以下、本発明による蒸気調理器の一実施形態を図1〜15に基づき説明する。図1は外観斜視図、図2は加熱室の扉を開いた状態の外観斜視図、図3は加熱室の扉を取り去った状態の正面図、図4は内部機構の基本構造図、図5は図4と直角の方向から見た内部機構の基本構造図、図6は加熱室の上面図、図7は蒸気発生装置の垂直断面図、図8は図7のA−A線の箇所における水平断面図、図9は図7のB−B線の箇所における水平断面図、図10は蒸気発生装置の正面図、図11は送風装置の垂直断面図、図12はサブキャビティの底面パネルの上面図、図13は制御ブロック図、図14は図4と同様の基本構造図にして図4と異なる状態を示すもの、図15は図5と同様の基本構造図にして図5と異なる状態を示すものである。
蒸気調理器1は直方体形状のキャビネット10を備える。キャビネット10の正面には扉11が設けられる。扉11は下端を中心に垂直面内で回動するものであり、上部のハンドル12を握って手前に引くことにより、図1に示す垂直な閉鎖状態から図2に示す水平な開放状態へと90゜姿勢変換させることができる。扉11は、耐熱ガラスをはめ込んだ透視部を備える中央部分11Cの左右に、金属製装飾板で仕上げられた左側部分11L及び右側部分11Rを対称的に配置した構成を備える。右側部分11Rには操作パネル13が設けられている。
扉11を開くとキャビネット10の正面が露出する。扉11の中央部分11Cに対応する箇所には加熱室20が設けられている。扉11の左側部分11Lに対応する箇所には水タンク室70が設けられている。扉11の右側部分11Rに対応する箇所には特に開口部は設けられていないが、その箇所の内部に制御基板が配置されている。
加熱室20は直方体形状で、扉11に面する正面側は全面的に開口部となっている。加熱室20の残りの面はステンレス鋼板で形成される。加熱室20の周囲には断熱対策が施される。加熱室20の床面にはステンレス鋼板製の受皿21が置かれ、受皿21の上には被加熱物Fを載置するステンレス鋼線製のラック22が置かれる。
加熱室20の中の蒸気(通常の場合、加熱室20内の気体は空気であるが、蒸気調理を始めると空気が蒸気で置き換えられて行く。本明細書では加熱室20内の気体が蒸気に置き換わっているものとして説明を進める)は図4に示す外部循環路30を通って循環する。
外部循環路30の始端となるのは、加熱室20の奥の側壁の上部の片隅に形成された吸込口28である。本実施形態では、図3に見られるように、側壁の左上隅に吸込口28が配置されている。吸込口28は複数の水平なスリットを上下に並べたものであり、上方のスリットほど長く、下に行くほど短くして、全体として直角三角形の開口形状を形づくっている(図11参照)。直角三角形の直角の角は加熱室20の奥の側壁の角に合わせる。すなわち吸込口28の開口度は加熱室20の奥の側壁の上辺に近いほど大きい。また左辺に近いほど大きい。
吸込口28に続くのは外部循環路30内を流れる気流を形成する送風装置25である。送風装置25は加熱室20の一側壁の外面に近接して配置される。一側壁としては加熱室20の奥の側壁が選定されている。図11に見られるように、送風装置25は遠心ファン26及びこれを収容するファンケーシング27と、遠心ファン26を回転させるモータ29を備える。遠心ファン26としてはシロッコファンを用いる。モータ29には高速回転が可能な直流モータを使用する。ファンケーシング27は加熱室20の奥の側壁の外面の、吸込口28の右下の位置に固定されている。
ファンケーシング27は吸込口27aと吐出口27bを有する。吐出口27bは特定の方向を指向するが、その方向の意味は後で説明する。
外部循環路30の中で送風装置25に続くのは蒸気発生装置50である。蒸気発生装置50の詳細は後で説明する。蒸気派生装置50は送風装置25と同様に加熱室20の奥の側壁の外面に近接して配置される。ただし送風装置25が加熱室20の左寄りの位置に配置されているのに対し、蒸気発生装置50は加熱室20のセンターライン上にある。
