以下、この発明の実施の形態について説明する。
図1乃至図31には、この発明の実施の形態を示す。この発明の実施の形態では、発明箇所を含むスクータ型車両の全体について説明する。
この実施の形態のスクータ型車両は、概略的には、車体フレーム1(以下「フレーム1」という)にユニットスイング式エンジン2が上下方向に揺動自在に連結されると共に、フレーム1の前部には前輪3が配設され、前記ユニットスイング式エンジン2の後部に後輪4が支持されている。そして、そのフレーム1等が複数のカバーで覆われている。
その骨格であるフレーム1は、図4乃至図6等に示すように、前方部にヘッドパイプ6が設けられ、このヘッドパイプ6から左右一対のダウンチューブ7が斜め下方に向けて延長されると共に、このダウンチューブ7の上側には一対のタンクレール8がヘッドパイプガセット9を介して前記ヘッドパイプ6に連結されている。
これらダウンチューブ7及びタンクレール8は、左右のそれぞれにおいて、前側から連結パイプ11、第1メンバ12、第2メンバ13にて連結されている。そして、これらダウンチューブ7及びタンクレール8は、後方に向けて略水平に延長され、これらの後端部7a,8aがエンジンブラケット15を介してシートパイプ16に連結されている。
そして、左右一対のシートパイプ16は、後端部16a側がクロスパイプ17及びクロスチューブ18で連結されている。
また、前記エンジンブラケット15は、いわゆる最中形状状を呈し、前記ユニットスイング式エンジン2の懸架ブラケット42が取り付けられる取付部15aを有し、この取付部15aより下方に延長された下端部15bが、前記ダウンチューブ後端部7aに連結され、この下端部15bに、左右のエンジンブラケット15を連結するクロスメンバ21の両端部が接続されている。
また、詳細を後述する収納ボックス23の内部底面には、板状クロスメンバ24が配設され、この板状クロスメンバ24の両端部24aが左右一対のエンジンブラケット15の第1支持ブラケット81にボルト止めされ、この収納ボックス23が共締めされた状態で固定されている。
このようにすれば、パイプ状のクロスメンバを収納ボックス23の下側に通すものと比較すると、板状クロスメンバ24で収納ボックス23を共締めすることで収納ボックス23の取付けを兼ねることができると共に、従来のようにクロスメンバと収納ボックスの底面部と間に隙間を設ける必要がないため、収納ボックス23の容積を拡大することができる。
なお、その収納ボックス23をアルミダイキャスト等で成形して剛性を持たせることにより、その板状クロスメンバ24を廃止したり、又、板状クロスメンバ24を収納ボックス23にインサート成形するようにすることもできる。
一方、フレーム1の前端部に形成されたヘッドパイプ6には、ハンドル28が回転自在に支持され、このハンドル28がハンドルカバー29で覆われている。このハンドルカバー29内には、後輪ディスクブレーキ用のブレーキワイヤ31及び各種ハーネスが配索されている。
このブレーキワイヤ31は、図5及び図7に示すように、ヘッドパイプ6に沿って下方に延長され、ヘッドパイプガセット9の側部に形成された導入孔9aを介して内部に挿通されて後方に延長されている。勿論、シートロックワイヤー等を配索することもできる。
このようにすれば、最もスペースの少ないフレーム1の前部側をすっきりさせることができると共に、ブレーキワイヤ31がタンクレール8内を通るため、専用のクランプ等を用いなくても、後部まで導くことができ、部品点数を削減でき、スペース効率及び組立性等を向上させることができる。さらに、前記導入孔9aは、板金プレスのヘッドパイプガセット9に設けることから、導入孔9a周辺に絞り形状を形成すること等により補強でき、強度的に余裕の少ないヘッドパイプ6近傍からの導入が可能となる。
なお、ダウンチューブ7とヘッドパイプ6との間にヘッドパイプガセット9を配設して、このガセット9に導入孔9aを形成し、この導入孔9aを介してダウンチューブ7内側にブレーキワイヤ31を挿通することもできる。
また、車体の前方には、図1,図8及び図9等に示すように、防風用のスクリーン33が配設され、このスクリーン33の下部33aがステー34にボルト35止めされている。そして、このスクリーン33の下部33aに、略ヘルメット幅Hの走行風を導入する導入口33bが形成されると共に、この導入口33bから導入された走行風を後上方すなわち運転者の頭部(ヘルメット36)側に導く風導板部33cが形成されている。この風導板部33cが、メーターバイザー37の上面部37aと連続している。このメーターバイザー上面部37aには、排水口37bが形成され、この排水口37bの後ろ側には堰部37cが突設され、この堰部37cにより、前記風導板部33cを伝わって吹き上げられた雨水を堰き止めてその排水口37bから排水するようにしている。
