JP4226709B2 - エンジンの制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、変速機を備えた車両用エンジンの制御装置に関し、特に変速機の変速時におけるエンジンの制御に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、変速機として自動変速機を備えたエンジンの制御として、自動変速機が減速比を変更する変速時(以下、単に変速時という)に、エンジンの出力トルクを一時的に低減させて変速に起因して生ずるトルクショックを緩和するトルク低減制御がある。
【0003】
このトルク低減制御における出力トルクの低減方法として、変速時における点火時期を通常の点火時期よりもリタードさせる方法や、複数の気筒への燃料供給のうち少なくとも1の気筒に対する燃料供給を停止する燃料カットを行う方法がある。
【0004】
そして、トルク低減制御を行うタイミングの判断や、点火時期のリタード量や燃料カットを行う気筒数等の制御値の演算は、変速時の運転状態に応じて行われ、従来より、この変速時の運転状態を示すパラメータとして、スロットル開度が用いられていた。
【0005】
すなわち、エンジンに対して変速時に出力トルクを一時的に低減するように指示する信号は、自動変速機の変速制御装置からエンジンの制御装置に出力されるが、変速制御装置が指示信号を出力する判断はエンジンの制御装置から入力されるスロットル開度に基づいて行われていた。
【0006】
また、点火時期のリタードによるトルク低減方法であればリタード量並びに復帰時の進角量、燃料カットによるトルク低減方法であれば燃料カット気筒数及び燃料カット継続時間は、予め設定されているスロットル開度を格子とするテーブル値を参照すること等により求められていた。
【0007】
このようにスロットル開度をパラメータとする理由は、通常の略理論空燃比によるエンジン運転(以下、「通常運転」という)の状態では、吸入空気量とエンジンの出力トルクとが相関関係にあるためである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年、燃費低減を目的としてリーンバーン運転を併用可能なエンジンが種々開発され、一般車両にも用いられているが、この場合、リーンバーン運転中は、エンジンの出力トルクは燃料噴射量に依存し、吸入空気量と出力トルクとの相関関係が取れない。これは、リーン状態では、理論空燃比よりも空気が過剰にあるため、混合気中の燃料は100%燃焼に寄与するためである。
【0009】
また、リーンバーン運転と通常運転の場合との間では空燃比の相違により同じエンジン出力であってもスロットル開度が相互に大きく異なるため、単純にスロットル開度自体をパラメータとして用いることができない。したがって、スロットル開度を補正しこれを用いた演算を行うために、リーンバーン運転を行っていることを示すリーンバーン制御信号を新たに設け、また、リーンバーン制御信号を入力した場合の演算手段をも設けなければならなかった。
【0010】
このように、リーンバーン運転中の変速時にトルク低減制御を行うためには、別途に新たな演算処理手段や複数のデータマップ、制御信号等を必要とし、セッティングが複雑になり、制御に対する応答性が悪化する等の問題があった。
【0011】
また、自動変速機の変速制御装置は、変速制御を行うためにエンジン出力の状態をエンジン負荷信号として入力し、エンジン回転数とスロットル開度に基づいて推定演算したエンジン付加量に対して、エンジン負荷信号を加味してエンジン出力状態を演算し、これに基づいた変速制御を行っているが、リーンバーン運転中は吸入空気量とエンジンの出力トルクとの間に相関関係が取れないので、最適な変速制御を行うことが困難であった。
【0012】
本発明は、上述した不具合を解決すべくなされたものであり、その目的はエンジンの燃焼形態に影響されることなく、変速時に出力トルクを適切に低減して変速に伴うトルクショックを低減することができるエンジンの制御装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記不具合を解決する請求項1に記載の発明は、変速機の変速時にエンジンの出力トルクを低下させ、変速ショックを低減させるエンジンの制御装置において、アクセルペダルの踏込量とエンジン回転数とに基づいてエンジンに要求される出力トルクを目標トルクとして算出する目標トルク算出部と、目標トルクに対して吸気遅れや制御遅れにより実際にエンジンから出力されると予測される出力トルクを予測トルクとして算出する予測トルク算出部を備え、出力トルクを低下させるトルク制御信号を入力したときに、予測トルクに基づいて点火時期又は燃料噴射の少なくとも一方を制御して出力トルクを低減させることを特徴とする。
【0016】
これによれば、予測トルク算出部は目標トルクから予測トルクを算出し、予測トルクに基づいて点火時期又は燃料噴射の少なくとも一方を制御するため、エンジンの制御状態に応じてトルク低減制御を行うことができる。特に、吸入空気量とエンジン出力との相関関係がとれない燃焼形態や、複数の異なる燃焼形態を実現可能なエンジンにおいても、変速時に出力トルクを適切に低下させることができ、エンジンの制御によって変速ショックを低減することができる。
【0017】
ここで、予測トルクとは、目標トルクに対して過渡運転時にスロットルバルブなどの制御指令時から遅れて実現される出力トルクを、吸入空気量の変化やスロットルバルブの制御量に基づいて予測したものである。これにより、実際に実現される出力トルクを予測した値を用いてトルク低減制御を行うため、変速時の出力トルクをより適切に低減させることができる。
【0018】
請求項2に記載の発明は、前記目標トルク又は前記予測トルクのいずれか一方に基づき点火時期リタード補正量を算出する点火時期リタード補正量算出手段を備え、トルク制御信号を入力したときは、点火時期リタード補正量により点火時期を補正することを特徴とする。
【0019】
これによれば、点火時期リタード補正量算出手段は目標トルク又は予測トルクに応じて点火時期の補正量である点火時期リタード補正量を算出する。ここで、点火時期リタード補正量は、点火時期設定部により目標トルク又は予測トルクのいずれか一方とエンジン回転数とから求められる最適な点火時期(MBT)を、出力トルクを低減させるために補正する補正量である。点火時期設定部は、点火時期リタード補正量に基づいて通常の点火時期を補正した点火時期を設定し、これに基づいて点火制御が行われる。
【0020】
このように、点火時期リタード補正量を目標トルク又は予測トルクに基づいて算出することにより、実際に意図するトルク低減量だけ出力トルクを低減することができる適切な遅角点火時期を得ることができる。
【0021】
請求項3に記載の発明は、前記点火時期リタード補正量算出手段は、目標トルク又は予測トルクのいずれか一方に基づき最終的なリタード補正量である全体リタード補正量と、全体リタード補正量まで点火時期を所定点火回数毎に補正する単位リタード補正量とを算出することを特徴とする。
【0022】
これによれば、目標トルク又は予測トルクに基づいて設定した点火時期リタード補正量まで、目標トルク又は予測トルクに基づいて設定した単位リタード補正量だけ所定点火回数毎に点火時期を補正するため、エンジンの制御状態に応じたトルク低減制御が実現し、良好な運転フィーリングが得られる。
【0023】
請求項4に記載の発明は、前記目標トルク又は前記予測トルクのいずれか一方に基づき点火時期復帰用補正量を算出する点火時期復帰用補正量算出手段を備え、点火時期リタード補正量算出手段により補正された点火時期を所定点火回数毎に点火時期復帰用補正量だけ補正することを特徴とする。
【0024】
これによれば、目標トルク又は予測トルクに基づいて設定した点火時期復帰用補正量だけ所定点火回数毎に点火時期を補正するため、エンジンの制御状態に応じたトルク低減制御が実現し、良好な運転フィーリングが得られる。
【0025】
請求項5に記載の発明は、1つの気筒のインジェクタからの燃料噴射を中止させる1気筒燃料カット信号と、複数の気筒のインジェクタへの噴射を中止させる複数気筒燃料カット信号とを出力可能で、トルク制御信号を入力したときに1気筒燃料カット信号を出力し、1気筒燃料カット信号出力後の経過時間が複数気筒燃料カット判断基準時間を経過したときに複数気筒燃料カット信号を出力する燃料カット制御手段を備え、複数気筒燃料カット判断基準時間を目標トルク又は予測トルクのいずれか一方に基づき設定することを特徴とする。
【0026】
これによれば、燃料カット制御手段は、トルクダウン信号を入力したときに、1つの気筒からの燃料噴射を中止させると共に、1気筒燃料カットの開始から複数気筒燃料カット判断基準時間が経過した後に、複数気筒の燃料噴射を中止させる。そして、燃料カット制御手段は、複数気筒燃料カット判断基準時間を目標トルク又は予測トルクに基づいて算出する。
【0027】
このように、目標トルク又は予測トルクに基づいて算出した燃料カット基準時間を用いて、燃料カットを行う気筒数の判断が行われるため、出力トルクを実際に意図するトルク低減量だけ適切なタイミングでかつ容易に低減することができる。また、燃料カットは、点火時期制御よりも排気ガス温度を上昇させることなく出力トルクを大幅に低下させることができるため、触媒の熱害を防止してより大きなトルク低減効果を迅速に得ることができ、確実にトルク低減を図ることができる。
【0028】
請求項6に記載の発明は、燃料カット制御手段は、燃料カット制御中において、1気筒燃料カットを中止させる1気筒燃料カット解除信号と、複数の気筒の燃料カットを中止させる複数気筒燃料カット解除信号とを出力可能で、トルク制御信号による出力トルク低減を解除させるトルク復帰信号を入力したときに1気筒燃料カット解除信号を出力し、1気筒燃料カット解除信号出力後の経過時間が複数気筒燃料カット解除判断基準時間を経過したときに前記複数気筒燃料カット解除信号を出力する機能を備え、複数気筒燃料カット解除判断基準時間を目標トルク又は予測トルクのいずれか一方に基づき設定することを特徴とする。
【0029】
これによれば、燃料カット制御手段は、目標トルク又は予測トルクに基づいて燃料カット解除時間を算出し、燃料カット解除基準時間を用いて燃料カットを解除するか否かの判断を行う。したがって、燃料カットによる出力トルクの低減を適切なタイミングで増大することができ、また、変速時に低下させた出力トルクをより適切なタイミングで復帰させることができる。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。図1〜図10は、本発明の第1の実施の形態を説明するためのものであり、図1は、本実施の形態におけるシステム概念図、図2はエンジン制御系の全体ブロック図、図3は燃料・吸気・EGR制御部のブロック図、図4は吸気系モデルの説明図、図5は初期化ルーチンのフローチャート、図6は定期処理ルーチンのフローチャート、図7は燃料・吸気・EGR制御処理ルーチンのフローチャート、図8及び図9は、トルク低減制御処理ルーチンのフローチャート、図10はクランク角割り込みルーチンのフローチャートである。