外部循環路30の中で、ファンケーシング27の吐出口27bから蒸気発生装置50までの区間はダクト31により構成される。蒸気発生装置50を出た後の区間はダクト35により構成される。ダクト35は加熱室20に隣接して設けられたサブキャビティ40に接続する。
サブキャビティ40は、加熱室20の天井部の上で、平面的に見て天井部の中央部にあたる箇所に設けられる。サブキャビティ40は平面形状円形であり、その内側には蒸気の加熱手段である気体昇温ヒータ41が配置されている。気体昇温ヒータ41はメインヒータ41aとサブヒータ41bからなり、いずれもシーズヒータにより構成される。加熱室20の天井部にはサブキャビティ40と同大の開口部が形成され、ここにサブキャビティ40の底面を構成する底面パネル42がはめ込まれる。
底面パネル42には複数の上部噴気孔43が形成される。上部噴気孔43の各々は真下を指向する小孔であり、ほぼパネル全面にわたり分散配置されている。上部噴気孔43は平面的、すなわち二次元的に分散配置されるが、底面パネル42に凹凸を設けて三次元的な要素を加味してもよい。
底面パネル42は上下両面とも塗装などの表面処理により暗色に仕上げられている。使用を重ねることにより暗色に変色する金属素材で底面パネル42を成形してもよい。あるいは、暗色のセラミック成型品で底面パネル42を構成してもよい。
別体の底面パネル42でサブキャビティ40の底面を構成するのでなく、加熱室20の天板をそのままサブキャビティ40の底面に兼用することもできる。この場合には、天板のうち、サブキャビティ40に相当する箇所に上部噴気孔43を設け、またその上下両面を暗色に仕上げることになる。
加熱室20の左右両側壁の外側には、図5に示すように小型のサブキャビティ44が設けられる。サブキャビティ44はサブキャビティ40にダクト45で接続し、サブキャビティ40から蒸気の供給を受ける(図5、6参照)。ダクト45は断面円形のパイプにより構成される。ステンレス鋼製のパイプを用いるのが望ましい。
加熱室20の側壁下部には、サブキャビティ44に相当する箇所に複数の側部噴気孔46が設けられる。各側部噴気孔46は加熱室20に入れられた被加熱物Fの方向、正確に言えば被加熱物Fの下方を指向する小孔であり、ラック22に載置された被加熱物Fの方向に蒸気を噴出させる。噴出した蒸気が被加熱物Fの下に入り込むよう、側部噴気孔46の高さ及び向きが設定される。また、左右から噴出した蒸気が被加熱物Fの下で出会うように側部噴気孔46の位置及び/又は方向が設定されている。
側部噴気孔46は別体のパネルに形成してもよく、加熱室20の側壁に直接小孔を穿つ形で形成してもよい。これは上部噴気孔43の場合と同様である。しかしながらサブキャビティ40の場合と異なり、サブキャビティ44に相当する箇所を暗色に仕上げる必要はない。
なお、左右合わせた側部噴気孔46の面積和は、上部噴気孔43の面積和よりも大とされている。このように大面積とした側部噴気孔46に大量の蒸気を供給するため、1個のサブキャビティ44につき複数(図では4本)のダクト45が設けられている。
続いて蒸気発生装置50の構造を説明する。蒸気発生装置50は中心線を垂直にして配置された筒型のポット51を備える。ポット51は垂直面を構成する側壁の平面輪郭形状が偏平で、細長い水平断面形状、すなわち長方形、長円形、あるいはこれらに類する水平断面形状を有する。ポット51には耐熱性が求められるが、その条件を満たすかぎり、どのような材料で形成してもよい。金属でもよく、合成樹脂でもよい。セラミックの採用も可能である。異種材料を組み合わせてもよい。
蒸気発生装置50は、図6に見られる通り、ポット51の一方の偏平側面が加熱室20の奥の側壁と平行をなす形で取り付けられている。この形であれば、加熱室20の外面とキャビネット10の内面との空間の幅が狭くても蒸気発生装置50を配置することができる。従って前記空間の幅を縮めてキャビネット10をコンパクトにし、キャビネット10内の空間利用効率を向上させることができる。
