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JP4226817B2 - 磁気バイアス用磁石を有する磁気コア及びそれを用いたインダクタンス部品 - Google Patents

磁気バイアス用磁石を有する磁気コア及びそれを用いたインダクタンス部品 Download PDF

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JP4226817B2 JP2001358816A JP2001358816A JP4226817B2 JP 4226817 B2 JP4226817 B2 JP 4226817B2 JP 2001358816 A JP2001358816 A JP 2001358816A JP 2001358816 A JP2001358816 A JP 2001358816A JP 4226817 B2 JP4226817 B2 JP 4226817B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、チョークコイルやトランス等のインダクタンス部品の磁気コアに関するものであり、特に、磁気バイアス用の永久磁石を備えた磁気コア(以下、単に「コア」とも呼ぶ)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、例えばスイッチング電源などに用いられるチョークコイル及びトランスにおいては、通常、交流は直流に重畳して印加される。したがって、これらチョークコイルやトランスに用いる磁気コアは、この直流重畳に対して磁気飽和しない透磁率特性(この特性を「直流重畳特性」と呼ぶ)の良好なことが求められている。
【0003】
高周波用の磁気コアとしてはフェライト磁気コアや圧粉磁気コアが使用されているが、フェライト磁気コアは初透磁率が高く飽和磁束密度が小さく、圧粉磁気コアは初透磁率が低く飽和磁束密度が高い、という材料物性に由来した特徴がある。従って、圧粉磁気コアはトロイダル形状で用いられることが多い。他方、フェライト磁気コアの場合には、例えばE型コアの中足(中芯)に磁気空隙(磁気ギャップ)を形成して直流重畳により磁気飽和することを避けることが行われている。
【0004】
しかし、近年の電子機器の小型化要請に伴う電子部品の小型化の要求により、磁気コアの磁気ギャップも小さくせざるを得ず、直流重畳に対してより高い透磁率の磁気コアが強く求められている。
【0005】
この要求に対しては、一般に、飽和磁化の高い磁気コアを選択する事、つまり高磁界で磁気飽和しない磁気コアの選択が必須とされている。しかし、飽和磁化は材料の組成で必然的に決まるものであり、無限に高く出来るものではない。
【0006】
その解決手段として、磁気コアの磁路に設けた磁気ギャップに永久磁石を配置し、直流重畳による直流磁界を打ち消す事、すなわち、磁気コアに磁気バイアスを与えることが古くから提案されている。
【0007】
この永久磁石を用いた磁気バイアス方法は、直流重畳特性を向上させるには優れた方法であるが、一方で金属焼結磁石を用いると磁気コアのコアロスの増大が著しく、またフェライト磁石を用いると重畳特性が安定しないなどとても実用に耐え得るものではなかった。
【0008】
これらを解決する手段として、例えば特開昭50−133453は、磁気バイアス用永久磁石として保磁力の高い希土類磁石粉末とバインダーとを混合し圧縮成形したボンド磁石を用いること、これにより、直流重畳特性およびコアの温度上昇が改善されたことを開示している。
【0009】
しかし近年、電源に対する電力変換効率向上の要求はますます厳しくなっており、チョークコイル用及びトランス用の磁気コアについても単にコア温度を測定するだけでは優劣が判断不能なレベルとなっている。そのため、コアロス測定装置による測定結果の判断が不可欠であり、実際本発明者等が検討を行った結果、特開昭50―133453に示された抵抗率の値ではコアロス特性が劣化する事が明らかになった。
【0010】
