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JP4385539B2 - シリコン単結晶ウェーハの熱処理方法 - Google Patents

シリコン単結晶ウェーハの熱処理方法 Download PDF

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JP4385539B2 JP2001096698A JP2001096698A JP4385539B2 JP 4385539 B2 JP4385539 B2 JP 4385539B2 JP 2001096698 A JP2001096698 A JP 2001096698A JP 2001096698 A JP2001096698 A JP 2001096698A JP 4385539 B2 JP4385539 B2 JP 4385539B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、チョクラルスキー法(以下CZ法という)によって引き上げられた単結晶をスライスして切り出されたウェーハの熱処理方法に関し、具体的には、デバイス活性層での酸化誘起積層欠陥を抑制し、また酸素析出物密度をウェーハ面内で均一にしたシリコン単結晶ウェーハの熱処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体デバイス材料として用いられているシリコン単結晶ウェーハは、主にCZ法により引き上げられたシリコン単結晶から製造されている。CZ法シリコン単結晶ウェーハは熱処理を行うと、図2に示すように、OSF(Oxidation induced Stacking Faults)リングと呼ばれるリング状の酸化誘起積層欠陥領域が発生する。このOSFリング領域の内側にはCOP(Crystal Originated Particle)と言われる大きさが0.3μm以下の空孔型欠陥が存在しており、この欠陥はデバイスが形成されるウェーハの表層部に存在すると、デバイス特性を劣化させる有害な欠陥、例えばMOSデバイスのゲート酸化膜耐圧特性を劣化させる原因となることが知られている。
【0003】
一方、OSFリングの外側には、すぐ外側に容易に酸素析出物が形成される領域(以下、酸素析出促進領域と称す)、さらにその外側に酸素析出物が形成されにくい領域(以下、酸素析出抑制領域と称す)が存在し、OSFリング領域を含めこれら3つの領域はgrown-in欠陥が存在しない高品質な領域である。さらにその外側には、転位クラスター欠陥発生領域が存在し、デバイスのリーク電流特性を悪化させる原因となる領域が存在する。
【0004】
酸化膜耐圧特性を改善するためには、ウェーハ表層部を無欠陥層(COPフリー層)とする必要があり、この欠陥を低減するための種々の方法が提案されている。例えば、COPを含まず、さらに低速引上げ速度で発生するデバイスのリーク特性を悪化させる転位クラスターも含まない無欠陥結晶の製造法として、特開平8−330316号公報が提案されている。この方法においては、引上げ速度Vと、結晶の引上げ軸方向の温度勾配Gの比であるV/Gをウェーハ全面に所定の範囲に保つ事で、ウェーハ全面を無欠陥とするものである。
【0005】
しかしながら、この方法では以下のような問題点があった。
(1)無欠陥を維持できるV/Gの範囲が極めて狭く、V/Gを所定範囲に収めることは容易でなく、V/Gが少しでも所定範囲より大きくなるとOSFリング領域が生成する。この領域にはCOPは存在しないが、デバイス工程で酸化熱処理を受けると、デバイス活性層に酸化誘起積層欠陥(以下OSFという)が生成しデバイス特性に悪影響を及ぼす。
