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JP4220565B2 - 酸化防護効果の高い溶媒を用いる還元型補酵素q10の製造方法 - Google Patents

酸化防護効果の高い溶媒を用いる還元型補酵素q10の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、還元型補酵素Q10の合成方法及び晶析方法に関する。還元型補酵素Q10は、酸化型補酵素Q10に比べて高い経口吸収性を示し、優れた食品、栄養機能食品、特定保健用食品、栄養補助剤、栄養剤、飲料、飼料、動物薬、化粧品、医薬品、治療薬、予防薬等として有用な化合物である。
広く生物界に分布するベンゾキノン誘導体である酸化型補酵素Q10は、そのビタミン様の機能からビタミンQとも呼ばれており、弱った細胞活性を健康な状態に戻す栄養源として身体を若返らせる成分である。一方、還元型補酵素Q10は、酸化型補酵素Q10の2電子還元体であり、酸化型補酵素Q10が橙色結晶であるのに対し、還元型補酵素Q10は白色結晶である。還元型補酵素Q10及び酸化型補酵素Q10は、ミトコンドリア、リソゾーム、ゴルジ体、ミクロソーム、ペルオキシソーム、或いは細胞膜等に局在し、電子伝達系の構成成分としてATP産生賦活、生体内での抗酸化作用、膜安定化に関与している事が知られている生体の機能維持に必要不可欠な物質である。
還元型補酵素Q10は、例えば、合成、発酵、天然物からの抽出等の従来公知の方法により補酵素Q10を得た後、クロマトグラフィーにより流出液中の還元型補酵素Q10区分を濃縮する方法等により得られることが知られている(特許文献1参照)。この場合、さらに上記還元型補酵素Q10中に含まれる酸化型補酵素Q10を、水素化ホウ素ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム(次亜硫酸ナトリウム)等の一般的な還元剤を用いて還元した後、クロマトグラフィーによる濃縮を行っても良いこと、また、還元型補酵素Q10は、既存の高純度補酵素Q10(酸化型)に上記還元剤を作用させる方法によっても得られることが、当該公報中に記載されている。しかしながら、このようにして得られる還元型補酵素Q10は、必ずしも純度が高い状態では取得できず、例えば、酸化型補酵素Q10をはじめとする不純物を含有する低純度結晶、半固体状や油状物として得られやすい。
なお、補酵素Q10をヘキサンに溶解し、これにハイドロサルファイトソーダ(次亜硫酸ナトリウム)水溶液を加えて撹拌し、還元型補酵素Q10を合成した例が開示されている(特許文献2参照)が、還元剤として補酵素Q10の2倍重量もの次亜硫酸ナトリウムを用いており、経済的な観点からも、その後の精製の煩雑さからも問題を有していた。
還元型補酵素Q10は、分子酸素によって酸化型補酵素Q10に酸化されやすい。工業的規模での製造においては、完全な酸素の除去は極めて難しく、さらに、個々の操作に要する時間はラボスケールでの製造とは異なりかなり長時間になるため、残存する酸素が大きな悪影響を及ぼす。上記酸化は難除去性の酸化型補酵素Q10の副生及び製品への混入といった収率、品質面の問題に直結する。高純度の還元型補酵素Q10結晶を得るためには、上記酸化から好適に防護することが重要である。
特開平10−109933号公報 特開昭57−70834号公報
本発明は、上記に鑑み、高品質の還元型補酵素Q10を得るための簡便且つ効率的な合成方法並びに晶析方法を提供することを目的とする。さらに、高品質の還元型補酵素Q10結晶を得るための工業的規模での生産に適した優れた製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究した結果、還元型補酵素Q10は特定の溶媒中で分子酸素による酸化から好適に防護されることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、酸化型補酵素Q10を還元して還元型補酵素Q10を合成する方法において、ヘキサンを除く炭化水素類、脂肪酸エステル類、エーテル類、及び、ニトリル類から選ばれる少なくとも1種を溶媒として用いることを特徴とする還元型補酵素Q10の製造方法に関する。
また、本発明は、酸化型補酵素Q10を還元して還元型補酵素Q10を合成する方法において、脱酸素雰囲気下、炭化水素類を溶媒として用いることを特徴とする還元型補酵素Q10の製造方法に関する。
さらに、本発明は、還元型補酵素Q10を、炭化水素類、脂肪酸エステル類、エーテル類、及び、ニトリル類から選ばれる少なくとも1種を溶媒として用いて晶析することを特徴とする還元型補酵素Q10の晶析方法に関する。
また、本発明は、還元型補酵素Q10を炭化水素類、脂肪酸エステル類、エーテル類、及び、ニトリル類から選ばれる少なくとも1種の溶媒に溶解させて取り扱うことにより、分子酸素による酸化を防護することを特徴とする還元型補酵素Q10の安定化方法に関する。
さらに、本発明は、還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比が96/4以上である還元型補酵素Q10結晶に関する。
本発明の方法によれば、酸化型補酵素Q10を還元して還元型補酵素Q10を合成する方法において、還元型補酵素Q10が分子酸素によって酸化されるのを好適に防護することができ、酸化型補酵素Q10の副生が最小化された状態で、高品質の還元型補酵素Q10を合成できる。また、還元型補酵素Q10を晶析する方法において、還元型補酵素Q10が分子酸素によって酸化されるのを好適に防護することができ、酸化型補酵素Q10の副生が最小化された状態で結晶状態へ移行させ、高品質の還元型補酵素Q10結晶を取得することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明においては、還元型補酵素Q10から酸化型補酵素Q10への分子酸素による酸化を抑制して、高品質の還元型補酵素Q10を合成するため、及び、晶析するため、さらに、還元型補酵素Q10を安定に取り扱うために、上記酸化からの防護効果の高い溶媒、即ち、炭化水素類、脂肪酸エステル類、エーテル類、及び、ニトリル類から選ばれる少なくとも1種を用いる。還元型補酵素Q10は、驚くべきことに、結晶状態よりも、上記溶媒に溶解した、又は、懸濁した状態において、分子酸素による酸化からより好適に防護される。このような上記溶媒による酸化防護効果は、本発明者らにより初めて見出されたものである。
炭化水素類としては、特に制限されないが、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素等を挙げることができる。脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素が好ましく、脂肪族炭化水素がより好ましい。
脂肪族炭化水素としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、通常、炭素数3〜20、好ましくは炭素数5〜12のものが用いられる。
具体例としては、例えば、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、2−メチルブタン、シクロペンタン、2−ペンテン、ヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、1−ヘキセン、シクロヘキセン、ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、メチルシクロヘキサン、1−ヘプテン、オクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、イソオクタン、エチルシクロヘキサン、1−オクテン、ノナン、2,2,5−トリメチルヘキサン、1−ノネン、デカン、1−デセン、p−メンタン、ウンデカン、ドデカン等を挙げることができる。