また近年、表面実装タイプのコイルが所望されているが、表面実装のためにはコイルはリフローはんだ処理に付される。このリフローはんだ処理で、コイルの磁気コアの特性が劣化しない事が望まれる。また、耐酸化性の希土類磁石が必須である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、磁路の少なくとも1箇所以上にギャップを有する磁気コアに、該ギャップ両端から磁気バイアスを供給するために、該ギャップ近傍に永久磁石を配してなる磁気バイアス用磁石を有する磁気コアにおいて、上記問題点を考慮して、優れた磁気特性及びコアロス特性を有する磁気コアを提供することである。
【0012】
また、本発明の目的は、リフローハンダ処理条件下でも、優れた磁気特性及びコアロス特性を有する磁気コアを提供することである。
【0013】
さらに、本発明の目的は、優れた直流重畳特性とコアロス特性を有する磁気コアを用いたインダクタンス部品を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するべく、磁気コアのギャップに挿入される永久磁石について検討を重ねた結果、永久磁石の比抵抗が0.1Ωcm以上で固有保磁力iHcが5KOe以上の永久磁石を使用した時に優れた直流重畳特性が得られ、しかもコアロス特性の劣化が生じない磁気コアを形成できる事を見出した。これは、優れた直流重畳特性を得るのに必要な磁石特性が、エネルギー積よりもむしろ固有保磁力であることを意味する。従って、本発明は、比抵抗が高く固有保磁力が高い永久磁石を、インダクタンス部品の磁気コアの磁気バイアス用磁石として用いることによって、充分に高い直流重畳特性が得られる事を見出したことによる。
【0015】
比抵抗が高くしかも固有保磁力が高い磁石は、一般的には固有保磁力iHcが5KOe以上の希土類磁石粉末をバインダーとともに混合して成形した希土類ボンド磁石で得られる。しかしながら、磁石粉末としては、希土類磁石に限らず、固有保磁力iHcが5KOe以上の保磁力の高い磁石粉末であればどのような組成のものでもよい。希土類磁石粉末の種類は、SmCo系、NdFe系、SmFeN系などある。使用時の熱減磁を考慮すると、磁石粉末としては、キュリー点Tcが300℃以上、固有保磁力iHcが5KOe以上である必要である。
【0016】
さらに、リフロー温度を考慮すると、リフロー時の熱減時を避けるために、使用する磁石粉末としては、比抵抗が1Ωcm以上、Tcが500℃以上、保磁力が10KOe以上の物を用いる必要があり、現状ではSmCo17系磁石に限定される。
【0017】
なお、永久磁石の固有保磁力が5KOeより小さいと、磁心に印可される直流磁界によってその保磁力は消失する。従って、永久磁石には、5KOe以上の固有保磁力が必要である。また、永久磁石の比抵抗は大きいほど良いが、0.1Ωcm以上であればコアロス劣化の大きな要因にはならない。
【0018】
また、永久磁石を構成する磁石粉末の平均粒径が50μmを超えるとコアロス特性が劣化するので、粉末の平均粒径は50μm以下である事が望ましく、平均粒径が2.5μmを下回ると粉末熱処理時及びリフロー処理時に粉末の酸化による磁化の減少が顕著になるため、2.5μm以上の平均粒径が必要で有る。
【0019】
さらに発明者等は、種々検討を重ねた結果、ボンド磁石の残留磁化(残留磁束密度)Brが4000G以下のとき熱減磁の影響が少ないということを見出した。これは、パーミアンスが低いボンド磁石ではBrが4000Gを超える場合、B−Hカーブの保磁力bHcが、そのクニック点より下に位置することにより、不可逆減磁領域に入り、一方、Brが4000G以下の場合、B−HカーブのbHcがそのクニック点より上にあり、可逆減磁の領域内に入り熱減磁の影響が少なくなるためである。このように、ボンド磁石のBrが4000G以下の場合に、(リフロー処理後も)熱減磁の影響が少なく高い信頼性の良好な直流重畳特性を得られる。
【0020】