ポット51内の水を熱するのはポット51の底部に配置された蒸気発生ヒータ52である。蒸気発生ヒータ52はシーズヒータからなり、ポット51内の水に浸って水を直接加熱する。図9に見られるように、ポット51の平面形状が偏平であることに合わせ、蒸気発生ヒータ52もポット51の内面に沿う形で平面形状馬蹄形に曲げられている。サブキャビティ40の中の気体昇温ヒータ41と同様、蒸気発生ヒータ52もメインヒータ52aとサブヒータ52bからなり、前者を外側、後者を内側に配置している。断面の直径も異なり、メインヒータ52aは太く、サブヒータ52bは細い。
面積の等しい面の中にシーズヒータを配置することを考えた場合、円形の面の中に円形に曲げたシーズヒータを入れるケースよりも、長方形や長円形の面の中に馬蹄形のような偏平な形に曲げたシーズヒータを入れるケースの方がシーズヒータの長さが長くなる。すなわち断面円形のポットに円形に曲げたシーズヒータを入れるよりも、細長い水平断面形状のポットの中に馬蹄形のように曲げたシーズヒータを入れた方が同一水量に対するシーズヒータの長さの比率が大きくなり、シーズヒータの表面積が大きくなるとともに、大きな電力も投入できるので、熱を水に伝えやすくなる。このため本実施形態の蒸気発生装置50では水を速やかに加熱することができる。
ポット51の上部には、外部循環路30を流れる気流に蒸気を吸い込ませるための蒸気吸引部が形成される。蒸気吸引部を構成するのはポット51の一方の偏平側面から他方の偏平側面に抜けるように形成された蒸気吸引エジェクタ34である。蒸気吸引エジェクタ34は計3個、互いに所定間隔を置いて、同一高さレベルで互いに並列且つ平行に配置されている。
個々の蒸気吸引エジェクタ34はインナーノズル34a及びその吐出端を囲むアウターノズル34bにより構成される。蒸気吸引エジェクタ34はポット51の軸線と交差する方向に延びる。実施形態の場合、交差角は直角、すなわち蒸気吸引エジェクタ34は水平である。インナーノズル34aにはダクト31が接続され、アウターノズル34bにはダクト35が接続される。蒸気吸引エジェクタ34はサブキャビティ40とほぼ同じ高さであり、ダクト35はほぼ水平に延びる。このように蒸気吸引部とサブキャビティ40を水平なダクト35で直線的に結ぶことにより、蒸気吸引部を過ぎた後の外部循環路30を最短経路とすることができる。
外部循環路30は、蒸気発生装置50以降、3個の蒸気吸引エジェクタ34とこれに続くダクト35を含む3本の分路に分かれる。このため、通路の圧力損失が少なくなり、循環蒸気量を大きくできるとともに、外部循環路30を流れる気体に蒸気を速やかに混合することができる。
このようにポット51の上部に設けられた3個の蒸気吸引エジェクタ34は垂直断面形状が偏平な空間を占める蒸気吸引部を構成し、広い領域をカバーするから、蒸気吸引領域が広がり、発生した蒸気がまんべんなく均一に吸引されるとともに、吸引された蒸気が速やかに送り出され、蒸気発生装置50の蒸気発生能力がさらに向上する。また3個の蒸気吸引エジェクタ34が同一高さレベルで互いに並列に配置されているから、高さ方向に空間のゆとりがない場合でも大量の蒸気の輸送が可能となる。
ここで、送風装置25のファンケーシング27の向きについて説明する。ファンケーシング27の吸込口27aと吐出口27bとは互いに直角をなす。吐出口27bが蒸気吸引部である蒸気吸引エジェクタ34の方向を指向するようにファンケーシング27の位置と角度を設定する(図11参照)。吐出口27bと蒸気吸引エジェクタ34の間はダクト31により通風路が確保される。吸込口28と吸込口27aの間にも図示しないダクトにより通風路を確保する。
上記構成により、吸込口28から吸い込まれた気体が遠心ファンによる送風ルートとしては最短のルートを通って蒸気吸引エジェクタ34に到達することになる。このため外部循環路30の長さが短縮され、送風時の圧力損失が低減する。これにより外部循環路30のエネルギー投入効率が向上する。また外部循環路30の放熱面積も縮小するので熱損失も低減する。これらを併せ、外部循環路30の循環効率が向上する。