【0035】
図1に示したように、本実施の形態におけるエンジンシステムは、リーンバーン運転可能な車両用多気筒型のエンジン1及びオートマチックトランスミッション15を備え、エンジン1は、その運転制御全体を行うエンジンコントロールユニット(以下、「ECU」という)20と接続され、オートマチックトランスミッション15は種々の条件に応じて自動的にその減速比を変更する制御を行う変速コントロールユニット16と接続されている。
【0036】
ECU20と変速コントロールユニット16は電気的に接続されており、互いに制御信号の入出力が行われる。これにより、変速時には変速コントロールユニット16からECU20に制御信号が出力され、ECU20は変速時に生ずる変速ショックを低減すべくエンジン出力制御を行う。
【0037】
図2は、エンジン1の燃料噴射制御、吸気制御、EGR制御、点火時期制御を総合的に行うエンジン制御系を示し、ECU20にエンジン運転状態を検出するための各種センサ類が接続されるとともに、エンジン制御のための各種アクチュエータ類が接続されている。
【0038】
ECU20に接続されるセンサ類として、クランク角センサ2、気筒判別センサ3、アクセル開度センサ4、吸入管圧力センサ5、吸入管温度センサ6、空燃比センサ7、吸入空気量センサ8等がある。クランク角センサ2は、エンジンのクランク軸の回転を検出して所定のクランク角毎にパルス信号を出力し、気筒判別センサ3は、クランク角センサ2から出力されるパルス信号間で発生する気筒判別のためのパルス信号を出力する。
【0039】
アクセル開度センサ4は、アクセルペダル(図示せず)の踏込量を検出しこれに応じた電圧信号を出力し、吸入管圧力センサ5は、エンジンの吸気管内の圧力を検出しこれに応じた電圧信号を出力し、吸入管温度センサ6は、吸気管内を通過する気体の温度を検出しこれに応じた電圧信号を出力する。
【0040】
空燃比センサ7は、エンジンの排気通路途中(図示せず)に設けられ燃焼室内の空燃比を検出し、吸入空気量センサ8は、吸気通路に設けられたスロットルバルブを通過するスロットル通過空気流量を計測する。
【0041】
また、ECU20に接続されるアクチュエータ類として、各気筒毎に設けられ駆動パルス信号により燃料を噴射するインジェクタ10、気筒毎の点火プラグ12と接続された点火コイル11等があり、更に、スロットルバルブのスロットル開度を可変するためのスロットルアクチュエータ13、及び、EGR量を可変するためのEGRバルブ14が接続されている。
【0042】
そして、ECU20は、変速コントロールユニット16から出力される制御信号を入力可能に変速コントロールユニット16と接続されている。ECU20は、各センサ類からの信号を処理してエンジン運転状態を表す各種パラメータを算出する機能を有している。
【0043】
気筒判別部21は、クランク角センサ2からの出力パルス信号(クランクパルス)と気筒判別センサ3からの出力パルス信号(気筒判別パルス)との入力パターンによって気筒判別を行い、気筒判別した特定気筒の所定クランク角度位置を基準クランク位置として、順次入力されるクランクパルスに対応するクランク角度位置をクランク角度判定部22で判定する。
【0044】
クランク角度パルス発生間隔時間算出部23は、クランクパルスの入力間隔時間を計時して所定クランク角度間の経過時間を算出し、エンジン回転数算出部24で180゜CAの経過時間からエンジン回転数Neを算出する。
【0045】
アクセル開度算出部25は、アクセル開度センサ4の出力電圧値に基づいてアクセル開度(アクセル踏込量)Sを算出し、マニホールド全圧算出部26は、吸気管圧力センサ5の出力電圧に基づいて吸気管圧力(以下、「マニホールド全圧」という)Pmを算出する。
【0046】
更に、吸気管内ガス温度算出部27は、吸気管温度センサ6の出力電圧に基づいて吸気管内ガス温度Tmを算出し、空燃比算出部28は空燃比センサ7の出力電圧に基づいて空燃比λを算出し、スロットル通過空気流量算出部29は吸入空気量センサ8からの出力に基づいてスロットル通過空気流量計測値Qaveを算出する。
【0047】
また、ECU20は、算出されたパラメータを用いてエンジン制御を行うための各種演算を行う燃料・吸気・EGR制御部30と、制御量出力にかかわる機能として、噴射パルス時間算出部40、噴射時期設定部41、噴射パルス発生部42、点火時期設定部50、点火信号発生部51を有している。そして、変速時にエンジンの出力トルクを一時的に低下させる機能として、トルクダウン信号入力手段9と、アップシフト時点火時期リタード量演算手段52と、アップシフト時点火時期復帰補正量演算手段53、ダウンシフト時点火時期リタード量演算手段54と、ダウンシフト時点火時期復帰補正量演算手段55を有している。
【0048】
燃料・吸気・EGR制御部30は、図3に示したように、目標トルク設定手段31、初期設定値算出手段32、制御目標値算出手段33、推定値算出手段34、フィードバック制御量算出手段35、予測値算出手段36、吸気系係数算出手段37、制御系係数算出手段38、基本燃料噴射量算出手段60、ETC指示手段61、EGR指示手段62により構成されている。
【0049】
尚、燃料・吸気・EGR制御部30については本出願人が出願した特願平9−247316号にその詳細が開示されている。
【0050】
目標トルク設定手段31は、エンジン回転数Neとアクセル開度Sとに基づいて目標トルクTeiを設定する。目標トルクTeiとは、運転者がエンジンに要求する出力トルクとして捉えることができる。初期設定値算出手段32は、目標トルクとエンジン回転数とを用いて予め各々設定されているデータマップを参照することにより、燃料噴射量、EGR量、シリンダ内当量比の各初期設定値である基本燃料噴射量初期設定値Gfi、基本EGR量初期設定値(EGR率)EGRi、シリンダ内当量比初期設定値FAIiをそれぞれ算出する。ここで、算出される各初期設定値は、エンジンが目標トルクTeiを出力する際に要求される値である。
【0051】
制御目標値算出手段33は、初期設定値算出手段32にて算出された基本燃料噴射量初期設定値Gfiと基本EGR量初期設定値EGRiとに基づいて、目標トルクTei達成時における吸気管内の圧力応答目標値を空気有効成分とEGRガス有効成分とに分圧して算出し、それぞれ制御目標値として設定する。ここで設定される空気有効成分分圧制御目標値PmosiとEGRガス有効成分分圧制御目標値Pmeesiは、エンジンが目標トルクTeiを実現する際に要求される吸気管内の空気有効成分分圧とEGRガス有効成分分圧である。
【0052】
推定値算出部34は、吸入空気量センサのセンサ値に基づいて吸気管内の圧力応答値である空気有効成分分圧とEGRガス有効成分分圧を算出し、それぞれ空気有効成分分圧推定値PmoとEGRガス有効成分分圧推定値Pmeeとして設定する。
【0053】
フィードバック制御量算出手段35は、EGRガス有効成分分圧推定値PmeeとEGRガス有効成分分圧制御目標値Pmeesiとの偏差をフィードバックすることによりEGRバルブを通過させるEGR量であるEGRバルブ通過ガス流量設定値Qeを算出し、また、EGRバルブ通過ガス流量設定値Qeに含まれる空気有効成分Qea、及び、空気有効成分分圧推定値Pmoと空気有効成分分圧の制御目標値Pmosiとの偏差をフィードバックすることによりスロットルバルブを通過させる通過空気流量であるスロットルバルブ通過空気流量設定値Qaを算出する。
【0054】
ここで、有効成分、過不足成分について説明する。まず、有効成分とは、目標値(初期設定値)に呼応するための成分を示し、EGRガス有効成分は、制御空燃比が当量(理論空燃比)であれば、EGRガス中の非空気成分である不活性成分(理論空燃比での既燃ガスに相当する成分;H2O 、CO2 、N2等からなる)と同じ値であるが、制御空燃比がリーンの場合には、当量比分の空気を含み、EGRガス中の空気成分に不活性成分を加えた値となる。
【0055】
また、過不足分とは、有効分に対する過不足分を示し、定常状態では目標当量比と排気当量比とが同じであるため、過不足は生じないが、過渡的には、これから制御しようとする目標当量比と現在還流されてくるEGRガスの排気当量比とが一致しないことが多く、目標当量比>排気当量比の場合には、還流されてくるEGRガス中に過剰空気を生じ、目標当量比<排気当量比の場合には、還流されてくるEGRガス中に不足空気を生じる。従って、この過剰・不足空気分をスロットルバルブ・EGRバルブ制御で目標状態に制御するのである。
【0056】
図4は、本実施の形態において採用する吸気系モデルを示したものである。吸気系モデルは、図示したように、エンジンの吸気管1aの上流に設けられたスロットルバルブ1bを通過する新気分の流量(スロットル通過空気流量)Qaと、排気管1cから吸気管1aへの排気還流管1dに介装されたEGRバルブ14を通過するEGRガス流量(EGRバルブ通過ガス流量)Qeとが吸気管1a内に供給され、エンジン1のシリンダに流入している(シリンダ流入ガス量Qs)とする吸気系モデルであり、スロットル通過空気流量QaとEGRバルブ通過ガス流量Qeとによって吸気管容積を充填する分の空気量を見込むことにより、アクセル操作量Sとエンジン回転数Neから設定した目標トルクTeiを過渡的に遅れなく実現することができる。
【0057】
吸気管1a内の空気有効成分は、スロットルバルブ1bを通過する新気分と、EGRバルブ14を通過するEGRガス中の空気過不足成分との和から、シリンダ内へ流入する空気有効成分を除いたものであり、スロットル通過空気流量Qa、EGRガス中の空気過不足成分のEGRバルブ通過流量Qea、吸気管1a内の空気有効成分のシリンダ流入流量Qso、吸気管容積Vm、吸気管内ガス温度Tm、空気有効成分の気体定数Raを用いて気体の状態方程式を適用すると、吸気管1a内の空気有効成分分圧Pmoの時間変化量dPmo/dtは、以下の(1) 式にて表すことができる。
【0058】
dPmo/dt=(Qa+Qea-Qso)・Ra・Tm/Vm …(1)
また、吸気管1a内のEGRガス有効成分は、EGRバルブ14を通過するEGRガス有効成分からシリンダ内へ流入するEGRガス有効成分を除いたものであり、同様に、吸気管1a内のEGRガス有効成分分圧の時間変化量dPmee/dtは、EGRガス有効成分のEGRバルブ通過流量Qee、EGRガス有効成分のシリンダ流入流量Qsee、EGRガス有効成分の気体定数Reにより、以下の(2) 式で表すことができる。
