JP4307880B2 - 難燃強化ポリアミド樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は難燃強化ポリアミド樹脂組成物に関する。特に、電気・電子分野のコネクター、ブレーカー、マグネットスイッチ等の部品、自動車分野の電装部品等の部品材料に好適に用いられる難燃ポリアミド樹脂組成物に関する。とりわけ、本発明は薄肉難燃性が極めて高く、燃焼時に腐食性の高いハロゲン化水素ガスの発生がなく、かつ優れた機械特性、電気特性を有し、高温高湿度環境下においてもブリードアウトの少ない難燃強化ポリアミド樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリアミド樹脂は、機械的強度、耐熱性などに優れることから、自動車部品、機械部品、電気・電子部品などの分野で使用されている。特に、電気・電子部品用途において、ますます難燃性に対する要求レベルが高くなり、本来ポリアミド樹脂の有する自己消火性よりもさらに高度な難燃性が要求され、この為、アンダーライターズ・ラボラトリーのUL94V−0規格に適合する難燃レベルの高度化検討が数多くなされ、そしてそれらは一般にハロゲン系難燃剤やトリアジン系難燃剤を添加する方法が取られている。
【0003】
例えば、ポリアミド樹脂への塩素置換多環式化合物の添加(例えば、特許文献1参照。)や臭素系難燃剤、例えば、デカブロモジフェニルエーテルの添加(例えば、特許文献2参照。)、臭素化ポリスチレンの添加(例えば、特許文献3、4参照。)、臭素化ポリフェニレンエーテルの添加(例えば、特許文献5参照。)、臭素化架橋芳香族重合体の添加(例えば、特許文献6参照。)、臭素化スチレン−無水マレイン酸重合体の添加(例えば、特許文献7参照。)等が知られている。特にこれらハロゲン系難燃剤をガラス繊維等で強化したポリアミド樹脂に配合した組成物は高度の難燃性と高い剛性から、電気・電子部品用途、特にプリント積層板に搭載されたり接続されたりするコネクター用途に多用されてきた。
【0004】
しかしながら、ハロゲン系難燃剤は燃焼時に腐食性のハロゲン化水素及び煙を発生したり、有毒な物質を排出する疑いがもたれ、これら環境問題からハロゲン系難燃剤の配合されたプラスチック製品の使用を規制する動きがある。このことから、ハロゲンフリーのトリアジン系難燃剤が注目され数多く検討がなされている。例えば難燃剤としてメラミンを使用する技術(例えば、特許文献8参照。)、シアヌル酸を使用する技術(例えば、特許文献9参照。)、シアヌル酸メラミンを使用する技術(例えば、特許文献10参照。)が良く知られている。これらの技術で得られた非強化のポリアミド樹脂組成物はUL94V−0規格に適合する高度の難燃レベルを有するものの、ガラス繊維等の無機強化材で強化し剛性を高めた組成においては、難燃剤を多量に配合した場合であっても、燃焼時、綿着火現象があり、UL94V−0規格に適合しない問題がある。
【0005】
一方、イントメッセント型難燃剤であるリン酸メラミン、ピロリン酸メラミンあるいはポリリン酸メラミンをガラス繊維強化ポリアミド樹脂に使用するハロゲンフリーの難燃技術例えば、(特許文献11参照。)、無機質強化ポリアミド樹脂にポリリン酸メラミンに加えチャー化触媒及び/又はチャー形成剤を併用する難燃技術(特許文献12参照。)、ポリリン酸メラミンとホスフィン酸塩を組み合わせた難燃剤コンビネーション技術(特許文献13参照。)が提案され、1/16inchの成形品において難燃規格UL94V−0規格を満足することが知られている。しかし、これらの技術では、押出加工時にストランドが発泡したり、多量のガスが発生するなどの押出加工性に難があるばかりでなく、成形加工時に金型汚染を起こすなどいわゆるモールドデポジットが発生したり、流動性や離型性に劣るという欠点があった。また電気・電子部品のコネクター用途で特に要求される1/32inchの薄肉成形品でのUL94V−0規格を満足するためにはリン酸メラミン系難燃剤を多く用いる必要があるため、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物の機械的特性が大きく低下するばかりでなく、電気特性、とりわけ高い電圧環境下に於いて使用される電気部品に要求される耐トラッキング性に劣るという欠点があるなど、必ずしも電気・電子部品用の成形材料として満足されるものではなかった。
【0006】
