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JP4269530B2 - 樹脂プーリ付き軸受およびその製造方法 - Google Patents

樹脂プーリ付き軸受およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のタイミングベルトや補機駆動ベルト等において、ベルトの張力調整や走行経路の変更のために使用されるアイドラ軸受やテンショナ軸受等に好適な樹脂プーリ付き軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、自動車の補機にエンジンの回転動力を伝達するための補機駆動用ベルト等で使用される軸受には、その重量軽減ならびにコスト削減のため、転がり軸受の金属製の外輪の外周面に合成樹脂製のプーリを一体成形してなる樹脂プーリ付き軸受が用いられている。
【0003】
従来の樹脂プーリ付き軸受40の一例を、図4および図5を用いて説明する。樹脂プーリ付き軸受40は、転がり軸受41の外周に樹脂プーリ42を一体成形してなる。転がり軸受41は、内輪43、外輪44、玉やころの転動体45等にて構成されている。また、樹脂プーリ42は、転がり軸受41の外輪44に固着した内径円筒部46と、ベルト案内面48を有する外径円筒部47と、内径円筒部46と外径円筒部47の間に設けた円板部49とから構成されている。
【0004】
樹脂プーリ42は、合成樹脂の射出成形によって製造している。すなわち、図6に示すように、上型50と下型51の間に転がり軸受41を芯出し固定し、上型50と下型51とスライド型57の周りのキャビティに溶融樹脂を充填する。
【0005】
ここで、52は内径円筒部46用のキャビティ、53は外径円筒部47用のキャビティ、54は円板部49用のキャビティである。また、内径円筒部用のキャビティ52の片端面には、ランナ56に接続されたゲート孔55が開口している。
【0006】
樹脂プーリ42の成形に際しては、成形金型に転がり軸受41をセットした状態で、ランナ56を介してゲート孔55から溶融樹脂を充填する。各キャビティ52,53,54内に充填された溶融樹脂は固化し、型開きを行って樹脂プーリ42が形成される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
樹脂プーリ42の射出成形に際し、各ゲート孔55から注入された溶融樹脂rは、内径円筒部用のキャビティ52内を軸受の軸方向に流入する。内径円筒部用のキャビティ52内を流れる溶融樹脂rが円板部用のキャビティ54部分に達すると、円板部用のキャビティ54内に流れ込む。これは、円板部49の軸受軸方向の厚みFが、内径円筒部46の軸受径方向の厚みEより大きく、溶融樹脂rは抵抗の少ない厚肉の円板部用のキャビティ54内に進もうとするためである。ただし、溶融樹脂rの全てが円板部用のキャビティ54内に流入するのではなく、一部は内径円筒部用のキャビティ52内をゲート孔55の反対側端面Sに向かって進む。
【0008】
円板部用のキャビティ54内に流入した溶融樹脂r1は、外径円筒部用のキャビティ53内に流入する。外径円筒部用のキャビティ53内に溶融樹脂r1が完全に充填されると、内径円筒部用のキャビティ52のゲート孔55の反対側端面Sにも溶融樹脂r2が充填される。
【0009】
このように、内径円筒部用のキャビティ52のゲート孔55の反対側端面Sには、外径円筒部用のキャビティ53内に溶融樹脂r1が充填された後、溶融樹脂r2が充填されるため、当該反対側端面Sでは溶融樹脂r2の充填に時間がかかってしまう。そのため、溶融樹脂r2が完全に充填される前に反対側端面Sに流入した溶融樹脂r2が硬化し、外径円筒部用のキャビティ53内に溶融樹脂r1が完全に充填された後に、反対側端面Sに溶融樹脂r2が流入できなくなり、反対側端面S部分に空洞が生じたり、あるいは、先に流入した溶融樹脂r2の合流部にて発生するウェルド部の接合強度が低下することがあった。
【0010】
