図1は本発明を圧縮着火式内燃機関に適用した場合を示している。なお、本発明はガソリン機関にも適用することができる。
図1を参照すると、1は機関本体、2はシリンダブロック、3はシリンダヘッド、4はピストン、5は燃焼室、6は電気制御式燃料噴射弁、7は吸気弁、8は吸気ポート、9は排気弁、10は排気ポートを夫々示す。吸気ポート8は対応する吸気枝管11を介してサージタンク12に連結され、サージタンク12は吸気ダクト13およびエアフロメータ14を介してエアクリーナ15に連結される。吸気ダクト13内にはステップモータ16により駆動されるスロットル弁17が配置される。
一方、排気ポート10は排気マニホルド18を介して触媒19を内蔵した第1の触媒コンバータ20の入口部に連結され、第1の触媒コンバータ20の出口部は排気管21を介して触媒22を内蔵した第2の触媒コンバータ23に連結される。図1に示される実施例では触媒19は酸化機能を有する触媒、例えば酸化触媒又は三元触媒からなり、触媒22は酸素過剰のもとでアンモニアにより排気ガス中のNOx を還元するのに適したNOx 選択還元触媒からなる。
排気マニホルド18とサージタンク12とは排気ガス再循環(以下、EGR と称す)通路24を介して互いに連結され、EGR 通路24内には電気制御式EGR 制御弁25が配置される。各燃料噴射弁6は燃料供給管26を介して燃料リザーバ、いわゆるコモンレール27に連結される。このコモンレール27内へは電気制御式の吐出量可変な燃料ポンプ28から燃料が供給され、コモンレール27内に供給された燃料は各燃料供給管26を介して燃料噴射弁6に供給される。コモンレール27にはコモンレール27内の燃料圧を検出するための燃料圧センサ29が取付けられ、燃料圧センサ29の出力信号に基づいてコモンレール27内の燃料圧が目標燃料圧となるように燃料ポンプ28の吐出量が制御される。
一方、アンモニアを発生するアンモニア発生化合物を含む液体がタンク30内に貯えられており、タンク30内に貯えられているアンモニア発生化合物を含む液体は供給導管31、供給ポンプ32および電磁制御式流量制御弁33を介して排気管21内に供給される。
電子制御ユニット40はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス41によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)42、RAM(ランダムアクセスメモリ)43、CPU(マイクロプロセッサ)44、入力ポート45および出力ポート46を具備する。エアフローメータ14は吸入空気量に比例した出力電圧を発生し、この出力電圧は対応するAD変換器47を介して入力ポート45に入力される。また、燃料圧センサ29の出力信号は対応するAD変換器47を介して入力ポート45に入力される。一方、機関本体1には機関冷却水温を検出するための水温センサ34が取付けられ、排気管21内には排気管21内を流れる排気ガスの温度を検出するための温度センサ35が配置される。これら水温センサ34および温度センサ35の出力信号は夫々対応するAD変換器47を介して入力ポート45に入力される。
アクセルペダル50にはアクセルペダル50の踏込み量Lに比例した出力電圧を発生する負荷センサ51が接続され、負荷センサ51の出力電圧は対応するAD変換器47を介して入力ポート45に入力される。更に入力ポート45にはクランクシャフトが例えば30°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ52が接続される。また、入力ポート45にはスタータスイッチ53の作動信号が入力される。一方、出力ポート46は対応する駆動回路54を介して燃料噴射弁6、ステップモータ16、EGR 制御弁25、燃料ポンプ28、ポンプ32および流量制御弁33に接続される。
さて、前述したように触媒22上流の排気管21内にはアンモニア発生化合物を含む液体が供給される。アンモニアを発生しうるアンモニア発生化合物については種々の化合物が存在し、従ってアンモニア発生化合物として種々の化合物を用いることができる。本発明による実施例ではアンモニア発生化合物として尿素を用いており、アンモニア発生化合物を含む液体として尿素水溶液を用いている。従って以下、触媒22上流の排気管21内に尿素水溶液を供給する場合を例にとって本発明を説明する。
一方、前述したように触媒22はNOx 選択還元触媒からなり、図 1に示す実施例ではこのNOx 選択還元触媒としてチタニアを担体とし、この担体上に酸化バナジウムを担持した触媒V2 O5 /TiO2(以下、バナジウム・チタニア触媒という)、又はゼオライトを担体とし、この担体上に銅を担持した触媒Cu/ZSM 5(以下、銅ゼオライト触媒という)が用いられている。
過剰酸素を含んでいる排気ガス中に尿素水溶液を供給すると排気ガス中に含まれるNOは触媒22上において尿素CO(NH2)2から発生するアンモニアNH3 により還元される(例えば2NH3+2NO+1/2O2 →2N2+3H2O)。この場合、排気ガス中に含まれるNOx を還元して排気ガス中のNOx を完全に除去するためには一定量の尿素が必要であり、以下、排気ガス中のNOx を還元し完全に除去するために必要な尿素量を、尿素/NOx の当量比が1の尿素量という。なお、尿素/NOx の当量比が1であることを以下単に当量比=1という。
図2は機関回転数を一定に維持しつつ触媒22に流入する排気ガス温Tiを変化させ、排気ガス中のNOx 量に対して尿素量が当量比=1となるように尿素水溶液を供給した場合のNOx 浄化率を示している。なお、図2において実線は触媒22として銅ゼオライト触媒を用いた場合を示しており、破線は触媒22としてバナジウム・チタニア触媒を用いた場合を示している。
図2から、排気ガス中のNOx 量に対して尿素量が当量比=1となるように尿素水溶液が供給された場合、いずれの触媒22においても触媒22に流入する排気ガス温Tiがほぼ 350℃以上になるとNOx 浄化率はほぼ 100パーセントとなり、触媒22に流入する排気ガス温Tiが低下するにつれてNOx 浄化率が低下することがわかる。