吐出口27bから吐出される気流は、図11中に矢印群で象徴するように、その中心部において最も流速が大きく、ダクト31の内面に接近するほど流速が小さくなる。これはダクト31の内面と気体との摩擦によるものである。気流のうち最も流速の大きい部分を、3個並んだ蒸気吸引エジェクタ34の中の中央のものに向ける。これにより、中央の蒸気吸引エジェクタ34と吐出口27bとの間には直接的な連通関係が成立する。
ここで「直接的な連通関係」とは、吐出口27bから吐出された気体が寄り道することなく蒸気吸引エジェクタ34に到達するという意味である。この「直接的な連通関係」を、中央の蒸気吸引エジェクタ34だけでなく、その両側の蒸気吸引エジェクタ34についても成立させる。これはダクト31のうち吐出口27bにつながる部分の幅及び角度を適切に設定することにより可能になる。このように構成することにより、各蒸気吸引エジェクタ34に分配される風量のばらつきが少なくなり、広い範囲から均等に蒸気を吸引することができるから、蒸気吸引効率が向上する。
図4に戻って説明を続ける。ポット51の底部は漏斗状に成形され、そこから排水パイプ53が垂下する。排水パイプ53の途中には排水バルブ54が設けられている。排水パイプ53の下端は加熱室20の下に向かって所定角度の勾配をなす形で折れ曲がる。加熱室20の下に配置された排水タンク14が排水パイプ53の端を受ける。排水タンク14はキャビネット10の正面側から引き出して内部の水を捨てることができる。
ポット51には給水路を介して給水する。給水路を構成するのは水タンク71と排水パイプ53を結ぶ給水パイプ55である。給水パイプ55は排水バルブ54よりも上の箇所で排水パイプ53に接続される。排水パイプ53との接続箇所から引き出された給水パイプ55は一旦逆U字形に持ち上げられた後降下する。降下する部分の途中に給水ポンプ57が設置されている。給水パイプ55は横向きの漏斗状受入口58に連通する。水平な連通パイプ90が給水パイプ55と受入口58を接続する。
ポット51の内部にはポット水位センサ56が配設される。ポット水位センサは蒸気発生ヒータ52より少し高い位置にある。
水タンク室70には横幅の狭い直方体形状の水タンク71が挿入される。この水タンク71の底部から延び出す給水パイプ72が受入口58に接続される。
水タンク71を水タンク室70から引き出し、給水パイプ72が受入口58から離れたとき、そのままでは水タンク70内の水と給水パイプ55側の水が流出してしまう。これを防ぐため、受入口58と給水パイプ72にカップリングプラグ59a、59bを装着する。図4のように給水パイプ72を受入口58に接続した状態では、カップリングプラグ59a、59bは互いに連結し、通水可能な状態になる。給水パイプ72を受入口58から引き離せば、カップリングプラグ59a、59bはそれぞれ閉鎖状態になり、給水パイプ55と水タンク71からの水の流出が止まる。
連通パイプ90には、受入口58の方から順に給水パイプ55、圧力検知パイプ91、及び圧力開放パイプ92が接続される。圧力検知パイプ91の上端には水位センサ81が設けられる。水位センサ81は水タンク71の中の水位を測定する。圧力開放パイプ92の上端は水平に曲がり、加熱室20から蒸気を逃がす排気路に接続する。
排気路を構成するのは排気ダクト93及び容器93aである。排気ダクト93が排気路の前部を構成し、容器93aが排気路の後部を構成する。長さは排気ダクト93の方が長い。排気ダクト93は加熱室20の側壁から延び出し、次第に高さを高めた後、容器93aに接続する。容器93aは機外、すなわちキャビネット10の外に連通している。容器93aは合成樹脂により形成され、排気ダクト93より流路の断面積が大きい。
排気ダクト93の入口は加熱室20の内側に向かって開いている。このため、排気ダクト93の中を排気と逆の方向に流下する液体があれば、それは加熱室20の中に入り、加熱室の底に溜まる。加熱室20の底に液体が溜まったことは一目でわかるから、処理を忘れることがない。
排気ダクト93の少なくとも一部は放熱部94となる。放熱部94は外面に複数の放熱フィン95を有する金属パイプにより構成される。