空洞が生じると、樹脂プーリ42の反対側端面S部分において強度が著しく低下する。また、反対側端面Sは転がり軸受41の外輪44の近傍に位置するため、ウェルド部の接合強度が低下すると、使用時に、樹脂製のプーリ42と金属製の外輪44との線膨張係数の違いによって、当該ウェルド部分を起点として、樹脂プーリ42にクラックが発生する。これらの結果、樹脂プーリ42が破損するという問題があった。
【0011】
この発明は、樹脂プーリの内径円筒部におけるゲート孔の反対側端面に空洞やウェルド部の接合強度が低下するのを抑制し、樹脂プーリの破損を防止することができる樹脂プーリ付き軸受およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1は、転がり軸受の外輪の外周面に樹脂製のプーリを一体成形した樹脂プーリ付き軸受であって、前記樹脂プーリは、片端面に樹脂注入用ゲート孔が配置され、かつ前記転がり軸受の外輪に固着する内径円筒部と、ベルト案内面を有する外径円筒部と、内外径円筒部間に設けられた円板部とを有し、前記内径円筒部の軸受径方向の厚みを、前記円板部の軸受軸方向の厚みより大きくしたことを特徴とするものである。
【0013】
なお、内径円筒部の軸受径方向の厚みAと、円板部の軸受軸方向の厚みBとの好ましい関係は、0.7×A≦B≦0.95×Aである。
【0014】
本発明の請求項1の樹脂プーリ付き軸受によると、樹脂プーリの内径円筒部の軸受径方向の厚みを、円板部の軸受軸方向の厚みより大きくしたことで、内径円筒部の片端面のゲート孔より注入した溶融樹脂が、ゲート孔の反対側端面に流入して充填された後、円板部を通して外径円筒部に流入するため、内径円筒部におけるゲート孔の反対側端面に溶融樹脂が素早く充填され、空洞やウェルド部の接合強度が低下するのを抑制できる。
【0015】
本発明の請求項2は、転がり軸受の外輪の外周面に樹脂製のプーリを一体成形した樹脂プーリ付き軸受であって、片端面に樹脂注入用ゲート孔が配置され、かつ前記樹脂プーリは、前記転がり軸受の外輪に固着する内径円筒部と、ベルト案内面を有する外径円筒部と、内外径円筒部間に設けられた円板部およびその円板部に放射状に形成された複数の補強リブとを有し、前記内径円筒部の軸受径方向の厚みを、前記円板部の軸受軸方向の厚みより大きくしたことを特徴とするものである。
【0016】
なお、内径円筒部の軸受径方向の厚みAと、円板部の軸受軸方向の厚みBとの好ましい関係は、0.7×A≦B≦0.95×Aである。
【0017】
本発明の請求項2の樹脂プーリ付き軸受によると、樹脂プーリの内径円筒部の軸受径方向の厚みを、円板部の軸受軸方向の厚みより大きくしたことで、内径円筒部の片端面のゲート孔より注入した溶融樹脂が、ゲート孔の反対側端面に流入して充填された後、円板部を通して外径円筒部に流入するため、内径円筒部におけるゲート孔の反対側端面に溶融樹脂が素早く充填され、空洞やウェルド部の接合強度が低下するのを抑制できる。しかも、内径円筒部の軸受径方向の厚みが円板部の軸受軸方向の厚みより大きくなるように、円板部の厚みを薄くしても、円板部に放射状に形成した複数の補強リブによって補強できる。
【0018】
本発明の請求項4は、転がり軸受の外輪の外周面に樹脂製のプーリを一体成形する樹脂プーリ付き軸受の製造方法であって、片端面に樹脂注入用ゲート孔を有した内径円筒部用のキャビティと、外径円筒部用のキャビティと、内外径円筒部のキャビティ間に設けられた円板部用のキャビティとからなり、前記内径円筒部用のキャビティの軸受径方向の厚みを前記円板部用のキャビティの軸受軸方向の厚みより大きくした成形金型内に、転がり軸受を配置して型締めする型締工程と、前記ゲート孔から溶融樹脂をキャビティ内に射出し、前記内径円筒部用のキャビティの前記ゲート孔とは反対側端面に充填した後、前記円板部用のキャビティと前記外径円筒部用のキャビティとを充填する射出工程とを含む方法である。
【0019】