【0059】
dPmee/dt=(Qee-Qsee)・Re・Tm/Vm …(2)
上記(1) 式におけるEGRガスの空気過不足成分のEGRバルブ通過流量Qea、上記(2) 式におけるEGRガス有効成分のEGRバルブ通過流量Qeeは、EGRバルブ通過ガス流量Qeに、EGRバルブ14入口におけるEGRガスの当量比とシリンダ内当量比の初期設定値である目標当量比Φiとの比を適用することにより、それぞれ、以下の(3) 、(4) 式のように表すことができる。
【0060】
Qea=(1- Φ/ Φi)・Qe …(3)
Qee=( Φ/ Φi)・Qe …(4)
また、上記(1) 式における空気有効成分のシリンダ流入流量Qso、上記(2) 式におけるEGRガス有効成分のシリンダ流入流量Qseeは、それぞれ、1気筒当たりのストローク容積Vs、体積効率ηv、エンジンの気筒数Lを用いて、以下の(5) 、(6) 式で表すことができる。
【0061】
Qso =((Pmo ・Vs)/(Ra・Tm))・ ηv・(Ne・L/120)…(5)
Qsee=((Pmee・Vs)/(Re・Tm))・ ηv・(Ne・L/120)…(6)
したがって、上記(1) 、(2) 式に上記(3) 〜(6) 式を適用して式中の一部を以下の(7) 〜(9) 式で示す係数a、ba、beで置き換え、上記(1) 、(2) 式をマトリックス形式で記述すると、以下の(10)式で示すことができる。
【0062】
a=(Vs/Vm)・ηv・(Ne・L/120)…(7)
ba=Ra・Tm/Vm …(8)
be=Re・Tm/Vm …(9)
【0063】
【数1】
フィードバック制御量算出手段35は、以上の吸気系モデルを用いることにより、吸気管1a内の空気有効成分分圧推定値Pmo及びEGRガス有効成分分圧推定値Pmeeの時間変化量に基づいて、スロットル通過空気流量QaとEGRバルブ通過ガス流量Qeとを算出する。
【0064】
予測値算出手段36は、EGRガス有効成分分圧と空気有効成分分圧の理論的な圧力応答値を算出し、それぞれ空気有効成分分圧予測値PmosとEGRガス有効成分分圧予測値Pmeesとして設定する。
【0065】
ここで設定される空気有効成分分圧予測値PmosとEGRガス有効成分分圧予測値Pmeesは、スロットルバルブ1b及びEGRバルブ14の制御値から予測されるスロットル通過空気流量とEGRバルブ通過ガス流量に基づいて算出される。
【0066】
ここで算出された空気有効成分分圧予測値PmosとEGRガス有効成分分圧予測値Pmeesは、フィードバック制御量算出手段35にてスロットル通過空気流量QaとEGRバルブ通過ガス流量Qeの補正値として用いられ、また、後述する基本燃料噴射量算出手段60にて燃料噴射量Gfの算出に用いられる。
【0067】
ETC指示手段61は、吸気管1aのマニホールド全圧Pmとスロットル通過空気流量Qaとに基づいてスロットルアクチュエータ13に対する操作量としてのETC開度指示値Saを算出し、スロットルアクチュエータ13へ出力する。EGR指示手段62は、マニホールド全圧PmとEGRバルブ通過ガス流量Qeとに基づいてEGRバルブ14の操作量としてのEGRバルブ開度指示値Seを算出してEGRバルブ14へ出力する。
【0068】
基本燃料噴射量算出手段60は、空気有効成分分圧推定値Pmoと空気有効成分分圧予測値Pmosのいずれか一方とシリンダ内当量比初期設定値FAIiとに基づいて最終基本燃料噴射量Gfsを算出し噴射パルス時間算出部40へ出力する。
【0069】
最終基本燃料噴射量Gfsの算出には、センサ検出値から求めた空気有効成分分圧推定値Pmo、または制御値から理論的に求めた空気有効成分分圧予測値Pmosがエンジン運転状態に応じて適宜選択されて用いられる。これにより、実際にシリンダ内に流入する吸入空気量に見合った燃料噴射量となり、空燃比を目標空燃比に正確に維持することができる。尚、吸気系係数算出手段37は、吸気系モデル係数を算出し、制御係数算出手段38は、フィードバック制御係数を算出する。
【0070】
また、図2に示したように、噴射パルス時間算出部40は燃料・吸気・EGR制御部30にて設定した基本燃料噴射量Gfsに基づいてインジェクタ10の噴射時間である噴射パルス時間Toutを算出設定し、噴射時期設定部41は、目標トルクTeiとエンジン回転数Neとに基づいてインジェクタ10から燃料を噴射する噴射時期Tinjを算出設定する。噴射パルス発生部42は、噴射パルス時間Toutと噴射時期Tinjとに基づいて噴射パルス発生タイマを予め定めた特定のクランク角度でセットし、所定のタイミングで噴射パルスを各インジェクタ10に各々出力する。
【0071】
点火時期設定部50は、図2に示したように、燃料・吸気・EGR制御部30にて設定した目標トルクTeiとエンジン回転数Neとに基づいて点火時期Tigを算出設定する。点火信号発生部51は、点火時期Tigを用いて予め定めた特定のクランク角度で点火パルス発生タイマをセットし、所定のタイミングで点火信号を点火コイル11に出力し、点火プラグ12を放電させる。
【0072】
トルク信号入力手段9は、変速コントロールユニット16からECU20に制御信号が出力された場合に、これに基づいてトルク制御信号1とトルク制御信号2を発生させる。
【0073】
トルク制御信号1及びトルク制御信号2は、それぞれHigh及びLow の2種類の信号からなり、通常はHighが出力されており、変速コントロールユニット16がエンジン回転数Neと車速Vに基づいて減速比の変化を検出した場合には、Low を出力する。そして、変速コントロールユニット16による変速制御の開始から所定時間経過した後、Low からHighに切り換えられる。
【0074】
例えば、エンジン回転数Neが中・低速回転領域内にあり、かつスロットル開度が所定開度以上である場合においてアップシフトされたときは、トルク制御制御信号1の出力はHighからLow へ切り換えられ、トルク制御信号2の出力はHighに維持される。また、同様にダウンシフトされたときは、トルク制御信号2の出力がHighからLow へ切り換えられ、トルク制御信号1の出力はHighに維持される。
【0075】
そして、アップシフト若しくはダウンシフトの変速制御を開始してから所定時間経過したときに、トルク制御信号1とトルク制御信号2の出力はHighに切り換えられる。
【0076】
更に、エンジン回転数Neが高速回転領域内にあり、スロットル開度が所定開度以上である場合においてアップシフト若しくはダウンシフトされたときはトルク制御信号1及びトルク制御信号2の出力は共にHighからLow へ切り換えられる。
【0077】
アップシフト時点火時期リタード量演算手段52は、オートマチックトランスミッションの減速比が小さい減速比に変更されるアップシフト時に点火時期を遅角側に補正するアップシフト時点火時期リタード補正量を目標トルクに基づいて算出する。
【0078】
アップシフト時点火時期リタード補正量は、全体リタード補正量及び単位リタード補正量からなる。全体リタード補正量とは、通常の点火時期から目標トルクに応じて最終的に遅角させられる点火時期(以下、「最終遅角点火時期」という)までの点火時期遅角量をいい、単位リタード補正量とは、通常の点火時期から最終遅角点火時期まで所定の点火回数毎に点火時期を徐々に遅角させるための点火時期遅角量をいう。
【0079】
アップシフト時点火時期リタード量演算手段52は、全体リタード補正量及び単位リタード補正量を算出するデータマップを各々備えており、目標トルクに基づいてこれらデータマップを参照することによりアップシフト時点火時期リタード補正量の算出を行う。
【0080】
アップシフト時点火時期復帰補正量算出手段53は、オートマチックトランスミッションの減速比が小さい減速比に変更されるアップシフト時に、アップシフト時点火時期リタード補正量により既に遅角側にリタード補正されている点火時期(以下、遅角点火時期)を進角側に補正して元の点火時期に復帰させるためのアップシフト時点火時期復帰補正量を目標トルクに基づいて算出する。
【0081】
アップシフト時点火時期復帰補正量は、遅角点火時期を所定の点火回数毎に徐々に進角させ元の点火時期に戻すための点火時期進角量をいう。アップシフト時点火時期復帰補正量算出手段53は、この復帰補正量を算出するデータマップを備えており、目標トルクに基づいてこれを参照することによりアップシフト時点火時期復帰補正量の算出を行う。
【0082】
そして、これらアップシフト時点火時期リタード補正量若しくはアップシフト時点火時期復帰補正量が点火時期設定部50に入力された場合に、点火時期設定部50は、これらの値に基づいて通常の点火時期をリタード補正した遅角点火時期を設定する。
【0083】
ダウンシフト時点火時期リタード量演算手段54は、オートマチックトランスミッションの減速比が大きい減速比に変更されるダウンシフト時に点火時期を遅角側に補正するダウンシフト時点火時期リタード補正量を目標トルクに基づいて算出する。
【0084】
ダウンシフト時点火時期リタード補正量は、全体リタード補正量及び単位リタード補正量からなる。全体リタード補正量とは、通常の点火時期から目標トルクに応じて最終的に遅角させられる点火時期(以下、「最終遅角点火時期」という)までの点火時期遅角量をいい、単位リタード補正量とは、通常の点火時期から最終遅角点火時期まで所定の点火回数毎に点火時期を徐々に遅角させるための点火時期遅角量をいう。
【0085】
ダウンシフト時点火時期リタード量演算手段54は、全体リタード補正量及び単位リタード補正量を算出するデータマップを各々備えており、目標トルクに基づいてこれらデータマップを参照することによりダウンシフト時点火時期リタード補正量の算出を行う。
【0086】
ダウンシフト時点火時期復帰補正量算出手段55は、オートマチックトランスミッションの減速比が大きい減速比に変更されるダウンシフト時に、ダウンシフト時点火時期リタード補正量により既に遅角側にリタード補正されている点火時期(以下、遅角点火時期)を進角側に補正して元の点火時期に復帰させるためのダウンシフト時点火時期復帰補正量を目標トルクに基づいて算出する。
【0087】
ダウンシフト時点火時期復帰補正量は、遅角点火時期を所定の点火回数毎に徐々に進角させ元の点火時期に戻すための点火時期進角量をいう。ダウンシフト時点火時期復帰補正量算出手段55は、この復帰補正量を算出するデータマップを備えており、目標トルクに基づいてこれを参照することによりダウンシフト時点火時期復帰補正量の算出を行う。
【0088】
そして、これらダウンシフト時点火時期リタード補正量若しくはダウンシフト時点火時期復帰補正量が点火時期設定部50に入力された場合に、点火時期設定部50は、これらの値に基づいて通常の点火時期をリタード補正した遅角点火時期を設定する。
【0089】