容器93aはダクト31の横を通過する。この箇所において、ダクト31と容器93aの間には連通路が設けられる。連通路を構成するのは連通ダクト96であり、その内部には電動式のダンパ97が設けられている。ダンパ97は通常状態では連通ダクト96を閉鎖する。
給水パイプ55の最も高くなった部分は溢水路を介して容器93aに連通する。溢水路を構成するのは、一端を給水パイプ55に接続し、他端を圧力開放パイプ92の上端水平部に接続した溢水パイプ98である。圧力開放パイプ92が容器93aに接続する箇所の高さが溢水レベルということになる。溢水レベルは、ポット51内の通常の水位レベルよりも高く、蒸気吸引エジェクタ34よりも低い高さに設定されている。
容器93aは、排気ダクト93、連通ダクト96、溢水パイプ98と様々なダクトやパイプを受け入れるべく複雑な形状を呈しているが、合成樹脂により形成するのでそれ自身には継ぎ目をなくすことができる。このため、継ぎ目からの水漏れといった問題が発生しない。
蒸気調理器1の動作制御を行うのは図13に示す制御装置80である。制御装置80はマイクロプロセッサ及びメモリを含み、所定のプログラムに従って蒸気調理器1を制御する。制御状況は操作パネル13の中の表示部に表示される。制御装置80には操作パネル13に配置した各種操作キーを通じて動作指令の入力を行う。操作パネル13には各種の音を出す音発生装置も配置されている。
制御部80には、操作パネル13の他、送風装置25、気体昇温ヒータ41、ダンパ97、蒸気発生ヒータ52、排水バルブ54、ポット水位センサ56、給水ポンプ57、及び水位センサ81が接続される。この他、加熱室20内の温度を測定する温度センサ82と加熱室20内の湿度を測定する湿度センサ83が接続されている。
蒸気調理器1の動作は次の通りである。まず扉11を開け、水タンク71を水タンク室70から引き出し、図示しない給水口よりタンク内に水を入れる。満水状態にした水タンク71を水タンク室70に押し込み、所定位置にセットする。給水パイプ72の先端が給水路の受入口58にしっかりと接続されたことを確認したうえで、加熱室20に被加熱物Fを入れ、扉11を閉じる。それから操作パネル13の中の電源キーを押して電源をONにするとともに、同じく操作パネル13内に設けられた操作キー群を押して調理メニューの選択や各種設定を行う。
給水パイプ72が受入口58に接続されると水タンク71と圧力検知パイプ91とが連通状態になり、水位センサ81は水タンク71の中の水位を測定する。選択された調理メニューを遂行するのに十分な水量があれば、制御装置80は蒸気発生を開始する。水タンク71内の水量が選択された調理メニューを遂行するのに不十分であれば、制御装置80はその旨を警告報知として操作パネル13に表示する。そして水量不足が解消されるまで蒸気発生を開始しない。
蒸気発生が開始可能な状態になると、給水ポンプ57が運転を開始し、蒸気発生装置50への給水が始まる。この時、排水バルブ54は閉じている。
水はポット51の底の方から溜まって行く。水位が所定レベルに達したことをポット水位センサ56が検知したら、そこで給水は中止される。それから蒸気発生ヒータ52への通電が開始される。蒸気発生ヒータ52はポット51の水を直接加熱する。
蒸気発生ヒータ52への通電と同時に、あるいはポット51の中の水が所定温度に達したことを見計らって、送風装置25及び気体昇温ヒータ41への通電も開始される。送風装置25は吸込口28から加熱室20の中の蒸気を吸い込み、蒸気発生装置50へと蒸気を送り出す。蒸気を送り出すのに用いるのが遠心ファン26なので、プロペラファンに比べて高圧を発生させることができる。その上、遠心ファン26を直流モータで高速回転させるので、気流の流速はきわめて速い。
このように気流の流速が速いので、流量に比べ流路断面積が小さくて済む。従って外部循環路30の主体をなすパイプを断面円形でしかも小径のものとすることができ、断面矩形のダクトで外部循環路30を形成する場合に比べ、外部循環路30の表面積を小さくできる。このため、内部を熱い蒸気が通るにもかかわらず、外部循環路30からの熱放散が少なくなり、蒸気調理器1のエネルギー効率が向上する。外部循環路30を断熱材で巻く場合も、その断熱材の量が少なくて済む。