又、1/32inchの薄肉成形品での難燃規格UL94V0を達成する技術として、イントメッセント型難燃剤である硫酸メラミンをガラス繊維強化半芳香族ポリアミド樹脂に適用した技術(特許文献14参照。)も開示されているが、この技術においてもポリアミド樹脂成分量に対して難燃剤を多く配合する必要があり、上記と同様の問題があった。さらには、1/32inchの薄肉成形品での難燃規格UL94V−0を達成しつつ、高い耐トラッキング性を付与する技術として無機質強化ポリアミド樹脂にリン酸メラミン複合難燃剤に加えアルカリ土類金属塩を配合する技術(特許文献15参照。)も提案されているが、この技術で得られた成形品は脆いために、例えば複雑な形状を有するコネクターに適用した際は、取り扱い時や運搬時にコネクターが欠けたり、割れを生じたりするなど、靭性が劣るという問題があった。また成形品を例えば60℃、95%RH等の高温高湿度の環境下で長時間放置時、成形品表面に難燃剤が析出する、いわゆるブリードアウト現象が生じるなどの問題があり、満足出来るものではなかった。
【0007】
【特許文献1】
特開昭48−29846号公報
【特許文献2】
特開昭47−7134号公報
【特許文献3】
特開昭51−47044号公報
【特許文献4】
特開平4−175371号公報
【特許文献5】
特開昭54−116054号公報
【特許文献6】
特開昭63−317552号公報
【特許文献7】
特開平3−168246号公報
【特許文献8】
特公昭47−1714号公報
【特許文献9】
特開昭50−105744号公報
【特許文献10】
特開昭53−31759号公報
【特許文献11】
特表平10−505875号公報
【特許文献12】
WO98/45364
【特許文献13】
特開2001−72978号公報
【特許文献14】
特開2000−119512号公報
【特許文献15】
WO00/09606
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、薄肉難燃性が極めて高く、燃焼時に腐食性の高いハロゲン化水素ガスの発生がなく、かつ優れた機械特性、電気特性有し、高温高湿度度環境下においてもブリードアウトの少ない難燃強化ポリアミド樹脂組成物を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意研究を重ねた結果、無機質強化材、リン系難燃剤及びポリアミド樹脂を組み合わせた系に於いて、特定のホスフィン酸塩と特定の金属酸化物を適用した際に、前記目的を達成しうることを見いだし、この知見に基づき本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、(a)ポリアミド樹脂30〜85重量%、(b)メラミンとリン酸とから形成される付加物1〜30重量%、(c)以下の式(I)で表されるホスフィン酸塩及び/または以下の式(II)で表されるジホスフィン酸塩1〜30重量%、(d)酸化カルシウム0.01〜5重量%および(e)無機充填材5〜40重量%の各成分からなる難燃強化ポリアミド樹脂組成物である。
【0010】
【化3】
【0011】
【化4】
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明に用いられる(a)ポリアミド樹脂に特に制限はないが、例えば、ε−カプロラクタム、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、ビス(3−メチル−4アミノシクロヘキシル)メタン等のポリアミド形成性モノマーを適宜組み合わせて得られるホモポリマー、共重合体及び/またはこれらの混合物を用いることができる。具体的にはポリアミド66、ポリアミド6、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、MXD(メタキシリレンジアミン)6ナイロン及びこれらのコポリアミド及び/またはこれらの混合物が耐熱性の点で好ましい。
【0013】
又、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)単位、及びポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)単位を主たる構成成分とする半芳香族ポリアミド樹脂、特にポリアミド6I単位を5〜30重量%含む半芳香族ポリアミド樹脂が、リン酸メラミン系難燃剤と組み合わせた際に高度の難燃性を発現するので更に好ましい。
かかる半芳香族ポリアミド樹脂として具体的には、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)単位70〜95重量%とポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)単位5〜30重量%との共重合体(ポリアミド66/6I)が耐熱性、成形品外観性、成形加工性、電気特性を満足するので好ましく、とりわけポリアミド66単位70〜90重量%とポリアミド6I単位10〜30重量%との共重合体が上記特性に加え、難燃性と成形時の良離型性を有するので特に好ましい。
【0014】