また、このメーターバイザー37には、縦壁に開口部37dが形成され、この開口部37dにスピードメータ38が取り付けられている(図8参照)。
このようにすれば、スクリーン33の下部33aに導入口33bを形成して走行風を運転者のヘルメット36に案内することにより、ヘルメット36周辺の空気の流れを変化させて、風切り音の低減を図ることができる。また、走行風の一部が導入口33bを介して滑らかに流れるため、スクリーン33の走行抵抗が減少し、その分、スクリーン33を大きくして、そのウインドプロテクション効果を向上させることができる。
また、スクリーン33の下部33aに導入口33bを形成するという簡単な構造で、スクリーン33の取付構造に制約を与えることがなく、しかも、導風路を短くすることによって効率よく空気を導入できる。
さらに、導入口33bをスクリーン33に形成し、図9の(b)に示すような断面形状とすることにより、スクリーン33断面係数の向上による軽量化及びコストダウンが可能となる。
さらにまた、メーターバイザー37に排水口37bを形成し、且つ、この排水口37bの後ろ側に堰部37cを形成することにより、この排水口37bから雨水を良好に排水できるため、運転者への雨水の飛散を防止できる。
なお、図10に示すように、スクリーン33の風導板部33cの後端部に、角度可変バイザー39を配設することもできる。この角度可変バイザー39は、軸40を中心に回動自在に取り付けられ、図示省略の機構により、この角度可変バイザー39の角度が調整できるようになっており、導入口33bから導入された走行風の向きを可変設定することができるようになっている。
従って、スクリーン33の導入口33bから導入される走行風の流れを、角度可変バイザー39にて調整することにより、運転者の体格に合わせることができ、小型、軽量、低コストでの風切り音の低減を図ることができる。
一方、図2に示すように、前記ユニットスイング式エンジン2は、懸架ブラケット42を介してフレーム1の前記エンジンブラケット15に連結されている。
詳しくは、この懸架ブラケット42は、エンジンブラケット15に2ヶ所の取付部15aにて取り付けられると共に、ピボット軸43にてユニットスイング式エンジン2に取り付けられている。また、このユニットスイング式エンジン2の後端部側には、リヤクッション44の下端部44aが回動自在に取り付けられ、このリヤクッション44の上端部44bがフレーム1に固定されたブラケット45に回動自在に支持されている。
このユニットスイング式エンジン2は、図1等に示すように、シリンダブロック2aのシリンダが車両前方に位置し、そのシリンダ軸線が車両前後方向に沿うように略水平に配設されている。
また、このユニットスイング式エンジン2の前側には、図12に示すように、燃料タンク48がフレーム1に支持されて配設され、又、この燃料タンク48の前側にはラジエター49がフレーム1に支持されて配設されている。
この燃料タンク48は、上側部材48aと下側部材48bとが溶接フランジ48cで接合されて組み付けられ、この上側部材48aの上面部48dは、車両後方に向かうに従って下がるように傾斜しており、又、「燃料タンク48の前面の下部側」である下側部材48bの前面が傾斜面48eとなっている。
また、このラジエター49は、車幅方向の左右にタンク部49a,49bが配設され、これらタンク部49a,49bの間にフィン部49cが形成され、このラジエター49の後方には、ラジエターファン50が配設されている。
そして、そのラジエター49の前側から燃料タンク48等の下側まで延びるアンダーカバー51が配設され、このアンダーカバー51には、前方に立ち上げられた部分にラジエター49に走行風を導入するルーバ部51aが形成され、下面部側には、ラジエター49を通過した熱風を下方に排気する排気口51bが形成されている。
また、前記燃料タンク48前面下部側の傾斜面48eを覆うように、この傾斜面48aに沿う遮熱板51cがアンダーカバー51に一体成形されている。この遮熱板51cは、前記排気口51bまで風を導く導風板としての機能を有している。