本発明の請求項4の樹脂プーリ付き軸受の製造方法によると、成形金型の内径円筒部用のキャビティの軸受径方向の厚みを、円板部用のキャビティの軸受軸方向の厚みより大きくしたことで、内径円筒部用のキャビティの片端面のゲート孔より注入した溶融樹脂が、ゲート孔の反対側端面に流入して充填された後、円板部用のキャビティを通して外径円筒部用のキャビティに流入するため、樹脂プーリの内径円筒部におけるゲート孔の反対側端面に溶融樹脂が素早く充填され、空洞やウェルド部の接合強度が低下するのを抑制できる。
【0020】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1について、図1および図2を用いて説明する。
【0021】
図1は、転がり軸受11の外周に樹脂プーリ12を一体成形してなる樹脂プーリ付き軸受10の部分断面図を示している。転がり軸受11は、内輪13、外輪14、玉やころの転動体15等にて構成されている。また、樹脂プーリ12は、転がり軸受11の外輪14に固着した内径円筒部16と、ベルト案内面18を有する外径円筒部17と、内径円筒部16と外径円筒部17の間に設けた円板部19とから構成されている。
【0022】
内径円筒部16の軸受径方向の厚みAは、円板部19の軸受軸方向の厚みBより大きく形成されている。厚みAと厚みBの関係は、A>Bであればよいが、好ましくは、0.7×A≦B≦0.95×Aとする。
【0023】
次に、樹脂プーリ12の成形について、図2を用いて説明する。
【0024】
図2において、成形金型は上型20と下型21とスライド型27とからなり、22は内径円筒部16用のキャビティ、23は外径円筒部17用のキャビティ、24は円板部19用のキャビティである。また、内径円筒部用のキャビティ22の片端面には、ランナ26に接続されたゲート孔25が開口している。
【0025】
樹脂プーリ12の成形に際しては、成形金型に転がり軸受11をセットした状態で、ランナ26を介してゲート孔25から溶融樹脂を充填する。各キャビティ22,23,24内に充填された溶融樹脂は固化し、型開きを行って樹脂プーリ12が形成される。
【0026】
樹脂プーリ12の射出成形に際し、各ゲート孔25から注入された溶融樹脂Rは、内径円筒部用のキャビティ22内を軸受の軸方向に流入する。内径円筒部用のキャビティ22内を流れる溶融樹脂Rが円板部用のキャビティ24部分に達すると、そのまま内径円筒部用のキャビティ22内をゲート孔25の反対側端面Sに向かって流れ込む。これは、内径円筒部16の軸受径方向の厚みAが、円板部19の軸受軸方向の厚みBより大きく、溶融樹脂Rは抵抗の少ない厚肉の内径円筒部用のキャビティ22内に進もうとするためである。ただし、溶融樹脂Rの全てが内径円筒部用のキャビティ22内を反対側端面Sに向かって進むのではなく、一部は円板部用のキャビティ24内に流れ込む。
【0027】
内径円筒部用のキャビティ22内のゲート孔25の反対側端面Sに溶融樹脂R1が完全に充填されると、円板部用のキャビティ24内に流入した溶融樹脂R2が、外径円筒部用のキャビティ23内に充填され、樹脂プーリ12が成形される。
【0028】
このように、各ゲート孔25から注入された溶融樹脂Rは、まず、内径円筒部用のキャビティ22内のゲート孔25の反対側端面Sに流入するため、短時間で反対側端面S部分に溶融樹脂が充填され、空洞やウェルド部の接合強度が低下するのを抑制できる。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2について、図3を用いて説明する。
【0029】
図2は、転がり軸受11の外周に樹脂プーリ31を一体成形してなる樹脂プーリ付き軸受30の断面図を示している。転がり軸受11は、実施の形態1と同様であり、内輪13、外輪14、玉やころの転動体15等にて構成されている。また、樹脂プーリ31は、転がり軸受11の外輪14に固着した内径円筒部32と、ベルト案内面34を有する外径円筒部33と、内径円筒部32と外径円筒部33の間に設けた円板部35と、円板部35の両面に所定間隔置きに放射状に形成した複数の補強リブ36とから構成されている。
【0030】
