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JP4359567B2 - 視覚再生補助装置及びその作製方法 - Google Patents

視覚再生補助装置及びその作製方法 Download PDF

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Description

本発明は患者の視覚を再生するための視覚再生補助装置に関する。
従来、半導体で集積された回路を持った精密機器を体内に埋植することによって疾患の治療や機能代行、身体情報の取得等を行う装置が種々知られている。このような生体に埋植される集積回路は、生体と直接接触することで、生体から半導体への浸出などが起き、回路の機能に悪影響が出るため、生体と半導体が直接触れない工夫がされている。例えば、集積された半導体を金属等のケースに入れ、集積回路に接続される入出力等の配線を外部に残し、ケースを密封(ハーメチックシーリング)して生体に埋植する技術が知られている(特許文献1参照)。
近年、失明治療方法の一つとして、電極を有する装置を眼内等に埋植し、視覚を形成する細胞に対して電極から刺激パルスを出力して刺激することにより、失われた視覚機能の一部を代行させる視覚再生補助装置の研究がされている。このような視覚再生補助装置は、眼内に置くための体内装置を有し、この体内装置には網膜を構成する細胞を電気刺激するための電極と、それを制御する集積回路からなる制御部が設けられたものが知られている(特許文献2参照)。
特開平9−173477号公報 米国特許593555号明細書
このような視覚再生補助装置(体内装置)は、眼内という限られた空間の中に設置するため、できるだけ小型化する必要がある。また、網膜を構成する細胞を多数の電極により電気刺激するため、従来の金属ケース等に集積回路を収める構成では、電極に接続する配線をケースから多数引き出すこととなり、高度な技術を必要とする。
上記従来技術の問題点に鑑み、埋植する装置自体をできるだけ小さくすることができるとともに、配線数が多数であっても容易に密封することのできる視覚再生補助装置及びその作製方法を提供することを技術課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
(1) 患者の視覚を再生する視覚再生補助装置において、網膜を構成する細胞に電気刺激を与えるための刺激電極と、前記刺激電極に送る刺激電流を制御する半導体集積回路からなる制御手段と、該制御手段及び前記刺激電極を設置し,前記制御手段と刺激電極とを電気的に接続するための配線が形成された基板と、を有し、さらに該基板に設置された前記制御手段は生体安全性を有する貴金属にてその周囲がメッキ処理されていることを特徴とする。
(2) (1)の視覚再生補助装置において、前記制御手段は前記半導体集積回路の周囲に形成され、メッキ処理時における陰極となる電極部を備えることを特徴とする。
(3) (2)の視覚再生補助装置において、前記電極部は前記制御部の半導体基板と略同電位であることを特徴とする視覚再生補助装置。
(4) (3)の視覚再生補助装置において、前記制御手段は生体適合性の高い樹脂で包埋埋されていることを特徴とする。
(5) (1)〜(4)の視覚再生補助装置において、前記刺激電極と前記制御手段の半導体基板との間に刺激電流極性を反転させるためのスイッチを有し、前記スイッチがオンした場合に前記刺激電極と前記半導体基板が略同電位となる回路構成を備えることを特徴とする。
(6) 視覚再生補助装置の作製方法において、網膜を構成する細胞に電気刺激を与えるための刺激電流を制御するための制御回路を半導体上に集積することよりなる制御ユニットに前記制御回路以外の部分にメッキ処理を行う第1ステップと、該第1ステップによりメッキが施された前記制御ユニットを,体内に設置する基板に前記制御回路の形成面を向けて接合する第2ステップと、を有することを特徴とする。
