JP4282986B2 - 断続した表面を有する関節窩増大構成要素 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
この発明は、概ね関節部品に関するもので、さらに詳しくは断続した表面を有する関節窩増大構成要素に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
患者の治療期間中においては、例えば疾病または外傷のため、その患者に対して全肩置換処置を行うことが必要な場合がある。全肩置換処置では、頭部を有する上腕骨側構成要素が腕骨すなわち上腕骨の生来の頭部を置換するのに利用されている。上記上腕骨側構成要素は典型的には上腕骨側構成要素を患者の上腕骨に固定するのに利用される長尺の髄内茎部を有している。そのような全肩置換処置では、肩甲骨の生来の関節窩表面が付け替えられるか、それ以外では上腕骨側構成要素の頭部に対する支持面を備えた関節部品と取り替えられる。
【０００３】
上述の記載に仄めかされているように、全肩置換処置の必要性は多くの条件のうち、いずれか１つの条件が存在することによって生じ得るものである。そのような条件の１つは、例えば関節窩上腕骨関節炎のため、患者の肩甲骨の関節窩表面に近い領域における悪化である。このような状態では、患者の肩甲骨の侵食（erosion）が関節窩表面の後部において一般に観察される。このような肩甲骨の侵食は、仮に従来の人工関節で行う処置が不可能であれば、処置を困難にする。
【０００４】
肩甲骨の一部が侵食した状態を処置するために、これまで多くの人工関節が設計されてきている。そのような人工関節は一般に関節窩増大構成要素として知られており、前端より厚い対応の後端を有している。図１（Ａ）には、従来設計された関節窩増大構成要素１００が示されている。関節窩増大構成要素１００は金属製の背面側部材１０２とプラスチック製の挿入部材１０４を有している。金属製の背面側部材１０２の厚さはその前端１０６から後端１０８へ向けて徐々に増加しており、これにより、多くの支柱すなわちペグ１１２が延在する起点となる相対的に滑らかで円弧状の中表面１１０が形成されている。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、関節窩増大構成要素１００のデザインは多くの関連した欠点を有している。例えば、相対的に滑らかで円弧状の中表面１１０は、時間の経過とともに、関節窩増大構成要素の緩みを招くことがあり、このため、場合によっては関節窩増大構成要素１００を取り替えるか取り付け直す追加の外科的処置が必要となる。その上、中表面１１０の構成のために、関節窩増大構成要素１００が移植されたときにその関節窩増大構成要素と骨とのインターフェースに沿って相対的に高いせん断負荷が引き起こされる。関節窩増大構成要素と骨とのインターフェースに沿って引き起こされる相対的に高いせん断負荷の存在は処置期間にわたって関節窩増大構成要素１００の緩みを引き起こしてしまう。術後の緩みは、移植された関節窩増大構成要素が機能停止となる最も大きな原因である。
【０００６】
図１（Ｂ）には、他の従来設計された関節窩増大構成要素１００ａが示されている。関節窩増大構成要素１００ａは単一の構成要素であるプラスチック製の本体１０２ａを有している。プラスチック製の本体１０２ａの厚さはその前端１０６ａから後端１０８ａへ向けて徐々に増加しており、これにより、多くの支柱すなわちペグ１１２ａが延在する起点となる相対的に滑らかで円弧状の中表面１１０ａが形成されている。しかしながら、この関節窩増大構成要素１００ａのデザインは少なくとも関節窩増大構成要素１００と同様の欠点に苦慮することになる。
【０００７】
図１（Ｃ）には、他の従来設計された関節窩増大構成要素１００ｂが示されている。関節窩増大構成要素１００ｂもまた、単一の構成要素であるプラスチック製の本体１０２ｂを有している。プラスチック製の本体１０２ｂの厚さはその前端１０６ｂから後端１０８ｂへ向けて徐々に増加しており、これにより、キール１１４が延在する起点となる相対的に滑らかな中表面１１０ｂが形成されている。しかしながら、この関節窩増大構成要素１００ｂのデザインは少なくとも関節窩増大構成要素１００および１００ａと同様の欠点に苦慮することになる。
【０００８】
従って、必要とされるものは、上述した欠点を１つ以上克服する関節窩増大構成要素である。さらに、必要とされるものは、従来設計された関節窩増大構成要素を基準として術後の緩みの影響を受けにくい関節窩増大構成要素である。
【０００９】
この発明の１つの目的は新規で有益な関節窩増大構成要素を提供することにある。
【００１０】
この発明の更なる目的は改良された関節窩増大構成要素を提供することにある。
【００１１】
この発明の他の目的は新規で有益な肩甲骨の関節窩表面への関節窩増大構成要素を提供することにある。
【００１２】
また、この発明の目的は改良された肩甲骨の関節窩表面への関節窩増大構成要素を提供することにある。
【００１３】
さらに、この発明の目的は従来設計された関節部品と比べて術後の緩みの影響を受けにくい関節窩増大構成要素および肩甲骨の関節窩表面への当該関節窩増大構成要素を提供することにある。
【００１４】
【課題を解決するための手段】
この発明は関節部品およびこれに関連した肩甲骨関節窩表面への関節部品の固定方法である。詳しくは、この発明は関節窩増大構成要素およびこれに関連した肩甲骨関節窩表面への関節窩増大構成要素の固定方法である。さらに詳しくは、この発明は断続部等を有する関節窩増大構成要素およびこれに関連した肩甲骨関節窩表面への関節窩増大構成要素の固定方法である。
【００１５】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の一形態を説明する。
１つの形態においては、上記断続部は、この発明の関節窩増大構成要素の少なくとも一部を規定する部品本体の一表面から延在するバットレス、段、肩、脚、インターフェース等によって規定されている。また、本体はアンカーを含むものでもよい。１つの形態においては、本体のアンカーは１つ以上のアンカーを含むものでもよい。アンカーは専ら本体の表面から、断続部から、あるいは断続部と本体表面の両方（即ち、跨る形態で）から延在してもよい。
