JP4374339B2 - ブレーキ用部材の製造方法 - Google Patents
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さらに、上記のブレーキ用摩擦材を構成する繊維複合材料において、前記マトリックスが前記ヤーンから離れるのに従って、珪素の含有比率が上昇する傾斜組成を有していることが好ましく、上記繊維複合材料は窒化ホウ素、ホウ素、銅、ビスマス、チタン、クロム、タングステン及びモリブデンから成る群より選択した1又は2以上の物質を含有してもよい。又、上記のブレーキ用摩擦材は、常温に於ける動摩擦係数が0.05〜0.6であることが好ましい。使用温度が上昇すると共に、常温時と比較して急速に動摩擦係数が上昇することが好ましい。
又、C/Cコンポジットを母材としていることから、軽量であり、エネルギーの損失が少なく、省エネルギーの要請にも沿う。
さらに、母材がC/Cコンポジットであるため、靱性に富み、優れた耐衝撃性、高硬度性を有する。
これは、いわゆるC/Cコンポジットを基本とし、その基本的な構成に改善を加えた新しい概念の材料である。
基本素材として使用するC/Cコンポジットとしては、直径が10μm前後の炭素繊維を、通常、数百本〜数万本束ねて繊維束(ヤーン)を形成し、この繊維束を二次元または三次元方向に配列して一方向シート(UDシート)や各種クロスとしたり、また上記シートやクロスを積層したりすることにより、所定形状の予備成形体(繊維プリフォーム)を形成し、この予備成形体の内部に、CVI法(Chemical Vapor Infiltration :化学的気相含浸法)や無機ポリマー含浸焼結法等により、炭素から成るマトリックスを形成して成るC/Cコンポジットとして知られているものを使用すればよい。本発明に於いて使用するC/Cコンポジットは、上記のヤーン中の炭素繊維以外の炭素成分は、好ましくは炭素粉末であり、特に好ましくは黒鉛化した炭素粉末である。
また、上記繊維複合材料は、好ましくは、マトリックスが珪素からなる珪素相を備えており、この珪素相とヤーンとの間に炭化珪素相が生成している。この場合には、ヤーンの表面が炭化珪素相によって強化されるのと共に、マトリックスの中央部分が比較的に硬度の低い珪素相からなることから、微視的な応力分散が一層促進される。
また、この繊維複合材料は、好ましくは、ヤーン集合体が複数のヤーン配列体を備えており、各ヤーン配列体がそれぞれ複数のヤーンをほぼ平行に二次元的に配列することによって形成されており、各ヤーン配列体が積層されることによってヤーン集合体が構成されている。これによって、繊維複合材料が、複数層のヤーン配列体を一方向へと向かって積層した積層構造を有することになる。
また、好ましくは、マトリックスが、繊維複合材料の中で互いに連続することで三次元網目構造を形成している。この場合において特に好ましくは、マトリックスが各ヤーン配列体においてほぼ平行に二次元的に配列されており、隣り合う各ヤーン配列体中に生成しているマトリックスが互いに連続しており、これによってマトリックスが三次元格子を形成している。
また、隣り合うヤーンの間隙には、100%マトリックスが充填されていてもよいが、ヤーンの間隙のうち一部をマトリックスが充填している場合も含む。
本発明のブレーキ用摩擦材は常温での動摩擦係数が0.05〜0.6と大きく、又、耐酸化性、耐クリープ性、耐スポーリング性を有するSi−SiC系材料から成るマトリックス層を表面に配することにより、C/Cコンポジットの有する低耐酸化性を克服することができ、酸素存在下において高温下に余儀なく曝されるブレーキ用摩擦材としても使用が可能である。かかる条件下での摩耗量は、500℃で1.0%/時間以下、より好ましくは0.6%/時間以下である。又、優れた耐磨耗性をも併せ持つ。
さらに、母材がC/Cコンポジットであるため、靱性に富み、優れた耐衝撃性、高硬度性を有する。従って、従来使用されているC/Cコンポジットが有している特性を保持したまま、同C/Cコンポジットが有する耐高温摩耗性が低いという欠点を克服することができる。
又、C/Cコンポジットは連続した開気孔を有するので、この気孔に対して含浸形成されるSi−SiCは、連続構造をとり三次元網目構造をとる。従って、どの部分を切り出しても、母材となったC/Cコンポジットに比して高い耐磨耗性を有し、かつ本来C/Cコンポジットが持っている高い放熱性、柔軟性なども維持される。
図1は、ヤーン集合体の概念を説明するための概略斜視図であり、図2(a)は図1のIIa−IIa線断面図であり、図2(b)は図1のIIb−IIb線断面図である。図3は、図2(a)の一部拡大図である。
