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JP4271924B2 - 4−メルカプトフェノール類の製造方法 - Google Patents

4−メルカプトフェノール類の製造方法 Download PDF

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JP4271924B2 JP2002297608A JP2002297608A JP4271924B2 JP 4271924 B2 JP4271924 B2 JP 4271924B2 JP 2002297608 A JP2002297608 A JP 2002297608A JP 2002297608 A JP2002297608 A JP 2002297608A JP 4271924 B2 JP4271924 B2 JP 4271924B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、4−メルカプトフェノール又はその塩の製造方法に関し、より詳しくは感熱記録材料用顕色剤、医・農薬の製造中間体等として有用な4−メルカプトフェノール又はその塩の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
4−メルカプトフェノールの製造方法としては例えば、フェノールと塩化硫黄との反応により得られたビス(4−ヒドロキシフェニル)ポリスルフィドを亜鉛と塩酸を用いて還元することで目的とする4−メルカプトフェノールを製造する方法があるが、亜鉛を用いて還元を行うため後処理工程が煩雑になる等の問題があり、工業的に大量生産する方法としては適していない。
【0003】
また、亜鉛等の金属を使用しない方法として、金属水酸化物を用いる方法が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0004】
【非特許文献1】
J.O.Chem., 32, 2047, (1967)
【0005】
上記非特許文献1記載の方法ではアリールスルフィン酸等が副生するため収率が悪いという欠点がある。従って、4−メルカプトフェノールを工業的に大量生産するには不向きであった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、4−メルカプトフェノール類を効率よく、工業的に有利に製造する方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ポリスルフィドから4−メルカプトフェノールへの反応を詳細に検討したところ、金属水酸化物の存在下、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ポリスルフィドとヒドラジンとの反応を行うことで高収率で4−メルカプトフェノール又はその塩が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明は、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ポリスルフィドと、ヒドラジンとを、金属水酸化物の存在下に反応させることを特徴とする4−メルカプトフェノール金属塩の製造方法である。
本発明の第2の発明は、第1の発明で使用するビス(4−ヒドロキシフェニル)ポリスルフィドが、フェノールと塩化硫黄との反応により得られたものであることを特徴とする第1の発明記載の4−メルカプトフェノール金属塩の製造方法である。
本発明の第3の発明は、第1の発明で使用するビス(4−ヒドロキシフェニル)ポリスルフィドが、極性溶媒中、アルカリ金属ハロゲン化物の存在下、フェノールと塩化硫黄との反応により得られたものであることを特徴とする第1の発明記載の4−メルカプトフェノール金属塩の製造方法である。
本発明の第4の発明は、第1の発明記載の反応により得られた4−メルカプトフェノール金属塩を、さらに酸で処理することを特徴とする4−メルカプトフェノールの製造方法である。
本発明の第5の発明は、第4の発明で使用するビス(4−ヒドロキシフェニル)ポリスルフィドが、フェノールと塩化硫黄との反応により得られたものであることを特徴とする第4の発明記載の4−メルカプトフェノールの製造方法である。
本発明の第6の発明は、第4の発明で使用するビス(4−ヒドロキシフェニル)ポリスルフィドが、極性溶媒中、アルカリ金属ハロゲン化物の存在下、フェノールと塩化硫黄との反応により得られたものであることを特徴とする第4の発明記載の4−メルカプトフェノールの製造方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の4−メルカプトフェノール金属塩の製造方法に使用するビス(4−ヒドロキシフェニル)ポリスルフィドは、単離精製したものを用いてもよいが、例えば、フェノールと塩化硫黄との反応により得られたビス(4−ヒドロキシフェニル)ポリスルフィドを使用する場合は、特に精製することなく、フェノールと塩化硫黄との反応によって副生する塩化水素及び反応溶媒を蒸留により留去したものを用いてもよい。この際に使用される塩化硫黄としては、ニ塩化ニ硫黄(S2Cl2)を使用するのが好ましい。
【0010】
本発明のビス(4−ヒドロキシフェニル)ポリスルフィドは、式(I)
【0011】
【化1】
Figure 0004271924
【0012】
[式中、xは2、3又は4を表す。]で表される化合物の1種又は2種以上の混合物であって、2種以上の場合xが2のものが最も多く含有している。これらは全て本発明の第1の発明の反応によって4−メルカプトフェノール金属塩になる。
