JP4368368B2 - ガラス塊の製造方法、その製造装置および光学素子の製造方法 - Google Patents
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Description
(1)上下型:多孔質(非接触状態でプレスし冷却)
多孔質部材からなる凹部成形面を有する下型を用い、成形面から高圧ガスを噴き出した状態で溶融ガラス塊を浮上保持し、冷却過程で同様な構造の上型で溶融ガラスをプレスして溶融ガラスを成形型の形状に変形させ、溶融ガラスと型の界面にガスクッションを形成
しながら非接触状態で冷却し、薄肉、又は近似形状の光学ガラス素子を成形する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この方法においては、以下に示すような問題がある。
凹部成形面に衛星状に形成した細孔からガスを噴出させながら成形面にガラスを受け、溶融ガラスを浮上させながら冷却する過程で、緻密質上型でプレスしてプリフォーム上面を成形する方法が知られている。しかしながら、この方法では、ゴブの内部と外周部の温度差が大きくなるため、扁平に近いゴブの成形では、ゴブ下面中央にヒケが発生しやすい。また溶融ガラス塊の温度が急激に低下する過程でプレス成形するため、プレスの条件出しが難しい。その他、複数の成形型を循環使用してプレス成形する場合には、型毎に形状がばらつく問題がある。また下型上で浮上し揺動している溶融ガラスをプレスするため、偏肉したプレス品が得られやすい。
上記(2)と同様な下型で溶融ガラス塊を浮上させ、冷却過程で多孔質材料からなる上型からガスを噴き出させた状態で溶融ガラス塊の上面をプレス成形する方法が知られている。この方法は、上型構造を除き上記(2)と同一である。したがって上記(2)と同様の問題が起こる。その他、上型によるプレスが非接触で行われるため、プレス型との熱交換により溶融ガラスを冷却することができない。したがって、間欠的なプレス法では、停留時間内でプレス面形状を固定することが難しく、プレス型形状に近いプリフォームを得にくいという問題がある。
(1) 流出パイプから流出する溶融ガラス流を下型で受け、ガラス流を切断して下型上に溶融ガラス塊を得、下型上で略浮上させながら冷却してガラス塊を成形する工程において、
下型上の溶融ガラス塊を上型に直接接触させた状態でプレスし、溶融ガラス塊の形状を固定後、プレス面に生じた表面のうねりを回復させ、自由表面化することを特徴とするガラス塊の製造方法、
(2) 初回のプレスを、溶融ガラス流を受け、キャスト直後から下型上で溶融ガラス塊の連続的な揺動が開始されるまでに行う上記(1)項に記載のガラス塊の製造方法、
(3) 溶融ガラス流を受け、キャスト直後から下型上で溶融ガラス塊の連続的な揺動が開始されるまでに、上型と下型を接近させ、上型により溶融ガラス塊の揺動を規制し、上下型と溶融ガラス塊の中心出しを行った後でプレスを開始する上記(1)項に記載のガラス塊の製造方法、
(4) プレス表面の自由表面化を、溶融ガラス塊内部からの熱伝導により行う上記(1)〜(3)項のいずれか1項に記載のガラス塊の製造方法、
(5) 溶融ガラス塊の熱量の放射を抑制する保温手段を用い、溶融ガラス内部からの熱伝導によるプレス面の自由表面化を補助する上記(1)〜(4)項のいずれか1項に記載のガラス塊の製造方法、
(6) プレス表面の自由表面化を、溶融ガラス塊内部からの熱伝導と外部からの加熱を組み合わせて行う上記(1)〜(5)項のいずれか1項に記載のガラス塊の製造方法、
(7) ガラス塊が精密プレス成形用プリフォームである上記(1)〜(6)項のいずれか1項に記載のガラス塊の製造方法、
(8) 複数の下型を流出ノズルに順番に供給し、連続的にキャスト、上型によるプレス成形、下型上での成形品の冷却、下型からの取り出しを繰り返すことによりガラス塊を製造するに際して、
上下型の内、少なくともどちらか一方を相対的に移動させ、上下型間の間隔を接近、離間させる駆動方式にNC制御方式を用い、かつ下型毎にプレス成形時のプレス厚みを補正する上記(1)〜(7)項のいずれか1項に記載のガラス塊の製造方法、