また、ポリアミド66 70〜95重量%とポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)5〜30重量%との混合ポリアミドは、耐熱性が高く、耐ハンダ性を要求される用途には好ましい。
又、ポリアミド66単位の一部を他の脂肪族ポリアミド単位で置き換えた、ポリアミド66単位60〜89重量%、ポリアミド6I単位5〜30重量%及び他の脂肪族ポリアミド単位1〜10重量%からなる3元共重合体は成形流動性、成形品外観性に優れる。かかる3元共重合体としては、例えばカプロアミド単位(ポリアミド6単位)、ウンデカアミド単位(ポリアミド11単位)、ドデカアミド単位(ポリアミド12単位)、ヘキサメチレンセバカミド単位(ポリアミド610単位)、ヘキサメチレンドデカミド単位(ポリアミド612単位)でポリアミド66単位の一部を置換した3元共重合体、例えば(ポリアミド66/6I/6)、(ポリアミド66/6I/11)、(ポリアミド66/6I/12)、(ポリアミド66/6I/610)、(ポリアミド66/6I/612)が例示できる。
【0015】
また、ポリアミド66単位60〜89重量%、ポリアミド6I単位5〜30重量%及び他の脂肪族ポリアミド単位1〜10重量%からなる混合ポリアミドであっても本発明の目的を達成できる。
ポリアミド6I単位は、耐熱性、成形加工性、電気特性を十分に満足するためには30重量%以下の共重合体又は混合ポリアミドである必要があり、一方、ポリアミド6I単位は、十分な難燃レベルを得るために5重量%以上の共重合体又は混合ポリアミドを使用する必要がある。
【0016】
本発明の共重合体はランダム共重合体、ブロック共重合体のどちらであっても良く、又、これら共重合体は、本願発明の目的を損なわない範囲で他の芳香族ポリアミド樹脂を共重合成分として含んでいても良い。又、混合ポリアミドとは、2成分以上からなるポリアミドをブレンド、溶融混練等の重合以外の一般に使われる方法により混合したポリアミドのことである。
本発明の半芳香族ポリアミド樹脂の分子量は、成形可能な範囲の物であれば良く、JIS K6810に示される硫酸相対粘度が1.5〜3.5の範囲にあるポリアミド樹脂が、成形流動性が良好でかつ高度な難燃レベルを保持できるので特に好ましい。
本発明で用いられるメラミンとリン酸とから形成される付加物(b)とは次ぎの化学式(C3H6N6・HP03)n、(ここでnは縮合度を表す)で示されるもので、メラミンとリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸との実質的に等モルの反応生成物から得られる物を意味し、製法には特に制約はない。
【0017】
通常、リン酸メラミンを窒素雰囲気下、加熱縮合して得られるポリリン酸メラミンを挙げることができる。ここでリン酸メラミンを構成するリン酸としては、具体的にはオルトリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸等が挙げられるが、特にオルトリン酸、ピロリン酸を用いたメラミンとの付加物を縮合したポリリン酸メラミンが難燃剤としての効果が高く、好ましい。特に耐熱性の点からかかるポリリン酸メラミンの縮合度nは5以上が好ましい。また、ポリリン酸メラミンはポリリン酸とメラミンの等モルの付加塩であっても良く、メラミンとの付加塩を形成するポリリン酸としては、いわゆる縮合リン酸と呼ばれる鎖状ポリリン酸、環状ポリメタリン酸が挙げられる。これらポリリン酸の縮合度nには特に制約はなく通常3〜50であるが、得られるポリリン酸メラミン付加塩の耐熱性の点でここに用いるポリリン酸の縮合度nは5以上が好ましい。かかるポリリン酸メラミン付加塩はメラミンとポリリン酸との混合物を例えば水スラリーとなし、よく混合して両者の反応生成物を微粒子状に形成させた後、このスラリーを濾過、洗浄、乾燥し、さらに必要であれば焼成し、得られた固形物を粉砕して得られる粉末である。
【0018】
本発明組成物を成形して得られる成形品の機械的強度、成形品外観の点でポリリン酸メラミンの粒径は100μm以下、好ましくは50μm以下に粉砕した粉末を用いるのが良い。0.5〜20μmの粉末を用いると高い難燃性を発現するばかりでなく成形品の強度が著しく高くなるので特に好ましい。
又、ポリリン酸メラミンは必ずしも完全に純粋である必要はなく、未反応のメラミンあるいはリン酸、ポリリン酸が多少残存していても良い。ポリリン酸メラミン中にリン原子として10〜18重量%含有するものが、成形加工時に成形金型に汚染性物質が付着する現象が少なく特に好ましい。
【0019】
ポリリン酸メラミンは難燃剤として作用するが、シアヌル酸メラミンに代表されるトリアジン系難燃剤に比較して、ガラス繊維等の無機質強化材と併用して使用した際に、高度の難燃化効果を発揮し、特にポリアミド66とポリアミド6Iとの共重合体及び又は混合ポリアミドに配合した際には更に高度な難燃化効果を発現する。
