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JP4349719B2 - アルミニウム青銅焼結軸受材料およびその製造方法 - Google Patents

アルミニウム青銅焼結軸受材料およびその製造方法 Download PDF

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JP4349719B2
JP4349719B2 JP2000128838A JP2000128838A JP4349719B2 JP 4349719 B2 JP4349719 B2 JP 4349719B2 JP 2000128838 A JP2000128838 A JP 2000128838A JP 2000128838 A JP2000128838 A JP 2000128838A JP 4349719 B2 JP4349719 B2 JP 4349719B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高強度で耐焼付性、耐摩耗性、耐腐食性に優れたアルミニウム青銅焼結軸受材料およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の青銅焼結軸受材料は、Cu合金の粉末を帯鋼上に散布後、還元性雰囲気を有する焼結炉で一次焼結を行い、この焼結材を圧延して合金層の密度を上げ、再び焼結炉で二次焼結を行い製造する方法が一般的である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この青銅焼結軸受材料は、軸受運転中に表面の摺動面側に硫化や酸化が起こるが、青銅の硫化膜や酸化膜は低強度であり厚く成長し摺動表面より容易に取り去られるため、耐焼付性、耐摩耗性、耐腐食性が充分ではない。
【0004】
そのため、従来の青銅焼結軸受材料で耐摩耗性向上のため硬質粒子を含有するものもあるが、摺動面での硬質粒子と相手側との摩擦熱により硬質粒子に接する青銅の腐食が激しく発生し硬質粒子の脱落が起こりやすい。
【0005】
また、アルミニウム青銅合金粉末や、Cu合金とAlやAl合金の混合粉末を用いる試みもあるが、アルミニウム青銅合金粉末を用いる場合は、焼結雰囲気に還元力の強い水素ガスを用いてもアルミニウム青銅粉末表面の酸化膜は還元されないため、粉末同士や、粉末と帯鋼との焼結が殆ど進まず、実用的なアルミニウム青銅焼結軸受材料は得られない。
【0006】
Cu合金とAlやAl合金の混合粉末を用いる場合は、焼結炉中でCu合金の粉末表面の還元ガスによる酸化膜の還元が充分に起こる前に、融点の低いAlやAl合金が溶解しCu合金の粉末表面に拡散するが、この拡散したAlがCu合金の粉末の酸化膜を還元し、表面に還元ガスでも還元できない強固な酸化膜を作るため粉末同士や、粉末と帯鋼との焼結が不十分となり、やはり、実用的なアルミニウム青銅焼結軸受材料は得られない。
【0007】
さらに、鋳造法により鋼裏金なしのアルミニウム青銅ソリッド軸受を造る製造方法もある。一般的な軸受形状としてブシュ形状があるが、ブシュ形状の軸受は軸受運転中におけるハウジングからのブシュの抜け出しや軸との共回りを防止するため、ハウジング内径よりブシュ外径を若干大きくする締め代で固定されている。そのため、軸受には周方向の圧縮応力が発生し設計上軸受が降伏しない様に、軸受の厚さや幅が決定されるが、アルミニウム青銅ソリッド軸受は、鋼裏金付ではないので降伏応力は低く、締め代により発生する周方向の圧縮応力で降伏しないためには軸受の厚さを厚くしたり、軸受幅を広くしたりしなければならない。このためこの軸受は高価になり、かつ、軸受装置も大きくならざるを得ない。