(7) (6)の視覚再生補助装置の作製方法において、前記第1ステップの前に、前記半導体基板と略導通するとともに前記制御回路を取り囲む電極を前記制御ユニットの制御回路形成面上に所定の高さを持って形成するステップを有し、さらに前記第1ステップにおいて前記制御回路を取り囲む電極を陰極としてメッキ処理をすることを特徴とする。
本発明によれば、体内装置の外部配線が多数あっても容易に密封でき、かつ、体内装置全体を小さくつくることができる。
本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は視覚再生補助装置の外観を示した概略図、図2は実施の形態で使用する視覚再生補助装置における体内装置を示す図、図3は図2に示した体内装置を患者の眼内に設置した状態を示した概略図である。
1は視覚再生補助装置であり、図1及び図2に示すように、外界を撮影するための体外装置10と網膜を構成する細胞に電気刺激を与え、視覚の再生を促す体内装置20とからなる。体外装置10は、患者が掛けるバイザー11と、バイザー11に取り付けられるCCDカメラ等からなる撮影装置12と、外部デバイス13、一次コイルからなる送信手段14等にて構成されている。
外部デバイス13には、CPU等の演算処理回路を有するパルス信号変換手段13aと、視覚再生補助装置1(体外装置10及び体内装置20)の電力供給を行うためのバッテリー13bが設けられている。パルス信号変換手段13aは、撮影装置12にて撮影した被写体像を画像処理し、さらに画像処理データを視覚を再生するための電気刺激パルス用データに変換する処理を行う。送信手段14は、パルス信号変換手段13aにて変換された電気刺激パルス用データ、及び後述する体内装置20を駆動させるための電力を電磁波として体内装置20側に伝送(無線送信)することができる。また、送信手段14の中心には磁石15が取り付けられている。磁石15は送信手段14によるデータ伝送効率を向上させるとともに後述する受信手段24との位置固定にも使用される。
バイザー11は眼鏡形状を有しており、図1に示すように、患者の眼前に装着して使用することができるようになっている。また、撮影装置12はバイザー11の前面に取り付けてあり、患者に視認させる被写体を撮影することができる。
図2に示す体内装置20は、複数の電極27が形成される基板21、ケーブル22、体外装置10からの電磁波を受信する2次コイルからなる受信手段23、基板21上に設置される内部デバイス(制御ユニット)24、磁石25、不関電極26等にて構成されている。基板21は、生体適合性の高いポリイミド等を所定の厚さにおいて折り曲げ可能な材料に長板状に加工したものをベース部とし、この上にリード線21aを適宜配線することによって形成されている。基板21の配線は、このベース部に周知のフォトレジスト法、真空蒸着法やスパッタ法等を用いて、耐腐食性の金属材料を蒸着させることによって、図2に示すリード線21aとなる導電層を形成する。導電層の形成後、マスクを取り除き、導電層を被覆するように所定の厚さを有した絶縁層を塗布や貼り付け等により形成する。絶縁層に使用する材料としては、例えば、生体適合性の高いポリイミド等の絶縁材料を用いることができる。なお、形成されたリード線21aの末端位置の絶縁層にRIE(reactive ion etching)等の手法によって孔をあけ、リード線21aの末端を露出させ、ここに電極材料を積層(蒸着)、或いはバンプ形成により、電極27や、内部デバイス24と基板との電気的な接合部分を形成する。このような工程を経てリード線21aや電極27が形成された基板21が製作される。また、リード線21aを立体的に配線したい場合には、これらの工程を複数回行うことによって、立体配線を形成することができる。
電極27は、図2(a)に示すように、基板21の長手方向に沿ってマトリックス状の等間隔にて複数個配置、または2次元的に等間隔で互い違いになるように複数個形成され、電極アレイを形成している。なお、前述したように、基板21上に形成される電極27は、金、白金等の生体適合性、耐食性に優れた導電性を有する材料にて基板21に形成したリード線末端に形成される。
