JP4306848B2 - 含水チョコレート類 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、含水チョコレート類用油脂組成物、及び該油脂組成物を使用した、作業中の粘度上昇、分離が抑制され、またざらつきがなく、滑らかな食感を与える含水チョコレート類及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来から、チョコレート類の食感に変化を持たせ、今までにないチョコレート類を提供しようという試みは数多くなされてきており、特にチョコレート類に水性成分を添加して食感に変化を持たせた瑞瑞しいチョコレート類を提供した物は、いわゆる生チョコであるガナッシュを始め、多岐にわたっている。
【0003】
一般にチョコレート類の製造工程においては、水分を可能な限り少なくする事が必須条件であり、その水分は一般に1%以下とされている。水分が混入した場合には、チョコレート類の粘度上昇や、ザラツキが生じ、作業上も食感的にも悪影響を及ぼす事が一般に知られており、そのために、水性成分を使用する事が困難であった。
【0004】
しかし、水性成分をチョコレート類に含有させる新しい味の開発は様々な角度から行われてきており、例えば次のような公報に記載の発明が挙げられる。
【0005】
特開平3−151831号公報には、チョコレート生地と水成分とを、主要な結合脂肪酸が炭素原子数20〜26である低HLBのショ糖脂肪酸エステルの存在下に混合して、油中水型に乳化する事を特徴とする、含水チョコレート類の製造方法が記載されている。
また、特開平5−64545号公報には、一種または二種以上のジグリセリドを含有する水分含有チョコレート類及びその製造方法が記載されている。
【0006】
また、特開平3−53847号公報には、親油性のショ糖不飽和脂肪酸ポリエステルを含有させたチョコレートベースに、牛乳、フレッシュクリーム、プラスチッククリーム、サワークリーム、洋酒、果汁等の高含水成分を添加する事による、高含水チョコレート類の製造方法が記載されている。
また、特開平3−164138号公報には、特定のパウダー類を混合した含水呈味成分を、チョコレート類の生地に練り込むことにより、複雑な工程や面倒な作業を要せずに、まろやかで口当たりが良く、風味に富んだ含水呈味成分入りチョコレート類の製造方法が記載されている。
【0007】
しかし、従来の方法では、含水チョコレート類の粘度上昇や、ザラツキの発生は軽減され、作業性の面からあるいは食感の面からも改善が見られるが、いずれも不充分であり、水性成分の量がある一定以上に増えると急激に起こる粘度上昇、あるいは経日的に発生するザラツキを改善するには至っていない。
【0008】
また、上記公報に記載の発明は、いずれも水性成分に関する物や、乳化剤等のチョコレート生地中に使用する微量成分に関する技術であり、チョコレート生地に使用する油脂に関する物はこれまで全く知られていなかった。
【0009】
従って、本発明の目的は、作業中の粘度上昇、分離が抑制され、またざらつきがなく、滑らかな食感を与える含水チョコレート類を提供し得る油脂組成物を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の組成をもつ油脂組成物を、含水チョコレート類用に使用することにより、上記目的を達成し得ることを知見した。
【0011】
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、チョコレート生地をテンパリング処理し、これに水性成分を添加、混合し、冷却、成形して得られる含水チョコレート類であって、対称型ジ−飽和−モノ−モノ不飽和−トリグリセリドを40〜90重量%、トランス型脂肪酸を1〜20重量%含有する含水チョコレート類用油脂組成物を17〜40重量%使用したチョコレート生地を50〜99重量%と水性成分を1〜50重量%の割合で含有する含水チョコレート類を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の含水チョコレート類用油脂組成物をその好ましい実施形態について詳述する。
【0013】
