JP4285866B2 - 油圧駆動冷却ファン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブルドーザ、油圧ショベル、ホイールローダ等の建設機械の油圧駆動冷却ファンに係り、特に、可変容量型油圧ポンプにより冷却ファンの回転数を連続的に制御して冷却効率の向上を図った油圧駆動冷却ファンに関する。
【0002】
【従来の技術】
建設機械のエンジン及び油圧機器系統の冷却には、一般にエンジンによりベルト駆動される冷却ファンによって冷却風を得ているタイプのものが多い。しかし、このタイプの場合は、冷却ファンの回転数はエンジンの回転数に比例するので、エンジン始動直後などの、エンジン冷却水及び作動油等の温度が機械稼働に適した暖気温度に達していない時にも冷却風をラジエータ及びオイルクーラに送ることになり、よって冷却水、作動油が過冷却になったり、また暖気運転に余計な時間がかかったりしている。
【0003】
この問題を解決する先行技術として、エンジン回転から独立して回転数制御される電動モータ又は油圧モータによって冷却ファンを駆動するタイプのものが考案されている。このタイプの冷却ファン駆動を適用した建設機械の冷却装置の先行技術としては、例えば特開平10−68142号公報に開示されたものがあり、図13は同公報に記載された冷却装置の回路図を示している。
【0004】
同図において、エンジン41に対してラジエータ42a及びオイルクーラ42bを別置きで配置し、これらを冷却ファン45によって冷却する。オイルクーラ42bは、冷却ファン45の逆転時に生ずる空気流にとってラジエータ42aよりも下流に設置されている。冷却ファン45は、ファン駆動回路46の電磁切換弁47により制御された油圧モータ48によって停止、正転又は逆転に駆動される。電磁切換弁47は、外気温度センサ51,冷却水温度センサ52及び作動油温度センサ53を有する制御装置50により自動的に切り換えられる。制御装置50は、エンジン始動時に、外気温度、冷却水温度及び作動油温度がともに設定温度よりも低い場合は、エンジンが始動しても冷却ファンの回転を停止したままの状態とし、冷却水温度が設定温度以上に上昇し、かつ作動油温度が設定温度より低い場合は、冷却ファン45を逆転させることにより、ラジエータ42aを通過した温風でオイルクーラ42b内の作動油を暖めるとともに、ラジエータ42aなどに詰まったゴミを逆風により除去する。さらに、冷却水温度及び作動油温度がともに設定温度以上になった場合は、冷却ファンを正転させて、冷却水及び作動油をともに冷却するようにしている。
【0005】
これにより、油圧機器の暖機運転時間の短縮化と、ラジエータ42a及びオイルクーラ42bに詰まったゴミの除去による冷却効率の向上とを図ることができると記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特開平10−68142号公報に開示された技術では、以下のような問題が生じている。
【0007】
冷却水温度、作動油温度及び外気温度に応じて、冷却ファン45の正転、停止及び逆転を制御しているが、これらがON−OFF制御であるため、きめ細かな制御ができず、最適な冷却効率が得られていない。また、冷却ファン45はエンジン41の負荷に応じた制御が行われていないため、エンジン41の負荷が変動すると冷却ファン45の回転数も変動し、よって冷却水温度、作動油温度及び外気温度に応じた最適な効率での冷却ができないという問題がある。
【0008】
本発明は上記従来の問題点に着目し、冷却水温度、作動油温度及びエンジン回転数に応じて冷却ファンの回転数を連続的に制御することにより最適な冷却効率が得られる油圧駆動冷却ファンの制御装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段及び作用効果】