一方、チョークコイル用及びトランス用磁気コアとしては軟磁気特性を有する材料であればどの様なものでも有効である。一般的にはMnZn系又はNiZn系フェライト、圧粉磁心、珪素鋼板、アモルファス等が用いられる。また、磁気コアの形状についても特に制限があるわけではなく、トロイダルコア、EEコア、EIコア等あらゆる形状の磁気コアを用いることができる。これらコアの磁路の少なくとも1箇所にギャップを設け、そのギャップに永久磁石を挿入配置する。ギャップ長には、特に制限はないが、ギャップ長が短すぎる(ギャップが狭すぎる)と直流重畳特性が劣化し、またギャップ長が長すぎる(ギャップが広すぎる)と透磁率が低下しすぎるので、おのずからギャップ長は決まってくる。
【0021】
以上のことから、本発明によれば、磁路の少なくとも1箇所以上にギャップを有する磁気コアに、該ギャップ両端から磁気バイアスを供給するために、該ギャップ近傍に永久磁石を配してなる磁気バイアス用磁石を有する磁気コアにおいて、前記永久磁石が、5KOe(=5×10/4π[A/m])以上の固有保磁力、300℃以上のキュリー温度Tc、0.1Ωcm(=1×10−3[Ωm])以上の比抵抗、1000乃至4000G(=0.1〜0.4[T])の残留磁化Br、及び0.9KOe(=9×10/4π[A/m])以上の保磁力bHcを持つ、粉末粒径が2.5〜50μmの希土類磁石粉末と、10wt%以上20wt%未満の樹脂とからなるボンド磁石であることを特徴とする磁気バイアス用磁石を有する磁気コアが得られる。
【0022】
また、本発明によれば、前記個有保磁力が10KOe(=1×10/4π[A/m])以上、前記キュリー温度Tcが500℃以上、かつ前記比抵抗が1Ωcm(=1×10−2[Ωm])以上であることを特徴とする磁気バイアス用磁石を有する前記磁気コアが得られる。
【0023】
さらに、本発明によれば、上記磁気コアに少なくとも1ターン以上の巻線を施したことを特徴とするインダクタンス部品が得られる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0025】
(実施例1)
固有保磁力が5KOe以上、キュリー温度Tcが300℃以上の磁石粉末を得るために、SmFe17合金を粗粉砕した後、有機溶媒中でボールミルにより微粉砕し、平均粒径5μmの粉末を得た。その粉末に窒化処理をすることにより、SmFe17粉末を得た。次に、バインダー量の異なる6種のボンド磁石を作製するため、得られた磁石粉末にバインダーとしてそれぞれエポキシ樹脂を1wt%、3wt%、5wt%、10wt%、15wt%、及び20wt%混合し、無磁場中で金型成形を行った。こうして得られた6種のボンド磁石の磁気特性を表1に示す。
【0026】
【表1】
Figure 0004226817
【0027】
次に、作製したボンド磁石をそれぞれ7.0×10.0×1.5mmの大きさを持つ形状に加工し、厚さ方向に4Tでパルス着磁を行い、試料とした。そして、TOEI製TDF−5 Digital Fluxmeterを用い、常温(25℃)で各試料のフラックスを測定した。それから、測定を終えた試料を、恒温槽に導入し、50℃に加熱して1時間保持した。尚、このときボンド磁石の粉末酸化による永久減磁の影響を排除するため、ボンド磁石の加熱は不活性ガスであるAr(アルゴン)ガス中で行った。この後、加熱したボンド磁石を常温にまで冷却し、さらに2時間放置した。次に、上記と同様にDigital Fluxmeterで、各磁石のフラックスを測定した。また、恒温槽での温度を、75℃〜200℃(25℃おき)とした場合のフラックスを、上記と同様にして測定した。その結果を図1に示す。
【0028】
図1から、バインダー量が5wt%以上であれば、50℃から200℃の何れの温度でも熱減磁が少なく、信頼性の面からも良好であるといえる。
【0029】
熱減磁率が少なくなる原因は、バインダー量が5wt%よりも少ない場合は、図2(a)に示すように、B−Hカーブの保磁力bHcがクニック点の下側に位置するが、バインダー量が5wt%以上の場合には、図2(b)に示すように、bHcはB−Hカーブのクニック点より上に位置し、可逆減磁の範囲にあるからである。これは、パーミアンスが低いボンド磁石の場合、バインダー量が増えるとBrが低くなるからである。このように、ボンド゛磁石は、Brが低い方が、熱減磁の影響が少ない。この結果から、ボンド磁石のBrは、4000G以下であることが望ましいことがわかった。