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであって、高強度で耐焼付性、耐摩耗性、耐腐食性に優れ、かつ、安価で軸受装置をコンパクトにできるアルミニウム青銅焼結軸受材料およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のアルミニウム青銅焼結軸受材料の製造方法は、CuまたはCu合金の粉末または、CuまたはCu合金の粉末と硬質粒子との混合粉末を鋼裏金上に散布後焼結し、得られた焼結材表面にAlまたはAl合金の箔を圧着後焼結し前記鋼裏金上にCu系焼結層を積層する。
【0010】
また、アルミニウム青銅焼結軸受材料の製造方法は、CuまたはCu合金の粉末または、CuまたはCu合金の粉末と硬質粒子との混合粉末を鋼裏金上に散布後焼結し、得られた焼結材表面にAlまたはAl合金の粉末を散布し圧着後焼結し前記鋼裏金上にCu系焼結層を積層する。
【0011】
また、アルミニウム青銅焼結軸受材料は、鋼裏金と、CuまたはCu合金の粉末または、CuまたはCu合金の粉末と硬質粒子との混合粉末を前記鋼裏金上に散布後焼結し、得られた焼結材表面にAlまたはAl合金の箔を圧着後焼結し前記鋼裏金上に積層したCu系焼結層とを有し、前記Cu系焼結層は、Snを含まないCu系焼結層とし、前記鋼裏金との界面側はAl成分を含まないCuまたはCu合金からなり、表面の摺動面側は13重量%以下のAlを含有するCuまたはCu合金からなる
【0012】
また、アルミニウム青銅焼結軸受材料は、鋼裏金と、CuまたはCu合金の粉末または、CuまたはCu合金の粉末と硬質粒子との混合粉末を前記鋼裏金上に散布後焼結し、得られた焼結材表面にAlまたはAl合金の粉末を散布し圧着後焼結し前記鋼裏金上に積層したCu系焼結層とを有し、前記Cu系焼結層は、Snを含まないCu系焼結層とし、前記鋼裏金との界面側はAl成分を含まないCuまたはCu合金からなり、表面の摺動面側は13重量%以下のAlを含有するCuまたはCu合金からなる
【0014】
また、前記Snを含まないCu系焼結層は、さらに、0.1〜15体積%の硬質粒子を含有するCuまたはCu合金からなる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0018】
アルミニウム青銅焼結軸受材料の製造は、一次焼結と二次焼結とを行う。
【0019】
一次焼結は、CuまたはCu合金の粉末を通常の鋼裏金上に散布し、還元性雰囲気を有する焼結炉で行なう。この一次焼結は、CuまたはCu合金の粉末同士および、CuまたはCu合金の粉末と鋼裏金とをある程度焼結させ、次工程でAlまたはAl合金の箔や粉末の圧着と、CuまたはCu合金層の緻密化をさせ、次工程の二次焼結は冷間圧延でCuまたはCu合金層の緻密化およびAl青銅層
を形成するために行う焼結である。
【0020】
一次焼結の完了した焼結材料表面は凹凸状となり、AlまたはAl合金の箔または、AlまたはAl合金の粉末の圧着は容易であり、CuまたはCu合金層の緻密化の為に行う圧延と同時に行うことができる。
【0021】
二次焼結では、AlまたはAl合金の箔または粉末を圧着した焼結材が焼結炉中でAlまたはAl合金の融点に達するとAlまたはAl合金が液相化し、急激にCuまたはCu合金へ拡散し、短時間で固相のアルミニウム青銅層が形成され、所定の焼結温度に達するとCuまたはCu合金層が一層緻密に焼結される。
【0022】
CuまたはCu合金の粉末と硬質粒子との混合粉末を鋼裏金上に散布し焼結する場合は、一次焼結で硬質粒子が分散状態で焼結されAlまたはAl合金の箔または、AlまたはAl合金の粉末の圧着後に行う二次焼結でも硬質粒子が溶融しないため分散状態でより緻密に焼結される。