上記目的を達成するために、本発明に係る油圧駆動冷却ファンの制御装置の第1発明は、エンジンの冷却水を冷却するラジエータ、及び油圧装置の作動油を冷却するオイルクーラを冷却ファンにより強制冷却する冷却装置をエンジンから独立して設けた油圧駆動冷却ファンの制御装置において、冷却ファンと、冷却ファンを駆動する油圧モータと、油圧モータの回転数を制御可能な可変容量型油圧ポンプと、冷却水温度を検出する冷却水温度センサと、作動油温度を検出する作動油温度センサと、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサと、これらのセンサの検出信号を入力し、冷却水温度、作動油温度及びエンジン回転数に応じて可変容量型油圧ポンプの吐出容量指令値を演算して出力し、可変容量型油圧ポンプにより冷却ファンの回転数を連続的に制御するコントローラとを備えた構成としている。そして、コントローラは、冷却水温度、作動油温度、エンジン回転数それぞれに対応する目標ファン回転数のデータを記憶し、検出された冷却水温度に対応する目標ファン回転数と検出された作動油温度に対応する目標ファン回転数とを比較して大きい方の回転数を選択し、該選択した回転数と検出されたエンジン回転数に対応する目標ファン回転数とを比較して小さい方の回転数に応じて冷却ファンの回転数を制御する。
【0010】
第1発明によれば、冷却水温度、作動油温度及びエンジン回転数に応じて、可変容量型油圧ポンプにより冷却ファン回転数は連続的に制御されるので、エンジンの回転変動に影響されることなく、冷却ファン回転数は急激な変化を伴わないでスムーズに制御される。したがって、冷却水温度及び作動油温度をきめ細かく制御できるので、最適な冷却効率を得ることができる。
【0011】
特に、冷却水温度又は作動油温度のいずれか大きい方に対応する目標ファン回転数と、エンジン回転数に対応する目標ファン回転数とを比較して、小さい方の回転数に応じて冷却ファンの回転数を制御するので、冷却水温度及び作動油温度を同時に所定値以下に制御することができると共に、エンジン回転数が所定回転数以上のときに過冷却にならないような必要充分な回転数に、エンジン回転数の変動に対しても急激な回転数変化を伴わないで連続的にスムーズに制御できる。
【0012】
第2発明は、第1発明の構成において、コントローラは、所定のエンジン回転数以上のときに、エンジン回転数の変化にかかわらず冷却ファン回転数の上限を所定回転数に制御する構成としている。
【0013】
第2発明によれば、冷却ファン回転数の上限は、所定のエンジン回転数以上のときに、エンジン回転数の変化にかかわらず所定回転数に制御される。したがって、エンジン負荷が大きくなりエンジン回転数が低下しても、冷却ファンの回転数は略一定であるので冷却能力は低下せず、またエンジン負荷が小さくなりエンジン回転数が上昇しても、冷却ファンの回転数は略一定なので、過冷却もなく不必要なエネルギの消費がなく、この結果効率的な冷却が可能となる。
【0014】
さらにまた、一般的に冷却ファンはある回転数域より回転数が大きくなると、急激に発生音が大きくなる一方で、ファン駆動エネルギの増大に見合う冷却能力の増加が見られなくなる。第2発明の構成によると、そのような過剰な高速でのファン回転を避けることができるので、冷却ファンの騒音低減及びファン駆動エネルギの観点からの効率的な冷却が可能である。また、冷却ファンの破損防止にも役立つ。
【0015】
第3発明は、第2発明の構成において、前記冷却ファン回転数の上限は、冷却水温度及び作動油温度に応じて設定されるものである。
【0016】
第3発明によれば、冷却ファン回転数の上限は、冷却水温度及び作動油温度に応じて設定されるので、冷却ファンはエンジン回転数の変化にかかわらず、冷却水温度及び作動油温度に基づいて略一定の回転数で駆動される。したがって、冷却不足になったり、過冷却になったりせず、効率的な冷却が可能となる。
【0017】
第4発明は、第1発明の構成において、コントローラは、冷却水温度及び作動油温度が所定低温度以下の時に、冷却ファン回転数を所定低速回転数に制御する構成としている。
【0018】
