JP4275228B2 - ポリカーボネートを製造する方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリカーボネートに関し、さらに詳しくは、残留モノマーやオリゴマー等の不純物含量が少なく、衝撃強度等の物性に優れたポリカーボネート及び光学材料やブロー成形材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネートは優れたエンジニアリングプラスチックとして各方面において広く用いられているが、その製造法として、ビスフェノールAなどの芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンとを直接反応させる方法(界面法)、あるいはビスフェノールAなどの芳香族ジヒドロキシ化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸ジエステルとを溶融状態あるいは固相状態でエステル交換反応(溶融法・固相法)させる方法が知られている。
【0003】
界面法は有毒なホスゲンを用いなければならないこと、副生する塩化水素や塩化ナトリウムなどの含塩素化合物により装置が腐食すること、樹脂中に混入する塩化メチレンの除去が非常に難しく得られるポリカーボネート中に塩素が含有されやすいこと等の問題がある。
一方、溶融法は、界面法におけるこれらの問題点を解消しているものの、生成ポリマー中に残留モノマーや低分子量成分を多く含有し、そのため衝撃強度の低下や金型への付着を引き起こすといった問題があった。
【0004】
これらの問題を解決するため、溶融法において押出機に低沸点化合物を添加する方法(特開平09−5936号公報)等が提案されているが、未だ十分とはいえない。また、固相法においては、これらについての提案及び報告は成されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来のエステル交換反応により製造されるポリカーボネートが有する問題を解消し、耐衝撃性等の品質に優れたポリカーボネートの製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、エステル交換法において、反応方法又は反応条件を適宜選択することにより、残留モノマーや低分子量成分が著しく低減され、優れた品質を有するポリカーボネートが得られることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、以下のポリカーボネートを製造する方法を提供するものである。
[1] (A)芳香族ジヒドロキシ化合物と(B)炭酸ジエステルを、温度50〜350℃、圧力0.1Torr〜5kg/cm2G下、不活性ガスまたは低級炭化水素ガスを導入して、1分〜100時間、予備重合させてポリカーボネートプレポリマーを調製した後、
(a)該プレポリマーを結晶化後、式(XVI)
Tm’−50≦Tp<Tm’・・・・(XVI)
(ここで、Tpは反応温度、Tm’は結晶化プレポリマーの溶融温度である。)
の温度下、1分〜100時間、不活性ガス、炭化水素ガス、または貧溶媒蒸気を導入して固相状態でのエステル交換反応によって、
(b) 該プレポリマーを結晶化後、フレーク化して、温度100〜240℃、圧力10Torr〜5kg/cm2G 下に、膨潤溶媒ガスを導入して膨潤固相状態でのエステル交換反応によって、または、
(c) 該プレポリマーを溶融後、薄膜化し、50〜320℃、0.1Torr〜5kg/cm2G 下、1分〜100時間、薄膜溶融状態でのエステル交換反応によって、
重合させて、生成ポリカーボネート中のジヒドロキシ化合物含量、炭酸ジエステル含量及びモノヒドロキシ化合物含量の合計が100ppm未満となるようにポリカーボネートを製造する方法。
[2] さらに、(C)一価ヒドロキシ化合物または以上の官能基を有する多官能性有機化合物を配合して予備重合する上記[1]に記載のポリカーボネートを製造する方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明にかかるポリカーボネートは、原料である(A)成分のジヒドロキシ化合物及び(B)成分の炭酸ジエステル、また必要に応じ、(C)成分の末端停止剤あるいは分岐剤等とを溶融状態あるいは固相状態でエステル交換反応させることにより得られたもの、特には、(A)成分のジヒドロキシ化合物及び(B)成分の炭酸ジエステルもしくはホスゲン、また必要に応じ、(C)成分の末端停止剤あるいは分岐剤等を用いて予備重合によりポリカーボネートプレポリマーを調製した後、該プレポリマーを固相状態、膨潤固相状態又は薄膜溶融状態でエステル交換反応させることにより重合させて得られたポリカーボネートである。ポリカーボネートプレポリマーの調製時及び重合反応においては触媒が用いられる。1.本発明にかかるポリカーボネートの特徴
【0009】
(1)予備重合によりポリカーボネートプレポリマーを調製した後、該プレポリマーを固相状態、膨潤固相状態又は薄膜溶融状態でエステル交換反応によって重合させて得られたポリカーボネートであって、生成ポリカーボネート中のジヒドロキシ化合物含量,炭酸ジエステル含量及びモノヒドロキシ化合物含量の合計が100ppm未満である。
生成ポリマー中のジヒドロキシ化合物含量,炭酸ジエステル含量及びモノヒドロキシ化合物含量の測定については、以下の高速液体クロマトグラフィでの測定によるものである。即ち、ポリカーボネート2グラムをジクロロメタン50ミリリットルに溶かし、これにアセトン250ミリリットルを少しずつ加え、ポリマーを析出させる。これを吸引ろ過した後、ろ液にアセトニトリル50ミリリットルを加え、約10ミリリットルになるまで濃縮し、この濃縮液を50ミリリットルメスフラスコに入れ、アセトニトリル/水=1/1で定容する。これをクロマトディスク13Pを用いてろ過し、高速液体クロマトグラフィにより測定する。測定条件は次のとおりである。即ち、カラム(東ソー社製 TSKgel ODS−80Ts)を用い、移動相として、アセトニトリル水溶液(A液)(アセトニトリル:水=3:7(容量)とアセトニトリル水溶液(B液)を、A液とB液の比率を100:0(容量)から0:100に35分間かけて変えながら、流速1.0ミリリットル/分、注入量20マイクロリットルとし、検出は217nmの波長を用いて行なった。
【0010】
(2)ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応によって得られたポリカーボネートであって、特に予備重合によりポリカーボネートプレポリマーを調製した後、該プレポリマーを固相状態、膨潤固相状態又は薄膜溶融状態でエステル交換反応によって重合させて得られたポリカーボネートについては、生成ポリカーボネート中のアセトン可溶分含量が前二つの固相反応では3.5重量%以下、後の液相反応では3.0重量%以下、好ましくは2.0重量%以下である。ここで、アセトン可溶分含量の測定については、以下の方法によるものである。即ち、試料であるポリカーボネートフレークで100メッシュの金網を通過したもの3グラムを円筒ろ紙No.84(28mm×100mm)に採取し、これを100ミリリットルのアセトンを用いて3〜4分に1回(20ミリリットル/回)の還流量で8時間還流させて抽出した。その後、100ミリリットルのアセトンを蒸発させ、110℃で一晩真空乾燥した後の残渣物を秤量し、これをアセトン可溶分とした。
【0011】
(3)予備重合によりポリカーボネートプレポリマーを調製した後、該プレポリマーを固相状態、膨潤固相状態又は薄膜溶融状態でエステル交換反応によって重合させることにより得られたポリカーボネートであって、生成ポリカーボネート中の環状オリゴマー含有量が0.45重量%以下であるポリカーボネートである。
ここで、生成ポリカーボネート中の環状オリゴマー含有量の測定については、以下の方法によるものである。即ち、ポリカーボネート試料2gをジクロロメタン50ミリリットルに溶解し、これにアセトン250ミリリットルを少しづつ加えポリマーを析出させる。これを吸引濾過した後、乾燥させる。これを50ミリリットルのジエチルエーテルに溶解した後、常圧濾過し、乾燥する、これをクロロホルムで20ミリリットルに定容する。これをクロマトディスク13Pを用いて濾過し、高速液体クロマトグラフで測定する。
【0012】
(4)予備重合によりポリカーボネートプレポリマーを調製した後、該プレポリマーを固相状態、膨潤固相状態又は薄膜溶融状態でエステル交換反応によって重合させることにより得られたポリカーボネートであって、生成ポリカーボネート中の水酸基末端分率が前二つの固相反応では2モル%未満、後の液相反応では15モル%未満である。
ここで、生成ポリカーボネート中の水酸基末端分率の測定については、以下の方法によるものである。即ち、溶媒としてCD2 Cl2 を用い、 1H−NMR(400MHz,積算回数128回)を測定し、得られるチャートよりHa及びHeを求め、下式により算出した。
OH末端分率=(Ha/2)/(Ha/2 + He/2)
(式中、Haは末端フェニル基におけるベンゼン環のOH基に対しオルト位にある2個の水素に由来するピークの積算比を示し、Heは末端フェニルカーボネート基におけるベンゼン環のCOOに対しメタ位にある2個の水素に由来するピークの積算比を示す。)
【0013】
(5)(A)芳香族ジヒドロキシ化合物、(B)炭酸ジエステル及び(C)一価ヒドロキシ化合物を加熱して予備重合することによりポリカーボネートプレポリマーを調製した後、該プレポリマーを固相状態又は膨潤固相状態でエステル交換反応によって重合させることにより得られたポリカーボネートであって、生成ポリカーボネート中の一価ヒドロキシ化合物に由来する末端分率が50モル%以上であるポリカーボネートである。
ここで、生成ポリカーボネートの末端構造の解析には、溶媒としてCD2 Cl2 を用い、13C−NMR(125.65MHZ、積算回数24回)を測定し、算出した。
【0014】
(6)(A)芳香族ジヒドロキシ化合物、(B)炭酸ジエステル及び(C)一価ヒドロキシ化合物を加熱して予備重合することによりポリカーボネートプレポリマーを調製した後、該プレポリマーを固相状態又は膨潤固相状態でエステル交換反応によって重合させることにより得られたポリカーボネートであって、生成ポリカーボネート中の水酸基末端分率が15モル%未満であるポリカーボネートである。
ここで、生成ポリカーボネート中の水酸基末端分率の測定については、上記(4)と同じである。
【0015】
(7)(A)芳香族ジヒドロキシ化合物、(B)炭酸ジエステル及び(C)三個以上の官能基を有する多官能性有機化合物を加熱して予備重合することによりポリカーボネートプレポリマーを調製した後、該プレポリマーを固相状態又は膨潤固相状態でエステル交換反応によって重合させることにより得られたポリカーボネートであって、生成ポリカーボネート中の水酸基末端分率が15モル%未満であるポリカーボネートである。
ここで、生成ポリカーボネート中の水酸基末端分率の測定については、上記(4)と同じである。
2.本発明にかかるポリカーボネートの製造方法
(1)原料
【0016】
(A)ジヒドロキシ化合物
例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物,脂肪族ジヒドロキシ化合物が挙げられ、これらから選択される少なくとも一種の化合物である。
【0017】
この(A)成分の一つとして用いられる芳香族ジヒドロキシ化合物は、一般式(I)
【0018】
【化1】
【0019】
