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JP4396210B2 - 顔料分散剤、顔料組成物、及び顔料分散体 - Google Patents

顔料分散剤、顔料組成物、及び顔料分散体 Download PDF

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Description

本発明は、顔料粒子の分散に用いられる顔料分散剤に関するものであり、更に詳しくは、インキや塗料に有効な顔料分散剤、及びそれを含有する顔料組成物、並びに顔料分散体に関するものである。
一般に各種コーティングまたはインキ組成物中において、鮮明な色調と高い着色力を発揮する実用上有用な顔料は微細な粒子からなっている。しかしながら顔料の微細な粒子は、オフセットインキ、グラビアインキおよび塗料のような非水性ビヒクルに分散する場合、安定な分散体を得るのは難しく、製造作業上および得られる製品の価値に重大な影響を及ぼす種々の問題を引き起こすことが知られている。
例えば、微細な粒子からなる顔料を含む分散体は往々にして高粘度を示し、製品の分散機からの取り出し、分散機からタンク等への移送が困難となるばかりでなく、更に悪い場合は貯蔵中にゲル化を起こし使用困難となることがある。また、異種の顔料を混合して使用する場合、顔料の凝集による色分れや沈降などの現象により、展色物において、色むらや著しい着色力の低下を引き起こすことがある。さらに、展色物の塗膜表面に関しては光沢の低下、レベリング不良等の状態不良を生ずることがある。また、顔料の分散とは直接関係しないが一部の有機顔料では顔料の結晶状態の変化を伴う現象がある。すなわち、オフセットインキ、グラビアインキおよび塗料等の場合は、非水性ビヒクル中でエネルギー的に不安定な状態にあった顔料の結晶粒子が、その大きさ・形態等を変化させて安定状態に移行するために展色物において著しい色相の変化、着色力の低下、粗粒子の発生等により商品価値を損なうことがある。
以上のような種々の問題点を解決するために、顔料を分散する種々の分野においては、顔料骨格に酸性基、塩基性基、フタルイミドメチル基等の官能基を導入した顔料誘導体や、あるいは、アクリルポリマーやポリエステル樹脂の一部に酸性基や塩基性基を導入した樹脂型顔料分散剤が開発され、単独又は併用にて使用されており、極めて効果的である。また、樹脂の一部に顔料骨格を結合したいわゆる樹脂型顔料誘導体も開発されている。
これらの中で、酸性基を有する顔料誘導体(以下、酸性顔料誘導体とする)は、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、アゾ顔料、アントラキノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、イソインドリン顔料等の顔料骨格に対して、スルホン酸基やカルボキシル基の酸性基を導入した構造が開示されており、分散剤や粒子成長防止剤として古くから用いられている。この技術は、近年、カラーフィルターインキに広く展開されている。しかし、これらにより、高い透明性は得られるものの、粘度、流動特性、経時粘度安定性においては、十分に満足すべきものには至らなかった(特許文献1、特許文献2を参照)。
特開平09−176511号公報 特開2002−179979号公報
解決しようとする問題点は、インキや塗料における流動特性を改善し、低粘度、低チキソトロピック性を有し、経時粘度安定性に良好なインキ及び塗料を提供することにある。
本発明は、下記一般式(1)又は(2)で示されるキノリン誘導体もしくはそれらのアミン塩または金属塩からなる化合物を顔料分散剤として用いることを最も主要な特徴とする。
Figure 0004396210
(式中、Xは塩素、臭素、沃素のハロゲン原子を表し、n,mはそれぞれ独立して0〜4の整数であり、置換ハロゲン原子数を表す。)
本発明の顔料分散剤、顔料組成物、及び顔料分散体を用いて、非集合性、非結晶性、塗膜の光沢、透明性に優れるだけでなく、低粘度、低チキソトロピック性、経時粘度安定性に良好なインキ及び塗料を得ることができる。