第4発明によれば、冷却ファン回転数は、冷却水温度及び作動油温度が所定低温度以下の時、冷却能力の無い程度の所定低速回転数に制御されるので、低温度時においては作動油が常にごく少量オイルクーラに循環されるため、作動油の温度の過冷却を防止できる。また、冷却ファン用ポンプが少量の作動油を吐出し循環させるため、このポンプのオーバヒートや焼付きを防止することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に、実施形態について図面を参照して詳細に説明する。先ず、本発明が適用される建設機械例としてブルドーザ1の概略を図11により説明する。図1はブルドーザ1の側面図であり、図2は同ブルドーザ1の冷却ファン近傍の上面図である。
【0020】
図1に示すように、ブルドーザ1は下部に走行自在な下部走行体2を備え、下部走行体2の上部には車体3を備えている。車体3の前部に設けられたエンジンルームにはエンジン4及び後述するようにラジエータ12及び冷却ファン13等を含む冷却装置10が搭載されており、車体3の中央後部寄りには運転室6が配設されている。また、車体3の前方及び後方には作業機として、ブレード7及びリッパー8がそれぞれ装着され、それぞれ油圧シリンダ7a,8a等により上下動自在となっている。また、これらの油圧シリンダ7a,8a等は図示しない油圧装置からの圧油によって駆動されている。
【0021】
図2に詳細に示すように、冷却装置10は、エンジン4の前方に配置され、エンジン4の冷却水を冷却するラジエータ11と、前記図示しない油圧装置の作動油を冷却するオイルクーラ12と、エンジン4の回転から独立して駆動され、これらのラジエータ11及びオイルクーラ12に冷却風を送る冷却ファン13とを有している。
【0022】
次に、冷却ファン13の駆動システムについて、図3により説明する。図3は冷却ファン制御装置の回路図である。
【0023】
図3に示すように、エンジン4は可変容量型の油圧ポンプ14,31を駆動している。油圧ポンプ14から吐出された圧油は管路14aを経由して電磁切換弁15の入力ポートに流入し、電磁切換弁15により固定容量型の油圧モータ16に供給される。油圧モータ16の出力回転軸には、冷却ファン13が回転自在に取着されている。油圧モータ16からの戻り油は、電磁切換弁15、管路15a及び管路32aを経由してオイルクーラ12に入り、オイルクーラ12で冷却されて管路12aを通って作動油タンク17へ戻る循環回路を形成している。また、管路14aと管路15aの間には、油圧ポンプ14及び油圧モータ16の停止時に慣性で回転する油圧モータ16の油を循環させるチェック弁18が接続されている。
【0024】
作動油タンク17には作動油の温度を検出する作動油温度センサ22が設けられており、その検出温度信号はコントローラ20に入力されている。油圧ポンプ14は、サーボ弁14bの作動により出力容量が制御されて吐出量を変化させる。この可変吐出量により、冷却ファン13の回転数が制御されている。電磁比例弁14cは、後述する作業機回路の減圧弁35からのコントロール圧p1を受け、コントローラ20からの指令電流値I1に応じたパイロット圧をサーボ弁14bに出力し、サーボ弁14bはこのパイロット圧に基づいて油圧ポンプ14の傾転角を制御するようになっている。
【0025】
電磁切換弁15は2位置弁で、コントローラ20からの電流指令信号I2によりA位置、B位置に切り換わって出力流量及びその方向を制御し、油圧モータ16即ち冷却ファン13を正転及び逆転に制御している。
【0026】
図1に示した作業機(ここでは代表としてブレード7とする)用として、エンジン4により可変容量型の油圧ポンプ31が駆動されている。油圧ポンプ31から吐出された圧油は管路31aを経由してコントロールバルブ32に流入し、コントロールバルブ32の作動により油圧シリンダ7aに供給されている。油圧シリンダ7aの伸縮により、ブレード7の上下動が駆動されている。油圧シリンダ7aからの戻り油は、コントロールバルブ32及び管路32aを経由してオイルクーラ12に入り、オイルクーラ12で冷却されて、管路12aを通って作動油タンク17へ戻る循環回路を形成している。
【0027】