で表される化合物を挙げることができる。上記一般式(I)において、R3 及びR4 は、それぞれフッ素,塩素,臭素,ヨウ素のハロゲン原子又は炭素数1〜8のアルキル基、例えばメチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,イソブチル基,sec−ブチル基,t−ブチル基,ペンチル基,ヘキシル基,シクロヘキシル基,ヘブチル基,オクチル基などを示す。R3 及びR4 はたがいに同一であっても異なっていてもよい。またR3 が複数ある場合は複数のR3 は同一でも異なっていてもよく、R4 が複数ある場合は複数のR4 は同一でも異なっていてもよい。m及びnは、それぞれ0〜4の整数である。そして、Zは単結合,炭素数1〜8のアルキレン基,炭素数2〜8のアルキリデン基,炭素数5〜15のシクロアルキレン基,炭素数5〜15のシクロアルキリデン基,又は−S−,−SO−,−SO2 −,−O−,−CO−結合若しくは式(II) ,(II')
【0020】
【化2】
【0021】
で示される結合を示す。炭素数1〜8のアルキレン基,炭素数2〜8のアルキリデン基としては、例えばメチレン基,エチレン基,プロピレン基,ブチレン基,ペンチレン基,ヘキシレン基,エチリデン基,イソプロピリデン基などが挙げられ、炭素数5〜15のシクロアルキレン基,炭素数5〜15のシクロアルキリデン基としては、例えばシクロペンチレン基,シクロヘキシレン基,シクロペンチリデン基,シクロヘキシリデン基などが挙げられる。
【0022】
上記一般式(I)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えばビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン;ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン;ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン;ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)メタン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン;1,1−ビス(2−t−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン;1,1−ビス(2−t−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン;1−フェニル−1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA);2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン;1,1−ビス(2−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロパン;2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2−ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン;2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシ−5−クロロフェニル)プロパン;2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン;2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン;1,1−ビス(2−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン;1,1−ビス(2−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン;1,1−ビス(2−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)イソブタン;1,1−ビス(2−t−アミル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン;2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン;2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン;4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン;1,1−ビス(2−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ヘプタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン;1,1−(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどのビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサンなどのビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル;ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エーテルなどのビス(ヒドロキシアリール)エーテル類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド;ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィドなどのビス(ヒドロキシアリール)スルフィド類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド;ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド;ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)スルホキシドなどのビス(ヒドロキシアリール)スルホキシド類;ビス(4ヒドロキシフェニル)スルホン;ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン;ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)スルホンなどのビス(ヒドロキシアリール)スルホン類、4,4’−ジヒドロキシビフェニル;4,4’−ジヒドロキシ−2、2’−ジメチルビフェニル;4,4’−ジヒドロキシ−3、3’−ジメチルビフェニル;4,4’−ジヒドロキシ−3、3’−ジシクロヘキシルビフェニル;3、3’−ジフルオロ−4,4’−ジヒドロキシビフェニルなどのジヒドロキシビフェニル類などが挙げられる。
【0023】
上記一般式(I)以外の芳香族ジヒドロキシ化合物としては、ジヒドロキシベンゼン類、ハロゲン及びアルキル置換ジヒドロキシベンゼン類などがある。例えば、レゾルシン,3−メチルレゾルシン,3−エチルレゾルシン,3−プロピルレゾルシン,3−ブチルレゾルシン,3−t−ブチルレゾルシン,3−フェニルレゾルシン,3−クミルレゾルシン;2,3,4,6−テトラフルオロレゾルシン;2,3,4,6−テトラブロモレゾルシン;カテコール,ハイドロキノン,3−メチルハイドロキノン,3−エチルハイドロキノン,3−プロピルハイドロキノン,3−ブチルハイドロキノン,3−t−ブチルハイドロキノン,3−フェニルハイドロキノン,3−クミルハイドロキノン;2,5−ジクロロハイドロキノン;2,3,5,6−テトラメチルハイドロキノン;2,3,4,6−テトラ−t−ブチルハイドロキノン;2,3,5,6−テトラフルオロハイドロキノン;2,3,5,6−テトラブロモハイドロキノンなどが挙げられる。
【0024】
また、(A)成分の一つとして用いられる脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、各種のものがある。例えば、ブタン−1,4−ジオール;2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール;ヘキサン−1,6−ジオール;ジエチレングリコール;トリエチレングリコール;テトラエチレングリコール;オクタエチレングリコール;ジプロピレングリコ−ル;N,N−メチルジエタノールアミン;シクロヘキサン−1,3−ジオール;シクロヘキサン−1,4−ジオール;1,4−ジメチロールシクロヘキサン;p−キシリレングリコール;2,2−ビス−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン及び二価アルコール又はフェノールのエトキシ化またはプロポキシ化生成物、例えばビス−オキシエチル−ビスフェノールA;ビス−オキシエチル−テトラクロロビスフェノールA又はビス−オキシエチル−テトラクロロヒドロキノンなどが挙げられる。
【0025】
本発明の好ましい製造方法において、(A)成分のジヒドロキシ化合物としては、上記の化合物一種又は二種以上を適宜選択して用いるが、これらの中では、芳香族ジヒドロキシ化合物であるビスフェノールAを用いるのが好ましい。
さらに、ジヒドロキシ化合物のジエステル類、ジヒドロキシ化合物のジ炭酸エステル類、ジヒドロキシ化合物のモノ炭酸エステル類等も用いることができる。
【0026】
すなわち、ジヒドロキシ化合物のジエステル類としては、例えば、ビスフェノールAのジ酢酸エステル,ビスフェノールAのジプロピオン酸エステル,ビスフェノールAのジブチル酸エステル,ビスフェノールAのジ安息香酸エステルなどを挙げることができる。
また、ジヒドロキシ化合物のジ炭酸エステル類としては、例えば、ビスフェノールAのビスメチル炭酸エステル,ビスフェノールAのビスエチル炭酸エステル,ビスフェノールAのビスフェニル炭酸エステルなどを挙げることができる。
【0027】
そして、ジヒドロキシ化合物のモノ炭酸エステル類としては、例えば、ビスフェノールAモノメチル炭酸エステル,ビスフェノールAモノエチル炭酸エステル,ビスフェノールAモノプロピル炭酸エステル,ビスフェノールAモノフェニル炭酸エステルなどを挙げることができる。
(B)成分
【0028】
▲1▼炭酸ジエステル
各種のものが用いられる。例えば、炭酸ジアリール化合物,炭酸ジアルキル化合物又は炭酸アルキルアリール化合物から選択される少なくとも一種の化合物である。
【0029】
この(B)成分の一つとして用いられる炭酸ジアリール化合物は、一般式(III)
【0030】
【化3】
【0031】
(式中、Ar1 及びAr2 はそれぞれアリール基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよい。)
で表される化合物、又は一般式(IV)
【0032】
【化4】
【0033】
(式中、Ar3 及びAr4 はそれぞれアリール基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよく、D1 は前記芳香族ジヒドロキシ化合物から水酸基2個を除いた残基を示す。)
で表される化合物である。
また、炭酸ジアルキル化合物は、一般式(V)
【0034】
【化5】
【0035】
(式中、R5 及びR6 はそれぞれ炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数4〜7シクロアルキル基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよい。)