中でも、炭素数5〜8の飽和脂肪族炭化水素がより好ましく、炭素数5のペンタン、2−メチルブタン、シクロペンタン(ペンタン類と称す);炭素数6のヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン(ヘキサン類と称す);炭素数7のヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、メチルシクロヘキサン(ヘプタン類と称す);炭素数8のオクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、イソオクタン、エチルシクロヘキサン(オクタン類と称す);及びこれらの混合物が好ましく用いられる。とりわけ、上記ヘプタン類は酸化からの防護効果が特に高い傾向があり、特に好ましく、ヘプタンが最も好ましい。
芳香族炭化水素としては、特に制限されないが、通常、炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜12、より好ましくは炭素数7〜10のものが用いられる。具体例としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、クメン、メシチレン、テトラリン、ブチルベンゼン、p−シメン、シクロヘキシルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ジペンチルベンゼン、ドデシルベンゼン、スチレン等を挙げることができる。好ましくは、トルエン、キシレン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、クメン、メシチレン、テトラリン、ブチルベンゼン、p−シメン、シクロヘキシルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼンである。より好ましくは、トルエン、キシレン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、クメン、テトラリンであり、最も好ましくは、クメンである。
ハロゲン化炭化水素としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、非環状のものが好ましく用いられる。塩素化炭化水素、フッ素化炭化水素がより好ましく、塩素化炭化水素がさらに好ましい。また、炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜4、より好ましくは炭素数1〜2のものが用いられる。
具体例としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,2−ジクロロプロパン、1,2,3−トリクロロプロパン、クロロベンゼン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン等を挙げることができる。好ましくは、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、1,1,1,2−テトラフルオロエタンである。より好ましくは、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、1,1,1,2−テトラフルオロエタンである。さらに好ましくは、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレンである。
脂肪酸エステル類としては、特に制限されないが、例えば、プロピオン酸エステル、酢酸エステル、ギ酸エステル等を挙げることができる。酢酸エステル、ギ酸エステルが好ましく、酢酸エステルがより好ましい。エステル基としては、特に制限されないが、炭素数1〜8のアルキルエステル、炭素数1〜8のアラルキルエステル等が挙げられ、好ましくは炭素数1〜6のアルキルエステル、より好ましくは炭素数1〜4のアルキルエステルである。
プロピオン酸エステルとしては、例えば、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソペンチル等を挙げることができる。好ましくはプロピオン酸エチルである。
酢酸エステルとしては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸sec−ヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸ベンジル等を挙げることができる。好ましくは、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸sec−ヘキシル、酢酸シクロヘキシルである。より好ましくは、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルであり、最も好ましくは、酢酸エチルである。
ギ酸エステルとしては、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸イソプロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸sec−ブチル、ギ酸ペンチル等を挙げることができる。好ましくは、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチルであり、最も好ましくは、ギ酸エチルである。
エーテル類としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、飽和のものが好ましく用いられる。通常、炭素数3〜20、好ましくは炭素数4〜12、より好ましくは炭素数4〜8のものが用いられる。
具体例としては、例えば、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アニソール、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ジオキサン、フラン、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等を挙げることができる。
好ましくは、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アニソール、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ジオキサン、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルである。より好ましくは、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、アニソール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルである。さらに好ましくは、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、アニソール等であり、最も好ましくは、メチルtert−ブチルエーテルである。
ニトリル類としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、飽和のものが好ましく用いられる。通常、炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜12、より好ましくは炭素数2〜8のものが用いられる。
