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JP4383574B2 - 4サイクルv型8気筒エンジン用バランス装置 - Google Patents

4サイクルv型8気筒エンジン用バランス装置 Download PDF

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JP4383574B2
JP4383574B2 JP06713399A JP6713399A JP4383574B2 JP 4383574 B2 JP4383574 B2 JP 4383574B2 JP 06713399 A JP06713399 A JP 06713399A JP 6713399 A JP6713399 A JP 6713399A JP 4383574 B2 JP4383574 B2 JP 4383574B2
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  • Valve Device For Special Equipments (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、4サイクルV型8気筒エンジンの起振力をうち消すためのバランス装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
バンク挟角が90度の4サイクルV型8気筒エンジンに於いて、全てのクランクピンの軸中心が同一平面上に置かれた平面クランクを採用すると、両バンク間の作動サイクルが180度毎となって吸気・排気が交互に起こる。これによると、片側のバンクでの吸気・排気のタイミングが等間隔となって排気干渉が起こらないので、高出力を得る上に有利である。
【0003】
他方、平面クランクのV型8気筒エンジンに於いて、クランク軸の中心を通ってバンク狭角を二等分する平面が垂直配置された場合、両バンクのピストンの往復運動が発生する慣性力の水平方向成分によるアンバランスは、クランク軸に設けたカウンタウェイトだけでは打ち消し得ない。しかしこのアンバランスは、直列4気筒エンジンのシリンダを水平にした状況で発生する二次慣性力によるものと等しいので、従来の直列4気筒エンジン用二次バランサの理論を適用し、垂直面上に配置した2本のバランス軸を互いに逆回転させることでうち消すことができる(特開平8−193648号公報参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、ピストン系慣性力との釣り合いのみを考慮した上記従来のバランス装置によると、動弁系慣性力に起因するアンバランス振動は除去し得ない。特に片方のバンクの動弁装置に閉弁休止機構を設けたV型エンジンの場合は、両バンクの動弁系慣性力が互いに異なったものとなるので、動弁系慣性力に起因するアンバランス振動の除去がより一層重要となる。
【0005】
動弁系の等価慣性質量を備えたバランス装置も実開昭64−36630号公報に見られる如く公知ではあるが、これはピストン系のためのバランス装置とは別に設けるものなので、構造の複雑化を免れ得ない。
【0006】
本発明は、このような従来技術に課せられた問題点を解消するべく案出されたものであり、その主な目的は、構造の複雑化を招かずにエンジンの制振をより一層高次元に達成することのできる4サイクルV型8気筒エンジン用バランス装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような目的を果たすために、本発明に於いては、バンク狭角が90度の4サイクルV型8気筒エンジン用バランス装置を、クランク軸により回転駆動されるバランス軸を有し、 前記バランス軸に、ピストン系の残存二次慣性力を相殺する第1の慣性力と、動弁系の残存二次慣性力を相殺する第2の慣性力とのベクトルを合成した方向に重心位置を有するウェイトが設けられていることを特徴とするものとした。このようにすれば、ピストン系用と動弁系用とのバランス装置を1つにまとめることができるので、構造の複雑化を招かずに済む。
【0008】