【００１６】
この発明の一実施の形態に従って、上腕骨の頭部に対する支持面を与えるように肩甲骨の関節窩表面に固定されるための関節窩増大構成要素が提供される。関節窩増大構成要素は本体とバットレスとを含む。本体は肩甲骨の関節窩表面に接触するように形成された第１表面と、上腕骨の頭部によって接触させられるように形成された第２表面とを有している。バットレスは本体の第１表面内に形成されている。
【００１７】
この発明の他の実施の形態に従って、上腕骨の頭部に対する支持面を与えるように肩甲骨の関節窩表面に固定されるための関節窩増大構成要素が提供される。関節窩増大構成要素は本体と、この本体上に設けられた中表面と、本体上に設けられた上腕骨表面と、断続部と、アンカーとを含む。中表面は肩甲骨の関節窩表面に接触するように形成されている。上腕骨表面は上腕骨の頭部によって接触させられるように形成されている。断続部は中表面から延在しており、上記中表面に対して角度θ（４５°≦θ≦１３５°）となる位置に配置された第１断続表面と、第１本体表面に平行な線に対して角度φ（０°≦φ≦９０°）となる位置に配置された第２断続表面とを規定する。
【００１８】
この発明のさらに他の実施の形態に従って、上腕骨の頭部に対する支持面を与えるように肩甲骨の関節窩表面に固定されるための関節窩増大構成要素が提供される。関節窩増大構成要素は、肩甲骨の関節窩表面に接触するように形成された第１本体表面（ａ）と上腕骨の頭部によって接触させられるように形成された第２本体表面（ｂ）とを有する本体（ｉ）と、第１本体表面から延在するバットレス（ｉｉ）とを有する。固定方法は、肩甲骨の関節窩表面にバットレス形状の凹みを形成するステップ（ａ）と、第１本体表面が肩甲骨の関節窩表面に接触した状態で位置決めされ（ｉ）かつバットレスが段形状の凹み内に位置決めされる（ｉｉ）ように関節窩増大構成要素を肩甲骨の関節窩表面に固定するステップ（ｂ）とを含む。
【００１９】
全ての実施の形態において、この発明の関節窩増大構成要素は移植後における良好な安定性を与えるものである。その上、この発明の関節窩増大構成要素は、通常の高いせん断負荷を圧縮負荷へ変換することで、関節窩増大構成要素にかかるストレスを軽減する。この発明の関節窩増大構成要素は、骨の欠陥または摩損を修正するのに用いられてもよい。
【００２０】
なお、この発明の上記および他の目的、態様および利点は次なる記述および添付図面から明らかである。また、いくつかの図面を通して一致する参照符号は符合する部分を示し、いくつかの図面を通して同様の参照符号は同様の部分を示すようにしている。この発明は種々の変更および選択可能な形状に影響されやすいが、特定の実施の形態が図面中の例として示されており、ここに詳細に記述される。しかしながら、この発明を開示された特定の形状に限定する意図はないが、反対に、意図は、請求の範囲によって規定された発明の精神の範囲内に入る全ての変更、均等および選択肢を包含することにあると理解されるべきである。
【００２１】
実施の形態１．
さて、図２を参照すると、左側の肩甲骨１４の関節窩表面１２と上腕骨側構成要素１６との間に位置し、この発明の原理と一致する概括的な関節窩増大構成要素１０が示されている。関節窩増大構成要素１０はここに記述された関節窩増大構成要素の全実施の形態の典型である。上腕骨側構成要素１６は上腕骨１８に既に移植され、あるいは他の方法で固定されている。以下に、より詳細に論じられるように、関節窩増大構成要素１０は全肩置換処置の間中、生来の関節窩表面１２と取り替えるために肩甲骨１４の関節窩表面１２に骨セメントを使用しあるいは使用せずして固定されるように形成されている。そのような方法で、関節窩増大構成要素１０は上腕骨１８の頭部（補綴の頭部）を収容するための移植支持面４４として機能する。補綴の頭部２０は、図示されているように上腕骨１８内に移植された補綴の上腕骨側構成要素１６の茎部１７に取り付けられている。関節窩増大構成要素の表面４６は関節窩表面１２に接触する。
【００２２】
図２において、関節窩表面１２は関節窩増大構成要素１０を収容するために既に準備されている。特に、ノッチ１３は関節窩増大構成要素１０への配置に対応するために関節窩表面１２から切除されて形成されている。さらに、複数の穴１５は関節窩表面１２内に既に準備されている。以下に論じられるように、穴１５は複数のアンカーを収容して関節窩増大構成要素１０を固定するように形成されている。
【００２３】
実施の形態２．
図３乃至図７を参照すると、図２に示された概括的な関節窩増大構成要素１０の一実施の形態が示されている。関節窩増大構成要素１０は本体２２を含み、この本体２２はその一端上に設けられた凹面２６を有するものである。本体２２の凹面２６は上腕骨１８内に移植された上腕骨側構成要素１６の頭部２０を支持する滑らかな支持面を与えるものである。そういうものとして、凹面２６は頭部２０の凸面の曲率と同一またはそれ以上の凹面の曲率をもって形成されている。
【００２４】
本体２２は、本体、即ち上表面２８およびこの上表面２８の横に位置する側表面３０を規定する中表面３２上にあるいは中表面３２から形成されたバットレス、段、脚等の形態である断続部２４を含むものである。上表面２８は実質的に平坦であるのが好ましいが、丸み形状あるいは凸面状でもよい。側表面３０は中表面３２から上表面２８へ延在している。中表面３２は、図５に最も示されているように、丸み形状あるいは凸面状であることが好ましいが、平坦面であってもよい。側表面３０は上表面２８および中表面３２に対して実質的に直角となるように示されている。しかしながら、側表面３０は上表面２８および中表面３２の双方に対してそれぞれ４５°以上１３５°以下の範囲内の角度がついている。
【００２５】
