JP4232189B2 - 紙の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、紙の製造方法に関する。更に詳しくは、ポリアクリルアミド系紙力増強剤を用いた紙の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、紙を製造する際には、紙に強度を付与すべく紙力増強剤が用いられており、性能等の点からポリアクリルアミド系紙力増強剤が広く用いられている。通常、紙力増強剤を用いる場合には、一種の紙力増強剤を一度にまたは分割して紙料に添加される。しかしながら、紙力増強剤を一種類しか用いない場合には、地合いと濾水性のバランスを取ることが困難であり、紙力増強剤を多く使用しなければならなかった。
【0003】
そのため、このような問題を解決すべく、数種の紙力増強剤を用いる紙の製造方法が提案されている。例えば、両性ポリアクリルアミド系重合体とカチオン性基を有し前記両性ポリアクリルアミド系重合体とは異なるポリマーを含有する添加剤を用いる紙の製造法(特許文献1参照)が提案されており、さらに、両性ポリアクリルアミド系重合体とカチオン性基を有し、前記両性ポリアクリルアミド系重合体とは異なるポリマーとアルミニウム化合物を用いて抄紙する紙の製造法(特許文献2参照)などが提案されている。しかしながら、いずれの方法においても、地合いと濾水性のバランスを取ることが困難であった。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−78997号公報
【特許文献2】
特開平5−93393号公報
【特許文献3】
特開昭63−12792号公報
【特許文献4】
特開昭58−60094号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、地合いと濾水性のバランスを容易にとることができ、このため紙力を向上させ、結果として紙の製造に用いる紙力増強剤の使用量を減少させることができる紙の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、当該問題を解決すべく、検討を重ねたところ、異種の特定のポリアクリルアミド系紙力増強剤を併用することにより、前記課題を解決し得ることを見出し、さらにはこれら異種のポリアクリルアミド系紙力増強剤をそれぞれ特定の場所で添加することにより、著しい紙力増強効果が得られることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、(1)紙力増強剤の添加前後におけるJIS P 8121により測定される濾水度の差が50ml以下となる両性ポリアクリルアミド系紙力増強剤と(2)紙力増強剤の添加前後におけるJIS P 8121により測定される濾水度の差が50mlを超えるポリアクリルアミド系紙力増強剤を用い抄紙することを特徴とする紙の製造方法に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の紙の製造方法には、(1)紙力増強剤の添加前後におけるJIS P8121により測定される濾水度の差が50ml以下となる両性ポリアクリルアミド系紙力増強剤(以後、(1)成分という)および(2)紙力増強剤の添加前後におけるJIS P 8121により測定される濾水度の差が50mlを超えるポリアクリルアミド系紙力増強剤(以後、(2)成分という)を用いる。なお、ここでいう濾水度の差とは、紙料に紙力増強剤を0.5重量%添加したときの、JIS P 8121に記載されるカナディアンフリーネステスターを使用した濾水量と、紙力増強剤を添加する前の紙料の、カナディアンフリーネステスターを使用した濾水量の差である。紙力増強剤の添加は、紙料固形分の濃度を1.0%〜3.0%、紙料の温度を20〜40℃とし、添加された紙力増強剤が紙料と十分混合させることにより行う。なお、紙力増強剤の他に、硫酸アルミニウムやサイズ剤等を使用する場合には、紙力増強剤を添加する前の濾水度は、紙力増強剤以外の薬品を添加したときの濾水度とする。なお、濾水度の差が50ml以下となる両性ポリアクリルアミド系紙力増強剤の代わりに濾水度の差が20ml以下となる両性ポリアクリルアミド系紙力増強剤を用いることにより、紙力強度をさらに向上させることができるためより好ましい。
【0009】
