JP4237381B2 - 気相成長炭素繊維充填物及び気相成長炭素繊維充填物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は気相成長炭素繊維充填物及び気相成長炭素繊維充填物の製造方法に関し、更に詳しくは、取り扱いが容易であり、加圧力が除去されてから時間が経過すると容易に元の嵩に戻ることのできる気相成長炭素繊維充填物及びそのような気相成長炭素繊維充填物を容易に製造することのできる方法に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
直径の大きな気相成長炭素繊維に比較して、直径が小さいが故にカーボンナノファイバーと称される気相成長炭素繊維がある。カーボンナノファイバーの集合体は、その製造直後では、一般に、極めて嵩高(低嵩密度)である。
【0003】
嵩高なカーボンナノファイバーの集合体を輸送するのは、単位体積当たりに含まれるカーボンナノファイバーの量が少ないので、輸送効率が悪い。輸送効率を高めるには、カーボンナノファイバーの集合体の嵩密度を高める必要がある。ところが、嵩密度の低いカーボンナノファイバーの集合体を容器内で圧縮してからその容器に蓋をするために圧縮力を除去すると、圧縮されていたカーボンナノファイバーの集合体全体がすぐに膨れ上がってしまう。つまり、容器内に圧縮されたカーボンナノファイバーの集合体が、加圧力を除去してからその容器に蓋をする迄の短時間の間に膨れ上がってしまうので、その容器に蓋をきっちりと装填するためには、圧力除去後きわめて迅速に蓋をしなければならないという制約が発生する。
【0004】
また、極めて短時間の内に、カーボンナノファイバーを充填した容器に迅速に蓋を装填することができたとしても、次にその蓋を容器から外した場合に、容器内のカーボンナノファイバーが元の嵩密度に復元しないという問題がある。例えば、平均繊維直径が20nmであり、アスペクト比が50以上であるカーボンナノファイバーの集合体を乾燥状態で約10MPで加圧してから、その加圧力を解放すると、圧縮されていたカーボンナノファイバーの集合体は膨らむもののその嵩密度が0.03g/cm3程度にしか復元されない。前記カーボンナノファイバーの集合体を約50MPで加圧してから、その加圧力を解放すると、圧縮されていたカーボンナノファイバーの集合体は膨らむもののその嵩密度が0.05g/cm3程度にしか復元されない。このようにカーボンナノファイバーの集合体が一旦加圧された後にその圧力が解放されたときに元の嵩密度に復元されないのは、加圧によりカーボンナノファイバーの一部が折損してしまうからと考えられる。
【0005】
また、折損して加圧前よりも短くなったカーボンナノファイバーを合成樹脂に分散することにより形成した複合材を導電性用途に用いても、その複合材は良好な導電性を示さないという問題点もある。
【0006】
ところで、カーボンナノファイバーを特定の用途に向けて使用する際に、カーボンナノファイバーを製造した後に種々の表面処理をすることがある。工業的な見地からすると、特定の用途に向けられたカーボンナノファイバーはできるだけ工程数を少なくして製造されることが望まれる。
【0007】
この発明は前記問題点を解決することを目的とする。すなわち、この発明の目的は、効率的な輸送及び貯蔵を行うことのできる程の大きな嵩密度で充填されてなり、しかも加圧力を除去しても直ちに元の嵩密度に戻らないが最終的に元の嵩密度と実質的に同じかそれに近い嵩密度に戻ることができ、次の用途に容易に用いることのできるカーボンナノファイバー充填物を提供することにある。
【0008】
この発明の他の目的は、前記カーボンナノファイバー充填物を容易に製造することのできる方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するためのこの発明は、平均直径3〜200nmの気相成長炭素繊維を含有し、液体の存在下に0.1〜0.5g/cm3の嵩密度に圧縮されて気密性容器に充填され、前記液体を除去することにより前記嵩密度が復元することを特徴とする気相成長炭素繊維充填物であり、