また、本実施形態の視覚再生装置は、患者眼の網膜を構成する細胞を好適に刺激することが可能な位置に電極を設置することができるように、基板上における内部デバイス24及び電極27等の設置位置が考慮される。例えば、強膜E3上に体内装置20を設置して、網膜E1を構成する細胞を刺激するものとした場合、図2(b)に示すように、基板21における内部デバイス24の設置面と反対側の面に電極27を複数個形成する構成とすればよい。このような構成により、体内装置20の眼球への設置時に、内部デバイス24が網膜E1、脈絡膜E2に当接しないため、設置時の手術的手技も比較的簡単になる。
なお、視覚再生補助装置における体内装置20の設置位置は、前述したように、基板21を、強膜E3に位置させて、強膜側(脈絡側)から網膜E1を構成する細胞を電気刺激する構成としたが、これに限るものではない。患者眼の網膜を構成する細胞を好適に刺激することが可能な位置に電極を設置することができればよい。例えば、体内装置を患者眼の眼内(網膜上や網膜下)に置き、電極が形成されている基板先端部分を網膜下(網膜と脈絡膜との間)や網膜上に設置させるような構成とすることもできる。また、電極27が形成されている基板21の先端部分を、強膜E3と脈絡膜E2との間に位置させて、強膜側(脈絡側)から網膜E1を構成する細胞を電気刺激する構成とすることもできる。なお、基板21は、例えばタックや生体適合性の高い接着剤等にて強膜E3に固定保持させることもできる。
一方、受信手段23は、体外装置10に設けられた送信手段14からの信号(電気刺激パルス用データ信号及び電力)を受信可能な生体内の所定位置に設置される。例えば、図1に示すように、患者の側頭部の皮膚の下に受信手段23を埋め込むとともに、皮膚を介して受信手段23と対向する位置に送信手段14とを設置しておく。受信手段23の中心には、送信手段14と同様に磁石25が取り付けられているため、埋植された受信手段23上に送信手段14を位置させることにより、磁力によって送信手段14と受信手段23とがくっつき合い、送信手段14が側頭部に保持されることとなる。
内部デバイス(制御ユニット)24は、受信手段23にて受信された電気刺激パルス用データと電力とを分ける回路、電気刺激パルス用データを基に視覚を得るための電気刺激パルスに変換するための変換回路や、変換した電気刺激パルスを各電極27へ送るための電気回路、等のいくつかの制御回路を有し、体内装置20の制御手段となる半導体集積回路(LSI)からなる。このような構成を有する内部デバイス24を用いて電気刺激パルス用データを処理し、変換した電気刺激パルスを各電極27から出力させる。なお、各電極27は、基板21に形成された複数のリード線によって、内部デバイス24と各々独立して接続されている。また、内部デバイス24は受信手段23にて電力を受信し、利用している。なお、基板21上に設置されている内部デバイス24は、その周囲を生体に安全な金や白金等の貴金属にてメッキ処理されて高い機密性を確保しており、内部デバイス24に配線されている各種回路へ体液等が侵襲するのを抑制している。
電線22は、絶縁性を有する生体適合性の高い材料にて被覆されており、受信手段23と内部デバイス24とを電気的に接続するために用いられる。なお、電線22は、側頭部に埋め込まれた受信手段23から側頭部に沿って皮膚下を患者眼に向かって延び、患者の上まぶたの内側を通して眼窩に入れられる。眼窩に入れられた電線22は、図3に示すように強膜E3の外側を通り、基板21に設置された内部デバイス24に接続される。
不関電極26は、内部デバイス24に接続されており、図3に示すように、その先端は眼球外から毛様体扁平部付近を貫通して眼内まで伸びている。このとき、不関電極26の先端は、網膜E1を挟んで基板21と向き合うように眼内に置かれる。不関電極26不関電極の材質としては、金、銀、白金等の電極として一般的に用いられるものが使用できる。