【0023】
本焼結工程が完了した段階でCu系焼結層が得られるが、このCu系焼結層は、アルミニウム青銅層または、アルミニウム青銅層とアルミニウムを含まないCuまたはCu合金層が鋼裏金上に積層され、アルミニウム青銅焼結軸受材料は、アルミニウム青銅層と鋼裏金との二層となるか、または、アルミニウム青銅層と、アルミニウムを含まないCuまたはCu合金層と、鋼裏金との三層となる。
【0024】
アルミニウム青銅焼結軸受材料は、アルミニウム青銅層と鋼裏金との密着性は良好であり、また、アルミニウム青銅層とCuまたはCu合金層およびCuまたはCu合金層と鋼裏金との密着性も良好であり、軸受材料として充分な密着力を有する。
【0025】
図1は、アルミニウム青銅焼結軸受材料およびその製造方法の第1実施例を説明するための図を示す。1は鋼裏金となる帯鋼、6は粉末を散布するタンク、5は帯鋼1を巻き戻すアンコイラー、10は帯鋼1を巻き取るリコイラーである。
【0026】
帯鋼1上にCuまたはCu合金の粉末2を散布し、一次焼結炉3で一次焼結して、ある程度CuまたはCu合金の粉末同士と、CuまたはCu合金と帯鋼とを焼結させる。この一次焼結は通常還元性雰囲気で、750〜1050℃、10〜30分間行われる。
【0027】
一次焼結された焼結材表面は凹凸状となり、圧延ロール7にてアンコイラー11より巻き戻されたAlまたはAl合金の箔4の圧着は容易で、焼結されたCuまたはCu合金層の緻密化と厚さ調整が行われる。
【0028】
続いて、表面にAlまたはAl合金の箔4が圧着された焼結材が二次焼結炉8に入り、二次焼結が行われる。この二次焼結で、まず、AlまたはAl合金の箔4の融点になるとAlまたはAl合金の箔4は液相化し、CuまたはCu合金層へ拡散し、短時間で固相のアルミニウム青銅層が形成され、さらに焼結が進みアルミニウム青銅層が緻密となり、アルミニウム青銅層と帯鋼1が強固に焼結され、アルミニウム青銅焼結軸受材料が製造される。
【0029】
また、鋼裏金となる帯鋼1との界面側にAlを含まないCuまたはCu合金とする場合は、圧延ロール7で緻密化されたCuまたはCu合金層がこの二次焼結でより緻密に焼結され、CuまたはCu合金層と帯鋼1がより強固に焼結される。
【0030】
この二次焼結は通常還元性雰囲気で、750〜1050℃、10〜30分間行われ、圧延ロール9で二次焼結後の焼結材の厚さ調整が行われる。
【0031】
図3は、本発明の製造方法により製造された第1実施例のアルミニウム青銅焼結軸受材料の組織断面写真を示す。このアルミニウム青銅焼結軸受材料は、Cu合金の粉末にCu−5重量%SnとMoの粉末との混合粉末と、Alの箔を用いて製造したものを示し、Mo粒子を含有するCu合金層(Cu―Sn層)とアルミニウム青銅層とが鋼裏金となる帯鋼1に積層されたものである。
【0032】
図2は、アルミニウム青銅焼結軸受材料およびその製造方法の第2実施例を説明するための図を示す。帯鋼1上にCuまたはCu合金の粉末2を散布し、一次焼結炉3で一次焼結して、ある程度CuまたはCu合金の粉末同士と、CuまたはCu合金と帯鋼を焼結させる。この一次焼結は通常還元性雰囲気で、750〜1050℃、10〜30分間行われる。
【0033】
一次焼結された焼結材表面は凹凸状となり、圧延ロール7にて散布タンク12より散布されたAlまたはAl合金の粉末13の圧着は容易で、焼結されたCuまたはCu合金層の緻密化と厚さ調整が行われる。
【0034】