本発明に用いられる(1)成分としては、紙力増強剤の添加前後におけるJISP 8121により測定される濾水度の差が50ml以下となる両性ポリアクリルアミド系紙力増強剤であれば特に制限されず公知のものを使用することができるが、特に紙力増強効果の点から、分岐構造を有するものが好ましい。(1)成分としては、通常、(a)アニオン性ビニルモノマー(以下、(a)成分という)、(b)カチオン性ビニルモノマー(以下、(b)成分という)、(c)(メタ)アクリルアミド(以下、(c)成分という)などの共重合体が挙げられる。(a)成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ムコン酸、シトラコン酸等のジカルボン酸;ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、などの有機スルホン酸;またはこれら各種有機酸のナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。(b)成分としては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどの第三級アミノ基を有するビニルモノマーまたはそれらの塩酸、硫酸、酢酸などの無機酸もしくは有機酸の塩類、または該第三級アミノ基含有ビニルモノマ−とメチルクロライド、ベンジルクロライド、ジメチル硫酸、エピクロルヒドリンなどの四級化剤との反応によって得られる第四級アンモニウム塩を含有するビニルモノマ−等が挙げられる。
【0010】
また、前記(a)〜(c)成分と共重合可能なモノマー(d)(以下、(d)成分という)を(a)〜(c)成分と共重合させても良い。(d)成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等のアクリル酸アルキルエステル類、アリルアルコール、(メタ)アリルスルホン酸ナトリウム、アリルアミン等のアリル基を含有するアリル系モノマー類、ジメチル(メタ)アクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド等のN−置換アクリルアミド系モノマー類、(メタ)アクリロニトリルなどの他、2官能ビニルモノマー系としてメチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド等のビスアクリルアミド系モノマー類やエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジアクリレート系モノマー類、ジビニルベンゼン等であり、3以上のビニル基を有する多官能ビニルモノマー類としては、1、3、5-トリアクロイルヘキサヒドロ−S−トリアジン、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルアミン、テトラメチロールメタンテトラアクリレートなどを単独でまたは複数種を混合して使用することができる。
【0011】
これら(d)成分の中では、アリル系モノマーを用いることにより、ラジカルの移動(連鎖移動)が生じやすくなり、分子量の調整が容易となるため好ましく、また、N-置換アクリルアミド系モノマー、ビスアクリルアミド系モノマー、ジアクリレート系モノマー、ジビニルベンゼン、多官能ビニルモノマーを用いることにより得られるポリマーを架橋により高分子量化させることができるため好ましい。
【0012】
なお、イソプロピルアルコール、ペンタノール等のアルコール類を連鎖移動剤として用いることにより、得られるアクリルアミド系樹脂の分子量を調整することができる。
【0013】
前記モノマーを重合させる方法としては特に制限されず、公知の方法を採用することができる。具体的には、前記モノマー類を混合したものに、公知のラジカル重合開始剤を加えることにより行われる。具体的には、例えば、所定の反応容器に溶媒として水を仕込み所定温度まで加温し、上記各種モノマーおよび水を仕込んだ滴下ロートと、重合開始剤と水を仕込んだ滴下ロートから、それぞれの成分を撹拌下に、反応容器中に滴下しながら重合する方法や所定の反応容器に上記各種モノマーを仕込み、所定の温度まで高め、重合開始剤を添加し、重合する方法などが挙げられる。
【0014】