次に、上記ECU20によって実行される変速時トルクダウン制御処理について、図5〜図10のフローチャートに基づいて説明する。
【0090】
図5は、図示しないイグニッションスイッチがONされ、ECU20に電源が供給されてシステムがリセットされたとき、割り込み実行される初期化ルーチンである。まず、ステップ(以下、単に「S」という)10でCPUを初期設定すると、S20で制御データを初期設定し、S30で、吸気管容積Vm、1気筒当たりのストローク容積Vs、エンジンの気筒数L、空気有効成分の気体定数Ra、EGRガス有効成分の気体定数Re等の吸気系定数を設定してルーチンを抜ける。
【0091】
そして、システムイニシャライズ後、図6に示す定期処理ルーチンが一定時間毎(例えば、10ms毎)に実行されるとともに、図10に示すクランク角割り込みルーチンがクランクパルス入力毎に割り込み実行される。
【0092】
図6の定期処理ルーチンでは、まず、S50で、アクセル開度算出部25の処理として、アクセル開度センサ4の出力をA/D変換してアクセル開度Sを算出し、S60で、マニホールド全圧算出部26の処理として、吸気管圧力センサ5の出力をA/D変換してマニホールド全圧Pmを算出する。さらに、S70で、吸気管内ガス温度算出部27の処理として、吸気管温度センサ6の出力をA/D変換して吸気管1a内のガス温度Tmを算出する。
【0093】
次に、S80へ進み、スロットル通過空気流量算出部29の処理として、吸入空気量センサ8の出力をA/D変換し、スロットル通過空気流量計測値Qaveを算出すると、S90で、空燃比算出部28の処理として、空燃比センサ7の出力をA/D変換して空燃比λを算出し、S100で、エンジン回転数算出部24の処理として、後述する図10のクランク角割り込みルーチンで算出された180゜CAの経過時間からエンジン回転数Neを算出してS110へ進む。
【0094】
S110では、燃料・吸気・EGR制御部30の処理として図7の燃料・吸気・EGR制御処理ルーチンが実行され、目標トルクTeiを基準として、基本燃料噴射量Gfs、スロットルアクチュエータ指示値Sa、EGRバルブ指示値Seを算出する。
【0095】
S120では、図8及び図9のトルク低減制御処理ルーチンが実行される。本実施の形態では、所定条件を満たす場合、点火時期をリタード補正する点火時期リタード補正量が算出される。
【0096】
S130では、燃料噴射パルス時間算出部40の処理として、上記ステップS100で算出した基本燃料噴射量Gfsを、各種補正項や無効分を加えて噴射パルス時間Toutに換算し、また、噴射時期設定部41の処理としてエンジン回転数Neと目標トルクTeiを格子とするデータマップを参照して噴射時期Tinjを設定する。
【0097】
S140では、点火時期設定部50の処理としてエンジン回転数Neと目標トルクTeiとを格子とするデータマップを参照することにより通常の点火時期が設定される。ここで、S120の処理により点火時期リタード補正量が算出されている場合は、通常の点火時期を点火時期リタード補正量により補正した遅角点火時期が算出され設定される。そして、本ルーチンを抜ける(リターン)。
【0098】
上記定期処理ルーチンに対し、図10のクランク角割り込みルーチン処理では、S800で気筒判別部21の処理として、クランク角センサ2からのクランク角パルス間で発生する気筒判別センサ3からの気筒判別パルスの数に従って現在の気筒を判別する。更に、引き続き発生しているクランクパルスの数にしたがって以降の気筒を判別する処理を行う。S810では、クランク角度判定部22によるクランク角度判定処理を行う。
【0099】
続くS820では、クランク角度パルス発生間隔時間算出部の処理として、前回のクランク割り込み発生から今回のクランク割り込み発生までの経過時間である、前回のクランクパルス入力から今回のクランクパルス入力までの経過時間を計時し、メモリにストアする。メモリされた各経過時間に基づく180゜CAの経過時間がエンジン回転数Neの算出に用いられる。
【0100】
S830では、噴射時期設定部41、点火時期設定部50の処理を行い、噴射時期、点火時期を決定する。すなわち、定期処理ルーチンのS130で設定された噴射時期Tinjを、予め定めた特定のクランク角からの噴射タイミングに換算すると共に、同じく定期処理ルーチンのS140で設定された最終点火時期Tigを、予め定めた特定のクランク角からの点火タイミングに換算する。
【0101】
そして、S840で、噴射パルス発生部42の処理として、今回のクランク角割り込みが予め定めた特定のクランク角度における割り込みであるとき、噴射パルス発生タイマをセットし、さらに、S850で、点火信号発生部51の処理として、同様に、今回のクランク角割り込みが予め定めた特定のクランク角度における割り込みであるとき、点火パルス発生タイマをセットし、ルーチンを抜ける。
【0102】
その結果、上記S830で決定した噴射タイミングで噴射パルス発生タイマから噴射パルスがインジェクタ10に出力されて燃料が噴射され、S830で決定した点火タイミングで点火パルス発生タイマから点火パルスが点火コイル11に出力され、点火プラグ12による点火が行われる。
【0103】
次に、図6の定期処理ルーチンのS110における燃料・吸気・EGR制御処理について図7に基づいて説明する。尚、以下において、各パラメータに添付する(-k)はk制御周期前の値(例えば、添字(-1)で1制御周期前の値)であることを示す。
【0104】
本処理では、まず最初に、S150で目標トルク設定手段31の処理としてエンジン回転数Neとアクセル開度Sとを格子とするデータマップを参照して目標トルクTeiを設定し、S160で吸気系係数算出部37の処理を行う。
【0105】
この吸気系係数算出処理では、まず、エンジン回転数Neとマニホールド全圧Pmとに基づいて体積効率ηvを設定し、エンジン回転数Ne、吸気管1a内のガス温度Tm、体積効率ηv、吸気系定数Vm、Vs、L、Ra、Reにより、前述の(7) 〜(9) 式による吸気系係数a、ba、be、及び、以下の(11)〜(13)式による吸気系係数Ca、Ce、dを算出する。
【0106】
Ca=a/ba=(Vs/(Ra・Tm))・ ηv・(Ne・L/120)…(11)
Ce=a/be=(Vs/(Re・Tm))・ ηv・(Ne・L/120)…(12)
d=(Vs/(Ra・Tm))・ ηv …(13)
S170では、基本燃料噴射量、基本EGR量、シリンダ内当量比の初期設定値の算出が行われる。ここで、初期設定値算出手段32は、エンジン回転数Neと目標トルクTeiをパラメータとするそれぞれのデータマップをそれぞれ参照することにより、基本燃料噴射量初期設定値Gfi、基本EGR量初期設定値EGRi、シリンダ内当量比初期設定値FAIiを算出する。
【0107】
S180では、空気有効成分分圧とEGRガス有効成分分圧の制御目標値等が算出される。ここで、制御目標値設定手段33は、S170にて設定したシリンダ内当量比初期設定値FAIiからEGRバルブ14入口におけるEGRガスの当量比を推定した当量比推定値faiを求める。
【0108】
そして、当量比推定値fai、シリンダ内当量比初期設定値FAIi、基本燃料噴射量初期設定値Gfi、EGR量設定値EGRSi、吸気系係数d、理論空燃比ABFtから、以下の(14)〜(16)式により、空気有効成分分圧目標値初期設定値Pmosi、EGRガス有効成分分圧目標値初期設定値Pmeesi、マニホールド全圧目標値初期設定値Pmsiを算出し、また、以下の(17)式による当量比推定値faiと当量比設定値FAIiとの比を、当量比係数rfaiとして算出する。
【0109】
Pmosi =(1/d)・Gfi・ABFt/FAIi …(14)
Pmeesi=EGRSi/(1-EGRSi)・(Re/Ra)・Pmosi …(15)
Pmsi =Pmosi+Pmeesi …(16)
rfai =fai/FAIi …(17)
S190では、センサ検出値に基づいた空気有効成分分圧及びEGRガス有効成分分圧の推定値が算出される。ここで、フィードバック制御量算出手段35は、まず最初に、空気有効成分分圧及びEGRガス有効成分分圧の各時間変化量を推定するため、吸気系モデルに従って、EGRガスの空気過不足成分分圧モデル値Pfea及びEGRガス有効成分分圧モデル値Pfeeをシリンダ内当量比推定値rfaiに基づいて算出し、実際に計測したスロットル通過空気流量によって吸入空気分の新気分圧モデル値Pfaを算出する。
【0110】
そして、EGRガスの空気過不足成分分圧モデル値Pfeaと新気分圧モデル値Pfaとの和を空気有効成分分圧推定値Pmoとして算出し、EGRガスの空気過不足成分分圧モデル値Pfea、EGRガス有効成分分圧モデル値Pfee、新気分圧モデル値Pfaの総和を吸気管内圧力の実測値であるマニホールド全圧Pmと一致させるべく、マニホールド全圧Pmから空気有効成分分圧推定値Pmoを減算した値をEGRガス有効成分分圧推定値Pmeeとして算出する。
【0111】
ここで、当量比rfaiを用いることによりEGRガス有効成分分圧の推定精度を高めることができると同時に、実際の吸入空気量から求めた新気分圧モデル値Pfaを修正することなく各分圧の総和をマニホールド全圧Pmに一致させることによりEGR分のモデル誤差を修正し、吸気温度、大気圧、バルブクリアランス等の影響を排除して空気有効成分分圧の推定精度を向上させることができる。
【0112】
具体的には、EGRガスの空気過不足成分分圧モデル値Pfea、EGRガス有効成分分圧モデル値Pfeeは、吸気系係数a、ba、be、当量比係数rfai、1制御周期前のEGRバルブ通過ガス流量設定値Qe(-1)、1制御周期前のEGRガスのPfea(-1)、1制御周期前のPfee(-1)を用いて、以下の(18)、(19)式により算出される。
【0113】
Pfea=(1-a・dt)・Pfea(-1)+(ba・dt)・(1-rfai)・Qe(-1) …(18)
Pfee=(1-a・dt)・Pfee(-1)+(be・dt)・(1-rfai)・Qe(-1) …(19)
また、吸入空気の新気分圧モデル値Pfaは、吸入空気量センサ8によって実際に計測したスロットル通過空気流量計測値Qaveを用い、以下の(20)式によって算出される。
【0114】
Pfa =(1-a・dt)・Pfa(-1)+(ba・dt)・Qave …(20)
そして、空気有効成分分圧推定値PmoとEGRガス有効成分分圧推定値Pmeeは、以下の(21)式と(22)式により算出される。
【0115】
Pmo=Pfa+Pfea …(21)
Pmee=Pm-Pmo …(22)
S200では、空気有効成分分圧推定値PmoとEGRガス有効成分分圧推定値Pmeeとに基づいたスロットル通過空気流量設定値Qa、EGRバルブ通過ガス流量設定値Qeの算出が行われる。ここでは、まず最初に制御係数算出手段38の処理によりフィードバック制御係数が算出される。具体的には、吸気系係数ba、be、ca、ceと当量比係数rfaiを用いて、以下の(23)〜(28)式によりフィードバック係数f1、f2、h1、h2、g1、g2が算出される。