平均直径3〜200nmの気相成長炭素繊維を液体と共に0.2〜50MPaで0.1〜0.5g/cm3の嵩密度に圧縮して気密性容器に充填し、前記液体を除去することにより前記嵩密度が復元することを特徴とする前記気相成長炭素繊維充填物の製造方法である。
【0010】
更に、前記課題を解決するためのこの発明は、平均直径3〜50nmの気相成長炭素繊維を含有し、液体の存在下に0.1〜0.5g/cm3の嵩密度に圧縮されて気密性容器に充填され、前記液体を除去することにより前記嵩密度が復元することを特徴とする気相成長炭素繊維充填物であり、
平均直径3〜50nmの気相成長炭素繊維の所定量を液体と共に0.2〜50MPaで圧縮して気密性容器に充填し、前記液体を除去することにより前記嵩密度が復元することを特徴とする前記気相成長炭素繊維充填物の製造方法であり、
前記液体が水及び/又はアルコール類である気相成長炭素繊維充填物の製造方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
この発明に係る気相成長炭素繊維充填物は、所定の閉空間内例えば容器の中に所定の加圧力をもって液体の存在下に充填された気相成長炭素繊維の集合体であり、その所定の加圧力が除去されても直ちに元の嵩密度を有する気相成長炭素繊維の集合体に戻らず、その所定の加圧力が除去されてから時間が経過すると元の嵩密度の気相成長炭素繊維の集合体に戻る特性を有する。したがって、例えば容器内に充填された気相成長炭素繊維に加えられているその加圧手段による加圧力を除去した直後に、その容器の開口部に簡単に閉鎖部材例えば蓋をすることができ、またその蓋を取り去ったときにはそれまで容器内に充填されていた気相成長炭素繊維の充填物が膨張し、元の嵩密度を有する気相成長炭素繊維の集合体に戻る。故に、この発明に係る気相成長炭素繊維充填物は、閉空間例えば容器に大きな嵩密度で充填されているから、輸送及び貯蔵の効率化が達成され、また気相成長炭素繊維の後処理例えば気相成長炭素繊維の表面処理等を効率良く行うことができる。
【0012】
この気相成長炭素繊維充填物という集合体の要素である気相成長炭素繊維は、所定の平均直径を有していて、所定の嵩密度で閉空間例えば容器に圧縮、充填されて成る。
【0013】
更に言うと、この発明に係る気相成長炭素繊維は、その平均直径が、3〜200nm、好ましくは3〜50nmである。換言すると、平均直径が3〜50nmの範囲内にある気相成長炭素繊維の集合物が気相成長炭素繊維充填物として好ましい。その平均直径が3〜50nmの範囲内にある気相成長炭素繊維の集合体は、この発明の目的を殊によく達成することができる。
【0014】
もっとも、平均直径が3〜50nmの気相成長炭素繊維の集合体に更に直径の大きい気相成長炭素繊維が含有されることを許容することにより平均直径50〜200nm以下になる気相成長炭素繊維の集合体をもってこの発明における気相成長炭素繊維充填物とすることもできる。
【0015】
ここで、気相成長炭素繊維の平均直径は、走査型顕微鏡(SEM)または透過型顕微鏡(TEM)で、3万倍以上の倍率で得た写真から、任意に100本以上の繊維を選び、その繊維の外径を測定して平均することにより算出することができる。
【0016】
この気相成長炭素繊維は、そのアスペクト比が通常50を下らず、好ましくは100を下らない。なお、このアスペクト比は平均値である。前記気相成長炭素繊維の平均直径の測定と同様に、走査型顕微鏡又は透過型顕微鏡で3万倍以上の倍率で得られた写真から、任意に100本以上の繊維の直径及び外径を測定して平均することにより算出することができる。
【0017】
アスペクト比が少なくとも50であると、気相成長炭素繊維の通常の平均直径と相俟って、この気相成長炭素繊維を樹脂及びセラミック等の母材に分散混合した場合に導電性が良好に発現する。