また、このような体内装置20は、電極27と不関電極の先端以外の構成部分には、図示なき生体適合性の高いコーティング剤(シリコーン、パリレンや生体適合性の高いポリイミド等)にて被膜されており、内部デバイス24を被覆するメッキとともに装置内への体液等の浸潤を抑制することができる。
次に、内部デバイス24のメッキ処理の詳細について図4に示し、以下に説明する。なお、内部デバイス24は、基板21に取り付ける前の状態を示している。
図4(a)は、図2で示す内部デバイス24の概略構成を示した断面図であり、図4(b)は、図4(a)で示した内部デバイス24を回路形成面側から見たときの模式図である。100は半導体基板であり、その上面には集積回路を機能させるパターン配線103や、ハターン配線103を覆うように絶縁層104が形成されている。パターン配線103は網膜を構成する細胞を刺激するため電極27から流される刺激電流の制御等を行う制御回路の配線である。101は内部デバイス24と基板21とを構造的及び機能的(電気的)に接続するためのボンディングパッドであり、102はボンディングパッド101やパターン配線103の周囲を囲むとともにパターン配線103とは不要な導通をしない外周配線である。本実施形態では外周配線102は、半導体基板100と同電位となるように形成される。ボンディングパッド101は半導体基板100と同電位かほぼ同電位になる場合がある。また、本実施形態ではこの外周配線102は、図4(b)に示すように矩形状にて形成され、その内側にパターン配線103(集積回路)が形成されている。また、パターン配線103の全面に窒化シリコン等からなる絶縁層104が形成され、配線間や配線と外部との不要な導通を防ぐものとしている。そのため、パターン配線103は半導体基板100と絶縁層104との間に挟まれた形態をとっている。
ボンディングパッド101や外周配線102には、電極や集積回路形成に用いられる公知の金属が用いられ、これらは半導体プロセス技術として周知なフォトリソグラフィー法により、半導体基板100上に形成される。なお、ボンディングパッド101や外周配線102は、内部デバイス24と基板21とを電気的に接合するために、所定の厚み(バンプ)を持たせておく必要がある。このため、アルミ蒸着等にて形成された厚みが薄いパッドや配線上に、さらに金、白金等の配線材料をメッキ処理や蒸着処理等により堆積させ、所定の厚み(バンプ)を持たせるものとしている。なお、所定の厚み(高さ)とは、フリップ実装(接合)時の圧力によるダメージが配線パターン103、絶縁層104や基板21にかかりにくい程度に空間ができる厚みであればよい。
なお、外周配線102は、内部デバイス24をメッキ処理する際の電極(陰極)となる。また、本実施例では図5(b)の半導体基板100上の最外周に設けられた外周配線102と基板21の基板側外周配線201とが導通し、半導体基板100と基板側外周配線201を同電位としているが、これに限るものではない。その電位差は内部デバイス24に制御され電極27より流れる電流が異常な場合であっても、その電流が生体に流れず、すぐに半導体基板100に流れ込む範囲であればよい。
図4(c)は、図4(a)で示した内部デバイス24に、所定のメッキ処理を施した状態を示した図である。内部デバイス24を金や白金等の生体適合性、耐腐食性に優れた貴金属がイオン化した電解液が満たされている電解液漕中に設置するとともに、内部デバイス24の外周配線102を陰極として、別に電解液漕中に設置した陽極との間にて所定の電圧を印加し、電解メッキ処理を行う。印加する電圧は、陽極、陰極及び半導体基板100のみに電流が流れるだけの電圧とされ、ボンディングパッド101等の他の部分には電流は流れない状態するのが好ましいがこれに限るものではない。陽極、陰極及び半導体基板100以外に電流が流れるような印加電圧であっても、ボンデンィングパッド101がメッキで覆われ、その厚みが増すことでボンディングパッド101同士が接触し導通を起こすような印加電圧でなければよい。電解液漕に所定の電圧が印加されると、陰極とした外周配線102及び同電位におかれる半導体基板100に電界溶液中に解けている金属が析出し、金属薄膜を形成する。