(2)無欠陥領域の中でも、V/Gの大きな領域と小さな領域では、加熱時の酸素析出の状況が異なり、V/Gが大きい条件で発生する酸素析出促進領域では酸素析出が起こりやすく、一方V/Gの小さな条件で発生する酸素析出抑制領域では非常に酸素析出が起こりにくいため、析出物密度が不均一なウェーハとなる。
(3)さらに、本発明者は、上記酸素析出促進領域では、OSFリング領域と比べればその程度は小さいもののデバイス工程の熱酸化処理でOSFが発生し、デバイス特性に悪影響を与えることを知見した。
【0006】
このため、この方法で無欠陥ウェーハを作る場合には、上記の問題点を回避するために、結晶中の酸素濃度を低くし、OSFや酸素析出物が発生しない条件で均一なウェーハを得る方法が行われている。しかし、この場合結晶の低酸素化によってCZウェーハの特徴である酸素析出物による不純物ゲッタリングの効果が得られないという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような問題点に鑑みなされたもので、本発明の目的とするところは、結晶中の酸素濃度を低くする必要がなく、シリコンウェーハを低濃度酸素雰囲気で短時間に熱処理することにより、ウェーハ表面のOSFリングの核となる欠陥の成長を抑制して酸化誘起積層欠陥を無くし、また酸素析出物密度をウェーハ面内で均一にしたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本願の第1発明は、チョクラルスキー法により育成された、酸素析出促進領域、または酸素析出促進領域と酸素析出抑制領域からなり、前記酸素析出促進領域において酸化誘起積層欠陥が発生する部分を含むシリコン単結晶ウェーハを、酸素濃度が0.01%以上3%以下である、窒素もしくは希ガスと酸素、または窒素と希ガスと酸素の混合ガス雰囲気中で、2分以内に室温から1100℃ないし1300℃に昇温して1秒以上加熱する急速加熱後急速冷却する急速熱処理を行なうことを特徴とするシリコン単結晶ウェーハの熱処理方法である。
【0009】
ウェーハに加える熱処理を、室温から1100℃ないし1300℃へ急速に昇温する急速加熱処理することにより、OSFリングの核となる欠陥が溶解し、デバイス工程でのOSFリングの生成が抑制される。
【0010】
雰囲気として窒素のみあるいは希ガスのみを用いると、表面に有害な窒化物の形成やパーティクルの付着が発生するが、酸素濃度が0.01%以上3%以下である、窒素もしくは希ガスと酸素、または窒素と希ガスと酸素の混合ガス雰囲気を使用することにより、ウェーハ表面での有害な、窒化物の形成やパーティクルの付着が防止される。
【0011】
さらにこの急速熱処理により、酸素析出核が溶解し、各領域とも酸素析出核が無い状態となり、領域間の酸素析出挙動が均一化される。ただし、この状態は、酸素析出が非常に起こりにくいことを意味するが、本発明において、急速加熱処理後の冷却速度を大きくすることにより酸素析出核を著しく増加できる。これは、シリコン基板を高温に加熱すると、酸素析出物成長を促進させる空孔濃度が、格子間シリコンよりも優勢となり、これを急速冷却すると基板内にある程度維持され、多数の酸素析出核が生成するためである。この観点からは冷却速度は、早い方が好ましい。
【0012】
本願の第2発明は、前記第1発明において、1100℃以上の加熱温度から、1000℃以下の温度まで20℃/秒以上の冷却速度で急速冷却することを特徴とするシリコン単結晶ウェーハの熱処理方法である。
【0013】
1100℃以上の温度では、空孔濃度が格子間シリコン濃度よりも高い状態であるが、この状態から1000℃以下まで20℃/秒以上の冷却速度で急速冷却すると、高い空孔濃度が凍結される。その後ゆっくり室温まで冷却しても高い空孔濃度が維持され、以後の熱処理でゲッタリングに有効な酸素析出物が高い密度で得られる。
【0014】
この場合、ウェーハ表面部は、空孔が短時間で外方拡散するため、表面部は空孔濃度が低くなり、表面のデバイス活性層には、酸素析出物が発生せず、デバイス特性に悪影響を与えることがない。