具体例としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、マロノニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、スクシノニトリル、バレロニトリル、グルタロニトリル、ヘキサンニトリル、ヘプチルシアニド、オクチルシアニド、ウンデカンニトリル、ドデカンニトリル、トリデカンニトリル、ペンタデカンニトリル、ステアロニトリル、クロロアセトニトリル、ブロモアセトニトリル、クロロプロピオニトリル、ブロモプロピオニトリル、メトキシアセトニトリル、シアノ酢酸メチル、シアノ酢酸エチル、トルニトリル、ベンゾニトリル、クロロベンゾニトリル、ブロモベンゾニトリル、シアノ安息香酸、ニトロベンゾニトリル、アニソニトリル、フタロニトリル、ブロモトルニトリル、メチルシアノベンゾエート、メトキシベンゾニトリル、アセチルベンゾニトリル、ナフトニトリル、ビフェニルカルボニトリル、フェニルプロピオニトリル、フェニルブチロニトリル、メチルフェニルアセトニトリル、ジフェニルアセトニトリル、ナフチルアセトニトリル、ニトロフェニルアセトニトリル、クロロベンジルシアニド、シクロプロパンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、シクロヘプタンカルボニトリル、フェニルシクロヘキサンカルボニトリル、トリルシクロヘキサンカルボニトリル等を挙げることができる。
好ましくは、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、スクシノニトリル、バレロニトリル、クロロプロピオニトリル、シアノ酢酸メチル、シアノ酢酸エチル、トルニトリル、ベンゾニトリルである。より好ましくは、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリルであり、最も好ましくは、アセトニトリルである。
上記溶媒の中でも、例えば、溶解度を高めるための適度な加温ができ、且つ、湿体からの溶剤の乾燥除去や晶析濾液等からの溶剤回収の行いやすい沸点(1気圧下、約30〜150℃)、室温での取り扱い時でも室温以下に冷却した時でも固化しにくい融点(約20℃以下、好ましくは約10℃以下、より好ましくは約0℃以下)を持ち、粘性が低い(20℃において約10cp以下等)等の、沸点、粘性等の性質を考慮して選定するのが好ましい。工業的な作業上の観点から、常温で揮発し難いものが好ましく、例えば、沸点が約80℃以上のものが好ましく、約90℃以上のものがより好ましい。
還元型補酵素Q10は高濃度の溶液ほど酸化されにくい傾向にある。上記溶媒に対して還元型補酵素Q10は高い溶解性を示し、上記溶媒はこの点でも酸化防護に好適である。還元型補酵素Q10の酸化を防護するために好ましい濃度は、溶媒の種類等により一律に規定できないが、上記溶媒に対する還元型補酵素Q10の濃度として、通常1w/w%以上、好ましくは2w/w%以上である。上限は、特に制限されないが、実際的な操作性という観点から、400w/w%以下、好ましくは200w/w%以下、より好ましくは100w/w%以下、さらに好ましくは50w/w%以下である。
さらに、上記溶媒に対する還元型補酵素Q10の溶解度は好適な温度依存性を示す。このため、上記溶媒の使用は、還元型補酵素Q10の溶解量を好適に減じて、結晶状態へ移行させる(結晶化させる)上でも好適である。
このように、上記溶媒の使用によって、望ましくない酸素の副反応は、酸化型補酵素Q10の還元反応、及び/又は、還元型補酵素Q10の晶析の工程において最小化される。加えて、還元型補酵素Q10を、上記溶媒に溶解させて取り扱うことにより、分子酸素による酸化を防護し、還元型補酵素Q10を安定化させることができるので、抽出・水洗(外部添加した上記溶媒を用いる抽出・水洗)、濃縮(濃縮しながら他溶媒を添加する溶媒置換を含む)、カラムクロマトグラフィー等の取り扱い操作を好適に実施することができる。本発明においては、言うまでもなく、酸化型補酵素Q10の還元反応から、還元型補酵素Q10の晶析(精製晶析)までの一連の過程(必要に応じて還元型補酵素Q10の抽出・水洗等を含む)を、上記溶媒を使用して実施するのが好ましい。
本発明においては、必要に応じて、上記溶媒の他に、他の溶媒を悪影響のない範囲で併用することもできる。例えば、還元反応においては、酸化型補酵素Q10や還元型補酵素Q10の溶解度、還元剤の溶解度、反応速度等を改善するために、又、還元型補酵素Q10の晶析においては、還元型補酵素Q10の溶解度、晶析濃度、晶析温度、収率、スラリー性状、結晶性状等を改善するために、上記の溶媒に他の溶媒を適量加えて使用することができる。
このような他の溶媒としては、特に制限されず、例えば、水、アルコール類、脂肪酸類、ケトン類、ニトリル類を除く窒素化合物類、硫黄化合物類等を挙げることができる。
アルコール類としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、飽和のものが好ましく用いられる。通常、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜6、さらに好ましくは炭素数1〜5、特に好ましくは炭素数1〜3のものである。さらには、炭素数2〜3の1価アルコール、炭素数2〜5の2価アルコール、炭素数3の3価アルコールが好ましい。
1価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−ノナノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノール、アリルアルコール、プロパルギルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール等を挙げることができる。
好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、シクロヘキサノールである。より好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコールである。さらに好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコールである。特に好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールであり、とりわけ好ましくは、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールであり、最も好ましくは、エタノールである。
2価アルコールとしては、例えば、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール等を挙げることができる。好ましくは、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールであり、最も好ましくは、1,2−エタンジオールである。
3価アルコールとしては、例えばグリセリン等を好適に用いることができる。
脂肪酸類としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等を挙げることができる。好ましくは、ギ酸、酢酸であり、最も好ましくは酢酸である。
ケトン類としては、特に制限されず、炭素数3〜6のものが好適に用いられる。具体例としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン等を挙げることができる。好ましくは、アセトン、メチルエチルケトンであり、最も好ましくは、アセトンである。
窒素化合物類としては、例えば、ニトロメタン、トリエチルアミン、ピリジン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。
硫黄化合物類としては、例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン等を挙げることができる。
