JP4200082B2 - 成形加工用アルミニウム合金板およびその製造方法 - Google Patents
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C0<C1/10 ・・・(1)
C3/10>C1/2 ・・・(2)
20<{(C0+C1/10+C3/10+C1/2)/4}<200 ・・・(3)
を満たし、かつ板表面から板厚の1/10の位置において圧延方向軸RDを基準としてキューブ理想方位を5°回転させた結晶方位密度が、同じ位置において板面法線軸NDを基準としてキューブ理想方位を5°回転させた結晶方位の方位密度よりも高く、さらに0°、90°耳率が5%以上で、しかも圧延方向と平行な方向のランクフォード値をr0、板面内において圧延方向に対し45°をなす方向のランクフォード値をr45、板面内において圧延方向に対し直交する方向のランクフォード値をr90として、次の(4)式により規定されるΔr値
Δr=(r0+r90)/2−r45 ・・・(4)
が1.2未満であり、さらに導電率が54%IACS以下であることを特徴とするものである。
(1)熱間圧延温度を300〜450℃の範囲内、
(2)1パス当りの最大圧下量を80mm以下、
(3)各パスの歪み速度を350/秒以下、
(4)熱間圧延中途の板厚が50mmの段階から熱間圧延終了直前までの段階の熱間圧延板の温度を200〜400℃の範囲内、
(5)熱間圧延終了温度を180〜330℃の範囲内、
(6)熱間圧延終了温度から100℃までの平均冷却速度を5℃/min以下、
にそれぞれ制御し、熱間圧延終了後、熱間圧延板に対し圧延率30%以上の冷間圧延を施して製品板厚とし、さらに480℃以上の温度で溶体化処理を行ない、直ちに100℃/min以上の平均冷却速度で50℃以上150℃未満の温度域まで冷却し、続いてその温度域内で1時間以上の安定化処理を行なうことを特徴とするものである。
Mgはこの発明で対象としている系の合金で基本となる合金元素であって、Siと共同して強度向上に寄与する。Mg量が0.3%未満では塗装焼付時に析出硬化によって強度向上に寄与するG.P.ゾーンの生成量が少なくなるため、充分な強度向上が得られず、一方1.5%を越えれば、粗大なMg−Si系の金属間化合物が生成され、キューブ方位密度を高めるために不利となり、成形性、特に曲げ加工性が低下するから、Mg量は0.3〜1.5%の範囲内とした。なお成形性、特に曲げ加工性をより重視する場合は、Mg量は0.3〜0.9%の範囲内が好ましい。
Siもこの発明の系の合金で基本となる合金元素であって、Mgと共同して強度向上に寄与する。またSiは、鋳造時に金属Siの晶出物として生成され、その金属Si粒子の周囲が加工によって変形されて、溶体化処理の際に再結晶核の生成サイトとなるため、再結晶組織の微細化にも寄与する。Si量が0.3%未満では上記の効果が充分に得られず、一方2.0%を越えれば粗大なSi粒子や粗大なMg−Si系の金属間化合物が生じてキューブ方位密度を高めるために不利となり、成形性、特に曲げ加工性の低下を招く。したがってSi量は0.3〜2.0%の範囲内とした。なお特に強度と曲げ加工性とのバランスを重視する場合は、Si量は0.5〜1.3%の範囲内が好ましい。
これらの元素は、強度向上や結晶粒微細化、あるいは時効性の向上や表面処理性の向上に有効であり、いずれか1種または2種以上を添加する。これらのうちMn、Crは強度向上と結晶粒の微細化および組織の安定化に効果がある元素であるが、Mnの含有量が0.03%未満、もしくはCrの含有量が0.01%未満では、上記の効果が充分に得られず、一方Mn、Crの含有量がそれぞれ0.4%を越えれば、上記の効果が飽和するばかりでなく、多数の金属間化合物が生成されて成形性、特にヘム曲げ性に悪影響を及ぼすおそれがあり、したがってMnは0.03〜0.4%の範囲内、Crは0.01〜0.4%の範囲内とした。またFeも強度向上と結晶粒微細化に有効な元素であるが、その含有量が0.03%未満では充分な効果が得られず、一方0.5%を越えれば、キューブ方位密度を高める上において不利となって、成形性、特に曲げ加工性が低下するおそれがあり、したがってFe量は0.03〜0.5%の範囲内とした。さらにTiも強度向上と鋳塊組織の微細化に有効な元素であるが、その含有量が0.005%未満では充分な効果が得られず、一方0.2%を越えればTi添加の効果が飽和するばかりでなく、粗大な晶出物が生じるおそれがあるから、Ti量は0.005〜0.2%の範囲内とした。またZnは時効性向上を通じて強度向上に寄与するとともに表面処理性の向上に有効な元素であるが、Znの添加量が0.03%未満では上記の効果が充分に得られず、一方2.5%を越えれば成形性が低下するから、Zn量は0.03〜2.5%の範囲内とした。