【0116】
f1=( 1/(ba・dt))・ n …(23)
f2=( 1/(rfai・ be・dt))・ n …(24)
h1=ca …(25)
h2=ce/ rfai …(26)
g1=m/ Ne …(27)
g2=m/ Ne …(28)
但し、dt:制御周期
n:重み係数(0<n<1)
m:積分制御係数(m≧0)
そして、上述の吸気系モデルに従い、フィードバック制御量算出手段35の処理により、EGRバルブ通過ガス流量初期設定値Qeiとスロットル通過空気流量初期設定値Qaiが算出される。
【0117】
ここで、EGRバルブ通過ガス流量初期設定値Qeiは、推定値算出手段34にて算出したEGRガス有効成分分圧推定値PmeeとEGRガス有効成分分圧目標値初期設定値Pmeesi、及び、1制御周期前に後述するS210にて算出されたEGRガス有効成分分圧誤差の時間積分値Imee(-1)とを用いて、以下の(29)式により算出される。
【0118】
Qei=h2・Pmeesi-f2・Pmee+g2・Imee(-1) …(29)
上記(29)式で算出したEGRバルブ通過ガス流量初期設定値Qeiは、必ずしも実現可能な値ではないこともあるため、以下の(30)式の範囲(0以上最大流量(Qe)MAX 以下の範囲)に飽和させて制御可能(実現可能)な流量とし、この流量をEGRガス有効成分分圧推定値Pmeeを用いたEGRバルブ通過ガス流量Qeとする。
【0119】
0≦Qe≦(Qe)MAX …(30)
上記最大EGRバルブ通過ガス流量(Qe)MAX は、マニホールド全圧Pmに基づいてマップ参照等により設定される。
【0120】
そして、スロットル通過空気流量初期設定値Qaiは、EGRバルブ通過ガス流量Qe、及び前述の制御目標値算出手段53による処理で算出したPmosiと空気有効成分分圧推定値Pmo、及び、1制御周期前に後述するS80にて算出された空気有効成分分圧誤差の時間積分値Imo(-1)とを用いて、以下の(31)式により算出される。
【0121】
Qai=h1・Pmosi-f1・Pmo-(1-rfai)・Qe+g1・Imo …(31)
そして、算出したスロットル通過空気流量初期設定値Qaiを以下の(32)式の範囲(0以上最大流量(Qa)MAX 以下の範囲)に飽和させてスロットル通過空気流量Qaを定める。
【0122】
0≦Qa≦(Qa)MAX …(32)
この場合においても、制御可能な流量を考慮してマニホールド全圧Pmに基づいてマップ参照等により設定した値を用いる。
【0123】
S210では、空気有効成分分圧予測値Pmos、及びEGRガス有効成分分圧予測値Pmeesが算出される。ここでは、空気有効成分分圧予測値Pmosが予測値算出手段36により、1制御周期前の空気有効成分分圧予測値Pmos(-1)と空気有効成分分圧目標補正値Pmohsとを用いて以下の(33)式により算出される。
【0124】
Pmos =(1-n)・Pmos(-1)+n・Pmohs …(33)
また、同様に、EGRガス有効成分分圧予測値Pmeesは、1制御周期前のEGRガス有効成分分圧予測値Pmees(-1)とEGRガス有効成分分圧目標補正値Pmeehsとを用いて、以下の(34)式により算出される。
【0125】
Pmees=(1-n)・Pmees(-1)+n・Pmeehs …(34)
上記(33)、(34)式における空気有効成分分圧目標補正値Pmohsは、スロットル通過空気流量Qaに相当する圧力目標値であり、EGRガス有効成分分圧目標補正値Pmeehsは、EGRバルブ通過ガス流量Qeに相当する圧力目標値であり、以下の(35)、(36)式により算出される。
【0126】
Pmohs =(1/h1)・(Qa+(1-rfai)・Qe+f1・Pmo-g1・Imo) …(35)
Pmeehs=(1/h2)・(Qe+f2・Pmee-g2・Imee) …(36)
上記(35)、(36)式における空気有効成分分圧誤差の時間積分値Imo、及び、EGRガス有効成分分圧誤差の時間積分値Imeeは、以下の(37)、(38)式によって算出される。
【0127】
Imo =Imo(-1) +(Pmos(-k)-Pmo)・dt …(37)
Imee=Imee(-1)+(Pmees(-k)-Pmee)・dt …(38)
S220では、ETC指示手段61によるETC13へのETC指示値Saの算出、及び、EGR指示手段62によるEGRバルブ14へのバルブ開度指示値Seの算出が行われる。ここで、ETC指示手段61は、S200にて求めたスロットル通過空気流量Qaとマニホールド全圧Pmとを用いてETC開度指示値Saを算出する。
【0128】
また、EGRバルブ指示手段62は、S200にて求めたEGRバルブ通過ガス流量Qeとマニホールド全圧Pmとを用いてEGRバルブ開度指示値Seを算出する。これにより、目標トルクを実現するために必要な吸入空気量及びEGRガス量を得ることができる開度位置にスロットルバルブ及びEGRバルブを制御することができる。
【0129】
次に、S230では、最終基本燃料噴射量Gfsの算出が行われる。ここでは、シリンダ内に流入する実際の吸入空気量に対応した燃料噴射量の算出が行われる。すなわち、スロットルアクチュエータ13及びEGRバルブ14は、S110により目標トルクを実現する吸入空気量及びEGR量を得る開度位置に制御されるが、例えば、スロットルバルブがステップ的にその開度位置を変化した場合等は実際の吸気管圧力の応答はスロットルバルブと燃焼室との離間距離及び吸気通路の形状、アクチュエータの応答性等に起因してステップ的には変化せず、制御目標値に対して遅れを生ずる場合がある。したがって、S230では実際にシリンダ内に吸入される空気量に応じた燃料噴射量の算出が行われる。
【0130】
ここで、基本燃料噴射量算出手段60は、上述のS190及びS210にて算出した2種類の吸気管圧力応答値に基づく2種類の燃料噴射量を各々算出する。そして、エンジン運転状態に応じて決定される燃料噴射制御方式に対応して2つの燃料噴射量の内の一方を最終燃料噴射量として採用する。
【0131】
まず最初に、空気有効成分分圧推定値Pmoに基づいたLジェトロ型燃料噴射量Gfs_Lと、空気有効成分分圧予測値Pmosに基づいたA/F優先型燃料噴射量Gfs_Aが、以下の(39)、(40)式によって算出される。
【0132】
Gfs_L=d・Pmo・FAIi/ABFt …(39)
(ABFt:理論空燃比、d:吸気系係数)
Gfs_A=d・Pmos・FAIi/ABFt …(40)
(ABFt:理論空燃比、d:吸気系係数)
エンジン運転状態が中・低負荷運転領域にあるときにはA/F優先型燃料噴射方式により求められるA/F優先型燃料噴射量Gfs_Aを基本燃料噴射量算出手段60にて最終燃料噴射量Gfsとし、エンジン運転状態が高負荷運転領域にあるときにはLジェトロ型燃料噴射方式により求められるLジェトロ型燃料噴射量Gfs_Lを基本燃料噴射量算出手段60にて最終燃料噴射量Gfsとする。
【0133】
次に、図6の定期処理ルーチンのS120におけるトルク低減制御処理ルーチンについて図8及び図9に基づいて説明する。図8及び図9は、トルク低減制御処理ルーチンを示すフローチャートである。
【0134】
本実施の形態では、トルク低減制御処理としてアップシフト時及びダウンシフト時に一時的に点火時期のリタード制御が行われる。S401では、トルク信号入力手段9から出力されたトルク制御信号1とトルク制御信号2の読み込みが行われる。そして、S402、S403、S420にてトルク制御信号1及びトルク制御信号2がそれぞれHigh又はLow のいずれかであるかが判断される。
【0135】
ここで、トルク制御信号1がLow でかつトルク制御信号2がHighである場合は、アップシフト時であるとしてS410へ進み、S410からS412にてアップシフト時の点火時期リタード補正量が算出される。
【0136】
S410ではアップシフト時の点火時期リタード制御を実行中であることを示すフラグのセットが行われ、S411では、全体リタード補正量ATADVBと単位リタード補正量ATDADRの算出が行われる。ここで、全体リタード補正量ATADVBと単位リタード補正量ATDADRは、全体リタード補正量ATADVBと単位リタード補正量ATDADRの算出用データマップを目標トルクTeiを用いてそれぞれ参照することにより算出される。
【0137】
S412では、点火時期リタード補正量が算出される。ここでは、全体リタード補正量に至るまで、現在の点火時期リタード補正量に対して、予め設定されている点火回数毎に単位リタード補正量ATDADRの加算が行われる。これにより、点火時期リタード補正量は、全体リタード補正量に至るまで徐々に増加され、点火時期設定部50では点火時期Tigが最終遅角点火時期に至るまで所定速度で遅角するように設定される。この結果、アップシフト時に出力トルクは所定速度で低減される。
【0138】
尚、本実施の形態では、S402及びS403にてトルク制御信号1及びトルク制御信号2が共にLow である場合、トルク低減制御を行わずに本ルーチンを抜ける(リターン)。
【0139】
また、S402にてトルク制御信号1がHighでS420にてトルク制御信号2がHighである場合はS430へ進む。S430では、アップシフト時における点火時期リタード制御を実行中であることを示すフラグがセットされているか否かの判断がなされ、フラグセットされている場合(セット)は、アップシフト時にリタード補正された点火時期を元の点火時期に戻すための点火時期復帰用のリタード補正量を算出すべくS431へ移行する。
【0140】
S431では、点火時期復帰用のリタード補正量ATDADFの算出が行われる。ここで点火時期復帰用リタード補正量ATDADFは、点火時期復帰用リタード補正量ATDADFの算出用データマップを目標トルクTeiを用いて参照することにより算出される。
【0141】
そして、S432では、点火時期リタード補正量の算出が行われる。ここで点火時期リタード補正量は、現在の点火時期リタード補正量から予め設定されている点火回数毎に点火時期復帰用リタード補正量ATDADFを減算することにより求められる。
【0142】
S433では、点火時期リタード補正量が0であるか否かの判断がなされ、通常の点火時期への復帰が終了したか否かが判断される。ここで、点火時期リタード補正量が0である場合(=0)は、通常の点火時期へ復帰したとしてS434へ進み、S434にてアップシフト時点火時期リタード補正中を示すフラグがクリアされ、本ルーチンを抜ける。また、リタード補正量が0でない場合(≠0)は、そのまま本ルーチンを抜け(リターン)、さらに点火時期の復帰が継続される。