【0018】
平均直径が3〜200nm、特に3〜50nmである気相成長炭素繊維は、例えば、特公昭60−54998号公報、特公昭62−49363号公報、特公平5−36521号公報、特開平9−324325号公報、特開平9−78360号公報等に記載された方法により製造することができる。
【0019】
一般的に言うと、気相成長炭素繊維は、次のようにして製造される。すなわち、高温度例えば900〜1200℃に加熱された反応領域に触媒金属源例えば例えばフェロセン等の有機遷移金属化合物などと炭素源例えば炭化水素、炭酸ガス又は一酸化炭素等とを導入することにより、触媒金属を生成させ、かつ炭素源の分解により発生する炭素を触媒金属の表面に成長させる。触媒金属の表面での炭素の成長は一方向に行われると共にその方向に直交する方向即ち太さ方向における成長も起こる。つまり、触媒金属から気相成長炭素繊維の軸方向に向かう炭素の成長即ち長さ成長と前記気相成長炭素繊維の太さが増大する方向の成長即ち太さ成長とが生起する。このとき、太さ成長を抑制し、長さ成長が優先する条件を選択することにより、この発明における好適な極細気相成長炭素繊維を製造することができる。
【0020】
この発明においては、気相成長炭素繊維は、閉空間例えば容器に充填されて成る。容器としては、特に制限がなく、気相成長炭素繊維を充填する閉空間の備わる容器であればよい。また、その容器の用途及び機能についても特に制限がない。好適な容器としては、気相成長炭素繊維を貯蔵し、又は輸送するために使用される缶等の容器を挙げることができる。
【0021】
後述するこの発明の方法により充填されて成る気相成長炭素繊維充填物は、液体を含有するので、長期間にわたって液体含有の気相成長炭素繊維充填物を容器中に収納し続ける場合には、その液体が揮発してしまうと気相成長炭素繊維充填物は圧縮以前の元の集合体の状態に戻ろうとするであろうから、前記容器としては耐圧性容器例えばドラム缶等の金属缶、ペール缶等のプラスチック缶等を使用することができる。又、気相成長炭素繊維充填物が液体を含んでいる限り前述したように圧縮以前の元の気相成長炭素繊維の集合体に戻ろうとはしないので、金属缶程の耐圧性がなくても気密に封じることができる限り、耐圧性の低い容器であっても良い。
【0022】
又、容器に充填したまま気相成長炭素繊維充填物を更に黒鉛化する場合には、その容器には耐熱性が要求される。そのような容器として例えば黒鉛製容器を挙げることができる。
【0023】
この発明においては、気相成長炭素繊維は、閉空間例えば容器の中に充填される。充填する際の加圧力は、0.2〜40MPa(2〜400kg/cm2)、好ましくは0.5〜20MPa(5〜200kg/cm2)、更に好ましくは1〜10MPa(10〜100kg/cm2)である。
【0024】
加圧力が前記範囲内にあること及び前記気相成長炭素繊維の平均直径が前記範囲内にあることにより、気相成長炭素繊維の嵩密度が0.1〜0.5g/cm3の範囲内に収まる。加圧力が前記範囲よりも大きいと、気相成長炭素繊維が折損するなどしてそのアスペクト比が低下し、ひいては複合材料としたときの導電性が低下することがある。
【0025】
また、加圧力が前記範囲よりも小さいと、気相成長炭素繊維の嵩密度が大きく成らず、嵩高い気相成長炭素繊維になって例えば運搬等の効率が低下する。
【0026】
加圧力を付与する方法としては、以下に示すようなプレス装置等を使用する手法を挙げることができる。
【0027】
図1に示されるように、このプレス装置6は、縦方向に軸線を有する筒体の形状に形成され、軸線方向に沿って設けられたピストン挿入路7とこのピストン挿入路7に連絡し、前記軸線方向に直交する方向に設けられた容器挿入路4とを備えて成る型3と、前記容器挿入路4内に挿入され、前記ピストン挿入路7の直下に配置される移動容器13と、前記容器挿入路4内に挿入され、前記ピストン挿入路7の直下に配置される底型11と、前記ピストン挿入路7内で進退可能に形成され、前記ピストン挿入路7内に挿入された気相成長炭素繊維を前記移動容器13内に押圧するピストン2とを備えて成る。