一方、図3は触媒22の温度を 400℃に維持した状態で尿素水溶液を供給した場合において、尿素水溶液を供給してからの経過時間t(sec)と発生アンモニア濃度(p.p.m.)との関係を示している。図3から、尿素水溶液を供給すると尿素は一気にアンモニアに分解され、一気にアンモニアが放出されることがわかる。また、上述した如く触媒22の温度が 400℃のときには当量比=1でもって尿素が供給されるとNOx 浄化率がほぼ 100パーセントとなる。
従って図2および図3から、触媒22の温度がほぼ 350℃以上のときに排気ガス中のNOx 量に対して尿素量が当量比=1となるように尿素水溶液を供給すると尿素水溶液中に含まれる尿素から一気にアンモニアが放出され、このアンモニアによって排気ガス中の全NOx が還元せしめられることがわかる。云い換えると触媒22の温度がほぼ 350℃以上のときには排気ガス中のNOx 量に対して尿素量が当量比=1となるように尿素水溶液を供給すれば排気ガス中のNOx をほぼ完全に浄化できることになる。
一方、図4は触媒22の温度Tcが 120℃のときに尿素水溶液を供給し、その後触媒22の温度Tcを徐々に上昇させた場合において、尿素水溶液供給開始からの経過時間t(sec)と発生アンモニア濃度(p.p.m.)との関係を示している。図4に示されるように尿素水溶液を供給しても触媒22の温度Tcが低い間はアンモニアは全く発生せず、触媒22の温度Tcが上昇を開始すると触媒22の温度Tcが上昇するにつれてアンモニアが少しずつ発生する。
図4は次の2つのことを意味している。即ち、まず第1に触媒22の温度Tcが上昇するとアンモニアが発生するということは供給された尿素が触媒22内に貯蔵されていたということを意味している。第2に尿素の熱分解温度はほぼ 132℃であり、従ってアンモニアが尿素の熱分解によって発生するものと考えると触媒22の温度Tcがほぼ 132℃に達したときに一気にアンモニアが放出されるはずである。しかしながら図4に示されるように触媒22の温度Tcがほぼ 132℃に達してもアンモニアは一気に放出されず、このことはアンモニアが尿素の熱分解のみによって発生しているのではないことを意味している。
このように触媒22の温度Tcがほぼ 132℃に達してもアンモニアが一気に放出されず、触媒22の温度Tcが上昇するにつれて少しずつアンモニアが放出されるのは触媒22上における尿素の形態変化によるものと考えられる。即ち、尿素はほぼ 132℃においてビウレットに変化し、ビウレットはほぼ 190℃においてシアヌル酸に変化し、シアヌル酸はほぼ 360℃においてシアン酸又はイソシアン酸に変化する。このように温度上昇による形態変化の過程で少しずつアンモニアが発生するものと考えられ、従って図4に示されるように触媒22の温度Tcが上昇するにつれて触媒22から少しずつアンモニアが放出されることになる。
即ち、尿素水溶液を供給したとき触媒22の温度Tcが低い場合には尿素水溶液中に含まれる尿素が触媒22内に貯蔵される。次いで触媒22の温度Tcが上昇するとそれにつれて触媒22内に貯蔵された尿素が順次別のアンモニア発生化合物に形態変化し、その結果触媒22からアンモニアが徐々に放出されることになる。
このように尿素水溶液を供給したとき触媒22の温度Tcが低い場合には尿素水溶液中に含まれる尿素が触媒22内に貯蔵され、この尿素は触媒22の温度Tcが低い状態に維持されている限り触媒22内に貯蔵され続ける。一方、触媒22の温度Tcがほぼ 132℃からほぼ 350℃までの間のときに尿素水溶液が供給されるとこの場合にも尿素水溶液中に含まれる尿素は触媒22内に一旦貯蔵される。次いで尿素の温度が上昇し、尿素が順次別のアンモニア発生化合物に形態変化するとそれによって触媒22からアンモニアが放出される。即ち、触媒22の温度Tcがほぼ 132℃から 350℃までの間のときに尿素水溶液を供給するとその後暫くしてから触媒22からのアンモニアの放出作用が開始される。
このように触媒22の温度Tcがほぼ 132℃から 350℃までの間のときに尿素水溶液を供給するとその後暫くしてから触媒22からのアンモニアの放出作用が開始されるが触媒22の温度Tcがほぼ一定に維持されているときに尿素水溶液が継続的に供給されれば触媒22からアンモニアが継続的に放出される。ただし、この場合触媒22内に貯蔵された尿素は触媒22の温度Tcにより定まるアンモニア発生化合物までしか形態変化しないのでアンモニアはそれほど発生しない。従ってこの場合、排気ガス中のNOx 量に対して尿素量が当量比=1となるように尿素水溶液を供給しても触媒22から発生するアンモニアによって排気ガス中の全てのNOx が還元されることはない。
また、尿素水溶液が供給されると尿素水溶液中に含まれる一部の尿素は排気ガス中において熱分解し、それによってアンモニアが発生するものと考えられるので排気ガス中のNOx の一部はこのアンモニアによって還元される。しかしながらこのアンモニアの量もさほど多くはないのでこのアンモニアによって還元される排気ガス中のNOx 量もさほど多くない。
従って触媒22の温度Tcがほぼ 132℃からほぼ 350℃までの間のほぼ一定温度に維持されているときに、排気ガス中のNOx 量に対して尿素量が当量比=1となるように尿素水溶液を供給しても図2に示されるようにNOx 浄化率が高くはならない。この場合、排気ガス温が高くなり、それに伴い触媒22の温度Tcが高くなれば一方では触媒22から発生するアンモニア量が増大し、他方では排気ガス中において尿素水溶液中の尿素から発生するアンモニア量も増大する。従って図2に示されるように触媒22に流入する排気ガス温Tiが高くなるにつれてNOx 浄化率は次第に高くなる。
触媒22の温度Tcがほぼ 132℃からほぼ 350℃までのほぼ一定温度に維持されているときにNOx 浄化率を高くするためには触媒22から発生するアンモニア量を増大させ、排気ガス中において尿素水溶液中の尿素から発生するアンモニア量を増大させればよく、そのためには供給される尿素量を増大させればよいことになる。そこで本発明による実施例では触媒22の温度Tcがほぼ 132℃からほぼ 350℃の間でさほど変化しないときには供給される尿素量が排気ガス中のNOx を還元するのに必要な当量比=1以上の尿素量となるように尿素水溶液の供給量を増量するようにしている。