本発明の油脂組成物の構成成分である対称型ジ−飽和−モノ−モノ不飽和−トリグリセリドは、炭素数12〜22の飽和脂肪酸残基がグリセリンの1位と3位に結合しており、炭素数16〜20のモノ不飽和脂肪酸残基がグリセリンの2位に結合しているトリグリセリドである。ここでいう炭素数12〜22の飽和脂肪酸とは具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸等が挙げられ、特に炭素数16〜20のパルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸が工業的にも好ましい。また、炭素数16〜20のモノ不飽和脂肪酸としては、パルミトオレイン酸、オレイン酸、カドレン酸等が挙げられる。
【0014】
本発明の油脂組成物は、上記の対称型ジ−飽和−モノ−モノ不飽和−トリグリセリドを40〜90重量%(以下、単に「%」と略す)、好ましくは45〜80%含有する。対称型ジ−飽和−モノ−モノ不飽和−トリグリセリドが40%よりも少ないと、チョコレート類に使用したとき、チョコレート類の口どけが悪くなり、90%よりも多いと含水チョコレート類の水性成分が分離しやすくなる。
【0015】
また、本発明の油脂組成物の構成成分であるトランス型脂肪酸は、特に限定されないが、炭素数18のトランス型脂肪酸が好ましく、さらに炭素数18で二重結合の数が1であるトランス酸型脂肪酸が好ましい。
【0016】
本発明の油脂組成物は、トランス型脂肪酸を1〜20%、好ましくは2〜15%含有する。トランス型脂肪酸が1%よりも少ないと含水チョコレート類に使用したとき水性成分が分離しやすく、またボテつきが生じ、20%よりも多いとブルームが発生しやすくなる。
そして、トランス型脂肪酸の80%以上が炭素数18のトランス型脂肪酸であることが好ましい。
【0017】
また、本発明の油脂組成物は、1,3−ジステアリル−2−リノレート(以下、「SLS」ともいう)を好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下含有する。
【0018】
また、本発明の油脂組成物は、炭素数22のモノ不飽和酸であるエルカ酸を好ましくは4.5%以下、さらに好ましくは3%以下、最も好ましくは2%以下含有する。
【0019】
このような組成をもつ本発明の油脂組成物に使用する油脂原料としては特に限定されず、カカオバター、パーム油、シア脂、サル脂、イリッペ脂、コクム脂、マンゴー脂、大豆油、ナタネ油、コーン油、サフラワー油、ひまわり油、米油、綿実油、ヤシ油、パーム核油、牛脂、豚脂、魚油、乳脂等の動植物油脂、及びこれらの分別油、硬化油、エステル交換油等が挙げられる。本発明の油脂組成物を得るには、これらの油脂原料を使用し、上述のような組成をもつように調整すればよい。
【0020】
また、本発明の油脂組成物には、必要により、糖類、澱粉類、全脂粉乳、脱脂粉乳、カカオマス、カカオパウダー、酒類、乳化剤、香料、呈味パウダー類、着色料等を含有させても良い。
このような組成の本発明の油脂組成物は、含水チョコレート類に使用する。
【0021】
本発明の含水チョコレート類は、上述した本発明の油脂組成物を使用したものである。即ち、本発明の含水チョコレート類は、対称型ジ−飽和−モノ−モノ不飽和−トリグリセリドを40〜90重量%、トランス型脂肪酸を1〜20重量%含有する含水チョコレート類用油脂組成物を使用したものである。
【0022】
含水チョコレート類とは、水性成分及びチョコレート生地からなり、このチョコレート生地に本発明の油脂組成物を使用する。チョコレート生地に使用する、本発明の油脂組成物の使用量は特に限定されず、たとえば目的とするチョコレート類の規格や、食感に見合う量を使用すれば良い。
【0023】
また、上記のチョコレート生地とは、油脂類と糖類を必須成分とし、必要に応じてカカオマスやココアパウダー、粉乳等の各種粉末食品、乳化剤、香料、色素等の中から選択した原料を任意の割合で混合し、定法によりロール掛け、コンチング処理して得たものである。糖類としては、砂糖、果糖、ブドウ糖等各種糖類及び各種糖アルコール等通常食用に使用される糖類であればいずれでも良く、それらを単独でもしくは併用して使用することができる。また、各種粉末食品としては、例えば、ココアパウダー、粉乳、果実粉末、果汁粉末、生クリーム粉末、チーズ粉末、コーヒー粉末、ヨーグルト粉末等が例示される。また、乳化剤は、必要に応じて粘度上昇を抑制する目的で添加する場合があり、このような乳化剤としては特に制限されないが、レシチン、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0024】
そして、チョコレート生地及び水性成分からなる含水チョコレート類において、チョコレート生地の含有割合は、好ましくは50〜99%、さらに好ましくは60〜95%であり、水性成分の含有割合は、好ましくは1〜50%、さらに好ましくは5〜40%である。