繊維複合材料7の骨格は、ヤーン集合体6によって構成されている。ヤーン集合体6は、ヤーン配列体1A、1B、1C、1D、1E、1Fを上下方向に積層してなる。各ヤーン配列体においては、各ヤーン3が二次元的に配列されており、各ヤーンの長手方向がほぼ平行である。上下方向に隣り合う各ヤーン配列体における各ヤーンの長手方向は、直交している。即ち、各ヤーン配列体1A、1C、1Eの各ヤーン2Aの長手方向は、互いに平行であり、かつ各ヤーン配列体1B、1D、1Fの各ヤーン2Bの長手方向に対して直交している。
各ヤーンは、炭素繊維と、炭素繊維以外の炭素成分とからなる繊維束3からなる。ヤーン配列体が積層されることによって、三次元格子形状のヤーン集合体6が構成される。各ヤーンは、後述するような加圧成形工程の間に押しつぶされ、略楕円形になっている。
本例では、マトリックス8A、8Bは、それぞれ、各ヤーンの表面を被覆する炭化珪素相4A、4Bと、炭化珪素相4A、4Bよりも炭素の含有割合が少ないSi−SiC系材料相5A、5Bからなっている。炭化珪素相中にも珪素を一部含有していてよい。また、本例では、上下方向に隣接するヤーン2Aと2Bとの間にも、炭化珪素相4A、4Bが生成している。
各マトリックス8Aと8Bとは、それぞれヤーンの表面に沿って細長く、好ましくは直線状に延びており、各マトリックス8Aと8Bとは互いに直交している。そして、ヤーン配列体1A、1C、1Eにおけるマトリックス8Aと、これに直交するヤーン配列体1B、1D、1Fにおけるマトリックス8Bとは、それぞれヤーン2Aと2Bとの間隙部分で連続している。この結果、マトリックス8A、8Bは、全体として、三次元格子を形成している。
本発明に係るブレーキ用部材用の材料としては、図5に示すように、C/Cコンポジット15と、C/Cコンポジット15の表面にシリコンが含浸されることによって生成するマトリックス層13とを備えていることが好ましく、特にマトリックス層13の表層部には珪素層14が形成されているものもが好ましい。なお、12は、珪素を含浸させる前のC/Cコンポジット本体の範囲を示す。また、本発明のブレーキ用部材の全体を、上記の繊維複合材料から形成することも好ましい。
Si−SiC材料を母材表面に単にコーティングするだけでは、高温酸化条件下においては両者の熱膨張係数差により、容易にSi−SiC材料から成る層が剥離するが、Si−SiC系材料を繊維複合材料のマトリックス層として形成することにより、繊維の積層方向での強度が増し、剥離を防止でき、ひいてはブレーキ用部材に耐久性を付与することができる。
マトリックス層13におけるSi濃度に傾斜を持たせることにより、強酸化腐食環境での耐食性及び強度、表層部及び内層部の欠陥へのヒーリング機能を著しく向上させることができ、さらには熱膨張係数差による材料の熱応力劣化を防止できる。これは、表層部のSi濃度が、内層部のSi濃度よりも相対的に高いため、発生したマイクロクラックが、加熱中にヒーリングされ、耐酸化性を保持するからである。
又、本発明のブレーキ用部材に用いるC/Cコンポジットは、窒化ホウ素、ホウ素、銅、ビスマス、チタン、クロム、タングステン及びモリブデンから成る群より選択した1又は2以上の物質を含有してもよい。
これらの物質は潤滑性を有するため、C/Cコンポジットから成る母材に含有させることにより、Si−SiC材料が含浸した母材の部分においても、繊維の潤滑性を維持することができ、靱性の低下を防ぐことができる。
尚、例えば、窒化ホウ素の含有量は、C/Cコンポジットから成る母材100重量%に対し、0.1〜40重量%であることが好ましい。0.1重量%未満では窒化ホウ素による潤滑性付与の効果が十分に得られず、40重量%を超える場合は窒化ホウ素の脆さがブレーキ用部材に現れてくるからである。
即ち、炭素繊維の束に対して、最終的には、遊離炭素となり炭素繊維の束のマトリックスとして作用する粉末状のバインダーピッチ、コークス類を包含させ、更に必要に応じてフェノール樹脂粉末等を含有させることによって、炭素繊維束を作製する。炭素繊維束の周囲に、熱可塑性樹脂等のプラスチックから成る柔軟な被膜を形成し、柔軟性中間材料を得る。この柔軟性中間材料を、ヤーン状にし特願昭63−231791号明細書に記載のように、必要量を積層した後、ホットプレスで300〜2000℃、常庄〜500kg/cm2の条件下で成形することによって、成形体を得る。または、この成形体を、必要に応じて700〜1200℃で炭化させ、1500〜3000℃で黒鉛化して、焼結体を得る。
マトリックスの形成に必要な炭素前駆体としては、フェノール樹脂やエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂及びタール、ピッチ等が用いられるが、これらはコークス類、金属、金属化合物、無機及び有機化合物等を含んでいてもよい。
このように、焼成時(即ち、Siの溶融、含浸前の段階)不活性ガス雰囲気にすることにより、無機ポリマーないし無機物のセラミックス化への変化に伴うCO等の発生ガスを焼成雰囲気より除去し、また大気中のO2等による外部からの焼成雰囲気の汚染を防止することによりその後にSiを溶融、含浸して得られる複合材料の気孔率を低く維持することができる。