続いて、表面にAlまたはAl合金の粉末13が圧着された焼結材が二次焼結炉8に入り、二次焼結が行われる。この二次焼結で、まず、AlまたはAl合金の粉末13が融点になるとAlまたはAl合金の粉末13は液相化し、CuまたはCu合金層へ拡散し、短時間で固相のアルミニウム青銅層が形成され、さらに焼結が進みアルミニウム青銅層が緻密となり、アルミニウム青銅層と帯鋼1が強固に焼結され、アルミニウム青銅焼結軸受材料が製造される。
【0035】
また、帯鋼1との界面側にAlを含まないCuまたはCu合金とする場合は圧延ロール7で緻密化されたCuまたはCu合金層がこの二次焼結でより緻密に焼結され、CuまたはCu合金層と帯鋼1がより強固に焼結される。
【0036】
この二次焼結は通常還元性雰囲気で、750〜1050℃、10〜30分間行われ、圧延ロール9では二次焼結後の焼結材の厚さ調整が行われる。
【0037】
図4は、本発明の製造方法により製造された第2実施例のアルミニウム青銅焼結軸受材料の組織断面写真を示す。このアルミニウム青銅焼結軸受材料は、Cuの粉末とAlの粉末を用いて製造したものを示し、アルミニウム青銅層が鋼裏金となる帯鋼1に積層されたものである。
【0038】
次に、本発明の製造方法により製造したアルミニウム青銅焼結軸受材料によるアルミニウム青銅焼結軸受と、従来の鋳造法による鋼裏金なしのアルミニウム青銅ソリッド軸受との比較につき述べる。本発明によるアルミニウム青銅焼結軸受と従来のアルミニウム青銅ソリッド軸受は組成が同じなら同等の表面性能、耐摩耗性、耐腐食性を有する。
【0039】
前記したごとくアルミニウム青銅ソリッド軸受は、鋼裏金付ではないので降伏応力は低く、締め代により発生する周方向の圧縮応力で降伏しないためには軸受の厚さを厚くしたり、軸受幅を広くしたりしなければならず、このため軸受は高価になり、かつ、軸受装置も大きくならざるを得ないが、本発明によるアルミニウム青銅焼結軸受は鋼裏金付とすることができたため降伏応力が高く、従来のアルミニウム青銅ソリッド軸受に対して軸受寸法を薄く、狭くすることができるので安価で軸受装置をコンパクトにすることができる。
【0040】
また、本発明によるアルミニウム青銅焼結軸受は、鋼裏金付とすることができ高強度のため、締め代を大きくして軸受背面をハウジング内面に緊密に密着させられ、軸受運転中のブシュやハウジングのフレッチング損傷を最小限に抑制でき、また、発生した熱の放熱性も向上し軸受を長寿命とすることができる。
【0041】
さらに、本発明のアルミニウム青銅焼結軸受は、従来の鋳造法によるアルミニウム青銅ソリッド軸受では不可能な耐摩耗性向上のための硬質粒子含有が可能である。
【0042】
次に、本発明の製造方法により製造したアルミニウム青銅焼結軸受材料によるアルミニウム青銅焼結軸受と、従来の青銅焼結軸受材料による青銅焼結軸受との比較につき述べる。
【0043】
従来の青銅焼結軸受材料による青銅焼結軸受は、軸受運転中に表面の摺動面側に硫化や酸化が起こるが青銅の硫化膜や酸化膜は低強度であり、かつ、厚く成長し摺動表面より容易に取り去られるため、耐焼付性、耐摩耗性、耐腐食性が充分でないが、本発明によるアルミニウム青銅焼結軸受は、摺動面の酸化膜が緻密で高強度でありかつ厚く成長しないため軸受運転中も容易に取り去られることはなく、また、酸化膜が破壊され新生面が露出しても急速に酸化膜が形成されるので耐焼付性、耐摩耗性、耐腐食性が優れたものとすることができる。
【0044】
さらに、従来の青銅焼結軸受材料で耐摩耗性向上のため硬質粒子を含有する軸受は、軸受運転中の摺動面での硬質粒子と相手軸との摩擦熱により硬質粒子に接する青銅の腐食が激しく発生し硬質粒子の脱落が起こりやすいが、本発明によるアルミニウム青銅焼結軸受材料で硬質粒子を含有する軸受は、耐腐食性が優れるため硬質粒子は脱落し難く、耐摩耗性、耐焼付性を長期安定的に発揮できる。
【0045】