で表される化合物、又は一般式(VI)
【0036】
【化6】
【0037】
(式中、R7 及びR8 はそれぞれ炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数4〜7のシクロアルキル基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよく、D2 は前記芳香族ジヒドロキシ化合物から水酸基2個を除いた残基を示す。)
で表される化合物である。
そして、炭酸アルキルアリール化合物は、一般式(VII)
【0038】
【化7】
【0039】
(式中、Ar5 はアリール基、R9 は炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数47のシクロアルキル基を示す。)
で表される化合物、又は一般式(VIII)
【0040】
【化8】
【0041】
(式中、Ar6 はアリール基,R10 は炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数4〜7のシクロアルキル基、D3 は前記芳香族ジヒドロキシ化合物から水酸基2個を除いた残基を示す。)
で表される化合物である。
ここで、炭酸ジアリール化合物としては、例えば、ジフェニルカーボネート,ジトリルカーボネート,ビス(クロロフェニル)カーボネート,m−クレジルカーボネート,ジナフチルカーボネート,ビス(ジフェニル)カーボネート,ビスフェノールAビスフェニルカーボネートなどが挙げられる。
【0042】
また、炭酸ジアルキル化合物としては、例えば、ジエチルカーボネート,ジメチルカーボネート,ジブチルカーボネート,ジシクロヘキシルカーボネート,ビスフェノールAビスメチルカーボネートなどが挙げられる。
炭酸アルキルアリール化合物としては、例えば、メチルフェニルカーボネート,エチルフェニルカーボネート,ブチルフェニルカーボネート,シクロヘキシルフェニルカーボネート,ビスフェノールAメチルフェニルカーボネートなどが挙げられる。
【0043】
本発明において、(B)成分の炭酸ジエステルとしては、上記の化合物一種又は二種以上を適宜選択して用いるが、これらの中では、ジフェニルカーボネートを用いるのが好ましい。
(B)成分の炭酸ジエステルとしては、上記の化合物一種又は二種以上を適宜選択して用いられるが、これらの中では、ジフェニルカーボネートを用いるのが好ましい。
【0044】
▲2▼ホスゲン
予備重合によりポリカーボネートプレポリマーを調製する際においては、(B)成分としてホスゲンを用いることもできる。
(C)成分
本発明のポリカーボネートの原料等として、必要に応じて、末端停止剤、分岐剤、酸化防止剤を反応系に添加してもよい。
【0045】
▲1▼末端停止剤
末端停止剤としては、例えば、o−n−ブチルフェノール;m−n−ブチルフェノール;p−n−ブチルフェノール;o−イソブチルフェノール;m−イソブチルフェノール;p−イソブチルフェノール;o−t−ブチルフェノール;m−t−ブチルフェノール;p−t−ブチルフェノール;o−n−ペンチルフェノール;m−n−ペンチルフェノール;p−n−ペンチルフェノール;o−n−ヘキシルフェノール;m−n−ヘキシルフェノール;p−n−ヘキシルフェノール;o−シクロヘキシルフェノール;m−シクロヘキシルフェノール;p−シクロヘキシルフェノール;o−フェニルフェノール;m−フェニルフェノール;p−フェニルフェノール;o−n−ノニルフェノール;m−n−ノニルフェノール;p−n−ノニルフェノール;o−クミルフェノール;m−クミルフェノール;p−クミルフェノール;o−ナフチルフェノール;m−ナフチルフェノール;p−ナフチルフェノール;2,6−ジ−t−ブチルフェノール;2,5−ジ−t−ブチルフェノール;2,4−ジ−t−ブチルフェノール;3,5−ジ−t−ブチルフェノール;2,5−ジクミルフェノール;3,5−ジクミルフェノール;p−tert−ブチルフェノール;p−クミルフェノール;p−フェニルフェノール;o,m,p−t−オクチルフェノール;o,m,p−n−オクチルフェノール等の一価フェノールが挙げられる。これらの一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。なお、これらの中にあって、特に2,6−ジ−t−ブチルフェノール;2,5−ジ−t−ブチルフェノール;2,4−ジ−t−ブチルフェノール;3,5−ジ−t−ブチルフェノール;2,5−ジクミルフェノール;3,5−ジクミルフェノール;p−tert−ブチルフェノール;p−クミルフェノール;p−t−オクチルフェノール;p−フェニルフェノールが好ましい。
【0046】
▲2▼分岐剤
分岐剤としては、三個以上の官能基を有する多官能性有機化合物が用いられる。具体的には、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、ホルミル基、酸ハライド基、ハロホーメート基などの官能基を一化合物中に三個以上有するもので、例えばフロログルシン;メリット酸;トリメリット酸;トリメリット酸クロリド;無水トリメリット酸;没食子酸;没食子酸n−プロピル;プロトカテク酸;ピロメリット酸;ピロメリット酸第二無水物;α−レゾルシン酸;β−レゾルシン酸;レゾルシンアルデヒド;トリメリチルクロリド;トリメチルトリクロリド;4−クロロホルミルフタル酸無水物;ベンゾフェノンテトラカルボン酸;2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン;2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン;2,4,4’−トリヒドロキシフェニルエーテル;2,2’,4,4’−テトラヒドロキシフェニルエーテル;2,4,4’−トリヒドロキシジフェニル−2−プロパン;2,2’−ビス(2,4−ジヒドロキシ)プロパン;2,2’,4,4’−テトラヒドロキシジフェニルメタン;2,4,4’−トリヒドロキシジフェニルメタン;1−〔α−メチル−α−(4’−ヒドロキシフェニル)エチル〕−4−〔α’,α’−ビス(4''−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン;α,α’,α''−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼンン;2,6−ビス(2’−ヒドロキシ−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェノール;4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4’−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン−2;4,6−ジメチル−2,4,6−ジメチル−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン−2;1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゼン;1,1,1−トリス(4’−ヒドロキシフェニル)−エタン;2,2−ビス〔4,4−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル〕−プロパン;2,6−ビス(2’−ヒドロキシ−5’−イソプロピルベンジル)−4−イソプロピルフェノール;ビス〔2−ヒドロキシ−3−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルベンジル)−5−メチルフェニル〕メタン;ビス〔2−ヒドロキシ−3−(2’−ヒドロキシ−5’−イソプロピルベンジル)−5−メチルフェニル〕メタン;テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)メタン;トリス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン;2’,4,7−トリヒドロキシフラバン;2,4,4−トリメチル−2’,4’−ジヒドロキシフェニルイソプロピル)ベンゼン;トリス(4’−ヒドロキシアリール)−アミル−s−トリアジン;1−〔α−メチル−α−(4’−ヒドロキシフェニル)エチル〕−3−〔α’,α’−ビス(4''−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン;イサチンビス(o−クレゾール);α,α,α’,α’−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン;α,α,α’,α’−テトラキス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン;α,α,α’,α’−テトラキス(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン;α,α,α’,α’−テトラキス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン;α,α,α’,α’−テトラキス(2,6−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン;α,α’−ジメチル−α,α,α’,α’−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン等を挙げることが出来る。これらの分岐剤は、それぞれ単独でも二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0047】
これらの中でも特に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン;1,1,1−トリス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン;1,1,1−トリス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エタン;1,1,1−トリス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン;1,1,1−トリス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン;1,1,1−トリス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)エタン;1,1,1−トリス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)エタン;トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン;トリス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン;トリス(4−ヒドロキシフェニル−3,5−ジメチルフェニル)メタン;トリス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン;トリス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン;トリス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)メタン;トリス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)メタン;α,α’−ジメチル−α,α,α’,α’−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン等が好ましい。