本発明の顔料分散剤において、アミン塩に用いられるアミンとは、アンモニア、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ヒドロキシエチルアミン、ジヒドロキシエチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノプロピルアミン、N,N−ジブチルアミノプロピルアミン等の低級アミン、ラウリルアミン、オレイルアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン、ジメチルラウリルアミン等の炭素数12以上のアルキル基を有する長鎖アルキルアミン、ラウリルトリメチルアンモニウム、ジラウリルジメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、ジステアリルジメチルアンモニウム等の炭素数12以上のアルキル基を有する長鎖アルキル4級アンモニウムイオンが挙げられる。これらの中でも、ラウリルアンモニウム、ステアリルアンモニウム等の炭素数12以上のアルキル基を有する長鎖アルキルアミンを用いた場合に、最も効果が高い。
本発明の顔料分散剤において、金属塩に用いられる金属とは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム、鉄、マグネシウム、アルミニウム、ニッケル、コバルト、ストロンチウム等の各種金属が挙げられる。これらの中でも、アルミニウム塩が、製造における単離性、及び顔料分散剤としての分散性に優れるだけでなく、低粘度、流動特性、経時粘度安定性に最も優れた効果を発揮する。
本発明の一般式(1)及び一般式(2)のキノリン誘導体は、以下に述べる3工程を経て合成される。即ち、第1に、C.I.Pigment Yellow138に代表されるフタルイミドキノフタロンを硫酸及び発煙硫酸等でスルホン化する工程。第2に、得られたスルホン化物を水に再分散した後、pHを11以上のアルカリ下において加水分解する工程。第3に、アルカリ加水分解物をアミンや金属と反応させて塩を形成させる工程である。以下、詳細にそれぞれの工程を説明する。
第1の工程であるスルホン化は、公知の方法に従い行うことが出来る。例えば、C.I.Pigment Yellow138を、硫酸、発煙硫酸、硫酸と発煙硫酸の混合物、及びクロルスルホン酸等に溶解し、40〜140℃にて、反応時間として1時間〜8時間、加熱反応を行う。スルホン化の進行は、液体クロマトグラフィーによる成分分析や硫酸溶液の吸収スペクトルの変化により確認することができ、反応終点を追跡、決定することが出来る。十分なスルホン化を確認した後、硫酸反応溶液を大量の氷水中に落とし入れ、析出したスルホン化物を濾別し、希塩酸で洗浄し、更に精製水で十分に水洗を行い、C.I.Pigment Yellow138のスルホン化物をペーストとして単離する。
第2の工程であるスルホン化物のアルカリ加水分解は、以下の方法に従う。第1の工程で得られたスルホン化物のペーストをおよそ100倍の水に再分散した後、苛性ソーダ液でpH11以上に調整し、1〜10時間攪拌を行う。pH11以上に調整することにより、反応液は未溶解の粒子が分散した黄色のスラリー状態から、溶解した赤い溶液状態に変化する。アルカリ加水分解反応の進行は液体クロマトグラフィーで確認することが出来る。場合によっては、pH11以上を保持したまま、50℃以上の温度で、4〜24時間加熱攪拌することにより、加水分解反応を十分に進行させる。
第3の工程であるアミンや金属との造塩反応は、以下の方法に従う。第2の工程で得られたアルカリ加水分解物の赤い水溶液に対して、各種のアミンの水溶液またはアルコール等水可溶有機溶剤の溶液を、あるいは、金属の塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩等の粉末または水溶液を、10分〜5時間かけてゆっくりと添加して塩形成反応を行う。アミンや金属の添加する量は、ブリードが止まるまで加えるが、大体において等モル〜5倍モルが用いられる。その後、析出した生成物を濾別し、十分に水洗を行い、乾燥して目的物を得る。