この時ダンパ97はダクト31から容器93aに通じるダクト96を閉ざしている。送風装置25から圧送された蒸気はダクト31から蒸気吸引エジェクタ34に入り、さらにダクト35を経てサブキャビティ40に入る。
ポット51の中の水が沸騰すると、100℃且つ1気圧の飽和蒸気が発生する。飽和蒸気は蒸気吸引エジェクタ34から外部循環路30に入る。エジェクタ構造を用いているので、飽和蒸気は速やかに吸い込まれ、循環気流に合流する。エジェクタ構造のため蒸気発生装置50に圧力がかからず、飽和蒸気の放出が妨げられない。
蒸気吸引エジェクタ34を出た蒸気はダクト35を通ってサブキャビティ40に流入する。サブキャビティ40に入った蒸気は気体昇温ヒータ41により300℃にまで熱せられ、過熱蒸気となる。過熱蒸気の一部は上部噴気孔43から下方向に噴出する。過熱蒸気の他の一部はダクト45を通じてサブキャビティ44に回り、側部噴気孔46から横方向に噴出する。
図14、15には加熱室20に被加熱物Fを入れない状態の蒸気の流れが示されている。上部噴気孔43からは加熱室20の底面に届く勢いで蒸気が下方向に噴出する。加熱室20の底面に衝突した蒸気は外側に向きを変える。蒸気は下向きに吹き下ろす気流の外に出た後、上昇を開始する。蒸気、特に過熱蒸気は軽いので、このような方向転換が自然に生じる。これにより加熱室20の内部には、図中に矢印で示すように、中央部では吹き下ろし、その外側では上昇という形の対流が生じる。
明確な形の対流を形成するため、上部噴気孔43の配置にも工夫をこらす。すなわち上部噴気孔43の配置は、図12に見られるように、底面パネル42の中央部においては密、周縁部においては疎になっている。これにより、底面パネル42の周縁部では蒸気の吹き下ろしの力が弱まり、蒸気の上昇を妨げないので、対流が一層はっきりした形で現れることになる。
側部噴気孔46からは蒸気が横向きに噴出する。この蒸気は加熱室20の中央部で出会った後、上部噴気孔43からの蒸気が巻き起こしている対流に混じる。対流する蒸気は順次吸込口28に吸い込まれる。そして外部循環路30からサブキャビティ40というルートを一巡した後、加熱室20に戻る。このようにして加熱室20内の蒸気は外部循環路30に出ては加熱室20に戻るという循環を繰り返す。
加熱室20に被加熱物Fが入れられていると、約300℃に加熱されて上部噴気孔43から噴出する過熱蒸気が被加熱物Fに衝突して被加熱物Fに熱を伝える。この過程で蒸気温度は250℃程度にまで低下する。被加熱物Fの表面に接触した過熱蒸気は、被加熱物Fの表面に結露する際潜熱を放出する。これによっても被加熱物Fは加熱される。
図4、5に見られるように、被加熱物Fに熱を与えた後、蒸気は外側に向きを変えて下向きに吹き下ろす気流の外に出る。前述の通り蒸気は軽いので、吹き下ろしの気流の外に出た後、今度は上昇を開始し、加熱室20の内部に矢印で示すような対流を形成する。この対流により、加熱室20内の温度を維持しつつ、被加熱物Fにはサブキャビティ40で熱せられたばかりの過熱蒸気を衝突させ続けることができ、熱を大量且つ速やかに被加熱物Fに与えることができる。
側部噴気孔46から横向きに噴出した蒸気は、左右からラック22の下に進入し、被加熱物Fの下で出会う。側部噴気孔46からの蒸気噴出方向は被加熱物Fの表面に対し接線方向であるが、このように左右からの蒸気が出会うことにより、蒸気は真っ直ぐ向こう側に抜けることなく、被加熱物Fの下に滞留して溢れる。このため、被加熱物Fの表面の法線方向に蒸気が吹き付けたのと同じような効果が生じ、蒸気の持つ熱が確実に被加熱物Fの下面部に伝えられる。
上記のように被加熱物Fは、側部噴気孔46からの蒸気により、上部噴気孔43からの蒸気が当たらない部位まで、上面部と同様に調理される。これにより、むらのない、見た目の良い調理結果を得ることができる。また、被加熱物Fは表面全体から均等に熱を受け取るので、中心部まで、短い時間で十分に加熱される。