【0015】
本願の第3発明は、前記第1および第2発明において、急速熱処理の後に、酸素濃度が0.01%以上3%以下である、窒素もしくは希ガスと酸素、または窒素と希ガスと酸素の混合ガス雰囲気中で、複数のウェーハを同時に熱処理する熱処理炉を用いて、1050℃以上の温度まで20分以上かけて昇温し、1時間以上加熱する低速昇温熱処理を行うことを特徴とするシリコン単結晶ウェーハの熱処理方法である。
【0016】
低速昇温熱処理により、ウェーハ表層で酸素の外方拡散がおこり、デバイス工程での酸化熱処理によるOSFリング領域でのOSF発生や、酸素析出促進領域からのOSF発生がさらに抑制される。
【0017】
本願の第4発明は、前記第1から第3の発明において、急速熱処理あるいは低速昇温熱処理の後で、500℃から1000℃で2時間から5時間かけて均熱処理を行うことを特徴とするシリコン単結晶ウェーハの熱処理方法である。
【0018】
この均熱処理により、ウェーハ内部に金属不純物等のゲッタリング効果を有する酸素析出物をウェーハ面内に均一に形成することができ、デバイス工程でのゲッタリング能が向上する。
【0019】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。CZ法により育成されたOSFリング領域、酸素析出促進領域、酸素析出抑制領域のいずれか、あるいはこれらの組み合わせからなる領域を有するシリコン単結晶ウェーハを、OSF低減のために急速熱処理する。
【0020】
急速熱処理の温度としては、1100℃から1300℃が好ましい。1100℃以下では、OSFの原因となる欠陥の溶解が十分起こらないばかりではなく、1000℃程度の熱処理では逆に核サイズを大きくしてしまい、容易にOSFを発生させることとなる。1300℃を越えると熱処理ウェーハにスリップ転位が発生し、半導体デバイスを作製する時に支障をきたす事になり好ましくない。
【0021】
熱処理時間としては、1秒以上加熱するのが良く、30秒も加熱すれば十分にその効果を得る事が可能である。1秒以下では、所望する熱処理温度到達までに基板面内でバラツキが生じ、品質のバラツキを生み十分なOSFの低減効果を得る事が出来ない。この熱処理の昇温に要する時間が長くなると、昇温過程で、OSF核、酸素析出物の成長が起こり、熱処理時これらの溶解消滅が起こりにくくなる。このため、室温から高温熱処理の温度まで2分以内で昇温するのが好ましい。これは、約10℃/秒以上の昇温速度に相当する。
【0022】
冷却については、冷却速度が大きいほど、酸素析出核が多数生成し、以後の熱処理での酸素析出が起こりやすくなる。この効果は、5℃/秒程度の冷却速度でも認められるが20℃/秒以上で顕著である。この急速冷却処理は、空孔濃度を急冷により基板中に低温まで凍結することを目的とするが、この凍結効果は1000℃程度までで、それ以下の温度での冷却速度は緩速冷却してもあまり酸素析出量に影響を与えない。
【0023】
熱処理を行う雰囲気としては、酸素濃度が0.01%以上3%以下である、窒素もしくは希ガスと酸素、または窒素と希ガスと酸素の混合ガス雰囲気が好ましい。酸素を含まない窒素のみの場合は、基板表面のみならず、基板内部においても窒化物が形成しデバイス特性に悪影響を与える。また、酸素を含まない希ガスのみでは、高温熱処理で活性な基板表面のシリコンがむき出しとなりパーティクルが強固に付着し、洗浄では除去できなくなる。これに対して、酸素濃度が0.01%以上3%以下である、窒素もしくは希ガスと酸素、または窒素と希ガスと酸素の混合ガス雰囲気中で熱処理すると、基板表面に酸化膜が形成して窒化物の形成を抑制し、また活性なシリコンが露出しなくなるためパーティクルの強固な付着が起こらない。一方、酸素の濃度が3%を越えると、デバイス製造工程でOSFの発生が起こり好ましくない。