さらに、燃料タンク48には、給油口48fが設けられ、この給油口48fの周囲にフィラーカバー53が配設されている。そして、燃料タンク48前面の傾斜面48eより上側、つまり、燃料タンク上側部材48aの前面が、前記燃料タンク48のフィラーカバー53から下方に延長された遮熱部53aで覆われている。
このようなものにあっては、車両前方からアンダーカバー51のルーバ部51aを通り、ラジエター49にて熱変換された熱風は、ラジエター49の後方の燃料タンク48側に送風されるが、この燃料タンク48の前面は、フィラーカバー53の遮熱部53a及びアンダーカバー51の遮熱板51cにより覆われている。従って、熱風が直接燃料タンク48に当たることが無く、遮熱板51cに案内されて排気口51bから下方に排出され、燃料タンク48の温度上昇を抑制することができる。
しかも、このような遮熱板51cや遮熱部53aは既存のアンダーカバー51やフィラーカバー53に形成されているため、専用の断熱部材が不要であり、部品点数や配設工数の増加を防止できる。
また、そのラジエター49の左側タンク部49bの下部からは、後方に向けて供給用冷却水パイプ55が延長され、右側タンク部49aの上部から後方に戻り用冷却水パイプ56が延長されている。これら両冷却水パイプ55,56は、ゴム製で、車体左側を通って配索され、供給用冷却水パイプ55がユニットスイング式エンジン2のウオーターポンプに接続され、戻り用冷却水パイプ56がユニットスイング式エンジン2の冷却水排出口に接続されている。
これら冷却水パイプ55,56の配索途中においては、図12及び図13に示すように、ダウンチューブ7の水平部7bに、車幅方向外側が解放されたボックス形状の支持ステイ58が固定され、この支持ステイ58の水平面部58aの上面側には、2本の冷却水パイプ55,56が固定バンド60により取り付けられ、この冷却水パイプ55,56は車両前後方向に沿って配索されている。また、この支持ステイ58の内部には燃料ポンプ61が配設されている。
そして、この支持ステイ58に、車体カバーであるフートボード63の左右一対の足載せ部63aが支持されている。詳しくは、この足載せ部63aには、下方に向けて荷重受け部63bが突設され、この荷重受け部63bの下端部が、前記支持ステー58の水平面部58aの、前記冷却水パイプ55,56の近傍に当接することにより、支持ステイ58にてフートボード63が支持されている。また、その支持ステイ58の前後には荷重受け部65,66,67がフレーム1に固定されて配設され、これら荷重受け部65,66,67にてもフートボード63が支持されている。なお、その荷重受け部66上には、冷却水パイプ55,56が支持ステイ58と同様に配索されている。
一方、車体の右側には、バッテリー68が配置されると共に、このバッテリー68等から延長された電気配線が配索されている。
このように、冷却水パイプ55,56を支持ステイ58の水平面部58aの上面に配索して固定することで、冷却水パイプ55,56の下部には電装品,燃料ポンプ61等の配置が可能な有効スペースが生まれる。また、支持ステイ58に荷重受け部63bを当接させることにより、冷却水パイプ55,56近傍にて足載せ部63aの荷重を受けられるため、冷却水パイプ55,56とフートボード63のクリアランスLを小さくでき、更に、車体のコンパクト化を図ることができ、この冷却水パイプ55,56には荷重が作用しないため、冷却水パイプ55,56の薄肉化、すなわち軽量化、コストダウンが可能となる。
また、この冷却水パイプ55,56をダウンチューブ7の下方に回す必要が無いため、冷却水パイプ55,56の長さを短くできる。しかも、冷却水パイプ55,56は、フートボード足載せ部63aに沿わせて後方まで通せるため、直線的に配索でき、流動抵抗を小さくできる。
さらに、燃料ポンプ61を燃料タンク48横に置くことで、燃料ホースを短くできると共に、電気系統と燃料系統とを車両の左右に振り分けて配索することで、より安全性を確保することができる。
なお、上記実施の形態では、冷却水パイプ55,56がゴム製であったが、図14に示すように、金属製とすることもできる。そして、この冷却水パイプ55,56の上側にゴム製のダンパ70を介してフートボード63の足載せ部63aを載置するようにしている。
このように足載せ部63aを剛性を有する冷却水パイプ55,56で支持することにより、支持ステイ58を小型化できる。このため、小スペースでフートボード63を支持できる。