パイロット圧操作弁33は、管路31aから分岐して設けられた減圧弁35からのコントロール圧p1を受け、操作レバー34の操作量に応じたパイロット圧p2を出力する。コントロールバルブ32は、このパイロット圧操作弁33からのパイロット圧p2に応じた量の吐出油を油圧シリンダ7aに供給するようになっている。
【0028】
油圧ポンプ31は、サーボ弁31bの作動により吐出量が制御され、この可変吐出量により油圧シリンダ7aの速度を制御している。
【0029】
ロードセンシング弁(LS弁)31cは、コントロールバルブ32からの負荷圧p3と減圧弁35からのコントロール圧p1とを受けてサーボ弁31bにパイロット圧を出力し、サーボ弁31bはこのパイロット圧に基づいて油圧ポンプ31の傾転角を制御するようになっている。
【0030】
エンジン4の水ポンプ4aから出た冷却水は、管路4bを通ってラジエータ11に入り、ラジエータ11で冷却され、管路11aを通ってエンジン4のウォータジャケット4cへ戻る循環回路を形成している。
【0031】
エンジン4には回転数を検出するエンジン回転数センサ23が、またラジエータ11の入口管路4bにはエンジン冷却水の温度を検出する冷却水温度センサ21が設けられており、それぞれのセンサの検出信号はコントローラ20に入力されている。
【0032】
操作パネル24には、冷却ファン13の上限回転数の設定値を切換える制限スイッチ25、及び電磁切換弁15を切り換える切換スイッチ26が設けられており、それぞれのスイッチ信号はコントローラ20に入力されている。
【0033】
コントローラ20はマイクロコンピュータや数値演算プロセッサ等の演算処理装置を主体にして構成されており、制御データ等を記憶する記憶部20aを有している。コントローラ20は、上記の冷却水温度センサ21、作動油温度センサ22及びエンジン回転数センサ23で検出されたそれぞれの信号、及び制限スイッチ25のON−OFF信号に基づいて後述するような所定の演算処理を行って、冷却ファン13の回転数を指令する指令電流値Iを求め、この指令電流値Iを電磁比例弁14cに出力するようになっている。また、コントローラ20は、切換スイッチ26の正転、逆転の切換信号に基づいて電磁切換弁15にそれぞれの切換信号I2を出力している。
【0034】
次に、コントローラ20について図4〜9に基づいて説明する。
【0035】
記憶部20aには、例えば図4乃至図8に示すような、各種の検出値や設定値に対する目標ファン回転数がデータ(グラフ)で記憶されている。なお、これらのデータ(グラフ)は予め、実験等に基づき作成され、入力されている。
【0036】
図4は冷却水温度Twと目標ファン回転数Nw、図5は作動油温度Toと目標ファン回転数No、図6はエンジン回転数Eと上限目標ファン回転数Ne、のそれぞれの関係図の一例を示している。図7は制限スイッチがオン又はオフ時の目標ファン回転数Np の一例を、図8は冷却水温度Tw 及び作動油温度Toが所定低温度Tc 以下の時の目標ファン回転数Nc の一例をそれぞれ示している。また、図9は目標ポンプ容量Dpと電磁比例弁14cへの指令電流値Iとの関係図の一例である。これらの各データは、テーブルデータ又は所定の関係式として記憶されている。
【0037】
次に、図10に示すコントローラ20の制御フローチャート例に基づいて、制御手順を説明する。
(1)S1で、冷却水温度センサ21から入力された冷却水温度Tw に応じた目標ファン回転数Nw が、例えば図4に示すようなテーブル等に基づいて求められる。
(2)またS2で、作動油温度センサ22から入力された作動油温度To に応じた目標ファン回転数No が、例えば図5に示すようなテーブル等に基づいて求められる。
(3)次にS3で、前記求めた目標ファン回転数Nw と目標ファン回転数No が比較され、大きい方の回転数が選択される。
(4)この後S4において、エンジン回転センサ23から入力されたエンジン回転数Eに応じた目標ファン回転数Neが、例えば図6に示すようなテーブル等に基づいて求められる。
(5)次にS5において、S3で求めた目標ファン回転数Nw と目標ファン回転数No との大きい方とS4で求めた目標ファン回転数Neとが比較され、小さい方の回転数が選択される。