【0030】
次に、図3(a)に示すような磁気コアを作製するために、一般的なMnZn系フェライト材で作成された磁路長7.5cm、実効断面積0.74cmのEEコア(フェライトコア)2の中芯に1.5mmのギャップ加工をした。また、このEEコア2のギャップに挿入されるボンド磁石1を、熱減磁が少なかったバインダー量が5wt%以上の4種のボンド磁石を用いて作製した。即ち、バインダー量が5wt%、10wt%、15wt%、および20wt%のボンド磁石をそれぞれ、上記EEコアの中心断面形状と同形状で、厚み1.5mmの形状に加工し、パルス着磁機を用いて、厚み方向に4Tの磁場を印加して着磁を行った。こうして作製したボンド磁石1を、それぞれEEコア2のギャップに挿入し、さらに巻線部3に1ターン以上の巻線を施して、図3(b)に示すようなインダクタンス部品とした。完成したインダクタンス部品に対して、LCRメーターを用いて直流重畳特性を5回繰り返して測定し、コア定数と巻線数から透磁率μを計算した。その結果を図4に示す。図4において、横軸は、直流重畳磁界Hmである。なお、図4には、EEコアのギャップ部に何も挿入していない試料に対して上記と同様に測定を行った結果も、比較例として示してある。
【0031】
図4を見ると、ボンド磁石のバインダー量が増えるに従い、その特性は、ギャップに何も挿入していない場合の特性に近づくことが分かる。これは、バインダー量が増えると、Brが減少するからである。そして、バインダー量が20wt%になると、ギャップ部に何も挿入しない場合に比べて、大きな特性向上はみられなくなる。この結果と表1の結果とから、Brは、1000G以上必要であることが分かる。
【0032】
以上の結果から、熱減磁特性及び直流重畳特性の両特性を考慮すると、ボンド磁石は、Brが1000〜4000Gであることが望ましい。
【0033】
また、他の実験によれば、bHcが0.9kOe以上のときに、熱処理後の直流重畳特性が良好であった。
【0034】
さらに、粉末酸化による永久減磁の影響が無いことを確認するため、熱処理後にボンド磁石を再びパルス着磁してその特性測定した結果、ボンド磁石は、熱処理前の特性とほぼ等しい特性を示し、粉末酸化による永久減磁の影響が無かったことを確認することができた。また、他の実験により、粉末粒径が2.5μm以上のとき粉末酸化による永久減磁がなく、50μm以下の場合に、コアロス特性の劣化ががないことが確認できた。
【0035】
以上説明したように、固有保磁力が5KOe以上、Tcが300℃以上の粉末粒径が2.5〜50μmの希土類磁石粉末で残留磁化Brが1000〜4000Gで保磁力bHcが0.9KOe以上、比抵抗が0.1Ωcm以上のボンド磁石を、EEコアの中芯に形成されたギャップに挿入することにより、熱減磁が少ない優れた直流重畳特性を有する磁気コア及びインダクタンス部品が得られる。
【0036】
(実施例2)
固有保磁力が10KOe以上、キュリー温度Tcが500℃以上の磁石粉末を得るために、SmCo17系でかつエネルギー積が約28MGOeの焼結磁石を粗粉砕した後、有機溶媒中でボールミルにより微粉砕し、平均粒径10μmの磁石粉末を得た。次に、バインダー量の異なる6種のボンド磁石を作製するため、得られた磁石粉末にバインダーとしてエポキシ樹脂をそれぞれ1wt%、3wt%、5wt%、10wt%、15wt%、及び20wt%混合し、無磁場中で金型成形した。こうして得られた6種のボンド磁石の磁気特性を表2に示す。
【0037】
【表2】
Figure 0004226817
【0038】
次に、作製したボンド磁石をそれぞれ7.0×10.0×1.5mmの大きさを持つ形状に加工し、厚さ方向に4Tでパルス着磁を行い、試料とした。そして、実施例1の場合と同様に、TOEI製TDF−5 Digital Fluxmeterを用いて常温(25℃)で各試料のフラックスを測定した。それから、測定を終えた試料を、恒温槽に導入し、リフロー処理条件に等しい270℃に加熱して1時間保持した。尚、このときボンド磁石の粉末酸化による永久減磁の影響を排除するため、ボンド磁石の加熱は不活性ガスであるAr(アルゴン)ガス中で行った。この後、加熱したボンド磁石を常温にまで冷却し、さらに2時間放置した。次に、上記と同様にDigital Fluxmeterで、各磁石のフラックスを測定し、リフロー処理前からリフロー処理後のフラックスの減少率(減磁率)を求めた。その結果を表3に示す。