上記の他の溶媒は、融点、沸点、蒸気圧特性、相転移等の既知の物性や前記反応溶媒量、さらに酸化型補酵素Q10、還元型補酵素Q10や還元剤に対する溶解度に与える効果等をもとに、各々の溶媒の特性に従って好ましい割合で、炭化水素類、脂肪酸エステル類、エーテル類、及び、ニトリル類から選ばれる少なくとも1種の溶媒と共に用いるのがよい。
上記の他の溶媒は、悪影響のない範囲で特に制限無く使用できるが、酸化防護効果や後述する晶析収率等の観点から、前述の酸化防護効果の高い溶媒(炭化水素類、脂肪酸エステル類、エーテル類、及び、ニトリル類から選ばれる少なくとも1種)の比率(容量比)が大きいほど好ましく、実質的に酸化防護効果の高い溶媒を主成分とする溶媒を用いるのがより好ましい。
系が均一の溶媒相である場合は、反応溶媒、晶析溶媒、又は、濃縮、抽出、カラムクロマトグラフィー等で取り扱う際に使用する場合の主成分が、炭化水素類、脂肪酸エステル類、エーテル類、及び、ニトリル類から選ばれる少なくとも1種の溶媒であるのが好ましい。又、系が異なる溶媒相を形成するような場合は、還元型補酵素Q10をより良く溶解する溶媒相(例えば、水と相溶性の低い有機溶媒と水との混合溶媒系であるような場合、還元型補酵素Q10は、水相には難溶であり、水と相溶性の低い有機溶媒相に可溶である)の主成分が、炭化水素類、脂肪酸エステル類、エーテル類、及び、ニトリル類から選ばれる少なくとも1種の溶媒であるのが好ましい態様である。
この観点から、他の溶媒の使用量は、均一系の場合は、全溶媒量に対する容量比として、また、不均一系の場合は、還元型補酵素Q10をより良く溶解する溶媒相の容量に対する容量比として、通常約0.3未満、好ましくは約0.2未満、より好ましくは約0.1未満、さらに好ましくは約0.05未満である。言うまでもなく、下限は0である。
上記の他の溶媒のなかでも、酸化型補酵素Q10の還元反応においては、反応速度や収率向上の点から、アルコール類及び/又は水を併用するのが特に好ましい。還元型補酵素Q10の晶析においては、流動性等のスラリー性状改善の点から、水を好ましく用いることができる。
次に、酸化型補酵素Q10を還元して還元型補酵素Q10を製造する方法について説明する。
本発明に用いる酸化型補酵素Q10は、前述のように合成、発酵、天然物からの抽出等により調製したものであってもよく、既存の高純度補酵素Q10であってもよい。また、酸化型補酵素Q10のみを含有するものであってもよく、酸化型補酵素Q10と還元型補酵素Q10の混合物であってもよい。
本発明において、酸化型補酵素Q10の還元は、上記の酸化防護効果の高い溶媒、即ち、炭化水素類、脂肪酸エステル類、エーテル類、及び、ニトリル類のうちの少なくとも1種を溶媒として用い、水素化金属化合物、鉄(金属又は塩としての鉄)、亜鉛(金属としての亜鉛)、次亜硫酸類、アスコルビン酸類等を還元剤として用いて実施される。
水素化金属化合物としては、特に制限されないが、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム等を挙げることができる。上記水素化金属化合物の使用量は、水素化金属化合物の種類により異なり、一律に規定できないが、通常、理論水素当量の1〜3倍量で好適に実施できる。
鉄又は亜鉛を用いる還元は、通常、酸を使用して実施される。酸としては、特に制限されないが、例えば、酢酸等の脂肪酸、メタンスルホン酸等のスルホン酸、塩酸や硫酸等の無機酸等を挙げることができる。好ましくは無機酸であり、より好ましくは硫酸である。
鉄の使用量は、特に制限されないが、酸化型補酵素Q10の仕込み重量に対して、例えば、約1/5重量以上で好適に実施できる。上限は特に制限されないが、経済性の観点等から、約2倍重量以下である。なお、鉄は、金属鉄のみならず、硫酸鉄(II)等の塩の形態でも使用できる。
亜鉛の使用量は、特に制限されないが、酸化型補酵素Q10の仕込み重量に対して、例えば、約1/10重量以上で好適に実施できる。上限は特に制限されないが、経済性の観点等から、約2倍重量以下である。
次亜硫酸類としては特に制限されず、通常、次亜硫酸の塩である。次亜硫酸の塩としては特に制限されず、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が好ましく、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩がより好ましく、ナトリウム塩が最も好ましい。上記次亜硫酸類の使用量は、特に制限されないが、通常、酸化型補酵素Q10の仕込み重量に対して、約1/5重量以上、好ましくは約2/5重量以上、より好ましくは約3/5重量以上である。多くても特に支障はないが、経済的な観点から、通常、約2倍重量以下、好ましくは同重量以下で用いられる。よって、約2/5重量〜約同重量の範囲でより好適に実施できる。
アスコルビン酸類としては、特に制限されず、例えば、アスコルビン酸のみならず、rhamno−アスコルビン酸、arabo−アスコルビン酸、gluco−アスコルビン酸、fuco−アスコルビン酸、glucohepto−アスコルビン酸、xylo−アスコルビン酸、galacto−アスコルビン酸、gulo−アスコルビン酸、allo−アスコルビン酸、erythro−アスコルビン酸、6−デスオキシアスコルビン酸等のアスコルビン酸に類するものが挙げられ、また、それらのエステル体や塩であってもかまわない。さらに、これらは、L体、D体、或いは、ラセミ体であっても良い。より具体的には、例えば、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸パルミテート、L−アスコルビン酸ステアレート、D−arabo−アスコルビン酸等を挙げることができる。還元型補酵素Q10の製造において、上記アスコルビン酸類をいずれも好適に使用できるが、生成した還元型補酵素Q10との分離のしやすさ等を考慮すると、上記のアスコルビン酸類のうち、特に水溶性のものが好適に用いられ、最も好ましくは、入手容易性、価格等の観点から、L−アスコルビン酸、D−arabo−アスコルビン酸等のフリー体である。
上記のアスコルビン酸類の使用量は、特に制限されず、酸化型補酵素Q10を還元型補酵素Q10に変換しうる有効量であればよく、酸化型補酵素Q10に対して、通常1倍モル量以上、好ましくは1.2倍モル量以上である。上限は特に制限されないが、経済性を考慮して、通常10倍モル量以下、好ましくは5倍モル量以下、より好ましくは3倍モル量以下である。
上記還元剤のうち、還元能力、収率、品質といった観点から、亜鉛、次亜硫酸類、アスコルビン酸類が好ましく、特に次亜硫酸類(具体的には、次亜硫酸塩)、アスコルビン酸類が好ましい。
還元反応においては、上記のようにアルコール類及び/又は水を好適に併用することができる。水は、特に還元剤として鉄、亜鉛、次亜硫酸類を用いる場合に好適である。還元剤として水素化金属化合物やアスコルビン酸類を用いる場合には、アルコール類を併用することができる。水、アルコール類の併用は、これら水、アルコール類の特性が発揮され、反応速度の向上や反応収率の向上等に寄与する。
以下に好ましい還元方法についてより詳細に述べる。
上記次亜硫酸類を用いる還元は、水を併用して、上記の炭化水素類、脂肪酸エステル類、エーテル類、及び、ニトリル類から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒と水との混合溶媒系で実施するのが好ましい。その際、反応時のpHは、収率等の観点から、通常pH7以下、好ましくはpH3〜7、より好ましくはpH3〜6で実施される。上記pHは、酸(例えば、塩酸や硫酸等の無機酸)や塩基(例えば水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物)を用いて調整することができる。
上記次亜硫酸類を用いる還元において、水の使用量は、特に制限されず、還元剤である次亜硫酸類を適度に溶解する量であれば良く、例えば、上記次亜硫酸類の水に対する重量が、通常30w/w%以下、好ましくは20w/w%以下になるように調整するのが良い。又、生産性等の観点から、通常1w/w%以上、好ましくは5w/w%以上、より好ましくは10w/w%以上であるのが良い。