Cuは強度向上および成形性向上のために添加されることがある元素であるが、その量が2.0%を越えれば耐食性(耐粒界腐食性、耐糸錆性)が劣化するから、Cuの含有量は2.0%以下に規制することとした。なお、より耐食性の改善を図りたい場合はCu量は1.0%以下が好ましく、さらに特に耐食性を重視する場合は、Cu量は0.05%以下に規制することが望ましい。
C0<C1/10 ・・・(1)
C3/10>C1/2 ・・・(2)
20<{(C0+C1/10+C3/10+C1/2)/4}<200 ・・・(3)
を満たすことによって、曲げ加工性を向上させると同時に曲げ異方性、面内異方性の両者を確実に小さくし得るのであり、そこでこれらの(1)〜(3)式を規定した。
RD5方位密度>ND5方位密度
となることが必要である。
Δr=(r0+r90)/2−r45 ・・・(4)
であることを規定している。すなわちΔr<1.2であることが必要である。このようにΔr値<1.2を規定した理由は次の通りである。
(1)熱間圧延温度を300〜450℃の範囲内の温度
(2)1パス当りの最大圧下量を80mm以下
(3)各パスの歪み速度を350/秒以下
(4)熱間圧延中途の板厚が50mmの段階から熱間圧延終了直前(具体的には熱間圧延最終パスの入口)までの段階の熱間圧延板の温度を200〜400℃の範囲内
(5)熱間圧延終了温度を180〜330℃の範囲内
(6)熱間圧延終了温度から100℃までの平均冷却速度を5℃/min以下
板の圧延方向に対し板面内0°、45°、90°の3方向にJIS5号引張試験片を採取し、それぞれについて引張試験に供した。そして0°方向の0.2%耐力値を調べるとともに、ランクフォード値(r値)として、各方向とも伸びが7.5%となるときのr値を求め、各方向のr値(r0、r45、r90)から前記(4)式に従ってΔr値を求めた。
厚さ1mmの板について、10%NaOH水溶液で表面から板厚中央に向けて種々の深さまでエッチングしたもの、およびエッチングしないものをそれぞれ測定サンプルとした。そして板表面のキューブ方位密度(C0)、板表面から100μmの位置のキューブ方位密度(C1/10)、300μmの位置のキューブ方位密度(C3/10)、500μmの位置のキューブ方位密度(C1/2)を求めた。測定装置としては、リガク(株)のX線回折装置を用い、X線回折のシェルツ反射法により、{200}、{220}、{111}の不完全極点図を測定し、これらを元に三次元結晶方位解析(ODF)を行なって調べた。またこれらの解析においては、アルミニウム粉末から作られたランダム結晶方位を有する試料を測定して得たデータを{200}、{220}、{111}極点図の解析の際に使う規格化ファイルとし、これによりランダム方位を有する試料に対する倍数としてキューブ方位密度を求めた。なおこの発明において、結晶方位密度は全て三次元結晶方位解析(ODF)に基づくものである。なおまた、キューブ方位密度は、理想方位である{100}<001>方位の方位密度を求めた。また板表面から板厚方向に100μmの位置(板厚の1/10の位置)におけるキューブ理想方位の周辺方位密度として、その位置におけるRD5方位密度およびND5方位密度を測定した。ここでRD5方位密度、ND5方位密度は、それぞれキューブ理想方位からRD軸で5°、ND軸で5°回転した方位を示す。
板に潤滑油を塗布した後、ポンチ径φ32mm、ブランク径φ62mm、しわ押さえ100kgの条件でカップに絞り、そのカップの耳率を調べた。なおここで耳率の方向は、圧延方向を基準にした0°方向、90°方向で示す
導電率(%IACS):
渦電流式導電率測定装置を用いて銅、黄銅を基準試料として測定を行なった。
材料の圧延方向に対して板面内0°、45°、90°三方向に曲げ試験片を採取し、10%ストレッチしてから、180°に密着曲げを行ない、目視により割れの発生の有無を観察した。ここで○印は割れ無しを、また×印は割れ有りを示す。
直径100mmの球頭ポンチで高さ30mmまで張出成形を行ない、表面に形成される圧延方向に沿う筋(凹凸)を目視で判定した。○印は筋なしあるいは筋が弱い状態を示し、×印は筋が強い状態を示す。ここで筋が強ければ、自動車用外板の外観として不適当となる。
板に防錆油を塗布した後、寸法200mm×300mm・コーナーR10mmの角頭ポンチを用いて、しわ押さえ5tonにより角頭絞り試験を行ない、成形高さ(成形性)を評価した。