このようなメッキ処理を行うことにより、図示するように、外周配線102及び絶縁層104が形成されていない半導体基板100部分が、金属被膜105で覆われることとなる。外周配線102を陰極として用いる場合、外周配線102に陰極化させる電極を接触させてメッキ処理を行う。この時、電極の接触する部分は電解液と接触しないため、メッキがされない。従って、陰極化する電極を外周配線102に接触させる場所はフリップ実装時に密封される外周配線102の内側や上側が好ましい。またはメッキ処理を数回に分けて行い、接触させる電極の位置をその都度変えてもよい。この方法では、メッキで覆われない部分ができないため好ましい。
図5(a)は、基板21の断面の構成を示した模式図である。図示するように、基板21は、ベース部200と、ベース部200上に形成されるリード線21a、図4(b)で示した内部デバイス24の外周配線102と接合する基板側外周配線201、絶縁層202が形成されている。なお、基板側外周配線201の形成形状は、内部デバイス24の外周配線102の形成形状(本実施形態では矩形状)と同じ形状を有している。
このような基板21の作成は、前述したように、このベース部にマスク(フォトレジスト)を重ね、真空蒸着方やスパッタ法等を用いて、耐腐食性の金属材料をベース部に蒸着し、リード線21aや基板側外周配線201を形成することによって作成される。なお、図5(a)に示すように、リード線21aの一端、及び基板側外周配線201は、内部デバイス24と基板21の表面から、ある程度突出して状態で形成されている。また、リード線21aの他端は、ベース部200を貫通して裏面に表れ、図2で示した電極27との接合部となる。
このように作成されている基板21とメッキ処理された内部デバイス24とを、図5(b)に示すように接合(フリップ実装)する。接合は基板21外部に露出しているリード線21a及び基板側外周配線201と、内部デバイス24の外周配線102(金属被膜付き)及びボンディングパッド101の接続部分とを超音波や高圧力または熱を用いた圧着等することにより行われる。各接合部分は金属で形成されているため、金属同士の圧着で接合度が増し、気密性が向上する。
したがって、内部デバイス24は、基板21と対向する面以外はメッキ処理されており、基板21と対向する面は、メッキ処理されていない代わりに、外周配線102と基板側外周配線201とが高気密性を保って接合されていることによって、内部デバイス24に体液等の侵襲が行われ難くなっている。また、300は圧着時の空間を埋め、空気を排除するためのフィラーであり、接着剤等が用いられる。フィラー300は熱や高圧力を利用した圧着時に接着剤としての働き、内部デバイス24と基板21とをしっかりと接合させる。圧着後、電極27以外の基板21全体を、生体適合性の高い樹脂(シリコーン、パリレン、生体適合性の高いポリイミド等)で包埋する。樹脂での包埋により、さらに内部デバイス24は、生体と接触しないように密封されることとなる。なお、本実施例では、基板側外周配線201が半導体基板100上の外周配線102と同様の矩形型に作成される。外周配線102と基板側外周配線201はフリップ実装時に矩形型同士が重なることにより、内部デバイス24と基板21との接合性を向上させ、生体から内部デバイス24への浸潤や内部デバイス24からの半導体成分や半導体作製時の薬品等の流出を接合部分においても防ぐことができる。また、本実施形態では半導体基板上に半導体基板100と導通する素材で、外周配線102を設け、そこをメッキ処理時の陰極として用いたが、これに限るものではない。メッキ処理で陰極として用いられるものは半導体基板100と導通すればよいため、外周配線102を設けず、半導体基板上のボンディングパッド101のうちで半導体基板100の電位(基板電位)となっているものや半導体基板上でフリップ実装時に生体に接さない部分を陰極としてメッキ処理をすることも可能である。半導体基板上に外周配線102を設けずにメッキ処理をする場合は、刺激電極が設けられている基板21側に矩形状の配線(バンプ)を設け、フリップ実装時に内部デバイス24側のパターン配線103やボンディングパッド101等を囲むようにすればよい。