また、関節窩増大構成要素１０はアンカーペグ３４を含むものである。アンカーペグ３４は本体表面３２に対して基本的に直角方向に延在している。アンカーペグ３４は、肩甲骨１４の関節窩表面１２内にドリルまたは他の手段で形成された開口部または穴内への挿入が一層容易となる丸み形状の頭部３６を含むものである。必要ではないが、関節窩増大構成要素１０は、複数の安定化用支柱またはペグ３８を含むように示されている。２つのペグ３８は中表面３２に対して実質的に直角となるように延在している一方、別の２つのペグ３８は上表面２８に対して実質的に直角となるように延在している。各ペグ３８の長さはアンカーペグ３４の長さより短いのが好ましい。同様に、各ペグ３８の長さは、位置に関わらず、移植支持面４４またはその末端の長さに対して同一の長さであることが基本的に好ましい。安定化ペグ３８は肩甲骨１４の関節窩表面１２内にドリルまたは他の手段で形成された多くの安定化穴（図２参照）１５内にそれぞれ収容されている。
【００２６】
アンカーペグ３４および／または安定化ペグ３８のいずれか１つまたは全部が本体２２に固定された異なる構成要素として具体化され得ることが検討されているが、アンカーペグ３４およびいずれの安定化ペグは一つずつおよび本体２２に一体に形成されることが好ましい。一実施の形態において、本体２２、アンカーペグ３４および安定化ペグ３８は、ポリエチレンまたは超高分子量ポリプロピレン（ＵＨＭＷＰＥ）等の高分子材料を用いて一体成形されている。同様に、関節窩増大構成要素１０はプラスチック、セラミックまたは複合材料で形成されてもよい。これらの材料の例は、ポリエチレン、アルミナ、ジルコニアおよびアルミナ／ジルコニア複合体または複合材料を含む。
【００２７】
バットレス２４は、好ましくはアンカーペグ３４の長さより短い、本体表面３２からの高さまたは長さに達している。バットレス２４の長さまたは高さが外形および／または寸法と同様に設計上の選択により長くされあるいは短くされることがあり得ることは正当に評価されるべきである。
【００２８】
ここに、アンカーペグ３４は２つのリング４０を含むように図示されている。しかしながら、アンカーペグ３４がいくつかのリングを含むか全くリングを含まないように具体化され得ることは正当に評価されるべきである。例えば、アンカーペグ３４は単一のリング４０（即ち、１つ）だけ含むように具体化され得る。さらに、ここに各リング４０が同一寸法の外径を有するように示されているが、他のリングまたはフィン（図１７参照）等のリング様外形も関節窩増大構成要素１０との使用に関して検討されることが正当に評価されるべきである。例えば、リング４０は複数のリング４０の各外径がアンカーペグ３４の遠位端からアンカーペグ３４の近位端まで徐々に増えるテーパ外形で提供されてもよい。（即ち、アンカーペグ３４の遠位端上に位置決めされたリングがアンカーペグ３４の近位端上に位置決めされたリングと比べて小さい外径を有している）。そのような外形において、肩甲骨１４内にドリルで形成されたアンカー用穴は、リング４０によって係合される形状の側壁を与えるように上記同様のテーパ状にドリルで形成される。
【００２９】
リング４０がアンカーペグ３４に固定された異なる構成要素として具体化され得ることが検討されているが、リング４０はアンカーペグ３４に一体に形成されることが好ましい。上記記述と整合する一実施の形態においては、リング４０はアンカーペグ３４と一体成形されている（従って、本体２２および関節窩表面１０ａの安定化ペグ３８と一体成形されている）。
【００３０】
リング４０は、アンカーペグ３４がアンカー用穴内に挿入されたときに、無セメント用途（あるいは無セメント用途の特大寸法の穴）において僅かに変形するように形成されてもよい。この変形は、アンカー用穴はリング４０の外径より小さいけれどもアンカーペグ３４のシャフト部３５の直径より僅かに大きい直径を有するように好ましくはドリルで形成されているので、リング４０がアンカー用穴内に送られたときに引き起こされる。これにより、リング４０を無理にアンカー用穴内に入れるとアンカー用穴内の側壁に接触するリング４０に変形が引き起こされることになる。このようなリング４０の変形は、螺子が前進する部材から螺子の引き出しに耐える抵抗力を螺子の螺子山に与えるのと同様に、アンカー用穴からアンカーペグ３４の排除または引き出しに耐える抵抗力を与えることによって肩甲骨１４への関節窩増大構成要素１０ａの固定を可能にする。さらに、肩甲骨１４への関節窩増大構成要素１０の固定期間にわたって、骨組織または他のタイプの組織はリング４０間の空間に成長して入り込んでいく。これにより、アンカー用穴からアンカーペグ３４の排除または引き出しに一段と耐える抵抗力が与えられる。
【００３１】
このようなリング４０および／または上述のバットレス２４の形状は、肩甲骨１４の関節窩表面１２に関節窩増大構成要素１０を固定する骨セメントを使用する必要性をなくす。これにより、骨セメントの使用に関連したいかなる潜在的な欠点を解消することで、典型的な全肩置換処置を簡素化する。特に、上述のバットレス２４の形状は肩甲骨１４内の関節窩表面１０内へ挿入されたときの位置に関節窩増大構成要素１０を固定する。しかしながら、必要ならば骨セメントが使用され得ることは検討されている。
【００３２】
安定化ペグ３８は必要ないが、関節窩増大構成要素１０が関節窩表面に一旦固定されたら肩甲骨１４に対するバットレス２４に加えて関節窩増大構成要素１０の本体２２の回転または他のタイプの動作を阻止するのを加勢するために配設されることが好ましい。各安定化ペグ３８の遠位端は円錐状の先端３９を有している。円錐状の先端３９は肩甲骨１４の関節窩表面１２内にドリルで形成された各安定化穴への安定化ペグ３８を挿入するのを容易にする導入部として機能する。
【００３３】
安定化ペグ３８は、この実施の形態における関節窩増大構成要素の必要性に適合する本体２２上であれば、いかなる方位で配設されてもよい。さらに、いかなる数の安定化ペグ３８も任意の関節窩増大構成要素の必要性に適合するように利用されてもよいと正当に評価されるべきである。特に、関節窩増大構成要素１０が４つの安定化ペグを有するように上述されかつこの発明においては有効な利点を有しているが、関節窩増大構成要素１０が安定化ペグを全く含まないか、あるいはいかなる数の安定化ペグ３８を含む態様を選択可能に具体化してもよいと正当に評価されるべきである。
【００３４】
実施の形態３．
図８乃至図１１を参照すると、関節窩増大構成要素の他の実施の形態が符号１０ａで概括的に示されている。関節窩増大構成要素１０ａは本体５０を含み、この本体１０の一端上には凹面５２が設けられている。本体５０の凹面５２は上腕骨１８に移植された上腕骨側構成要素１６の頭部２０を支持する滑らかな支持面を備えている。そういうものとして、凹面５２は頭部２０の凸面の曲率と同一またはそれ以上の凹面の曲率をもって形成されている。