【0024】
この急速加熱処理により表面近傍のOSF核、酸素析出核は減少し、デバイス製造工程でのOSFや酸素析出物の形成は抑制できるが、これに加えて後に述べる低速昇温熱処理を行うことにより、表面近傍の酸素濃度は外方拡散によって低下し、デバイス工程でのデバイス活性層のOSFや酸素析出物の形成をさらに抑制できる。
【0025】
本発明の更なるOSF密度低減のためにウェーハ表面の酸素を外方拡散させる処理として、前記急速熱処理の後に低速昇温熱処理を行う。
【0026】
この低速昇温熱処理はウェーハ多数枚を同時に熱処理可能な熱処理炉で1050℃以上の温度まで20分以上かけて昇温し、1時間以上かけ熱処理を行う。本熱処理は、1時間以上かけて行なうため、枚葉式熱処理炉の使用は不適当であり、多数のウェーハを同時に熱処理するタイプの熱処理炉が好ましい。このような熱処理炉で急速に加熱処理すると、ウェーハ面内に温度勾配が生じスリップが発生する。このため、ウェーハを熱処理する温度まで昇温する時間は20分以上かけることが好ましい。
【0027】
低速昇温熱処理の雰囲気としては、急速熱処理と同様の理由で、酸素濃度が0.01%以上3%以下である、窒素もしくは希ガスと酸素、または窒素と希ガスと酸素の混合ガス雰囲気が最も好ましい。酸素を全く含まない、窒素あるいは及び希ガスの混合ガスを用いる場合は、前述したように、表面に窒化物形成や、パーティクル付着が起こるので好ましくない。
【0028】
本発明の、急速熱処理、低速昇温熱処理で得られたウェーハを、500℃から1000℃の温度で2時間から5時間かけて均熱処理して酸素析出物を成長させることにより、ウェーハ内部に高濃度の酸素析出物が基板面内に均一に形成し、デバイス工程でのゲッタリング能に優れ、かつ表面のデバイス活性層にはOSFや酸素析出物の少ないウェーハとすることができる。
【0029】
本発明の熱処理方法によれば、OSFリング領域、酸素析出促進領域、酸素析出抑制領域のいずれかあるいはこれらの組み合わせからなりGrown-in欠陥がなく、またデバイス製造工程でウェーハのデバイス活性層にOSFや酸素析出物がなく、かつウェーハ内部に高密度の酸素析出物が存在し、ゲッタリング能やデバイス特性の良好なCZ法シリコン単結晶ウェーハが得られる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態につき説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず、直径150mm、ボロンドープp型(100)、比抵抗10Ωcmで、酸素濃度が下記3種類のウェーハを準備した。なお、酸素濃度は、FT−IRによる赤外吸収測定結果から、ASTM F121−79にもとづき算出した。
【0031】
サンプルAとして酸素濃度が14.5×1017atoms/cm、中央にOSFリング領域が存在(OSFリング領域の外周部直径=50mm)し、その外側には酸素析出促進領域のみが存在するウェーハ。
サンプルBとして酸素濃度が13.0×1017atoms/cm、中央にOSFリング領域が存在(OSFリング領域の外周部直径=46mm)し、その外側には酸素析出促進領域のみが存在するウェーハ。
サンプルCとして酸素濃度が14.5×1017atoms/cm、OSFリングの内側領域からのみなるウェーハ。
【0032】
サンプルAおよびBのウェーハの酸素析出を見るための熱処理条件として、▲1▼酸素雰囲気中で800℃、4時間の熱処理後、引き続き1000℃で16時間の熱処理、およびOSFの発生状況を見るための熱処理条件として、▲2▼酸素雰囲気中で1100℃、16時間熱処理した場合である。
【0033】