特に、両バンク間で非対称な構成の動弁系を有するエンジンの場合は、第1の慣性力と第2の慣性力とのベクトルを合成した方向に重心位置が置かれたウェイト(実施の形態中の偏心ウェイト91・92)をバランス軸に設けるものとすれば、バランス軸の形状を複雑化せずに済み、また、動弁系の残存二次慣性偶力相殺する第3の慣性力を発生する部分(実施の形態中の第3ウェイト401・402)をバランス軸の両端部に設けるものとすれば、エンジンの制振をより一層高次元に達成することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に添付の図面を参照して本発明の構成を詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明が適用された4サイクルV型8気筒エンジンの模式図である。このエンジンのシリンダブロック1は、90度の挟角をもってV字形に配された片側が4気筒づつの一対のバンク2L・2Rを有しており、図中左側のバンク2Lに奇数番号の気筒3Oが、右側のバンク2Rに偶数番号の気筒3Eが、それぞれ設けられている。そして両バンク2L・2Rの各気筒内に摺合したピストン4が、両バンク中心の交点に支持されたクランク軸5上にクランク軸5の中心回りに互いに180度変位して配置されたクランクピン61・62に対し、コネクティングロッド7を介してそれぞれ連結されている。より詳しく言うと、このクランク軸5は所謂平面クランクであり、1番・2番気筒のピストンの対と、7番・8番気筒のピストンの対とが連結されたクランクピン61が互いに同一方向を向き、3番・4番気筒のピストンの対と、5番・6番気筒のピストンの対とが連結されたクランクピン62が互いに同一方向を向いており、各組が、クランク軸5の中心回りに互いに180度変位して配置されている。
【0011】
さて、上記したクランクピンの配置では、主に残存二次慣性力によるアンバランス振動が生じるので、この振動を除去するために、クランク軸5と平行に2本のバランス軸81・82が設けられている。
【0012】
2本のバランス軸81・82は、シリンダブロック1の一側に、例えばクランク軸5の中心を通る水平面を中心として上下に等間隔をおいて延設されており、それぞれがその重心位置を回転中心から所定の方向へ偏倚させた偏心ウェイト91・92を備えている。これら2本のバランス軸81・82は、図示されていない巻き掛け伝動機構、或いは歯車伝動機構を介してクランク軸5と連動連結され、上側のもの81がクランク軸5と同一方向にクランク軸の2倍の回転速度で回転し、下側のもの82がクランク軸5と逆方向にクランク軸の2倍の回転速度で回転するようにされている。
【0013】
上記エンジンのシリンダヘッドには、気筒毎に各1対の吸気弁と排気弁とからなる動弁装置101・102が設けられている。以下に動弁装置101・102について詳述する。なお、吸気弁と排気弁との基本的な構成は同一である。
【0014】
図2は一方のバンク2Lに設けられた動弁装置101の概略構成図である。同図に示したように、カム軸111には、作動角及びリフト量の小さい2個の低速用カム121・122と、これらのカム121・122に挟まれた作動角及びリフト量の大きい1個の高速用カム13とが、一体形成されている。そしてカム軸111の下方には、カム軸111と平行なロッカシャフト141上に3個のロッカアーム151・152・16が互いに隣接して揺動自在にかつ相対角変位可能に枢支されている。これらのロッカアーム151・152・16は、それぞれ対応するカム121・122・13によって揺動駆動される。
【0015】
低速用カム121・122で駆動される第1・第2ロッカアーム151・152は、基本的に同一形状をなし、その各遊端に、閉弁方向へ常時ばね付勢された2個の弁171・172のステム端が当接している。また、高速用カム13で駆動される第3ロッカアーム16は、図示されていないばね手段によって高速用カム13との摺接状態が常時維持されている。
【0016】
互いに隣接する第1〜第3ロッカアーム151・152・16の内部には、それらを相対角変位し得る状態即ち低速モードと、一体的に揺動し得る状態即ち高速モードとに切換えるために、以下に詳述する連結切換装置が設けられている。