本発明に用いるホスフィン酸塩(c)とは、ホスフィン酸と金属炭酸塩、金属水酸化物または金属酸化物を用いて水溶液中で製造され、本質的にモノマー性化合物であるが、反応条件に依存して、環境によっては縮合度が1〜3のポリマー性ホスフィン酸塩も含まれる。ホスフィン酸としては、ジメチルホスフィン酸、エチルメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、メチル−n−プロピルホスフィン酸、メタンジ(メチルホスフィン酸)、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)、メチルフェニルホスフィン酸及びジフェニルホスフィン酸等が挙げられる。また金属成分としてはカルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン及び/または亜鉛イオンを含む金属炭酸塩、金属水酸化物または金属酸化物が挙げられる。
【0020】
ホスフィン酸塩としてはジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸マグネシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸マグネシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸マグネシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛、メチル−n−プロピルホスフィン酸カルシウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸マグネシウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸アルミニウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸亜鉛、メタンジ(メチルホスフィン酸)カルシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)マグネシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)アルミニウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)亜鉛、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)カルシウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)マグネシウムが挙げられる。
【0021】
また、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)アルミニウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)亜鉛、メチルフェニルホスフィン酸カルシウム、メチルフェニルホスフィン酸マグネシウム、メチルフェニルホスフィン酸アルミニウム、メチルフェニルホスフィン酸亜鉛、ジフェニルホスフィン酸カルシウム、ジフェニルホスフィン酸マグネシウム、ジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ジフェニルホスフィン酸亜鉛が挙げられる。特に難燃性、電気特性の観点からジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛が好ましい。
【0022】
本発明組成物を成形して得られる成形品の機械的強度、成形品外観の点でホスフィン酸塩の粒径は100μm以下、好ましくは50μm以下に粉砕した粉末を用いるのが良い。0.5〜20μmの粉末を用いると高い難燃性を発現するばかりでなく成形品の強度が著しく高くなるので特に好ましい。
ホスフィン酸塩は難燃剤として作用するが、メラミンとリン酸とから形成される付加物と併用することで少ない難燃剤量で優れた薄肉難燃性と優れた電気特性を発現する。
【0023】
本発明に用いる酸化物(d)とは、成形品を例えば60℃、95%RH等の高温高湿の環境下で長時間放置時、成形品表面に難燃剤が析出する、いわゆるブリードアウト現象抑制剤として作用効果を発現するものであって、具体的には酸化カルシウムをいう。酸化カルシウムがブリードアウト抑制の効果が大きく好ましい。
【0024】