なお、本発明のアルミニウム青銅焼結軸受材料は、CuまたはCu合金の粉末はCuを主成分として、Fe、Ni、Mn、Sn、Pb、Biなどを必要により含有し、耐摩耗性、耐焼付性をさらに向上させることもできる。
【0046】
また、本発明のアルミニウム青銅焼結軸受材料は、Al合金箔またはAl合金の粉末はAlを主成分として、Fe、Ni、Mnなどを必要により含有し、耐摩耗性、耐焼付性をさらに向上させることもできる。
【0047】
さらに、本発明のアルミニウム青銅焼結軸受材料は、硬質粒子として焼結過程で溶融しないMo、W、Co、FeP、FeB、SiC、Si、FeB、NiB、AlN、Cなどの金属または非金属を添加できる。
【0048】
次に、本発明のアルミニウム青銅焼結軸受材料の摩耗試験、焼付試験と疲労試験結果を説明する。実施例の試料はアトマイズ法により製造したCuまたはCu合金の粉末(−60メッシュ)あるいはアトマイズ法により製造したCuまたはCu合金の粉末にMoやC粉末を0.1〜15体積%混合後、鋼裏金に散布し、温度750〜1050℃の還元性雰囲気下で15〜30分焼結して得られた焼結材表面にロールでアルミニウムまたはアルミニウム合金の箔あるいは粉末を圧着し、同時に焼結層を緻密化し再び750〜1050℃の還元性雰囲気下で15〜30分焼結後、冷間圧延を施しアルミニウム青銅焼結軸受材料を完成させた。
【0049】
表1に試料No.1〜21の組成を示す。No.1〜13は本発明の実施例であり、No.14〜21は比較例である。本発明の実施例No.1、2、9〜12は鋼裏金との密着界面側がAlを含有しないCu系焼結層となる様に、No.3〜8、13は鋼裏金との密着界面側が摺動面側と同量のAlを含有するアルミニウム青銅層となる様にアルミニウム青銅焼結軸受材料を完成させた。
【0050】
【表1】
Figure 0004349719
【0051】
No.15は本発明範囲外であるAl含有量が15重量%、No.16、17は硬質粒子(Mo、C)含有量が17体積%となり、鋼裏金との界面側がAlを含有するCu系焼結層となる様に上記焼結方法でアルミニウム青銅焼結軸受材料を製造したものである。
【0052】
No.14、20、21は表1に示したCuまたはCu合金の粉末(−60メッシュ)をアトマイズ法により製造後、アルミニウムまたはアルミニウム合金の箔あるいは粉末を圧着する工程を除き、上記焼結方法で青銅焼結軸受材料を製造したものである。
【0053】
No.18、19は表1に示したうちMoやCを除く組成のCu合金の粉末(−60メッシュ)をアトマイズ法により製造しMoやCが表1の組成となるように混合後、アルミニウムまたはアルミニウム合金の箔あるいは粉末を圧着する工程を除き、上記焼結方法で青銅焼結軸受材料を製造したものである。
【0054】
試験供試品の形状は摩耗試験、焼付試験は平板であり、疲労試験は半割軸受形状である。
【0055】
今回実施した摩耗試験の条件は以下である。
1.試験機 円筒平板型摩擦摩耗試験機
2.すべり速度 60m/min
3.荷重 2940N
4.潤滑油 10W−30
5.油温 100℃
6.潤滑方法 油浴
7.相手軸 S45C 粗さ Ra0.2
8.試験時間 1Hr
【0056】
今回実施した焼付試験条件を以下に示す。
1.試験機 円筒平板型摩擦摩耗試験機
2.すべり速度 60m/min
3.荷重 98N/10min毎
4.潤滑油 10W−30
5.油温 100℃
6.潤滑方法 油浴
7.相手軸 S45C 粗さ Ra0.2
8.焼付判定基準 摩擦面背面温度が200℃以上
【0057】
今回実施した疲労試験条件を以下に示す。
1.試験機 アンダーウッド試験機
2.回転数 3500rpm
3.面圧 88.2MPa
4.潤滑油 10W−30