内径円筒部32の軸受径方向の厚みCは、円板部35の軸受軸方向の厚みDより大きく形成されている。厚みCと厚みDの関係は、C>Dであればよく、好ましくは、0.7×C≦D≦0.95×Cとする。ただし、樹脂プーリ31の円板部35は補強リブ36によって補強されているため、強度上の問題が生じない範囲において、円板部35の軸受軸方向の厚みDを薄くし、D<0.7×Cとなるようにしてもよい。
【0031】
なお、樹脂プーリ31は、図2と同様に、補強リブ用のキャビティを備えた成形金型を用いて射出成形する。
【0032】
このように、補強リブ36を有した樹脂プーリ31においても、実施の形態1と同様、ゲート孔から注入された溶融樹脂は、まず、内径円筒部用のキャビティ内のゲート孔の反対側端面Sに流入するため、短時間で反対側端面S部分に溶融樹脂が充填され、空洞やウェルド部の接合強度が低下するのを抑制できる。
【0033】
【発明の効果】
本発明の樹脂プーリ付き軸受およびその製造方法によれば、樹脂プーリの内径円筒部におけるゲート孔の反対側端面に空洞やウェルド部の接合強度が低下するのを抑制し、樹脂プーリの破損を防止することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における樹脂プーリ付き軸受の部分断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1における樹脂プーリの成形工程の断面図である。
【図3】本発明の実施の形態2における樹脂プーリ付き軸受の部分断面図である。
【図4】従来の樹脂プーリ付き軸受の正面図である。
【図5】図4のV-V断面図である。
【図6】従来の樹脂プーリの成形工程の断面図である。
【符号の説明】
10,30 樹脂プーリ付き軸受
11 転がり軸受
12,31 樹脂プーリ
13 内輪
14 外輪
15 転動体
16,32 内径円筒部
17,33 外径円筒部
18,34 ベルト案内面
19,35 円板部
36 補強リブ

Claims (4)

  1. 転がり軸受の外輪の外周面に樹脂製のプーリを一体成形した樹脂プーリ付き軸受であって、
    前記樹脂プーリは、片端面に樹脂注入用ゲート孔が配置され、かつ前記転がり軸受の外輪に固着する内径円筒部と、ベルト案内面を有する外径円筒部と、内外径円筒部間に設けられた円板部とを有し、
    前記内径円筒部の軸受径方向の厚みを、前記円板部の軸受軸方向の厚みより大きくしたことを特徴とする樹脂プーリ付き軸受。
  2. 転がり軸受の外輪の外周面に樹脂製のプーリを一体成形した樹脂プーリ付き軸受であって、
    前記樹脂プーリは、片端面に樹脂注入用ゲート孔が配置され、かつ前記転がり軸受の外輪に固着する内径円筒部と、ベルト案内面を有する外径円筒部と、内外径円筒部間に設けられた円板部およびその円板部に放射状に形成された複数の補強リブとを有し、
    前記内径円筒部の軸受径方向の厚みを、前記円板部の軸受軸方向の厚みより大きくしたことを特徴とする樹脂プーリ付き軸受。
  3. 内径円筒部の軸受径方向の厚みAと、円板部の軸受軸方向の厚みBとの関係を、0.7×A≦B≦0.95×Aとした請求項1または請求項2記載の樹脂プーリ付き軸受。
  4. 転がり軸受の外輪の外周面に樹脂製のプーリを一体成形する樹脂プーリ付き軸受の製造方法であって、
    片端面に樹脂注入用ゲート孔を有した内径円筒部用のキャビティと、外径円筒部用のキャビティと、内外径円筒部のキャビティ間に設けられた円板部用のキャビティとからなり、前記内径円筒部用のキャビティの軸受径方向の厚みを前記円板部用のキャビティの軸受軸方向の厚みより大きくした成形金型内に、転がり軸受を配置して型締めする型締工程と、
    前記ゲート孔から溶融樹脂をキャビティ内に射出し、前記内径円筒部用のキャビティの前記ゲート孔とは反対側端面に充填した後、前記円板部用のキャビティと前記外径円筒部用のキャビティとを充填する射出工程とを含む樹脂プーリ付き軸受の製造方法。
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