(1)成分を得るためには、(a)成分を0.1〜15モル%程度、より好ましくは1〜10モル%、(b)成分を0.1〜15モル%程度、より好ましくは1〜10モル%、(c)成分を58〜99.8モル%程度、より好ましくは80〜98モル%用いる。(a)成分、(b)成分とも、0.1モル%未満では定着効果が低く、紙力効果が低くなる傾向があり、15モル%を越えるとポリマー中のアクリルアミド分が減少することにより紙力効果が低くなる傾向があり、さらには、高価となるため好ましくない。なお、(d)成分として、連鎖移動性モノマーを0.05〜10モル%程度、より好ましくは0.1モル%〜5.0モル%を用いることにより、分子量の調整が容易となる。連鎖移動性モノマーの成分が0.05モル%未満であれば、連鎖移動効果が弱く、また分岐点の生成も少ないために、分岐構造が不十分となる傾向がある。10モル%を超える場合は、連鎖移動効果が強すぎるため、ポリマー鎖が短くなり、高分子量ポリマーを生成しにくくなる。なお、架橋性モノマーを0.01〜2.0モル%程度、より好ましくは0.01〜1.0モル%を用いることにより、重合体の高分子量化ができる。架橋性モノマーを0.01モル%未満しか用いない場合には高分子量化効果は小さくなり、2.0モル%を超えて用いるとゲル化するおそれがある。
【0015】
このようにして得られた(1)成分の重量平均分子量は200万程度以上が好ましい。200万未満では充分な紙力効果が得られない場合がある。(1)成分は、通常5重量%以上の不揮発物を含有するように調整する。なお、(1)成分の不揮発物を5重量%に調整した場合の粘度は、20000mPa・s程度以下とすることが好ましい。粘度が20000mPa・sを超える場合は地合を乱しやすくなり、紙力向上効果が著しく低下する場合がある。
【0016】
本発明に用いられる(2)成分としては、紙力増強剤の添加前後におけるJIS P 8121により測定される濾水度の差が50mlを超えるポリアクリルアミド系紙力増強剤であれば特に制限されず公知のものを使用することができる。具体的には、前記(1)成分と同種のモノマーを使用することができる。
【0017】
(2)成分を得るためには、前記(a)成分を通常0.1〜20モル%程度、より好ましくは1〜15モル%、前記(b)成分を0.1〜20モル%程度、より好ましくは1〜15モル%、(c)成分を60〜99.8モル%程度、より好ましくは70〜98モル%用いる。(a)成分、(b)成分とも、0.1モル%未満では定着効果が低く、紙力効果が低くなる傾向があり、20モル%を越えるとポリマー中のアクリルアミド分が減少することにより紙力効果が低くなる傾向があり、さらには、高価となるため好ましくない。なお、(d)成分として連鎖移動性モノマーを0.05〜10モル%程度、より好ましくは0.1モル%〜5.0モル%用いることにより、分子量の調整が容易となり、また、架橋性モノマーを0.01〜2.0モル%、より好ましくは0.01〜1.0モル%用いることで重合体の高分子量化ができる。(2)成分は、(1)成分と同様の重合法により重合を行えば良く、通常5重量%以上の不揮発物を含有するように調整する。
【0018】
なお、(2)成分はアクリルアミド単独重合体あるいはアクリルアミド−アクリル酸共重合体で代表されるアニオン性アクリルアミド共重合体をホルマリンとジメチルアミン等のアルキルアミンを用いてマンニッヒ反応させたものでも良く、ホフマン分解反応させて得られるものでもよい。いずれもカチオン変性率は特に制限はなく、60モル%程度以下が好ましい。カチオン変性率が60モル%を超えると、地合が乱れやすくなり、紙力向上効果が著しく低下する。また、(2)成分は濾水度が50mlを越えれば、2種以上の紙力増強剤を混合して用いてもよい。
【0019】
これら(2)成分の重量平均分子量は特に制限されないが、不揮発物を5重量%に調整した場合の粘度は、20000mPa・s程度以下とすることが好ましい。粘度が20000mPa・sを超える場合は地合を乱しやすくなり、紙力向上効果が著しく低下する場合がある。
【0020】
前記(1)成分および(2)成分を添加する際の量は特に制限されないが、通常(1)成分を固形分重量換算で、紙料に対して、0.1〜1.5重量%程度、より好ましくは0.3〜1.0重量%、(2)成分を固形分重量換算で、紙料に対して、0.05%〜0.75重量%程度好ましくは0.1%〜0.5重量%とする。(1)の成分の使用量は固形分重量換算で、紙料に対して、0.1重量%未満の場合には紙力効果が十分でない場合があり、1.0重量%を超える場合には定着性が低下し、汚れを誘発しやすくなる。(2)の成分の使用量は固形分重量換算で、紙料に対して、0.05重量%未満の場合には濾水性が十分でなく、0.75重量%を超える場合には紙の地合が整いにくくなり、好ましくない。