以上説明した工程処理により、内部デバイス24がメッキ処理により金属の薄膜で覆われ、さらに樹脂で包埋されることによって、生体への半導体成分や製造時の薬品等の流出、内部デバイス24への体液等の侵襲を防ぐことができる。また、このような内部デバイス24を金属ケース等に収めた上で樹脂で包埋することがないため、装置全体を小さく構成できる。なお、本実施形態では、メッキ処理に電解メッキ法を用いたが、これに限るものではなく、例えば無電解メッキ法を用いてもよい。
以上のような構成を備える視覚再生補助装置において、視覚再生のための動作を図6に示す制御系のブロック図を基に説明する。撮影装置12により撮影された被写体の撮影データ(画像データ)は、パルス信号変換手段13aに送られる。パルス信号変換手段13aは、撮影した被写体を患者が視認するために必要となる所定の帯域内の信号(電気刺激パルス用データ)に変換し、送信手段14より電磁波として体内装置20側に送信する。
また同時に、パルス信号変換手段13aは、バッテリー13bから供給されている電力を前述した信号(電気刺激パルス用データ)の帯域と異なる帯域の信号(電力)に変換し、電磁波として電気刺激パルス用データと合わせて体内装置20側に送信する。
体内装置20側では、体外装置10より送られてくる電気刺激パルス用データと電力とを受信手段23で受信し、内部デバイス24に送る。内部デバイス24では受けとった信号から、電気刺激パルス用データが使用する帯域の信号を抽出する。内部デバイス24は、抽出した電気刺激パルス用データに基づいて、各電極27から出力させる電気刺激パルスを形成し、電極27から電気刺激パルスを出力する。各電極27から出力する電気刺激パルスによって網膜を構成する細胞が電気刺激され、患者は視覚を得る。また、内部デバイス26は、受信手段24により受信した電力を基に電気刺激パルスや内部デバイス24の駆動等の体内装置20を駆動させるための電力を得る。
次に内部デバイス24と基板21との接合によって形成される保護回路について以下に説明する。
図7は本実施形態の視覚再生補助装置と生体との間にて流れる電流経路を模式的に示した回路図であり、保護回路を形成している。なお、前述した構成と同機能を有するものには同符号を付し、詳細な説明は省略する。50は生体を示し、網膜を構成する細胞や強膜、硝子体等の組織をまとめて模式的に示し、51は外部から電磁誘導により供給された電力を内部デバイス24に供給する電源部分(2次コイル、整流回路等)を模式的に示したものである。図中の破線で囲まれた部分は、図6で示した内部デバイス24の構成要素の一部を示している。52及び53は内部デバイス24に作り込まれた刺激電流のパラメータを制御する制御手段としての定電流源であり、54〜57は刺激電流の極性を制御するためのスイッチである。なお、100は半導体基板であり、本実施形態では半導体基板100の電位を基板電位としている。
図示するように、不関電極26と電源51との間には、定電流源52及びスイッチ54が設けられ、電極27と電源51との間には、定電流源53及びスイッチ55が設けられている。また、不関電極26(電極27)と半導体基板100との間には、スイッチ56(スイッチ57)のみが設けられており、不関電極26(電極27)と半導体基板100との間の抵抗は実際上ない。なお、本実施形態では不関電極26(電極27)と半導体基板100との間にはスイッチのみを設けるものとしているが、これに限るものではなく、スイッチのオン時に、不関電極26(電極27)と半導体基板100との電位差が充分小さくできればよい。
また、ここでは生体50に電流を流すために、スイッチ54と57、スイッチ55と56がそれぞれペアでオン・オフする相補的な構成としている。したがって、それぞれのスイッチがペアでオン・オフすることにより生体50に流れる電流の極性が反転される。