【0143】
これにより、点火時期リタード補正量は徐々に減少され、点火時期設定部50では点火時期Tigが遅角点火時期から通常の点火時期へと所定速度で進角するように設定される。この結果、アップシフト時に低減された出力トルクは所定速度で元の出力トルクに戻される。
【0144】
また、S402にてトルク制御信号1がHighでS420にてトルク制御信号2がLow である場合はダウンシフト時であるとしてS421へ進み、S421からS423にてダウンシフト時における点火時期リタード補正量が算出される。
【0145】
S421ではダウンシフト時の点火時期リタード制御を実行中であることを示すフラグのセットが行われ、S422では、全体リタード補正量ATADVBと単位リタード補正量ATDADRの算出が行われる。ここで、全体リタード補正量ATADVBと単位リタード補正量ATDADRは、全体リタード補正量ATADVBと単位リタード補正量ATDADRの算出用データマップを目標トルクTeiを用いてそれぞれ参照することにより算出される。
【0146】
S423では、点火時期リタード補正量が算出される。ここでは、全体リタード補正量に至るまで、現在の点火時期リタード補正量に対して、予め設定されている点火回数毎に単位リタード補正量ATDADRの加算が行われる。これにより、点火時期リタード補正量は、全体リタード補正量に至るまで徐々に増加され、点火時期設定部50では点火時期Tigが最終遅角点火時期に至るまで所定速度で遅角するように設定される。この結果、ダウンシフト時に出力トルクは所定速度で低減される。
【0147】
また、S402、S420にてトルク制御信号1及びトルク制御信号2がともにHighであり、S430にてアップシフト時における点火時期リタード制御を実行中であることを示すフラグがクリアである場合は、S440へ進む。そして、S440にてダウンシフト時における点火時期リタード制御を実行中であることを示すフラグがセットされている場合は、ダウンシフト時にリタード補正された点火時期を元の点火時期に戻すための点火時期復帰用のリタード補正量を算出すべくS441へ移行する。
【0148】
S441では、ダウンシフト時における点火時期復帰用のリタード補正量ATDADFの算出が行われる。ここで点火時期復帰用リタード補正量ATDADFは、点火時期復帰用リタード補正量ATDADFの算出用データマップを目標トルクTeiを用いて参照することにより算出される。
【0149】
そして、S442では、点火時期リタード補正量の算出が行われる。ここで点火時期リタード補正量は、現在の点火時期リタード補正量から予め設定されている点火回数毎に点火時期復帰用リタード補正量ATDADFが減算されることにより求められる。
【0150】
S443では、点火時期リタード補正量が0であるか否かの判断がなされ、通常の点火時期への復帰が終了したか否かが判断される。ここで、点火時期リタード補正量が0である場合(=0)は、通常の点火時期へ復帰したとしてS444へ進み、S444にてダウンシフト時点火時期リタード補正中を示すフラグがクリアされ、本ルーチンを抜ける。また、リタード補正量が0でない場合(≠0)は、そのまま本ルーチンを抜け(リターン)、さらに点火時期の復帰が継続される。
【0151】
これにより、点火時期リタード補正量は徐々に減少され、点火時期設定部50では点火時期Tigが遅角点火時期から通常の点火時期へと所定速度で進角するように設定される。この結果、ダウンシフト時に低減された出力トルクは所定速度で元の出力トルクに戻される。
【0152】
上記のトルク低減制御処理によれば、全体リタード補正量ATADVB、単位リタード補正量ATDADR、及び点火時期復帰用リタード補正量ATDADFは、エンジン制御の基準となる目標トルクに基づいて演算され、これらに基づいてアップシフト時及びダウンシフト時における点火時期リタード補正量が得られる。
【0153】
そして、全体リタード補正量ATADVB、単位リタード補正量ATDADR、及び点火時期復帰用リタード補正量ATDADFを、エンジン制御の基準となる目標トルクに基づいて演算することにより、ダウンシフト時における適切な点火時期リタード補正量を算出することができる。
【0154】
したがって、本実施の形態におけるシステム全体では、目標トルクに基づいて燃料噴射制御、吸気制御、EGR制御が総合的に行われ、変速時において目標トルクに基づいたトルク低減制御が実現される。
【0155】
これにより、アップシフト時及びダウンシフト時にエンジンの制御状態に応じた適切なトルク低減制御を実現することができ、特に、吸入空気量とエンジン出力との相関関係がとれない燃焼形態や、複数の異なる燃焼形態を実現可能なエンジン装置においても、複雑な演算処理を行う必要なく、迅速かつ容易に制御状態に応じたトルク低減制御を実現することができる。この結果、アップシフト時及びダウンシフト時に生ずる変速ショックをエンジン側の制御によって適切に低減することができ、良好な運転フィーリングを得ることができる。
【0156】
なお、本実施の形態では、アップシフト時及びダウンシフト時にトルク低減制御を行うものであるが、これに限定されず、どちらか一方のみとすることも可能である。
【0157】
次に、本発明の第2の実施の形態について図11、図12を用いて以下に説明する。本実施の形態において特徴的なことは、第1の実施の形態が変速時のトルク低減制御処理を点火時期制御により行うものであるのに対し、複数の気筒のうちの一部の気筒への燃料供給を停止する燃料カット制御により行うものであることである。
【0158】
図11は、本実施の形態におけるエンジン制御系の全体ブロック図である。上述の実施の形態と同様の構成要素には同一の符号を付することでその詳細な説明を省略する。第1の実施の形態と異なるところは、ECU20が、変速時にエンジンの出力トルクを一時的に低下させるトルク低減制御処理機能として燃料カット制御手段43と燃料カットディレイタイマ1演算手段44、燃料カットディレイタイマ2演算手段45を有していることである。
【0159】
燃料カット制御手段43は、トルク信号入力手段9から出力されるトルク制御信号1及びトルク制御信号2を入力できるようにトルク信号入力手段9の出力側と接続されており、また、燃料カットディレイタイマ1演算手段44及び燃料カットディレイタイマ2演算手段45との間で相互にデータを入出力可能に接続されている。燃料カット制御手段43の出力側は、噴射パルス発生部42と接続されている。
【0160】
燃料カット制御手段43は、トルク信号入力手段9からのトルク制御信号1及びトルク制御信号2に基づいて1つの気筒に対する燃料の供給を停止する1気筒燃料カットを行うのか、2つの気筒に対する燃料供給を停止する2気筒燃料カットを行うのか、燃料カットを中止して通常の燃料供給を行うのかを判断し、これを実行すべく、その指令信号を噴射パルス発生部42に出力する。そして、その判断の際に判断基準となる基準値は、燃料カットディレイタイマ1演算手段及び燃料カットディレイタイマ2演算手段から入力する。
【0161】
燃料カットディレイタイマ1演算手段44は、燃料カット制御手段43がトルク低減のために噴射パルス発生部42に出力する燃料カット信号を1気筒燃料カット信号にするか、または2気筒燃料カット信号にするかの選択を行うための2気筒燃料カット判断基準時間を演算するものである。この2気筒燃料カット判断基準時間は、目標トルクTeiを用いて予め設定されているデータテーブルを参照することにより算出され、燃料カット制御手段43にて1気筒燃料カット信号の継続時間と比較される。
【0162】
燃料カットディレイタイマ2演算手段45は、トルク低減のために噴射パルス発生部42に出力されている燃料カット信号の出力を中止して燃料カットを解除するか、または1気筒燃料カット信号を出力して1気筒燃料カットを継続するかの選択を行うための燃料カット解除基準時間を演算するものである。この燃料カット解除基準時間は、目標トルクTeiを用いて予め設定されているデータテーブルを参照することにより算出され、燃料カット制御手段43にて燃料カットにより低減されている出力トルクを元の出力トルクに復帰する旨のトルク制御信号を入力してからの継続時間と比較される。
【0163】
そして、燃料カット制御手段43からの燃料カット信号が噴射パルス発生部42に入力された場合に、噴射パルス発生部42は、燃料カット信号に従って所定の気筒に設けられたインジェクタ10への噴射パルス信号の出力を停止し、その気筒に対する燃料カットを行う。
【0164】
次に、ECU20によって実行されるトルク低減制御処理について、図12のフローチャートに基づいて説明する。図12は、図6の定期処理ルーチンのS120において行われる本実施の形態におけるトルク低減制御処理ルーチンを示すフローチャートである。
【0165】
本実施の形態では、トルク低減制御処理として変速時に燃料カット制御が行われる。燃料カット制御は、ECU20が変速時において出力トルクを低減する旨のトルク制御信号を入力した場合に、まず最初に1気筒燃料カットを行い、1気筒燃料カットを開始してから所定時間経過後に2気筒燃料カットを行う。
【0166】
そして、低減されている出力トルクを復帰する旨のトルク制御信号を入力した場合に、2気筒燃料カットから1気筒燃料カットに変更し、変更後所定時間経過した後に全ての気筒に対する燃料カットを中止する。これにより、変速時に出力トルクを一時的に低減するトルク低減制御が行われる。
【0167】
以下に、図12に基づいてその制御について詳細に説明する。S601では、トルク信号入力手段9から出力されたトルク制御信号1とトルク制御信号2の読み込みが行われる。そして、S602、S603、S620にてトルク制御信号1及びトルク制御信号2がそれぞれHigh又はLow のいずれかであるかが判断される。
【0168】
S602にてトルク制御信号1がLow で、S603にてトルク制御信号2がLow である場合は燃料カットにより出力トルクを低減させる制御を行うべくS604以降へ移行する。尚、トルク制御信号1とトルク制御信号2の一方がHighで他方がLow である場合は燃料カットによるトルク低減制御は行わないとして本ルーチンを抜ける(リターン)。
【0169】
S604では、2気筒燃料カット判断基準時間となる燃料カットディレイタイマ1(T1DWN) と、燃料カット解除基準時間である燃料カットディレイタイマ2(T2DWN) が算出される。ここで、燃料カットディレイタイマ1(T1DWN )は、燃料カットディレイタイマ1演算手段44において予め設定されている燃料カットディレイタイマ1データテーブル(TT1DWN)を目標トルクTeiを用いて参照することにより算出される。
【0170】