【0021】
前記(1)成分と(2)成分の使用量(紙料に対する固形分重量%)にて、比((1)/(2))を1以上、より好ましくは2以上とすることにより、紙力効果が向上できる。(1)成分と(2)成分の使用固形分重量比が1未満では地合乱れが起こりやすく、紙力効果が向上しにくくなる傾向がある。なお、本発明の効果に影響を与えない範囲で、サイズ剤、ピッチコントロール剤、濾水剤等抄紙に必要な添加剤を添加できる。
【0022】
(1)成分および(2)成分の添加場所としては特に制限されないが、(1)成分を紙料濃度が1.5重量%以上の場所で、(2)成分を紙料濃度が1.5重量%未満の場所で添加することにより紙力強度の向上が著しくなるため好ましい。なお、紙料濃度が1.5重量%以上の場所としては、例えば、ミキシングチェスト、マシンチェスト、種箱などが挙げられ、紙料濃度が1.5重量%未満の場所としては、例えば、ファンポンプ、白水ピット、スクリーンなどが挙げられる。これらのうち、(1)成分の添加場所をマシンチェストで、(2)成分の添加場所をファンポンプとすることにより、特に著しい紙力効果が得られるため好ましい。
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、地合いと濾水性のバランスを容易にとることができるため、紙力向上効果を増幅させることができ、その結果、抄紙時の紙力増強剤の使用量を減少させることができる。
【0024】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例中の部および%はそれぞれ重量部および重量%を示す。また、実施例中の試験法を下記に示す。
【0025】
(1)濾水度
JIS P 8121に準拠して測定した。
【0026】
(2)破裂強度
JIS P 8131に準拠して測定し、比破裂強度(kPa・m2/g)で示した。
【0027】
また、実施例中の略語の名称を以下に示す。
(a)AA:アクリル酸 SMAS:メタアリルスルホン酸ナトリウム IA:イタコン酸
(b)DM:ジメチルアミノエチルメタクリレート DMAEA−BQ:ジメチルアミノエチルアクリレートのベンジルクロライド4級化物 DML:DMのベンジルクロライド4級化物 Mn:マンニッヒ変性物 Hf:ホフマン変性物
(c)AM:アクリルアミド
(d)DMAA:ジメチルアクリルアミド MBAA:メチレンビスアクリルアミド TAIC:トリアリルイソシアヌレート DGA:ジエチレングリコールジアクリレート AN:アクリロニトリル
【0028】
製造例1(PAM1の製造法)
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス導入管および2つの滴下ロートを備えた反応装置に、イオン交換水350部を入れ、窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後、90℃まで加熱した。一方の滴下ロートにアクリルアミド179部、62.5%硫酸11部、80%アクリル酸水溶液12.8部、メタアリルスルホン酸ナトリウム2.3部、ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト22.4部、ジメチルアクリルアミド2.8部およびイオン交換水340部を仕込み、硫酸によりpHを3に調整した。また、他方の滴下ロートに過硫酸アンモニウム0.3部とイオン交換水100部を入れた。次に、両方の滴下ロートより系内にモノマーおよび触媒を約3時間かけて滴下した。滴下終了後過硫酸アンモニウム0.45部とイオン交換水10部を入れ1時間保温し、イオン交換水80部を投入し、固形分20.2%、粘度(25℃)が6000mPa・sの共重合体水溶液を得た。各製造例で用いたモノマー成分と比率を表1に、また得られた共重合体水溶液の性状値を表2に示す。
【0029】
製造例2(PAM2製造法)