【0028】
前記型3は、図1及び図2に示されるように、立設するプレス枠1により支持されたプレス台5上に配置され、固定されている。前記容器挿入路4は、前記プレス台5の表面である上面と、前記型3の下端面を切り欠いて形成されるところの、型3の軸線に並行な向かい合う縦内壁と、前記軸線に直交する方向に形成された天井面とで、前記型3の下端において型3の軸線の直交する方向に設けられた空間である貫通孔8を備える。この貫通孔8における向かい合う縦内壁の間隔は、底型11が移動可能な寸法に設計される。
【0029】
この貫通孔8の天井面に、前記ピストン挿入路7の開口部が開口し、これによってピストン挿入路7と容器挿入路4とが連絡する。
【0030】
この容器挿入路4には前記底型11が出し入れされる。この底型11は、例えば前記開口部を閉鎖するに十分な直径を有する上端面を備えて成る。この底型11が前記開口部を閉鎖するように容器挿入路4内に配置されると、この底型11の上端面が前記ピストン挿入路7により形成される筒体状の空間における底面となる。
【0031】
この底型11は適宜の底型進退駆動手段(図示せず。)により、前記開口部を閉鎖し、あるいは開放することができるように、前記容器挿入路4内を進退することができるようになっている。
【0032】
前記移動容器13は、前記容器挿入路4内に挿入されることができ、この移動容器13が前記開口部の直下に位置するときに前記ピストン挿入路7内に装填された気相成長炭素繊維を支障なくピストン挿入路7内から移動容器13内に落下させることができるに足る上部開口部及び内部形状を有する。したがって、多くの場合、この移動容器13は上部開口部を有する円形の有底筒体である。しかもこの有底筒体である移動容器13における内径は、前記開口部の径よりも小さくないように、換言すると前記開口部の径と実質的に同じか僅かに大きく設計される。
【0033】
前記ピストン挿入路7内にはピストン2が進退可能に嵌合される。ピストン2は、プレス枠1の上部枠に取り付けられた油圧シリンダーにより進退可能に成っている。なお、図中、12で示されるのは底型11に取り付けられた支持桿であり、底型11を進退させる底型進退駆動手段と底型11とを結合している。
【0034】
以上のような構成を有するプレス装置6を用いて以下のように気相成長炭素繊維充填物が製造される。
【0035】
図3に示されるように、ピストン挿入路7の開口部を閉鎖するように底型11を容器挿入路4内に配置する。ピストン挿入路7内に気相成長炭素繊維の集合物14を装填する。この装填の際に、気相成長炭素繊維の集合物14に、後述する液体を添加する。なお、ピストン挿入路7内に装填された気相成長炭素繊維の集合体14に液体を添加しても良いが、予め適宜の容器内で気相成長炭素繊維と液体とを混合しておいて、その混合物をピストン挿入路7内に装填するようにしても良い。図4に示されるように、ピストン挿入路7内に装填された気相成長炭素繊維の集合物14に、ピストン2で圧縮する。図5に示されるようにピストン2による加圧を停止する。なお、図5においては、ピストン2をピストン挿入路7から抜去しているが、必ずしもピストン挿入路7からピストン2を抜去する必要はなく、気相成長炭素繊維が圧縮されないように、気相成長炭素繊維の集合物14からピストン2を離反させるだけでも良い。次いで、図6に示されるように、容器挿入路4から底型11を取り除き、移動容器13を容器挿入路4内に挿入し、その移動容器13を開口部直下に位置させる。なお、底型11を開口部直下から移動させても、圧縮された気相成長炭素繊維はピストン挿入路7の内周面に向かって広がろうとする力を生じているので圧縮された気相成長炭素繊維の集合物はその下方に底型11が存在していなくてもピストン挿入路7内に止まっている。