【0013】
本発明で使用する金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛等が挙げられ、水酸化ナトリウムを使用するのが好ましい。また、本発明で使用する金属水酸化物は、1種単独で使用しても2種以上混合して使用してもよい。
【0014】
本発明で使用するヒドラジンは、無水ヒドラジンを使用してもよいが、ヒドラジン水和物、ヒドラジン水溶液、ヒドラジン−テトラヒドロフラン溶液、ヒドラジン塩酸塩等を使用してもよく、安全面からヒドラジン水和物を使用するのが好ましい。
【0015】
金属水酸化物の使用量は、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ポリスルフィド1モルに対して、2モル〜10モル、好ましくは2モル〜5モルの範囲である。
また、ヒドラジンの使用量は、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ポリスルフィド1モルに対して、1モル〜10モル、好ましくは1モル〜5モルの範囲である。
【0016】
また、フェノールと塩化硫黄との反応により得られたビス(4−ヒドロキシフェニル)ポリスルフィドを使用する場合の金属水酸化物の使用量は、フェノール1モルに対して、1モル〜5モル、好ましくは1モル〜2.5モルの範囲である。
また、ヒドラジンの使用量は、フェノール1モルに対して、0.5モル〜5モル、好ましくは0.5モル〜2.5モルの範囲である。
【0017】
本発明のビス(4−ヒドロキシフェニル)ポリスルフィドから4−メルカプトフェノール金属塩を製造する際に使用される溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルフォキシド等のスルフォキシド類;水−ベンゼン、水−トルエン、水−キシレン等の2相系混合溶媒等が挙げられ、水を使用するのが好ましい。
【0018】
本発明で使用する金属水酸化物は、あらかじめ溶媒に溶解させて使用するのが好ましく、この場合の重量比は、金属水酸化物1重量部に対して、溶媒が通常1〜10重量部、好ましくは2〜5重量部の範囲である。
【0019】
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ポリスルフィドから4−メルカプトフェノール金属塩を製造する際の反応温度は、通常20℃〜100℃、好ましくは40℃〜90℃の範囲である。
【0020】
本発明の製造方法で使用するビス(4−ヒドロキシフェニル)ポリスルフィドをフェノールと塩化硫黄との反応により製造する場合、極性溶媒中、アルカリ金属ハロゲン化物の存在下に反応させるのが好ましい。
【0021】
この際に使用する極性溶媒は、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、マロン酸ジエチル、マロン酸エチルメチル等のエステル類;アセトニトリル、プロピオンニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;N,M−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルフォキシド等のスルフォキシド類;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類等が挙げられ、好ましくは、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、マロン酸ジエチル、マロン酸エチルメチル等のエステル類である。
【0022】
また、アルカリ金属ハロゲン化物として、例えば、フッ化リチウム、フッ化ルビジウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化ルビジウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム等が挙げられ、好ましくは、塩化リチウムである。
【0023】
アルカリ金属ハロゲン化物の使用量は、フェノール1モルに対して通常は0.01〜0.5モルの範囲で、好ましくは、0.05〜0.2モルの範囲である。
【0024】
本発明の第1の発明の製造方法によれば4−メルカプトフェノール金属塩が生成するが、生成した4−メルカプトフェノール金属塩を酸で処理することにより、例えばこの溶液中に酸を加えることで4−メルカプトフェノールへと変換できる。この際使用する酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等が挙げられる。添加量は、通常中和量である。
【0025】
本発明では、金属水酸化物の存在下に反応させることで4−メルカプトフェノール金属塩を製造する際のヒドラジンの使用量を減らすことができ、工業的製造に有利である。金属水酸化物とヒドラジンの加える順番を適宜選択することで収率を向上することができる。例えば、フェノールと塩化硫黄との反応によって得られたビス(4−ヒドロキシフェニル)ポリスルフィドを蒸留によって副生した塩化水素及び溶媒を留去したものに、金属水酸化物を溶媒に溶解させたものを添加する。次いで、ヒドラジンを添加し、その後、金属水酸化物を溶媒に溶解させたものをゆっくりと滴下することでヒドラジン及び金属水酸化物の使用量を減らすことができる。この際最初に添加する金属水酸化物の使用量は、フェノール1モルに対して、通常0.8〜2モル、好ましくは1〜1.5モルの範囲である。また、ヒドラジンを添加した後に滴下する金属水酸化物の使用量は、フェノール1モルに対して、通常0.5〜2モル、好ましくは0.8〜1.5モルの範囲である。