本発明の顔料組成物、顔料分散体、インキ組成物に用いられる顔料は、一般に市販されている種々の顔料を用いることが出来る。例えば、アゾ系、アンサンスロン系、アンスラピリミジン系、アントラキノン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、インダンスロン系色素、キナクリドン系、キノフタロン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、チオインジゴ系色素、ピランスロン系色素、フタロシアニン系、フラバンスロン系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、ベンズイミダゾロン系などの有機顔料等、カーボンブラック、酸化チタン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、弁柄、鉄黒、亜鉛華、紺青、群青等の無機顔料に用いることが出来る。また、これらの顔料を併用して用いてもかまわない。
これら種々の顔料の中でも、本発明の顔料分散剤と同一または類似の化学構造を有する顔料に対して、非集合性、非結晶性、流動性等に効果が大きい。それらは、化学構造として、隣り合う4つがハロゲンで置換されたベンゼン環を部分的に有する顔料であり、C.I.Pigment Yellow138のキノフタロン顔料、C.I.Pigment Green7、C.I.PIgment Green36等のハロゲン化フタロシアニン顔料、C.I.Pigment Yellow109、C.I.Pigment Yellow110等のイソインドリノン顔料である。
本発明の顔料組成物は、顔料に対して、一般式(1)及び一般式(2)で表される顔料分散剤を単独で添加するか、樹脂型顔料分散剤を併用して添加したものである。本発明の顔料組成物に用いられる樹脂型顔料分散剤は、特開昭60−166318号公報、特開昭61−174939号公報及び特開昭46−7294号公報、特開平09―169821号公報等に開示されているポリエステル系、アクリル系、ウレタン系の高分子共重合物からなるものであり、重量平均分子量1000〜100000のものである。樹脂型顔料分散剤の重量平均分子量が1000未満では十分な立体障害が得られず、分散効果は低下し、重量平均分子量が100000より大きくても逆に凝集作用が生じる場合があり好ましくない。また、樹脂型顔料分散剤のアミン価は5〜200mgKOH/g が好ましい。5mgKOH/g 未満では本発明の顔料分散剤との相互作用が不十分に成りやすく、本発明の顔料分散剤が顔料表面に吸着していても十分な分散効果が得られない場合もある。一方、樹脂型顔料分散剤のアミン価が200mgKOH/g を越えると顔料成分への親和部に比べ、立体障害層が少なくなり、分散効果が不十分に成りやすく好ましくない。このような樹脂型顔料分散剤としては、例えば、Solsperse 24000 (ゼネカ株式会社製)、Disperbyk-160 、Disperbyk-161 、Disperbyk-162 、Disperbyk-163 、Disperbyk-170 (ビックケミー社製)等、アジスパーPB711、アジスパーPB821(味の素株式会社製)が挙げられる。
本発明の顔料組成物において、一般式(1)及び一般式(2)で表される顔料分散剤の添加量は、顔料100重量部に対して0.5〜30重量部が好ましく、樹脂型顔料分散剤の添加量は顔料100重量部に対して0.5〜100重量部が好ましい。一般式(1)で表される顔料分散剤及び樹脂型顔料分散剤の添加量がそれぞれ0.5重量部より少ないと顔料分散効果が小さく好ましくない。また、一般式(1)で表される顔料分散剤の添加量が30重量部より多く用いても用いた分の効果得られなく、樹脂型顔料分散剤の添加量が100重量部より多く用いると、効果が得られないばかりか、塗膜物性も低下する場合がある。
本発明の顔料組成物の調製法としては、顔料粉末と本発明の顔料分散剤の粉末を単に混合しても充分な分散効果が得られるが、ディゾルバー、ハイスピードミキサー、ホモミキサー、ニーダー、ロールミル、アトライター、サンドミル、各種粉砕機等を用いて機械的に混合するか、顔料の水または有機溶媒によるサスペンジョン系に本発明の顔料分散剤を含む溶液を添加し、顔料表面に顔料分散剤を沈着させるか、硫酸等の強い溶解力を持つ溶媒に有機顔料と顔料分散剤を共溶解して水等の貧溶媒により共沈させる等の賢密な混合法を行えば、更に良好な結果を得ることができる。
本発明に係る顔料分散剤の使用方法としては、例えば次のような方法がある。
1.顔料と顔料分散剤を予め混合して得られる顔料組成物を非水系ビヒクル中に添加して分散する。
2.非水系ビヒクルに顔料と顔料分散剤を別々に添加して分散する。
3.非水系ビヒクルに顔料と顔料分散剤を予め別々に分散し得られた分散体を混合する。この場合、顔料分散剤を溶剤のみで分散しても良い。