【００３５】
本体５０は、中表面、即ち上表面５６およびこの上表面５６の横に位置する側表面５８を規定する本体表面６０上にあるいは本体表面６０から形成されたバットレス、段、脚等の形態である断続部５４を含むものである。上表面５６は実質的に平坦であるのが好ましいが、丸み形状あるいは凸面状でもよい。側表面５８は中表面６０から上表面５６へ延在している。中表面６０は、図８に最も示されているように、丸み形状あるいは凸面状であることが好ましいが、平坦面であってもよい。側表面５８は上表面５６および中表面６０に対して実質的に直角となるように示されている。しかしながら、側表面５８は上表面５６および中表面６０の双方に対してそれぞれ４５°以上１３５°以下の範囲内の角度がついている。
【００３６】
また、関節窩増大構成要素１０ａはキール６２を含むものである。キール６２は本体表面６０に対して基本的に直角方向に延在している。キール６２は肩甲骨１４の関節窩表面１２内にドリルまたは他の手段で形成されまたは準備された近似形状の穴内への挿入が一層容易となるテーパ端部６４を含むものである。
【００３７】
キール６２が本体５０に固定された異なる構成要素として具体化され得ることが検討されているが、キール６２は本体５０に一体に形成されることが好ましい。一実施の形態において、本体５０およびキール６２は、ポリエチレンまたは超高分子量ポリプロピレン（ＵＨＭＷＰＥ）等の高分子材料を用いて一体成形されている。同様に、関節窩増大構成要素１０ａはプラスチック、セラミックまたは複合材料で形成されてもよい。これらの材料の例は、ポリエチレン、アルミナ、ジルコニアおよびアルミナ／ジルコニア複合体または複合材料を含む。
【００３８】
バットレス５４は、好ましくはキール６２の長さより短い、中表面６０からの高さまたは長さに達している。バットレス５４の長さまたは高さが設計上の選択により長くされあるいは短くされることがあり得ることは正当に評価されるべきである。また、関節窩増大構成要素１０ａがいかなる安定化ペグをも示されないものと正当に評価されるべきである。しかしながら、関節窩増大構成要素１０ａはバットレス５４の上表面５６から延在する安定化ペグを含めてもよい。
【００３９】
実施の形態４．
図１２乃至図１６を参照すると、符号１０ｂで概括的に示された関節窩増大構成要素の他の実施の形態が描写されている。関節窩増大構成要素１０ｂは、図３乃至図７に示した関節窩増大構成要素１０と概略同一の態様および／または構成要素を含むものである。しかしながら、この実施の形態では、１つのアンカーペグ３４はバットレス２４および中表面３２の双方から延在している。別の言い方をすれば、このアンカーペグ３４はバットレス２４および中表面３２の双方に跨っている。追記すれば、関節窩増大構成要素１０ｂは３つのペグ３８を有している。ペグ３８の１つは中表面３２から延在し、他の１つはバットレスから延在し、残りの１つはバットレス２４および中表面３２に跨っている。
【００４０】
実施の形態５．
図１７は符号１０ｃで概括的に示された関節窩増大構成要素の他の実施の形態を描写する。関節窩増大構成要素１０ｃは、アンカーペグ３４を除き、図１２乃至図１６に示した関節窩増大構成要素１０ｂと基本的に同一である。関節窩増大構成要素１０ｃのアンカーペグ３４は複数の放射状フィン等６６を含むものである。フィン６６は変形可能である。これは、アンカーペグ３４が肩甲骨１４の関節窩表面１２内のアンカー用穴への嵌合を可能にし、容易抜けを防止することが可能である。
【００４１】
実施の形態６．
図１８乃至図２０を参照すると、符号１０ｄで概括的に示された関節窩増大構成要素の他の実施の形態が描写されている。関節窩増大構成要素１０ｄは、図８乃至図１１に示した関節窩増大構成要素１０ａと概略同一である。しかしながら、この実施の形態では、キール６２はバットレス５４および中表面６０に跨っている。このように、キール６２は本体５０の中表面６０上の中心に基本的に位置している。
【００４２】
実施の形態７．
図２２乃至図２５を参照すると、符号１０ｅで概括的に示された関節窩増大構成要素の他の実施の形態が描写されている。関節窩増大構成要素１０ｅは２つの部品または構成要素、即ち背面側部材７０と背面側挿入部材（支持挿入部材）７２とから構成されている。背面側部材７０は肩甲骨１４の関節窩表面１２に取り付けられあるいは装着されるように適合している一方、背面側挿入部材７２は背面側部材７０に取り付けられるように適合している。
【００４３】
背面側挿入部材７２は、好ましくはプラスチック、セラミックまたは複合体で形成されている。これらの材料の例は、ポリエチレン、アルミナ、ジルコニア、アルミナ／ジルコニア複合体または複合材料を含む。背面側部材７０は、好ましくは金属、セラミック、複合体または生物材料で形成されている。背面側部材７０の生物材料の例は、骨材料、移植骨材料または骨代用材料を含む。背面側部材７０の金属の例は、チタン合金、コバルト合金またはステンレススチール合金を含む。背面側部材７０のセラミックの例はアルミナ、ジルコニアおよびアルミナ／ジルコニア複合セラミックを含む。背面側部材の複合体の例は、カーボンファイバ／ピーク（ＰＥＥＫ）複合材料を含む。
【００４４】
背面側挿入部材７２は本体７４を含み、この本体７４はその一端上に設けられた凹面７６を有するものである。本体７４の凹面７６は上腕骨１８内に移植された上腕骨側構成要素１６の頭部２０を支持する滑らかな支持面を与えるものである。そういうものとして、凹面７６は頭部２０の凸面の曲率と同一またはそれ以上の凹面の曲率をもって形成されている。また、背面側挿入部材７２は、以下に記述されるような方法で、背面側挿入部材７２が背面側部材７０によって受け入れられかつ保持されることを可能にするように適合された周辺スロット７８を含む。
【００４５】