このように触媒22の温度Tcがほぼ 132℃からほぼ 350℃の間でさほど変化しない場合には当量比=1以上の量の尿素を供給することによってNOx 浄化率を高くすることができる。しかしながら例えば加速運転時のように排気ガス温が急激に上昇し、触媒22の温度Tcが急激に上昇する場合にはたとえ当量比=1以上の量の尿素を供給してもNOx 浄化率を高くすることはできない。
即ち、低負荷運転状態から加速運転すべく高負荷運転状態に移行すると排気ガス温が急激に上昇するために触媒22の温度Tcも急激に上昇する。一方、機関の運転状態が高負荷運転に移行すると排気ガス中のNOx 量が急激に増大する。しかしながらこのとき急激に増大したNOx を還元するのに必要な当量比=1以上の尿素を供給すべく尿素水溶液の供給量を急激に増大させても前述したように急激に増大された尿素からは暫くしないとアンモニアが発生せず、実際に試験をしてみると加速運転中に急激に増大された尿素からはほとんどアンモニアが発生しない。従って加速運転時には触媒22から放出されるアンモニア量が、増大したNOx を還元するのに必要なアンモニア量に比べて大巾に少なくなり、斯くして高いNOx 浄化率を得ることができない。
そこで本発明では例えば加速運転時におけるように排気ガス中のNOx 量が増大しかつ触媒22の温度Tcが上昇するときに高いNOx 浄化率が得られるように、触媒22が温度上昇を開始する前に多量の尿素、即ち多量のアンモニア発生化合物を触媒22内に貯蔵させておき、触媒22の温度Tcが急激に上昇したときに触媒22内に貯蔵されているアンモニア発生化合物から多量のアンモニアを放出させ、放出された多量のアンモニアによって排気ガス中のNOx を還元するようにしている。
もう少し詳しく言うと本発明では触媒22の温度領域が、尿素水溶液中の尿素、即ちアンモニア発生化合物を触媒22内に貯蔵しかつ貯蔵したアンモニア発生化合物からアンモニアがほとんど放出しないアンモニア発生化合物貯蔵領域であるか、又は貯蔵したアンモニア発生化合物から少しずつアンモニアを放出させるアンモニア放出領域であるかを判断し、触媒22の温度がアンモニア放出領域となったときに必要量のアンモニアを放出させるのに十分なアンモニア発生化合物を前もって触媒22内に貯蔵させておくために、必要とされる十分な量の尿素水溶液を触媒22の温度がアンモニア発生化合物貯蔵領域であると判断されたとき触媒22に供給するようにしている。
ここでアンモニア発生化合物貯蔵領域は触媒22の温度Tcがほぼ 132℃以下の温度領域を示しており、アンモニア放出領域は触媒22の温度Tcがほぼ 132℃からほぼ 350℃の間の温度領域を示している。触媒22の温度Tcがほぼ 132℃よりも低いときには図4からわかるように供給された尿素水溶液中の尿素、即ちアンモニア発生化合物は触媒22内に貯蔵され、このとき貯蔵されたアンモニア発生化合物からはほとんどアンモニアが発生しない。また、このとき排気ガス中において尿素からアンモニアが発生したとしてもその量は極めて少量である。従って触媒22の温度Tcがアンモニア発生化合物貯蔵領域内にあるときに尿素水溶液が供給されると尿素水溶液中の尿素、即ちアンモニア発生化合物の大部分は触媒22内に貯蔵されることになる。
一方、触媒22の温度Tcがほぼ 132℃からほぼ 350℃の間にあるときには、即ち触媒22の温度Tcがアンモニア放出領域にあるときには触媒22内に貯蔵されているアンモニア発生化合物からアンモニアが放出される。
概略的に云って機関始動時、暖機運転時、低負荷運転時および減速運転時には触媒22の温度Tcはアンモニア発生化合物貯蔵領域となり、従って本発明による実施例では機関始動時、暖機運転時、低負荷運転時および減速運転時には多量の尿素水溶液を供給し、触媒22が貯蔵しうるアンモニア発生化合物の最大貯蔵量を越えない範囲で触媒22内に尿素、即ちアンモニア発生化合物を貯蔵するようにしている。従って加速運転が行われたときには触媒22内に貯蔵されたアンモニア発生化合物から多量のアンモニアが放出せしめられ、斯くして排気ガス中のNOx が良好に浄化せしめられることになる。
図5に尿素水溶液の供給制御の一例を示す。なお、図5には要求負荷L、燃焼室5から排出された排気ガス中のNOx 量、触媒22の温度Tc、尿素水溶液の供給量、および触媒22内に貯蔵されたアンモニア発生化合物の貯蔵量の変化が示されている。なお、図5の尿素水溶液の供給量において破線は排気ガス中のNOx に対して尿素量が当量比=1となるような尿素水溶液の供給量を示しており、実線は実際に供給される尿素水溶液の量を示している。
図5において運転領域Iは機関始動時又は暖機運転時、又はアイドリング運転を含む低負荷運転時を示している。このときには図5に示されるように排気ガス中のNOx 量は少なく、また触媒22の温度Tcがアンモニア発生化合物貯蔵領域内にある。このときには供給される尿素量が当量比=1以上の尿素量となるように、例えば尿素の供給量が当量比=1の尿素量の2倍から4倍となるように尿素水溶液が供給される。従ってこのとき触媒22内に貯蔵されている尿素、即ちアンモニア発生化合物の貯蔵量は次第に増大する。
次いで要求負荷Lが急激に高められ、加速運転が行われたとする。要求負荷Lが急激に高められると排気ガス中のNOx 量は急激に増大する。またこのとき排気ガス温が急激に上昇するために触媒22の温度Tcも急速に上昇し、触媒22の温度Tcがアンモニア放出領域となる。このとき、触媒22内に貯蔵されたアンモニア発生化合物から多量のアンモニアが放出され、放出されたアンモニアによって排気ガス中のNOx が良好に浄化される。このようにこのときアンモニア発生化合物から多量のアンモニアが放出されるので触媒22内に貯蔵されているアンモニア発生化合物の量は急激に低下する。
一方、触媒22内に貯蔵されているアンモニア発生化合物から発生するアンモニアによって排気ガス中の全NOx を還元しえない場合には排気ガス中において尿素水溶液中の尿素から発生するアンモニアによって排気ガス中の残りのNOx を還元するために加速運転中にも尿素水溶液が供給される。図5に示す例では加速運転が開始されると尿素水溶液の供給量は一旦減少せしめられ、次いで増大せしめられる。無論、加速運転時に触媒22内に貯蔵されているアンモニア発生化合物から発生するアンモニアによって排気ガス中のNOx を十分に浄化しうる場合には加速運転時に尿素水溶液の供給を停止してもよい。