また、この剛性を有する冷却水パイプ55,56は、フートボード足載せ部63aの下面に沿って配索されて、足載せ部63aの支持に必要な殆どの部位に位置しているため、フートボード63の支持剛性を向上させることができる。
なお、フートボード63の詳細構造は後述する。
一方、前記燃料タンク48の上側には、図2及び図15に示すように、大型の収納ボックス23が配設され、さらにこの上側には、メインシート72及び、メインシート72とは別体のリヤシート73が配設されている。
詳しくは、燃料タンク48と収納ボックス23とは、上下にラップされており、この収納ボックス23は、以下のように構成されている。
すなわち、収納ボックス23は、メインシート72の下方に位置するメインシート側収納部23aと、リヤシート73の下方に位置するリヤシート側収納部23bとを有している。
そのメインシート側収納部23aには、図16に示すように、前端部にメインシート支持部23cが形成され、このメインシート支持部23cにメインシート72の前端部がヒンジピン75を介して回動自在に取り付けられている。また、このメインシート側収納部23aには、メインシート72により開閉される開口部23dが形成され、この開口部23dは、メインシート72の背もたれ部72aに沿った形状で立ち上げられ、この開口部23dの立上げ部23eは、その背もたれ部72aで開閉されるようになっている。
また、収納ボックス23は、底面部の車両前後方向の中間部、すなわちメインシート側収納部23aとリヤシート側収納部23bとの境界部にくびれ部23fが形成され、このくびれ部23fがユニットスイング式エンジン2の逃げとなっている。このくびれ部23fの前側部分には、図15に示すように、メインシート72の下側に位置するとともに、ユニットスイング式エンジン2のシリンダ前端の前側に対向した位置に、フルフェイス型ヘルメット76が収納可能な大きさの前側収納空間23gが形成されている。
この前側収納空間23gは、図15に示すように、フルフェイス型ヘルメット76が頂部を車両前方に向けた収納可能な形状を呈している。また、収納ボックス23の開口部23dは、フルフェイス型ヘルメット76が収納された状態で、フルフェイス型ヘルメット76の上部が側方視において露出する位置に形成されると共に、開口部23dの縁は、前下がりとなっている。
そして、このくびれ部23fの両側面部には、メインシート72のロック装置77が配設されている。図15に示すように、ロック装置77は、前側収納空間23gにフルフェイス型ヘルメット76が収納された状態で、フルフェイス型ヘルメット76より後方かつリヤシート73より前方に設けられている。
また、ヒンジピン75およびヒンジブラケット部72hは、前側収納空間23gに収納されたフルフェイス型ヘルメット76の上端部より下方かつロック装置77よりも下方に設けられている。
さらに、収納ボックス23の開口部23dは、前側収納空間23gにフルフェイス型ヘルメット76が収納された状態で、車体側方視においてフルフェイス型ヘルメット76の上部をヒンジピン75およびヒンジブラケット部72hとロック装置77との間に露出させるように、前下がりに形成されている。
さらに、リヤシート側収納部23bは、図15等に示すように、前記開口部23dを介して荷物の出し入れが行われる横穴状を呈し、上面部23hの車幅方向に沿う断面が、リヤシート73の断面形状に対応して略U字状を呈している。
そして、くびれ部23fより後ろ側には、図15に示すように、フルフェイス型ヘルメット78が収納可能な大きさの後側収納空間23iが形成されている。勿論、くびれ部23fを介して前側収納空間23g及び後側収納空間23iが連続しているため、収納ボックス23の全長に渡って、長尺ものを収納することもできる。
このような収納ボックス23は、図5等に示すように、フレーム1に固定された第1支持ブラケット81,第2支持ブラケット82及び第3支持ブラケット83に支持されると共に、図18等に示すように、この収納ボックス23の後端部の左右に荷重受け部23kが形成され、この荷重受け部23k近傍にはめ込み部23mが後方に向けて突出されて形成されている。そして、その荷重受け部23kが、フレーム1のクロスパイプ17から突出された収納ボックス支持部85に支持され、又、収納ボックス23のはめ込み部23mに、そのクロスパイプ17が嵌合されることにより配設されている。