(9) ガラス塊が精密プレス成形用プリフォームである上記(8)項に記載のガラス塊の製造方法、
(10) 上記(7)又は(9)項に記載の方法によりガラス塊を製造し、得られたガラス塊を精密プレス成形することを特徴とする光学素子の製造方法、
を提供するものである。
本発明のガラス塊の製造方法は、流出パイプから流出する溶融ガラス流を下型で受け、ガラス流を切断して下型上に溶融ガラス塊を得、下型上で略浮上させながら冷却してガラス塊を成形する工程において、下型上の溶融ガラス塊を上型に直接接触させた状態でプレスし、溶融ガラス塊の形状を固定後、プレス面に生じた表面のうねりを
回復させ、自由表面化することを特徴とする。
本発明は前記プレスを複数回行う態様(第1の態様という)と、前記プレスを1回のみ行う態様(第2の態様という)がある。なお、本願明細書では曲率半径のことをアールということがある。
この工程は、溶融ガラスと上型の位置合わせ、揺動の規制工程である。本工程は、任意工程であり、下型上で溶融ガラス塊の揺動が開始するまでに初回のプレスを行う場合は必要なく、初回のプレス開始を遅らせて溶融ガラス塊の揺動が開始した後にプレスを行う場合に有効な工程である。
当該プレス前工程においては、キャスト位置から退避直後の第2停留位置において(後述の図1、図2参照)、下型成形部で溶融ガラス塊の揺動が開始する以前に上型と下型を接近させて停止し、上型で溶融ガラス塊と上型の中心を合わせると共に溶融ガラスの揺動を規制する。
上記溶融ガラス塊の揺動を規制することにより、得られるガラス塊の偏肉を防止することができる。
この工程は、溶融ガラス塊中の温度分布の均一化工程である。
当該予備プレス工程においては、前記のプレス前工程後、タイミングを計り更に上下型を接近させ、溶融ガラス塊を所定時間プレスする。なお上型は溶融ガラスとの融着を防ぐため、風冷又は水冷等の手段で強制的に冷却しておく。所定時間プレス後は上下型を離間させ、溶融ガラス塊の形状を自然回復させる。なお上型の位置は、形状が自然回復した後の溶融ガラス塊の揺動を規制できる位置で保持することが望ましい。すなわち、形状が自然回復した後の溶融ガラス塊の上面が僅かに触れるか触れないかの位置に保持することが望ましい。
う。低温の上型で短時間予備プレスすると、溶融ガラス上面側が冷却されるとともに、溶融ガラス中央側のガラスが外周側に移動する。この移動によりガラス塊の中央と外周で熱交換が起こる。また溶融ガラス下面側も、プレスにより下型と瞬間的に接触し冷却される。
この工程は、溶融ガラスの全体形状の固定工程である。
当該本プレス工程においては、溶融ガラスを予備プレスと同じ上型で所定時間プレスする。本プレスでは、溶融ガラス塊の形状を変形させ固定することを目的とする。
具体的に説明すると、前記の予備プレスにより温度分布が均一化された溶融ガラス塊を、溶融ガラス塊上で保持した上型で再度プレスする。本プレスでのプレス時間は、プレス面の回復が生じる時間に調節する(長すぎると面回復が生じない)。本プレス直後のプレス面には軽微な冷却皺が生じるが、この表面の皺を次工程の表面回復工程で回復させる。
この工程はガラス塊表面の回復工程である。
強制冷却されている低温の上型でプレスしたプレス面には、プレス表面の急冷収縮による皺状の凸凹が発生する。但しこの皺状の凸凹は、プレス時間を加減することにより自然に自由表面に回復させることができる。つまり、プレスでの急激な温度低下が表面近傍に偏るため、プレス終了後は溶融ガラス内部の熱でプレス表面層が再加熱され自由表面化する。ガラス内部の熱量だけで自由表面化が困難な場合は、プレス面を外部から加熱することにより自由表面化することも可能である。
この工程は、ガラス塊形状の再固定工程である。
当該追加プレス工程においては、本プレス工程で形状を固定しきれない場合(形状の戻りが大きい場合)に必要に応じ行うプレスである。このプレスでは予備プレスや本プレス工程で使用する低温の型ではなく、プレスしても冷却皺が発生しない温度まで加熱した上型を用いる。