【0017】
図2に於ける左側の第1ロッカアーム151には、中央の第3ロッカアーム16側に開口する有底の第1ガイド孔181が、ロッカシャフト141の軸線と平行に形成され、かつその中に第1切換ピン191が摺合している。第3ロッカアーム16には、高速用カム13のベース円部分がカムスリッパに摺接する静止位置において第1ガイド孔181と同心をなす第2ガイド孔182が貫通して形成され、かつその中に、第1切換ピン191にその一端を当接させた状態の第2切換ピン192が摺合している。図2に於ける右側の第2ロッカアーム152には、第1ロッカアーム151と同様の実質的に有底の第3ガイド孔183が形成され、かつその中に、第2切換ピン192の他端にその一端を当接させた状態のストッパピン193が摺合している。ストッパピン193は、圧縮コイルばね20によって第2ロッカアーム16側に常時弾発付勢されている。
【0018】
ロッカシャフト141内には、オイルパンから汲み上げた潤滑油を供給するための2本の給油通路211・212が形成されている。これらの内の一方211は、第1ガイド孔181の底部に連通し、他方212は、ロッカシャフト141と各ロッカアーム151・152・16との間、各カム121・122・13とカムスリッパとの摺接面、及びカムジャーナルへ潤滑油を供給する通路(図示せず)に連通している。
【0019】
上記の連結切換装置は、図示されていない電子制御回路の信号で作動する切換弁を、機関の運転状態に応じて開閉制御して一方の給油通路211から第1ガイド孔181内の第1切換ピン191に作用させる油圧を断続させることによって作動する。
【0020】
低速モードでは、第1切換ピン191に油圧を作用させずにおけば、各ピン191・192・193が圧縮コイルばね20の弾発力によって各ガイド孔181・182・183にそれぞれ整合した位置となる(図2参照)。この状態では、各ロッカアーム151・152・16は互いに相対角変位可能である。従って、高速用カム13で駆動される第3ロッカアーム16は他のロッカアーム151・152に何ら影響を及ぼさず、低速用カム121・122のプロフィールによって揺動駆動される第1・第2ロッカアーム151・152を介して2個の弁171・172が同時に開弁駆動される。
【0021】
高速モード時は、第1切換ピン191に油圧を作用させると、第2切換ピン192及びストッパピン193が圧縮コイルばね20の弾発力に抗して押し戻される。これにより、各ピン191・192・193が互いに隣り合うロッカアーム151・152・16同士間にまたがった状態となる(図3参照)。従って、3つのロッカアーム151・152・16が連結されて一体的に揺動可能となり、中央の高速用カム16のプロフィールによって2個の弁171・172が同時に開弁駆動される。
【0022】
図4は他方のバンク2Rに設けられた動弁装置102の概略構成図である。カム軸112には、中央に設けられた作動角及びリフト量の大きい1個の高速用カム13と、その両側に設けられた2個のベース円部分221・222と、さらにその両外側に設けられた作動角及びリフト量の小さい2個の低速用カム121・122とが一体形成されている。そしてカム軸112の下方には、カム軸112と平行なロッカシャフト142上に、上記一方のバンク2Lに設けられたものと同様な3個のロッカアーム151・152・16と、これらを挟む2個のロッカアーム231・232とが、互いに隣接して揺動自在にかつ相対角変位可能に枢支されている。そして各ロッカアーム151・152・16・231・232は、それぞれ対応するカム121・122・13並びにベース円221・222に摺接している。
【0023】
他方のバンク2R側の3つのロッカアーム151・152・16と2つの弁171・172との関係は、上記一方のバンク2Lに設けられた動弁装置111と実質的に同一なので、同一の符号を付してその説明は省略する。以下、一方のバンク2Lの動弁装置111と異なる部分について説明する。
【0024】