このような収納ボックス23にあっては、くびれ部23fを介して前側収納空間23g及び後側収納空間23iを連続させることにより、ユニットスイング式エンジン2との干渉を防止することができると共に、長尺ものを収納でき、且つ、くびれ部23fの前側と後ろ側とに比較的大きな収納空間23g,23iを形成でき、全体として収納空間を大きくできる。
また、メインシート72を背もたれ部72a一体式構造とし、収納ボックス23の開口部23dをメインシート72の背もたれ部72aに沿った形状で立ち上げることにより、奥まったリヤシート側収納部23bへの荷物の出し入れを簡単に行うことができる。
さらに、このように収納ボックス23のメインシート側収納部23aの下側に燃料タンク48を配置することにより、メインシート72の前側のいわゆるまえぐり空間を大きくとることができ、乗降時等に邪魔になることがなく良好である。
また、収納ボックス23のメインシート側収納部23aと燃料タンク48とが上下にラップしているため、車両の重心位置の前後移動が少ない。すなわち、メインシート側収納部23a及び燃料タンク48は共に重量が変化するものであるため、これらが前後に離間した位置に配置されていると、各々の重量がバラ付いたときには、車両の重心位置の前後移動が大きい。これに対して、メインシート側収納部23aと燃料タンク48とが上下にラップしていると、各々の重量がバラ付き、車両前後方向のラップした位置における重量の変化があっても、メインシート側収納部23a及び燃料タンク48が前後に離間した位置に配置されている場合でも、車両の重心位置の前後移動が少ない。
さらに、収納ボックス23の後端部に荷重受け部23k及びはめ込み部23mを形成して、クロスパイプ17にはめ込み等により支持するようにすれば、収納ボックス23のネジ止め部を削減でき、組立効率を向上させることができると共に、そのネジ及びフレーム側の収納ボックス取付ブラケットを廃止できるため、コストや重量を削減できる。
特に、ここでの収納ボックス23は、車両の前後方向に長く、メインシート側収納部23aにてメインシート72の荷重を受けているため、このメインシート側収納部23aは、ボルトにて確実にフレーム1の第1,2,3支持ブラケット81,82,83に取り付けるようにしているが、リヤシート73は収納ボックス23に支持されていないため、収納ボックス23の後側部分は、それ程大きな荷重が作用しないことから、上記のようにボルト止めする必要なく、支持強度を確保することができる。
しかも、大型の収納ボックス23は、長手方向の取付けにおいて、寸法公差が大きくなり、取付位置のズレも大きくなるが、後ろ側を単なる受け構造とすることにより、そのズレを吸収することができる。
一方、前記メインシート72は、図16に示すように、メインシート本体72bと、このメインシート本体72bの下側に配置された固定シートボトム72cとから構成されている。
そのメインシート本体72bは、詳細は省略するが、前記固定シートボトム72cと略同形状で、ボトムプレート72m(剛体の芯材)を有し、このボトムプレート72mの上にクッション材、更にこの上に表皮が設けられて構成されている。そして、このメインシート本体72bには、運転者が着座する着座部72dが形成されると共に、この着座部72dの後ろ側に背もたれ部72aが形成されている。
また、この着座部72dの高さは、後側収納空間23iにフルフェイス型ヘルメット78が収納された場合、このフルフェイス型ヘルメット78の上端より低い位置に設定されている。
また、固定シートボトム72cは、中央部が上方に膨出した形状を呈し、周縁部に防水シール72eが配設されると共に、車両前後方向に沿う長孔72fが計4ヶ所形成され、これら長孔72fにボルト72gが挿入されてメインシート本体72bのボトムプレート72m側に設けられたウエルドナット(図示省略)に螺合されるようになっている。これら長孔72fにより、固定シートボトムに対するメインシート本体72bの車両前後方向の位置調整ができるようになっている。さらに、この固定シートボトム72cには、前端部に、ヒンジブラケット部72hが一体成形され、このヒンジブラケット部72hの縦壁に形成された挿通孔72iに前記ヒンジピン75が挿入されるようになっている。
このヒンジピン75が、収納ボックス23の前端部に形成されたメインシート支持部23cの支持孔23pに挿通されることにより、収納ボックス23に対してメインシート72の前端部が回動自在に取り付けられている。