第2の態様におけるプレス前工程の内容は上述した第1の態様におけるものと同様である。また、プレス前工程が任意工程である点も第1の態様と同様であり、下型上で溶融ガラス塊の揺動が開始するまでにプレスを行う場合は必要のない工程である。
本プレス工程、表面回復工程の内容も、上述した第1の態様におけるものと同様である。
上記第1の態様は、ガラス塊の下型に面する面(下面という)の中央にヒケによる窪みが生じる場合に採用することができるのに対して、第2の態様は、1回のプレスでもガラス塊の下面中央にヒケによる窪みが生じない場合に採用することができる。
上記第1の態様における予備プレス工程は、溶融ガラス中の温度分布を均一化する効果を有するため、ヒケの防止には極めて有効であるが、下面中央部のヒケが問題になるかどうかは、下型凹部の底面の曲率半径、下型温度、ガラスの流出速度、下型が同じであれば成形容積などの影響を大きく受け、具体的には、下型凹部の底面の曲率半径が大きいほど、下型温度が低いほど、成形容積が小さいほど、ガラスの流出速度が大きいほど、ガラス塊の下面中央部のヒケは大きくなる。従って、ガラス塊の下面中央部にヒケが生じないような場合には、第2の態様におけるように、必ずしも予備プレス成形を行う必要はない。
第2の態様はプレス回数が1回であるため、複数回プレスよりも条件パラメータが減り
、条件出しの時間を短縮化できる。また、第1の態様に比べ、下型(または上型)の上昇下降が1回で済み、上昇下降時間を含むプレス時間を実質的に短くすることができる。そのため、プレス位置での停留時間を短縮でき、ガラスの流出速度の増加に対応することもできる。
以上のように、得られるガラス塊において、ヒケが問題にならない場合は第2の態様が望ましく、ヒケが問題になる場合には、第1の態様を採用すればよい。
このような本発明のガラス塊の製造方法は、特に精密プレス成形用プリフォームの製造に適用することができ、具体的には、中心肉厚が薄く、直径/中心肉厚比が大きい薄肉のプリフォーム、片面のアールが大きいかまたはほぼ平面である薄肉のプリフォーム、両面アールが大きいかほぼ平面である薄肉のプリフォーム、片面が凹面である近似形状のプリフォームなどの製造に適用することができる。
本発明のガラス塊の製造装置は、複数の下型を流出ノズルに順番に供給し、連続的にキャスト、上型によるプレス成形、下型上での成形品の冷却、下型からの取り出しを繰り返すガラス塊の製造装置において、上下型の内、少なくともどちらか一方を相対的に移動させ、上下型間の間隔を接近、離間させる駆動方式にNC制御方式を用い、かつ下型毎にプレス成形時のプレス厚みが補正可能であることを特徴とする。
NC制御方式による駆動方式としては、ボールネジとサーボモータを組合せ、これを駆動させるものを挙げることができる。
ても、溶融ガラスと上下型の熱交換、そして外周と内部での熱交換に大きな差が生じ、面回復工程を経た成形品の寸法バラツキは2〜5倍にも拡大する。つまりプレス厚みによって、面回復工程での寸法変化量が大きく変わるからである。同様に、溶融ガラス内の温度分布の均一化の程度もプレス厚みによって大きく影響を受ける。そのため、冷却中にヒケないものと、ヒケ気味なものが混在してしまうことになる。そこで本発明では、上下型の少なくとも一方の駆動にNC制御方式を採用し、下型毎にプレス厚みを補正する方法を用いる。この方法により、成形装置や下型や上型といった成形型の寸法誤差の影響をキャンセルすることが可能となる。一方、下型温度や下型からの噴出ガス量などのバラツキも、成形品の寸法バラツキ原因となる。しかし、プレス厚みの個別調整を行うことで、これらのバラツキ要因は充分に補正可能となる。このような場合、下型温度や噴出ガス量などのバラツキの影響を補正するため、各型でのプレス厚みは全く同じに揃える必要はない。つまり、成形品の寸法が揃うようにプレス厚みを個別に微調整すれば良い。
