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JP4277264B2 - 高温強度特性に優れた工具部材およびその製造方法 - Google Patents

高温強度特性に優れた工具部材およびその製造方法 Download PDF

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本発明は、プレス金型、ダイカスト金型、押出し工具、切削工具、パンチおよびダイスといった多種の工具部材に最適な、高温強度を改善させた工具部材およびその製造方法に関するものである。
従来、温熱間工具や切削工具等の分野には、JIS鋼種であるSKD61系の合金工具鋼やSKH2系の高速度鋼が用いられていた。通常、このような工具部材は、その工具鋼素材を焼きなまし(低硬度)状態で製品形状に機械加工し、その後に焼入れ焼戻しして硬さ調整が行なわれ、仕上げ加工を経て製品工具にされる。(プリハードン鋼の場合は焼入れ焼戻し状態で製品形状に機械加工・仕上げ加工を経て製品工具にされる。)
そして、このような部材において、例えば高速度鋼の機械的性質を改善する手法が提案されている(特許文献1参照)。この提案は炭化物径および結晶粒径を微細化して室温強度を上昇させるという点で優れたものである。
特開2002−105513号公報
上述した特許文献1に開示される手法は、室温強度を上昇させる点では有利であるものの、高温強度の点では、強度を担う炭化物が高温で成長し強度を維持できなくなることが懸念される。工具を用いて製造する製品のコストを低減するためには、使用する工具の長寿命化を達成し、高負荷化に耐える工具部材を開発する必要があり、その上で上記の高温強度の向上は大きな課題となる。
本発明の目的は、従来の技術に対し、強度を担う炭化物が高温で成長し強度を維持できなくなるという問題を解決して、さらに結晶粒を微細化して強度(高温強度含む)を向上させた工具部材およびその製造方法を提供することである。
本発明者は、強度を担う粒子として主に導入されていた炭化物が、高温で成長し強度を維持できなくなるという問題を検討し、高温でも安定であまり成長しない酸化物を微細に分散させることを採用した。そして、最適組成および製造方法を鋭意研究することによって、炭化物量を減少させても強度(高温強度含む)および靭性を大きく改善できることを見いだし本発明に到達した。
すなわち、本発明は、焼入れ焼戻しされた工具部材であって、質量%でC:0.1〜3.0%、Cr:1.0〜18.0%を含むJISにより工具鋼に分類される組成に、Y からなる酸化物が0.3〜5.0体積%混合された組成よりなり、組織中には、最大径が15nm以下で1μm あたり20000個以上の酸化物が分散し、かつ旧オーステナイト粒界による結晶粒径が最大0.5μmである高温強度特性に優れた工具部材である。
そして、本発明の高温強度特性に優れた工具部材の製造方法は、質量%でC:0.1〜3.0%、Cr:1.0〜18.0%を含むJISにより工具鋼に分類される組成に、Y からなる酸化物が0.3〜5.0体積%になるように混合された工具鋼粉末と酸化物粉末の混合粉末をメカニカルミリングした後、固化成形し、焼入れ焼戻しして、最大径が15nm以下で1μm あたり20000個以上の酸化物が分散し、かつ旧オーステナイト粒界による結晶粒径が最大0.5μmである組織を得るものである。また、必要に応じて本発明の工具部材の製造方法は、焼入れ焼戻しの前に、機械加工することができ、所定の形状の工具部材に加工するものである。
本発明によれば、工具部材の結晶粒を非常に微細化でき、かつ高温強度特性を飛躍的に改善することができる。よって、製品コスト低減のために、使用する工具の長寿命化・高負荷化に耐える工具部材の実用化にとって欠くことのできない技術となる。
上述したように、本発明の重要な特徴は、工具部材の強度、とりわけ高温強度の向上手段として、その組織中に酸化物を微細に分散させる手法を採用したことにある。