カム軸112のベース円部分221・222に対応した第1・第2ロッカアーム151・152にそれぞれ隣接配置された第4・第5ロッカアーム231・232は、各々が低速用カム121・122に対応している。そして第1・第4ロッカアーム151・231と第3・第5ロッカアーム152・232との各組の内部には、組毎にこれらを相対角変位し得る状態、即ち弁休止モードと、一体的に揺動し得る状態、即ち低速モードとに切換えるために、第1〜第3ロッカアーム151・152・16に設けられたものと同様な連結切換装置がそれぞれ設けられている。なお、第1・第4ロッカアーム151・231に設けられたものと第3・第5ロッカアーム152・232に設けられたものとは、左右対称なだけで構成並びに作動要領は共通である。
【0025】
低速用カム121・122に摺接した第4・第5ロッカアーム231・232並びに弁171・172のステム端に当接した第1・第2ロッカアーム151・152には、両者が共にベース円部分に摺接した静止位置において、同心かつ互いに連通する有底の第4・第5ガイド孔241・242が、それぞれロッカシャフト142の軸線と平行に形成されている。そしてこれらのガイド孔241・242内には、駆動ピン251、連結ピン252、及びストッパピン253がそれぞれ摺合している。
【0026】
これら各3つのピン251・252・253は、第1・第2ロッカアーム151・152の各ガイド孔242底と各ストッパピン253との間に設けられた圧縮コイルばね26により、それぞれが第4・第5ロッカアーム231・232に向けて常時弾発付勢されている。
【0027】
ロッカシャフト142内には、3本の給油通路271・272が形成されている(図には2本が描かれている)。これらの内の一方271は、第1ガイド孔181の底部に連通し、他方272は、第4・第5ロッカアーム231・232の各第4ガイド孔241の底部に連通している。
【0028】
なお、第3の給油通路は、一方のバンク2Lの動弁装置101と同様に、ロッカシャフト142と各ロッカアーム151・152・16・231・232との間、各カム121・122・13並びにベース円部分221・222とカムスリッパとの摺接面、及びカムジャーナルへ潤滑油を供給する通路(図示せず)に連通している。
【0029】
低速モード時は、全てのガイド孔181・241の底部に対して油圧を作用させずにおけば、各コイルばね20・26の弾発力により、第1・第4ロッカアーム151・231同士間、並びに第2・第5ロッカアーム152・232同士間に各連結ピン252がまたがり、第1・第4ロッカアーム151・231、並びに第2・第5ロッカアーム152・232が連結されて各組がそれぞれ一体的に揺動可能となる。これと同時に、第1〜第3ロッカアーム151・152・16間の連結は絶たれている。従って、第4・第5ロッカアーム231・232に与えられた低速用カム121・122のプロフィールによる揺動駆動力が第1・第2ロッカアーム151・152に伝達され、2つの弁171・172は、低速用カム121・122のプロフィールに従ってそれぞれ開弁駆動される(図4参照)。
【0030】
高速モード時は、第1切換ピン191に油圧を作用させることにより、各ピン191・192・193が互いに隣り合うロッカアーム151・152・16同士間にまたがった状態となり、3つのロッカアーム151・152・16が連結されて一体的に揺動可能となる。これにより、第1・第4ロッカアーム151・231同士間、並びに第2・第5ロッカアーム152・232同士間の連結状態の如何に拘わらず、高速用カム13によって2個の弁171・172が同時に駆動される(図5参照)。
【0031】
弁休止モード時は、第4・第5ロッカアーム231・232内の各駆動ピン251に油圧を作用させると、各連結ピン252がそれぞれ圧縮コイルばね26の弾発力に抗して第1・第2ロッカアーム151・152内に移動し、第1・第4ロッカアーム151・231同士間、並びに第2・第5ロッカアーム152・232同士間の連結が絶たれる。これにより、低速用カム121・122による第4・第5ロッカアーム231・232の揺動運動は、第1・第2ロッカアーム151・152に伝達されなくなる。これと同時に、第1切換ピン191に油圧を作用させずにおけば、第1〜第3ロッカアーム151・152・16間の連結も絶たれ、高速用カムによる第3ロッカアーム16の揺動運動も第1・第2ロッカアーム151・152に伝達されなくなる。従って、第1・第2ロッカアーム151・152はカム軸112のベース円部分221・222との摺接で静止状態となり、両弁171・172は閉止状態を維持する(図6参照)。