【0039】
【表3】
Figure 0004226817
【0040】
表3から、バインダー量が5wt%以上であれば、リフロー処理後であっても、熱減磁率が小さく、信頼性の面からも良好であるといえる。
【0041】
熱減磁率が少なくなる原因は、実施例1に関して図2(a)及び(b)を参照して説明した通りで、ボンド゛磁石は、Brが低い方が、熱減磁の影響が少ない。従って、この結果からも、ボンド磁石のBrは、4000G以下であることが望ましいといえる。
【0042】
次に、実施例1の場合と同様に、図3に示すような磁気コアを作製するために、一般的なMnZn系フェライト材で作成された磁路長7.5cm、実効断面積0.74cmのEEコア(フェライトコア)2の中芯に1.5mmのギャップ加工をした。また、このEEコア2のギャップに挿入されるボンド磁石1を、リフロー処理によるフラックスの減少率(熱減磁率)が少なかったバインダー量が5wt%以上の4種のボンド磁石を用いて作製した。即ち、バインダー量が5wt%、10wt%、15wt%、および20wt%のボンド磁石をそれぞれ、上記EEコアの中心断面形状と同形状で、厚み1.5mmの形状に加工し、パルス着磁機を用いて、厚み方向に4Tの磁場を印加して着磁を行った。こうして作製したボンド磁石1を、それぞれEEコア2のギャップに挿入し、さらに巻線部3に1ターン以上の巻線を施して、インダクタンス部品とした。完成したインダクタンス部品に対して、LCRメーターを用いて直流重畳特性を測定し、コア定数と巻線数から透磁率を計算した。その結果を図5に示す。この後、直流重畳特性の測定が終わった試料を、恒温槽内に導入し、Arガス雰囲気中で、270℃に加熱して1時間保持した後、常温まで冷却してさらに2時間放置した後、再びLCRメーターを用いて直流重畳特性を測定した。その結果を図5に重ねて示す。なお、図5には、EEコアのギャップ部に何も挿入していない試料に対して上記と同様に測定を行った結果も、比較例として示してある。
【0043】
図5を見ると、その特性は、図4のものと同様であって、ボンド磁石のバインダー量が増えるに従い、ギャップに何も挿入していない場合の特性に近づいている。これは、実施例1でも説明したように、バインダー量が増えると、Brが減少するからである。そして、バインダー量が20wt%になると、ギャップ部に何も挿入しない場合に比べて、大きな特性向上はみられない。この結果と表2の結果とからも、Brは、1000G以上必要であることが分かる。
【0044】
以上の結果から、熱減磁特性及び直流重畳特性の両特性を考慮すると、ボンド磁石は、Brが1000〜4000Gであることが望ましい。
【0045】
また、他の実験によれば、bHcが0.9kOe以上のときに、リフロー処理後の直流重畳特性が良好であった。
【0046】
さらに、粉末酸化による永久減磁の影響が無いことを確認するため、リフロー処理後にボンド磁石を再びパルス着磁してその特性測定した結果、ボンド磁石は、リフロー処理前の特性とほぼ等しい特性を示し、粉末酸化による永久減磁の影響が無かったことを確認することができた。また、他の実験により、粉末粒径が2.5μm以上のとき粉末酸化による永久減磁がなく、50μm以下の場合に、コアロス特性の劣化ががないことが確認できた。
【0047】
以上説明したように、固有保磁力が10KOe以上、Tcが500℃以上の粉末粒径が2.5〜50μmの希土類磁石粉末で残留磁化Brが1000〜4000Gで保磁力bHcが0.9KOe以上、比抵抗が1Ωcm以上のボンド磁石を、EEコアの中芯に形成されたギャップに挿入することにより、リフロー処理後であっても熱減磁が少ない優れた直流重畳特性を有する磁気コア及びインダクタンス部品が得られる。
【0048】
(実施例3)