最初に本発明の根幹をなす酸化物を微細に分散させる理由について説明する。酸化物を微細に分散させることによって、母材の結晶粒成長を効果的に抑制することができる。結晶粒を微細に維持することで、結晶粒微細化強化を利用することができ、従来材で強度を担っていた炭化物による析出強化を代替することができる。析出強化を利用して強度を上昇させると靭性が劣化する傾向にあるのに対して、本発明の結晶粒微細化強化では靭性をあまり損なわないかまたは改善できる作用があるため、工具部材の靭性改善にとっては有効である。
さらに、イットリウム系(Y)やチタン系(TiO)、アルミ系(Al)といった酸化物は、通常、工具部材中に形成される炭化物に比べて、その高温での熱処理中や使用中でもあまり成長しないことから、従来材では炭化物の成長が起こって析出強化量が著しく減少するような高温域でも、結晶粒微細化強化を利用でき、飛躍的に高温強度を高めることができる。
よって、上述の効果を有効に利用するためには、組織中に分散させる酸化物の大きさおよび個数密度を同時に調整することが重要となる。本願発明の工具部材の場合、その酸化物の分散状態は粒径25nm以下の酸化物を1μmあたり750個以上分散させるものであり、好ましくは酸化物自体の最大径が25nm以下となるようにする。特に好ましくは、酸化物の最大径が15nm以下で1μm中に20000個以上となるようにする。
なお、酸化物の分散状態の評価は、透過型電子顕微鏡を用いた薄膜観察の結果から行なえば良い。該手段によって組織中に酸化物が分散していることが確認でき、例えば40万倍の暗視野像(図1)および元素分布マッピングを行ないFeの透過電子線のみで結像したエレメントイメージ(図2)をそれぞれ1視野用いることで、酸化物の大きさ(最大径)および個数密度を得ることができる。Feのエレメントイメージを用いることで酸化物の個数を精度良く観察できる。
すなわち、暗視野像中の酸化物の最長方向の長さを計り、ASTMの切断法から公称粒径を求めてそれを粒径とすれば良く、最も大きな酸化物の最長方向の長さについてその公称粒径を最大径とすれば良い。また、Feのエレメントイメージ中の直径2mm以上に写っている酸化物の個数を数えて、それを観察体積(観察面積×薄膜試料厚さ)で割って酸化物の個数密度とすれば良い。なお、図1,2の電子像は、後の(実施例1)で評価した供試材Aの、500℃で焼戻したときのものである。
以下に、本発明の効果を最大限に活用するのに好ましい、工具部材の成分や結晶粒径を限定した理由について詳細に説明する。
CやCrは焼入れ性を高める元素であり、本発明の根幹をなす焼入れ焼戻しされた工具部材を製造する上で非常に重要である。このような焼入れ性を高める元素は、本発明の工具部材として成立させるために、必ず十分な焼入れ性が確保できるように成分調整される必要がある。
・C:0.1〜3.0質量%
Cは、一部が基地中に固溶して強度を付与し、一部は炭化物を形成することで耐摩耗性や耐焼付き性を高める重要な元素であることから、本発明の対象を温熱間工具や切削工具といった工具部材とする場合には、特に本発明の有用性を向上させる。また、固溶した侵入型原子であるCは、CrなどのCと親和性の大きい置換型原子と共添加した場合、I(侵入型原子)−S(置換型原子)効果;溶質原子の引きずり抵抗として作用し高強度化する作用も期待される。ただし、含有量が0.1質量%未満では工具部材として十分な硬さ、耐摩耗性を確保できなくなる。他方、過度の添加は靭性や熱間強度の低下を招くため上限を3.0質量%とする。
・Cr:1.0〜18.0質量%
Crは焼入れ性を高めて、また、炭化物を形成して基地の強化や耐摩耗性を向上させる効果を有することから、本発明の対象を温熱間工具や切削工具といった工具部材とする場合には、特に本発明の有用性を向上させる元素であり、少なくとも1.0質量%添加する必要がある。ただし、過度の添加は焼入れ性や熱間強度の低下を招くため、上限を18.0質量%とする。
・旧オーステナイト粒界による結晶粒径が最大10μm以下