【0032】
他方のバンク2Rのピストン4が全て上死点にある時に閉弁位置で弁作動を休止させれば、同バンク2R側の燃焼室が真空状態となるので、圧縮負荷は作用せず、また吸入負荷も1気圧となり、他方のバンク2Rのピストン4の従動運動による負荷を最低にすることができる。
【0033】
なお、全てのストッパピン193・253を共用可能にするためにピン251・252・253を3分割構成としたが、機能上は連結ピン252とストッパピン253とを一体にしても良い。
【0034】
さて、左右バンク2L・2Rの動弁系慣性質量が同一の場合、図7に示す如く、ピストン系(ピストン4+コネクティングロッド7)の残存二次慣性力によるアンバランス振動(図7中のC線)と、動弁系(吸・排気弁+ロッカーアーム)の残存二次慣性力によるアンバランス振動の水平方向成分(図7中のB線)及び垂直方向成分(図7中のA線)との位相は互いに等しい。従ってこの場合は、ピストン系と動弁系との両残存二次慣性力と相殺する慣性力のベクトルを互いに等しくすれば良いので、本実施例の場合は、左側バンク2Lを上死点に置いたときに、両偏心ウェイト91・92の重心位置が水平面上で右側方となる(図1の状態)ようにし、この時の慣性力のベクトルが、図8中の矢印Pとなるピストン系用等価慣性質量(第1の慣性質量)と、図8中の矢印Vとなる動弁系用等価慣性質量(第2の慣性質量)との両者を合成した図8中の矢印Tとなる等価慣性質量のものを一体化して設ければ良い。このように両者のベクトルを合成すれば、偏心ウェイト91・92の形状が複雑化しないので、バランス軸81・82の製造を容易化し得る。無論、互いに慣性力が異なるピストン系用等価慣性質量のウェイトと、動弁系用等価慣性質量のウェイトとを同一軸上に直列に設けても良い。
【0035】
左右バンク2L・2Rの動弁系の慣性質量が互いに異なるエンジン、つまり上記の如く一方のバンク2Lに図2に示した低速・高速の2モード間の切換装置が設けられ、他方のバンク2Rに図4に示した低速・高速・弁休止の3モード間の切換装置が設けられたエンジンにおいては、通常運転時は、図9に示したように、ピストン系アンバランス振動を基準にした場合、動弁系アンバランス振動の水平方向成分(図9中のB線)がA度だけ進角し、同じく動弁系アンバランス振動の垂直方向成分(図9中のA線)がB度だけ遅角する。つまり図10に示すように、ピストン系用等価慣性質量の慣性力のベクトル(矢印P)に対し、その慣性力のベクトルが水平面から対称に2×A度分ずれた(矢印VH)動弁系水平成分用等価慣性質量と、その慣性力のベクトルが垂直面から対称に2×B度分ずれた(矢印VV)動弁系垂直成分用等価慣性質量とを付加することにより、アンバランス振動を打ち消すことができる。これらの等価慣性質量を有する付加ウェイトは、両者のベクトルを合成して一体化した等価慣性質量のもの(図10中の矢印T)を1つ設ければ良い。このように両者のベクトルを合成すれば、偏心ウェイト91・92の形状が複雑化しないので、バランス軸81・82の製造を容易化し得る。無論、互いに慣性力および位相が異なるピストン系用等価慣性質量のウェイトと、動弁系用等価慣性質量のウェイトとを同一軸上に直列に設けても良い。
【0036】
同様にして、他方のバンク2Rの動弁系を閉弁休止モードにした場合は、吸・排気両弁とこれに直接連結しているロッカアームが運動しないので、垂直成分が自己キャンセルされないため、図11に示すように、垂直成分の位相差が大きくなる。この場合も上記と同様に、ピストン系アンバランス振動を基準にした場合、動弁系アンバランス振動の水平方向成分(図11中のB線)がC度だけ進角し、動弁系アンバランス振動の垂直方向成分(図11中のA線)がD度だけ遅角する。つまり図12に示すように、ピストン系用等価慣性質量の慣性力のベクトル(矢印P)に対し、その慣性力のベクトルが水平面から対称に2×C度分ずれた(矢印VH)動弁系水平成分用等価慣性質量と、その慣性力のベクトルが垂直面から対称に2×D度分ずれた(矢印VV)動弁系垂直成分用等価慣性質量とをバランス軸81・82に付加することにより、アンバランス振動を打ち消すことができる。これらの付加ウェートは、上記と同様に、両者のベクトルを合成して一体化したもの(図12中の矢印T)を1つ設けるようにしても良いし、互いに慣性力および位相が異なるものを同一軸上に直列に設けても良い。なお、ベクトルを合成して一体化した方が、偏心ウェイト91・92の形状が複雑化しないので、バランス軸81・82の製造を容易化し得る点は上記と同様である。