(6)この後S6で、制限スイッチ25のオン信号又はオフ信号に応じた目標ファン回転数Np が、例えば図7に示すようなテーブル等に基づいて求められる。
(7)次にS7において、S5で選択された回転数とS6で求めた目標ファン回転数Np とが比較され、小さい方の回転数が選択される。
(8)さらに、この後S8で、例えば図8に示すようなテーブルに基づいて制御対象温度(冷却水温度Tw 又は作動油温度Toのいずれか大きい方)が所定低温度Tc 以下の場合に対する目標ファン回転数Nc が求められる。
(9)次にS9において、S7で求めた小さい方の回転数とS8で求めた目標ファン回転数Nc とが比較され、大きい方が最終の目標ファン回転数Nとして選択される。
(10)次にS10において、S9で選択した目標ファン回転数Nに対する目標ポンプ容量Dp(cc/rev)が目標ファン回転数N(rpm)とその時のエンジン回転数E(rpm)とに基づいて次式1により算出される。
Dp=N×Dm/(E×ρ) ・・・・(式1)
但し、Dm(cc/rev)は油圧モータ16の固定容量、またρはエンジン4と油圧ポンプ14の間の減速比である。
(11)この後S11において、S10で求めた目標ポンプ容量Dpに対応した電磁比例弁14cへの指令電流値I1が例えば図9に示すようなテーブルに基づいて求められる。
(12)そしてS12において、S11で求めた指令電流値I1をコントローラ20から電磁比例弁14cに出力する。
【0038】
これにより、冷却ファン回転数Nは冷却水温度Tw、作動油温度To 、エンジン回転数E及び制限スイッチ25の状態に応じて各目標ファン回転数Nw ,No,Ne ,Np ,Nc のいずれかの回転数に制御される。
【0039】
また、コントローラ20は、切換スイッチ26の正転及び逆転の切換信号に基づいて電流指令I2を電磁切換弁15に出力し、冷却ファン13をそれぞれ正転及び逆転に制御している。
【0040】
次に、作用及び効果について、図4乃至図8を参照して、図10乃至図12により説明する。図11は冷却水温度Twに対するエンジン回転数Eとファン回転数Nとの関係図である。図12は作業機の負荷状態に対応する冷却ファン回転数を示す図であり、同図ではブレード7による土工作業(いわゆるドージング作業)時を例にとってファン回転数Nを示している。
(1)図10において、S3では冷却水温度Tw 又は作動油温度To のいずれか大きい方を制御対象温度として選択しているので、冷却水温度Tw 及び作動油温度To が共に所定値以下の温度になるような冷却ファン13の目標回転数が設定される。これにより、冷却ファン13の回転数制御によって冷却水温度Tw 及び作動油温度To を同時に所定値以下に制御することができる。
(2)図4に示すように、冷却水温度Tw に対する目標ファン回転数Nw は所定の水温制御範囲(本例では、最低温度80度〜最高温度100度まで)において、0〜最大回転数Nmaxまで略線形に増加して設定されており、また図5に示すように、作動油温度To に対する目標ファン回転数No は所定の油温制御範囲(本例では、最低温度80度〜最高温度110度まで)において、0〜最大回転数Nmax まで略線形に増加して設定されている。一方、図6に示すように、エンジン回転数Eに対する目標ファン回転数Ne は、所定回転数(本例では、1500rpm )までは最大回転数Nmax に向けて略線形に増加し、所定回転数以上では最大回転数Nmax に制限されている。
【0041】