【0048】
▲3▼酸化防止剤
酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤が好ましく、例えばトリアルキルホスファイト、トリシクロアルキルホスファイト、トリアリールホスファイト、モノアルキルジアリールホスファイト、トリアルキルホスフェート、トリシクロアルキルホスフェート、トリアリールホスフェートなどが挙げられる。
(2)予備重合によるプレポリマーの調製
予備重合においては、原料である上記(A)成分のジヒドロキシ化合物及び(B)成分の炭酸ジエステル又はホスゲン、必要に応じ(C)成分の末端停止剤あるいは分岐剤等を用いてプレポリマーを調製する。この際、重合触媒として、好ましくは含窒素有機塩基性化合物又は含リン塩基性化合物から選ばれた少なくとも1種が用いられる。
【0049】
好ましい製造方法の手順及び条件を具体的に示す。
▲1▼予備重合の方法
(イ)ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル、必要に応じ末端停止剤あるいは分岐剤等を加熱下に処理することによって、芳香族モノヒドロキシ化合物を脱離させながら、プレポリマーを調製することができる。この予備重合工程で製造されるプレポリマーの重合平均分子量は、好ましくは2000〜20000の範囲で選ばれる。この予備重合反応は、溶融状態で実施されるのが好ましい。この場合、例えば、ジフェニルエーテル、ハロゲン化ジフェニルエーテル、ベンゾフェノン、ポリフェニルエーテル、ジクロロベンゼン、メチルナフタレン等の芳香族化合物、二酸化炭素、一酸化二窒素、窒素などのガス、クロロフロロ炭化水素、エタン、プロパン等のアルカン、シクロヘキサン、トリシクロ(5,2,10)デカン、シクロオクタン、シクロデカン等のシクロアルカン、エテン、プロペンのようなアルケン等の反応に不活性な溶媒を用いてもよいが、無溶媒で行なってもよい。ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの使用割合(仕込比率)については、用いられる種類や反応温度、反応圧力等の反応条件によっても異なるが、該炭酸ジエステルは、ジヒドロキシ化合物1モルに対して、通常0.9〜2.5モル、好ましくは0.95〜2.0モル、より好ましくは0.98〜1.5モルの割合で用いられる。なお、一価のヒドロキシ化合物である末端停止剤あるいは三個以上の官能基を有する多官能性有機化合物である分岐剤を使用する場合はそれぞれ、前者は、ジヒドロキシ化合物1モルに対して、通常0.001〜20モル、好ましくは0.0025〜15モル、より好ましくは0.005〜10モルの割合で用いられ、後者は、同様にジヒドロキシ化合物1モルに対して、通常0.001〜20モル、好ましくは0.0025〜15モル、より好ましくは0.005〜10モルの割合で用いられる。
【0050】
反応温度、反応圧力及び反応時間は、用いる原料や触媒の種類や量、得られるプレポリマーの必要重合量、他の反応条件などによって異なるが、好ましくは50〜350℃、より好ましくは100〜320℃、さらには150〜280℃の温度で、好ましくは0.1Torr〜5kg/cm2Gの圧力で、好ましくは1分〜100時間、より好ましくは2分〜10時間の範囲で選ばれる。
【0051】
プレポリマーを着色させないためには、可能な限り低温で、且つ短時間で予備重合反応を行うことが望ましい。
このようなプレポリマー製造工程で用いる反応器は、従来から知られた重合反応器であれば何れを用いてもよい。反応工程は一段でも良いし、それ以上の工程に分けて製造することもできる。また、反応器は一基以上の反応器を直列又は並列に接続して用いることもできる。この製造は、バッチ法あるいは連続法、又はこれらを併用した方法の何れを用いても良い。
【0052】
本工程により製造されるプレポリマーの末端比率は、好ましくはフェニルカーボネート末端:水酸基末端=1:1〜1:0.1であり、より好ましくは1:0.6〜1:0.25の範囲である。末端比率が上記範囲外であると、最終的な到達分子量が制限され、高分子量化を図ることが困難となる。
この予備重合反応においては、反応の進行に伴って、ジアリールカーボネートに基づくアリール基にヒドロキシル基の結合した化合物である芳香族モノヒドロキシ化合物が生成してくるが、これを反応系外へ除去することによって、その速度が高められるので、効果的なかき混ぜを行うと同時に、窒素,アルゴン,ヘリウム,二酸化炭素などの不活性ガスや低級炭化水素ガスなどを導入して、生成してくる該芳香族モノヒドロキシ化合物をこれらのガスに同伴させて除去する方法、減圧下に反応を行う方法、又はこれらを併用した方法などが好ましく用いられる。
(ロ)芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンとを公知の方法により反応させることによりプレポリマーを調製することもできる。
【0053】
▲2▼予備重合における触媒
触媒として、含窒素有機塩基性化合物を用いることが好ましい。この含窒素有機塩基性化合物としては、特に制限はなく、脂肪族第三級アミン化合物、芳香族第三級アミン化合物、含窒素複素環化合物などが挙げられる。
さらに、一般式(IX)
(NR11 4)+ ( X1 )- ・・・(IX)
で表される四級アンモニウム塩を挙げることができる。
【0054】
上記一般式(IX) において、R11は有機基、例えばメチル基,エチル基,プロピル基,ブチル基,ペンチル基,ヘキシル基、オクチル基,シクロヘキシル基などのアルキル基やシクロアルキル基、フェニル基,トリル基,ナフチル基,ビフェニル基などのアリール基、ベンジル基などのアリールアルキル基などを示す。四つのR1 はたがいに同一でも異なっていてもよく、また二つのR11が結合して環構造を形成していてもよい。X1 はハロゲン原子,水酸基又はBR4 を示す。ここで、Rは水素原子又はアルキル基やアリール基などの炭化水素基を示し、四つのRはたがいに同一でも異なっていてもよい。
【0055】
このような四級アンモニウム塩としては、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド,テトラエチルアンモニウムヒドロキシド,テトラブチルアンモニウムヒドロキシド,トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシドなどのアルキル基,アリール基,アルアリール基などを有するアンモニウムヒドロキシド類、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド,テトラブチルアンモニウムボロハイドライド,テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート,テトラメチルアンモニウムテトラフェニルボレートなどの塩基性塩が挙げられる。
【0056】
これらの含窒素有機塩基性化合物の中で、触媒活性が高く、かつ熱分解が容易でポリマー中に残留しにくいなどの点から、上記一般式(I)で表される四級アンモニウム塩、具体的にはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド,テトラブチルアンモニウムヒドロキシド,テトラメチルアンモニウムボロハイドライド,テトラブチルアンモニウムボロハイドライドが好ましく、特にテトラメチルアンモニウムヒドロキシドが好適である。
【0057】
このような含窒素有機塩基性化合物は一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
含窒素有機塩基性化合物は好ましくは10-2〜10-8モル、より好ましくは10-3〜10-7モル用いるのが望ましい。含窒素有機塩基性化合物の使用量が10-8モル未満では反応初期での触媒活性が不充分となり、また10-2モルを超えるとコストアップに繋がり好ましくない。
【0058】
▲3▼プレポリマーの結晶化
プレポリマーを結晶化させる方法については、特に制限はないが、溶媒処理法及び加熱結晶化法が好ましく用いられる。前者の溶媒処理法は、クロロメタン,塩化メチレン,クロロホルム等の適当な溶媒を用いてプレポリマーを結晶化させる方法である。用いられる溶媒の量は、種々条件によって異なるが、好ましくはプレポリマーに対して重量基準で0.05〜100倍、好ましくは0.1〜50倍の範囲で選ばれる。
【0059】
一方、加熱結晶化法は、該プレポリマーを目的とする芳香族ポリカーボネートのガラス転移温度以上で、且つ該プレポリマーが溶融し始める温度未満の範囲の温度で加熱することによって、結晶化させる方法である。この加熱結晶化を行う温度Tc(℃)については、目的とする芳香族ポリカーボネートのガラス転移温度以上で、且つ該プレポリマーの溶融温度Tm(℃)未満であればよく、特に制限はない。
(3)重合によるポリカーボネートの製造
本発明にかかるポリカーボネートを製造するにおいては、ポリカーボネートプレポリマーを調製した後、重合触媒として四級ホスホニウム塩を用いて、該プレポリマーを固相状態、膨潤固相状態又は薄膜溶融状態で重合させるのが好ましい。
【0060】
▲1▼四級ホスホニウム塩
四級ホスホニウム塩としては、特に制限はなく、各種のものがあるが、例えば一般式(IX)又は(X)
(PR12 4) + ( X2 )- ・・(X)
(PR12 4)2 + ( Y1 )2- ・・・(XI)
で表される化合物が好ましく用いられる。
【0061】
上記一般式(X)又は(XI)において、R12は有機基を示し、この有機基としては、例えばメチル基,エチル基,プロピル基,ブチル基,ペンチル基,ヘキシル基、オクチル基,シクロヘキシル基などのアルキル基やシクロアルキル基、フェニル基,トリル基,ナフチル基,ビフェニル基などのアリール基、ベンジル基などのアリールアルキル基などを挙げることができる。四つのR12はたがいに同一でも異なっていてもよく、また二つのR12が結合して環構造を形成していてもよい。X2 はハロゲン原子,水酸基,アルキルオキシ基,アリールオキシ基,R’COO,HCO3 ,(R’O)2 P(=O)O又はBR''4 などの1価のアニオン形成が可能な基を示す。ここで、R’はアルキル基やアリール基などの炭化水素基を示し、二つのR’Oはたがいに同一でも異なっていてもよい。またR''は水素原子又はアルキル基やアリール基などの炭化水素基を示し、四つのR''はたがいに同一でも異なっていてもよい。Y1 はCO3 などの2価のアニオン形成が可能な基を示す。
【0062】
このような四級ホスホニウム塩としては、例えばテトラフェニルホスホニウムヒドロキシド,テトラナフチルホスホニウムヒドロキシド,テトラ(クロロフェニル)ホスホニウムヒドロキシド,テトラ(ビフェニル)ホスホニウムヒドロキシド,テトラトリルホスホニウムヒドロキシド,テトラメチルホスホニウムヒドロキシド,テトラエチルホスホニウムヒドロキシド,テトラブチルホスホニウムヒドロキシドなどのテトラ(アリール又はアルキル)ホスホニウムヒドロキシド類、さらにはテトラメチルホスホニウムテトラフェニルボレート,テトラフェニルホスホニウムブロミド,テトラフェニルホスホニウムフェノラート,テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,メチルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,ベンジルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,ビフェニルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,テトラトリルホスホニウムテトラフェニルボレート,テトラフェニルホスホニウムフェノレート,テトラ(p−t−ブチルフェニル)ホスホニウムジフェニルホスフェート,トリフェニルブチルホスホニウムフェノレート,トリフェニルブチルホスホニウムテトラフェニルボレートなどが挙げられる。