焼入れ焼戻しされて使用される工具部材にとって、本発明の酸化物の導入による結晶粒微細化効果は、その焼入れ焼戻し後の“旧オーステナイト粒界による結晶粒径”に反映されている。通常の工具部材の場合、その旧オーステナイト粒界による結晶粒径は小さくても20μm程度であるが、結晶粒微細化による強化量が大きくなるのは平均結晶粒径10μm以下の領域である。結晶粒微細化強化を利用して強化を図るため、本発明にかかる工具部材の結晶粒径は最大10μm以下とする。好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下とする。
なお、本発明の旧オーステナイト粒界による結晶粒径の評価は、透過型電子顕微鏡を用いた薄膜観察の結果(例えば4万倍の暗視野像を4視野)から行なえばよい。すなわち、暗視野像中のもっとも大きな結晶粒の最長方向の長さを計り、ASTMの切断法から公称粒径を求めて、それを最大粒径とすればよい。図3に示す暗視野像は、後の(実施例1)で評価した供試材Aの、500℃で焼戻したときのものである。
また、本発明の工具部材の成分組成は、質量%でC:0.1〜3.0%、Cr:1.0〜18.0%を含む以外には、例えば必要に応じてMo,W,V,Ni,Coなどを添加することができ、JISに記載されるような工具鋼組成の適用が可能である。
次に、本発明の工具部材の製造方法について述べる。
本発明の微細な結晶粒組織を有した工具部材の達成には、例えばメカニカルミリング法で作製した粉末を固化成形する手法が適用でき、これは最終的には焼入れ焼戻しされることで結晶粒の成長が起こり得る工具部材の製造方法に好ましい手法である。すなわち、質量%でC:0.1〜3.0%、Cr:1.0〜18.0%を含むJISにより工具鋼に分類される組成にY からなる酸化物が0.3〜5.0体積%になるように混合された工具鋼粉末と酸化物粉末の混合粉末をメカニカルミリングした後、固化成形し、焼入れ焼戻しして、最大径が15nm以下で1μm あたり20000個以上の酸化物が分散し、かつ旧オーステナイト粒界による結晶粒径が最大0.5μmである組織を得る工具部材の製造方法であり、必要に応じてその焼入れ焼戻しの前に機械加工することで、所定の形状の工具部材とすることができる。
従来、アトライタやボールミル等の装置によるメカニカルミリング法は、そのミリングに供される原料粉末の結晶粒径を微細にできる手段として使用されており、工具鋼の分野でも提案されている(特許文献1参照)。本発明も、このメカニカルミリング法による処理後粉末を固化成形するものであるが、ここで本発明の場合、メカニカルミリング前の原料粉末としてさらに酸化物粉末を混ぜた混合粉末とし、原子レベルまで機械的に混合することで、高温でも安定した酸化物粒子による結晶粒微細化強化と分散強化を達成できる。
・酸化物:0.3〜5.0体積%
酸化物は高温でも熱的に安定なため、工具部材の熱処理時や高温での使用時の結晶粒成長を効果的に抑制する上で重要な物質であり、微細粒組織を維持するために最低0.3体積%は必要である。しかし酸化物の量が多すぎると固化成形時の成形性が悪くなることに加えて、工具部材の靭性劣化を招くため、上限を5.0体積%とする。
次に、メカニカルミリング法によって処理された粉末は固化成形するが、粉末を固化成形し、後工程では焼入れ焼戻しする際の熱処理によって、結晶粒は成長する。つまり、本発明によって作製される工具部材の結晶粒径を微細にするためには、その原料となるメカニカルミリング法で作製した粉末の結晶粒径は微細であることが望ましい。そのため、メカニカルミリング法による粉末の結晶粒の超微細化は好ましくは平均で100nm以下、さらに好ましくは50nm以下である。
なお、固化成形手段には例えば焼結やHIP、温熱間圧延、温熱間押出し等の高温固化が適用でき、HIPや温熱間圧延、温熱間押出しが完全に緻密な材料を得易い点で好ましい。そして、その固化成形された素材については、後は必要であれば通常の鍛造・圧延工程、焼きなまし状態での機械加工を適用し、焼入れ焼戻しして工具部材に仕上げる。