このとき、制限スイッチ25がオフで、かつ冷却水温度Tw 及び作動油温度To がそれぞれ所定の水温制御範囲及び油温制御範囲内の値のとき(通常稼働状態)に、S3にて選択された目標ファン回転数Nw 又は目標ファン回転数No の大きい方は、所定エンジン回転数以上になると、エンジン回転数Eから求まる目標ファン回転数Ne よりも小さい値となるので、S5において選択され、また制限スイッチ25がオフ時に対応する目標ファン回転数Np (本例では、図7に示すように988rpm )よりも小さい値に設定されているので、S7で選択される。さらに、制御対象温度(冷却水温度Tw 又は作動油温度To のいずれか大きい方)が所定低温度Tc (本例では、80度)以下である場合に対する目標ファン回転数Nc (本例では、図8に示すように10rpm )よりも大きいので、S9では最終の目標ファン回転数Nとして選択される。したがって、所定エンジン回転数以上のときの目標ファン回転数Nの上限値は、図11に示すような冷却水温度Tw に応じた目標ファン回転数Nw 、あるいは図11と同様に作動油温度To に応じた目標ファン回転数No にそれぞれ設定され、制御される。なお、所定エンジン回転数以下のときは、エンジン回転数Eから求まる目標ファン回転数Ne
の方がS3にて選択された目標ファン回転数Nw 又は目標ファン回転数No の大きい方よりも小さいので、目標ファン回転数Ne (エンジン回転数Eに略比例する)が設定される。
【0042】
また、図6に示すように、冷却ファン13にはエンジン回転数Eに対して上限目標ファン回転数Ne が予め設定されている。そして、冷却水温度Tw 及び作動油温度To が徐々に上昇して、S3にて選択された目標ファン回転数Nw 又は目標ファン回転数No が最大目標回転数(本例では、988rpm )になっても、所定のエンジン回転数Es以上ではこの最大目標回転数よりも前記上限目標ファン回転数Ne が小さくなるように設定されている。したがって、冷却水温度Tw 又は作動油温度To が所定の最高温度に達し、かつエンジンが所定の回転数Es(本例では、Es=1500rpm )以上になったときには、S5では上限目標ファン回転数Ne が選択される。また、この上限目標ファン回転数Ne は、制限スイッチ25がオフ時に対応する前記目標ファン回転数Np よりも小さい値に設定されているので、S7で選択され、さらに所定低温度Tc 以下である場合に対する目標ファン回転数Nc よりも大きいので、S9では最終の目標ファン回転数Nとして選択される。
【0043】
これにより、冷却水温度Tw 又は作動油温度To が所定の最高温度に達し、かつエンジンが所定のエンジン回転数Es以上のときには、目標ファン回転数Nは上限目標ファン回転数Ne に設定され、制御される。
【0044】
即ち、冷却水温度Tw をパラメータにすると、冷却水温度Tw 又は作動油温度To が所定の最高温度に達するまでは、目標ファン回転数Nは図11に示すように、冷却水温度Tw 又は作動油温度To に応じた目標ファン回転数に制限され、冷却水温度Tw 又は作動油温度To が所定の最高温度に達したら、所定のエンジン回転数Es以上では上限目標ファン回転数Ne に制限される。作動油温度Toをパラメータにしても、ファン回転数Nは同様に制限される。
【0045】
したがって、ファン回転数Nは、過冷却にならないような必要充分な回転数に、エンジン回転数Eの変動に対しても急激な回転数変化を伴わないで連続的にスムーズに制御される。したがって、冷却水温度及び作動油温度をきめ細かく制御できるので、最適な冷却効率を得ることができる。
(3)またファン回転数Nは、エンジン回転数Eの変化にかかわらず、冷却水温度Tw 及び作動油温度To に応じて所定の目標回転数以下に制御されるので、エンジン負荷が大きくなりエンジン回転数Eが低下しても、またエンジン負荷が小さくなりエンジン回転数Eが上昇しても、ファン回転数Nはほぼ一定に制御される。これにより、図12に示すように、例えばブレード7による土木作業(いわゆるドージング作業)と車両後進とを組み合わせた作業時でも、ファン回転数Nは略一定に制御される。したがって、冷却能力の低下や、過冷却による不必要なエネルギの消費がなく、効率的な冷却が可能となる。また、過剰な高速でのファン回転が無いように抑制されるので、冷却ファン13の騒音低減ができると共に、ファン駆動エネルギの増大に見合う冷却能力の増加が得られるような効率的な冷却が可能である。さらに、冷却ファン16の破損防止を図ることができる。
【0046】