上記アスコルビン酸類を用いる還元は、上記の炭化水素類、脂肪酸エステル類、エーテル類、及び、ニトリル類のうち、特に水と相溶性の高い溶媒、なかでも、水と相溶性の高いエーテル類及びニトリル類から選ばれる少なくとも1種、具体的には、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル等を用いて実施するのが特に好ましい。他の溶媒としてアルコール類を使用することもできる。又、還元型補酵素Q10の製造における反応促進の観点から(例えば、反応温度の低下、反応時間の短縮等)、塩基性物質や亜硫酸水素塩等の反応促進効果を有する添加剤を共存させて、還元を実施することができる。
上記塩基性物質としては、特に制限されず、例えば、無機化合物、有機化合物を問わず使用しうる。上記無機化合物としては、特に制限されないが、例えば、金属(好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属等)の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩やアンモニア等を挙げることができる。その代表的なものとして、例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩等を挙げることができる。上記有機化合物としては、特に制限されないが、例えば、トリエチルアミン等のアミン等を挙げることができる。上記の塩基性物質のうち、金属(好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属等)の炭酸塩、炭酸水素塩、アンモニア等の無機化合物;トリエチルアミン等のアミン等の有機化合物といった弱い塩基性物質(弱塩基又は弱アルカリ)を好ましく使用できる。より好ましくは上記の弱塩基性の無機化合物である。
また、上記亜硫酸水素塩としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム等のアルカリ金属亜硫酸水素塩等を好適なものとして挙げることができる。
上記添加剤の量は、期待する程度の反応促進効果を発揮しうる量(有効量)であればよく、特に制限されないが、経済性も考慮して、アスコルビン酸類に対して、通常20倍モル量以下、好ましくは10倍モル量以下、より好ましくは5倍モル量以下、さらに好ましくは2倍モル量以下である。下限は、特に制限されないが、通常0.01倍モル量以上、好ましくは0.05倍モル量以上、より好ましくは0.1倍モル量以上、さらに好ましくは0.2倍モル量以上である。
本発明の還元反応は、強制流動下に実施するのが好ましい。単位容積当たりの撹拌所要動力として、通常約0.01kW/m以上、好ましくは約0.1kW/m以上、より好ましくは約0.3kW/m以上の流動が好ましい。上記の強制流動は、通常、撹拌翼の回転により与えられるが、上記流動が得られれば必ずしも撹拌翼を用いる必要はなく、例えば、液の循環による方法等を利用しても良い。
還元温度は、還元剤の種類や量によって異なり、一律に規定できない。例えば、次亜硫酸類を用いる還元においては、通常100℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは60℃以下で実施される。下限は、系の固化温度である。よって、還元は、通常0〜100℃程度、好ましくは0〜80℃程度、より好ましくは0〜60℃程度で好適に実施できる。また、アスコルビン酸類を用いる還元においては、通常30℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上で実施される。上限は系の沸点である。よって、還元は、通常30〜150℃程度、好ましくは40〜120℃程度、より好ましくは50〜100℃程度で好適に実施できる。
反応濃度は、特に制限はないが、溶媒の重量に対する酸化型補酵素Q10の重量として、通常約1w/w%以上、好ましくは3w/w%以上、より好ましくは10w/w%以上、さらに好ましくは15w/w%以上である。上限は、特に制限されないが、通常約60w/w%以下、好ましくは50w/w%以下、より好ましくは40w/w%以下、さらに好ましくは30w/w%以下である。よって、反応濃度は、約1〜60w/w%、好ましくは約3〜50w/w%、より好ましくは約10〜40w/w%で好適に実施できる。
還元反応は、還元剤の種類や量によって異なり、一律に規定できないが、通常、48時間以内、好ましくは24時間以内、より好ましくは10時間以内、さらに好ましくは5時間以内に完了させることができる。
なお、還元反応は、脱酸素雰囲気下で実施するのが極めて好ましく、驚くべきことには、特に次亜硫酸類を用いた還元反応では、還元反応収率向上や還元剤量の削減に大きく寄与することも見い出した。脱酸素雰囲気は、不活性ガスによる置換、減圧、沸騰やこれらを組み合わせることにより達成できる。少なくとも、不活性ガスによる置換、即ち、不活性ガス雰囲気を用いるのが好適である。上記不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、水素ガス、炭酸ガス等を挙げることができ、好ましくは窒素ガスである。
このようにして得られた還元反応液から、生成した還元型補酵素Q10を含有する有機相を採取し、必要に応じて(好ましくは)、さらに有機相を水や食塩水等を用いて繰り返し水洗して、夾雑物を完全に除去した後、晶析に用いることができる。特に、還元剤として、次亜硫酸ナトリウム等の上記の次亜硫酸類を用いた場合には、次亜硫酸類由来の夾雑物を完全に除去したり、水相のpHを安定させるために、繰り返し水洗することが望ましい。
又、酸化型補酵素Q10を、上記の水と相溶性の高い溶媒、特に、水と相溶性の高いエーテル類及びニトリル類(例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル等)から選ばれる少なくとも1種を用いて、アスコルビン酸類で還元を行った場合は、還元反応液から直接還元型補酵素Q10を晶析する(直接単離法(ワンポット法))のが極めて簡便且つ効率的な方法である。
上記還元反応後の処理は、脱酸素雰囲気下にて実施するのが好ましく、これにより酸化防護効果をさらに高めることができる。
次に、還元型補酵素Q10の晶析について説明する。
晶析に用いる還元型補酵素Q10は、例えば、合成、発酵、天然物からの抽出等の従来公知の方法により得ることができる。好ましくは、還元型補酵素Q10中に含まれる酸化型補酵素Q10を還元、或いは、酸化型補酵素Q10を還元することにより得られたものであり、より好ましくは、前記の本発明の還元反応を用いて得られたものである。
本発明の晶析法は、酸化型補酵素Q10を比較的多く含有するものについても適用できるが、上記の還元方法等により調製された高純度の還元型補酵素Q10に対して特に有効である。本発明においては、従来公知の方法により得られた、あるいは、上記の還元方法等により製造された、還元型補酵素Q10を含有する反応液や抽出液に含有される不純物の除去も兼ねて精製晶析するのが特に効果的である。より具体的には、上記還元方法で得られた還元反応液、又は、該反応液から還元型補酵素Q10含む有機相を採取し、必要に応じて有機相を洗浄して得られた溶液から還元型補酵素Q10を晶析することができる。このとき、不純物を母液に除去することが好ましい。これにより、共存する不純物、特に、通常除去するのが必ずしも容易ではない構造の類似した類縁化合物(具体的には、還元型補酵素Q、還元型補酵素Q、還元型補酵素Q等)を除去することができる。言うまでもなく、一度精製晶析して得られた還元型補酵素Q10結晶を再精製するための、再結晶法としても利用可能である。