4.非水系ビヒクルに顔料を分散した後、得られた顔料分散体に顔料分散剤を添加する。
等の方法があり、これらのいずれによっても目的とする効果が得られる。
本発明の顔料組成物は、必要により各種有機溶剤、樹脂(ワニス)、添加剤、市販分散剤等と混合して、横型サンドミル、縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、アトライター等で分散することにより、顔料組成物を非水系ビヒクルに分散せしめてなる顔料分散体を製造することができる。顔料、顔料分散剤、樹脂(ワニス)、樹脂型分散剤、添加剤、有機溶剤は、すべての成分を混合してから分散してもよいが、初めに顔料と本発明の顔料分散剤を有機溶剤に分散し、次いで、樹脂型分散剤、樹脂を添加して分散することが望ましい。
また、横型サンドミル、縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、アトライター等で分散を行う前に、ニーダー、3本ロールミル等の練肉混合機を使用した前分散、2本ロールミル等による固形分散、または顔料への顔料誘導体の処理を行ってもよい。また、ビーズミル等で分散した後、30〜80℃の加温状態にて数時間〜1週間保存するエージングと言われる後処理や、超音波分散機や衝突型ビーズレス分散機を用いて後処理する工程は、分散体の安定性に対して有効である。この他、マイクロフルイタイザー、ハイスピードミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ロールミル、石臼式ミル、超音波分散機等のあらゆる分散機や混合機が本発明の分散体を製造するために利用できる。
また、本発明の顔料分散体に用いられる非水系ビヒクルとしては、石油樹脂、カゼイン、セラック、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート、環化ゴム、塩化ゴム、酸化ゴム、塩酸ゴム、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、乾性油、合成乾性油、スチレン変性マレイン酸、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂塩素化ポリプロピレン、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂等が挙げられる。
非水系ビヒクルとして、感光性樹脂を用いることもできる。感光性樹脂としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の反応性の置換基を有する線状高分子にイソシアネート基、アルデヒド基、エポキシ基等の反応性置換基を有する(メタ)アクリル化合物やケイヒ酸を反応させて、(メタ)アクリロイル基、スチリル基等の光架橋性基を該線状高分子に導入した樹脂が用いられる。また、スチレン−無水マレイン酸共重合物やα−オレフィン−無水マレイン酸共重合物等の酸無水物を含む線状高分子をヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル化合物によりハーフエステル化したものも用いられる。
溶剤としては、一般に有機溶剤として用いられるものは、全て用いることが出来る。例えばシクロヘキサノン、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルベンゼン、エチレングリコールジエチルエーテル、トルエン、キシレン、エチルセロソルブ、メチル−nアミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、n−ヘキサン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ソルベッソ100(エクソン化学株式会社製)、スワゾール1000、石油系溶剤等が挙げられ、これらを単独もしくは混合して用いる。
以下、実施例により本発明を説明する。例中、部とは重量部を、%とは重量%をそれぞれ表す。
製造例1
<キノリン誘導体[A]の合成>
