしても良く、そうすることにより、耐圧強度を超える内圧が缶蓋に作用したときに、スコア線7と反対側に位置するタブの把持部6b側でバックリングを発生させ易くすることができて、バックリングによるスコア線7の破断を防止することができる。
【0017】
ところで、上記のような本実施形態の缶蓋1において、凹部11の傾斜面11bに沿ったスコア線7の外側では、即ち、スコア線7のリベット部5に近接する初期破断部分の近傍を除いた平面略U字状の部分の外側では、凹部11の底面11aに対する傾斜面11bの折れ曲がり角度が、リベット部5から最も離れた開口片10の先端10aの付近(缶蓋の外周に近い部分)で、その他の部分と比べて部分的に角度が小さく(傾斜が緩く)なるように形成されている。
【0018】
すなわち、本実施形態では、具体的には、図2に示すように、リベット部5の中心と開口片10の先端10aとを結ぶ仮想線Xの線上において、図3(A)に示すように、スコア線7の平面略U字状の部分の外側において、凹部11の縦断面略直線状の底面11aに対する縦断面略直線状の傾斜面11bの折れ曲がり角度α(底面11aに対する傾斜面11bの傾斜角度)は、折れ曲がりが殆ど目立たない程度の5°以下(具体例では略3°)となっており、この仮想線Xを中心線として左右対称で、リベット部5の中心での円周角θが約40°である扇形の範囲内において、仮想線Xから離れるに従って折れ曲がり角度αが徐々に大きく(折れ曲がりが目立つように)なっていて、この扇形の範囲外では、図5(A)に示すような従来の缶蓋における開口片先端付近での底面11aに対する傾斜面11bの折れ曲がり角度αと同様に、略18°(15〜25°)の折れ曲がり角度となっている。底面11aや傾斜面11bの縦断面形状については、略直線状でなく緩やかな曲線状であっても良く、その場合には、曲線に近似した仮想直線によって折れ曲がり角度を規定することとなる。
【0019】
なお、パネル部2に凹部11をプレス成形する場合(なお、指入れ凹部13も同時にプレス成形している)、従来は、カウンターシンク部3とフランジ部4が形成され、パネル部2にリベット部5やスコア線7や補強突起12が形成されて、タブ6が未だ固着されていない缶蓋を、図6に示すように、固定部材21,22の上に載置して、可動部材23,24とパンチ部材25を下方に移動させ、凹部11の底面11aの周辺部に沿った全周で(指入れ凹部13の成形部分を除いて)均一な高さのプレス面を有するパンチ部材25によりパネル部2の中央部をプレス加工することで、図5(A)に示すように、傾斜面11bと該傾斜面11bで囲まれた底面11aとを有する凹部11を形成しており、形成された凹部11の底面11aに対する傾斜面11bの折れ曲がり角度α(底面11aに対する傾斜面11bの傾斜角度)は、凹部11の周辺部の全周で略同じ角度となっている。
【0020】
これに対して、本実施形態の缶蓋1では、上記のような従来の缶蓋と比べて、パネル部2に凹部11をプレス成形する場合に、凹部11の底面11aの周辺部に沿ったプレス面を有するパンチ部材25について、そのプレス面の一部分(開口片10の先端10aの付近に相当する部分)だけを、図4に示すように、外方に向けて浅くなるように傾斜させておくことで、図3(A)に示すように、開口片10の先端10aの付近では、凹部11の底面11aに対する傾斜面11bの折れ曲がり角度αが、その他の部分よりも小さく(傾斜が緩く)なるように形成している。なお、図示していないが、スコア線7の外側のその他の部分(開口片10の先端10aの付近から離れた部分)での凹部11の底面11aに対する傾斜面11bの折れ曲がり角度は、図5(A)に示した従来のものと略同じ折れ曲がり角度となっている。
【0021】
上記のような構造を備えた本実施形態の缶蓋1は、内容物が充填された後の上端が開口された缶体(缶本体)に対して、フランジ部4を缶体の上端開口縁に巻締固着することで、缶容器の上端壁となるものであって、そのように缶容器の上端壁となった缶蓋1の開口時の状態について、以下に簡単に説明する。
【0022】