製造例1と同様の反応装置に、イオン交換水350部を入れ、窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後、90℃まで加熱した。一方の滴下ロートにアクリルアミド181部、62.5%硫酸11部、イタコン酸9.1部、メタアリルスルホン酸ナトリウム2.2部、ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト22部、ジメチルアクリルアミド2.8部およびイオン交換水340部を仕込み、硫酸によりpHを3に調整した。また、他方の滴下ロートに過硫酸アンモニウム0.3部とイオン交換水100部を入れた。次に、両方の滴下ロートより系内にモノマーおよび触媒を約3時間かけて滴下した。滴下終了後過硫酸アンモニウム0.45部とイオン交換水10部を入れ1時間保温し、イオン交換水80部を投入し、固形分20.3%、粘度(25℃)が3000mPa・sの共重合体水溶液を得た。各製造例で用いたモノマー成分と比率を表1に、また得られた共重合体水溶液の性状値を表2に示す。
【0030】
製造例3(PAM3製造法)
製造例1と同様の反応装置に、アクリルアミド183.1部、75%ジメチルアミノエチルアクリレートの4級化物水溶液50.2部、イタコン酸9.1部、メタアリルスルホン酸ナトリウム1.1部、トリアリルイソシアヌレート0.09部及びイオン交換水810部を仕込み、窒素ガスを通じて反応系の酸素を除去した。系内を55℃にし攪拌下に重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.3部とイオン交換水10部を投入した。90℃まで昇温した後30分保温し、過硫酸アンモニウム0.45部とイオン交換水10部を投入して1時間保温した。重合終了後、イオン交換水90部を投入し、固形分20.1%、粘度(25℃)が8,000mPa・sの共重合体水溶液を得た。各製造例で用いたモノマー成分と比率を表1に、また得られた共重合体水溶液の性状値を表2に示す。
【0031】
製造例4(PAM4製造法)
製造例1と同様の反応装置に、アクリルアミド183.1部、62.5%硫酸11部、ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト22.1部、イタコン酸9.2部、ジメチルアクリルアミド2.8部及びイオン交換水790部を仕込み、窒素ガスを通じて反応系の酸素を除去した。系内を55℃にし攪拌下に重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.3部とイオン交換水10部を投入した。90℃まで昇温した後30分保温し、過硫酸アンモニウム0.45部とイオン交換水10部を投入して1時間保温した。重合終了後、イオン交換水80部を投入し、固形分20.2%、粘度(25℃)が8,000mPa・sの共重合体水溶液を得た。各製造例で用いたモノマー成分と比率を表1に、また得られた共重合体水溶液の性状値を表2に示す。
【0032】
製造例5(PAM5の製造法)
製造例1と同様の反応装置に、イオン交換水260部を入れ、硫酸によりpHを3に調整し、窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後、90℃まで加熱した。一方の滴下ロートにアクリルアミド135.2部、62.5%硫酸8.4部、80%アクリル酸水溶液9.7部、メタアリルスルホン酸ナトリウム0.9部、ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト16.8部、ジメチルアクリルアミド2.1部およびイオン交換水310部を仕込み、硫酸によりpHを3に調整した。また、他方の滴下ロートに過硫酸アンモニウム0.23部とイオン交換水100部を入れた。次に、両方の滴下ロートより系内にモノマーおよび触媒を約3時間かけて滴下した。滴下終了後過硫酸アンモニウム0.34部とイオン交換水10部を入れ1時間保温し、イオン交換水260部を投入し、固形分15.2%、粘度(25℃)が8000mPa・sの共重合体水溶液を得た。各製造例で用いたモノマー成分と比率を表1に、また得られた共重合体水溶液の性状値を表2に示す。
【0033】
製造例6(PAM6製造法)