500ml4ツ口フラスコに、発煙硫酸(25%SO3 )と硫酸から調整した101%硫酸450部を仕込み、C.I.Pigment Yellow138(ビー・エー・エス・エフ社製パリオトールイエローK0961−HD)45部を少しずつ添加した。80℃で3時間攪拌を行い、原料の消失を液体クロマトグラフィーにより確認した。反応溶液を氷水5000部中に攪拌しながら加えてスルホン化物を析出させた。次いで、濾別して、0.1%塩酸2000部で洗浄し、更に精製水2000部で洗浄し、C.I.Pigment Yellow138のスルホン化物のペーストを得た。得られたスルホン化物ペーストを水5000部に再分散し(再分散したスラリーのpHは2.3)、25%カセイソーダ液を攪拌しながら加え、pH11.5に調整した。pH調整する間に、反応液は黄色スラリー状態から赤い溶液状態に変化した。5分ごとにpHの微調整を行い、1時間続けた。更に、pH11.5にて60℃に加熱し、3時間攪拌を行った。この赤い溶液に、塩化アルミ(6水和物)47部を溶解した水溶液を少しずつ滴下し、黄色い析出物を得た。全量添加した後のpHは3.5であった。黄色い析出物を濾別し、多量の水で水洗した後、80℃で乾燥させ、40部のキノリン誘導体[A]を得た。
<キノリン誘導体[A]の分析>
得られたキノリン誘導体[A]をDMFに溶解し、日本ウォーターズ社製LC/MS分析装置「プラットフォームLCZ」(ESI:エレクトロンスプレー方式)を用いて分析した。その結果、420nmにおける面積比70%の最も大きなピークにおいて、m/z=809[M−1]を検出した。これは、一般式(2)におけるn=4、m=4、Xが塩素原子であるキノリン誘導体の分子イオンと一致する。また、キノリン誘導体に含まれるアルミ量を測定するために、島津製作所製蛍光X線装置「SXF1200」を用いてキノリン誘導体[A]に含まれるアルミニウム原子と塩素原子の強度比を求めた。この時、キノリン誘導体に含まれるアルミ量を決定する検量線は、中間物として得られるC.I.Pigment Yellow138のスルホン化物に酸化アルミ粉末を任意の割合で混合し、それぞれのアルミニウム原子と塩素原子の強度比を測定して作成した。その結果、アルミニウムの個数はキノリン誘導体[A]1分子に対して、3.06個含まれていることが明らかになり、1個のスルホン酸と2個のカルボン酸それぞれがアルミと配位していることが分かった。
製造例2
<キノリン誘導体[B]の合成>
500ml4ツ口フラスコに、発煙硫酸(25%SO3 )450部を仕込み、C.I.Pigment Yellow138(ビー・エー・エス・エフ社製パリオトールイエローK0961−HD)45部を少しずつ添加した。70℃で1時間攪拌を行い、原料の消失を液体クロマトグラフィーにより確認した。反応溶液を、氷水5000部中に攪拌しながら加え、スルホン化物を析出させ、濾別して、0.1%塩酸2000部で洗浄し、更に水2000部で洗浄し、C.I.Pigment Yellow138のスルホン化物のペーストを得た。得られたスルホン化物のペーストを水5000部に再分散し(再分散したスラリーのpHは2.3)、25%カセイソーダ液を攪拌しながら加え、pH11.5に調整した。5分ごとにpHの微調整を行い、1時間続けた。反応液は赤い溶解であった。この赤い溶液に塩化カルシウム(2水和物)30部を溶解した水溶液を少しずつ滴下し、黄色い析出物を得た。濾別し、大量の水で水洗した後、80℃で乾燥させ、40部のキノリン誘導体[B]を得た。
<キノリン誘導体[B]の分析>
得られたキノフタロン誘導体[B]をDMFに溶解し、日本ウォーターズ社製LC/MS分析装置「プラットフォームLCZ」(ESI:エレクトロンスプレー方式)を用いて分析した。その結果、420nmにおけるクロマトグラフの大きな2つのピークにおいて、m/z=791、809[M−1]を検出した。これは、一般式(1)及び(2)におけるn=4、m=4、Xが塩素原子であるキノリン誘導体の分子イオンと一致する。また、キノリン誘導体に含まれるアルミ量を測定するために、蛍光X線を用いてキノリン誘導体[B]に含まれるカルシウム原子と塩素原子の強度比を求めた。この時、キノリン誘導体に含まれるカルシウム量を決定する検量線は、中間物として得られるC.I.Pigment Yellow138のスルホン化物に酸化カルシウムを任意の割合で混合し、それぞれのカルシウム原子と塩素原子の強度比を測定して作成した。その結果、カルシウムの個数はキノリン誘導体[B]1分子に対して、2.56個含まれていることが明らかになり、一般式(1)及び(2)における1個のスルホン酸と1乃至2個のカルボン酸それぞれがカルシウムと配位していることが分かった。