前記したプレス法により各下型で3回ずつ成形したプリフォームの中心厚みを測定する。次に全プリフォームの中心厚みの平均値を求め、各下型で成形したプリフォームの厚みの平均値との差を求める。この寸法差と同じ分だけ下型毎にプレス厚みを補正する。例えば中心厚みの平均より200μmだけ厚い場合は、プレス厚みを200μm薄くする。この補正操作を全ての下型で行い、再び中心厚みを測定する。測定の結果に応じて補正値を再設定し、最終的に各下型で成形したプリフォームの厚みバラツキが所望の精度に入るまで調整する。このようにして、下型毎の寸法バラツキを均一化した後、中心厚みの絶対値が規格内に入るようにプレス厚みを一括調整する。このように、プレス厚みは全下型で一括調整する方法と個別に微調整する方法を備えることが望ましい。
本発明の光学素子の製造方法は、前述の本発明のガラス塊の製造方法で作製された精密プレス成形用プリフォームを精密プレス成形することを特徴とする。
ってなんら限定されるものではない。
なお、図1は、実施例および比較例で用いた円形の成形テーブルにおける下型の配置図である。 図2は、実施例におけるキャスト後のプレス工程の説明図である。
また、以下の実施例においては、上型または下型を相対的に移動させることにより上下型間の間隔を接近させまたは離間させる駆動方式として、いずれもNC制御方式を用い、ボールネジとサーボモータを組合せ、これを駆動させることにより行った。
溶融・冷却・固化後に屈折率[nd]:1.806、アッベ数[νd]:40.7のホウ酸ランタン系の光学ガラスとなるガラス塊を1000℃に加熱した白金ルツボに投入してルツボ内で溶解後、1300℃で清澄、撹拌し均一なガラス融液を得た。次に、ルツボ底部に連結し温度制御した流出パイプから0.79kg/hrの流出速度でガラス融液を流出させた。一方、図1のように、円形の成形テーブルの外周上に12個の下型を均等に配置した。下型の上部には、溶融ガラスをキャストする凹部(直径:φ17mm、底面アール:30mm)が加工されている。凹部は平均穴径が20μmの多孔質材料からなり、多孔質材料表面からは0.2L/分の窒素が均一に噴き出している。なお型本体部はヒーターで加熱し、凹部の表面温度を320℃とした。
各プリフォームの中心厚みの測定結果である。但し、12個の下型で連続的にプレス成形しているため、表1のように下型毎に中心厚みが200〜280μmばらついていた。その一方で、同じ下型で成形したプリフォーム間のバラツキは、10〜110μmと小さかった。
2回目のプレス時間を1.5秒から1.3秒に変更した以外は、実施例1と全く同じ方法と条件でプリフォームを成形した。表2は本条件で成形した各プリフォームの中心厚みの測定結果である。表2のように、2回目のプレス時間短縮によりプレス後の厚みの変化が増大し、実施例1(表1)より平均厚みが133μm厚くなった。また下型毎のバラツキも320〜410μmに増大している。一方で、同じ下型で成形したプリフォーム間のバラツキは、10〜90μmと小さかった。
実施例2では2回目のプレス時間が短いため、プレス後の形状変化が大きめとなる。そのためプレス型(上型)よりプリフォームプレス面のアールがやや小さくなる。特に外周部のアール形状は非球面となり、アールが小さくなる傾向が強い。そこでこの形状差を小さくするため、第3停留位置で追加プレスを行った。なお追加プレスを行う以外は実施例2と同条件とした。なお追加プレス用の上型は、2回目のプレスまで使用した上型と同規格であるが、プレス面に硬質クロムメッキが施されている。このメッキは型を加熱するため、酸化防止やガラスの融着防止のために行う。同じ効果を得る膜としては、ニッケルメッキや、CrN、TiN、TiAlN等の窒化物単層膜又は、2種類以上の窒化物を組み合わせた複層膜、そして高温耐性が強いDLC膜等が使用できる。追加プレス用のプレス型はヒーターで250℃以上に加熱し、前記した収縮による凸凹が生じないようにする。なお本実施例では、追加プレスの上型を320℃に加熱した。追加プレスのタイミングは、2回目のプレスで生じたプレス面の凸凹が自然回復後に行う。