各種磁石粉末と各種樹脂とを各々下記の表4に示す組成で、以下の記載した方法で混練、成形、加工して厚さ0.5mmの試料(薄板磁石)を作製した。ここでSmCo17系紛末とフェライト紛末は焼結体の粉砕粉末であり、SmFe17N紛末は還元拡散法で作製したSmFe17紛末を窒化処理した紛末であり、各粉末は平均粒径で約5μmであった。芳香族系ポリアミド樹脂(6Tナイロン)とポリプロピレン樹脂はラボプラストミルを用いてAr中300℃(ポリアミド)、250℃(ポリプロピレン)で熱混練後、熱プレス機で成形し試料を作成した。可溶性ポリイミド樹脂は溶剤としてγ−ブチロラクトンを加えて遠心脱泡機で5分間攪拌してペーストを作製後、ドクターブレード法により出来あがりが500μmになるようにグリーンシートを作製し、乾燥後、熱プレスによって試料を作製した。エポキシ樹脂はビーカーで攪拌混合後金型成形し適当なキュア条件により試料を作製した。これら試料の比抵抗は全て0.1Ωcm以上であった。
【0049】
この薄板磁石を、実施例1及び実施例2と同様、図3に示す様な磁気コアを作成するため、その中芯断面形状に切断した。コアは一般的なMnZn系フェライト材で作成された磁路長5.9cm、実効断面積0.74cmのEEコアであり、中芯には0.5mmのギャップ加工をした。そのギャップ部に上記作製した薄板磁石を挿入し、図3に示すように配置した。
【0050】
次にパルス着磁機で磁路方向に着磁後、LCRメーター(Hewlett Packard製HP−4284A)で直流重畳特性を交流磁場周波数100KHz、直流重畳磁場35Oeの実効透磁率を測定した。ここで、直流バイアス磁界の向きは、挿入時に着磁した磁石の磁化の向きとは逆になるように重畳電流を印可するのはもちろんのことである。
【0051】
次にこれらコアを270℃のリフロー炉で30分間保持した後、再び直流重畳特性を全く同じ条件で測定した。また、比較例として、ギャップに磁石を挿入しないものについても同様に測定し、これはリフロー前後で特性の変化はなく、実効透磁率μeは70であった。これらの結果を表4に、また結果の1例として図6に試料▲2▼と▲4▼と比較例との直流重畳特性を示す。なお、ポリプロピレン樹脂の薄板磁石を挿入したコアは、磁石が著しく変形したため測定出来なかった。
【0052】
【表4】
Figure 0004226817
【0053】
保磁力が4KOeしかないBaフェライトの薄板磁石を挿入したコアでは、リフロー後、直流重畳特性が大きく劣化することがわかる。またSmFe17Nの薄板磁石を挿入したコアでもリフロー後、直流重畳特性が大きく劣化することがわかる。逆に、保磁力が10KOe以上でTcが770℃と高いSmCo17の薄板磁石を挿入したコアは、特性の劣化が認められず、非常に安定した特性を示すことが分かる。
【0054】
これらの結果よりBaフェライト薄板磁石は保磁力が小さいために、薄板磁石に印可される逆向きの磁界によって減磁、または磁化の反転が起こり、直流重畳特性が劣化したものと推測できる。またSmFeN磁石は保磁力が高いもののTcが470℃と低いために熱減磁が生じ、それに逆向きの磁界による減磁の相乗効果により特性が劣化したと推測される。従って、この結果からも、コアに挿入する薄板磁石は保磁力が10KOe以上でTcが500℃以上の薄板磁石において優れた直流重畳特性を示すことが分かった。
【0055】
本実施例では示さなかったが、本実施例以外の組み合わせ、例えば、ポニフェニレンサルファイト樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、液晶ポリマーから選択された樹脂を用いて作製された薄板磁石を用いた場合も、同様の効果が得られることが確認された。
【0056】
(実施例4)
実施例3と全く同じSmCo17系磁石粉末(iHc=15kOe)と可溶性ポリアミドイミド樹脂(東洋紡バイロマックス)を加圧ニーダーで混練後、プラネタリーミキサーで希釈混練したものを遠心脱泡機で5分間攪拌してペーストを作製した。ペーストはドクターブレード法により乾燥後の厚みが約500μmになるようにグリーンシートを作製し、乾燥後、熱プレス、次に厚さ0.5mmに加工し、薄板磁石試料とした。ここでポリアミドイミド樹脂の樹脂量は、比抵抗が各々0.06、0.1、0.2、0.5、1.0Ω・cmとなるように表5のとおりに調製した。これらの薄板磁石を実施例1と全く同じコアの中芯断面形状に切断し、測定試料とした。