側部噴気孔46からの蒸気も、最初約300℃であったものが被加熱物Fに当たった後は250℃程度にまで温度低下し、その過程で被加熱物Fに熱を伝える。また被加熱物Fの表面に結露する際に潜熱を放出し、被加熱物Fを加熱する。
側部噴気孔46からの蒸気は、被加熱物Fの下面部に熱を与えた後、上部噴気孔43からの蒸気が巻き起こしている対流に加わる。対流する蒸気は順次吸込口28に吸い込まれる。そして外部循環路30からサブキャビティ40というルートを一巡した後、加熱室に戻る。このようにして加熱室20内の蒸気は外部循環路30に出ては加熱室20に戻るという循環を繰り返す。
時間が経過するにつれ、加熱室20内の蒸気量が増して行く。量的に余剰となった蒸気は排気路を通じて機外に放出される。蒸気がそのままキャビネット10の外に出てしまうと、周囲の壁面に結露してカビが発生する。しかしながら排気ダクト93の途中に放熱部94があるので、ここを通過する間に蒸気は熱を奪われ、排気ダクト93の内面で結露する。従ってキャビネット10の外まで出てしまう蒸気は量的に少なく、深刻な問題にはならない。排気ダクト93の内面で結露した水は排気の方向と逆方向に流下し、加熱室20の中に入る。この水は、受皿21に溜まった水を処理するときに一緒に処理することができる。
機外に連通している容器93aは流路面積大に形成されているので蒸気の吹き出し速度がゆるやかになる。従って蒸気が勢い良く当たることにより機外の物体がダメージを被るようなことがない。
側部噴気孔46はサブキャビティ40から離れており、蒸気の噴出という面では上部噴気孔43よりも不利である。しかしながら、左右の側部噴気孔46の面積和を上部噴気孔43の面積和よりも大きくしてあるので、十分な量の蒸気が側部噴気孔46に誘導され、被加熱物Fの上下面の加熱むらが少なくなる。
加熱室20の蒸気を循環させつつ被加熱物Fを加熱するので、蒸気調理器1のエネルギー効率は高い。そして上方からの過熱蒸気は、サブキャビティ40の底面パネル42にほぼパネル全面にわたり分散配置された複数の上部噴気孔43から下向きに噴出するので、被加熱物Fのほぼ全体が上からの蒸気に包み込まれることになる。過熱蒸気が被加熱物Fに衝突することと、衝突の面積が広いこととが相まって、過熱蒸気に含まれる熱が素早く効率的に被加熱物Fに伝達される。また、サブキャビティ40に入り込んだ蒸気が気体昇温ヒータ41で熱せられて膨脹することにより、噴出の勢いが増し、被加熱物Fへの衝突速度が速まる。これにより被加熱物Fは一層速やかに熱せられる。
遠心ファン26はプロペラファンに比べ高圧を発生させることが可能なので、上部噴気孔43からの噴出力を高めることができる。その結果、過熱蒸気を加熱室20底面に届く勢いで噴出させることが可能となり、被加熱物Fを強力に加熱できる。遠心ファン26を直流モータで高速回転させ、強力に送風しているので、上記の効果は一層顕著に表れる。
また送風装置25の送風力が強いことは、被加熱物Fを取り出すために扉11を開く際、排気口32から速やかに排気するのにも大いに役立つ。
サブキャビティ40の底面パネル42は、上面が暗色なので気体昇温ヒータ41の放つ輻射熱を良く吸収する。底面パネル42に吸収された輻射熱は、同じく暗色となっている底面パネル42の下面から加熱室20に輻射放熱される。このため、サブキャビティ40及びその外面の温度上昇が抑制され、安全性が向上するとともに、気体昇温ヒータ41の輻射熱が底面パネル42を通じて加熱室20に伝えられ、加熱室20が一層効率良く熱せられる。底面パネル42の平面形状は円形であってもよく、加熱室20の平面形状と相似の矩形であってもよい。また前述のとおり加熱室20の天井壁をサブキャビティ40の底面パネルに兼用してもよい。
被加熱物Fが肉類の場合、温度が上昇すると油が滴り落ちることがある。被加熱物Fが容器に入れた液体類であると、沸騰して一部がこぼれることがある。滴り落ちたりこぼれたりしたものは受皿21に受け止められ、調理終了後の処理を待つ。