開口操作の開始に当たって、先ず、パネル部2の指入れ凹部13に指先を入れてタブの把持部6bに指を掛けた状態から、タブの把持部6bを持ち上げることにより、リベット部5を支点として、タブの押し下げ端6aが下方に押し下げられ、タブの押し下げ端6aがパネル部2(開口片10のリベット部5に近い部分)に当接した状態から、更にタブの把持部6bを持ち上げることで、第2種のてこ作用が働いて、持ち上げ力は、タブの押し下げ端6aとパネル部2の当接点を支点として、タブ6を固着しているリベット部5を上方に引き上げる力として作用し、その結果、リベット部5の近傍でスコア線7に初期破断が発生する。
【0023】
そのようにスコア線7が初期破断された状態から、更にタブの把持部6bを持ち上げることにより、第1種のてこ作用が働いて、リベット部5の両側部分を支点とするタブ6(押し下げ端6a)の押し下げ力により、既に初期破断されているスコア線7は、その始端7aから終端7bに向かって破断されると同時に、タブの押し下げ端6aにより開口片10が徐々に缶内に押し下げられ、最終的には、スコア線7の始端7aと終端7bの間の部分をヒンジ部分9として開口片10がパネル部2に繋がった状態で、開口片10の全体が缶内に押し下げられて、缶蓋1の開口が完了することとなる。
【0024】
上記のように開口される本実施形態の缶蓋1によれば、傾斜面11bと該傾斜面11bで囲まれた底面11aとを有する凹部11を、少なくとも開口片10の周辺では傾斜面11bが切り欠き部分のない連続した状態となるようにパネル部2に形成して、パネル部2の張りを良くしていることにより、開口片10の周辺でバックリングが優先的に発生するのを防止できると共に、開口時にタブ6を持ち上げてスコア線7を初期破断する際に、タブの押し下げ端6aと当接するパネル部2の部分を撓ませたり変形させたりすることなく、タブ6に対する持ち上げ力を缶蓋の所要部分(リベット部5の近傍)に効率良く伝達させることができて、スコア線7を破断し易くなる。
【0025】
また、パネル部2に形成された凹部11の傾斜面11bについて、開口片10の先端10a(缶蓋1の外周に近い部分)の付近では、スコア線7の外側での凹部11の底面11aに対する傾斜面11bの折れ曲がり角度(傾斜角度)αを、その他の部分よりも小さく(傾斜を緩く)していることで、この部分での変形が容易となって、それにより、未開口の状態で缶の内圧が高くなった時に、特に開口片10の先端付近のスコア線7の破断が起き易い部分で、内圧による缶蓋の外方への曲げ応力がスコア線7の部分に集中するのを緩和することができて、曲げ応力の集中を原因とするスコア線7の破断が起こり難くなっている。特に、開口片10の先端10aの付近での折れ曲がり角度αを5°以下として、この部分での折れ曲がりを殆ど目立たないようにすることで、缶の内圧が高くなった時に、この部分でスコア線7の外側が充分に変形することができて、その結果、内圧による缶蓋の外方への曲げ応力がスコア線7の部分に集中するのを確実に緩和することができる。
【0026】
すなわち、未開口の状態で缶の内圧が高くなった時に、開口片10の先端10aの近傍において、従来の開口容易缶蓋では、図5(B)に示すように、凹部11の底面11aと傾斜面11bの境界部分が大きく折れ曲がっていて、この部分が変形し難いことから、内圧による缶蓋の曲げ応力がスコア線7の部分に集中的に作用して、スコア線7の部分で山折りに折れ曲がり、それによってスコア線7が破断され易くなるのに対して、本実施形態の開口容易缶蓋では、図3(B)に示すように、凹部11の底面11aと傾斜面11bの境界付近に殆ど折れ曲がりがなく、スコア線7よりも外側の部分が変形し易いことで、内圧による缶蓋の曲げ応力がスコア線7の部分に集中するのが緩和されて、スコア線7の部分での折れ曲がりが小さく済むことから、スコア線7は破断され難くなっている。
【0027】
なお、本実施形態の缶蓋1では、凹部11の底面11aに対する傾斜面11bの折れ曲がり角度αについて、開口片10の先端10aの付近のみを部分的に小さくしていることから、この折れ曲がり角度αを凹部11の全周で小さくするような場合と比べて、パネル部2の全体としての張りを損なうことなく、タブ6に加えた力を缶蓋の所要部分に効率良く伝達させることができて、スコア線7の破断による開口性を充分に確保することができる。