【0057】
次に、実施例3と全く同じ0.5mmのギャップ長を有するEEコアに上記作製した薄板磁石を挿入し、パルス着磁機で磁石を着磁した。これらのコアについて、交流BHトレーサー(岩崎通信機製SY−8232)を用いて300KHz、0.1Tにおけるコアロス特性を室温で測定した。ここで測定に使用したフェライトコアは同一のものであり、比抵抗の異なる磁石だけを交換、挿入し再びパルス着磁機で着磁後コアロス特性を測定した。その結果を同じく表5に示す。
【0058】
【表5】
Figure 0004226817
【0059】
比較例として、全く同じギャップ付のEEコアの、同じ測定条件でのコアロス特性は520(KW/m)であった。表5から、比抵抗0.1Ωcm以上の磁気コアで良好なコアロス特性を示している。これは薄板磁石の比抵抗をあげると渦電流損失を抑制できるためと推測される。
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、磁気コアのギャップに挿入される永久磁石として、固有保磁力が5KOe以上、キュリー温度Tcが300℃以上、比抵抗が0.1Ωcm以上、残留磁化Brが1000乃至4000GBr、及び保磁力bHcが0.9KOe以上の、粉末粒径が2.5〜50μmの希土類磁石粉末と、樹脂からなるボンド磁石を用いるようにしたことで、永久磁石の熱減磁が少なく、優れた直流重畳特性を有するインダクタンス部品が得られる。
【0061】
特に、固有保磁力が10KOe以上、キュリー温度Tcが500℃以上の希土類磁石粉末と、樹脂からなるボンド磁石を用いることにより、リフロー処理による永久磁石の熱減磁が少なく、優れた直流重畳特性を有する磁気コア及びインダクタンス部品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1の磁気コアに使用される永久磁石の熱処理温度とフラックスとの関係を示すグラフである。
【図2】本発明の実施例1の磁気コアに使用される永久磁石の特性を説明するためのB−Hカーブを示すグラフである。
【図3】本発明の実施例1の(a)磁気コア及び(b)それを用いたインダクタンス部品を示す模式図である。
【図4】図3の磁気コアを用いたインダクタンス部品の直流重畳特性を示すグラフである。
【図5】本発明の実施例2の磁気コアを用いたインダクタンス部品の直流重畳特性を示すグラフである。
【図6】実施例3における試料2及び4からなる薄板磁石を用いた場合と、薄板磁石を用いない場合について、リフロー前後における直流重畳特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1 ボンド磁石
2 EEコア
3 巻線部

Claims (3)

  1. 磁路の少なくとも1箇所以上にギャップを有する磁気コアに、該ギャップ両端から磁気バイアスを供給するために、該ギャップ近傍に永久磁石を配してなる磁気バイアス用磁石を有する磁気コアにおいて、前記永久磁石が、5KOe以上の固有保磁力、300℃以上のキュリー温度Tc、0.1Ωcm以上の比抵抗、1000乃至4000Gの残留磁化Br、及び0.9KOe以上のB−H曲線の保磁力bHcを持つ、粉末粒径が2.5〜50μmの希土類磁石粉末と、10wt%以上20wt%未満の樹脂とからなるボンド磁石であることを特徴とする磁気バイアス用磁石を有する磁気コア。
  2. 前記個有保磁力が10KOe以上、前記キュリー温度Tcが500℃以上、かつ前記比抵抗が1Ωcm以上であることを特徴とする請求項1記載の磁気バイアス用磁石を有する磁気コア。
  3. 請求項1又は2記載の磁気コアに少なくとも1ターン以上の巻線を施したことを特徴とするインダクタンス部品。
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