本発明のブレーキ用部材は、大型輸送機械等のブレーキ用部材として、使用できる。
尚、各例によって得られた複合材料は、以下に示す方法よりその特性を評価した。
テストピースをジグにセットして100rpmで10分間回転させ、相手材(SUJ、10mm球)を2kgの荷重Fp(N)でテストピースに押し付け、その際の摩擦力Fs(N)を測定した。摩擦係数の値は下式により算出した。
摩擦係数μ=Fs/Fp
テストピースをジグにセットして100rpmで10分間回転させ、相手材(SUJ10mm球)を2kgの荷重Pでテストピースに押し付け、試験前の重量Wa(mg)と試験後の重量Wb(mg)を測定した。テストピースの密度ρ(g/cm3)より、磨耗量V(mm3)を下式により算出した。
V=(Wa−Wb)/ρ
比磨耗量Vs(mm3/(N・km))は、磨耗量V(mm3)、試験荷重P(N)及び摺動距離L(km)より、下式にて算出した。
Vs=V/(P・L)
テストピースを1150℃の炉内(1%O2、99%N2)へ放置し、200時間後の重量の減少率を測定することにより、耐酸化性を評価した。
テストピースに圧縮荷重を加え、下記の式により算出した。
圧縮強さ=P/A
(式中、Pは最大荷重時の荷重、Aはテストピースの最小断面積を表す。)
所定量のテストピースを大気中で、400℃、100時間保持した後、重量を測定し、試験開始前の重量から試験終了後の重量を引き算し、減少重量を求め、これを試験開始前の重量に対する減少率として算出した。
テストピースの厚さhの4倍の距離を支点間距離として3点曲げを行い、下式により算出した。
層間セン断強さ=3P/4bH
(式中、Pは破壊時の最大曲げ荷重、bはテストピースの幅を表す。)
テストピースの厚さhの40倍の距離を支点間距離Lとして3点曲げを行い、荷重−たわみ曲線の直線部の初期の勾配P/σを用いて、下式により算出した。
曲げ弾性率=1/4・L3/bh3・P/σ
(式中、bはテストピースの幅を表す。)
Max:20MPa〜Min:5MPaの繰返し応力を10万回印加し、内部にマイクロクラックを発生させた後、900℃で2時間アルゴン雰囲気下でアニールし、圧縮強度の測定を行った。
大気中で充分な気流の流れを与えつつ、10℃/分の割合で昇温しながら、試料の重量の変化を測定し、試料の重量が5%の減少を示す温度を求める。
10mmの厚さを有するC/Cコンポジット母材に、Si−SiC系材料から成るマトリックス層を配した繊維複合材料を製造し、これを用いてブレーキ用部材を製造した。Si−SiC系材料を母材に含浸させて成形させた繊維複合材料層の表面からの厚さは50μmとした。
C/Cコンポジットは以下の方法で製造した。
炭素繊維を一方向に引き揃えたものにフェノール樹脂を含浸させたプリプレグシートを炭素繊維が互いに直交するように積層し、ホットプレスで180℃、10kg/cm2で樹脂を硬化させた。次いで、窒素中で2000℃で焼成し、密度1.0g/cm3、開気孔率50%のC/Cコンポジットを得た。
実施例1と同様にC/Cコンポジットを製造した。得られた、C/Cコンポジットを平面研削盤により縦60mm、横60mm、厚さ5mmの大きさに切断加工した後、800#砥石で平面研削仕上げし、ブレーキ用部材とした。得られたブレーキ用部材の研削面における表面粗さはRa=25μmであり、平面度は真直度で6μmであった。得られたブレーキ用部材の性能について実施例1と同様方法により評価してその結果を表1に併せて示す。
Si−SiC材料を含浸させることにより、C/Cコンポジットに比べ、圧縮強さが大きくなるのは、炭素繊維の間にSiC材料が入り込むことによるものと考えられる。
Claims (1)
- 粉末状のバインダーピッチ、コークス類及びフェノール樹脂を含有した炭素繊維束の周囲に、熱可塑性樹脂から成る被膜を形成して柔軟性中間材料を得、この柔軟性中間材料をヤーン状にして所定量を積層した後、ホットプレスで300〜2000℃、常庄〜500kg/cm 2 の条件下で成形して成形体を得、又はこの成形体を焼成して焼結体を得、この成形体又は焼結体とSiとを、その合計重量1kg当たり0.1NL以上の不活性ガスを流しつつ1100〜1400℃、炉内圧0.1〜10hPaで1時間以上保持した後、炉内圧0.1〜10hPaで1450〜2500℃に昇温することにより、少なくとも炭素繊維の束と炭素繊維以外の炭素成分とを含有するヤーンが層方向に配向しつつ三次元的に組み合わされ、互いに分離しないように一体化されているヤーン集合体と、このヤーン集合体中で隣り合う前記ヤーンの間に充填されている、Si−SiC系材料からなるマトリックスとを備えている繊維複合材料からなるブレーキ用部材を製造する方法。
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