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JP4264976B2 - 膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物、及び該形成性組成物を用いた中空或いは平膜状繊維分離膜の膜シール材 - Google Patents

膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物、及び該形成性組成物を用いた中空或いは平膜状繊維分離膜の膜シール材 Download PDF

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JP4264976B2 JP2003320720A JP2003320720A JP4264976B2 JP 4264976 B2 JP4264976 B2 JP 4264976B2 JP 2003320720 A JP2003320720 A JP 2003320720A JP 2003320720 A JP2003320720 A JP 2003320720A JP 4264976 B2 JP4264976 B2 JP 4264976B2
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Description

本発明は、膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物、及び該形成性組成物を用いた中空或いは平膜状繊維分離膜の膜シール材に関する。具体的には、耐熱性能に優れた膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物、及び該形成性組成物を用いた医療用・工業用分離装置の繊維結束用途に用いられる、スチーム滅菌可能で、且つ、高温下においても長時間使用できる耐熱性を有する中空或いは平膜状繊維分離膜の膜シール材に関する。
一般に、中空糸膜を集束した端部を接着固定する膜シール材として、常温での可撓性、接着性、及び耐薬品性に優れているポリウレタン樹脂を用いることが、広く知られている。
このようなポリウレタン樹脂として、例えば、イソシアネート成分として、液状化ジフェニルメタンジイソシアネートとヒマシ油またはヒマシ油誘導体ポリオールとから得られたイソシアネート基末端プレポリマーをポリオールで硬化させて得られるポリウレタン樹脂が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
膜シール材を用いた医療用機器についてはその用途の性質上、滅菌処理が施される。以前は使用前にエチレンオキサイド及び/又はγ線を用いて滅菌処理することが主流であった。しかしながら、エチレンオキサイドによる滅菌処理の欠点として残留するエチレンオキサイド痕跡が患者に一部アレルギーを誘発することが挙げられ、また、γ線による減菌処理の欠点として同定不能な分解生物を生成する恐れが挙げられる。即ち、エチレンオキサイド及び/又はγ線を用いて滅菌処理を行った場合、患者において透析によって惹起されるある程度の健康のリスクを完全に排除することができないという問題が生じる。
この健康のリスクを排除すべく、ポリウレタン樹脂からなる膜シール材を用いた医療用機器に対し近年、スチーム(100℃以上に加熱された水蒸気をいう。以下同じ。)を用いた滅菌処理が行われるようになっている。しかし、一般にスチームによる滅菌処理は一定時間連続して医療用機器に対して行われることから、前記のようなポリウレタン樹脂では膜シール材として要求される接着性等が著しく低下するという問題が生じる。
このような問題を解決する膜シール材を得る方法として、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下「MDI」と略記)とポリテトラメチレングリコール(以下「PTMG」と略記)とから得られたイソシアネート基末端プレポリマーを、硬化剤成分として、PTMGとヒマシ油又はヒマシ油誘導体ポリオールを混合して成る硬化剤で硬化させる方法(例えば、特許文献2参照)、ポリオールとしてポリイソシアネートとアミン系ポリオール及び他のポリオールとからの水酸基末端ウレタンプレポリマーを使用する方法(例えば、特許文献3参照)が提案されている。
しかしながら、PTMGを用いて得られる膜シール材をスチームにより滅菌処理した場合、クラックが入り易くしかも吸水し易いという欠点がある。一方、ポリイソシアネートとアミン系ポリオール及び他のポリオールとからなる水酸基末端ウレタンプレポリマーを得るには、アミン系ポリオール自体の活性の強さから、使用できるポリイソシアネートがそれ自体活性の比較的弱い脂肪族系のポリイソシアネートに限定され、また、得られる膜シール材の硬度が不足するという欠点がある。
一方で近年、工業用分離装置の繊維結束用途の膜シール材として、耐熱性能を有するポリウレタン樹脂が要望されている。現在は該分野における膜シール材としてエポキシ樹脂が汎用されているが、その樹脂特性から硬すぎて加工しにくく、また、連続使用によりクラックが発生し易いという問題がある。
即ち、技術水準からの公知のポリウレタン樹脂を用いたシール材は十分に温度に安定でなく、これらは高温に長時間さらされることで接着強度が低下し、さらにリークや剥離が発生する等、膜シール材として現在所望される耐熱性能等の諸要求性能を満たせないという問題がある。
特開昭53−98398号公報(第1〜4頁) 特開平7−47239号公報(第2〜3頁) 特公平6−22607号公報(第1〜3頁)