【0026】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。本発明は下記の実施例に限定されることない。
【0027】
実施例1(4,4’−ジヒドロキシジフェニルジスルフィドの製造)
100mL4口フラスコにニ塩化ニ硫黄36.5g(0.27mol)、塩化リチウム2.6g(0.06mol)および酢酸エチル318mlを加え、室温で30分撹拌した。その後、内温を10〜15℃に冷却し、温度を保ちながら滴下漏斗を用いて溶融フェノール47.5g(0.5mol)を1時間かけて滴下した。同温度で滴下終了から3時間撹拌した後、昇温し、還流しながら塩化水素ガスを十分除去した後、常圧下および減圧下で濃縮し、4,4’−ジヒドロキシジフェニルジスルフィドを油状物質として得た。
【0028】
実施例2(4−メルカプトフェノールの製造)
実施例1で反応スケールを1/10にした以外は同様の方法で得られた4,4’−ジヒドロキシジフェニルジスルフィドの油状物質に25%水酸化ナトリウム水溶液8.0g(0.05mol)を加え、窒素気流下で撹拌した。溶液が完溶するのを確認した後、ヒドラジン一水和物1.25g(0.05mol)を滴下し、50℃で1時間攪拌した。その後、25%水酸化ナトリウム水溶液8.0g(0.05mol)を1時間30分かけて滴下し、80℃で8時間攪拌して、4−メルカプトフェノールのナトリウム塩を得た。その後、反応液を5〜10℃に冷却し、35%塩酸30g(0.29mol)と塩化メチレン100mlの混合液中に投入して中和した。この混合液を分液して有機層を取り出した後、水層を再度塩化メチレン100mlで抽出した。得られた有機層を減圧濃縮して4−メルカプトフェノールを赤褐色の油状物質として5.94g得た。この物質を液体クロマトグラフィーにより定量分析を行ったところ、4−メルカプトフェノール含量は73.15wt%であり、したがってフェノールからの2段階収率は68.9%であった。
【0029】
比較例1(4−メルカプトフェノールの製造)
実施例1で得られた4,4’−ジヒドロキシジフェニルジスルフィドの油状物質を10%水酸化ナトリウム水溶液800.0g(2.0mol)に溶解し、窒素気流下、80℃で4時間撹拌して4−メルカプトフェノールのナトリウム塩を得た。その後、5〜10℃に冷却し、17.5%塩酸416.7gと塩化メチレン200mlの混合液中に投入して中和した。この混合液を分液して有機層を取り出した後、水層を再度塩化メチレン200mlで抽出した。得られた有機層を減圧濃縮して4−メルカプトフェノールを淡黄色の油状物質として54.85g得た。この物質を液体クロマトグラフィーにより定量分析を行ったところ、4−メルカプトフェノール含量は63.0wt%であり、したがってフェノールからの2段階収率は54.7%であった。
【発明の効果】
本発明により、金属水酸化物の存在下にビス(4−ヒドロキシフェニル)ポリスルフィドと、ヒドラジンとを反応させることにより高収率で4−メルカプトフェノール又はその塩を製造することができる。

Claims (7)

  1. ビス(4−ヒドロキシフェニル)ポリスルフィドとヒドラジンとを金属水酸化物の存在下に反応させて4−メルカプトフェノール金属塩を製造する方法において、
    ビス(4−ヒドロキシフェニル)ポリスルフィドと金属水酸化物(A)の溶液にヒドラジンを添加した後、さらに金属水酸化物(B)を添加することを特徴とする4−メルカプトフェノール金属塩の製造方法。
  2. ビス(4−ヒドロキシフェニル)ポリスルフィドとヒドラジンとを金属水酸化物の存在下に反応させて4−メルカプトフェノール金属塩を製造する方法において、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ポリスルフィドに金属水酸化物(A)を添加し、次いでヒドラジンを添加した後、さらに金属水酸化物(B)を添加することを特徴とする4−メルカプトフェノール金属塩の製造方法。
  3. 金属水酸化物(A)の量が、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ポリスルフィドのフェノール部1モルに対して0.8〜2モルの範囲であることを特徴とする請求項1又は2記載の4−メルカプトフェノール金属塩の製造方法。
  4. 金属水酸化物(B)の量が、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ポリスルフィドのフェノール部1モルに対して0.5〜2モルの範囲であることを特徴とする請求項1又は2記載の4−メルカプトフェノール金属塩の製造方法。
  5. ビス(4−ヒドロキシフェニル)ポリスルフィドが、フェノールと塩化硫黄との反応により得られたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の4−メルカプトフェノール金属塩の製造方法。
  6. ビス(4−ヒドロキシフェニル)ポリスルフィドが、極性溶媒中、アルカリ金属ハロゲン化物の存在下、フェノールと塩化硫黄との反応により得られたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の4−メルカプトフェノール金属塩の製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の反応により得られた4−メルカプトフェノール金属塩を、さらに酸で処理することを特徴とする4−メルカプトフェノールの製造方法。
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