次いで運転領域IIにおいて定常運転が行われ、このとき触媒22の温度Tcがアンモニア放出領域に維持されていたとする。このとき図5に示す例では排気ガス中のNOx を良好に浄化するために尿素の供給量が当量比=1以上となるように尿素水溶液が供給される。従ってこのとき触媒22内に貯蔵されているアンモニア発生化合物の量は少しずつ増大する。
次いで運転領域III において要求負荷Lが高められ、次いで高負荷のもとで定常運転が行われ、運転領域III において触媒22の温度Tcがほぼ 350℃を越えると共に高負荷運転状態のもとでは触媒22の温度Tcがほぼ 350℃以上に維持されていたとする。この場合、運転領域III において触媒22の温度Tcが上昇すると触媒22に貯蔵されたアンモニア発生化合物から放出されるアンモニア量が増大し、斯くして触媒22内に貯蔵されているアンモニア発生化合物の量が減少する。また、図5に示す例ではこのときにも尿素水溶液の供給量が減少せしめられる。
一方、触媒22の温度Tcがほぼ 350℃を越えると前述したように供給された尿素水溶液中の全ての尿素はただちにアンモニアに熱分解され、このアンモニアによって排気ガス中のNOx がただちに還元される。従ってこのとき供給される尿素量が排気ガス中のNOx 量に対して当量比=1となるようにすれば排気ガス中のNOx を完全に浄化できることになる。従って図5に示されるように触媒22の温度Tcがほぼ 350℃以上となっているときには供給される尿素量が排気ガス中のNOx 量に対して当量比=1となるように尿素水溶液が供給される。なお、このときには触媒22内にアンモニア発生化合物が全く貯蔵されず、従ってこのときには図5に示されるように触媒22内に貯蔵されているアンモニア化合物の量は零となる。
次いで減速運転が行われ、燃料の供給が停止されたとする。このときには排気ガス中のNOx 量は零となり、また触媒22の温度Tcは急速に低下する。このとき図5に示す例では運転領域Iと同様に供給される尿素量が低負荷運転時における排気ガス中のNOx 量に対し当量比=1以上の尿素量となるように尿素水溶液が供給される。従って減速運転が開始されると触媒22内に貯蔵されているアンモニア発生化合物の量が増大せしめられる。
触媒22の温度Tcがほぼ 350℃以上になったときに当量比=1以上の尿素を供給するとアンモニアが大気中に排出される。従って触媒22の温度Tcがほぼ 350℃以上になったときには尿素水溶液の供給量を尿素量が正確に当量比=1となるように制御する必要がある。
一方、触媒22の温度Tcがほぼ 350℃以下のときにも尿素水溶液の供給量を極度に増大すると大気中にアンモニアが排出され、従ってこのときにも大気中にアンモニアが放出されないように尿素水溶液を供給することが要求される。なお、本発明者の実験によれば機関の運転状態を一定のパターンに沿って変化させ、このとき触媒22の温度Tcがほぼ 190℃からほぼ 350℃の間で変化した場合、触媒22としてバナジウム・チタニア触媒を用いたときには当量比=1の尿素量の3倍近くの尿素を供給しても大気中にアンモニアが放出されることがなく、触媒22として銅ゼオライト触媒を用いたときには当量比=1の尿素量の4倍以上の尿素を供給しても大気中にアンモニアが放出されることがないことが確かめられている。
バナジウム・チタニア触媒を用いた場合に比べて銅ゼオライト触媒を用いた場合の方が大気中へのアンモニアの排出量が少くなるのは次の理由によるものと考えられる。即ち、銅やバナジウムの表面上ではアンモニア発生化合物から発生したアンモニアの一部は排気ガス中のNOx の還元のために使用され、余剰のアンモニアが銅やバナジウムの表面上に保持されていればこのアンモニアはNOとなる(NH3→NO)。次いでこのNOは余剰のアンモニアと反応してN2 となる(NO+NH3 →N2)。このような逐次反応が生じると余剰のアンモニアが大気中に放出されることがなくなる。
バナジウムはアンモニアを保持している能力が低く、従ってこのような逐次反応が生じずらいために大気中にアンモニアが排出されやすくなる。これに対して銅はアンモニアを保持している能力が高く、従ってこのような逐次反応が生じやすくなるために大気中にアンモニアが排出されずらくなる。従って大気中にアンモニアが排出されるのを抑制するためには銅ゼオライト触媒を用いた方が好ましいことになる。
次に本発明による尿素水溶液の供給制御の第1実施例について説明する。
単位時間当りに燃焼室5から排出されるNOx 量は機関負荷が高くなると増大し、従って図6(A)に示されるように単位時間当り燃焼室5から排出されるNOx 量は触媒22への流入排気ガス温Tiが高くなるほど多くなる。また、図6(B)に示されるように単位時間当り燃焼室5から排出されるNOx 量は吸入空気量Gaに比例する。従って排気ガス中のNOx 量に対し当量比=1となる単位時間当りの尿素量QEは排気ガス温Tiおよび吸入空気量Qaの関数となる。本発明による実施例では単位時間当りに供給すべき当量比=1の尿素量QEが排気ガス温Tiおよび吸入空気量Gaの関数として図6(C)に示すようなマップの形で予めROM 42内に記憶されている。
なお、このように排気ガス温Tiおよび吸入空気量Qaに基づいて尿素量QEを算出する代りに排気ガス中の実際のNOx 濃度を検出してこのNOx 濃度から尿素量QEを算出することもできる。この場合には触媒22上流の排気管21内にNOx 濃度センサが取付けられ、NOx 濃度センサにより検出されたNOx 濃度と吸入空気量Gaから単位時間当りに燃焼室5から排出されるNOx 量が求められ、このNOx 量に基づいてNOx 量に対し当量比=1となる単位時間当りの尿素量QEが算出される。
一方、尿素水溶液が供給されると尿素水溶液中に含まれる一部の尿素が排気ガス中で熱分解し、アンモニアを発生する。この場合、熱分解する尿素量は触媒22に流入する排気ガス温Tiが高くなるほど増大し、従って尿素水溶液が供給されたときに触媒22に貯蔵される尿素の貯蔵割合STは図7に示されるように排気ガス温Tiが高くなるほど低下する。