さらにまた、冷却ファン13を必要充分な回転数以上に回さないので、エンジン負荷を軽減して、作業機による作業に必要なエンジン出力に余裕を持たせることができる。この結果、従来に比して、高負荷での作業時に作業性を向上できる。
(4)図4,5に示すように、冷却水温度Tw 及び作動油温度To が所定低温度Tc (本例では80度)以下の時は、目標ファン回転数Nw 及び目標ファン回転数No が0rpm に設定されているので、図10のS5,7においては目標ファン回転数Nw 及び目標ファン回転数No が選択され、よってS9においては目標ファン回転数Nc が選択され、ファン回転数Nはこの冷却能力の無い程度の低回転の目標ファン回転数Nc に制御される。従って、所定温度Tc 以下の時においては、作動油が停止されることなく常にごく少量オイルクーラ12に循環されるため、作動油の温度の過冷却を防止できる。また、このとき冷却ファン13用の油圧ポンプ14は少量の油を吐出して循環させるため、油圧ポンプ14のオーバヒート及び焼付きを防止することができる。
(5)また制限スイッチ25がオンの場合は、図7に示すようにオンに対応した目標ファン回転数Np (同図では、692rpm )が設定される。これにより、エンジン回転数Eが上昇し、この回転数Eに対する上限目標ファン回転数Ne 、目標ファン回転数Nw 及び目標ファン回転数No が目標ファン回転数Np を超えたら、図10のS7,9において目標ファン回転数Np が選択されるので、ファン回転数Nの上限が目標ファン回転数Np に制限され制御される。従って、市街地などで稼働する場合には、制限スイッチ25を操作して冷却ファン13の上限回転数を臨機応変に下げることにより騒音を低減し、騒音規制に容易に対応することができる。例えば、目標ファン回転数Np を最大回転数Nmax の70%に設定し、このときの騒音が規制値をクリアするように設定することができる。また、制限スイッチ25により冷却ファン13の駆動出力を制限できるので、エンジンの必要負荷に応じてエンジン出力を車体及び作業機に有効に活用することもできる。
(6)また切換スイッチ26を逆転位置に操作することにより、冷却ファン13を逆転できるので、ラジエータ11及びオイルクーラ12に詰まったゴミ等を排出することができ、よって清掃が容易となり、また冷却能力を一定に保つことができる。
【0047】
なお、上記実施形態では、冷却ファン16の回転数制御は、油圧モータ16を駆動する可変容量型油圧ポンプ14の吐出量を制御することにより行われているが、本発明はこれに限定されず、例えば定容量型油圧ポンプと可変容量型油圧モータとを用いて可変容量型油圧モータの容量を制御するようにしてよい。
【0048】
以上説明したように、本発明による油圧駆動冷却ファンによれば、エンジンに負荷変動があって回転数が変動しても、冷却ファンは冷却水温度及び作動油温度に応じて一定の回転数に制御されるので、冷却能力の低下や、不必要なエネルギの消費がなく、効率的な冷却が可能である。また、冷却水温度、作動油温度に応じて冷却ファン回転数が連続的にスムーズに所定値以下に制御されるので、従来に比して回転数の変動が小さくきめ細かに制御されて最適な冷却効率が得られ、さらにエンジン出力に余裕を持たせることが可能となり、エンジン出力を車体及び作業機に有効に活用することができる。さらに、低温度時には、冷却ファンは冷却能力の小さい低速回転数に制御されるので、ラジエータシャッター等の高価な機器を使用することなく、冷却水及び作動油の過冷却を防止できる。
【0049】
また、冷却ファンの上限目標回転数を作業現場の要求度に適合させて臨機応変に下げることができるので、騒音を低減し、騒音規制に容易に対応できる。さらにまた、回転方向切換スイッチにより冷却ファンを逆転させることができるので、高価なリバーシブルファンを使用することなく、ラジエータ及びオイルクーラに詰まったゴミ等を容易に排出して冷却能力を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用される建設機械例のブルドーザの側面図である。
【図2】同ブルドーザの冷却ファン近傍の上面図である。