板の圧延方向と平行な断面において表面から板厚中心までの領域をEBSP(Electron Backscatter Diffraction Pattern)法で500μm×500μmの大きさの視野で合計10視野の結晶粒のマッピング画像を取り、これらの画像から隣接粒界5°以上の平均結晶粒度(ASTMナンバー)を求めた。
鋳塊のボトムから300mm離れた位置で鋳塊全幅のスライス採取し、さらにそのスライスの真中部分から測定用サンプルを切出し、EBSP法で500μm×500μmの大きさの視野で合計50視野の結晶粒のマッピング画像を取り、これらの画像から隣接粒界15°以上の平均結晶粒度(ASTMナンバー)を求めた。
Claims (4)
- Mg0.3〜1.5%(mass%、以下同じ)、Si0.3〜2.0%を含有し、かつMn0.03〜0.4%、Cr0.01〜0.4%、Fe0.03〜0.5%、Ti0.005〜0.2%、Zn0.03〜2.5%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、さらにCuが2.0%以下に規制され、残部がAlおよび不可避的不純物よりなる合金が素材とされ、板表面のキューブ方位密度をC0、板表面から板厚方向に板厚の1/10の位置におけるキューブ方位密度をC1/10、板表面から板厚方向に板厚の3/10の位置におけるキューブ方位密度をC3/10、板表面から板厚方向に板厚の1/2の位置におけるキューブ方位密度をC1/2として、次の(1)〜(3)式
C0<C1/10 ・・・(1)
C3/10>C1/2 ・・・(2)
20<{(C0+C1/10+C3/10+C1/2)/4}<200 ・・・(3)
を満たし、かつ板表面から板厚の1/10の位置において圧延方向軸RDを基準としてキューブ理想方位を5°回転させた結晶方位密度が、同じ位置において板面法線軸NDを基準としてキューブ理想方位を5°回転させた結晶方位の方位密度よりも高く、さらに0°、90°耳率が5%以上で、しかも圧延方向と平行な方向のランクフォード値をr0、板面内において圧延方向に対し45°をなす方向のランクフォード値をr45、板面内において圧延方向に対し直交する方向のランクフォード値をr90として、次の(4)式により規定されるΔr値
Δr=(r0+r90)/2−r45 ・・・(4)
が1.2未満であり、さらに導電率が54%IACS以下であることを特徴とする、成形加工用アルミニウム合金板。 - 請求項1に記載の成形加工用アルミニウム合金板において、
隣接粒界の角度が5°以上の結晶粒の粒度がASTMナンバーで3.5以上であることを特徴とする、成形加工用アルミニウム合金板。 - 請求項1もしくは請求項2に記載の成形加工用アルミニウム合金板を製造する方法において、
Mg0.3〜1.5%(mass%、以下同じ)、Si0.3〜2.0%を含有し、かつMn0.03〜0.4%、Cr0.01〜0.4%、Fe0.03〜0.5%、Ti0.005〜0.2%、Zn0.03〜2.5%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、さらにCuが2.0%以下に規制され、残部がAlおよび不可避的不純物よりなる合金の鋳塊に対して、490〜590℃の範囲内の温度で均質化処理を行なって、450℃以下の温度に平均冷却速度3℃/min以上で冷却し、その後熱間圧延を行なうにあたり、
(1)熱間圧延温度を300〜450℃の範囲内、
(2)1パス当りの最大圧下量を80mm以下、
(3)各パスの歪み速度を350/秒以下、
(4)熱間圧延中途の板厚が50mmの段階から熱間圧延終了直前までの段階の熱間圧延板の温度を200〜400℃の範囲内、
(5)熱間圧延終了温度を180〜330℃の範囲内、
(6)熱間圧延終了温度から100℃までの平均冷却速度を5℃/min以下、
にそれぞれ制御し、熱間圧延終了後、熱間圧延板に対し圧延率30%以上の冷間圧延を施して製品板厚とし、さらに480℃以上の温度で溶体化処理を行ない、直ちに100℃/min以上の平均冷却速度で50℃以上150℃未満の温度域まで冷却し、続いてその温度域内で1時間以上の安定化処理を行なうことを特徴とする、成形加工用アルミニウム合金板の製造方法。 - 請求項3に記載の成形加工用アルミニウム合金板の製造方法において、
前記安定化処理の後、さらに最終熱処理として、100℃/min以上の加熱速度で170〜280℃の範囲内の温度に加熱して、5分以内の保持を行なった後、100℃/min以上の冷却速度で100℃以下に冷却する熱処理を行なうことを特徴とする、成形加工用アルミニウム合金板の製造方法。
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