製造例1と同様の反応装置に、アクリルアミド135.2部、62.5%硫酸4.0部、ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト8.1部、60%ジメチルアミノエチルメタクリレ−トの4級化物水溶液24.4部、イタコン酸6.7部、メタアリルスルホン酸ナトリウム0.8部、メチレンビスアクリルアミド0.06部及びイオン交換水660部を仕込み、窒素ガスを通じて反応系の酸素を除去した。系内を55℃にし攪拌下に重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.23部とイオン交換水10部を投入した。90℃まで昇温した後30分保温し、過硫酸アンモニウム0.34部とイオン交換水10部を投入して1時間保温した。重合終了後、イオン交換水260部を投入し、固形分15.2%、粘度(25℃)が8,000mPa・sの共重合体水溶液を得た。各製造例で用いたモノマー成分と比率を表1に、また得られた共重合体水溶液の性状値を表2に示す。
【0034】
製造例7(PAM7製造法)
製造例1と同様の反応装置に、アクリルアミド95.3部、62.5%硫酸5.7部、ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト11.4部、イタコン酸4.7部、メチレンビスアクリルアミド0.04部及びイオン交換水510部を仕込み、窒素ガスを通じて反応系の酸素を除去した。過硫酸アンモニウム0.15部とイオン交換水10部を投入した。90℃まで昇温した後30分保温し、過硫酸アンモニウム0.23部とイオン交換水10部を投入して1時間保温した。重合終了後、イオン交換水490部を投入し、固形分10.2%、粘度(25℃)が10,000mPa・sの共重合体水溶液を得た。各製造例で用いたモノマー成分と比率を表1に、また得られた共重合体水溶液の性状値を表2に示す。
【0035】
製造例8(PAM8製造法)
製造例1と同様の反応装置に、アクリルアミド75.1部、62.5%硫酸4.5部、ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト9.1部、イタコン酸1.9部、80%アクリル酸水溶液2.6部、トリアリルイソシアヌレート0.04部及びイオン交換水470部を仕込み、窒素ガスを通じて反応系の酸素を除去した。系内を55℃にし攪拌下に重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.12部とイオン交換水10部を投入した。90℃まで昇温した後30分保温し、過硫酸アンモニウム0.18部とイオン交換水10部を投入して1時間保温した。重合終了後、イオン交換水530部を投入し、固形分8.2%、粘度(25℃)が8,000mPa・sの共重合体水溶液を得た。各製造例で用いたモノマー成分と比率を表1に、また得られた共重合体水溶液の性状値を表2に示す。
【0036】
製造例9(PAM9製造法)
製造例1と同様の反応装置に、アクリルアミド47.6部、62.5%硫酸2.9部、ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト5.9部、80%アクリル酸水溶液3.4部、ジエチレングリコールジアクリレート0.03部及びイオン交換水370部を仕込み、窒素ガスを通じて反応系の酸素を除去した。系内を55℃にし攪拌下に重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.08部とイオン交換水10部および亜硫酸水素ナトリウム0.03部とイオン交換水10部を投入した。90℃まで昇温した後30分保温し、過硫酸アンモニウム0.11部とイオン交換水10部を投入して1時間保温した。重合終了後、イオン交換水660部を投入し、固形分5.2%、粘度(25℃)が15,000mPa・sの共重合体水溶液を得た。各製造例で用いたモノマー成分と比率を表1に、また得られた共重合体水溶液の性状値を表2に示す。
【0037】
製造例10(PAM10製造法)
製造例1と同様の反応装置に、アクリルアミド29.5部、62.5%硫酸1.8部、ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト3.6部、80%アクリル酸水溶液2.1部、ジエチレングリコールジアクリレート0.04部及びイオン交換水300部を仕込み、窒素ガスを通じて反応系の酸素を除去した。系内を55℃にし攪拌下に重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.05部とイオン交換水10部および亜硫酸水素ナトリウム0.02部とイオン交換水10部を投入した。90℃まで昇温した後30分保温し、過硫酸アンモニウム0.07部とイオン交換水10部を投入して1時間保温した。重合終了後、イオン交換水760部を投入し、固形分3.2%、粘度(25℃)が15,000mPa・sの共重合体水溶液を得た。各製造例で用いたモノマー成分と比率を表1に、また得られた共重合体水溶液の性状値を表2に示す。