5.油温 150℃
6.潤滑方法 強制潤滑
7.相手軸 S45C 粗さ Ra0.02
8.疲労性評価 軸受合金に割れが発生せず、正常な状態で運転できた時間
【0058】
試料No.1〜21の摩擦試験、焼付試験、疲労試験の結果は表1の右側欄に示す。
【0059】
本発明の実施例No.1〜13は、従来の内燃機関で軸受として使用されている比較例No.20、21と比較すると耐摩耗性、耐焼付性、耐疲労性共優れていることがわかる。
【0060】
本発明でAlを0.1〜13重量%含有する効果はAlを全く含有しない比較例No.14に対し本発明の実施例でAlのみを含有するCu合金であるNo.1〜4、12,13は耐摩耗性、耐焼付性、耐疲労性に優れ、また、本発明のAl含有量範囲を越えてAlを含有する比較例No.15に対し本発明のAl含有量範囲内上限のAlを含有するNo.12、13は特に耐疲労性が優れている。
【0061】
Alを0.1〜13重量%含有し硬質粒子を0.1〜15体積%含有する本発明の効果はAlおよび硬質粒子を含有しない比較例No.14に対し本発明の実施例でAlおよび硬質粒子を含有するNo.6〜11は耐摩耗性、耐焼付性、耐疲労性に優れ、また、本発明の硬質粒子含有範囲を越えて硬質粒子を含有するNo.16、17に対しAl含有量は同一で硬質粒子含有量範囲内上限の硬質粒子を含有するNo.8、11は耐焼付性、耐疲労性に優れていることがわかる。
【0062】
さらに、本発明の硬質粒子含有範囲内の硬質粒子を含有しAlを含有しない比較例No.18、19に対し、同量の硬質粒子とAlとを含有する本発明の実施例No.7、10は耐摩耗性、耐焼付性、耐疲労性に優れ、試験後の摩擦面を観察すると比較例No.18、19は硬質粒子周辺のCu合金の腐食により硬質粒子の脱落が多いが、本発明実施例No.7、10では脱落量が少なく耐腐食性にも優れていることがわかる。
【0063】
なお、アルミニウム青銅層の組成および厚さは、Cu合金の粉末の組成、Al合金の箔や粉末の組成、一次焼結前のCuまたはCu合金粉末の散布厚、圧着するAlまたはAl合金の箔厚やAlまたはAl合金の粉末散布厚、AlまたはAl合金の箔や粉末の圧着時の圧下率、二次焼結時の焼結温度などの調整により、所要の状態にできる。
【0064】
また、本発明の製造方法で完成したアルミニウム青銅焼結軸受材料は、従来の鋳物で造ったアルミニウム青銅軸受と同様な熱処理が後処理として可能で、多くの軸受用途に適合するアルミニウム青銅組織とすることが可能である。
【0065】
鋼裏金界面側のCuまたはCu合金にAlを含ませない場合の理由は、アルミニウム青銅層とCuまたはCu合金層および、CuまたはCu合金層と鋼裏金との密着性は軸受材料として充分な密着力を有し、緻密に焼結されたCuまたはCu合金層の強度は高く摺動面側はアルミニウム青銅層であるので、鋼裏金界面側のCuまたはCu合金にAlを含む本発明のアルミニウム青銅焼結軸受材料と同等の性能を有するからである。
【0066】
また、摺動面側のアルミニウム青銅のAlを13重量%以下(0%を含まず)に限定する理由は、13重量%を超えると軸受材料として脆くなり過ぎて実用に供せないからである。
【0067】
また、硬質粒子を0.1〜15体積%に限定する理由は、0.1体積%未満では耐摩耗性、耐焼付性の向上が不充分で、15体積%を越えると軸受材料として脆くなり過ぎて実用に供せないからである。
【0068】
さらに、本発明のアルミニウム青銅焼結軸受材料は必要により固体潤滑材として焼結過程で溶融しないグラファイト、WS、MoSなどを添加することもできる。
【0069】
【発明の効果】