還元型補酵素Q10の晶析は、上記の炭化水素類、脂肪酸エステル類、エーテル類、及び、ニトリル類から選ばれる少なくとも1種を溶媒として用いて行われる。なかでも炭化水素類が好ましく、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素がより好ましく、脂肪族炭化水素がさらに好ましく、前述のペンタン類、ヘキサン類、ヘプタン類、オクタン類が特に好ましい。また、晶析収率、晶析時に過度の冷却を必要としない等の観点からは、脂肪族炭化水素類のなかでも、非環状脂肪族炭化水素が特に好ましい。
晶析方法としては、特に制限されず、一般に用いられる晶析法、即ち、冷却晶析、濃縮晶析、溶媒置換晶析等のうちの少なくとも一つを用いて実施することができる。特に、冷却晶析、又は、冷却晶析に他の晶析法を組み合わせて実施するのが好ましい。
晶析時の冷却温度は一つの重要な因子であり、例えば収率等の観点から、通常20℃以下、好ましくは10℃以下、より好ましくは5℃以下である。下限は、系の固化温度である。よって、冷却温度を、通常−30℃〜+10℃程度、好ましくは−20℃〜+10℃程度、より好ましくは−10℃〜+5℃程度とすることにより、晶析を好適に実施できる。
得られる還元型補酵素Q10中への各種不純物の混入を最小化する、又は良好な性状のスラリーを得る目的で、晶析時の単位時間当たりの結晶の晶出量を制御することができる。好ましい単位時間当たりの晶出量は、例えば、単位時間当たり全晶出量の約50%量が晶出する速度以下(即ち、最大で50%量/時間)であり、好ましくは、単位時間当たり全晶出量の約25%量が晶出する速度以下(即ち、最大で25%量/時間)である。尚、冷却晶析における冷却速度は、通常、約40℃/時間以下であり、好ましくは約20℃/時間以下である。
晶析濃度も一つの重要な因子であり、晶析終了時の晶析溶媒の重量に対する還元型補酵素Q10の重量として、約15w/w%以下、好ましくは約13w/w%以下、より好ましくは約10w/w%以下である。用いる溶媒種によっても好適な晶析濃度は異なり、良好に晶析するためには、例えば、脂肪族炭化水素又は脂肪族炭化水素を主成分とする場合は、晶析濃度は約13w/w%以下、好ましくは約10w/w%以下、より好ましくは約8w/w%以下であり、最も好適な非環状脂肪族炭化水素又は非環状脂肪族炭化水素を主成分とする場合は、晶析濃度は約10w/w%以下、好ましくは約8w/w%以下、より好ましくは約7w/w%以下である。上記濃度を維持することによって、工業的規模での操作性に耐えうる好適な晶析が可能となる。濃度の下限は、特に制限されないが、生産性の観点から、通常、約1w/w%以上であり、好ましくは約2w/w%以上である。
晶析は、強制流動下に実施するのが好ましい。過飽和の形成を抑制し、スムースに核化・結晶成長を行うため、また、高品質化の観点から、単位容積当たりの撹拌所要動力として、通常約0.01kW/m以上、好ましくは約0.1kW/m以上、より好ましくは約0.3kW/m以上の流動が好ましい。上記の強制流動は、通常、撹拌翼の回転により与えられるが、上記流動が得られれば必ずしも撹拌翼を用いる必要はなく、例えば、液の循環による方法等を利用しても良い。
晶析に際しては、過飽和の形成を抑制し、スムースに核化・結晶成長を行うために、種晶を添加するのが好ましい。
本発明の晶析においては、必要に応じて、上記酸化防護効果の高い溶媒の他に、上述した補助的な他の溶媒を悪影響のない範囲で併用することもできる。還元型補酵素Q10の溶解度、晶析濃度、晶析温度、収率、スラリー性状、結晶性状等を改善するために、上記の溶媒に補助的な溶媒を適量加えて使用してもよいが、混合溶媒とすることにより、溶解度が劇的に上昇して、むしろ晶析収率が低下する等の傾向が認められる場合もある。従って、酸化防護効果や晶析収率等の観点から、実質的に上記溶媒を主成分とする溶媒を用いるのが好ましい。よって、他溶媒との混合溶媒として用いる場合においては、他の溶媒の比率(容量比)は、必ずしも限定はされないが、通常約0.3未満、好ましくは約0.2未満、より好ましくは約0.1未満、さらに好ましくは約0.05未満である。言うまでもなく、下限は0である。容量比は、前述の如く、均一系においては全溶媒の容量に対する他の溶媒の容量比率であり、不均一系においては還元型補酵素Q10をより良く溶解する溶媒相の容量に対する他の溶媒の容量比率である。
しかし、補助的な他の溶媒として水を併用することにより、水の特性が発揮され、スラリー性状の改善等に寄与しうる。還元型補酵素Q10の晶析における水の使用量は、晶出した還元型補酵素Q10のスラリー濃度やスラリー性状に影響する。水使用量が多いほど、スラリー濃度が低下し、一般に流動性も向上する一方、全体としてのスラリー濃度が下がって生産性の低下につながるので、これらの点を勘案して、好適な範囲に調整・維持するために適宜変量すればよく、特に制限されない。
上記の補助的な他の溶媒は、晶析に際して、予め添加しても良く、晶析途中で添加して良く、また、晶出量が安定した後に添加しても良い。
このようにして得られる還元型補酵素Q10の結晶は、例えば、遠心分離、加圧濾過、減圧濾過等による固液分離、さらに、必要に応じてケーキ洗浄を行い、湿体として取得することができる。また、さらに内部を不活性ガスに置換した減圧乾燥器(真空乾燥器)に湿体を仕込み、減圧下、乾燥し、乾体として取得することができるし、乾体として取得するのが好ましい。
なお、晶析は脱酸素雰囲気下にて実施することにより、さらに、酸化防護効果を高めることができる。脱酸素雰囲気は、不活性ガスによる置換、減圧、沸騰やこれらを組み合わせることにより達成できる。少なくとも、不活性ガスによる置換、即ち、不活性ガス雰囲気を用いるのが好適である。上記不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、水素ガス、炭酸ガス等を挙げることができ、好ましくは窒素ガスである。
本発明により、高品質の還元型補酵素Q10を簡便且つ効率的に合成、晶析することができる。また、本発明により得られる還元型補酵素Q10結晶は、極めて高品質であり、還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比は、96/4以上、好ましくは98/2以上、より好ましくは99/1以上が期待できる。
本発明は、上述の構成よりなるので、工業的規模での生産に適した方法で、高品質の還元型補酵素Q10を簡便且つ効率的に得ることができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。また、実施例中の還元型補酵素Q10の純度、還元型補酵素Q10と酸化型補酵素Q10との重量比は、下記HPLC分析により求めたが、得られた還元型補酵素Q10の純度は本発明における純度の限界値を規定するものではなく、また、同様に、還元型補酵素Q10と酸化型補酵素Q10との重量比も、その上限値を規定するものではない。
(HPLC分析条件)
カラム;SYMMETRY C18(Waters製),250mm(長さ),4.6mm(内径)、移動相;COH:CHOH=4:3(v:v)、検出波長;210nm、流速;1ml/min、還元型補酵素Q10の保持時間;9.1min、酸化型補酵素Q10の保持時間;13.3min。
(実施例1)