【0038】
製造例11(PAM11製造法)
製造例1と同様の反応装置に、アクリルアミド124部、80%アクリル酸水溶液22部、アクリロニトリル26部及びイオン交換水650部を仕込み、窒素ガスを通じて反応系の酸素を除去した。系内を40℃にし攪拌下に重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.23部とイオン交換水10部および亜硫酸水素ナトリウム0.09部とイオン交換水10部を投入した。90℃まで昇温した後、2時間保温した。重合終了後、イオン交換水270部を投入し、固形分15.2%、粘度(25℃)が5,000mPa・sの共重合体水溶液を得た。各製造例で用いたモノマー成分と比率を表1に、また得られた共重合体水溶液の性状値を表2に示す。
【0039】
製造例12(PAM12製造法)
製造例1と同様の反応装置に、アクリルアミド73部、80%アクリル酸水溶液10部及びイオン交換水440部を仕込み、窒素ガスを通じて反応系の酸素を除去した。系内を40℃にし攪拌下に重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.1部とイオン交換水10部および亜硫酸水素ナトリウム0.1部とイオン交換水10部を投入した。90℃まで昇温した後、1時間保温した。イオン交換水360部を投入後40℃まで冷却し、48%水酸化ナトリウム0.4部、50%ジメチルアミン49部、37%ホルマリン37部を投入して1時間保温した。重合終了後、イオン交換水180部を投入し、固形分10.2%、粘度(25℃)が10,000mPa・sの共重合体水溶液を得た。各製造例で用いたモノマー成分と比率を表1に、また得られた共重合体水溶液の性状値を表2に示す。
【0040】
製造例13(PAM13製造法)
製造例1と同様の反応装置に、アクリルアミド71.7部及びイオン交換水393部を仕込み、窒素ガスを通じて反応系の酸素を除去した。系内を40℃にし攪拌下に重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.15部とイオン交換水10部および亜硫酸水素ナトリウム0.15部とイオン交換水10部を投入した。90℃まで昇温した後、1時間保温した。20℃まで冷却後、12%次亜塩素酸ナトリウム251.7部と48%水酸化ナトリウム33.8部を投入し、30分保温した。重合終了後、イオン交換水395部を投入し、pH4.0、有効成分5.0%、粘度(25℃)が20mPa・sの共重合体水溶液を得た。各製造例で用いたモノマー成分と比率を表1に、また得られた共重合体水溶液の性状値を表2に示す。
【0041】
【表1】
表中の数字はいずれもモル%
【0042】
【表2】
粘度は、25℃での測定値。
PAM13の不揮発物は有効成分を示し、重量平均分子量は変性前のポリマーの測定値。
【0043】
実施例1
段ボ−ル古紙をナイアガラ式ビーターにて叩解し、カナディアン・スタンダ−ド・フリ−ネス(C.S.F)350mlに調整した紙料に硫酸バンドを1.0%添加してpH6.5とした。当該紙料スラリーを抄紙するにおいて、紙料濃度2.0%として製造例1で得られた重合体水溶液を紙力増強剤として対紙料固形量0.4%添加し、その後、紙料濃度1.0%として製造例9で得られた重合体水溶液を紙力増強剤として対紙料0.1%添加し、タッピ・シートマシンにて脱水し、5kg/cm2 で2分間プレスして、坪量150g/m2 となるよう抄紙した。次いで回転型乾燥機で105℃において4分間乾燥し、23℃、50%R.H.の条件下に24時間調湿したのち、比破裂強度を測定した。
【0044】
実施例2〜11、比較例1〜7
使用紙力増強剤、紙力増強剤添加時の紙料濃度を表3のように変更した他は、実施例1と同様にして比破裂強度を測定した。結果を表3に示す。
【0045】
【表3】
添加場所1での紙料濃度は2.0%、添加場所2での紙料濃度は1.0%である。
【0046】
実施例12