【0063】
これらの四級ホスホニウム塩の中で、触媒活性が高く、かつ熱分解が容易でポリマー中に残留しにくいなどの点から、アルキル基を有するホスホニウム塩、具体的には、テトラメチルホスホニウムメチルトリフェニルボレート,テトラエチルホスホニウムエチルトリフェニルボレート,テトラプロピルホスホニウムプロピルトリフェニルボレート,テトラブチルホスホニウムブチルトリフェニルボレート,テトラブチルホスホニウムテトラフェニルボレート,テトラエチルホスホニウムテトラフェニルボレート,トリメチルエチルホスホニウムトリメチルフェニルボレート,トリメチルベンジルホスホニウムベンジルトリフェニルボレート等が好適である。
【0064】
また、テトラメチルホスホニウムヒドロキシド,テトラエチルホスホニウムヒドロキシド,テトラブチルホスホニウムヒドロキシドなどのテトラアルキルホスホニウム塩は、分解温度が比較的低いので、容易に分解し、製品ポリカーボネートに不純物として残る恐れが小さい。また、炭素数が少ないので、ポリカーボネートの製造における原単位を低減でき、コスト的に有利であるという点で好ましい。
【0065】
また、上記一般式(X)又は(XI)で表される化合物以外に、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのビス−テトラフェニルホスホニウム塩,エチレンビス(トリフェニルホスホニウム)ジブロミド,トリメチレンビス(トリフェニルホスホニウム)−ビス(テトラフェニルボレート)なども挙げることができる。
【0066】
さらには、アリール基及び/又は分岐状アルキル基を有する四級ホスホニウム塩も用いることができる。例えば、
一般式(XI)
(R13 nPR14 4-n) + ( X2 )- ・・・・(XII)
又は、一般式(XII)
(R13 nPR14 4-n)+ 2(Y1 )2- ・・・(XIII)
で表される化合物が用いられる。
【0067】
上記一般式(XII)又は(XIII) において、
n :1〜4の整数である。
R13:アリール基又は分岐状アルキル基から選ばれた少なくとも1つを示す。分岐状アルキル基とは、「R3C−」なる構造を有し、ここで、Rは、水素,アルキル基,置換基を有するアルキル基,アリール基 及び置換基を有するアリール基から選ばれた少なくとも1つであり、3つのRのうち少なくとも2つが結合して環構造を形成していても よい。但し、同時に2個が水素である場合は除く。例えばシクロアルキル基、イソプロピル基,tert−ブチル基などの分岐状アルキル基やベンジル基などのアリールアルキル基などを挙げることができる。
nが2以上の場合、Rは同一でも異なっていてもよい。
R14:アルキル基,置換基を有するアルキル基,アリール基又は置換基を有するアリール基である。
X2 :ハロゲン原子,水酸基,アルキルオキシ基,アリールオキシ基, R’COO,HCO3 ,(R’O)2 P(=O)O又はBR''4 などの1価のアニオン形成が可能な基を示す。ここで、R’はアルキル基やアリール基などの炭化水素基を示し、二つのR’Oはたがいに同一でも異なっていてもよい。またR''は水素原子又はアルキル基やアリール基などの炭化水素基を示し、四つのR''はたがいに同一でも異なっていてもよい。
Y1 :CO3 などの2価のアニオン形成が可能な基を示す。
【0068】
このような四級ホスホニウム塩としては、例えばテトラフェニルホスホニウムヒドロキシド,テトラナフチルホスホニウムヒドロキシド,テトラ(クロロフェニル)ホスホニウムヒドロキシド,テトラ(ビフェニル)ホスホニウムヒドロキシド,テトラトリルホスホニウムヒドロキシド,テトラヘキシルホスホニウムヒドロキシドなどのテトラ(アリール又はアルキル)ホスホニウムヒドロキシド類、
メチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド,エチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド,プロピルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド,ブチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド,オクチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド,テトラデシルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド,ベンジルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド,エトキシベンジルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド,メトキシメチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド,アセトキシメチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド,フェナシルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド,クロロメチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド,ブロモメチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド,ビフェニルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド,ナフチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド,クロロフェニルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド,フェノキシフェニルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド,メトキシフェニルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド,アセトキシフェニルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド,ナフチルフェニルトリフェニルホスホニウムヒドロキシドなどのモノ(アリール又はアルキル)トリフェニルホスホニウムヒドロキシド類、
フェニルトリメチルホスホニウムヒドロキシド,ビフェニルトリメチルホスホニウムヒドロキシド,フェニルトリヘキシルホスホニウムヒドロキシド,ビフェニルトリへキシルホスホニウムヒドロキシドなどのモノ(アリール)トリアルキルホスホニウムヒドロキシド類、
ジメチルジフェニルホスホニウムヒドロキシド,ジエチルジフェニルホスホニウムヒドロキシド,ジ(ビフェニル)ジフェニルホスホニウムヒドロキシドなどのジアリールジアルキルホスホニウムヒドロキシド類、
さらにはテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,テトラナフチルホスホニウムテトラフェニルボレート,テトラ(クロロフェニル)ホスホニウムテトラフェニルボレート,テトラ(ビフェニル)ホスホニウムテトラフェニルボレート,テトラトリルホスホニウムテトラフェニルボレートなどのテトラアリールホスホニウムテトラフェニルボレート類、
メチルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,エチルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,プロピルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,ブチルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,オクチルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,テトラデシルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,ベンジルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,エトキシベンジルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,メトキシメチルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,アセトキシメチルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,フェナシルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,クロロメチルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,ブロモメチルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,ビフェニルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,ナフチルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,クロロフェニルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,フェノキシフェニルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,アセトキシフェニルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,ナフチルフェニルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートなどのモノ(アリール又はアルキル)トリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート類、
フェニルトリメチルホスホニウムテトラフェニルボレート,ビフェニルトリメチルホスホニウムテトラフェニルボレート,フェニルトリヘキシルホスホニウムテトラフェニルボレート,ビフェニルトリヘキシルホスホニウムテトラフェニルボレートなどのモノアリールトリアルキルホスホニウムテトラフェニルボレート類、
ジメチルジフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,ジエチルジフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,ジ(ビフェニル)ジフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートなどのジアリールジアルキルホスホニウムテトラフェニルボレート類が挙げられる。
【0069】