【0037】
ところで、このエンジンは、図13並びに図14に示すように、一対のシリンダバンク2L・2Rを備えたアッパブロック31と、アッパブロック31の下面に接合されたロワブロック32と、ロワブロック32の下面に接合されたオイルパン33とを有している。
【0038】
アッパブロック31とロワブロック32とは、クランク軸5の中心が通る水平面から分割されると共に、その一方の側壁に、バランス軸81・82を収める収容室34が、クランク室35の外方に膨出した態様に形成されている。そして、上記のバランス軸81・82は、バランス軸収容室34内に於けるアッパブロック31とロワブロック32との分割面に対する上下対称な位置に、クランク軸5と平行に延設されている。
【0039】
アッパブロック31並びにロワブロック32は、それぞれ両者を結合した時に連続した壁面となり、かつメインベアリングが形成された5つの軸受壁を備えている。そして図14に示すように、これらのうちのクランク軸方向両端並びに中央に位置する3つの軸受壁361・362・363には、各バランス軸81・82を支持するための軸受孔37がそれぞれ形成されている。これらの軸受孔37には、各バランス軸81・82に設けられたジャーナル部38が嵌合している。
【0040】
メインベアリングが設けられる各軸受壁はもともと剛性の高い部分なので、この部分にバランサ軸81・82の軸受孔37を設けるものとすれば、高い支持剛性が得られる。しかもアッパブロック31とロワブロック32との一方の側壁に、バランス軸収容室34が一体形成されるので、エンジンを大型化せずに済む。
【0041】
これら2本のバランス軸81・82同士は、下側のバランス軸82の軸端に設けられたスプロケット39にサイレントチェーンを介してクランク軸5の回転力を伝達すると共に、両バランス軸81・82のスプロケット39の軸方向内側に嵌着された同一歯数の歯車41 1 ・41 2 同士の噛み合いにより、クランク軸5の2倍の回転速度で互いに逆方向へ回転駆動される。
【0042】
各バランス軸81・82の両端部には、動弁系の残存二次慣性偶力と相殺する慣性力を有する第3ウェイト401・402が、その慣性力の作用方向が互いに逆位相となるように設けられている。
【0043】
【発明の効果】
以上説明した如く、本発明の請求項1に記載の構成によれば、動弁系の残存二次慣性力によるアンバランス振動を打ち消すために専用のバランス装置を設けなくても良いので、部品点数を増加せずに且つ簡単な構造でエンジンの制振効果を高めることができる。また請求項2に記載の構成によれば、上記効果に加えて、偏心ウェイトの形状が複雑化しないので、バランス軸の製造を容易化し得る。さらに請求項3に記載の構成によれば、第3の慣性力を発生するウェイトを最も軸端側に設けたので、偏心ウェイト自体の重量増加を抑制しつつ動弁系の残存二次慣性偶力を打ち消すことができる。従って、エンジン振動をより一層低減する上に大きな効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用されるV型エンジンの模式図
【図2】2モード可変動弁装置の低速モード状態を示す模式図
【図3】2モード可変動弁装置の高速モード状態を示す模式図
【図4】3モード可変動弁装置の低速モード状態を示す模式図
【図5】3モード可変動弁装置の高速モード状態を示す模式図
【図6】3モード可変動弁装置の弁休止モード状態を示す模式図
【図7】左右バンクの動弁装置が等しいエンジンの振動線図