本発明に用いる無機質強化材(e)としては、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維、石膏繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、スチール繊維、セラミックス繊維、ボロンウィスカ繊維、マイカ、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、ウオラストナイト、ガラスビーズ、ガラスフレーク、酸化チタン等の繊維状、粒状、板状、あるいは針状の無機質強化材が挙げられる。これらの強化材は二種以上組み合わせて用いてもよい。特にガラス繊維、ウォラストナイト、タルク、焼成カオリン、マイカが好ましく使用される。又、ガラス繊維は長繊維タイプのロービング、短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバー等から選択して用いることが出来る。ガラス繊維はポリアミド用に表面処理した物を用いるのが好ましい。
【0025】
本発明の好ましい態様として、成分(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)からなる難燃強化ポリアミド樹脂組成物において、ポリアミド樹脂(a)の割合は、成形加工性、機械的物性の観点から30重量%以上であり、難燃性、剛性の観点から85重量%以下の範囲である。
メラミンとリン酸とから形成される付加物(b)の割合は、難燃効果の観点から1重量%以上であり、混練時の分解ガス発生や金型の汚染性などの観点から30重量%以下であり、好ましくは1〜20重量%の範囲である。
【0026】
ホスフィン酸塩(c)の割合は、難燃効果の点から1重量%以上であり、混練時の分解ガス発生や金型の汚染性などの観点から30重量%以下であり、好ましくは1〜20重量%の範囲である。
酸化物(d)の割合は、ブリードアウト抑制効果の点から0.01重量%以上であり、難燃性、機械的物性の観点から5重量%以下であり、好ましくは0.01〜3重量%である。
【0027】
無機充填材(e)の割合は、機械的強度・剛性の観点から5重量%以上であり、成形加工性や物性改良の観点から40重量%以下であり、好ましくは10〜30重量%である。
本発明では、更に無機系の難燃助剤を機械的物性や成形加工性に悪影響を与えない範囲に於いて添加することもできる。好ましい難燃助剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫化亜鉛、酸化鉄、酸化硼素、硼酸亜鉛等が挙げられる。
【0028】
本発明の難燃強化ポリアミド樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、他の成分、例えば顔料、染料等の着色剤や、ポリアミド樹脂の一般的な熱安定剤である銅系熱安定剤(例えばヨウ化銅、酢酸銅等とヨウ化カリウム、臭化カルウムとの併用)、ヒンダードフェノール系酸化劣化防止剤に代表される有機系耐熱剤、耐候性改良剤、核剤、可塑剤、帯電防止剤等の添加剤、他の樹脂ポリマー等を添加することが出来る。
【0029】
本発明の難燃ポリアミド樹脂組成物の製造方法は、特に限定はないが、ポリアミド樹脂、メラミンとリン酸とから形成される付加物、ホスフィン酸塩、無機充填材を常用の単軸または2軸の押出機やニーダー等の混練機を用いて、200〜350℃の温度で溶融混練することが一般的であるが、機械特性を維持するために無機充填材は、ポリアミド樹脂、メラミンとリン酸とから形成される付加物、ホスフィン酸塩が十分に溶融混練された後に添加するのが好ましい。
本発明の組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形など公知の方法によってコネクター、コイルボビン、ブレーカー、電磁開閉器、ホルダー、プラグ、スイッチ等の電気、電子、自動車用途の各種成形品に成形される。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下の実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例に用いた原材料及び測定方法を以下に示す。
[原材料]
(A)ポリアミド樹脂
(a−1):後記する重合例で得られたポリアミド66/6I(85/15)共重合体
(a−2):ポリアミド66 旭化成工業(株)製 商品名 レオナ1300
(a−3):ポリアミド6 宇部興産(株) 商品名 SF1013A
(a−4):MXD6ナイロン 三菱エンジニアリングプラスチックス(株)
商品名 MXナイロン 6002
【0031】
(B)難燃剤
(b−1):ポリリン酸メラミン 日産化学(株)製 商品名 PMP−100
(b−2):メラミンシアヌレート 三菱化学(株)製 商品名 MCA−C0
(C)ホスフィン酸塩
(c−1)後記する製造例で得られた1、2エチルメチルホスフィン酸アルミニウム塩
(D)酸化物
(d−1):酸化カルシウム 入交産業(株)製 商品名 ミクロンライム (D)無機質強化材
(d−1):ガラス繊維、旭ファイバーグラス(株)製 商品名 CS03JA FT756(平均繊維径10μm)
【0032】
[測定方法]