背面側部材７０は、上表面９０およびこの上表面９０の横に位置する側表面８８を規定し、バットレス、段、脚等として形成された断続部８６を含むものである。上表面９０は実質的に平坦であるのが好ましいが、丸み形状あるいは凸面状でもよい。側表面８８は本体面９２から上表面９０へ延在している。本体表面９２は、図２５に最も示されているように、丸み形状あるいは凸面状であることが好ましい。側表面８８は上表面９０および本体表面９２に対して実質的に直角となるように示されている。しかしながら、側表面８８は上表面９０および本体表面９２の双方に対してそれぞれ４５°以上１３５°以下の範囲内の角度がついている。
【００４６】
図２５に最も示されているように、背面側部材７０は、馬蹄形状のスロット８２を規定する馬蹄形状のリム８４を含むものである。リム８４およびスロット８２は協同してあるいは単独で背面側部材７２を滑動的に受け入れるのに適している。特に、背面側挿入部材７２の一部７５はスロット８２内に受け入れられる一方、リム８４は背面側挿入部材７２のスロット７８に係合する。背面側挿入部材７２が肩甲骨１４に取り付けられる前に背面側部材７０が最初に肩甲骨１４に取り付けられることが正当に評価されるべきである。以下に、より詳細に説明されるように、背面側部材７０はファスナによって肩甲骨１４に取り付けられる。勿論、コネクタの他のタイプも背面側部材７０および背面側挿入部材７２に使用されてもよい。
【００４７】
また、背面側部材７０は複数の穴９４を含む。各穴９４はスクリュー、爪、当該穴を貫通して延在する他のファスナの使用を許すように適している。この方法では、背面側部材７０は肩甲骨１４の関節領域１２に固定される。背面側部材７０は、バットレス８６を通過する３つの穴９４と、本体表面９２を通過する３つの穴９４とを有するものとして示されている。背面側部材７０は種々の位置において多かれ少なかれ、穴を含み得るものであると正当に評価されるべきである。好ましくは、中間に位置する２つの穴はバットレス上表面９０に対して実質的に直角となっている一方、外側に位置する穴は外方へ傾斜している。このような形状は肩甲骨１４の関節窩表面１２への背面側部材７０の接続固定を提供する。
【００４８】
実施の形態８．
図２６を参照すると、図２２乃至図２５に示した背面側部材７０に似た符号１２０で概括的に示された背面側部材の他の実施の形態が描写されている。背面側部材１２０は、馬蹄形状のリム１２６によって囲まれた馬蹄形状のスロット１２４を有する本体１２２を含むものである。スロット１２４およびリム１２６は、図２２に示した背面側挿入部材７２に似た背面側挿入部材（図示せず）を受け入れるように形成されている。
【００４９】
この発明の一側面に従って、背面側部材１２０は本体１２２または中表面１３２の略半分を覆うバットレス１２８を有している。バットレス１２８は、好ましくは、しかし必須ではないが凸面状あるいは丸み形状の中表面１３２に対して好ましくは基本的に直角である側表面１２９を規定している。しかしながら、側表面１２９と中表面１３２との交差角度は４５°以上１３５°以下であってもよい。即ち、側表面１２９は中表面１３２に対して角度θ（ここで４５°≦θ≦１３５°）を規定する。また、バットレス１２８は複数の穴１３０を含むものである。穴１３０は、肩甲骨１４の関節窩表面１２に対して本体１２２を取り付けるために、ファスナをそれらの穴に通して延在させ、その両端部を捕捉することを可能にするように形成されている。その上、背面側部材１２０は図８乃至図１１および図１８乃至図２１に示したキール６２に似たキール１３４を含むものである。キール１３４は、中表面１３２およびバットレス１２８に跨るようにして、これらから実質的に直角に延在している。
【００５０】
実施の形態９．
図２７は背面側部材１２０の他の変形可能な実施の形態を与える。特に、図２７に示す背面側部材１２０ａは、キール１３４を除き、背面側部材１２０と同一の態様を含むものである。キールの代わりに、背面側部材１２０ａは、図３乃至図７に示した支柱３４に似たアンカーペグまたは支柱を含むものである。アンカーペグ１３６は、好ましくはアンカーペグ３４と同様に形成されかつ中表面１３２ａおよびバットレス１２８ａに跨るようにして、これらから実質的に直角に延在している。さらに、背面側部材１２０ａは、図３乃至図７に示した安定化支柱３８に似た一対の安定化支柱またはペグ１３８を含むものである。しかしながら、この場合には、１つの安定化支柱１３８は中表面１３２ａから外方へ延在する一方、他の１つの安定化支柱１３８はバットレス１２８ａおよび中表面１３２ａに跨っている。その上、背面側部材１２０ａはバットレス１２８ａを通過して延在する穴１３０ａを含むものである。
【００５１】
ここで、この発明の利用について説明する。
この発明の関節窩増大構成要素１０は、骨セメントを使用して、あるいは使用しないで、上腕骨の頭部を支持する人工的な支持面を与えるために、全肩置換処置の実施に利用される。図２８を参照すると、関節窩増大構成要素１０が取り付けられるであろう左側の肩甲骨１４が描写されている。
【００５２】
特に、アンカー用穴１５２および安定化穴は適当なドリル工具（ドリルビット１５０によって表されているような）の使用または他の手段によって肩甲骨１４の関節窩表面１２内に形成されている。キールまたは他の型または他の方式のメインアンカーまたはスタビライザを有する関節窩増大構成要素の場合、関節窩表面１２には相補形状の凹みが形成されている。肩甲骨１４の関節窩表面１２上に穴を適切に配置しかつ位置合わせするのにドリルガイドまたはパターン（図示せず）が利用されてもよいと正当に評価されるべきである。その上、アンカー用穴１５２はドリルで形成されて関節窩増大構成要素のアンカーペグ、あるいはキール（穴がキールの形状を受け入れるように形成されている場合）を収容する。一方、背面側部材を有する２分割型の関節窩増大構成要素を用いるときには、種々の穴は肩甲骨１４内に形成されてペグの代わりにファスナを収容するようにしてもよい。
【００５３】
ペグおよび／またはキールを収容する任意の穴に加えて、ノッチ１５４は関節窩増大構成要素のバットレスを収容するように形成されてもよい。これは、適当な鋸、穴ぐり用のリーマ、または繰り抜き用ルータ等を利用することで達成されてもよい。典型的には、ノッチ１５４は肩甲骨１４の関節窩表面１２の後位置に形成される。
【００５４】