そして、図2に示すように、このメインシート72を開く方向に付勢するガスダンパー87が、そのメインシート72の前側で、フートボード63のトンネル部63c内に車両前後方向に沿って配設されている。すなわち、図2及び図16に示すように、その固定シートボトム72cのヒンジブラケット部72hの縦壁に回動軸72kが突設され、この回動軸72kにガスダンパー87の後端部87aが回動自在に取り付けられ、又、図5に示すように、前端部87bがフレーム1のクロスパイプ90に固定されたブラケット88に軸89を介して回動自在に取り付けられている。
このようにガスダンパー87をメインシート72の前側に配置することにより、収納ボックス23の横に配置するものと比較すると、収納ボックス23の横幅を広げることができ、開口部23dの開口面積を広げることができる。
また、収納ボックス23内に荷物を出し入れする際に、ガスダンパー87が斜めに横切っていないため邪魔になることがなく、作業性が良好である。
さらに、ガスダンパー87は、メインシート72を開けても見えることがないため、外観品質を確保できる。
さらにまた、メインシート72のヒンジブラケット部72hがガスダンパー87の取付けを兼ねているため、部品点数を削減することができる。
また、運転者の体格に合わせて、着座部72dと背もたれ部72aが一体のメインシート本体72bを前後に位置調整できるため、背もたれ部のみを移動するものと比較すると、座面及び腰部のフィット感及びホールド感が向上し快適性が増す。
また、メインシート本体72b側のみ前後方向に移動できるようにして、収納ボックス23の開口部23dを閉塞する固定シートボトム72cは、開閉動作のみで前後移動できないようにしているため、シール位置がズレるようなことがなく、シール性を確保することができる。
さらに、メインシート本体72bより固定シートボトム72cを大きくできるため、メインシート本体72bの大きさにより制限されることなく、収納ボックス23の開口部23dを拡大できる。
また、このメインシート72をロックする前記左右一対のロック装置77は、メインスイッチ90の操作により解除されるようになっている。すなわち、図19に示すように、メインスイッチ90からシートロック用メインワイヤ92が後方に向けて延長され、このシートロック用メインワイヤ92が中継器93を介して両ロック装置77に接続された一対のシートロック用サブワイヤ94に連結されている。この中継器93は、図21に示すように、ケース93a内にシートロック用メインワイヤ92の端部が円盤93bに連結され、この円盤93bに一対のシートロック用サブワイヤ94が連結され、シートロック用メインワイヤ92を引くことにより、円盤93bが図21中左方向に移動してシートロック用サブワイヤ94が引かれて、左右一対のロック装置77が解除されてメインシート7
2が開かれるようになっている。
このようにメインスイッチ91の操作で複数のロック装置77の解除ができるため、ユニットスイング式エンジン2を停止させることなく、メインシート72の開閉が行える。
また、一対のシートロック用サブワイヤ94をロック装置77から前方に延長し、メインシート72の前方で中継器93に連結することにより、シートロック用サブワイヤ94の曲率を大きくでき、摺動抵抗を小さくできることから、メインスイッチ91のキー操作力を軽くできる。
なお、中継器93の変形例として、図22に示すような位相差タイプがある。これは、シートロック用メインワイヤ92の端部が四角形板93cに連結され、一対のシートロック用サブワイヤ94の端部がこの四角形板93cに連結されている。これら一対のシートロック用サブワイヤ94の一方の端部が四角形板93cの長孔93dに移動自在に連結され、他方のシートロック用サブワイヤ94の一方の端部が四角形板93cの円形孔93eに連結されている。
これによれば、シートロック用メインワイヤ92を引くことにより、四角形板93cを移動させて一対のシートロック用サブワイヤ94を引く際に、長孔93d側に連結された方のシートロック用サブワイヤ94が、もう一方のシートロック用サブワイヤ94より遅延されて引かれることから、一つずつロック装置77を解除することができるため、キー操作時の荷重を分散させることができ、操作性を良好にできる。
一方、前記リヤシート73は、図23に示すように、固定式で車幅方向に沿う断面が略コ字状を呈し、両側面部73aに段差部73bが形成されて、この段差部73bより前側の前端部73cが、前記メインシート本体72の背もたれ部72a内に挿入されるようになっている。その段差部73bから前端までの長さ(ラップ代)L2は、前記メインシート本体72bのスライド長さ以上に形成され、メインシート本体72bが前進限まで移動された状態でも、メインシート本体72bとリヤシート73とがオーバーラップするようになっている。