また、触媒22の温度Tcがさほど変化しない定常運転時には前述したように触媒22の温度Tcが高くなるにつれて、触媒22に貯蔵されたアンモニア発生化合物から放出されるアンモニア量が増大する。従って、このとき触媒22に貯蔵されたアンモニア発生化合物から単位時間当りに放出されるアンモニアの割合NH3 は図8(A)に示されるように触媒22に流入する排気ガス温Tiが高くなるほど増大する。一方、排気ガスの空間速度が速くなるほど触媒22に貯蔵されたアンモニア発生化合物から放出されるアンモニア量が増大し、従って図8(B)に示すように触媒22に貯蔵されているアンモニア発生化合物から単位時間当りに放出されるアンモニアの割合NH3 は吸入空気量Gaが増大するほど増大する。本発明による実施例では定常運転時において触媒22に貯蔵されているアンモニア発生化合物から単位時間当りに放出されるアンモニアの割合LE1が排気ガス温Tiおよび吸入空気量Gaの関数として図8(C)に示すようなマップの形で予めROM 42内に記憶されている。
一方、加速運転時のように触媒22の温度が急速に上昇するときには前述したように触媒22の温度上昇前に触媒22に貯蔵されているアンモニア発生化合物から少しずつアンモニアが放出する。このとき触媒22に貯蔵されているアンモニア発生化合物から単位時間当りに放出されるアンモニアの割合NH3 は図9(A)に示されるように触媒22への流入排気ガス温Tiに応じて変化する。またこの場合も図9(B)に示されるように触媒22に貯蔵されているアンモニア発生化合物から単位時間当りに放出されるアンモニアの割合NH3 は吸入空気量Gaが増大するほど増大する。本発明による実施例では触媒22の温度Tcが急速に上昇するときに触媒22に貯蔵されているアンモニア発生化合物から単位時間当りに放出されるアンモニアの割合LE2が、排気ガス温Tiおよび吸入空気量Gaの関数として図9(C)に示すようなマップの形で予めROM 42内に記憶されている。
図10から図12は尿素水溶液の供給制御の第1実施例を実行するためのルーチンを示しており、このルーチンは一定時間毎の割込みによって実行される。
図10を参照するとまず初めにステップ 100において機関始動時であるか否かが判別される。機関始動時であるときにはステップ 102にジャンプし、機関始動時でないときにはステップ 101に進む。ステップ 101では減速運転時であるか否かが判別される。減速運転時であるときにはステップ 102に進む。ステップ 102ではEGR 制御弁25が閉弁せしめられ、EGR ガスの供給が停止される。次いでステップ 103に進んで供給制御Iが実行され、次いでステップ 104に進む。この供給制御Iが図11に示されている。
一方、ステップ 101において減速時でないと判断されたときにはステップ 109に進んで温度センサ35により検出された排気ガス温Tiが予め定められた温度、例えば 350℃よりも高いか否かが判別される。Ti≦350 ℃のときにはステップ 110に進んで加速運転時か否かが判別される。加速運転時でないときにはステップ 103に進む。即ち、ステップ 103に進むのは始動時および減速時、およびTi≦350 ℃であって加速運転時でないときである。
ここで、ステップ 103において行われる供給制御Iについて図11を参照しつつ説明する。
図11を参照するとまず初めにステップ 200において尿素水溶液の供給を停止すべきことを示す供給停止フラグがセットされているか否かが判別される。供給停止フラグがセットされていないときにはステップ 201に進み、エアフローメータ14および温度センサ35の出力信号に基づき図6(C)に示されるマップから単位時間当りに供給すべき当量比=1の尿素量QEが算出される。
次いでステップ 202では当量比=1に対する実際の供給尿素量の比、即ち尿素増量比Kが算出される。この尿素増量比Kは図13に示されるように 1.0よりも大きく、この尿素増量比Kは触媒22への流入排気ガス温Tiが高くなるにつれて小さくなる。図13に示す例では排気ガス温Tiが低いときには尿素増量比Kがほぼ 4.0とされている。次いでステップ 203では単位時間当りに供給すべき当量比=1の尿素量QEに尿素増量比Kを乗算することによって単位時間当りに実際に供給すべき尿素量QE(=K・QE)が算出される。
次いでステップ 204ではこの尿素量QEに補正係数Cを乗算することによって単位時間当りに供給すべき尿素水溶液の量Qが算出される。尿素水溶液として30重量パーセントの尿素水溶液を用いた場合にはこの補正係数Cの値は(100+30)/30=4.3 となる。単位時間当りの尿素水溶液の供給量Qが算出されると尿素水溶液の供給量がQとなるように流量制御弁33が制御される。
次いでステップ 205では図7から尿素の貯蔵割合STが算出される。次いでステップ 206では尿素の貯蔵割合STに尿素供給量QEを乗算することによって単位時間当りに触媒22内に貯蔵される尿素量QST(=QE・ST)が算出される。次いでステップ 207では図8(C)に示すマップからアンモニアの放出割合LE1が算出される。次いでステップ 208では触媒22内に貯蔵されている全アンモニア発生化合物の量ΣQSに放出割合LE1を乗算することによって単位時間当りに放出されるアンモニア量QLE(=ΣQS・LE1)が算出される。次いで図10のステップ 104に進む。
一方、ステップ 200において供給停止フラグがセットされていると判断されたときにはステップ 209に進んで単位時間に吸蔵される尿素量QST が零とされ、次いでステップ 207に進む。このときには尿素水溶液の供給が停止される。従って始動時、又は減速時、又はTi≦350 ℃であってかつ加速運転時でないときには供給停止フラグがセットされていない限り尿素の供給量が当量比=1以上となるように尿素水溶液が供給される。
図10のステップ 104では、次式に基づいて触媒22内に貯蔵されている全アンモニア発生化合物量ΣQSが算出される。
ΣQS=ΣQS+QST −QLE
次いでステップ 105では貯蔵されているアンモニア発生化合物量ΣQSが最大貯蔵量MAX(図5)を越えたか否かが判別され、ΣQS>MAX となったときにはステップ 108に進んで供給停止フラグがセットされる。供給停止フラグがセットされると尿素水溶液の供給が停止される。一方、ステップ 105においてΣQS≦MAX であると判断されたときにはステップ 106に進んでΣQSが一定値MIN(<MAX)よりも小さくなったか否かが判別され、ΣQS<MIN になったときにはステップ 107に進んで供給停止フラグがリセットされる。
