JP4203690B2 - ポリカーボネート樹脂 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明性、耐熱性、低い光弾性係数、屈折率とアッベ数の良好なバランスを有するポリカーボネート樹脂ならびにその製造方法に属する。このポリカーボネート樹脂は、光ディスク基板、各種レンズ、プリズム、光ファイバーなどのプラスチック光学製品の材料に好適に利用できるものである。
【0002】
【従来の技術】
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(通称:ビスフェノールA)をホスゲンあるいは炭酸ジエステルと反応させて得られるポリカーボネート樹脂は、耐熱性、透明性に優れ、しかも耐衝撃性等の機械的特性に優れていることから、構造材料はもとより、光学材料として光ディスク基板、各種レンズ、プリズム、光ファイバー等に幅広く利用されている。
【0003】
しかし、ビスフェノールAからなるポリカーボネート樹脂は、低流動性材料であり、また高い光弾性係数を有するため、成形時の分子配向や残留応力に伴う複屈折が大きいという問題点を有している。そのため、ビスフェノールAからなるポリカーボネート樹脂を原材料とする光学材料を成形する場合には、流動性を向上させるために分子量の比較的低い樹脂を用い、かつ高温で成形することにより製品の複屈折を低減する方法が実施されている。しかし、ビスフェノールAからなるポリカーボネート樹脂では、上記のような手段を用いても複屈折の低減には限界があるため、近年の光学材料用途の広がりに伴い、一部光学材料分野、特に光ディスクの分野では、さらなる低光弾性係数、高流動性材料の開発が強く求められている。
【0004】
ポリカーボネート樹脂の光弾性係数を低下させる方法としては、例えば、特開昭64−66234号公報に示されるように、ビスフェノールAをトリシクロ(5.2.1.02,6)デカンジメタノールと共重合させる方法が公知であるが、耐熱性の低下をもたらし、また光弾性係数を低減する上で十分な効果は得られていない。
【0005】
また、レンズ材料、とりわけプラスチックメガネレンズ材料としてはCR−39(ジエチレングリコールビスアリルカーボネート)が広く用いられているが、屈折率が1.50と低く、また、熱硬化性樹脂であるため生産性が悪い等の問題点を有しており、これらの解決が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであり、ビスフェノールAからなるポリカーボネート樹脂と比較して低い光弾性係数を有し、かつ、屈折率とアッベ数と耐熱性のバランスに優れたポリカーボネート樹脂およびその製造方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を克服する方法について鋭意研究を重ねた結果、構造式(1)、構造式(2)及び構造式(3)で示される構成単位よりなるポリカーボネート樹脂が、上記の課題を解決できることを見出し本発明に到達した。
【化4】
【化5】
【化6】
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明にかかわるポリカーボネート樹脂は、ペンタシクロペンタデカンジメタノール及びデカリン−2,6-ジメタノールと、炭酸ジエステルから誘導されるものである。
【0009】
本発明において、ペンタシクロペンタデカンジメタノールは、下記の一般式(4)及び(5)で表されるものであり、種々の異性体を包含する。
【化7】
【化8】
【0010】
また、デカリン−2,6-ジメタノールは、下記の化学式(6)で表されるものであり、異性体を包含する。
【化9】
【0011】
本発明にかかわるポリカーボネート樹脂は、ペンタシクロペンタデカンジメタノール及びデカリン−2,6-ジメタノールから誘導された構成単位を含有するものであり、デカリン−2,6-ジメタノールの含有率は、デカリン−2,6-ジメタノール及びペンタシクロペンタデカンジメタノールの合計量に対して、5〜70モル%である。デカリン−2,6-ジメタノールの含有率が5モル%未満であると成形時の流動性の点から好ましくなく、70モル%を超えると耐熱性の点から好ましくない。
【0012】
本発明に用いられる炭酸ジエステルとしては、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、ジ−m-クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート等が挙げらる。これらの中でも特にジフェニルカーボネートが好ましい。使用する炭酸ジエステルは、デカリン−2,6-ジメタノール及びペンタシクロペンタデカンジメタノールの合計1モルに対して0.97〜1.10モルの比率で用いられることが好ましく、更に好ましくは0.99〜1.04モルの比率である。
【0013】
本発明にかかわるポリカーボネート樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量は20,000〜200,000であることが好ましく、更に好ましくは30,000〜130,000である。ポリスチレン換算重量平均分子量が20,000未満では成形体の強度が不十分となり、200,000を超えると成形時の流動性が悪くなるため好ましくない。
【0014】