さらに、対アニオンとして、上記のヒドロキシドやテトラフェニルボレート類の代わりに、フェノキシドなどのアリールオキシ基、メトキシド,エトキシドなどのアルキルオキシ基、アセテートなどのアルキルカルボニルオキシ基、ベンゾネートなどのアリールカルボニルオキシ基、クロライド,ブロマイドなどのハロゲン原子を用いた上記四級ホスホニウム塩が挙げられる。
【0070】
また、上記一般式(XII)で表される化合物以外に、一般式(XIII) で表されるような2価の対アニオンを有するもの、例えばビス(テトラフェニルホスホニウム)カーボネート,ビス(ビフェニルトリフェニルホスホニウム)カーボネートなどの四級ホスホニウム塩や、さらに、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのビス−テトラフェニルホスホニウム塩、エチレンビス(トリフェニルホスホニウム)ジブロミド,トリメチレンビス(トリフェニルホスホニウム)−ビス(テトラフェニルボレート)なども挙げることができる。
【0071】
さらには、一般式(XIV)又は(XV)であらわされる化合物も用いられる。
((R15−Ph)n −PPh(4-n) )+ (X3)- ・・・(XIV)
((R15−Ph)n −PPh(4-n) )2 + (Y2)2- ・・・(XV )
〔式中、R15は有機基を示し、たがいに同一でも異なっていてもよく、X3 はハロゲン原子,水酸基,アルキルオキシ基,アリールオキシ基,アルキルカルボニルオキシ基,アリールカルボニルオキシ基,HCO3 又はBR4(Rは水素原子又は炭化水素基を示し、4つのRはたがいに同一でも異なっていてもよい)を示し、Phはフェニル基を示し、Y2 はCO3 を示し、nは1〜4の整数を示す。〕
【0072】
このような四級ホスホニウム化合物の具体例としては、例えばテトラフェニルホスホニウムヒドロキシド,ビフェニルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド,メトキシフェニルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド,フェノキシフェニルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド,ナフチルフェニルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド,テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,ビフェニルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,メトキシフェニルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,フェノキシフェニルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,ナフチルフェニルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,テトラフェニルホスホニウムフェノキシド,ビフェニルトリフェニルホスホニウムフェノキシド,メトキシフェニルトリフェニルホスホニウムフェノキシド,フェノキシフェニルトリフェニルホスホニウムフェノキシド,ナフチルフェニルトリフェニルホスホニウムフェノキシド,テトラフェニルホスホニウムクロライド,ビフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド,メトキシフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド,フェノキシフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド又はナフチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライドなどが挙げられる。これら四級ホスホニウム塩のうち、触媒効果と得られるポリカーボネートの品質とのバランスからテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートが好ましく用いられる。
【0073】
分岐状アルキル基を含む四級ホスホニウム塩の具体例としては、イソプロピルトリメチルホスホニウム;イソプロピルトリエチルホスホニウム;イソプロピルトリブチルホスホニウム;イソプロピルトリフェニルホスホニウム;テトライソプロピルホスホニウム;シクロヘキシルトリエチルホスホニウム;シクロヘキシルトリメチルホスホニウム;シクロヘキシルトリブチルホスホニウム;シクロヘキシルトリフェニルホスホニウム;テトラシクロヘキシルホスホニウム;1,1,1−トリフェニルメチルトリメチルホスホニウム;1,1,1−トリフェニルメチルトリエチルホスホニウム;1,1,1−トリフェニルメチルトリブチルホスホニウム;1,1,1−トリフェニルメチルトリフェニルホスホニウムなどを挙げることができる。
【0074】
対アニオンに係るX3 の具体例としては、ヒドロキサイド;ボロハイドライド;テトラフェニルボレート;アセテート;プロピオネート;フルオライド;クロライド;ハイドロカーボネートなどを挙げることができる。
また、Y2 の具体例としては、カーボネートなどを挙げることができる。
分岐状アルキル基を含む四級ホスホニウム(カチオン)とXまたはY(アニオン)とからなる塩の具体例としては、上記各種具体例の組合せから種々のものを挙げることができ、イソプロピルトリメチルホスホニウムヒドロキサイド;シクロヘキシルトリフェニルホスホニウムクロライド;1,1,1−トリフェニルメチルトリエチルホスホニウムアセテート;ビス(イソプロピルトリエチルホスホニウム)カーボネート等が例示できる。
【0075】
これら分岐状アルキル基を含む四級ホスホニウム塩のうち、特にシクロヘキシルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートとかシクロペンチルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートが触媒効果と得られるポリカーボネートの品質とのバランスに優れる点で好ましく使用される。
さらには、テトラメチルホスホニウムアセテート,テトラエチルホスホニウムアセテート,テトラプロピルホスホニウムアセテート,テトラブチルホスホニウムアセテート,テトラペンチルホスホニウムアセテート,テトラヘキシルホスホニウムアセテート,テトラヘプチルホスホニウムアセテート,テトラオクチルホスホニウムアセテート,テトラデシルホスホニウムアセテート,テトラドデシルホスホニウムアセテート,テトラトリルホスホニウムアセテート,テトラフェニルホスホニウムアセテート,テトラメチルホスホニウムベンゾエート,テトラエチルホスホニウムベンゾエート,テトラプロピルホスホニウムベンゾエート,テトラフェニルホスホニウムベンゾエート,テトラメチルホスホニウムホルメート,テトラエチルホスホニウムホルメート,テトラプロピルホスホニウムホルメート,テトラフェニルホスホニウムホルメート,テトラメチルホスホニウムプロピオネート,テトラエチルホスホニウムプロピオネート,テトラプロピルホスホニウムプロピオネート,テトラメチルホスホニウムブチレート,テトラエチルホスホニウムブチレート,テトラプロピルホスホニウムブチレートなどのカルボン酸塩もあげることができる。
【0076】
なお、これらの四級ホスホニウム塩は、金属不純物の含有量ができるだけ少ないものが好ましく、特にアルカリ金属及びアルカリ土類金属化合物の含有量が50ppm以下のものが好適である。
また、原料である(A)成分のジヒドロキシ化合物1モルに対して、上記四級ホスホニウム塩を好ましくは10-2〜10-8モル用いるのが望ましい。四級ホスホニウム塩の使用量が10-8モル未満では反応後期での触媒活性が不充分となり、また10-2モルを超えるとコストアップに繋がり好ましくない。
【0077】
▲2▼固相状態での重合
上記、結晶化した状態の固体のプレポリマーについて、さらに四級ホスホニウム塩を触媒として、重合反応を行わせる。この場合、反応によって副生する芳香族モノヒドロキシ化合物、ジアリールカーボネート又はその両方を系外に抜き出すことによって、その反応が促進される。そのためには、窒素,アルゴン,ヘリウム,二酸化炭素などの不活性ガスあるいは炭化水素ガスや貧溶媒蒸気などを導入することにより、これらのガスに随伴させて除去する方法、減圧下に反応を行う方法、又はこれらを併用した方法などが好ましく用いられる。また、同伴用のガスを導入する場合には、これらのガスを反応温度付近の温度に加熱しておくことが望ましい。
【0078】
貧溶媒の条件としては、下記の反応条件で溶媒へのポリカーボネート溶解度が0.1重量%以下であり、反応に関与する可能性が少ない直鎖又は分岐鎖を有する炭素数4〜18の飽和炭化水素化合物、あるいは炭素数4〜18で且つ低度の不飽和炭化水素化合物が好ましい。沸点は、250℃を越えると残留溶剤の除去が困難となり、品質が低下する可能性があり好ましくない。
この固相重合反応を実施する場合の結晶化プレポリマーの形状については、特に制限はないが、ペレット状,ビーズ状などの形状のものが好適である。
【0079】
この固相重合での反応触媒としては、好ましくは四級ホスホニウム塩及び必要に応じて他の触媒も用いられるが、プレポリマー製造工程で添加し、残存しているものをそのまま使用しても、あるいは前記触媒を再度粉末,液体又は気体状態で添加してもよい。
この固相重合反応を実施する際の反応温度Tp(℃)及び反応時間については、結晶化プレポリマーの種類(化学構造,分子量等)や形状、結晶化プレポリマー中の触媒の有無,種類あるいは量、必要に応じて追加される触媒の種類あるいは量、結晶化プレポリマーの結晶化の度合や溶融温度Tm'(℃)の違い、目的とする芳香族ポリカーボネートの必要重合度、又は、他の反応条件などによって異なるが、好ましくは目的とする芳香族ポリカーボネートのガラス転移温度以上で、且つ固相重合中の結晶化プレポリマーが溶融しないで固相状態を保つ範囲の温度、より好ましくは式
Tm’−50≦Tp<Tm’ ・・・(XVI)
で示される範囲の温度において、1分〜100時間、さらに好ましくは0.1〜50時間程度加熱することにより、固相重合反応が行われる。
【0080】
このような温度範囲としては、例えばビスフェノールAのポリカーボネートを製造する場合には、約150〜260℃が好ましく、特に約180〜245℃が好ましい。
また、重合工程では、重合中のポリマーにできるだけ均一に熱を与えるため、あるいは副生物の抜き出しを有利に進めるために、攪拌を行ったり、反応器自身を回転させたり、又は加熱ガスによって流動させる方法などが好ましく用いられる。
【0081】
一般に工業的に有用な芳香族ポリカーボネートの重量平均分子量は、6000〜20万程度であるが、上記固相重合工程を実施することによって、このような重合度のポリカーボネートが容易に得られる。
結晶化プレポリマーの固相重合によって得られた芳香族ポリカーボネートの結晶化度は、通常、元のプレポリマーの結晶化度より増大していることから、本発明の方法では、通常、結晶性芳香族ポリカーボネート粉体が得られる。結晶性芳香族ポリカーボネート粉体を冷却せずに、そのまま押出機に導入してペレット化することもできるし、冷却せずに直接成形機に導入して成形することもできる。
重合に寄与する予備重合と固相重合との割合を広い範囲で変えてもよい。
【0082】
▲3▼膨潤固相状態による重合