【0028】
以上、本発明の開口容易缶蓋の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に示したような具体的な構造にのみ限定されるものではなく、例えば、開口片の形状については、幅方向に長い略楕円形(リベット部の中心と開口片の先端とを結ぶ長さよりも、それと直交する方向の長さの方が長い略楕円形)としたり、開口部の先端がやや角張った感じの略ハート型形状としても良く、また、開口片の先端付近の具体的な範囲については、開口片の部分の形状の違いによって適宜に変更可能なものであり、また、開口片先端付近での凹部の底面に対する傾斜面の具体的な折れ曲がり角度については、スコア線の破断強度の違いによって適宜に変更可能なものである等、適宜に設計変更可能なものであることは言うまでもない。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したような本発明の開口容易缶蓋によれば、傾斜面と該傾斜面で囲まれた底面とを有する凹部を、タブと開口片の領域を内包するようにパネル部に形成していることで、開口時のタブによる操作を缶蓋の所要部分に効率良く伝達することができ、スコア線を破断し易くすることができて、缶蓋の開口性を向上させることができると共に、前記の凹部の底面に対する傾斜面の折れ曲がり角度を、開口片の先端付近でその他の部分よりも小さくしていることにより、未開口の缶の内圧が高くなった時に、内圧による缶蓋の外方への曲げ応力を、開口片の先端付近でスコア線の部分に集中させないようにすることができて、缶の内圧が上昇することで缶蓋のスコア線が不用意に破断されるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の開口容易缶蓋の一実施形態について、缶蓋(缶胴に巻締め固着される前の状態)の全体を示す上面図。
【図2】図1に示した缶蓋について、タブを省略した状態で開口片のある側を拡大して部分的に示す上面図。
【図3】図1に示した缶蓋の開口片先端付近の断面形状について、(A)通常の場合と(B)内圧で変形した場合とをそれぞれ示す断面図。
【図4】図3(A)に示した缶蓋の開口片先端付近の成形状態を示す断面説明図。
【図5】従来の缶蓋の開口片先端付近の断面形状について、(A)通常の場合と(B)内圧で変形した場合とをそれぞれ示す断面図。
【図6】図5(A)に示した缶蓋の開口片先端付近の成形状態を示す断面説明図。
【符号の説明】
1 缶蓋
2 パネル部
3 カウンターシンク部
5 リベット部
6 タブ
6a (タブの)押し下げ端
6b (タブの)把持部
7 スコア線
9 ヒンジ部分
10 開口片
10a (開口片の)先端
11 凹部
11a (凹部の)底面
11b (凹部の)傾斜面
α 凹部の底面に対する傾斜面の折れ曲がり角度
X リベット部の中心と開口片の先端とを結ぶ仮想線
Claims (2)
- カウンターシンク部によって囲まれた略円板状のパネル部で、スコア線によって囲まれた開口片が、スコア線の両端部の間をヒンジ部分として残すように、パネル部の片側に偏って部分的に形成され、開口片を押し下げるためのタブが、その一端側が押し下げ端として開口片の上方に位置し、その他端側が把持部として開口片から離れて位置するように、パネル部の略中央で開口片の領域外にリベット部で固着されていると共に、傾斜面と該傾斜面で囲まれた底面とを有する凹部が、タブと開口片の領域を内包するようにパネル部に形成されている開口容易缶蓋において、凹部の傾斜面に沿ったスコア線の外側での、凹部の底面とそれに続く傾斜面との折れ曲がり角度が、リベット部から最も離れた開口片の先端付近で、その他の部分と比べて部分的に小さくなっていることを特徴とする開口容易缶蓋。
- リベット部の中心と開口片の先端とを結ぶ仮想線上で、凹部の底面に対する傾斜面の折れ曲がり角度が5°以下となっていることを特徴とする請求項1に記載の開口容易缶蓋。
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