製造例3 <キノリン誘導体[C]の合成>
製造例2におけるキノリン誘導体[B]の合成に準じて、塩化カルシウムの代わりにヤシ油アミン酢酸塩(商品名:アセタミン24、花王(株)製)36部をお湯に溶解した水溶液を用いた以外は同様にして行い、43部のキノリン誘導体[C]を得た。
比較製造例1<化合物[D]の合成と分析>
C.I.ピグメントイエロー138(ビー・エー・エス・エフ社製パリオトールイエローD0960)6部を攪拌しながら15℃の発煙硫酸(25%SO)78部中に投入した。3時間攪拌した後、氷150部上に加えた。30分間放置後、生じた懸濁液を濾過し、得られた生成物を30部の水で水洗した。水200部中へ前記生成物を投入し、アンモニア水溶液で中和(pHが7になるまでアンモニア水溶液を添加)した。塩化アンモニウム45部を添加して80℃で30分間攪拌し、析出した沈殿物を60℃で濾過した。得られたウェット結晶を水で洗浄した後、80℃で乾燥し、10部のピグメントイエロー138スルホン化物(以下、化合物[D]とする)を得た。得られた化合物[D]をDMFに溶解し、日本ウォーターズ社製LC/MS分析装置「プラットフォームLCZ」(ESI:エレクトロンスプレー方式)を用いて分析した結果、420nmにおけるクロマトグラフの最も大きなピークにおいて、m/z=773[M−1]を検出した。また、クロマトグラフにおける保持時間は、製造例1または2における、m/z=791、809[M−1]のピークの保持時間とは明らかに異なっていた。
比較製造例2<化合物[E]の合成と分析>
500ml4ツ口フラスコに、98%硫酸300部を入れ、その中にC.I.Pigment Yellow138(ビー・エー・エス・エフ社製パリオトールイエローK0961−HD)20部を少しずつ添加した。120℃で5時間反応させてフタルイミドキノフタロン化合物のスルホン化物を得た。反応混合物を、攪拌しながら水3000部中に注ぎ、フタルイミドキノフタロン化合物のスルホン化物を析出させて、30分攪拌した後、濾過、水洗を3回繰り返した。得られたウェットケーキを1%希硫酸300部で洗浄後、濾過し水洗した後、等モルの水酸化カリウムを加え、pHを9に調整してキノフタロンスルホン酸のカリウム塩を調整した。次に、等モルの塩化カルシウムを加えてキノフタロンスルホン酸のカルシウム塩を析出させて、濾過し、洗浄水のpHが7〜6になるまで水洗した。熱風乾燥機中で乾燥させ、57部のキノフタロン誘導体(キノフタロンスルホン酸カルシウム塩、以下化合物[E]とする)をえた。得られた化合物[E]をDMFに溶解し、日本ウォーターズ社製LC/MS分析装置「プラットフォームLCZ」(ESI:エレクトロンスプレー方式)を用いて分析した結果、420nmにおけるクロマトグラフの最も大きなピークにおいて、m/z=773[M−1]を検出した。また、製造例1または2における、m/z=791、809[M−1]のピークの保持時間とは明らかに異なっていた。
比較製造例3<化合物[F]の合成と分析>
5Lビーカーに、氷400部、水1400部を仕込み、攪拌しながら水酸化カリウム200gを少しずつ加え、溶解させた。この中に、C.I.Pigment Yellow138(ビー・エー・エス・エフ社製パリオトールイエローK0961−HD)200部を仕込み、90℃で8時間反応させた。室温に冷却し、36%塩酸270mlを滴下した。濾過、水洗後、真空乾燥し、化合物「F」を得た。得られた化合物[F]をDMFに溶解し、日本ウォーターズ社製LC/MS分析装置「プラットフォームLCZ」(ESI:エレクトロンスプレー方式)を用いて分析した結果、420nmにおけるクロマトグラフの最も大きなピークにおいて、m/z=729[M−1]を検出した。これは、一般式(2)において、スルホン酸基を有しない(スルホン酸基が水素原子で置換された)、n=4、m=4、Xが塩素原子であるキノリン誘導体の分子イオンと一致する。
(アクリル樹脂溶液1の調製)