一旦、任意の穴およびノッチ１５４が肩甲骨１４の関節窩表面１２内に形成されたら、関節窩増大構成要素１０は肩甲骨１４に固定される。特に、関節窩増大構成要素１０は、バットレスがノッチ１５４内に受け入れられかつ任意のアンカーペグ、キールおよび／または安定化ペグが各穴内に受け入れられるか、あるいはファスナを用いられる場合には背面側部材内の穴が肩甲骨内の穴に向けられるような向きに配置される。その後、関節窩増大構成要素１０は関節窩表面１２に向けて送り出される。
【００５５】
従って、ノッチ１５４へのバットレスの挿入は肩甲骨１４の関節窩表面１２と接触した状態で関節窩増大構成要素１０の本体を保持するように行われる。さらに、上述した方法によるアンカーペグ、キールおよび／または安定化ペグの対応穴への挿入は肩甲骨１４の関節窩表面１２に対する関節窩増大構成要素１０の本体の回転または他のタイプの動作を阻止する。
【００５６】
一旦、上述した方法によって関節窩増大構成要素１０が肩甲骨１４の関節窩表面１２に固定されたら、関節窩増大構成要素１０の本体２２の凹面２６は、上腕骨１８に移植された上腕骨側構成要素１６の頭部２０を受け入れて支持する支持面を与える。そのようにして、本体２２の凹面２６は肩甲骨１４の生来の関節窩表面１２に代わる適当な人工的代替具として機能する。
【００５７】
この発明は図面および上記の記述において詳細に図示されかつ記述されたが、そのような図示および記述は例示として、および文言に限定されないものとして考慮されるべきでものである。例示は好適な実施の形態が図示されかつ記述されただけであり、この発明の精神の範囲内に入る全ての変更および改良は保護されることが望まれる。
【００５８】
関節窩増大構成要素の種々の態様から生じるこの発明の複数の利点はここに記述されている。なお、この発明の関節窩増大構成要素の選択可能な実施の形態は、全ての実施の形態の少なくともいくつかの利点から齎らされるがまだ記述されていない利益の全てを含むものではない。この技術分野における通常の知識を有する者は、この発明の１つ以上の態様を組み込んだ関節窩増大構成要素の自らの具体案を容易に発明し得るが、それは添付された請求の範囲によって規定されたこの発明の精神および範囲内に入るものである。
【００５９】
例えば、この発明の概念と一致する支持構成要素の一実施の形態としての関節窩増大構成要素１０がここに記述された。しかしながら、この発明の概念は寛骨臼、膝蓋骨、大腿、上腕骨、脛骨、尺骨、橈骨、手関節および／または足関節の構成要素に補綴用結合部品として組み込まれてもよい。
【００６０】
本発明の実施態様及び参考例は下記の通りである。
（Ａ） 本体と、該本体上に設けられかつ肩甲骨の関節窩表面に接触するように形成された第１表面と、前記本体上に設けられかつ上腕骨の頭部によって接触させられるように形成された第２表面と、前記本体の前記第１表面内に形成されたバットレスとを含み、上腕骨の頭部に対する支持面を与えるように肩甲骨の関節窩表面に固定されるための関節窩増大構成要素。
（Ｂ） 肩甲骨の関節窩表面に接触するように形成された中表面および上腕骨の頭部によって接触させられるように形成された上腕骨表面を有する本体と、前記中表面から延在しかつ前記中表面に対して角度θ（ここで４５°≦θ≦１３５°）となる位置に配置された第１断続表面と、前記中表面に平行な線に対して角度φ（ここで０°≦φ≦９０°）となる位置に配置された第２断続表面とを規定する断続部と、アンカーとを含み、上腕骨の頭部に対する支持面を与えるように肩甲骨の関節窩表面に固定されるための関節窩増大構成要素。
（Ｃ） 肩甲骨の関節窩表面に接触するように形成された第１本体表面（ａ）と上腕骨の頭部によって接触させられるように形成された第２本体表面（ｂ）とを有する本体（ｉ）と、前記第１本体表面から延在するバットレス（ｉｉ）とを有する関節窩増大構成要素を、上腕骨の頭部に対する支持面を与えるように肩甲骨の関節窩表面に固定する方法であって、肩甲骨の関節窩表面にバットレス形状の凹みを形成するステップと、前記第１本体表面が肩甲骨の関節窩表面に接触した状態で配置されかつ前記バットレスが段形状の前記凹み内に位置決めされるように関節窩増大構成要素を肩甲骨の関節窩表面に固定するステップとを含む固定方法。
（１）本体は肩甲骨の関節窩表面を貫通するのに適したアンカーをさらに含む実施態様（Ａ）記載の関節窩増大構成要素。
（２）アンカーはアンカーペグを含むものである実施態様（１）記載の関節窩増大構成要素。
（３）アンカーはアンカーキールを含むものである実施態様（１）記載の関節窩増大構成要素。
（４）アンカーは本体の第１表面から専ら延在するものである実施態様（１）記載の関節窩増大構成要素。
（５）アンカーはバットレスから専ら延在するものである実施態様（１）記載の関節窩増大構成要素。
【００６１】
（６）アンカーは第１表面およびバットレスから専ら延在するものである実施態様（１）記載の関節窩増大構成要素。
（７）アンカーは第１表面およびバットレスの双方に跨るものである実施態様（６）記載の関節窩増大構成要素。
（８）バットレスは第１バットレス表面と第２バットレス表面を規定し、かつ前記第１バットレス表面は第１表面に対して角度θ（ここで４５°≦θ≦１３５°）となる位置に配置されている実施態様（Ａ）記載の関節窩増大構成要素。
（９）第２バットレス表面は第１バットレス表面に対して直角となる位置に配置されている実施態様（８）記載の関節窩増大構成要素。
（１０）第２バットレス表面は本体の第１表面と実質的に平行である実施態様（９）記載の関節窩増大構成要素。
【００６２】
（１１）アンカーは第２バットレス表面に対して実質的に直角である実施態様（８）記載の関節窩増大構成要素。
（１２）アンカーは第１バットレス表面と実質的に平行である実施態様（８）記載の関節窩増大構成要素。
（１３）本体は、該本体の第１表面と、前記本体の第２表面および前記本体内に規定されたバットレスを有する背面側部材を含み、かつ関節窩増大構成要素は前記背面側部材に固定可能な支持挿入部材をさらに含む実施態様（Ａ）記載の関節窩増大構成要素。
（１４）背面側部材は金属、セラミック、複合体および生物材料のうち１つで形成され、かつ支持挿入部材はプラスチック、セラミックおよび複合体のうち１つで形成されている実施態様（１３）記載の関節窩増大構成要素。