本発明により従来製造できなかった鋼裏金付のアルミニウム青銅焼結軸受材料を得ることができる。本発明のアルミニウム青銅焼結軸受材料は、鋼裏金付にできるため、従来のアルミニウム青銅ソリッド軸受材料より高強度で、軸受寸法も小さくすることができ、安価にもできる。また、軸受とハウジングを緊密に密着させることができるのでフレッチング損傷を軽減でき、長寿命である。
【0070】
また、本発明のアルミニウム青銅焼結軸受材料は、硬質粒子の添加が可能であり耐摩耗性、耐焼付性をさらに向上させることができる。
【0071】
また、本発明のアルミニウム青銅焼結軸受材料は、従来の青銅焼結軸受材料より耐焼付性、耐摩耗性、耐腐食性に優れ、硬質粒子を添加しても軸受運転中に発生する腐食による硬質粒子の脱落は極めて少ないものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】アルミニウム青銅焼結軸受材料およびその製造方法の第1実施例を説明するための図を示す。
【図2】アルミニウム青銅焼結軸受材料およびその製造方法の第2実施例を説明するための図を示す。
【図3】本発明の製造方法により製造された第1実施例のアルミニウム青銅焼結軸受材料の組織断面写真を示す。
【図4】本発明の製造方法により製造された第2実施例のアルミニウム青銅焼結軸受材料の組織断面写真を示す。
【符号の説明】
1 帯鋼
2 CuまたはCu合金の粉末
3 一次焼結炉
4 AlまたはAl合金の箔
5 アンコイラー
6 散布タンク
7 圧延ロール
8 二次焼結炉
9 圧延ロール
10 リコイラー
11 アンコイラー
12 散布タンク
13 AlまたはAl合金の粉末

Claims (5)

  1. CuまたはCu合金の粉末または、CuまたはCu合金の粉末と硬質粒子との混合粉末を鋼裏金上に散布後焼結し、得られた焼結材表面にAlまたはAl合金の箔を圧着後焼結し前記鋼裏金上にCu系焼結層を積層することを特徴とするアルミニウム青銅焼結軸受材料の製造方法。
  2. CuまたはCu合金の粉末または、CuまたはCu合金の粉末と硬質粒子との混合粉末を鋼裏金上に散布後焼結し、得られた焼結材表面にAlまたはAl合金の粉末を散布し圧着後焼結し前記鋼裏金上にCu系焼結層を積層することを特徴とするアルミニウム青銅焼結軸受材料の製造方法。
  3. 鋼裏金と、CuまたはCu合金の粉末または、CuまたはCu合金の粉末と硬質粒子との混合粉末を前記鋼裏金上に散布後焼結し、得られた焼結材表面にAlまたはAl合金の箔を圧着後焼結し前記鋼裏金上に積層したCu系焼結層とを有し、前記Cu系焼結層は、Snを含まないCu系焼結層とし、前記鋼裏金との界面側はAl成分を含まないCuまたはCu合金からなり、表面の摺動面側は13重量%以下のAlを含有するCuまたはCu合金からなることを特徴とするアルミニウム青銅焼結軸受材料。
  4. 鋼裏金と、CuまたはCu合金の粉末または、CuまたはCu合金の粉末と硬質粒子との混合粉末を前記鋼裏金上に散布後焼結し、得られた焼結材表面にAlまたはAl合金の粉末を散布し圧着後焼結し前記鋼裏金上に積層したCu系焼結層とを有し、前記Cu系焼結層は、Snを含まないCu系焼結層とし、前記鋼裏金との界面側はAl成分を含まないCuまたはCu合金からなり、表面の摺動面側は13重量%以下のAlを含有するCuまたはCu合金からなることを特徴とするアルミニウム青銅焼結軸受材料。
  5. 前記Snを含まないCu系焼結層は、さらに、0.1〜15体積%の硬質粒子を含有するCuまたはCu合金からなることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のアルミニウム青銅焼結軸受材料。
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