これにより、メインシート本体72bをスライドさせても、リヤシート73との間に隙間が発生することなく、外観品質を確保することができる。
また、リヤシート73に段差部73bを設けて前端部73cの幅を狭くすることにより、メインシート本体72bの後端部側の幅をそれ程広くする必要がないことから、着座性を良好に保つことができる。
このリヤシート73は、フレーム1の後部に固定されたアシストグリップ96に載置固定されている。
詳しくは、図24に示すように、フレーム1のシートパイプ16には、上方に延びる支持ブラケット97が取り付けられ、この支持ブラケット97の上端部に、ボルト98・ナット99によりアシストグリップ96が取り付けられている。
このアシストグリップ96は、図23に示すように、平面視で略U字状に折曲され、このU字状の内周面部96aには、前記ボルト98・ナット99により固定される固定部96bが計4ヶ所形成され、これら固定部96bより内側に向けてシート支持部96cが延長され、このシート支持部96cにリヤシート73のシートボトム73dが支持されている。また、そのリヤシート73には、シートボトム73dの後端部の下面にフック部73eが形成され、このフック部73eが、アシストグリップ96の被係止部96dの下方に挿入されて係止されるようになっている。
さらに、リヤシート73の前端部73cの内面側には、図23に示すように、内側に向けて突出する雄ネジ部73fが形成され、この雄ネジ部73fが収納ボックス23の縦壁部の貫通孔23qに挿通されて取付ナット100に螺合されることにより取り付けられるようになっている。
さらにまた、そのアシストグリップ96には、前記内周面部96aの外側に立上げ壁96eが形成され、この立上げ壁96eの上端部から外側に向けて把持部96fが延長され、この把持部96fの下側に手を差し込んで掴むことにより、車両を起こすことができるようになっている。
このようにリヤシート73をアシストグリップ96で支持することにより、従来のように、リヤシート73直下に荷重受けのためのフレームのクロスパイプ等を配置する必要がないため、リヤシート73の高さを低くすることができる。また、フレームのリヤシート取付ブラケット等を廃止でき、軽量化及び小型化を図ることができる。
さらに、フレームから延長されたリヤシート取付ブラケットでリヤシートを支持しようとすると、このブラケットはアシストグリップを回避するため、図24に示す支持ブラケット97より車両中央側へ大きく突出させる必要がある。ここで、収納ボックス23を取り外す場合には、リヤシート73を外して行うようにしているが、かかる場合に、その収納ボックス23がそのリヤシート取付ブラケットに干渉しないようにする必要がある。このため、収納ボックス23の幅をそれ程広げることができない。これに対して、リヤシート73をアシストグリップ96に取り付けるようにすることにより、かかるリヤシート取付ブラケットを廃止できるため、このブラケットとの干渉を考慮する必要がないことから、収納ボックス23の幅を拡大することができる。
また、図26に示すように、アシストグリップ96にはテールライト101が支持されている。このテールライト101には、後方に突出する取付片101aが形成される一方、アシストグリップ96の後辺部の内周面部96aに、取付け孔96iが形成され、この取付け孔96iにゴム製のグロメット102が嵌合され、このグロメット102及び前記取付け片96iにボルト103が挿入され、ナット104に螺合されることにより、このテールライト101がアシストグリップ96に支持されている。
これにより、テールライト101は、アシストグリップ96にフローティング状態で支持されることにより、振動によるバルブ切れを抑制できる。また、アシストグリップ96の内側にテールライト101が位置しているため、駐輪場等での車体取回し時にアシストグリップ96によりそのテールライト101が保護されて破損が防止される。
勿論、そのテールライト101の代わりに、リヤフラッシャーランプを配設することもできる。
なお、図27に示すように、ボルト98の軸心O1を鉛直方向に対して角度θ傾けて配設し、リヤシート配設状態では、ボルト98の頭部をリヤシート73の側縁部より内側に位置させるようにする。これにより、その頭部が外部から見えることなく外観品質を確保することができる。また、ボルト98を斜めとすることで、このボルト98の下端が車外側に位置するため、収納ボックス23の容量を増大させることもできる。