本発明にかかわるポリカーボネ−トの製造方法では、触媒として、塩基性化合物が用いられる。このような塩基性化合物としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、含窒素化合物及び含リン化合物等があげられる。
【0015】
アルカリ金属化合物としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、フェニルリン酸2ナトリウム、テトラフェニルホウ酸ナトリウム、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、リチウム塩等が用いられる。
【0016】
また、アルカリ土類金属化合物としては、具体的には、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸バリウム、安息香酸カルシウム、フェニルリン酸マグネシウム、フェノールのマグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩等が用いられる。
【0017】
また、含窒素化合物及び含リン化合物としては、具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル、アリール、アルキルアリール基等を有する4級アンモニウムヒドロキシド類、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン等の3級アミン類、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジフェニルアミン等の2級アミン類、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、デシルアミン、アニリン等の1級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、ベンゾイミダゾール等のイミダゾール類、あるいは、アンモニア、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルアンモニウムテトラフェニルボレートおよびテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等の塩基性塩等が用いられる。
【0018】
これらの触媒は、デカリン−2,6-ジメタノール及びペンタシクロペンタデカンジメタノールの合計1モルに対して、10-9〜10-3モルの比率で、好ましくは10-7〜10-4モルの比率で用いられる。10-9モル未満の場合には充分な重合活性が得られないため好ましくない。また、10-3モルを超えると樹脂の着色が著しくなるため好ましくない。
【0019】
本発明にかかわるエステル交換反応は、公知の溶融重縮合法により行うことができる。すなわち、前記の原料、および触媒を用いて、加熱下に常圧または減圧下にエステル交換反応により副生成物を除去しながら溶融重縮合を行うものである。反応は、一般には二段以上の多段工程で実施される。
【0020】
具体的には、第一段目の反応時間は、通常120〜260℃、好ましくは180〜240℃であり、反応時間は、通常0.1〜5時間、好ましくは0.5〜3時間である。次いで、反応系の減圧度を上げながら反応温度を高めて反応を行い、最終的には1mmHg以下の減圧下、200〜300℃の温度で重縮合反応を行う。このような反応は、連続式で行ってもよく、またバッチ式で行ってもよい。上記の反応を行うに際して用いられる反応装置は、錨型攪拌翼、マックスブレンド攪拌翼、ヘリカルリボン型攪拌翼等を装備した縦型であっても、パドル翼、格子翼、メガネ翼等を装備した横型であってもスクリューを装備した押出機型であってもよいが、連続式の場合は、これらを適宜組み合わせた反応装置を使用することが好ましい。
【0021】
本発明にかかわるポリカーボネート樹脂は、重合反応終了後、熱安定性および加水分解安定性を保持するために、触媒を除去もしくは失活させる。一般的には、公知の酸性物質またはその誘導体の添加により、触媒を失活させる方法が実施される。これらの酸性物質またはその誘導体としては、具体的には、p−トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸類、p−トルエンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸ヘキシル等の芳香族スルホン酸エステル類、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等の芳香族スルホン酸ホスホニウム塩類、ステアリン酸クロライド、塩化ベンゾイル、p−トルエンスルホン酸クロライド等の有機ハロゲン化物、ジメチル硫酸等のアルキル硫酸、塩化ベンジル等の有機ハロゲン化物等が好適に用いられる。
【0022】
触媒失活後、ポリマー中の低沸点化合物を0.1〜1mmHgの圧力、200〜300℃の温度で脱揮除去する工程を設けても良く、このためには、パドル翼、格子翼、メガネ翼等、表面更新能の優れた攪拌翼を備えた横型装置、あるいは薄膜蒸発器が好適に用いられる。
【0023】
さらに本発明において、上記熱安定化剤、加水分解安定剤の他に、酸化防止剤、顔料、染料、強化剤や充填剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、結晶核剤、可塑剤、流動性改良剤、帯電防止剤、抗菌剤等を添加することができる。
【0024】