図3はサンプルAおよびBをX線トポグラフ法で観察した写真である。左側は▲1▼の熱処理の場合の写真で、白い部分ほど酸素析出が起こっていることを示している。右側は▲2▼の熱処理の場合の写真で、白い部分はOSFが発生していることを示している。このように酸化雰囲気での熱処理により酸素析出やOSFが発生することがわかる。
【0034】
この3種のウェーハを、OSF密度を観察するために下記評価条件にて処理を行い光学顕微鏡で観察してOSF密度を観察した結果を図4に示す。
【0035】
評価条件1として、酸素雰囲気中にて1000℃で16時間熱処理したのちサンプルを取り出し、ライトエッチング液でウェーハの表面を5μm選択エッチングしてOSF密度を観察した。
評価条件2として、酸素雰囲気中にて780℃で3時間の熱処理を行った後、そのままの状態で1000℃に昇温し、1000℃で16時間熱処理したのち、950℃まで降温してからサンプルを取り出し、ライトエッチング液でウェーハの表面を2μm選択エッチングしてOSF密度を観察した。
【0036】
サンプルAおよびBでは、リングOSF領域でOSFが多発するのは当然として、その外側の酸素析出促進領域でもOSFが多発している。いずれの領域もOSF密度は酸素濃度が低いサンプルBの方が低密度である。サンプルCでは、いずれの評価においてもOSFは観察されなかった。
【0037】
従来COP密度を低減させるためにOSFリング領域を結晶内に存在させる結晶育成法で低酸素濃度にするのはこのためである。また、酸素析出促進領域であっても基板外周に向かいOSF密度が低減しているのは、結晶育成時に結晶内部に導入された空孔濃度に関係し、その相関関係にあるOSF発生核がその様に分布しているからである。従って、この様に分布するOSF核を熱処理により非活性化させるさせるには基板面内の温度分布を十分に制御する必要がある。
【0038】
つぎに、サンプルAおよびサンプルBを用いてOSF密度低減を行った検討結果を述べる。サンプルAおよびBを枚葉式ランプ加熱炉で、下記熱処理を行った。
雰囲気として、3%酸素(97%窒素)、100%酸素、100%窒素
処理温度として、900℃から1300℃
昇温速度として、50℃/秒
所定温度での保持時間として、1秒から30秒
所定温度から1000℃までの冷却速度として、50℃/秒。それ以下は室温まで放冷した。
【0039】
上記の範囲で条件を各種変更して熱処理した後、前記評価条件2の処理を行い、これを光学顕微鏡で観察してOSF密度を測定した高速熱処理温度、昇温時間依存性の結果を図1に示す。
【0040】
サンプルAの場合、1000℃以下では酸素3%を含む窒素雰囲気、100%窒素、100%酸素であろうとOSFリング領域および酸素析出促進領域いずれの領域においてもOSF密度に大きな変化は見られず、OSF発生核には影響を及ぼしていない。処理温度が高くなるに従い、100%酸素雰囲気では酸素析出促進領域で発生するOSFの発生抑制効果は見られるも、OSFリング領域においてはその低減効果は非常に乏しい。100%酸素雰囲気での処理を除く1100℃以上の処理では、リングOSF領域で2000cm−2程度発生しているものが600cm−2以下に低減している。また酸素析出促進領域では200cm−2程度発生しているものが50cm−2以下へと抑制効果が非常に大きい事がわかる。その効果は処理時間1秒でも十分で有る。
【0041】
しかし、100%窒素、100%アルゴン雰囲気で熱処理したものは、OSFは低減したもののウェーハ表面に窒化物の形成やパーティクルの付着が観察された。
【0042】
一方、サンプルBでは基板の酸素濃度が低い事が大きく寄与しているも、やはり1100℃以上の処理で大幅な改善が見られる。従って、OSF核を非活性化する為には、酸素の酸素濃度が3%以下となる非酸化性ガスとの混合ガス雰囲気内で1100℃以上で処理する事が必要である。
【0043】
更なるOSF密度低減化の効果を得る為に、ウェーハ表面の酸素を外方拡散させる処理を付加した結果について述べる。用いたサンプルは、サンプルAであり、前熱処理条件として枚葉式ランプ加熱炉で下記の急速加熱処理後、酸素外方拡散熱処理を行った。