その後に、図7に示されるように、ピストン挿入路7内でピストン2を下降させて圧縮された気相成長炭素繊維の圧縮集合体を移動容器13内に向かって押し下げ、気相成長炭素繊維の圧縮集合体を移動容器13内に充填する。なお、このとき、移動容器13内に移送された気相成長炭素繊維の集合体14を、ピストン2で更に押圧することにより、移動容器13内で気相成長炭素繊維の集合体14をピストン2で圧縮して充填しても良い。図8に示されるように、気相成長炭素繊維の集合体14を充填収容した移動容器13を容器挿入路4から取り出す。容器挿入路4から取り出された移動容器13に蓋をすることにより、移動容器13に充填された気相成長炭素繊維充填物が得られる。
【0036】
この発明においては、容器内に装填した気相成長炭素繊維を前記加圧力で加圧する際に、気相成長炭素繊維に液体を添加する。この液体としては、常温常圧下で液体であり、好ましくは粘度が30N・s/cm2(300ポイズ)を超えない液体である。具体的には、この液体として、有機溶媒、有機溶媒溶液、水、及び水溶液等を挙げることができる。この有機溶媒としては、アルコール類、ケトン類等の極性溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族有機溶媒、リグロイン、石油エーテル等の石油系溶媒等を挙げることができる。
【0037】
前記各種の液体の内、エタノール等の低級アルコール類及びアセトン等のケトン類は、気相成長炭素繊維間によく浸透し、気相成長炭素繊維の使用時点において除去するのが容易であるので、好ましい。また、灯油、重油等の石油類及びエチレングリコール等は長期にわたって気相成長炭素繊維を容器内に充填しておくのに都合が良い。というのは、長期にわたって容器内にこれら液体と共に気相成長炭素繊維充填物の集合体を保存しておいてもこれら液体が揮発、揮散しないので、液体が揮発することにより気相成長炭素繊維の集合物が元に戻ろうとする圧力が容器にかかることもないからである。また、これら液体と共に存在する気相成長炭素繊維は、ゴム等の母材に分散するときに特に油剤を使用する必要がないので、この点においても都合が良い。
【0038】
前記有機溶媒溶液としては有機溶媒例えばアルコール類と水との混合溶液を挙げることができる。有機溶媒のみを液体として使用すると、多くの場合有機溶媒は可燃性であるから、有機溶媒と気相成長炭素繊維との混合充填物は可燃物として危険があるところ、水との混合溶液にすると、その可燃性を低下させて安全である。場合によっては、液体として水又は有機溶媒のいずれかを採用することもできる。
【0039】
加圧の際にどのような液体を選択するかは、加圧処理された気相成長炭素繊維に施す後処理の内容及び用途により適宜に決定される。
【0040】
気相成長炭素繊維に液体を添加する方法としては、噴霧操作、液体散布操作、液体に気相成長炭素繊維を浸漬攪拌する操作等を挙げることができる。
【0041】
加圧処理後の気相成長炭素繊維に施す後処理としては、一旦エタノールと共に黒鉛容器に加圧充填した後、エタノールを蒸発除去して、黒鉛容器の中の気相成長炭素繊維の充填密度が高い状態で2000〜3000℃で熱処理するところの黒鉛化処理がある。
【0042】
この発明においては、前記気相成長炭素繊維1重量部に対する前記液体の添加量は、通常、0.3〜3重量部、好ましくは0.5〜2重量部である。添加量が前記範囲内にあることにより、加圧圧縮後、圧力を解放してもすぐには、嵩高状態に復元しない。また、前記範囲内で容器内に充填して、密閉すると、圧縮状態が維持されやすい。不必要に液体を多くしても、効果に変わりがなく重量が多くなるだけなので、無意味である。
【0043】
気相成長炭素繊維を前記加圧力で加圧する際の温度としては、添加する液体が蒸発、揮発乃至揮散しない程度の温度範囲が適宜に選択される。
【0044】