蒸気発生装置50で蒸気を発生し続けていると、ポット51の中の水位が低下する。水位が所定レベルまで下がったことをポット水位センサ56が検知すると、制御装置80は給水ポンプ57の運転を再開させる。給水ポンプ57は水タンク71の中の水を吸い込み、蒸発した分の水をポット51に補給する。ポット51の中の水位が所定レベルを回復したことをポット水位センサ56が検知した時点で、制御装置80は給水ポンプ57の運転を再び停止させる。
ポット水位センサ56や給水ポンプ57の故障、あるいは他の原因で給水ポンプの57の運転が止まらないようなことがあると、ポット51の中の水位が所定レベルを超えて上昇し続ける。水位が溢水レベルにまで達すると、給水ポンプ57から送られる水は溢水パイプ98から容器93aへと溢れ、排気ダクト93に流れ込む。このため、ポット51内の水が蒸気吸引エジェクタ34から外部循環路30に入り込むようなことはない。排気ダクト93に入った水は加熱室20へと流れる。
容器93aは流路面積大に形成されているので容量が大きい。従って、大量の水が溢れたとしても余裕をもって受け止め、排気ダクト93からゆっくり流し出すことができる。
調理終了後、制御装置80が操作パネル13にその旨の表示を出し、また合図音を鳴らす。調理終了を音と表示により知った使用者は扉11を開け、加熱室20から被加熱物Fを取り出す。
扉11を開けかかると、制御装置80はダンパ97の開閉状態を切り替え、ダクト96を開放する。すると外部循環路30の中を流れている気流がダクト96から容器93aへと抜け、蒸気発生装置50の方に回る分は殆どなくなる。このためサブキャビティ40への蒸気流入量が減少し、上部噴気孔43及び側部噴気孔46からの蒸気噴出は、あったとしても極く弱いものになる。従って使用者は顔面や手などに蒸気を浴びて火傷を負うことなく、安全に被加熱物Fを取り出すことができる。ダンパ97は、扉11が開いている間中、ダクト96を開放している。
ダクト96及び容器93aは、蒸気の循環が行われていなかったので、外部循環路30ほどには温度が高くない。従って、外部循環路30から流入した蒸気はダクト96及び容器93a内壁に接触すると結露する。結露により生じた水はダクト93の中を流下して加熱室20に入る。この水は、他の原因で加熱室20の底に溜まる水と一緒にして調理終了後に処理することができる。
容器93aは流路面積大に形成されているので内部の表面積が大きい。そのため、ダクト96から入ってきた蒸気のかなりの部分をここで結露させ、外部に放出される蒸気量を減らすことができる。
停止中の送風装置25を起動して排気を行うのであれば、定常の送風状態に達するまでにタイムラグが生じるが、本実施形態の場合、送風装置25は既に運転中であり、タイムラグはゼロである。また加熱室20と外部循環路30を巡っていた循環気流がそのまま容器93aからの排気流になるので、気流の方向を変えるためのタイムラグもない。これにより、加熱室20の中の蒸気を遅滞なく排出し、扉11の開放が可能になるまでの時間を短縮することができる。
使用者が扉11を開けかかったという状況は、例えば次のようにして制御装置80に伝えることができる。すなわち扉11を閉鎖状態に保つラッチをキャビネット10と扉11の間に設け、このラッチを解錠するラッチレバーをハンドル12から露出するように設ける。ラッチ又はラッチレバーの動きに応答して開閉するスイッチを扉11又はハンドル12の内側に配置し、使用者がハンドル12とラッチレバーを握りしめて解錠操作を行ったとき、スイッチから制御装置80に信号が送られるようにする。
上記実施形態では、加熱室20内の蒸気を外部循環路30からサブキャビティ40を経て再び加熱室20に戻すという構成を採用したが、これと異なる構成も可能である。例えば、サブキャビティ40に常に新しい蒸気を供給し、加熱室20から溢れ出す蒸気を排気路から放出し続けることとしてもよい。
この他、発明の主旨を逸脱しない範囲でさらに種々の変更を加えて実施することが可能である。