(1)薄肉難燃性;
UL94(米国Under Writers Laboratories Incで定められた規格)の方法に従って測定した。なお試験片の厚みは1/16inch及び1/32inchとし射出成形機(東芝機械製:IS50EP)を用いて成形して得た。
(2)硫酸相対粘度
JIS K6810に従って98%硫酸での相対粘度を測定した。
(3)機械特性
射出成形機(東芝機械製:IS50EP)を用いて、ASTM D790の曲げ試験片(厚さ3mm)を成形しASTM D790に準拠した方法で曲げ試験を実施し、曲げ強度、曲げ弾性率を求めた。
【0033】
(4)耐トラッキング性
射出成形機(東芝機械製:IS150E)を用いて、シリンダー温度270℃、金型温度80℃で、100×90×3mmの射出成形板を得た。この平板を日立化成(株)製 耐トラッキング試験機 HAT−500−3型にセット、IEC Publication 112規格に従って、100〜600Vの電圧下、0.1%塩化アンモニウム水溶液を30秒毎に滴下し試験片がトラッキングを起こすことなく、50滴で破壊しない最大電圧を求めた。この値が高いものほど耐トラッキング性に優れる。
(5)ブリード性
成形品を槽内が温度60℃、相対湿度95%に調節された恒温恒湿槽に240時間放置後の成形品表面に析出してくるブリード物を目視観察した。なおブリードの程度の判定は以下の基準とした。
○:成形品表面にブリード物は観察されない。
×:成形品表面にブリード物が見られる。
【0034】
[重合例]
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンの等モル塩2.00kgとイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンの等モル塩0.35kgおよびアジピン酸0.1kg、および純水2.5kgを5Lのオートクレーブの中に仕込み良く撹拌した。充分窒素置換した後、撹拌しながら温度を室温から220℃まで約1時間かけて昇温した。この際、オートクレーブ内の水蒸気による自然圧で内圧はゲージ圧で1.76MPaになるが、1.76MPa以上の圧にならないよう水を反応系外に除去しながら加熱を続けた。更に2時間後内温が260℃に到達した時点で加熱を止め、オートクレーブのバルブを閉止し、約8時間かけて室温まで冷却した。冷却後オートクレーブを開け、約2kgのポリマーを取りだし粉砕した。得られた粉砕ポリマーを、10Lのエバポレーターに入れ窒素気流下、200℃で10時間固相重合した。固相重合によって得られたポリアミドは、融点245℃、硫酸相対粘度2.38であった。
【0035】
[1、2エチルホスフィン酸アルミニウムの製造例]
2106g(19.5モル)のエチルメチルホスフィン酸を6.5リットルの水に溶解し、507g(6.5モル)の水酸化アルミニウムを激しく撹拌しながら加え、混合物を85℃に加熱した。混合物を80〜90℃で合計65時間撹拌し、その後60℃に冷却し、吸引濾過する。重量が一定となるまで120℃の真空乾燥キャビネット中で乾燥した後、300℃以下では溶融しない微粒子粉末2140gを得た。
【0036】
【実施例1】
ポリアミド樹脂a−1が57重量%、難燃剤b−1が12重量%、ホスフィン酸塩c−1が10重量%、金属酸化物d−1が1重量%、ガラス繊維e−1が20重量%、になるように2軸押出機(東芝機械製TEM35)を用いてシリンダー設定温度260℃、スクリュー回転100rpm、吐出量30kg/hrの条件下で、ポリアミド樹脂a−1、難燃剤b−1、ホスフィン酸塩c−1及び酸化物d−1をトップフィードし、ガラス繊維e−1はサイドフィードして混練、ストランド状に取り出し、冷却後カッターで造粒しポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。得られたペレットを前記した測定方法にて諸特性を調べた。その結果を表1にしめす。
【0037】
【実施例2】
ポリアミド樹脂としてa−2を用いた以外は実施例1と同様にしてペレットを得て、諸特性を調べた。その結果を表1にしめす。
【0038】
【実施例3】
ポリアミド樹脂としてa−3を用いた以外は実施例1と同様にしてペレットを得て、諸特性を調べた。その結果を表1にしめす。
【0039】
【実施例4】
ポリアミド樹脂としてa−4を用いた以外は実施例1と同様にしてペレットを得て、諸特性を調べた。その結果を表1にしめす。
【0040】
【実施例5】
ポリアミド樹脂a−1、難燃剤b−1、ホスフィン酸塩c−1、酸化物d−1、ガラス繊維e−1の配合量を表1に示す割合とした以外は実施例1と同様にしてペレットを得て、諸特性を調べた。その結果を表1にしめす。
【0041】
【比較例1】