実施例1で説明した2回目のプレス時間を2.8秒間とした以外は実施例1と全く同一条件で成形した。その結果、プレス面にはプレスによる冷却により凸凹が生じ、プレス面の自然回復は起こらなかった。そこで本実施例では、第3の停留位置でプレス面を外部から加熱した。なお加熱は、750℃に加熱した窒素ガスを5秒間(10L/分)吹き付けることで行った。 ガスヒーターとしては、コイル状に巻き断熱材で保温した白金管を通電加熱し、その中に窒素ガスを通すことで行った。他の方法としては、通電加熱のかわりに白金管を高周波加熱する方法も使用できる。一方、輻射熱でプレス面を加熱する場合は、加熱物をプレス面の上部に保持する方法が使用できる。加熱物としては、白金板自身を通電や高周波により加熱する方法や、カンタル線などの一般的なヒーターで加熱した板を使用しても良い。その他、赤外線ヒーター等もプレス面の加熱に使用できる。
って、実施例1の方法で得られるプリフォームよりも、プレス面の形状精度が得られやすい。
成形型(上下型)とプレス成形条件を変更した以外は実施例1と全く同じ装置とガラスを用い、以下のようにプリフォームを成形した。
まず下型の凹部寸法は開口部直径がφ17mmで底面曲率半径が20mmのものに変更した。但し、凹部は実施例1と同じ多孔質材料からなり、凹部表面から0.25L/分の窒素ガスを噴きださせ、型本体部はヒーターで370℃に加熱した。一方、上型は直径φ13mmの耐熱ステンレスからなり、下面に凹状でアール60mmの球面研磨加工を施した。また上型の内部は中空構造とし、空洞内に15L/分の窒素ガスを流し空冷した。なおガラス融液の流出速度やガラス流の切断・分離方法は実施例1と同じである。
下型の凹部に469mm3の溶融ガラスをキャスト後、下型を第2の停留位置に停止させた直後に上型を高速で降下させ、溶融ガラス塊の上端から0.2mm上方に上型の下面を停止させた。次に下型内での溶融ガラスの揺動が停止するタイミング(下型停止から0.8秒)で上下型の中心部の距離(プレス厚み)が3.90mmになるまで下型を低速で上昇させ、溶融ガラス塊を3.6秒間プレス成形した。プレス後は上下型をプレス前の位置に戻し、プレス解除から2.77秒後に成形テーブルをインデックス回転させ、下型を第3の停留位置に移動させた。このプレス操作により溶融ガラス塊は扁平化し、プレス直後のプレス面には冷却収縮による軽微な凸凹が生じた。しかし表面の凸凹は、下型が第3停留位置に停止してから1.6秒後にほぼ自然消失し、プレス面は自由表面と遜色が無い滑らかな面に回復した。その後の第4〜第9停留位置ではプリフォーム上面に7〜10L/分の窒素ガスを吹きかけて風冷し、第10停留位置で成形品を取り出した。
上記のプレス工程により得られたプリフォームは、平均直径がφ13.9mmで中心厚みが4.12mmの扁平な碁石に似た形状となった。またプレス面の平均曲率半径は40mmと平面に近く、下型に面していた面の平均曲率半径は27mmであり、ヒケによる窪みは見られなかった。
1回のプレスでも得られたプリフォームにヒケが生じなかった主な理由は、下型の底面曲率半径であると考えられることから、開口部直径がφ17mmで、底面アールが17mm、23mm、27mmと3種類の下型を用意し、それぞれ3.6秒間の1回プレスでプリフォームを成形した。その結果、底面曲率半径が17mmと23mmの下型で成形したプリフォームは、それぞれ下面曲率半径が22mmと30mmとなり、ヒケによる窪みは見られなかった。しかしながら、底面曲率半径が27mmの下型で成形したプリフォームは下面がヒケ気味となり平面状となった。
溶融ガラス塊の成形容量とプレス成形条件のみを変更した以外は実施例1と全く同じ成形型(上下型)と成形装置、そしてガラスを用い、同じ流出速度(0.79kg/hr)で以下のようにプリフォームを成形した。
まず、実施例1よりプリフォーム容量を大きくするため、キャストの開始から下型急降下によるガラス流切断までの時間を9.63秒(実施例1は7.17秒)に延長し、下型上に630mm3の溶融ガラス塊を得た。次に下型を第2の停留位置に移動させ停止させた直後に上型を高速で降下させ、溶融ガラス塊上端から0.1mm上方に上型の下面を停止させた。次に下型内での溶融ガラスの揺動が停止するタイミング(下型停止から0.8秒)で上下型の中心部の距離(プレス厚み)が4.3mmなるまで下型を低速で上昇させ、溶融ガラス塊を4.90秒間プレス成形した。プレス後は上下型をプレス前の位置に戻し、プレス解除から3.93秒後に成形テーブルをインデックス回転させ、下型を第3の停留位置に移動させた。このプレス操作により溶融ガラス塊は扁平化し、プレス直後のプレス面には冷却収縮による軽微な凸凹が生じた。しかし表面の凸凹は、下型が第3停留位置に停止してから2.8秒後にほぼ自然に消失し、プレス面は自由表面と遜色が無い滑らか