予備重合工程で得られたプレポリマーを結晶化させた後、後述する膨潤ガスにより膨潤した状態での固相重合によって、さらに重合を行わせる方法である。この製造方法は、エステル交換反応によりポリカーボネートを製造する方法において、副生するフェノールのような低分子化合物を脱輝又は抽出除去する場合、膨潤ガスにより膨潤状態にある高分子(プレポリマー)から、低分子化合物を脱輝又は抽出除去する方が、高粘度溶融高分子や結晶化した固体からの脱輝又は抽出除去よりも物質移動速度が速くなり、高効率で反応できることを応用したものである。
【0083】
上記方法は、前記により得られたプレポリマーのフレーク化工程、及び、膨潤溶媒流通下で固相重合法により高分子量化する高分子量化工程(膨潤固相重合工程)に分けられる。
フレーク化工程に好適なプレポリマーの分子量は、粘度平均分子量(Mv)で1500〜30000である。分子量がこの範囲より低いと融点が低下し、固相重合温度を低下させる必要が生じ、反応速度が低下して好ましくない。
【0084】
フレーク化工程では、従来から知られている方法、例えば転動造粒法,押出し造粒法,圧縮造粒法,溶融造粒法,噴霧乾燥造粒法,流動層造粒法,破砕造粒法,攪拌造粒法,液相造粒法又は真空凍結造粒法などが、場合に応じて使用可能である。
フレークの形状としては、特に制限はないが、操作性からペレット,ビーズ状等が好ましい。また、次工程で使用する膨潤溶媒にプレポリマーを一度溶解して、そこへポリカーボネートに対する貧溶媒を混合しながら、フレーク化する攪拌造粒法なども有効である。なお、重合に際しては、フレークの乾燥は特に必要とされない。
【0085】
ここで使用する膨潤溶媒は、ポリカーボネートを以下に示す反応条件で膨潤可能な単一膨潤溶媒、それらの単一膨潤溶媒の混合物、又は、単一膨潤溶媒あるいはそれらの混合物にポリカーボネートの貧溶媒を単一あるいは数種の混合物として混合したものを示す。本工程における膨潤状態とは、以下に示した反応条件の範囲において、反応原料であるプレポリマーフレークを熱膨潤値以上に体積的又は重量的に増加した状態をいい、膨潤溶媒とは、下記反応条件の範囲において完全に気化する沸点を有するか、又は通常50mmHg以上の蒸気圧を有する単一化合物あるいはそれらの混合物であり、同時に上記の膨潤状態を形成させることができるものをいう。
【0086】
このような膨潤溶媒は、上記の膨潤条件を満たしていれば、特に制限はない。例えば、通常溶解度パラメーターが4〜20(cal/cm3)1/2の範囲、好ましくは7〜14(cal/cm3)1/2の範囲にある芳香族化合物や含酸素化合物が該当する。
具体的な膨潤溶媒としては、例えばベンゼン,トルエン,キシレン,エチルベンゼン,ジエチルベンゼン,プロピルベンゼン,ジプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン,ジオキサン等のエーテル類;メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン等のケトン類などが挙げられる。これらの中でも、炭素数6〜20の芳香族炭化水素の単一化合物又はそれらの混合物が好ましい。
【0087】
また、膨潤溶媒と混合される貧溶媒の条件としては、下記の反応条件で溶媒へのポリカーボネート溶解度が0.1重量%以下であり、反応に関与する可能性が少ない直鎖又は分岐鎖を有する炭素数4〜18の飽和炭化水素化合物、あるいは炭素数4〜18で且つ低度の不飽和炭化水素化合物が好ましい。膨潤溶媒及び貧溶媒の沸点が共に、250℃を越えると残留溶剤の除去が困難となり、品質が低下する可能性があり好ましくない。
【0088】
このような貧溶媒と膨潤溶媒とを混合して用いる場合には、その混合溶媒中に膨潤溶媒が1重量%以上含有されていれば良く、好ましくは5重量%以上の膨潤溶媒を混合溶媒中に存在させる。
この膨潤固相重合工程では、反応温度が好ましくは100〜240℃であり、反応時の圧力が好ましくは10Torr〜5kg/cm2G、特に好ましくは大気圧下で実施する。反応温度が上記範囲より低いとエステル交換反応が進行せず、反応温度がプレポリマーの融点を超える高温条件では、固相状態を維持できず、粒子間で融着等の現象が生じ、運転操作性が著しく低下する。従って、反応温度は融点以下にする必要がある。
【0089】
この膨潤固相重合工程での反応触媒としては、四級ホスホニウム塩及び必要に応じて他の触媒も用いられるが、プレポリマー製造工程で添加し、残存しているものをそのまま使用しても、あるいは前記触媒を再度粉末,液体又は気体状態で添加してもよい。
膨潤溶媒ガスの供給は、液体状態で反応器に供給し反応器内で気化させても、予め熱交換器などにより気化させた後、反応器に供給してもよい。膨潤溶媒ガスの流通速度は、1×10-3cm/s以上であればよく、好ましくは1×10-3cm/s以上がよい。また、ガス供給量としてはプレポリマー1g当たり0.5リットル(標準状態)/hr以上のガスを反応器に供給することが好ましい。膨潤溶媒ガスの流通量は反応速度と密接に関係し、フェノール除去効果と同時に熱媒体としての作用をもしているため、ガスの流通量の増加に伴い反応速度が向上する。このような膨潤固相重合に用いられる反応器に特に制限はない。
【0090】
高分子量化したポリカーボネートの乾燥及びペレット化工程は、従来の方法が使用可能であり、特に制限はない。前記添加剤を混合する場合には、乾燥前後に、直接フレークに添加剤粉末を塗すか、あるいは液体を噴霧,気体を吸収させることが好ましいが、ペレット化時に、押出し機で混合することもできる。
また、不活性ガスと膨潤溶媒との混合比は、その混合溶媒ガス中に膨潤溶媒が1容量%以上含有されていればよいが、好ましくは5容量%以上の膨潤溶媒を混合溶媒中に混合させたものがよい。
【0091】
▲4▼重合系での気相中の酸素濃度及び水分濃度
本発明においては、その重合が行われる反応系における気相中の酸素濃度が2ppm以下であることが必要である。好ましくは1ppm以下、さらには0.5ppm以下が好ましい。また、反応系内の水分濃度についても2ppm以下、さらには1ppm以下であることが好ましい。重合が行われる反応系内の酸素濃度が2ppmを超えると、得られる樹脂に着色が生じやすくなり、熱安定性が悪くなる。また、反応系内の水分濃度についても2ppmを超えると、反応時に加水分解が生じる等が考えられ、触媒活性低下等の悪影響を及ぼす点で好ましくない。
【0092】
反応系内の酸素濃度を2ppm以下、さらには水分濃度を2ppm以下にする方法としては、特に問わないが、例えば、重合器入口前に酸素フィルター等を組み込んだ酸素除去管、さらにはモイスチャーフィルター等を組み込んだ水分除去管を設ければよい。
【0093】
▲5▼薄膜溶融状態での重合
前記したポリカーボネートプレポリマーを加熱・減圧・液膜形成手段を有する本重合器に投入し、溶融状態にし、減圧手段を作動させつつ、薄い液膜を形成し、高分子量化を図ることができる。この方法は、薄膜重合法と呼ばれ、高分子量化に必要なエステル交換反応を一段と進めるために、通常、前記した四級ホスホニウム塩等触媒の存在下で、溶融状態にあるプレポリマーを膜厚5mm以下、好ましくは3mm以下、より好ましくは1mm以下の薄膜状態にして、反応温度50〜320℃、好ましくは100〜320℃、より好ましくは150〜280℃で、反応圧力0.1Torr〜5kg/cm2 G、反応時間1分〜100時間、好ましくは2〜20時間の条件で行うことができる。
【0094】
また、薄い液膜を形成する手段として、特に制限はないが例えば前記▲1▼予備重合の方法で述べた溶媒を用いてプレポリマーを溶解させた液を広い面積を有する反応器の底面等に広げ、溶媒を加熱して蒸散させて薄膜を形成することができる。
この薄膜重合法では、既に知られる溶融エステル交換法の中でも特殊な方法の部類に属し、その狙いは、フェノールの脱気を促進して反応を促進させる面があることに加え、脱離したフェノールによるポリマーの切断反応を出来るだけ阻止することにより、本発明の不純物低減を達成しようとするものである。
【0095】
本発明にかかるポリカーボネートにおいては、可塑剤,顔料,潤滑剤,離型剤,安定剤,無機充填剤などのような周知の添加剤を配合して使用することもできる。また、このポリカーボネートは、ポリオレフィン,ポリスチレン,ポリエステル,ポリスルホネート,ポリアミド,ポリフェニレンエーテルなどの重合体とブレンドすることが可能である。特に、OH基,COOH基,NH2 基などを末端に有するポリフェニレンエーテル,ポリエーテルニトリル,末端変性ポリシロキサン化合物,変性ポリプロピレン,変性ポリスチレンなどと併用すると効果的である。
【0096】
3.前記ポリカーボネートからなる光学材料ほか
本発明に斯かるポリカーボネートは残留モノマー分が低減されていることから、成形時の焼け、分子量低下及び物性低下を招くことがなく、光学材料用として極めて有用である。
【0097】
また、本発明で必要に応じてクミルフェノールほか末端停止剤を用いたポリカーボネートは、溶融法ではそのポリカーボネート分子の末端に組み込むことが困難であったが本発明の固相重合又は膨潤固相重合ではそれを容易とし、上記の改良点のほか既に知られるように低温耐衝撃性等の物性が改良されて光学材料用として有用である。
【0098】
更に、本発明で必要に応じて分岐剤を用いたポリカーボネートは、上記の改良点のほか既に知られるように溶融張力等の物性が改良されてブロー成形用として有用である。
【実施例】
次に、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0099】
〔実施例1〕
内容積1リットルの攪拌機付ニッケル鋼製オートクレーブに、ビスフェノールA(BPA)228g(1.0モル),ジフェニルカーボネート(DPC)246g(1.15モル),テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド(TMAH)(0.5ミリモル)を加え、アルゴン置換を5回行った。その後、混合物を190℃に加熱し、アルゴン雰囲気下で30分間反応させた。次いで温度を徐々に235℃に上昇させると同時に、真空度を60mmHgまで上げて60分間反応させ、さらに温度を徐々に270℃まで昇温すると同時に、真空度を10mmHgまで上げて120分間反応させた。次いで温度を270℃にしたまま真空度を1mmHgに上げ30分間反応させた後、真空度を0.5mmHgに上げ更に30分間反応させた。反応終了後、アルゴンで反応器内を大気圧に戻し、内容物であるプレポリマーを取り出し粉砕した。
【0100】
このプレポリマーの粘度平均分子量は7200であり、水酸基末端の末端分率は30%であった。
このようにして得られたプレポリマー及び触媒としてシクロヘキシルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート(HPTB)10-5モルを塩化メチレンに溶解し、n−ヘプタンを加えて粉体を析出させ、濃縮乾固後、真空乾燥させてプレポリマー粉体を得た。この粉体を直径10mm,長さ200mmのSUS管に9g仕込み、窒素ガスを100ミリリットル/分の速度で流し、室温から240℃まで昇温し、4時間固相重合をして、ポリカーボネートを得た。結果を第1表に示す。
【0101】
〔実施例2〕
実施例1において、固相重合時に流すガス種をヘプタンガスにした以外は、実施例1と同様に行なった。結果を第1表に示す。
〔実施例3〕
実施例1で合成したプレポリマー8.04gを直径32cmのSUS製シャーレ上に置き、塩化メチレン10ミリリットルを添加し、シャーレ上でプレポリマー及び触媒としてテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート(TPTB)10-5モルを溶解した。その後、塩化メチレンを蒸発させ、膜厚0.1cmの薄膜を調製した。次にホットプレートを備えた減圧仕様のオーブンの中にて、270℃,0.1mmHgで4時間溶融重合してポリカーボネートを得た。結果を第1表に示す。