処理温度として、1100℃、1150℃、1200℃
処理時問として、5秒
昇温速度として、50℃/秒
降温速度として、処理温度から1000℃に下がる迄の冷却速度50℃/秒
雰囲気として、3%酸素(残り窒素)
【0044】
上記前熱処理を行った後、下記2条件の酸素外方拡散熱処理条件にて処理を行い、前記評価処理条件2にてOSF密度の評価を行った。
酸素外方拡散熱処理条件1として、3%酸素(窒素97%)雰囲気の拡散炉に900℃でサンプルを投入し、処理温度まで5℃/分で昇温した後雰囲気を100%窒素に切り替え、処理温度で2時間保持した後、900℃まで降温しサンプルを取り出す。
酸素外方拡散熱処理条件2として酸素外方拡散熱処理条件1の熱処理を全て3%酸素(窒素97%)雰囲気で行う。
【0045】
酸素外方拡散熱処理は、枚葉式のランプ加熱炉では生産性が低下しコストが上昇する為、バッチ式のソフトランディングタイプの拡散炉を用いた。また、900℃でサンプルの投入、取り出しを行うのはサンプルをセットするボートをSiC製のフオークで支持する為であり、この温度以上ではフオークからの汚染、および炉内へ挿入する時に熱衝撃によるフォークの破損が心配される為である。フォークの材質として汚染の心配が少ない石英製の物も市販されているが、バッチ処理を行う為、大重量になるサンプルを1100℃〜1200℃の温度に直接投入すると、すでに石英の特性は粘性領域に人っており、変形を起こし繰り返し使用する事が困難になる。従って、いずれの材質のフォークを使用しても900℃程度でウェーハを投入、取り出しを行う必要がある。
【0046】
酸素外方拡散熱処理条件1では、ウェーハ投入から処理温度まで昇温する間は酸化雰囲気で行ったが、これはウェーハ表面層での窒化物形成回避の為に保護膜として酸化膜を形成する為である。その後窒素雰囲気としてOSFが発生しにくい雰囲気とした。100%窒素雰囲気でこの酸素外方拡散熱処理を行うとウェーハ表層部に窒化物が形成された。また、100%アルゴン雰囲気では活性層がむき出しになりパーティクルが付着していた。これらは研磨することにより除去可能であるが、工程を増加させる研磨をしない為にも酸素外方拡散熱処理工程ではわずがでも酸素を含んだ雰囲気で行うとよい。
【0047】
酸素外方拡散熱処理後OSF密度評価のための評価熱処理2として、酸素雰囲気にて780℃、3時間の熱処理後そのままの状態で1000℃に昇温し、16時間経過後950℃でサンプルを取り出しライトエッチング液で表面2ミクロンの選択エッチングをおこない光学顕微鏡でOSFの観察を行いOSF密度の評価を行った結果を図5に示す。リングOSF領域では急速加熱処理温度が高いほどOSFは低減し、酸素析出促進領域においてはOSFの発生はなかった。
【0048】
酸素外方拡散処理条件1ではウェーハ投入から処理温度までは酸素3%の酸化雰囲気でおこなっているため、この時点でウェーハ表面に酸化膜が形成される。その後窒素雰囲気で熱処理されるためOSFは非常に少ない。
酸素外方拡散熱処理条件2は窒素で希釈しているとはいえ、昇温から熱処理まで酸化雰囲気で行っている為にOSFが発生し易い環境であるにも関わらず、1150℃以上の急速加熱処理を施していると、著しいOSFの低減効果が有る事がわかる。その効果は1150℃以上の温度に於いては酸素外方拡散熱処理条件1と同程度である。
【0049】
酸素外方拡散熱処理の昇温工程を酸化雰囲気で行うと、1150℃までの昇温中にすでにわずかではあるがOSFを発生させてしまい、比較例では十分に効果を得る事は出来ないが、急速加熱による1150℃以上の前熱処理を酸素外方拡散熱処理前に施す事で、事前にOSF発生核を非活性化させる事が可能であり、その結果OSF密度を著しく低減させる事が可能となる。酸素外方拡散熱処理の効果は、ウェーハ中の酸素を外方に拡散させる事でウェーハ表層に限って見れば、低酸素で結晶育成を行った場合と同様の特性を示すことが分かる。