100gの酸化型補酵素Q10(酸化型補酵素Qを0.40%含有、純度99.4%)を25℃で1000gのヘプタンに溶解させた。撹拌(撹拌所要動力0.3kW/m)しながら、還元剤として次亜硫酸ナトリウム(純度75%以上)100gに1000mlの水を加えて溶解させた水溶液を、徐々に添加し、25℃、pH4〜6で還元反応を行った。2時間後、反応液から水相を除去し、脱気した飽和食塩水1000gでヘプタン相を6回水洗して還元型補酵素Q10を100g(還元型補酵素Qを0.40%含有)を含むヘプタン相を得た。このヘプタン相を撹拌(撹拌所要動力0.3kW/m)しながら2℃まで冷却し、白色のスラリーを得た。なお、以上すべての操作は窒素雰囲気下で実施した。得られたスラリーを減圧ろ過し、湿結晶を冷ヘプタン、冷エタノール、冷水、冷エタノール、冷ヘプタンで順に洗浄(洗浄に用いた冷溶媒の温度は2℃)して、さらに、湿結晶を減圧乾燥(20〜40℃、1〜30mmHg)することにより、白色の乾燥結晶93g(還元型補酵素Qを0.29%含有、除去率28%)を得た(有姿収率93モル%)。得られた結晶の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比は99.6/0.4、還元型補酵素Q10の純度は99.2%であった。
(実施例2、比較例1)
実施例1で得られた1gの還元型補酵素Q10を、25℃下で表1に示す各種溶媒20gに溶解した。大気中、25℃で24時間の撹拌後、液中の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比を測定した結果と、比較のため上記と同条件下(1gの還元型補酵素Q10を大気中25℃で24時間)で結晶を保存した結果を表1に示す。
Figure 0004220565
(実施例3、比較例2)
実施例1で得られた1gの還元型補酵素Q10を、35℃下で表2に示す各種溶媒100gに溶解した。大気中、35℃で24時間の撹拌後、液中の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比を測定した結果を表2に示す。
Figure 0004220565
(実施例4)
10gの酸化型補酵素Q10を25℃で表3に記載の各種溶媒100gに溶解させた。撹拌(撹拌所要動力0.3kW/m)しながら、還元剤として市販の次亜硫酸ナトリウム(純度75%以上)10gに100mlの水を加えて溶解させた水溶液を、徐々に添加し、25℃、pH4〜6で還元反応を行った。2時間後、反応液から水相を除去し、さらに脱気した飽和食塩水100gで有機相を6回水洗した。なお、すべての操作は窒素雰囲気下で実施した。有機相中の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比を測定した結果を表3に示す。
Figure 0004220565
(実施例5)
10gの酸化型補酵素Q10を25℃で100gのヘプタンに溶解させ、亜鉛粉末1.5g及び2.9N硫酸110gを添加し、25℃で6時間の撹拌(撹拌所要動力0.3kW/m)後、100gの濃塩酸を添加した。ヘプタン相の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比を測定したところ99.6/0.4であった。なお、すべての操作は窒素雰囲気下で実施した。
(実施例6)
酸化型補酵素Q10を溶解する溶媒としてヘキサンを用いる以外、実施例1と同様に、還元および晶析を行った。その結果、白色の乾燥結晶93gを得た(有姿収率93モル%)。得られた結晶の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比は99.4/0.6、還元型補酵素Q10の純度は99.0%であった。
(実施例7)
100gの酸化型補酵素Q10(純度99.4%)を25℃で1000gのヘキサンに溶解させた。撹拌(撹拌所要動力0.3kW/m)しながら、還元剤として次亜硫酸ナトリウム(純度75%以上)100gに1000mlの水を加えて溶解した水溶液を、徐々に添加し、25℃、pH4〜6で還元反応を行った。2時間後、反応液から水相を除去し、さらに脱気した飽和食塩水1000gでヘキサン相を6回水洗した。このヘキサン相にメタノール50gを添加し、撹拌(撹拌所要動力0.3kW/m)しながら2℃まで冷却して、白色のスラリーを得た。なお、以上すべての操作は窒素雰囲気下で実施した。得られたスラリーを減圧ろ過し、湿結晶を冷ヘキサン、冷エタノール、冷水、冷エタノール、冷ヘキサンで順に洗浄し(洗浄に用いた冷溶媒の温度は2℃)、湿結晶を減圧乾燥(20〜40℃、1〜30mmHg)することにより、白色の乾燥結晶92gを得た(有姿収率92モル%)。得られた結晶の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比は99.4/0.6、還元型補酵素Q10の純度は99.0%であった。
(実施例8)
100gの酸化型補酵素Q10(純度99.4%)を25℃で1000gの酢酸エチルに溶解させた。撹拌(撹拌所要動力0.3kW/m)しながら、還元剤として次亜硫酸ナトリウム(純度75%以上)100gに1000mlの水を加えて溶解させた水溶液を、徐々に添加して、25℃、pH4〜6で還元反応を行った。2時間後、反応液から水相を除去し、さらに脱気した飽和食塩水1000gで酢酸エチル相を6回水洗した。この酢酸エチル相にエタノール300gおよび水50gを添加し、撹拌(撹拌所要動力0.3kW/m)しながら2℃まで冷却し、実施例1と比較して流動性の改善された白色のスラリーを得た。なお、以上すべての操作は窒素雰囲気下で実施した。得られたスラリーを減圧ろ過し、湿結晶を冷エタノール、冷水、冷エタノールで順に洗浄し(洗浄に用いた冷溶媒の温度は2℃)、湿結晶を減圧乾燥(20〜40℃、1〜30mmHg)することにより、白色の乾燥結晶89gを得た(有姿収率89モル%)。得られた結晶の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比は99.5/0.5、還元型補酵素Q10の純度は99.2%であった。
(実施例9)
還元型補酵素Q10100g(還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比=95/5、補酵素Q10の純度は99.4%)を25℃で1000gのヘプタンに溶解させた。撹拌(撹拌所要動力0.3kW/m)しながら、還元剤として次亜硫酸ナトリウム(純度75%以上)10gに1000mlの水を加えて溶解させた水溶液を、徐々に添加し、25℃、pH4〜6で還元反応を行った。2時間後、反応液から水相を除去し、さらに脱気した飽和食塩水1000gでヘプタン相を6回水洗した。このヘプタン相を撹拌しながら(撹拌所要動力0.3kW/m)2℃まで冷却し、白色のスラリーを得た。なお、以上すべての操作は窒素雰囲気下で実施した。得られたスラリーを減圧ろ過し、湿結晶を冷ヘプタン、冷エタノール、冷水、冷エタノール、冷ヘプタンで順に洗浄し(洗浄に用いた冷溶媒の温度は2℃)、湿結晶を減圧乾燥(20〜40℃、1〜30mmHg)することにより、白色の乾燥結晶93gを得た(有姿収率93モル%)。得られた結晶の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比は99.6/0.4、還元型補酵素Q10の純度は99.2%であった。
(実施例10)
使用した酸化型補酵素Q10の純度が98.4%(酸化型補酵素Qを1.0%、酸化型補酵素Qを0.30%、及び、酸化型補酵素Qを0.04%含有)であること以外は、実施例1とまったく同条件下にて還元及び晶析を行った。その結果、白色の乾燥結晶93g(還元型補酵素Qを0.72%含有:除去率28%、還元型補酵素Qを0.11%含有:除去率63%、還元型補酵素Qは検出されず)を得た(有姿収率93モル%)。得られた結晶の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比は99.6/0.4、還元型補酵素Q10の純度は99.0%であった。
(実施例11)