な面に回復した。その後の第4〜第9停留位置ではプリフォーム上面に7〜10L/分の窒素ガスを吹きかけて風冷し、第10停留位置で成形品を取り出した。
上記のプレス工程により得られたプリフォームは、平均直径がφ16.2mmで中心厚みが4.47mmの扁平な碁石に似た形状となった。またプレス面の平均アールは28mmと上型のアールに近く、下型に面していた面の平均アールは27mmとなりヒケによる窪みは見られなかった。
1回のプレスでも得られたプリフォームにヒケが生じなかった主な理由は、成形容量であると考えられることから、成形容量を520mm3、570mm3と変更し、それぞれ3.5秒間、3.9秒間の1回プレスによりプリフォームを成形した。その結果、両プリフォームとも碁石状となり、下面側にヒケによる窪みは見られなかった。但し、成形容量が570mm3では下面側アールが31mm、成形容量が520mm3では下面側アールが48mmと、成形容量が小さくなるに従って下面側のアールが大きくなる傾向が見られた。この下面側アールの変化は、下面側のヒケ傾向によるものと思われる。
実施例1〜6で成形されたプリフォームを再加熱、軟化して窒素雰囲気中において成形型により精密プレス成形して、非球面レンズなどの光学素子を作製した。得られた光学素子はいずれも要求される性能を満たすものであった。
各光学素子の光学機能面には、必要に応じて反射防止膜などの光学薄膜を形成した。
Claims (10)
- 流出パイプから流出する溶融ガラス流を下型で受け、ガラス流を切断して下型上に溶融ガラス塊を得、下型上で略浮上させながら冷却してガラス塊を成形する工程において、
下型上の溶融ガラス塊を上型に直接接触させた状態でプレスし、溶融ガラス塊の形状を固定後、プレス面に生じた表面のうねりを回復させ、自由表面化することを特徴とするガラス塊の製造方法。 - 初回のプレスを、溶融ガラス流を受け、キャスト直後から下型上で溶融ガラス塊の連続的な揺動が開始されるまでに行う請求項1に記載のガラス塊の製造方法。
- 溶融ガラス流を受け、キャスト直後から下型上で溶融ガラス塊の連続的な揺動が開始されるまでに、上型と下型を接近させ、上型により溶融ガラス塊の揺動を規制し、上下型と溶融ガラス塊の中心出しを行った後でプレスを開始する請求項1に記載のガラス塊の製造方法。
- プレス表面の自由表面化を、溶融ガラス塊内部からの熱伝導により行う請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス塊の製造方法。
- 溶融ガラス塊の熱量の放射を抑制する保温手段を用い、溶融ガラス内部からの熱伝導によるプレス面の自由表面化を補助する請求項1〜4のいずれか1項に記載のガラス塊の製造方法。
- プレス表面の自由表面化を、溶融ガラス塊内部からの熱伝導と外部からの加熱を組み合わせて行う請求項1〜5のいずれか1項に記載のガラス塊の製造方法。
- ガラス塊が精密プレス成形用プリフォームである請求項1〜6のいずれか1項に記載のガラス塊の製造方法。
- 複数の下型を流出ノズルに順番に供給し、連続的にキャスト、上型によるプレス成形、下型上での成形品の冷却、下型からの取り出しを繰り返すことによりガラス塊を製造するに際して、
上下型の内、少なくともどちらか一方を相対的に移動させ、上下型間の間隔を接近、離間させる駆動方式にNC制御方式を用い、かつ下型毎にプレス成形時のプレス厚みを補正する請求項1〜7のいずれか1項に記載のガラス塊の製造方法。 - ガラス塊が精密プレス成形用プリフォームである請求項8に記載のガラス塊の製造方法。
- 請求項7又は9に記載の方法によりガラス塊を製造し、得られたガラス塊を精密プレス成形することを特徴とする光学素子の製造方法。
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