【0050】
以上OSFの低減方法について述ベてきたが、高温処理を施す事でCZ結晶の特徴でもある酸素析出物が成長しにくい状態になっている。このため、酸素析出物を均一に成長させ、ゲッタリング能を向上させる熱処理2つのケースについて述ベる。用いたサンプルは、サンプルAであり、前熱処理条件として枚葉式ランプ加熱炉で下記の急速加熱処理後、析出核成長熱処理を行った。
ケース1
処理温度として、1150℃、1175℃、1200℃、1250℃
処理時間として、30秒
昇温速度として、50℃/秒
降温速度として、処理温度から1000℃に下がる迄の冷却速度50℃/秒
雰囲気として、3%酸素(窒素97%)
【0051】
上記熱処理後に、酸素雰囲気で800℃で4時間の析出核形成熱処理を行った後、1000℃で16時間の析出核成長熱処理を行い、酸素析出物密度の面内分布を評価した結果を図6−1に示す。比較例として急速加熱処理を行わなかった場合を載せているが、この場合ウェーハ面内で1桁程の酸素析出物密度のバラツキが見られる。一方、急速加熱処理を行った場合には、酸素析出物密度によらず面内で非常に均一に分布している事がわかる。
【0052】
1175℃以下で急速加熱処理を行った場合は、比較例と比し低密度になっているが、これば析出核形成処理を800℃で行った為に、その温度で核形成が行われなかった為であり、より低温で核形成処理を行う事で酸素析出物の密度制御は可能である。核形成を行う下限の温度は500℃であり、この温度以下では生産性を考えた時問内で核形成を行う事は困難である。1200℃以上の急速加熱処理の結果は、高濃度の空孔を基板内に均一に分布した状態で凍結させる事により酸素析出物形成を促進させた効果である。
【0053】
図7には3%酸素(97%窒素)雰囲気で1250℃の急速加熱処理を行ったサンプルの断面写真を示すが、ウェーハ全面にDZ層として20μm以上確保されていることがわかる。このサンプルは窒素で希釈しているとはいえ酸化性雰囲気で行っている為に、窒素よりも酸素の方がより早くシリコンと反応し、昇温中すでに酸化反応によってウェーハ表面は安定な酸化膜で保護されている。処理雰囲気が3%酸素(残り窒素)もあればその効果は十分に得られる事が明らかになり、基板表面が酸化膜で保護されることから汚染の影響を受けにくくし、かつ窒化物の形成が抑制される。
【0054】
ケース2
処理温度として、1100℃、1150℃、1200℃
処理時間として、30秒
昇温速度として、50℃/秒
降温速度として、処理温度から1000℃に下がる迄の冷却速度50℃/秒
雰囲気として、3%酸素(97%窒素)
【0055】
上記熱処理後に酸素外方拡散熱処理条件1を施して、引き続き500℃から1000℃の温度範囲で2から5時間の酸素析出核形成処理を行い、評価条件1により基板面内の酸素析出物の密度分布を評価した結果を図6−2に示す。酸素析出物は非常に均一に分布している事がわかる。また、低温から析出核形成を行っている為に、ケース1と比較し急速加熱処理温度が低く高濃度の空孔を凍結させるには不十分な温度であっても、十分に面内均一に酸素析出物を形成させる事が可能である。
【0056】
【本発明の効果】
以上説明した様に、本発明の半導体シリコンウェーハの熱処理方法は、酸素濃度が0.01%以上3%以下である、窒素もしくは希ガスと酸素、または窒素と希ガスと酸素の混合ガス雰囲気中で、2分以内に室温から1100℃ないし1300℃に昇温して1秒以上加熱し、急速冷却する急速熱処理を行うこと、また、前記急速熱処理の後に、酸素濃度が0.01%以上3%以下である、窒素もしくは希ガスと酸素、または窒素と希ガスと酸素の混合ガス雰囲気中で、複数のウェーハを同時に熱処理する熱処理炉を用いて1050℃以上の温度まで20分以上かけて昇温し、1時間以上加熱する低速昇温熱処理を行う事で、リングOSF領域およびその外側に位置する酸素析出促進領域で高密度に発生するOSFを著しく低減させる効果を持つ。また、500℃〜1000℃の範囲で2時間〜5時問保持する処理を上記何れかの熱処理後に行う事で、ウェーハ面内の酸素析出物密度分布を均一にする事が出来る。