【図8】左右バンクの動弁装置が等しいエンジンのアンバランスと釣り合わせるバランス軸の等価慣性質量の大きさと方向を示す模式図
【図9】左右バンクの動弁装置が互いに異なるエンジンの振動線図
【図10】左右バンクの動弁装置が互いに異なるエンジンのアンバランスと釣り合わせるバランス軸の等価慣性質量の大きさと方向を示す模式図
【図11】左右バンクの動弁装置が互いに異なり、かつ一方のバンクが弁休止状態にあるエンジンの振動線図
【図12】左右バンクの動弁装置が互いに異なり、かつ一方のバンクが弁休止状態にあるエンジンのアンバランスと釣り合わせるバランス軸の等価慣性質量の大きさと方向を示す模式図
【図13】本発明が適用されたエンジンの要部縦断面図
【図14】両バランス軸の軸中心を通る切断面を図13に於ける右方から見た要部断面図
【符号の説明】
P ピストン系用等価慣性質量
H 動弁系水平成分用等価慣性質量
V 動弁系垂直成分用等価慣性質量
1・82 バランス軸
1・92 偏心ウェイト
401・402 第3ウェイト

Claims (5)

  1. バンク狭角が90度で、左右バンクの動弁系の慣性質量が互いに異なり、ピストン系アンバランス振動を基準にして、動弁系アンバランス振動の水平方向成分がA度進角し、動弁系アンバランス振動の垂直方向成分がB度遅角した4サイクルV型8気筒エンジン用バランス装置であって、
    クランク軸の中心を通る水平面を中心として上下に等間隔をおいて配置されてクランク軸により回転駆動されるバランス軸を有し、
    前記バランス軸に、ピストン系の残存二次慣性力を相殺する第1の慣性力と、ピストン系用等価慣性質量の慣性力のベクトルに対し水平面から対称に当該バランス軸の回転方向に2×A度分ずれた慣性力のベクトルを有する動弁系水平成分用等価慣性質量と垂直面から対称に当該バランス軸の回転方向とは逆方向に2×B度分ずれた慣性力のベクトルを有する動弁系垂直成分用等価慣性質量とからなり動弁系の残存二次慣性力を相殺する第2の慣性力とのベクトルを合成した方向に重心位置を有するウェイトが設けられていることを特徴とする4サイクルV型8気筒エンジン用バランス装置。
  2. バンク狭角が90度で、片方のバンクの動弁系を選択的に閉弁休止モードに設定可能で、閉弁休止モード時には、ピストン系アンバランス振動を基準にして、動弁系アンバランス振動の水平方向成分がC度進角し、動弁系アンバランス振動の垂直方向成分がD度遅角した4サイクルV型8気筒エンジン用バランス装置であって、
    クランク軸の中心を通る水平面を中心として上下に等間隔をおいて配置されてクランク軸により回転駆動されるバランス軸を有し、
    前記バランス軸に、ピストン系の残存二次慣性力を相殺する第1の慣性力と、ピストン系用等価慣性質量の慣性力のベクトルに対し水平面から対称に当該バランス軸の回転方向に2×C度分ずれた慣性力のベクトルを有する動弁系水平成分用等価慣性質量と垂直面から対称に当該バランス軸の回転方向とは逆方向に2×D度分ずれた慣性力のベクトルを有する動弁系垂直成分用等価慣性質量とからなり動弁系の残存二次慣性力を相殺する第2の慣性力とのベクトルを合成した方向に重心位置を有するウェイトが設けられていることを特徴とする4サイクルV型8気筒エンジン用バランス装置。
  3. 前記ウェイトは、前記第1の慣性力を発生する第1の慣性質量と、前記第2の慣性力を発生する第2の慣性質量とを前記バランス軸上に一体化して形成されたウェイトであることを特徴とする請求項1または2に記載の4サイクルV型8気筒エンジン用バランス装置。
  4. 前記ウェイトは、前記第1の慣性力を発生する第1の慣性質量と、前記第2の慣性を発生する第2の慣性質量とを前記バランス軸上に直列に配置したものであることを特徴とする請求項1または2に記載の4サイクルV型8気筒エンジン用バランス装置。
  5. 前記バランス軸は、動弁系の残存二次慣性偶力を相殺する第3の慣性力を発生するウェィトを、両端部に有することを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の4サイクルV型8気筒エンジン用バランス装置。
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