【0102】
〔比較例1〕
仕込みのDPCの量を236g(1.1モル)に変える等により、プレポリマーの水酸基末端の末端分率を50%にし、かつ、固相重合時の触媒をテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート(TPTB)10-5モルにし、重合時間を0.5時間に変えた以外は実施例1と同様に行なった。結果を第1表に示す。
〔比較例2〕
仕込みのDPCの量を236g(1.1モル)に変える等により、プレポリマーの水酸基末端の末端分率を61%にした以外は実施例1と同様に行なった。結果を第1表に示す。
〔比較例3〕
固相重合時に触媒を用いず、重合時間を93時間にした以外は実施例1と同様に行なった。結果を第1表に示す。
【0103】
〔比較例4〕
固相重合を行なわず、触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキサイド(0.5ミリモル)とテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート(0.01ミリモル)を加え、真空度1mmHgでの重合時間を3時間にした以外は実施例1と同様に行なった。結果を第1表に示す。
〔実施例4〕
内容積1リットルの攪拌機付ニッケル製オートクレーブに、ビスフェノールA(BPA)228g(1.0モル)、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニルエタン)(THPE)1.23g(0.004モル)、ジフェニルカーボネート(DPC)257g(1.2モル),テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド(0.5ミリモル)を加え、アルゴン置換を5回行った。その後、混合物を190℃に加熱し、アルゴン雰囲気下で30分間反応させた。次いで温度を徐々に235℃に上昇させると同時に、真空度を60mmHgまで上げて60分間反応させ、さらに温度を徐々に270℃まで昇温すると同時に、真空度を10mmHgまで上げて120分間反応させた。次いで温度を270℃にしたまま真空度を1mmHgに上げ30分間反応させた後、真空度を0.5mmHgに上げ更に30分間反応させた。反応終了後、アルゴンで反応器内を大気圧に戻し、内容物であるプレポリマーを取り出し粉砕した。
このプレポリマーの粘度平均分子量は10900であり、水酸基末端の末端分率は30%であった。
このようにして得られたプレポリマー及び固相重合用触媒としてシクロヘキシルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート(HPTB)を0.0066g(1×10-5モル/BPAユニット)を塩化メチレンに溶解し、n−ヘプタンを加えて粉体を析出させ、濃縮乾固後、真空乾燥させてプレポリマー粉体を得た。この粉体20gを直径58mm,長さ170mmのSUS管に入れ、窒素ガスを100ミリリットル/分の速度で流し、室温から240℃まで昇温し、4時間固相重合をして、ポリカーボネートを得た。結果を第2表に示す。
【0104】
〔実施例5〕
実施例4において、固相重合時に流すガス種をヘプタンガスにした以外は、実施例4と同様に行なった。結果を第1表に示す。
〔比較例5〕
固相重合を行なわず、触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキサイド(TMAH)(0.5ミリモル)とテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート(TPTB)(0.01ミリモル)を加え、真空度0.5mmHgでの重合時間を3時間にした以外は実施例4と同様に行なった。結果を第1表に示す。
【0105】
〔実施例6〕
内容積1リットルの攪拌機付ニッケル製オートクレーブに、ビスフェノールA(BPA)228g(1.0モル)、p−クミルフェノール10.6g(0.05モル)、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド(TMAH)(0.5ミリモル)を加え,アルゴン置換を5回行った。その後、混合物を190℃に加熱し、アルゴン雰囲気下で30分間反応させた。次いで、温度を徐々に235℃に上昇させると同時に、真空度を60mmHgまで上げて60分間反応させ、さらに温度を徐々に270℃まで昇温すると同時に、真空度を10mmHgまで上げて120分間反応させた。次いで温度を270℃にしたまま真空度を1mmHgに上げ30分間反応させた後、真空度を0.5mmHgに上げ更に30分間反応させた。反応終了後、アルゴンで反応器内を大気圧に戻し、内容物であるプレポリマーを取り出し粉砕した。
このプレポリマーの粘度平均分子量は8600であり、水酸基末端の末端分率は33%であった。
このようにして得られたプレポリマー及び固相重合用触媒としてシクロヘキシルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート(HPTB)0.0066g(1×10-5モル/BPAユニット)を塩化メチレンに溶解し、n−ヘプタンを加えて粉体を析出させ、濃縮乾固後、真空乾燥させてプレポリマー粉体を得た。この粉体20gを直径58mm,長さ170mmのSUS管に入れ、窒素ガスを100ミリリットル/分の速度で流し、室温から240℃まで昇温し、4時間固相重合をして、ポリカーボネートを得た。結果を第3表に示す。
【0106】
〔実施例7〕
実施例6において、固相重合時に流すガス種をヘプタンガスにした以外は、実施例6と同様に行なった。結果を第3表に示す。
〔実施例8〕
p−クミルフェノールをp−tertブチルフェノールに代えた以外は実施例6と同様に行なった。結果を第3表に示す。
〔実施例9〕
p−クミルフェノールをp−tertオクチュルフェノールに代えた以外は実施例6と同様に行なった。結果を第3表に示す。
〔比較例6〕
固相重合を行なわず、触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキサイド(TMAH)(0.5ミリモル)とテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート(TPTB)(0.01ミリモル)を加え、真空度0.5mmHgでの重合時間を3時間にした以外は実施例6と同様に行なった。結果を第3表に示す。
【0107】
〔実施例10〕
内容積1リットルの攪拌機付ニッケル鋼製オートクレーブに、ビスフェノールA(BPA)228g(1.0モル)、ジフェニルカーボネート(DPC)246g(1.15モル)、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド(TMAH)0.5ミリモル、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート(TPTB)1×10-5モルを加え、アルゴン置換を5回行った。その後、混合物を190℃に加熱し、アルゴン雰囲気下で30分間反応させた。次いで温度を徐々に235℃に上昇させると同時に、真空度を60mmHgまで上げて60分間反応させ、さらに温度を徐々に270℃まで昇温すると同時に、真空度を10mmHgまで上げて120分間反応させた。次いで温度を270℃にしたまま真空度を1mmHgに上げ30分間反応させた後、真空度を0.5mmHgに上げ更に30分間反応させた。反応終了後、アルゴンで反応器内を大気圧に戻し、内容物であるプレポリマーを取り出し粉砕した。
このプレポリマーの粘度平均分子量は7200であり、水酸基末端の末端分率は30%であった。
得られたプレポリマー8.04gを直径32cmのSUS製のシャーレの上に置き、塩化メチレン10ミリリットルを添加してシャーレ上でプレポリマーを溶解した。その後塩化メチレンを蒸発させ、膜厚0.01mmの薄膜を調整し、120℃で一晩真空乾燥した。次に、ホットプレートを備えたを減圧仕様のオーブンの中で、270℃、0.1mmHgで4時間溶融重合して、ポリカーボネートを得た。結果を第4表に示す。
【0108】
〔実施例11〕実施例10において、薄膜で溶融重合する時間を4時間から1時間に変更した以外は実施例10と同様に行った。結果を第4表に示す。
〔比較例7〕
内容積1リットルの攪拌機付ニッケル鋼製オートクレーブに、ビスフェノールA(BPA)228g(1.0モル)、ジフェニルカーボネート(DPC)246g(1.15モル)、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド(TMAH)0.5ミリモル、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート(TPTB)1×10-5モルを加え、アルゴン置換を5回行った。その後、混合物を190℃に加熱し、アルゴン雰囲気下で30分間反応させた。次いで温度を徐々に235℃に上昇させると同時に、真空度を60mmHgまで上げて60分間反応させ、さらに温度を徐々に270℃まで昇温すると同時に、真空度を10mmHgまで上げて120分間反応させた。次いで温度を270℃にしたまま真空度を1mmHgに上げ30分間反応させた後、真空度を0.5mmHgに上げ更に3時間反応させた。反応終了後、アルゴンで反応器内を大気圧に戻し、内容物であるポリカーボネートを取りり出した。
このプレポリマーの粘度平均分子量は7200であり、水酸基末端の末端分率は30%であった。結果を第4表に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
【表3】
【0112】
【表4】
【0113】
【発明の効果】
本発明によれば、残留モノマーやオリゴマー等の不純物含量が少なく、衝撃強度等の物性に優れたポリカーボネートを提供することができる。
Claims (2)
- (A)芳香族ジヒドロキシ化合物と(B)炭酸ジエステルを、温度50〜350℃、圧力0.1Torr〜5kg/cm2G下、不活性ガスまたは低級炭化水素ガスを導入して、1分〜100時間、予備重合させてポリカーボネートプレポリマーを調製した後、
(a)該プレポリマーを結晶化後、式(XVI)
Tm’−50≦Tp<Tm’・・・・(XVI)
(ここで、Tpは反応温度、Tm’は結晶化プレポリマーの溶融温度である。)
の温度下、1分〜100時間、不活性ガス、炭化水素ガス、または貧溶媒蒸気を導入して固相状態でのエステル交換反応によって、
(b) 該プレポリマーを結晶化後、フレーク化して、温度100〜240℃、圧力10Torr〜5kg/cm2G 下に、膨潤溶媒ガスを導入して膨潤固相状態でのエステル交換反応によって、または、
(c) 該プレポリマーを溶融後、薄膜化し、50〜320℃、0.1Torr〜5kg/cm2G 下、1分〜100時間、薄膜溶融状態でのエステル交換反応によって、
重合させて、生成ポリカーボネート中のジヒドロキシ化合物含量、炭酸ジエステル含量及びモノヒドロキシ化合物含量の合計が100ppm未満となるようにポリカーボネートを製造する方法。 - さらに、(C)一価ヒドロキシ化合物または三個以上の官能基を有する多官能性有機化合物を配合して予備重合する請求項1に記載のポリカーボネートを製造する方法。
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