実施例1と同様の方法で得られた還元型補酵素Q10の結晶(還元型補酵素Qを0.29%含有、純度99.1%、還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比は99.4/0.6)10gを45℃で140gのアセトニトリルに溶解させ、撹拌(撹拌所要動力0.3kW/m)しながら2℃まで冷却して白色のスラリーを得た。なお、以上すべての操作は窒素雰囲気下で実施した。得られたスラリーを減圧ろ過し、湿結晶を冷アセトニトリル、冷水、冷アセトニトリルで順に洗浄し(洗浄に用いた冷溶媒の温度は2℃)、湿結晶を減圧乾燥(20〜40℃、1〜30mmHg)することにより、白色の乾燥結晶9.5g(還元型補酵素Qを0.25%含有、除去率14%)を得た(有姿収率95モル%)。得られた結晶の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比は99.4/0.6、還元型補酵素Q10の純度は99.1%であった。
(実施例12)
実施例1と同様の方法で得られた還元型補酵素Q10の結晶(還元型補酵素Qを0.29%含有、純度98.8%、還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比は99.1/0.9)10gを25℃で100gのヘプタンに溶解させ、撹拌(撹拌所要動力0.3kW/m)しながら2℃まで冷却して白色のスラリーを得た。なお、以上すべての操作は空気中で実施した。得られたスラリーを減圧ろ過し、湿結晶を冷ヘプタン、冷エタノール、冷水、冷エタノール、冷ヘプタンで順に洗浄し(洗浄に用いた冷溶媒の温度は2℃)、湿結晶を減圧乾燥(20〜40℃、1〜30mmHg)することにより、白色の乾燥結晶(還元型補酵素Qを0.20%含有、除去率31%)9.3gを得た(有姿収率93モル%)。得られた結晶の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比は99.0/1.0、還元型補酵素Q10の純度は98.8%であった。
(比較例3)
実施例1で得られた還元型補酵素Q10の結晶10gを25℃で70gのN−メチルピロリドンに溶解させた。さらに水10gを添加し、撹拌(撹拌所要動力0.3kW/m)しながら2℃まで冷却して淡黄色のスラリーを得た。なお、以上すべての操作は空気中で実施した。得られたスラリーを減圧ろ過し、湿結晶を冷エタノール、冷水、冷エタノールで順に洗浄し(洗浄に用いた冷溶媒の温度は2℃)、湿結晶を減圧乾燥(20〜40℃、1〜30mmHg)することにより、淡黄色の乾燥結晶9.6gを得た(有姿収率96モル%)。得られた結晶は淡黄色で、還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比は88.6/11.4、還元型補酵素Q10の純度は88.3%であった。
(実施例13)
100gの酸化型補酵素Q10を25℃で1000gのヘキサンに溶解させた。撹拌(撹拌所要動力0.3kW/m)しながら、還元剤として次亜硫酸ナトリウム(純度75%以上)40gに1000mlの水を加えて溶解させた水溶液を、徐々に添加し、25℃、pH4〜6で還元反応を行った。2時間後、反応液から水相を除去し、脱気した飽和食塩水1000gでヘキサン相を6回水洗した。なお、以上すべての操作は窒素雰囲気下で実施した。このヘキサン溶液中の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比は99.2/0.8であった。
(実施例14)
1000gのアセトニトリル中に、100gの酸化型補酵素Q10(純度99.4%)、60gのL−アスコルビン酸及び30gの炭酸水素ナトリウムを加え、55℃にて撹拌し、還元反応を行った。40時間後、反応液にヘプタン1000g、脱気した水1000gを加えて25℃に冷却した。水層を除去した後、さらに脱気した飽和食塩水1000gでヘプタン相を6回水洗した。この、ヘプタン相を撹拌(撹拌所要動力0.3kW/m)しながら2℃まで冷却し、白色のスラリーを得た。なお、以上すべての操作は窒素雰囲気下で実施した。得られたスラリーを減圧ろ過し、湿結晶を冷ヘプタン、冷エタノール、冷水、冷エタノール、冷ヘプタンで順に洗浄(洗浄に用いた冷溶媒の温度は2℃)して、さらに、湿結晶を減圧乾燥(20〜40℃、1〜30mmHg)することにより、白色の乾燥結晶95gを得た(有姿収率95モル%)。得られた結晶の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比は99.5/0.5、還元型補酵素Q10の純度は99.0%であった。
(比較例4)
すべての操作を空気中で行うこと以外、すべて実施例13と同様にして還元反応を行った。得られたヘキサン溶液中の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比は45.3/54.7であった。
本発明は、上述の構成よりなるので、工業的規模での生産に適した方法で、高品質の還元型補酵素Q10を簡便且つ効率的に得ることができる。

Claims (15)

  1. 脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、脂肪酸エステル類、エーテル類、及び、ニトリル類から選ばれる少なくとも1種を晶析溶媒として用いる還元型補酵素Q10の晶析方法であって、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、脂肪酸エステル類、エーテル類、及び、ニトリル類、以外の他の溶媒の使用量が、均一系の場合は、全溶媒量に対する容量比として、不均一系の場合は、還元型補酵素Q10をより良く溶解する溶媒相の容量に対する容量比として、0.3未満であることを特徴とする晶析方法。
  2. 脂肪族炭化水素を溶媒に用いる請求項1記載の晶析方法。
  3. 脂肪族炭化水素が、非環状脂肪族炭化水素である請求項2記載の晶析方法。
  4. 脂肪族炭化水素が、ペンタン類、ヘキサン類、ヘプタン類及びオクタン類から選ばれる少なくとも1種である請求項2記載の晶析方法。
  5. 不純物を母液に除去する請求項1〜4のいずれかに記載の晶析方法。
  6. 除去される不純物が、還元型補酵素Q、還元型補酵素Q、及び、還元型補酵素Qから選ばれる少なくとも1種である請求項5記載の晶析方法。
  7. 還元型補酵素Q10の晶析は、冷却晶析、又は、冷却晶析に他の晶析法を組み合わせて行う請求項1〜6のいずれかに記載の晶析方法。
  8. 晶析時の冷却温度は、20℃以下である請求項7記載の晶析方法。
  9. 晶析濃度が、晶析終了時の晶析溶媒の重量に対する還元型補酵素Q10の重量として、15w/w%以下である請求項1〜8のいずれかに記載の晶析方法。
  10. 晶析は、単位容積当たりの撹拌所要動力として0.01kW/m以上の強制流動下に実施する請求項1〜9のいずれかに記載の晶析方法。
  11. 晶析に際して種晶を添加する請求項1〜10のいずれかに記載の晶析方法。
  12. 脱酸素雰囲気下で実施する請求項1〜11のいずれかに記載の晶析方法。
  13. 還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比が96/4以上である還元型補酵素Q10結晶。
  14. 晶析に用いる還元型補酵素Q10は、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、脂肪酸エステル類、エーテル類、及び、ニトリル類から選ばれる少なくとも1種を溶媒として用いて、酸化型補酵素Q10を還元して得られたものである、請求項1記載の晶析方法。
  15. 脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、脂肪酸エステル類、エーテル類、及び、ニトリル類から選ばれる少なくとも1種を溶媒として用いて、酸化型補酵素Q10を還元して得られた還元反応液、又は、該反応液から還元型補酵素Q10含む有機相を採取し、必要に応じて有機相を洗浄して得られた溶液から還元型補酵素Q10を晶析する請求項1記載の晶析方法。
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