ポリアミド樹脂a−1が58重量%、難燃剤b−1が12重量%、ホスフィン酸塩c−1が10重量%、ガラス繊維e−1が20重量%、になるように2軸押出機(東芝機械製TEM35)を用いてシリンダー設定温度260℃、スクリュー回転100rpm、吐出量30kg/hrの条件下で、ポリアミド樹脂a−1、難燃剤b−1及びホスフィン酸塩c−1をトップフィード、ガラス繊維e−1はサイドフィードして混練し、ストランド状に取り出し、冷却後カッターで造粒しポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。得られたペレットを前記した測定方法にて諸特性を調べた。その結果を表1にしめす。
【0042】
【比較例2】
ポリアミド樹脂としてa−2を用いた以外は比較例1と同様にしてペレットを得て、諸特性を調べた。その結果を表1にしめす。
【0043】
【比較例3】
ポリアミド樹脂としてa−3を用いた以外は比較例1と同様にしてペレットを得て、諸特性を調べた。その結果を表1にしめす。
【0044】
【表1】
【0045】
【発明の効果】
本発明の組成物は薄肉成形品においても難燃性が極めて高く、燃焼時に腐食性の高いハロゲン化水素ガスの発生がなく、かつ優れた機械特性、電気特性を有し、高温高湿度環境下おいてもブリードアウトの少ない成形材料であり、家電部品、電子部品、自動車部品等の用途に用いることが出来る。
Claims (9)
- (a)ポリアミド樹脂が、ポリアミド66,ポリアミド6、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、MXD6ナイロン及びこれらのコポリアミドの中から選ばれた少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1に記載の難燃強化ポリアミド樹脂組成物。
- (a)ポリアミド樹脂が、下記(1)〜(2)の中から選ばれた少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1に記載の難燃強化ポリアミド樹脂組成物。
(1)ポリアミド66単位70〜95重量%とポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)単位5〜30重量%とからなる共重合体及び/またはこれらの混合ポリアミド。
(2)ポリアミド66単位40〜89重量%、ポリアミド6I単位5〜30重量%及び脂肪族ポリアミド単位(但し、ポリアミド66単位を除く)1〜30重量%とからなる3元共重合体及び/またはこれらの混合ポリアミド。 - (a)ポリアミド樹脂の硫酸相対粘度(JIS K6810で測定)が、1.5〜3.5であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の難燃強化ポリアミド樹脂組成物。
- (b)メラミンとリン酸とから形成される付加物が、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミンから選ばれた少なくとも1種のリン系難燃剤であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の難燃強化ポリアミド樹脂組成物。
- (b)リン系難燃剤が、リン原子として10〜18重量%含有していることを特徴する請求項5に記載の難燃強化ポリアミド樹脂組成物。
- (b)リン系難燃剤の平均粒径が、0.5〜20μmであることを特徴とする請求項5に記載の難燃強化ポリアミド樹脂組成物。
- (c)ホスフィン酸塩及び/またはジホスフィン酸塩が、下記(1)〜(3)の中から選ばれた化合物であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の難燃強化ポリアミド樹脂組成物。
(1)R1及びR2が同一かまたは異なり、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル及び/またはフェニルである。
(2)R3が、メチレン、エチレン、n−プロピレン、イソプロピレン、n−ブチレン、tert−ブチレン、n−ペンチレン、n−オクチレンまたはn−ドデシレン、フェニレンまたはナフチレン、メチルフェニレン、エチルフェニレン、tert−ブチルフェニレン、フェニルメチレン、フェニルエチレン、フェニルプロピレンまたはフェニルブチレン、メチルナフチレン、エチルナフチレンまたはtert−ブチルナフチレンである。
(3)Mが、アルミニウムイオンまたは亜鉛イオンである。 - (e)無機充填材がガラス繊維、ウォラストナイト、タルク、焼成カオリン、マイカの中から選ばれた少なくとも1種の強化材であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の難燃強化ポリアミド樹脂組成物。
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