（１５）背面側部材の生物材料は骨材料、移植骨材料および骨代用材料を含む実施態様（１４）記載の関節窩増大構成要素。
【００６３】
（１６）背面側部材の金属はチタン合金、コバルト合金およびステンレススチール合金のうち１つを含む実施態様（１４）記載の関節窩増大構成要素。
（１７）背面側部材のセラミックはアルミナ、ジルコニアおよびアルミナ／ジルコニア複合セラミックを含む実施態様（１４）記載の関節窩増大構成要素。
（１８）背面側部材の複合体はカーボンファイバ／ピーク（ＰＥＥＫ）複合材料を含む実施態様（１４）記載の関節窩増大構成要素。
（１９）支持挿入部材はポリエチレン、アルミナ、ジルコニアおよびアルミナ／ジルコニア複合体または複合材料のうち１つからなるものである実施態様（１４）記載の関節窩増大構成要素。
（２０）背面側部材は、該背面側部材を肩甲骨の関節窩表面に固定するための固定部材の通過を許すように形成された複数の穴を含む実施態様（１４）記載の関節窩増大構成要素。
【００６４】
（２１）複数の穴は本体の第１表面から外方へ延在するものである実施態様（２０）記載の関節窩増大構成要素。
（２２）複数の穴はバットレス部材から外方へ延在するものである実施態様（２０）記載の関節窩増大構成要素。
（２３）アンカーは中表面から延在するものである実施態様（Ｂ）記載の関節窩増大構成要素。
（２４）アンカーは複数のアンカーペグを含むものである実施態様（Ｂ）記載の関節窩増大構成要素。
（２５）アンカーはキールを含むものである実施態様（Ｂ）記載の関節窩増大構成要素。
【００６５】
（２６）アンカーは中表面から専ら延在するものである実施態様（２３）記載の関節窩増大構成要素。
（２７）アンカーは断続部から専ら延在するものである実施態様（２３）記載の関節窩増大構成要素。
（２８）アンカーは中表面および断続部から延在するものである実施態様（２３）記載の関節窩増大構成要素。
（２９）アンカーは断続部および中表面の双方に跨るものである実施態様（２８）記載の関節窩増大構成要素。
（３０）本体は、中表面、上腕骨本体表面および該表面内に規定された断続部を有する背面側部材を含み、該背面側部材に固定可能な支持挿入部材をさらに含む実施態様（Ｂ）記載の関節窩増大構成要素。
【００６６】
（３１）背面側部材は金属、セラミック、複合体および生物材料のうち１つで形成され、かつ支持挿入部材はプラスチック、セラミックおよび複合体のうち１つで形成されている実施態様（２９）記載の関節窩増大構成要素。
（３２）背面側部材の生物材料は骨材料、移植骨材料および骨代用材料を含む実施態様（３１）記載の関節窩増大構成要素。
（３３）背面側部材の金属はチタン合金、コバルト合金およびステンレススチール合金のうち１つを含む実施態様（３１）記載の関節窩増大構成要素。
（３４）背面側部材のセラミックはアルミナ、ジルコニアおよびアルミナ／ジルコニア複合セラミックを含む実施態様（３１）記載の関節窩増大構成要素。
（３５）背面側部材の複合体はカーボンファイバ／ピーク（ＰＥＥＫ）複合体を含む実施態様（３１）記載の関節窩増大構成要素。
【００６７】
（３６）支持挿入部材はポリエチレン、アルミナ、ジルコニアおよびアルミナ／ジルコニア複合体または複合材料のうち１つからなるものである実施態様（３１）記載の関節窩増大構成要素。
（３７）背面側部材は、該背面側部材を肩甲骨の関節窩表面に固定するための固定部材の通過を許すように形成された複数の穴を含む実施態様（３０）記載の関節窩増大構成要素。
（３８）複数の穴は本体の中表面から外方へ延在するものである実施態様（３７）記載の関節窩増大構成要素。
（３９）複数の穴は断続部から外方へ延在するものである実施態様（３７）記載の関節窩増大構成要素。
（４０）複数の穴は中表面および断続部から外方へ延在しかつ前記中表面および前記断続部内に分散されたものである実施態様（３７）記載の関節窩増大構成要素。
【００６８】
（４１）凹み形成ステップは、骨カッターで肩甲骨の関節窩表面内のバットレス形状の凹みを切除するステップを含む参考例（Ｃ）記載の固定方法。
（４２）切除ステップはバットレス形状の凹みの少なくとも一部を凹面で形成するステップを含む参考例（４１）記載の固定方法。
（４３）関節窩増大構成要素はアンカーをさらに含み、固定ステップは、肩甲骨の関節窩表面内にアンカー用穴を形成するステップ（ｉ）と前記アンカー用穴内に前記アンカーを前方に送るステップ（ｉｉ）とを含む参考例（Ｃ）記載の固定方法。
（４４）バットレスは第１バットレス表面と第２バットレス表面を含み、かつ前記第１バットレス表面は中表面に対して角度θ（ここで４５°≦θ≦１３５°）となる位置に配置されている参考例（Ｃ）記載の固定方法。
（４５）第１バットレス表面は第２バットレス表面に対して直交した位置に配置されている参考例（４４）記載の固定方法。
（４６）関節窩増大構成要素は背面側部材（ｉ）と前記背面側部材に固定可能な支持挿入部材（ｉｉ）とをさらに含み、本体の第１本体表面およびバットレスは背面側部材内に規定され、前記本体の第２本体表面は前記支持挿入部材内に規定され、固定ステップは前記背面側部材の前記第１本体表面が肩甲骨の関節窩表面に接触した状態で配置されかつ前記背面側部材の前記バットレスの部分がバットレス形状の凹み内に位置決めされるように前記背面側部材を肩甲骨の関節窩表面に固定するステップ（ｉ）と前記支持挿入部材を前記背面側部材に固定するステップ（ｉｉ）とを含む参考例（Ｃ）記載の固定方法。
【００６９】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、本体と、該本体上に設けられかつ肩甲骨の関節窩表面に接触するように形成された第１表面と、前記本体上に設けられかつ上腕骨の頭部によって接触させられるように形成された第２表面と、前記本体の前記第１表面内に形成されたバットレスとを含み、肩甲骨の関節窩表面に固定して上腕骨の頭部に対する支持面を与えるように構成したので、術後の緩みの影響を受けにくい関節窩増大構成要素を得ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図１】（Ａ）は従来の関節窩増大構成要素の側断面図であり、（Ｂ）は他の従来の関節窩増大構成要素の側断面図であり、（Ｃ）はさらに他の従来の関節窩増大構成要素の側断面図である。