【0025】
本発明でいう水性成分としては、果汁、濃縮果汁、各種フルーツ類及びそのペースト、ジャム、天然のクリーム類及び牛乳等のほかに、動植物性油脂などを使用したクリーム類、濃縮乳、練乳、各種液糖等が例示できる。これらの水性成分は1種又は2種以上で用いられる。
【0026】
次に、本発明の含水チョコレート類の一般的製法を以下に示す。まず、本発明の油脂組成物を17〜40重量%配合し、常法に従ってロール掛け、コンチング処理して得たチョコレート生地を加温溶解し、必要に応じて粘度上昇を抑制する目的でレシチン、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル等を添加する。そして、上記チョコレート生地をテンパリング処理した後、チョコレート生地が50〜99重量%、水性成分が1〜50重量%の割合となるように、水性成分を添加混合し、冷却、成形する。
【0027】
このようにして得られた本発明の含水チョコレート類は、冷却成形してそのまま食することも可能であるし、ケーキ類、ビスケット類にサンドしたり、ケーキ類、ビスケット類、冷菓等にコーティングしたり、ケーキ類、シュー等に充填したりすることもできる。
【0028】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。以下の例中、「部」及び「%」はそれぞれ「重量部」及び「重量%」を意味する。
【0029】
(実施例1)
砂糖35部、カカオマス15部、全脂粉乳10部、対称型ジ−飽和−モノ−モノ不飽和−トリグリセリドを75%含み、トランス型脂肪酸を8%(うち炭素数18で2重結合の数が1のトランス酸型脂肪酸7%)、SLSを1%、エルカ酸を0.1%含有する植物性油脂40部、レシチン0.3部からなる配合にて、常法に従いチョコレート生地を得た。
また、加糖全脂練乳70部、生クリーム30部を混合し、水性成分を得た。
上記のチョコレート生地をテンパリング処理して得たチョコレート生地70部に対し、水性成分30部を添加混合し、固化させた。このチョコレートは、水性成分が入ることにより瑞瑞しく非常に口溶け感の良好な物であり、さらに製造作業上、ザラツキの発生や粘度上昇等の問題はまったくなかった。
【0030】
(実施例2)
砂糖45部、全脂粉乳18部、ココアバター20部、対称型ジ−飽和−モノ−モノ不飽和−トリグリセリドを58%含み、トランス型脂肪酸を17%、(うち炭素数18で2重結合の数が1のトランス酸型脂肪酸15%)、SLSを2%、エルカ酸を0.3%含有する植物性油脂17部、レシチン0.5部からなる配合にて、常法に従いチョコレート生地を得た。
さらに、転化糖液糖70部、ストロベリー濃縮果汁30部を混合し、水性成分を得た。
上記のチョコレート生地をテンパリング処理して得たチョコレート生地90部に対し、水性成分を10部を添加混合し、固化させた。このチョコレートは、水性成分が入ることにより瑞瑞しく非常に口溶け感の良好な物であり、さらに製造作業上、ザラツキの発生や粘度上昇等の問題はまったくなかった。
【0031】
【発明の効果】
対称型ジ−飽和−モノ−モノ不飽和−トリグリセリドを40〜90%、トランス型脂肪酸を1〜20%含有する本発明の油脂組成物を使用することにより、水性成分を添加した際に起こる粘度上昇、ざらつきの発生を改善することが可能となり、水性成分を添加した、今までにない風味や食感の含水チョコレート類を提供することができる。
Claims (3)
- チョコレート生地をテンパリング処理し、これに水性成分を添加、混合し、冷却、成形して得られる含水チョコレート類であって、対称型ジ−飽和−モノ−モノ不飽和−トリグリセリドを40〜90重量%、トランス型脂肪酸を1〜20重量%含有する含水チョコレート類用油脂組成物を17〜40重量%使用したチョコレート生地を50〜99重量%と水性成分を1〜50重量%の割合で含有する含水チョコレート類。
- 上記トランス型脂肪酸の80重量%以上が、炭素数18のトランス型脂肪酸である請求項1記載の含水チョコレート類。
- 対称型ジ−飽和−モノ−モノ不飽和−トリグリセリドを40〜90重量%、トランス型脂肪酸を1〜20重量%含有する含水チョコレート類用油脂組成物を17〜40重量%使用したチョコレート生地を、テンパリング処理し、これに水性成分を、チョコレート生地が50〜99重量%、水性成分が1〜50重量%の割合となるように添加、混合し、冷却、成形することを特徴とする含水チョコレート類の製造方法。
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