また、本発明の工具部材が焼入れ焼戻しのできる素材であることは、高温強度特性に優れた工具部材を製造する上でも非常に重要である。すなわち、高合金系の工具部材や、大きな工具にも十分に対応できるだけの、体積寸法が大きい工具部材を効率的に製造するためには、上記の固化成形時の温度が高いほど良い。しかし、900℃を超えるような高温域では、鉄系の材料ではほとんどの成分系で相変態が起こり、結晶粒が成長してしまう。しかも、昇温時と降温時の二回の相変態が起こることによって、極端に大きな結晶粒サイズになってしまう。この点、焼入れできる素材の場合、結晶粒成長が起こる相変態は昇温時の一回のみとなり、降温時に結晶粒成長は起こらないことから微細な結晶粒サイズを維持でき、結晶粒微細化強化を利用できる。
表1に示した供試材Aは、ガスアトマイズ法で作製した合金粉末と市販のY酸化物粉末の混合粉末を遊星型ボールミル装置を用いて回転数2300rpmで100時間のメカニカルミリング処理によって作製した粉末である。組成はSKD61に相当し、これにY酸化物が全体積の3%になるよう添加されている。
メカニカルミリングの条件は、その処理後粉末の平均結晶粒径が100nm以下になるよう装置因子を調整しており、透過型電子顕微鏡を用いた観察(10万倍の暗視野像を1視野)およびX線回折法による半価幅を利用して算出した供試材Aの処理後粉末の平均結晶粒径は約30nmであった。
つぎに、供試材Aの上記処理後粉末を金属製の容器に入れて1000℃で圧延することで固化成形したのち、比較材として表1に別に準備したSKD61溶製材と共に、SKD61の標準的な焼入れ焼戻し温度である1020℃での焼入れ処理と、500℃および550℃での焼戻しを行った。そして、その焼入れ焼戻し後の旧オーステナイト粒径の最大結晶粒径、粒径25nm以下の酸化物については、その最大径および単位体積当たりの個数、そして焼入れ状態および焼戻し後の硬さを測定した。結晶粒径の評価は透過型電子顕微鏡を用いた薄膜観察の結果(4万倍を4視野)から行った。酸化物の評価は透過型電子顕微鏡を用いた薄膜観察の結果(最大径:40万倍の暗視野像を1視野、単位体積あたりの個数:40万倍のFeのエレメントイメージを1視野)から行った。硬度測定はマイクロビッカース硬度計を用いて測定した。結果を表2に示す。
供試材Aの焼戻し組織は、焼戻し温度に関わらず、およそ0.1〜0.5μmのサイズの旧オーステナイト結晶粒からなっており、その測定による最大の結晶粒径は0.5μmであった。一方、溶製法で作製したSKD61の焼戻し組織も焼戻し温度に関わらず、旧オーステナイト粒径は平均で22μmであり、その一般的な粒径である約20μmと比べて、本発明の結晶粒径は極めて微細である。また、供試材Aの500℃焼戻し材の酸化物の最大径は9.4nmで1μm当り123577個存在し、供試材Aの550℃焼戻し材の酸化物の最大径は9.8nmで1μm当り118904個存在した。なお、両供試材の組織中に粒径25nmを越える酸化物は確認されなかった。
一方、溶製法で作製したSKD61の焼戻し材の組織中には1μmを越える大きな酸化物(アルミナ系など)が極わずかに存在したが、粒径25nm以下の酸化物は今回の手法では観察されなかった。
そして、本発明材は、結晶粒微細化に起因して焼入れ硬さが非常に高く、さらに温熱間工具がよく使用される温度域でもある500℃および550℃で焼戻しても硬さはほぼ維持されており、高硬度かつ高温強度に優れている。これに対して、比較材は焼戻し後に硬さがかなり低下していることがわかる。本発明材の場合、その焼入れ時の組織も調べたところ、およそ0.1〜0.5μmのサイズの結晶粒(大角粒)であった。酸化物が非常に微細かつ多数存在することによって、高温での固化成形および焼入れ過程での結晶粒の成長抑制に加えて、焼戻し過程(使用過程)での結晶粒の成長も抑制できていた。