段ボ−ル古紙をナイアガラ式ビーターにて叩解し、カナディアン・スタンダ−ド・フリ−ネス(C.S.F)305mlに調整した紙料に硫酸バンドを1.0%添加してpH6.5とした。当該紙料スラリーを抄紙するにおいて、紙料濃度1.5%として製造例1で得られた重合体水溶液を紙力増強剤として対紙料1.0%添加し、その後、紙料濃度0.8%として製造例3で得られた重合体水溶液を紙力増強剤として対紙料0.2%添加し、タッピ・シートマシンにて脱水し、5kg/cm2 で2分間プレスして、坪量150g/m2 となるよう抄紙した。次いで回転型乾燥機で105℃において4分間乾燥し、23℃、50%R.H.の条件下に24時間調湿したのち、比破裂強度を測定した。
【0047】
実施例13〜24、比較例8〜12
使用紙力増強剤、紙力増強剤添加時の紙料濃度を表4のように変更した他は、実施例12と同様にして比破裂強度を測定した。結果を表4に示す。
【0048】
【表4】
添加場所1での紙料濃度は1.5%、添加場所2での紙料濃度は0.8%である。
【0049】
表3、4から明らかなように、本発明によれば、紙力剤1液を添加する処方および紙力剤1液を分割添加する処方対比強度が高い板紙を容易に製造することが出来る(実施例1〜24、比較例1〜4、7、8〜10)。なお、(1)成分/(2)成分が1未満の場合は、若干紙力効果が低下する傾向にあるため、1以上とすることが好ましい(実施例5と10、18と20)。さらに、(1)成分を紙料濃度1.5%未満として添加し、(2)成分を紙料濃度1.5%以上として添加すると若干紙力効果が低下する傾向にあるため、(1)成分は紙料濃度1.5%以上として、(2)成分は紙料濃度1.5%未満として添加することが好ましい(実施例5と11、17と19)。(1)成分の重量平均分子量が200万未満の場合、若干紙力効果が低下する傾向にあるため、(1)成分の重量平均分子量は200万以上とすることが好ましい(実施例4と8、13と23)。(2)成分の5重量%水溶液での粘度が20000mPa・sを越える場合、地合乱れが起こることで若干紙力効果が低下する傾向にあるため、(2)成分の5重量%水溶液での粘度は20000mPa・s以下とすることが好ましい(実施例1と9、12と24)。異なる(1)成分を紙料濃度1.5%以上として、紙料濃度1.5%未満として添加しても充分な紙力効果が得られない(実施例1〜24、比較例5、11)。また、異なる(2)成分を紙料濃度1.5%以上として、紙料濃度1.5%未満として添加しても充分な紙力効果が得られない(実施例1〜24、比較例6、12)。
Claims (5)
- (1)紙力増強剤の添加前後におけるJIS P 8121により測定される濾水度の差が50ml以下となる両性ポリアクリルアミド系紙力増強剤と(2)紙力増強剤の添加前後におけるJIS P 8121により測定される濾水度の差が50mlを超えるポリアクリルアミド系紙力増強剤を用い抄紙することを特徴とする紙の製造方法。
- (1)紙力増強剤の添加前後におけるJIS P 8121により測定される濾水度の差が50ml以下となる両性ポリアクリルアミド系紙力増強剤が重量平均分子量が200万以上である請求項1に記載の紙の製造方法。
- (1)紙力増強剤の添加前後におけるJIS P 8121により測定される濾水度の差が50ml以下となる両性ポリアクリルアミド系紙力増強剤を紙料濃度が1.5重量%以上の場所で添加し、(2)紙力増強剤の添加前後におけるJIS P 8121により測定される濾水度の差が50mlを超えるポリアクリルアミド系紙力増強剤を紙料濃度が1.5重量%未満の場所で添加することを特徴とする請求項1または2に記載の紙の製造方法。
- (1)紙力増強剤の添加前後におけるJIS P 8121により測定される濾水度の差が50ml以下となる両性ポリアクリルアミド系紙力増強剤の使用量と(2)紙力増強剤の添加前後におけるJIS P 8121により測定される濾水度の差が50mlを超えるポリアクリルアミド系紙力増強剤の使用固形分重量比(1)/(2)が、1以上である請求項1〜3のいずれかに記載の紙の製造方法。
- (1)紙力増強剤の添加前後におけるJIS P 8121により測定される濾水度の差が50ml以下となる両性ポリアクリルアミド系紙力増強剤および(2)紙力増強剤の添加前後におけるJIS P 8121により測定される濾水度の差が50mlを超えるポリアクリルアミド系紙力増強剤が、5重量%以上の不揮発物を含有し、かつ5重量%水溶液としたときの粘度が20000mPa・s以下である請求項1〜4のいずれかに記載の紙の製造方法。
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