上記添加剤の添加時期は、溶融重縮合で得られるポリカーボネート樹脂が反応直後の溶融状態にあるうちに添加しても良く、ポリカーボネート樹脂をペレット化した後にあらためて添加しても良い。また、複数の添加剤を添加時期を変えて添加しても良い。
【0025】
反応直後の溶融状態の樹脂に添加剤を添加する場合には、反応終了後反応釜に直接添加し攪拌混合する方法、あるいは、反応釜から抜き出した樹脂に添加して横型の混練機に送り込み、均一に混練した後そのままペレット化する方法が用いられる。あるいは、反応釜から抜き出した樹脂を横型の混練機に送り込み、混練機途中から、添加剤をサイドフィードにより添加し均一に混練した後そのままペレット化する方法が用いられる。
【0026】
ペレット化した樹脂に添加剤を添加する場合には、ペレットと上記添加剤とをターンブルミキサーやヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、スーパーミキサーで代表される高速ミキサーで分散混合した後、押出機、バンバリーミキサー、ロール等の混練機で溶融混練する方法が適宜選択される。
【0027】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0028】
実施例1
ペンタシクロペンタデカンジメタノール49.9g(0.19モル)、デカリン−2,6−ジメタノール2.0g(0.01モル)、ジフェニルカーボネート43.3g(0.202モル)及び炭酸水素ナトリウム5×10-4g(6×10-6モル)を攪拌機および留出装置付きの300ml四ッ口フラスコに入れ、窒素雰囲気760mmHgの下180℃に加熱し30分間攪拌した。
その後、減圧度を150mmHgに調整すると同時に、60℃/hrの速度で200℃まで昇温を行い、40分間その温度に保持しエステル交換反応を行った。さらに、75℃/hrの速度で225℃まで昇温し、昇温終了の40分後、その温度で保持しながら、1時間かけて減圧度を1mmHg以下とした。その後、105℃/hrの速度で235℃まで昇温し合計6時間攪拌下で反応を行い、反応終了後、反応器内に窒素を吹き込み常圧に戻し、生成したポリカーボネート樹脂を取り出した。このポリカーボネート樹脂の物性測定結果を表1に示す。
【0029】
実施例2
実施例1において、ペンタシクロペンタデカンジメタノール36.7g(0.14モル)、デカリン−2,6−ジメタノール11.9g(0.06モル)、ジフェニルカーボネート43.3g(0.202モル)及び炭酸水素ナトリウム5×10-4g(6×10-6モル)を使用する以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られたポリカーボネート樹脂の物性測定結果を表1に示す。
【0030】
実施例3
実施例1において、ペンタシクロペンタデカンジメタノール15.7g(0.06モル)、デカリン−2,6−ジメタノール27.8g(0.14モル)ジフェニルカーボネート43.3g(0.202モル)及び炭酸水素ナトリウム5×10-4g(6×10-6モル)を使用する以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られたポリカーボネート樹脂の物性測定結果を表1に示す。
【0031】
比較例1
実施例1において、デカリン−2,6−ジメタノール39.7g(0.2モル)、ジフェニルカーボネート43.3g(0.202モル)及び炭酸水素ナトリウム5×10-4g(6×10-6モル)を使用し、ペンタシクロペンタデカンジメタノールを使用しない以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られたポリカーボネート樹脂の物性測定結果を表1に示す。
【0032】
比較例2
ビスフェノールAからなるポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、ユーピロンH−4000)の物性測定した。その結果を表1に示す。
【0033】
なお、表1中の物性は、下記の方法により測定したものである。
1)屈折率(nD )、アッベ数(νD ):ATAGOの屈折率計により測定した。
2)ポリスチレン換算重量平均分子量(MW ):クロロホルムを展開溶媒としてGPCにより測定した。
3)ガラス転移温度(Tg ):示差走査熱量分析計により測定した。
4)熱分解開始温度(Td ):熱天秤にて窒素気流中1%重量減少した温度を測定した。昇温速度は10℃/minである。
5)光弾性係数:エリプソメーターにより、厚さ100μmのキャストフィルムを用い、レーザー波長633nmの光をあて、荷重変化に対する複屈折測定から算出した。
6)Q値:高さ10mm×孔径1mmのダイを用い、樹脂温度=240℃、滞留時間=6min、シリンダ圧力=160kgf/cm2 にて、フローテスターにより測定した。
【0034】
また、表1中、化合物名として以下の略号を用いた。
PCPDM :ペンタシクロペンタデカンジメタノール
DDM :デカリン−2,6−ジメタノール
H-4000:ビスフェノールAからなるポリカーボネート樹脂
【0035】
【0036】
【発明の効果】
本発明によるポリカーボネート樹脂は、優れた透明性、耐熱性、耐衝撃性、良好な屈折率−アッベ数バランス、低い光弾性係数等の特性を有する新規な脂肪族ポリカーボネート樹脂であり、光ディスク基板を始め各種レンズ、プリズム、光ファイバー等のプラスチック光学製品の材料として極めて有用に利用できる。
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