【0057】
以上述べた処理を、CZ法により育成された、OSFリング領域とその外側に存在する酸素析出促進領域及び/又はさらにその外側に存在する酸素析出抑制領域のみからなるシリコンウェーハ、またはOSFリング領域の外側に存在する酸素析出促進領域及びその外側に存在する酸素析出抑制領域からなるシリコンウェーハに対して行う事で、結晶引上げ時に基板の酸素濃度を低下させる必要が無く、CZ結晶の特徴であるゲッタリング能力を持ったgrown‐in欠陥が存在しない高品質の半導体シリコンウェーハを製造する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】OSF密度と熱処理温度、時間、雰囲気の影響を調ベた図である。
【図2】シリコンウェーハで観察される、典型的な欠陥分布の例を模式的に示した図である。
【図3】X-ray topography法により評価した欠陥分布を示す写真である。
【図4】OSF密度のウェーハ面内分布を示す図である。
【図5】酸素外方拡散熱処理のOSF密度の低減効果を示す図である。
【図6】酸素析出物密度の面内分布を示す図である。
【図7】酸素析出物密度の深さ方向分布を示す写真である。

Claims (5)

  1. チョクラルスキー法により育成された、酸素析出促進領域からなり、前記酸素析出促進領域において酸化誘起積層欠陥が発生する部分を含むシリコン単結晶ウェーハを、酸素濃度が0.01%以上3%以下である、窒素もしくは希ガスと酸素、または窒素と希ガスと酸素の混合ガス雰囲気中で、2分以内に室温から1100℃ないし1300℃に昇温して1秒以上加熱する急速加熱後急速冷却する急速熱処理を行なうことを特徴とするシリコン単結晶ウェーハの熱処理方法。
  2. チョクラルスキー法により育成された、酸素析出促進領域と酸素析出抑制領域からなり、前記酸素析出促進領域において酸化誘起積層欠陥が発生する部分を含むシリコン単結晶ウェーハを、酸素濃度が0.01%以上3%以下である、窒素もしくは希ガスと酸素、または窒素と希ガスと酸素の混合ガス雰囲気中で、2分以内に室温から1100℃ないし1300℃に昇温して1秒以上加熱する急速加熱後急速冷却する急速熱処理を行なうことを特徴とするシリコン単結晶ウェーハの熱処理方法。
  3. 1100℃以上の加熱温度から、1000℃以下の温度まで20℃/秒以上の冷却速度で急速冷却することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシリコン単結晶ウェーハの熱処理方法。
  4. 急速熱処理の後に、酸素濃度が0.01%以上3%以下である、窒素もしくは希ガスと酸素、または窒素と希ガスと酸素の混合ガス雰囲気中で、複数のウェーハを同時に熱処理する熱処理炉を用いて、1050℃以上の温度まで20分以上かけて昇温し、1時間以上加熱する低速昇温熱処理を行うことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のシリコン単結晶ウェーハの熱処理方法。
  5. 急速熱処理あるいは低速昇温熱処理の後で、500℃から1000℃で2時間から5時間かけて均熱処理することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のシリコン単結晶ウェーハの熱処理方法。
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