また、同時に燃料カットディレイタイマ2(T2DWN )は、燃料カットディレイタイマ2演算手段45において予め設定されている燃料カットディレイタイマ2(TT2DWN)を目標トルクTeiを用いて参照することにより算出される。
【0171】
そして、S605では、1気筒の燃料カットを開始してからの継続時間である1気筒カット継続時間(TDOWN1)と燃料カットディレイタイマ1(T1DWN )の比較が行われる。ここで、1気筒カット継続時間(TDOWN1)が燃料カットディレイタイマ1(T1DWN )以下である場合(YES)は、現在の燃料カットによる出力トルクの低減量を維持すべくS606へ移行し、1気筒カット継続時間(TDOWN1)が燃料カットディレイタイマ1(T1DWN )を超える場合(NO)は、出力トルクの低減量をさらに増大させるべく、S608へ移行する。
【0172】
S606では、燃料カット制御手段43から噴射パルス発生部42に対して1気筒燃料カット信号の出力が行われる。これにより、複数の気筒から予め定められている1つの気筒に設けられたインジェクタ10への噴射パルス信号の出力が停止され、その1気筒に対する燃料カット(1気筒燃料カット)が行われ、出力トルクは1気筒燃料カット分だけ低減される。
【0173】
そして、S607へ移行し、S607にて1気筒燃料カットの継続時間(TDOWN1)がカウントされる。1気筒燃料カット継続時間(TDOWN1)は後述するS661にてクリアされるまで、プログラムサイクル毎に積算される。そして、本ルーチンを抜ける(リターン)。
【0174】
S608では、燃料カット制御手段43から噴射パルス発生部42に対して2気筒カット信号の出力がなされる。これにより、複数の気筒から予め定められている2つの気筒に設けられた各インジェクタ10への噴射パルス信号の出力が停止され、その2つの気筒に対する燃料カット(2気筒燃料カット)が行われる。この結果、出力トルクは2気筒燃料カット分だけ低減される。そして、本ルーチンを抜ける(リターン)。
【0175】
また、S602にてトルク制御信号1がHighでS620にてトルク制御信号2がHighであると判断された場合は、燃料カットにより低減されている出力トルクを元の出力トルクに復帰させる制御を行うべくS650以降へ移行する。
【0176】
S650では、後述するS651による復帰用1気筒燃料カットを開始してからの継続時間(TDOWN2)とS604にて算出した燃料カットディレイタイマ2(T2DWN )との比較が行われる。
【0177】
ここで、復帰用1気筒燃料カット継続時間(TDOWN2)が燃料カットディレイタイマ2(T2DWN )以下である場合(YES)は、1気筒燃料カットによる出力トルクの低減量を維持すべくS651へ移行し、復帰用1気筒燃料カット継続時間(TDOWN2)が燃料カットディレイタイマ2(T2DWN )を超えたと判断された場合(NO)は、燃料カットにより低減されている出力トルクを元の出力トルクに復帰させるべく、S660へ移行する。
【0178】
S651では、燃料カット制御手段43から噴射パルス発生部42に対して1気筒燃料カット信号の出力が行われ、1気筒燃料カットが行われる。これにより、2気筒燃料カットのうち、予め設定されている1気筒の燃料カットが中止され、残りの1気筒による燃料カット(復帰用1気筒燃料カット)が継続される。
【0179】
そして、S652へ移行し、ここで、復帰用1気筒燃料カットの継続時間(TDOWN2)がカウントされる。復帰用1気筒燃料カット継続時間(TDOWN2)は後述するS661にてクリアされるまで、プログラムサイクル毎に積算される。そして、本ルーチンを抜ける(リターン)。
【0180】
また、S660では、燃料カット制御手段43から噴射パルス発生部42に対する燃料カット信号の出力が中止され、全気筒により通常のタイミングにて燃料噴射が行われる。これにより、出力トルクは、燃料カットにより低減された出力トルクから燃料カット前のもとの出力トルクに復帰される。そして、S661へ移行し、S661にて1気筒燃料カット継続時間(TDOWN1)、及び復帰用1気筒燃料カット継続時間(TDOWN2)がそれぞれクリアされた後に、本ルーチンを抜ける(リターン)。
【0181】
上記制御によれば、燃料カット気筒数の判断及びそのタイミングを判断するために用いられる1気筒燃料カット継続時間(TDOWN1)、及び復帰用1気筒燃料カット継続時間(TDOWN2)をエンジン制御の基準となる目標トルクに基づいて演算することにより、変速時における燃料カットの適切な判断基準を得ることができる。
【0182】
したがって、本実施の形態におけるシステム全体では、目標トルクに基づいて燃料噴射制御、吸気制御、EGR制御が総合的に行われ、変速時において目標トルクに基づいたトルク低減制御が実現される。また、燃料カットは点火時期のリタード制御よりも、さらに大きなトルク低減効果を得ることができるため、より確実に出力トルクを低減することができる。
【0183】
次に、本発明の第3の実施の形態について図13〜図15を用いて説明する。本実施の形態において特徴的なことは、第1の実施の形態及び第2の実施の形態を全て組み合わせ、点火時期のリタード制御及び燃料カット制御を行うことである。
【0184】
図13は、第3の実施の形態におけるエンジン制御系の全体ブロック図である。上述の各実施の形態と同様の構成要素には同一の符号を付することでその詳細な説明を省略する。
【0185】
次に、ECU20によって実行される変速時トルクダウン制御処理について、図14及び図15のフローチャートに基づいて説明する。図14及び図15は、図6の定期処理ルーチンのS120において行われる本実施の形態におけるトルク低減制御処理ルーチンのフローチャートである。
【0186】
まず最初に、S701では、トルク信号入力手段9から出力されたトルク制御信号1とトルク制御信号2の読み込みが行われ、S702にてトルク制御信号1がLow である場合はS703へ移行し、Highである場合はS720へ移行する。
【0187】
S703では、トルク制御信号2がHighであるかLow であるかの判断が行われ、ここでトルク制御信号2がLow であると判断された場合は燃料カット制御により出力トルクを低減すべくS704へ移行し、Highであると判断された場合はトルク低減制御の初期段階であるとして点火時期のリタード制御により出力トルクを低減すべくS710へ移行する。
【0188】
S704からS708までは第2の実施の形態におけるS604からS608までと同様であり、S710からS712までは第1の実施の形態におけるS410からS412までと同様であり、S720からS723までは第1の実施の形態におけるS420からS423までと同様であるのでその詳細な説明を省略する。
【0189】
S730では、アップシフト時における点火時期リタード制御を実行中であることを示すフラグがセットされているか否かの判断がなされ、フラグセットされている場合(セット)は、アップシフト時における点火時期復帰用リタード補正量を算出すべくS731へ移行し、フラグセットがクリアされている場合(クリア)は、S740へ移行する。
【0190】
S740では、ダウンシフト時における点火時期リタード制御を実行中であることを示すフラグがセットされているか否かの判断がなされ、フラグセットされている場合(セット)は、ダウンシフト時における点火時期復帰用リタード補正量を算出すべくS741へ移行し、フラグセットがクリアされている場合(クリア)は、S750へ移行する。
【0191】
S731からS734までは第1の実施の形態におけるS431からS434までと同様であり、S741からS744までは第1の実施の形態におけるS441からS444までと同様であるのでその詳細な説明を省略する。また、S750からS761までは第2の実施の形態におけるS650からS661までと同様であるのでその詳細な説明を省略する。
【0192】
上記制御によれば、エンジン回転数が中・低回転領域内にあり、かつスロットル開度が所定開度以上のとき点火時期のリタード制御によるトルク低減処理が行われ、エンジン回転数が高回転領域内にあるときは燃料カット制御によるトルク低減処理に切り換えられる。そして、これらリタード制御と燃料カット制御に用いられる制御値は目標トルクに基づいて演算される。
【0193】
したがって、制御状況に応じてより精密でかつ幅広い出力トルクの低減を行うことができ、変速時に生ずる変速ショックをエンジン側の制御によって適切に低減でき、良好な運転フィーリングを得ることができる。
【0194】
次に、本発明の第4の実施の形態について図16〜図18を用いて説明する。本実施の形態において特徴的なことは、制御値の算出において目標トルクの代わりに予測トルクを用いることである。
【0195】
図16は、本実施の形態におけるエンジン制御系の全体ブロック図である。上述の各実施の形態と同様の構成要素には同一の符号を付することでその詳細な説明を省略する。第3の実施の形態と異なるところは、アップシフト時点火時期リタード量演算手段52、アップシフト時点火時期復帰補正量演算手段53、ダウンシフト時点火時期リタード量演算手段54、ダウンシフト時点火時期復帰補正量算出手段55、燃料カットディレイタイマ1演算手段44、燃料カットディレイタイマ2演算手段45に、それぞれ目標トルクTeiの代わりに予測トルクTesが入力されることである。
【0196】
また、噴射時期設定部41は、予測トルクTesとエンジン回転数Neとに基づいてインジェクタ10から燃料を噴射する噴射時期Tinjを算出設定し、点火時期設定部50は、予測トルクTesとエンジン回転数Neとに基づいて点火時期Tigを算出設定する。これ以外については、第3の実施の形態と同様であるのでその詳細な説明は省略する。
【0197】
図17は、予測トルク算出機能を説明するためのブロック図である。予測トルクの算出機能は、図示したように、目標トルク設定手段31、制御目標値算出手段33、推定値算出手段34、予測値算出手段36、及び予測トルク算出部39により構成されている。
【0198】
予測トルク算出部39は、エンジン運転状態に応じて選択される空気有効成分分圧推定値Pmoまたは空気有効成分分圧予測値Pmosのいずれか一方と、目標トルクTei及び空気有効成分分圧制御目標値Pmosiを用いて予測トルクTesを算出する。ここで、算出される予測トルクTesは、目標トルクTeiに対して実際に実現される出力トルクを予測した値となる。
【0199】
図18は、燃料・吸気・EGR制御処理ルーチンのフローチャートである。上述の実施の形態と異なるところは、S220とS230との間に予測トルクTesを算出するS225が追加されていることである。S225では、予測トルク算出部39の処理により、予測トルクTesの算出が行われる。ここで、予測トルクTesは、吸気管1a内の実際の圧力応答値と目標トルクを達成すべく設定された最終的な制御目標とされる圧力応答値との比を用いて、目標トルクTeiを補正することによって算出される。