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付けてシクロヘキサノン70.0部を仕込み、80℃に昇温し反応容器内を窒素置換した後、滴下管よりn−ブチルメタクリレート13.3部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート4.6部、メタクリル酸4.3部、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亜合成社製アロニックスM110)7.4部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4部の混合溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間反応を継続し、固形分30%、重量平均分子量26000のアクリル樹脂の溶液を得た。
室温まで冷却した後、樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が20重量%になるようにシクロヘキサノンを添加してアクリル樹脂溶液1を調製した。
(アクリル樹脂溶液2の調製)
反応容器にシクロヘキサノン800部を入れ、容器に窒素ガスを注入しながら100℃に加熱して、同温度で下記モノマーおよび熱重合開始剤の混合物を1時間かけて滴下して重合反応を行った。
スチレン 60.0部
メタクリル酸 60.0部
メチルメタクリレート 65.0部
ブチルメタクリレート 65.0部
アゾビスイソブチロニトリル 10.0部
滴下後さらに100℃で3時間反応させた後、アゾビスイソブチロニトリル2.0部をシクロヘキサノン50部で溶解させたものを添加し、さらに100℃で1時間反応を続けて、重量平均分子量が約40000のアクリル樹脂の溶液を得た。
室温まで冷却した後、樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が20重量%になるようにシクロヘキサノンを添加してアクリル樹脂溶液2を調製した。

[実施例1]
表1に示すように、各種顔料、顔料分散剤として製造例1〜3で得られたキノリン誘導体[A]〜[C]、または比較製造例1〜3で得られた化合物[D]〜[F]、非水系ビヒクルとして上記に示したアクリル樹脂溶液1、または樹脂溶液2、樹脂型顔料分散剤として味の素(株)製「アジスパーPB821」、またはゼネカ(株)製「ソルスパーズSP-24000」、溶剤としてシクロヘキサノンを配合し、ペイントコンディショナーを用いて、直径1.25mmのジルコニアビーズ200gと共に6時間分散を行い、顔料分散体を作成した。
(各分散体の評価)
各分散体の粘度、及び、チキソインデックス値(TI値)を、B型粘度計を用いて測定した。また、PETフィルムにウェット12μmで塗布し、150℃で2分間乾燥した塗膜の光沢を測定した。また、40℃で2週間保存した後の粘度増加率を測定し、結果を◎(増粘がほとんど無い)、○(若干増粘が見られるが使用可能範囲)、△(増粘が見られ使用不可)、×(著しい増粘が有り使用不可)で表した。これらの結果をまとめて、表1に示した。表1に示したように、本発明の顔料分散剤を使用したものは、低粘度であり、チキソトロピック性が小さく、ニュートニアンに近い(TI値が1に近い)優れた流動性を有し、また、経時粘度安定性も良好であった。
Figure 0004396210
本発明の顔料分散剤、顔料組成物、及び顔料分散体を用いることにより、非集合性、非結晶性、塗膜の光沢、透明性に優れるだけでなく、低粘度、低チキソトロピック性、経時粘度安定性に良好なインキ及び塗料を得ることが容易に達成でき、グラビアインキ、自動車用、木材用、金属用等の各種一般塗料、磁気テープのバックコート塗料、ラジエーションキュアー型インキ、インクジェットプリンター用インキ、カラーフィルター用インキ等の用途に適当出来る。

Claims (4)

  1. 下記一般式(1)又は(2)で示されるキノリン誘導体もしくはそれらのアミン塩または金属塩からなる顔料分散剤。
    Figure 0004396210
    (式中、Xは塩素、臭素、沃素のハロゲン原子を表し、n,mはそれぞれ独立して0〜4の整数であり、置換ハロゲン原子数を表す。)
  2. 顔料、及び請求項1記載の顔料分散剤を含有することを特徴とする顔料組成物。
  3. 顔料、請求項1記載の顔料分散剤、及び重量平均分子量1000〜100000の樹脂型顔料分散剤を含有することを特徴とする顔料組成物。
  4. 請求項2又は3記載の顔料組成物を非水系ビヒクルに分散してなる顔料分散体。
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