また、加圧時間は、気相成長炭素繊維の量にもよるが、通常数秒から1分程度で十分である。気相成長炭素繊維の集合体を加圧する場合、加圧時間を長期化させるよりも、加圧時間を短くして何度も所定の充填密度になるように加圧操作を繰り返すのが好ましい。
【0045】
この発明に係る気相成長炭素繊維は、前記のように、所定の平均直径を有する気相成長炭素繊維の所定量を容器に収容し、液体を添加してから、所定の加圧力でこの気相成長炭素繊維の集合体をプレスすると、嵩密度が0.1〜0.5g/cm3、好ましくは0.1〜0.4g/cm3の充填状態となる。
【0046】
このように特定の嵩密度に充填されたこの発明に係る気相成長炭素繊維の用途については前述した通りである。
【0047】
【実施例】
(実施例1)
内容積20リットルの容器に装填したところの、平均直径20nm、平均アスペクト比が小さくとも100であるカーボンナノファイバー(極細の気相成長炭素繊維)150gにエタノール150gを噴霧添加した。噴霧添加してから直ちにその容器の開口部に蓋をして密閉容器とし、その密閉容器を振盪することにより、内部の気相成長炭素繊維と液体とを良く混合して、混合物を得た。
【0048】
次いで、内径136mm、及び高さ200mmのシリンダー中に5等分した前記混合物を装入して、980.665×10-4Pa(100kg/cm2)の加圧力をもってピストンでシリンダー(底型)内の混合物を数回圧縮加圧した。その結果として圧縮された混合物を、内径140mm及び高さ60mmの黒鉛容器に、微圧を加えながら移し替えた。この操作を5回繰り返して黒鉛容器内を、圧縮された混合物で満杯にし、その後に黒鉛容器の開口部を蓋した。この蓋は、中央部に直径3mmの貫通孔8を有し、溝ネジで前記黒鉛容器の開口部に螺合されるように成っている。
【0049】
この黒鉛容器内の気相成長炭素繊維の嵩密度は0.19g/cm3であった。
【0050】
以上の条件で作成した試料を16個用意した。
【0051】
16個全ての試料を100℃の真空乾燥機に入れて一夜放置した。放置後に16個の試料を冷却してから2個の試料の蓋を開けたところ、いずれも中のカーボンナノファイバーが5リットル以上に膨れ上がって元の嵩高い状態に復帰してしまった。
【0052】
以上の実験事実は、容器中に気相成長炭素繊維を充填する際に液体が存在すると容器への気相成長炭素繊維の充填が円滑に行われるが、容器に気相成長炭素繊維を充填した後のその容器中の液体が揮発等により存在しなくなると充填圧縮された気相成長炭素繊維の集合体には嵩高に成ろうとする復元力が働くことを示す。
【0053】
残る14個の試料をアルゴン中で2800℃にて30分間かけて加熱処理を行った。その結果、容器内のカーボンナノファイバーが黒鉛化した。容器の蓋を取り外しても黒鉛化カーボンナノファイバーは膨れ上がらずに容器の内部に収まったままであった。
【0054】
なお、黒鉛化前のカーボンナノファイバーは結晶構造が完全ではなかったが、黒鉛化後のカーボンナノファイバーは結晶構造がほぼ完全であった。
【0055】
(実施例2)
14個の各容器から黒鉛化カーボンナノファイバーを取り出して軽くもみほぐしてから、水/エタノール(50:50容積比)混合液を黒鉛化カーボンナノファイバー50g当たり80gの割合で加え、10リットルの丸缶の直径に合わせたプレス機で147.09975×10-4Pa(15kg/cm2)の加圧力で円盤状に圧縮した。その後に、圧縮物を丸缶に入れた。合計約2kgの黒鉛化カーボンナノファイバーを丸缶に入れた後に全体を軽く圧縮してから、約2リットルに相当する発泡スチロールパッキンを挟んで、蓋をして密閉した。この丸缶には、黒鉛化カーボンナノファイバー2kgと水/エタノール混合液3.2kgとが充填された状態であった。カーボンナノファイバーの嵩密度は約0.25g/cm3である。
【0056】
1ヶ月の経過後に容器内の様子を観察したところ、丸缶の外見に異常がなく、蓋を取ると中から黒鉛化カーボンナノファイバーが少し盛り上がったけれど、湿っていて飛散することがなかった。