一方、ステップ 110において加速運転時であると判別されたときにはステップ 111に進んで供給制御IIが実行される。この供給制御IIが図12に示されている。
図12を参照するとまず初めにステップ 250において加速運転開始時に触媒22内に貯蔵されている全アンモニア発生化合物量が初期値ΣQS0 とされる。次いでステップ 251では図9(C)に示すマップからアンモニアの放出割合LE2が算出される。次いでステップ 252では触媒22内に貯蔵されている全アンモニア発生化合物の初期値ΣQS0 に放出割合LE2を乗算することによって単位時間当りに放出されるアンモニア量QLE(=ΣQS0 ・LE2)が算出される。
次いでステップ 253では触媒22内のアンモニア発生化合物から放出されたアンモニアにより還元することのできない排気ガス中のNOx を還元させるのに必要な尿素量QEが算出される。次いでステップ 254ではこの尿素量QEに前述した補正係数Cを乗算することによって単位時間当りに供給すべき尿素水溶液の量Qが算出される。単位時間当りの尿素水溶液の供給量Qが算出されると尿素水溶液の供給量がQとなるように流量制御弁33が制御される。
次いでステップ 255では図7から尿素の貯蔵割合STが算出される。次いでステップ 256では尿素の貯蔵割合STに尿素供給量QEを乗算することによって単位時間当りに触媒22内に貯蔵される尿素量QST(=QE・ST)が算出される。次いで図10のステップ 105に進む。
一方、図10のステップ 109においてTi>350 ℃であると判断されたときにはステップ 112に進み、エアフローメータ14および温度センサ35の出力信号に基づき図6(C)に示されるマップから単位時間当りに供給すべき当量比=1の尿素量QEが算出される。次いでステップ 113ではこの尿素量QEに前述した補正係数Cを乗算することによって単位時間当りに供給すべき尿素水溶液の量Qが算出される。単位時間当りの尿素水溶液の供給量Qが算出されると尿素水溶液の供給量がQとなるように流量制御弁33が制御される。次いでステップ 114では触媒22内におけるアンモニア発生化合物貯蔵量ΣQSが零とされる。このようにTi>350 ℃のときには尿素の供給量が当量比=1となるように尿素水溶液が供給される。
次に図14および図15を参照しつつ第2実施例について説明する。
尿素水溶液の供給量が少ないときには尿素水溶液が排気ガス中に分散する。尿素水溶液が排気ガス中に分散すると尿素水溶液中の尿素が熱分解しやすくなり、その結果供給した尿素を触媒22内に貯蔵させるのが困難となる。これに対し尿素水溶液の供給量を増大すると排気ガス中における尿素の密度が高くなり、その結果尿素が熱分解しずらくなるために供給した尿素を触媒22内に貯蔵させることができるようになる。
そこで第2実施例では図14に示されるように運転領域I、運転領域II、および減速時には供給すべき尿素量が当量比=1となるように尿素水溶液を供給してこの尿素により排気ガス中のNOx を還元させ、時間間隔を隔てて多量の尿素水溶液をパルス的に供給してこの尿素水溶液中の尿素を触媒22内に貯蔵させるようにしている。
なお、この第2実施例においても図10に示すルーチンが用いられているが図10のステップ 103についてだけは図15に示されるルーチンが用いられる。
図15を参照するとまず初めにステップ 300において尿素水溶液の供給を停止すべきことを示す供給停止フラグがセットされているか否かが判別される。供給停止フラグがセットされていないときにはステップ 301に進み、エアフローメータ14および温度センサ35の出力信号に基づき図6(C)に示されるマップから単位時間当りに供給すべき当量比の尿素量QEが算出される。次いでステップ 302では多量の尿素水溶液をパルス的に短時間で供給する供給タイミングであるか否かが判別される。供給タイミングであるときにはステップ 303に進んで尿素水溶液の供給時間が経過したか否かが判別される。尿素水溶液の供給時間が経過していないときにはステップ 304に進む。
ステップ 304ではパルス的に供給すべき単位時間当りの尿素水溶液量ΔQEが算出される。この尿素水溶液量ΔQEは供給される尿素量が低負荷運転時における当量比=1の数倍以上の予め定められた尿素量となるように定められている。次いでステップ 306ではステップ 301において算出された尿素量QEに追加すべき尿素量ΔQEを加算することによって最終的な尿素量QE(=QE+ΔQE)が算出される。次いでステップ 307ではこの尿素量QEに前述した補正係数Cを乗算することによって単位時間当りに供給すべき尿素水溶液の量Qが算出される。単位時間当りの尿素水溶液の供給量Qが算出されると尿素水溶液の供給量がQとなるように流量制御弁33が制御される。
次いでステップ 308では追加の尿素量ΔQEが単位時間当りに触媒22内に貯蔵される尿素量QST とされる。次いでステップ 310では図8(C)に示すマップからアンモニアの放出割合LE1が算出される。次いでステップ 311では触媒22内に貯蔵されている全アンモニア発生化合物の量ΣQSに放出割合LE1を乗算することによって単位時間当りに放出されるアンモニア量QLE(=ΣQS・LE1)が算出される。次いで図10のステップ 104に進む。
一方、ステップ 302において供給タイミングでないと判断されたとき、又はステップ 303において供給時間が経過したと判断されたときにはステップ 305に進んで追加の尿素量ΔQEが零とされ、次いでステップ 306に進む。このときには供給される尿素量は当量比=1とされる。
一方、ステップ 300において供給停止フラグがセットされていると判断されたときにはステップ 309に進んで単位時間に吸蔵される尿素量QST が零とされ、次いでステップ 310に進む。このときには尿素水溶液の供給が停止される。
次に図16および図17を参照しつつ第3実施例について説明する。
排気ガス温が低いときには排気ガス中のNOx 量は極めて少量となる。従ってこの第3実施例では触媒22への流入排気ガス温Tiが一定値To、例えば 132℃よりも低いときには尿素水溶液の連続的な供給を停止し、図16に示されるように運転領域Iおよび減速時に時間間隔を隔てて多量の尿素水溶液をパルス的に供給してこの尿素水溶液中の尿素を触媒22内に貯蔵させるようにしている。