【図3】同、油圧駆動冷却ファン制御装置の回路図である。
【図4】同、冷却水温度と目標ファン回転数との関係図である。
【図5】同、作動油温度と目標ファン回転数との関係図である。
【図6】同、エンジン回転数と上限目標ファン回転数との関係図である。
【図7】同、制限スイッチオン、オフ時の目標ファン回転数Np の一例を示す。
【図8】同、冷却水温度及び作動油温度が所定低温度以下の時の目標ファン回転数の一例を示す。
【図9】同、目標ポンプ容量と電磁比例弁への電流値との関係図である。
【図10】同、制御フローチャート例を示す。
【図11】同、冷却水温度に対するエンジン回転数とファン回転数との関係図である。
【図12】同、作業機の負荷状態に対応する冷却ファン回転数を示す。
【図13】従来技術に係る冷却装置の回路図である。
【符号の説明】
1…ブルドーザ、2…下部走行体、3…車体、4…エンジン、5…冷却装置、6…運転室6、7…ブレード、8…リッパー、7a,8a…油圧シリンダ、11…ラジエータ、12…オイルクーラ、13…冷却ファン、14…油圧ポンプ、14b…サーボ弁、14c…電磁比例弁、15…電磁切換弁、16…油圧モータ、17…作動油タンク、18…チェック弁、20…コントローラ、20a…入力部、20b…記憶部、20c…演算部、20d…出力部、21…冷却水温度センサ、22…作動油温度センサ、23…エンジン回転数センサ、24…操作パネル、25…制限スイッチ、26…切換スイッチ、31…油圧ポンプ、31b…サーボ弁、31c…LS弁、32…コントロールバルブ、33…パイロット圧操作弁、34…操作レバー、35…減圧弁35。
Claims (4)
- エンジンの冷却水を冷却するラジエータ、及び油圧装置の作動油を冷却するオイルクーラを冷却ファンにより強制冷却する冷却装置をエンジンから独立して設けた油圧駆動冷却ファンの制御装置において、
冷却ファン(13)と、冷却ファン(13)を駆動する油圧モータ(16)と、油圧モータ(16)の回転数を制御可能な可変容量型油圧ポンプ(14)と、冷却水温度(Tw)を検出する冷却水温度センサ(21)と、作動油温度(To)を検出する作動油温度センサ(22)と、エンジン回転数(E)を検出するエンジン回転数センサ(23)と、これらのセンサ(21,22,23)の検出信号を入力し、冷却水温度(Tw)、作動油温度(To)及びエンジン回転数(E)に応じて可変容量型油圧ポンプ(14)の吐出容量指令値を演算して出力し、可変容量型油圧ポンプ(14)により冷却ファン(13)の回転数(N)を連続的に制御するコントローラ(20)とを備え、
前記コントローラ(20)は、冷却水温度(Tw)、作動油温度(To)、エンジン回転数(E)それぞれに対応する目標ファン回転数(Nw,No,Ne)のデータを記憶し、検出された冷却水温度に対応する目標ファン回転数(Nw)と検出された作動油温度に対応する目標ファン回転数(No)とを比較して大きい方の回転数を選択し、該選択した回転数と検出されたエンジン回転数(E)に対応する目標ファン回転数(Ne)とを比較して小さい方の回転数に応じて冷却ファン(13)の回転数(N)を制御することを特徴とする油圧駆動冷却ファンの制御装置。 - 請求項1記載の油圧駆動冷却ファンの制御装置において、
コントローラ(20)は、所定のエンジン回転数以上のときに、エンジン回転数(E)の変化にかかわらず冷却ファン回転数(N)の上限を所定回転数に制御することを特徴とする油圧駆動冷却ファンの制御装置。 - 請求項2記載の油圧駆動冷却ファンの制御装置において、
前記冷却ファン回転数(N)の上限は、冷却水温度(Tw)及び作動油温度(To)に応じて設定されることを特徴とする油圧駆動冷却ファンの制御装置。 - 請求項1記載の油圧駆動冷却ファンの制御装置において、
コントローラ(20)は、冷却水温度(Tw)及び作動油温度(To)が所定低温度(Tc)以下の時に、冷却ファン回転数(N)を所定低速回転数(Nc)に制御することを特徴とする油圧駆動冷却ファンの制御装置。
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