表3に示した供試材Bは、ガスアトマイズ法で作製した合金粉末と市販のY酸化物粉末の混合粉末を遊星型ボールミル装置を用いて回転数2300rpmで100時間のメカニカルミリング処理によって作製した粉末である。組成は一次炭化物をほとんど含まない高速度鋼(以下マトリクス高速度鋼と記す)に相当し、これにY酸化物が全体積の3%になるよう添加されている。メカニカルミリングの条件設定は(実施例1)に従うものであり、透過型電子顕微鏡を用いた観察(10万倍の暗視野像を1視野)およびX線回折法による半価幅を利用して算出した供試材Bの処理後粉末の平均結晶粒径は約20nmであった。
つぎに、供試材Bの上記処理後粉末を、金属製の容器に入れて1000℃で圧延することで固化成形したのち、比較材として表3に別に準備したマトリクス高速度鋼の溶製材と共に、該マトリクス高速度鋼の標準的な焼入れ焼戻し温度である1140℃での焼入れ処理と、500℃および550℃での焼戻しを行った。そして、(実施例1)に同様にその焼入れ焼戻し後の旧オーステナイト粒径の最大の結晶粒径、粒径25nm以下の酸化物については、その最大径および単位体積当たりの個数と、焼入れ状態および焼戻し後の硬さを測定した。結果を表4に示す。
供試材Bの焼戻し組織は、焼戻し温度に関わらず、およそ0.1〜0.4μmのサイズの旧オーステナイト結晶粒からなっており、その測定による最大の結晶粒径は0.4μmであった。一方、溶製法で作製したマトリクス高速度鋼の焼戻し組織も焼戻し温度に関わらず、旧オーステナイト粒径は平均で22μmであり、その一般的な粒径である約20μmと比べて、本発明の結晶粒径は極めて微細である。また、供試材Bの500℃焼戻し材の酸化物の最大径は10.2nmで1μm当り109971個存在し、供試材Bの550℃焼戻し材の酸化物の最大径は9.5nmで1μm当り114357個存在した。なお、両供試材の組織中に粒径25nmを越える酸化物は確認されなかった。
一方、溶製法で作製したマトリクス高速度鋼の焼戻し材の組織中には1μmを越える大きな酸化物(アルミナ系など)が極わずかに存在したが、粒径25nm以下の酸化物は今回の手法では観察されなかった。
そして、本発明材は、結晶粒微細化に起因して焼入れ硬さが非常に高く、さらに温熱間工具がよく使用される温度域でもある500℃および550℃の焼戻し後にはむしろやや上昇している。これに対して、比較材は焼戻し後に硬さがかなり低下していることがわかる。なお、供試材Bの場合も、その焼入れ時の組織はおよそ0.1〜0.4μmのサイズの結晶粒(大角粒)からなっていた。
本発明によって、工具部材の結晶粒を非常に微細化し、かつ高温強度特性を飛躍的に改善することによって、従来材よりも非常に長寿命になるだけでなく、従来材では耐えられないような高負荷環境にも適用できる。
本発明の工具部材の組織を示す、透過型電子顕微鏡写真(暗視野像)である。 本発明の工具部材の組織を示す、透過型電子顕微鏡写真(Feのエレメントイメージ)である。 本発明の工具部材の組織を示す、透過型電子顕微鏡写真(暗視野像)である。

Claims (2)

  1. 焼入れ焼戻しされた工具部材であって、質量%でC:0.1〜3.0%、Cr:1.0〜18.0%を含むJISにより工具鋼に分類される組成に、Y からなる酸化物が0.3〜5.0体積%混合された組成よりなり、組織中には、最大径が15nm以下で1μm あたり20000個以上の酸化物が分散し、かつ旧オーステナイト粒界による結晶粒径が最大0.5μmであることを特徴とする高温強度特性に優れた工具部材。
  2. 質量%でC:0.1〜3.0%、Cr:1.0〜18.0%を含むJISにより工具鋼に分類される組成にY からなる酸化物が0.3〜5.0体積%になるように混合された工具鋼粉末と酸化物粉末の混合粉末をメカニカルミリングした後、固化成形し、焼入れ焼戻しして、最大径が15nm以下で1μm あたり20000個以上の酸化物が分散し、かつ旧オーステナイト粒界による結晶粒径が最大0.5μmである組織を得ることを特徴とする高温強度特性に優れた工具部材の製造方法。
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