【0200】
そして、その際に用いられる実際の空気有効成分分圧は、最終燃料噴射量Gfsの算出と同様に精度の高い予測トルクを算出すべく、燃料噴射制御方式がLジェトロ型方式である場合には空気有効成分分圧推定値Pmoが用いられ、A/F優先型方式である場合には空気有効成分分圧予測値Pmosが用いられる。具体的には、以下の(41)、(42)式により算出される。
【0201】
Tes=Tei×(Pmo/Pmosi) …(41)
Tes=Tei×(Pmos/Pmosi) …(42)
上記(41)、(42)式に示したように、予測トルクTesは、目標トルクTeiを空気有効成分分圧推定値Pmo若しくは空気有効成分分圧予測値Pmosと空気有効成分分圧制御目標値Pmosiとの比によって補正することによって算出される。これにより、さらに高精度の予測トルクTesを得ることができる。
【0202】
このように、目標トルクTeiではなく、吸入遅れやアクチュエータ応答遅れ(制御遅れ)を加味した予測トルクTesを用いることにより、制御状態に精密に対応した最適なトルク低減制御を実現することができる。
【0203】
次に、本発明の参考例について図19、図20を用いて説明する。本参考例において特徴的なことは、上記各実施の形態は変速時に生ずる変速ショックを低減して良好な運転フィーリングを得ることを目的としてエンジン側の制御(トルク低減制御)を行うものであったが、本参考例は変速コントロールユニット16による変速機15の制御において予測トルクを用いることによりこの目的を達成するものである。
【0204】
図19は、参考例におけるエンジン制御系の全体ブロック図である。上述の各実施の形態と同様の構成要素には同一の符号を付することでその詳細な説明を省略する。
【0205】
ECU20は、その内部にD/Aコンバータ回路56を備えている。D/Aコンバータ回路56は、予測トルク算出部39から出力される予測トルクTesをアナログ電圧に変換し、エンジン負荷信号として変速コントロールユニット16へ出力する。
【0206】
変速コントロールユニット16は、このエンジン負荷信号を加味してエンジンの出力状態を演算し、オートマチックトランスミッション15の変速制御を行う。エンジン負荷信号は、従来は吸入空気量や吸入管圧力が用いられていたが、本実施の形態では予測トルクTesが用いられる。
【0207】
図20は、所定のプログラムサイクル毎に実行される定期処理ルーチンのフローチャートである。尚、上述の各実施の形態と同様のステップには図6と同一の符号を付することでその詳細な説明を省略する。本フローにおいて、上述の各実施の形態と異なるところは、図6のS120によるトルク低減制御処理は行われず、S140の後にエンジン負荷信号を変速コントロールユニット16に出力するS145が設けられていることである。
【0208】
S145では、エンジン負荷信号の出力が行われる。ここで、D/Aコンバータ回路56により、予測トルク算出部39から出力されたデジタル信号である予測トルクTesがアナログ信号に変換され、エンジン負荷信号として変速コントロールユニット16に出力される。
【0209】
変速コントロールユニット16では、予測トルクであるエンジン負荷信号を加味したエンジン出力状態が演算され、これに基づいてオートマチックトランスミッション15の変速制御を行なう。
【0210】
したがって、例えば、リーンバーンの燃焼形態を実現可能なエンジンにおいて、リーンバーンを実現中でも複雑な演算を必要とすることなく、エンジン負荷信号を求めることができ、より正確なエンジンの出力状態を演算することができる。
【0211】
これにより、吸入空気量とエンジン出力との相関関係が取れないリーンバーン燃焼形態においてもオートマチックトランスミッション15の最適な変速制御を行うことができる。この結果、変速コントロールユニット側の制御によって、変速時に生ずる変速ショックを低減することができ、良好な運転フィーリングを得ることができる。
【0212】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨内にて種々の変更または組み合わせが可能である。例えば、燃料カットを行う実施の形態においては、燃料カットを行う最多気筒数を2気筒に限定するものではなく、さらに増加させても良い。
【0213】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るエンジンの制御装置によれば、目標トルク若しくは予測トルクに基づいて演算した制御値を用いてトルク低減制御を行うことで、吸入空気量と出力トルクとの相関関係が取れないリーンバーン等の燃焼状態においても、新たな制御信号や複雑な演算処理を必要とすることなく、変速時における変速ショックを低減することができ、良好な運転フィーリングを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施の形態におけるシステム概念図である。
【図2】 エンジン制御系の全体ブロック図である。
【図3】 燃料・吸気・EGR制御部のブロック図である。
【図4】 吸気系モデルの説明図である。
【図5】 初期化ルーチンのフローチャートである。
【図6】 所定のプログラムサイクル毎に実行される定期処理ルーチンのフローチャートである。
【図7】 燃料・吸気・EGR制御処理ルーチンのフローチャートである。
【図8】 トルク低減制御処理ルーチンのフローチャートである。
【図9】 トルク低減制御処理ルーチンのフローチャートである。
【図10】 クランク角割り込みルーチンのフローチャートである。
【図11】 第2の実施の形態におけるエンジン制御系の全体ブロック図である。
【図12】 第2の実施の形態におけるトルク低減制御処理ルーチンのフローチャートである。
【図13】 第3の実施の形態におけるエンジン制御系の全体ブロック図である。
【図14】 第3の実施の形態におけるトルク低減制御処理ルーチンのフローチャートである。
【図15】 第3の実施の形態におけるトルク低減制御処理ルーチンのフローチャートである。
【図16】 第4の実施の形態におけるエンジン制御系の全体ブロック図である。
【図17】 予測トルク算出機能を説明するためのブロック図である。
【図18】 第4の実施の形態における燃料・吸気・EGR制御処理ルーチンのフローチャートである。
【図19】 参考例におけるエンジン制御系の全体ブロック図である。
【図20】 参考例において所定のプログラムサイクル毎に実行される定期処理ルーチンのフローチャートである。
【符号の説明】
1 エンジン
9 トルク信号入力手段
15 オートマチックトランスミッション
16 変速コントロールユニット
20 エンジンコントロールユニット(ECU)
31 目標トルク算出部
39 予測トルク算出部
40 噴射パルス時間算出部
41 噴射時期設定部
42 噴射パルス発生部
43 燃料カット制御手段
44 燃料カットディレイタイマ1演算手段
45 燃料カットディレイタイマ2演算手段
50 点火時期設定部
51 点火信号発生部
52 アップシフト時点火時期リタード量演算手段
53 アップシフト時点火時期復帰補正量演算手段
54 ダウンシフト時点火時期リタード量演算手段
55 ダウンシフト時点火時期復帰補正量演算手段
(52〜55:点火時期リタード補正量算出手段)
56 D/Aコンバータ回路(エンジン負荷信号出力手段)
Tei 目標トルク
Tes 予測トルク
T1DWN 燃料カットディレイタイマ(2気筒燃料カット判断基準時間)
T2DWN 燃料カットディレイタイマ(燃料カット解除基準時間)
Claims (6)
- 変速機の変速時にエンジンの出力トルクを低下させ、変速ショックを低減させるエンジンの制御装置において、
アクセルペダルの踏込量とエンジン回転数とに基づいてエンジンに要求される出力トルクを目標トルクとして算出する目標トルク算出部と、
前記目標トルクに対して吸気遅れや制御遅れにより実際に前記エンジンから出力されると予測される出力トルクを予測トルクとして算出する予測トルク算出部を備え、
前記出力トルクを低下させるトルク制御信号を入力したときに、前記予測トルクに基づいて点火時期又は燃料噴射の少なくとも一方を制御して前記出力トルクを低減させることを特徴とするエンジンの制御装置。 - 前記目標トルク又は前記予測トルクのいずれか一方に基づき点火時期リタード補正量を算出する点火時期リタード補正量算出手段を備え、
トルク制御信号を入力したときは、前記点火時期リタード補正量により前記点火時期を補正することを特徴とする請求項1に記載のエンジンの制御装置。 - 前記点火時期リタード補正量算出手段は、前記目標トルク又は前記予測トルクのいずれか一方に基づき最終的なリタード補正量である全体リタード補正量と、前記全体リタード補正量まで点火時期を所定点火回数毎に補正する単位リタード補正量とを算出することを特徴とする請求項2に記載のエンジンの制御装置。
- 前記目標トルク又は前記予測トルクのいずれか一方に基づき点火時期復帰用補正量を算出する点火時期復帰用補正量算出手段を備え、
前記点火時期リタード補正量算出手段により補正された点火時期を所定点火回数毎に前記点火時期復帰用補正量だけ補正することを特徴とする請求項2又は3に記載のエンジンの制御装置。 - 1つの気筒のインジェクタからの燃料噴射を中止させる1気筒燃料カット信号と、複数の気筒のインジェクタへの噴射を中止させる複数気筒燃料カット信号とを出力可能で、前記トルク制御信号を入力したときに前記1気筒燃料カット信号を出力し、前記1気筒燃料カット信号出力後の経過時間が複数気筒燃料カット判断基準時間を経過したときに前記複数気筒燃料カット信号を出力する燃料カット制御手段を備え、
前記複数気筒燃料カット判断基準時間を前記目標トルク又は前記予測トルクのいずれか一方に基づき設定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のエンジンの制御装置。 - 前記燃料カット制御手段は、燃料カット制御中において、前記1気筒燃料カットを中止させる1気筒燃料カット解除信号と、複数の気筒の燃料カットを中止させる複数気筒燃料カット解除信号とを出力可能で、前記トルク制御信号による出力トルク低減を解除させるトルク復帰信号を入力したときに前記1気筒燃料カット解除信号を出力し、前記1気筒燃料カット解除信号出力後の経過時間が複数気筒燃料カット解除判断基準時間を経過したときに前記複数気筒燃料カット解除信号を出力する機能を備え、
前記複数気筒燃料カット解除判断基準時間を前記目標トルク又は前記予測トルクのいずれか一方に基づき設定することを特徴とする請求項5に記載のエンジンの制御装置。
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