以上のようなH型ブリッジ回路の構成を持つことで、半導体基板100と不関電極26、電極27はスイッチ56、57を介してのみ接続されているため、刺激電流出力時に、不関電極26と刺激電極27のどちらかが必ず基板電位となる。この時、半導体基板100と不関電極26または刺激電極27との電位差が無くなる。このため、半導体基板100が生体50に接触(導通)するような異常があっても、電流は半導体基板100に流れ込み、予測しない電流が生体50に流れることがない。なお、本実施例では、上記の電位差をゼロとしているが、これに限るものではない、異常があった場合でも生体50に電流が流れない程度に小さければよい。また、電位差には極性は関係なく、どちらの極性であっても電位差の絶対値が充分小さければよい。
本実施形態における視覚再生補助装置の外観を示した概略図である。 本実施形態の視覚再生補助装置における体内装置の構成を示した図である。 患者眼に体内装置を設置した状態を示した図である。 内部デバイスのメッキ処理工程を示す図である。 基板と内部デバイスを接合する工程を示す図である。 本実施形態における視覚再生補助装置の制御系を示したブロック図である。 内部デバイスと電源及び生体の等価回路を示すである。
符号の説明
1 視覚再生補助装置
10 体外装置
11 バイザー
13 外部デバイス
20 体内装置
21 基板
21a リード線
24 内部デバイス
26 不関電極
27 電極
50 生体
51 電源
52、53 定電流源
54、55、56、57 スイッチ
100 半導体基板
101 ボンディングパッド
102 外周配線
103 パターン配線
104 絶縁層
105 メッキ
200 ベース部
201 基板側外周配線
202 絶縁層
300 フィラー

Claims (7)

  1. 患者の視覚を再生する視覚再生補助装置において、網膜を構成する細胞に電気刺激を与えるための刺激電極と、前記刺激電極に送る刺激電流を制御する半導体集積回路からなる制御手段と、該制御手段及び前記刺激電極を設置し,前記制御手段と刺激電極とを電気的に接続するための配線が形成された基板と、を有し、さらに該基板に設置された前記制御手段は生体安全性を有する貴金属にてその周囲がメッキ処理されていることを特徴とする視覚再生補助装置。
  2. 請求項1の視覚再生補助装置において、前記制御手段は前記半導体集積回路の周囲に形成され、メッキ処理時における陰極となる電極部を備えることを特徴とする視覚再生補助装置。
  3. 請求項2の視覚再生補助装置において、前記電極部は前記制御部の半導体基板と略同電位であることを特徴とする視覚再生補助装置。
  4. 請求項3の視覚再生補助装置において、前記制御手段は生体適合性の高い樹脂で包埋されていることを特徴とする視覚再生補助装置。
  5. 請求項1〜4の視覚再生補助装置において、前記刺激電極と前記制御手段の半導体基板との間に刺激電流極性を反転させるためのスイッチを有し、前記スイッチがオンした場合に前記刺激電極と前記半導体基板が略同電位となる回路構成を備えることを特徴とする視覚再生補助装置。
  6. 視覚再生補助装置の作製方法において、網膜を構成する細胞に電気刺激を与えるための刺激電流を制御するための制御回路を半導体上に集積することよりなる制御ユニットに前記制御回路以外の部分にメッキ処理を行う第1ステップと、該第1ステップによりメッキが施された前記制御ユニットを,体内に設置する基板に前記制御回路の形成面を向けて接合する第2ステップと、を有することを特徴とする視覚再生補助装置の作製方法。
  7. 請求項6の視覚再生補助装置の作製方法において、前記第1ステップの前に、前記半導体基板と略導通するとともに前記制御回路を取り囲む電極を前記制御ユニットの制御回路形成面上に所定の高さを持って形成するステップを有し、さらに前記第1ステップにおいて前記制御回路を取り囲む電極を陰極としてメッキ処理をすることを特徴とする視覚再生補助装置の作製方法。



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