【図２】左肩甲骨の準備された関節窩表面と上腕骨側構成要素との間の位置に配置され、この発明の態様を具体化する関節窩増大構成要素を示す拡大斜視図である。
【図３】この発明の原理と一致する関節窩増大構成要素の一実施の形態を底面右側から見た斜視図である。
【図４】図３の関節窩増大構成要素を底面左側から見た斜視図である。
【図５】図３の関節窩増大構成要素を示す前面図である。
【図６】図３の関節窩増大構成要素を示す後面図である。
【図７】図３の関節窩増大構成要素を示す側面図である。
【図８】この発明の原理と一致する関節窩増大構成要素の他の実施の形態を示す前面図である。
【図９】図８の関節窩増大構成要素を示す底面図である。
【図１０】図８の関節窩増大構成要素を示す側面図である。
【図１１】図８の関節窩増大構成要素を底面右側から見た斜視図である。
【図１２】この発明の原理と一致する関節窩増大構成要素の他の実施の形態を底面右側から見た斜視図である。
【図１３】図１２の関節窩増大構成要素を底面左側から見た斜視図である。
【図１４】図１２の関節窩増大構成要素を示す側面図である。
【図１５】図１２の関節窩増大構成要素を示す底面図である。
【図１６】図１２の関節窩増大構成要素を示す側面図である。
【図１７】この発明の原理と一致する関節窩増大構成要素の他の実施の形態を示す側面図である。
【図１８】この発明の原理と一致する関節窩増大構成要素の他の実施の形態を示す側面図である。
【図１９】図１８の関節窩増大構成要素を示す底面図である。
【図２０】図１８の関節窩増大構成要素を示す側面図である。
【図２１】図１８の関節窩増大構成要素を底面右側から見た斜視図である。
【図２２】この発明の原理と一致し２つの部分を有する関節窩増大構成要素の背面側部材を部分断面視して示す拡大側面図である。
【図２３】図２２の背面側部材を図２２の２３−２３線に沿って矢印方向から見た底面図である。
【図２４】図２２の背面側部材を図２２の２４−２４線に沿って矢印方向から見た上面図である。
【図２５】図２２の背面側部材を図２２の２５−２５線で切断し矢印方向から見た断面図である。
【図２６】この発明の原理と一致する関節窩増大構成要素の他の実施の形態を示す底面図である。
【図２７】この発明の原理と一致する関節窩増大構成要素の他の実施の形態を示す底面図である。
【図２８】この発明の原理と一致する関節窩増大構成要素に固定されるために準備された肩甲骨を示す斜視図である。
【符号の説明】
１０，１０ａ，１０ｂ，１０ｃ，１０ｄ，１０ｅ 関節窩増大構成要素
１２ 関節窩表面
１３ ノッチ
１４ 肩甲骨
１５ 穴
１６ 上腕骨側構成要素
１７ 茎部
１８ 上腕骨
２０ 頭部
２２ 本体
２４ バットレス
２６ 凹面
２８ 上表面
３０ 側表面
３２ 中表面
３４ アンカーペグ
３５ シャフト部
３６ 頭部
３８ 安定化ペグ
３９ 先端
４０ リング
４４ 移植支持面
４６ 表面
５０ 本体
５２ 凹面
５６ 上表面
５８ 側表面
６０ 本体表面
６２ キール
６４ テーパ端部
６６ フィン
７０，１２０，１２０ａ 背面側部材
７２ 背面側挿入部材（支持挿入部材）
７４，１２２ 本体
７６ 凹面
７８ 周辺スロット
８２，１２４ スロット
８４，１２６ リム
８６ 断続部
８８ 側表面
９０ 上表面
９２ 本体表面
９４ 穴
１００，１００ａ，１００ｂ 関節窩増大構成要素
１０２ 背面側部材
１０２ａ，１０２ｂ 本体
１０４ 挿入部材
１０６，１０６ａ，１０６ｂ 前端
１０８，１０８ａ，１０８ｂ 後端
１１０，１１０ａ 中表面
１１２，１１２ａ ペグ
１１４ キール
１２８，１２８ａ バットレス
１２９ 側表面
１３０，１３０ａ 穴
１３２，１３２ａ 中表面
１３４ キール
１３６ アンカーペグ
１３８ 安定化ペグ
１５０ ドリルビット
１５２ アンカー用穴
１５４ ノッチ

Claims (10)

1. 本体と、該本体上に設けられかつ肩甲骨の関節窩表面に接触するように形成された第１表面と、前記本体上に設けられかつ上腕骨の頭部によって接触させられるように形成された第２表面と、前記本体の前記第１表面内に形成されたバットレスとを含み、上腕骨の頭部に対する支持面を与えるように肩甲骨の関節窩表面に固定されるための関節窩増大構成要素であって、
   前記本体は肩甲骨の関節窩表面を貫通するのに適したアンカーをさらに含み、
   前記アンカーは前記バットレスから延在するものである関節窩増大構成要素。
2. 前記バットレスは第１バットレス表面と第２バットレス表面を規定し、かつ前記第１バットレス表面は第１表面とのなす角度が角度θとなるように配置され、前記角度θの範囲は、４５°≦θ≦１３５°である請求項１記載の関節窩増大構成要素。
3. 前記アンカーは前記第２バットレス表面に対して実質的に直角である請求項２記載の関節窩増大構成要素。
4. 前記アンカーは前記第１バットレス表面と実質的に平行である請求項２記載の関節窩増大構成要素。
5. 前記第２バットレス表面は前記第１バットレス表面に対して垂直に配置されている請求項２記載の関節窩増大構成要素。
6. 前記第２バットレス表面は前記本体の前記第１表面と実質的に平行である請求項５記載の関節窩増大構成要素。
7. 肩甲骨の関節窩表面に接触するように形成された中表面および上腕骨の頭部によって接触させられるように形成された上腕骨表面を有する本体と、前記中表面から延在しかつ前記中表面との角度がθとなるように配置された第１断続表面と、前記中表面に平行に配置された第２断続表面とを規定する断続部と、アンカーとを含み、上腕骨の頭部に対する支持面を与えるように肩甲骨の関節窩表面に固定されるための関節窩増大構成要素であって、前記角度θの範囲は、４５°≦θ≦１３５°であり、
   前記アンカーは前記中表面から延在するものである関節窩増大構成要素。
8. 前記アンカーは複数のアンカーペグを含むものである請求項７記載の関節窩増大構成要素。
9. 前記アンカーはキールを含むものである請求項７記載の関節窩増大構成要素。
10. 前記アンカーは前記断続部および前記中表面の双方に跨るものである請求項７記載の関節窩増大構成要素。

Images