また、アシストグリップ96の変形例として、図28に示すようなものがある。すなわち、このアシストグリップ96には、後部側に切欠き部96gが形成され、この切欠き部96gには、左右一対の支持片96hが形成され、これら支持片96hに蓋体106、又はリヤキャリア107が交換可能に配設されるようになっている。
この蓋体106は、その支持片96hに支持されて取り付けられることにより、その切欠き部96gを埋めるように配設され、蓋体106の上面とアシストグリップ96の他の上面とが面一となるように設定されている(図28(a)参照)。
また、リヤキャリア107を使用する場合には、その蓋体106を外してリヤキャリア107をその切欠き部96gを取り付ける。このリヤキャリア取付状態で、このリヤキャリア107上面とアシストグリップ96の他の上面とが面一となるように設定されている(図28(c)参照)。
このようにすれば、アシストグリップ96にリヤキャリア107を装着した場合でも、車体との一体感が得られ、外観及び積載性を良好とすることができる。
また、リヤキャリア107以外にも、タンデムバックレスト、ハイマウントストップランプ、リヤボックス等を交換可能に配設することもできる。
さらに、図29及び図30に示すように、リヤシート73上にはリヤシート用キャリア109が配設され、この後ろ側には、後部キャリア110が配設されている。そのリヤシート用キャリア109は、棒部材にて形成され、これら棒部材の脚部109aがアシストグリップ96の内周面部96aにボルト111止めされている。そして、このリヤシート用キャリア109には、荷物を載せる載置面部109bが形成されている。
また、後部キャリア110は、前方に複数のアーム部110aが延長され、これらの先端部110cがボルトによりアシストグリップ96の取付部96jに取り付けられ、荷物を載せる載置面部110bが前記リヤシート用キャリア109の載置面部109bと同じ高さに設定されている。
リヤシート73を使用しないときには、このリヤシート73上にリヤシート用キャリア109を配設することにより、このキャリア109上に荷物を積載すれば、後部キャリア110に荷物を積載する場合よりも、強度上積載量を増加させることができると共に、操縦安定性も向上する。
しかも、両キャリア109,110の載置面部109b,110bが同じ高さに設定されているため、両載置面部109b,110bに跨る大きな荷物の積載も可能となる。
一方、前記フートボード63は、図31に示すように、車両前後方向に延びる左右の足載せ部63aを有し、この両足載せ部63aの前部側はトンネル部63cにより連結され、後部側が連結部63dにより連結されている。
そのトンネル部63cの下側には、図2等に示すように、燃料タンク46が配設され、このトンネル部63cには、給油リッド113が配置される開口63eが形成され、この給油リッド113を開くことにより、燃料タンク48の給油口48fから燃料を給油できるようになっている。
また、連結部63dは、収納ボックス23のくびれ部23fの下側を通って左右に延長されている。
このように左右の足載せ部63aの後端部側を連結部63dで連結することにより、フートボード63全体としての剛性が向上し、組立性や合わせ性を向上させることができる。
また、左右の足載せ部63a、前側のトンネル部63c、後ろ側の連結部63dでループ状を呈しているため、射出成形を行う場合等に樹脂が回り易く、成形性を向上させることができる。
さらに、その収納ボックス23には、エンジン2に対する逃げの部分をくびれ部23fとすることで、このくびれ部23fより前側と後ろ側とで収納空間を確保することにより、収納スペースを大きくでき、フートボード63の連結部63dは、その収納ボックス23のくびれ部23fを利用して左右に連通させているため、収納ボックス23の容量を減少させることなく、連結部63dを設けることができ、極めて効果的な配置関係とすることができる。
なお、上記実施の形態では、メインシート72の前側にガスダンパー87が配設されているが、これに限らず、シートの後端部にヒンジが設けられたようなものでは、収納ボックスより後ろ側に、車両前後方向に沿ってダンパーを配置し、このダンパーの一端部をシートのヒンジ近傍部位に取り付けることもできる。