【0057】
(比較例1)
エタノールを使用しないことの外は前記実施例1と同様にしてカーボンナノファイバーを黒鉛容器に充填しようとしたが、黒鉛容器には約40g(0.05g/cm3)以上に詰めることができなかった。
【0058】
(実施例3)
平均直径約45nm及び平均アスペクト比が小さくとも100であるカーボンナノファイバー3.2kgとエタノール6.8kgとを用いたことの外は前記実施例1と同様にして10リットルの容器にカーボンナノファイバーを充填したところ、その嵩密度は、約0.40g/cm3であった。
【0059】
【発明の効果】
この発明によると、導電性を失わずに、しかも高い嵩密度で充填されて成る気相成長炭素繊維を提供することができ、また、高い嵩密度で充填されて成る気相成長炭素繊維の製造方法を提供することができる。
【0060】
また、この発明によると気相成長炭素繊維充填物はその圧力を解放すると時間の経過とともに嵩が復元して、次の用途に容易に用いることができる。
【0061】
そして、この発明によると、気相成長炭素繊維の集合体を大きな嵩密度に圧縮充填することができるので、気相成長炭素繊維の集合体の輸送、移送、搬送及び貯蔵が効率的に成る。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、この発明に係る方法を実施する一例としてのプレス装置の正面を示す概略模式説明図である。
【図2】図2は、この発明に係る方法を実施する一例としてのプレス装置を上面から見たときの概略模式説明図である。
【図3】図3は、前記図1に示されるプレス装置における型内に気相成長炭素繊維の集合体を装填した状態を示す概略模式説明図である。
【図4】図4は、前記図1に示されるプレス装置における型内に装填した気相成長炭素繊維の集合体をピストンで加圧する状態を示す概略模式説明図である。
【図5】図5は、前記図1に示されるプレス装置における型内で圧縮された気相成長炭素繊維の集合体からピストンが離反した状態を示す概略模式説明図である。
【図6】図6は、前記図1に示されるプレス装置における型内で圧縮された気相成長炭素繊維の集合体の直下に移動容器が配置されている状態を示す概略模式説明図である。
【図7】図7は、前記図1に示されるプレス装置における型内で圧縮された気相成長炭素繊維の集合体をピストンによって移動容器内に押し込んだ状態を示す概略模式説明図である。
【図8】図8は、前記図1に示されるプレス装置における移動容器内に装填された気相成長炭素繊維を、移動容器ごと、前記プレス装置から取り出す状態を示す概略模式説明図である。
【符号の説明】
1…プレス枠、2…ピストン、3…型、4…容器挿入路、5…プレス台、6…プレス装置、7…ピストン挿入路、8…貫通孔、11…底型、12…支持桿、13…移動容器、14…気相成長炭素繊維の集合体。
Claims (5)
- 平均直径3〜200nmの気相成長炭素繊維を含有し、液体の存在下に0.1〜0.5g/cm3の嵩密度に圧縮されて気密性容器に充填され、前記液体を除去することにより前記嵩密度が復元することを特徴とする気相成長炭素繊維充填物。
- 前記気相成長炭素繊維は、平均直径3〜50nmであることを特徴とする請求項1に記載の気相成長炭素繊維充填物。
- 平均直径3〜200nmの気相成長炭素繊維を、液体と共に0.2〜50MPaで0.1〜0.5g/cm 3 の嵩密度に圧縮して気密性容器に充填し、前記液体を除去することにより前記嵩密度が復元することを特徴とする気相成長炭素繊維充填物の製造方法。
- 前記気相成長炭素繊維は、平均直径3〜50nmであることを特徴とする請求項3に記載の気相成長炭素繊維充填物の製造方法。
- 前記液体が水及び/又はアルコール類である請求項3又は4に記載の気相成長炭素繊維充填物の製造方法。
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