なお、この第3実施例においても図10に示すルーチンが用いられるが図10のステップ 103についてだけは図17に示されるルーチンが用いられる。
図17を参照するとまず初めにステップ 400において尿素水溶液の供給を停止すべきことを示す供給停止フラグがセットされているか否かが判別される。供給停止フラグがセットされていないときにはステップ 401に進んで温度センサ35の出力信号から触媒22への流入排気ガス温Tiが一定値To、例えば 132℃よりも高いか否かが判別される。Ti>Toのときにはステップ 402に進み、エアフローメータ14および温度センサ35の出力信号に基づき図6(C)に示されるマップから単位時間当りに供給すべき当量比=1の尿素量QEが算出される。
次いでステップ 403では図13から尿素増量比Kが算出される。次いでステップ 404では単位時間当りに供給すべき当量比=1の尿素量QEに尿素増量比Kを乗算することによって単位時間当りに実際に供給すべき尿素量QE(=K・QE)が算出される。次いでステップ 405ではこの尿素量QEに前述した補正係数Cを乗算することによって単位時間当りに供給すべき尿素水溶液の量Qが算出される。単位時間当りの尿素水溶液の供給量Qが算出されると尿素水溶液の供給量がQとなるように流量制御弁33が制御される。
次いでステップ 406では図7から尿素の貯蔵割合STが算出される。次いでステップ 407では尿素の貯蔵割合STに尿素供給量QEを乗算することによって単位時間当りに触媒22内に貯蔵される尿素量QST(=QE・ST)が算出される。次いでステップ 408では図8(C)に示すマップからアンモニアの放出割合LE1が算出される。次いでステップ 409では触媒22内に貯蔵されている全アンモニア発生化合物の量ΣQSに放出割合LE1を乗算することによって単位時間当りに放出されるアンモニア量QLE(=ΣQS・LE1)が算出される。次いで図10のステップ 104に進む。
一方、ステップ 401においてTi≦Toであると判別されたときにステップ 410に進んで多量の尿素水溶液をパルス的に短時間で供給する供給タイミングであるか否かが判別される。供給タイミングであるときにはステップ 411に進んで尿素水溶液の供給時間が経過したか否かが判別される。尿素水溶液の供給時間が経過していないときにはステップ 412に進む。
ステップ 412ではパルス的に供給すべき単位時間当りの尿素量QEE が算出される。この尿素量QEE は当量比=1の数倍以上の予め定められた尿素量となるように定められている。次いでステップ 413ではこの尿素量QEE に前述した補正係数Cを乗算することによって単位時間当りに供給すべき尿素水溶液の量Qが算出される。単位時間当りの尿素水溶液の供給量Qが算出されると尿素水溶液の供給量がQとなるように流量制御弁33が制御される。次いでステップ 414ではQEE が単位時間当りに触媒22内に貯蔵される尿素量QST とされる。次いでステップ 408に進む。
一方、ステップ 400において供給停止フラグがセットされていると判断されたときにはステップ 415に進んで単位時間に貯蔵される尿素量QST が零とされ、次いでステップ 408に進む。このときには尿素水溶液の供給が停止される。
なお、第2実施例および第3実施例においてパルス的に供給される尿素水溶液の供給量および供給タイミングを変化させることができる。例えば減速時における尿素水溶液の供給量をパルス的に供給する毎に少しずつ少なくすることもできる。また、触媒22の温度Tcが十分に低下するまで待つために減速開始時における触媒22の温度Tcが高いほど減速開始後、尿素水溶液の供給が行われるまでの間隔を長くすることができる。
次に図18および図19を参照しつつ触媒コンバータ23内に収容されている触媒22の種々の例について説明する。
図18(A)に示されるように触媒22はハニカム構造を有し、ハニカム構造の基材60により包囲された多数の排気ガス流通孔61を具備する。排気ガス流通孔61を形成している基材60の表面上には触媒層が形成されており、図18(B)に示す例では触媒層62がチタニア63からなる。このチタニア63上にはバナジウム64が担持されている。尿素水溶液を供給すると尿素水溶液中に含まれる尿素、即ちアンモニア発生化合物は担体であるチタニア63内に貯蔵される。アンモニア発生化合物がどのようにしてチタニア63内に貯蔵されるかは必ずしも明らかではないがおそらく吸着によって触媒22内に保持されているものと考えられる。
ところで本発明では触媒22内に貯蔵された尿素、即ちアンモニア発生化合物から少しずつ放出されるアンモニアを利用して排気ガス中のNOx を還元するようにしているので尿素水溶液が供給されたときにできるだけ多量の尿素、即ちアンモニア発生化合物を触媒22内に保持し、これらアンモニア発生化合物から少しずつアンモニアを放出させることが好ましいと言える。図18(C),18(D),18(E)および図19(A),19(B)はできるだけ多量のアンモニア発生化合物を触媒22内に保持するようにした例を示している。
即ち、図18(C)に示す例ではチタニア63からなる担体上にゼオライト層65が形成されている。このようにすると尿素、即ちアンモニア発生化合物はゼオライト層65内においても保持されるのでアンモニア発生化合物の保持量が増大し、ゼオライト層65内において保持されているアンモニア発生化合物はチタニア63からなる担体内に拡散した後に熱分解されるのでアンモニアはゆっくりと放出されることになる。
図18(D)に示す例では基材60とチタニア63からなる担体との間にゼオライト層65が形成されている。この場合も図18(C)に示される例と同様に、尿素、即ちアンモニア発生化合物はゼオライト層65内においても保持されるのでアンモニア発生化合物の保持量が増大し、ゼオライト層65内において保持されているアンモニア発生化合物はチタニア64からなる担体内に拡散した後に熱分解されるのでアンモニアはゆっくりと放出されることになる。
図18(E)に示す例では触媒層62がチタニアとゼオライトからなり、これらチタニアとゼオライトからなる担体上においてバナジウム64が担持されている。
図19(A),19(B)に示す例では触媒22の上流側の領域Xでは触媒層62がゼオライトからなり、触媒22の下流側の領域Yでは触媒層62がバナジウム64を担持したチタニア63からなる。この例でも、尿素、即ちアンモニア発生化合物はゼオライト層65内においても保持されるのでアンモニア発生化合物の保持量が増大し、ゼオライト層65内において保持されているアンモニア発生化合物はチタニア63からなる担体内に拡散した後に熱分解されるのでアンモニアはゆっくりと放出されることになる。
図20から図23は内燃機関の夫々別の実施例を示している。図20に示す例では触媒コンバータ23の下流に更に別の触媒コンバータ70が配置されている。触媒コンバータ70内に収容された触媒22として、触媒コンバータ23内に収容された触媒22と同様に銅ゼオライト触媒およびバナジウム・チタニア触媒のいずれの触媒を用いることもできる。ただし、これらのいずれの触媒22も用いる場合には触媒コンバータ23内の上流側の触媒22をバナジウム・チタニア触媒とし、触媒コンバータ70内の下流側の触媒22を銅ゼオライト触媒とすることが好ましい。というのは、バナジウム・チタニア触媒から流出したアンモニアを銅ゼオライト触媒上において除去しうるからである。
図21に示す実施例では触媒コンバータ23内に間隔を隔てて一対の触媒22a,22bが配置されている。更にこの実施例では排気管21が触媒コンバータ23の入口部である第1の排気通路71aと、一対の触媒22a,22b間に連通する第2の排気通路71bとに分岐され、各排気通路71a,71b内に夫々第1排気制御弁72aおよび第2排気制御弁72bが配置されている。また、この実施例では両排気制御弁72a,72b上流の排気管21内に尿素水溶液が供給される。
この実施例では温度センサ35により検出された排気ガス温がほぼ 150℃よりも低いときには図21に示されるように第1排気制御弁72aが全開せしめられ、第2排気制御弁72bが全閉せしめられる。このときには排気ガスはまず初めに上流側触媒22aを通過し、次いで下流側触媒22bを通過する。このとき触媒22a,22bの温度はアンモニア発生化合物貯蔵領域にあり、従ってこのとき供給された尿素水溶液中の尿素の大部分は上流側触媒22a内に貯蔵される。
一方、温度センサ35により検出された排気ガス温がほぼ 150℃から 250℃の間では第1排気制御弁72aが全閉せしめられると共に第2排気制御弁72bが全開せしめられ、従ってこのときには排気ガスは第2の排気通路71bを通り、次いで下流側触媒22bを通過する。このとき上流側触媒22a内に貯蔵されている尿素はそのまま保持され、供給された尿素水溶液により下流側触媒22bにおいて排気ガスのNOx が浄化される。
一方、温度センサ35に検出された排気ガス温がほぼ 250℃以上になると図21に示されるように第1排気制御弁72aが再び全開せしめられ、第2排気制御弁72bが再び全閉せしめられる。加速運転が行われると温度センサ35により検出される排気ガスは 250℃以上となり、従って加速運転が行われると排気ガスは上流側触媒22aに流入する。このとき上流側触媒22aに貯蔵されている多量のアンモニア発生化合物から少しずつアンモニアが放出され、このアンモニアにより上流側触媒22aおよび下流側触媒22bにおいて排気ガス中のNOx が還元される。
図22に示す実施例では図21に示す実施例とは異なり、第1排気制御弁72a下流の第1排気通路71a内に尿素水溶液を供給するようにしている。
この実施例では機関の要求負荷が予め定められた設定負荷よりも低いときには第1排気制御弁72aが全閉せしめられると共に第2排気制御弁72bが全開せしめられ、従ってこのときには排気ガスは第2の排気通路71bを通り、次いで下流側触媒22bを通過する。また、このときには第1排気通路71a内を排気ガスが流通しておらず、上流側触媒22aの温度はアンモニア発生化合物貯蔵領域にある。従ってこのとき供給された尿素水溶液中の尿素の大部分は上流側触媒22a内に貯蔵される。
一方、機関の要求負荷が設定負荷よりも高くなると図22に示されるように第1排気制御弁72aが全開せしめられ、第2排気制御弁72bが全閉せしめられる。このときには排気ガスはまず初めに上流側触媒22aを通過し、次いで下流側触媒22bを通過する。従ってこのとき上流側触媒22aに貯蔵されている多量のアンモニア発生化合物から少しずつアンモニアが放出され、このアンモニアにより上流側触媒22aおよび下流側触媒22bにおいて排気ガス中のNOx が還元される。
図23に示す実施例では排気管21内に設けられた流路切換弁73において排気管21と交差する環状の排気通路74が設けられ、環状の排気通路74内に第1の触媒コンバータ23および第2の触媒コンバータ70が直列に配置される。
この実施例では機関の要求負荷が予め定められた設定負荷よりも低いときには排気管21を介して送られてきた排気ガスが矢印A方向に、即ち最初に第1触媒コンバータ23内の触媒22を通過し、次いで第2触媒コンバータ70内の触媒22を通過するように流路制御弁73が図23の実線で示される位置に切換えられる。このとき尿素水溶液が第2触媒コンバータ70の上流側に供給される。このときには第2触媒コンバータ70内の触媒22の温度は第1触媒コンバータ23内の触媒22の温度よりも低く、従って供給された尿素水溶液中の尿素、即ちアンモニア発生化合物が良好に第1触媒コンバータ70内の触媒22内に貯蔵される。
一方、機関の要求負荷が設定負荷よりも高くなると排気管21を介して送られてきた排気ガスが矢印B方向に、即ち最初に第2触媒コンバータ70内の触媒22を通過し、次いで第1触媒コンバータ23内の触媒22を通過するように流路制御弁73が図23の破線で示される位置に切換えられる。このときには第2触媒コンバータ70内の触媒22の温度は第1触媒コンバータ23内の触媒22の温度よりも高くなり、斯くして第2の触媒コンバータ70内の触媒22内に貯蔵されているアンモニア発生化合物からアンモニアが良好に放出される。
これまで本発明についてアンモニア発生化合物を含む液体として尿素水溶液を用いた場合を例にとって説明してきた。この場合、前述したようにアンモニア発生化合物として尿素以外のものを用いることもできるし、溶剤として水以外のものを用いることができる。更に、アンモニア発生化合物を含む液体と共にアンモニア水或いはアンモニアを含むガスを排気通路内に供給することもできる、この場合、アンモニアを含むガスは固体尿素を用いて生成することができる。