このように、従来の膜シール材用ポリウレタン樹脂は、スチーム滅菌時の膨潤によりポリカーボネートなどのハウジングとの接着強度が低下し、このため、接着層で剥離が起こり密封性が低下するという問題を有する。またプライマーを使用すると上記問題を解決できるが、プライマー塗布工程が煩雑であること等の問題を有する。
本発明の目的は、このような問題を解決する膜シール材用ポリウレタン樹脂をもたらす組成物、とりわけ、近年特に要望の強い耐熱性能や接着性能等に優れた膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物を提供することにある。
本発明の目的はまた、スチーム滅菌に十分対応可能であり、また、高温下に於いても長時間の使用に耐えうる耐熱性を有する、ポリウレタン樹脂製の中空或いは平膜状繊維分離膜の膜シール材を提供することにある。
本発明者等は上記一連の問題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、イソシアネート成分(A)とポリオール成分(B)とから成る膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物において、ポリオール成分(B)として特定のポリオール成分を用いることにより、上記一連の問題を解決することができることを見い出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は次の(1)〜(2)のとおりである。
(1) イソシアネート成分(A)と、ポリオール成分(B)とから成る中空或いは平膜状繊維分離膜の膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物において、ポリオール成分(B)として、ヒマシ油及び/ 又はヒマシ油脂肪酸とトリメチロールアルカンから成る変性体(B−1)を用いることを特徴とする、中空或いは平膜状繊維分離膜の膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物。
(2) ヒマシ油及び/又はヒマシ油脂肪酸とトリメチロールアルカンから成る変性体(B−1)が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したトリメチロールアルカンヒマシ油脂肪酸モノエステルの数平均分子量(Mn)を450とした場合、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)450以上の面積比が90%以上、且つ、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn) が1.4以下であることを特徴とする、(1)に記載の中空或いは平膜状繊維分離膜の膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物。
本発明による膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物を用いることで、特に、優れた耐熱性能を奏することが可能となり、該組成物を用いた中空或いは平膜状繊維分離膜の膜シール材は、スチーム滅菌処理を行っても接着強度が衰えないという優れた効果を奏する。この優れた効果は、近年において所望される中空繊維分離膜を用いた医療用、工業用流体分離装置の中空繊維結束材として極めて好適に使用することができる。
また、本発明による膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物を用いることで、特に、優れた耐熱性能を奏することが可能となり、該組成物を用いた中空或いは平膜状繊維分離膜の膜シール材は、50℃の繰り返し加圧を行っても破損が発生しないという優れた効果を奏する。この優れた効果は、近年において所望される中空繊維分離膜を用いた医療用、工業用流体分離装置の中空繊維結束材として極めて好適に使用することができる。
本発明をさらに詳細に説明する。
本発明においては、イソシアネート成分(A)は特に限定されず、1分子中にイソシアネート基を2個以上含む化合物であれば、いずれも使用することが可能である。1分子中にイソシアネート基を2個以上含む化合物としては、例えば、トルエンジイソシアネート、MDI、パラフェニレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4´,4"−トリイソシアネート、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート等の芳香族系イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10−デカンジイソシアネート、1,12−ドデカンジイソシアネート、シクロブタン1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,3−および1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4−および2,6−ヘキサヒドロトルイレンジイソシアネート、ヘキサヒドロ−1,3−および−1,4−フェニルジイソシアネート、ペルヒドロ−2,4´−および−4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族系または脂環族系イソシアネート、あるいはこれら一連のイソシアネートの一部をイソシアヌレート変性、ビウレット変性、アロファネート変性、ウレトジオン変性、ウレトイミン変性、カルボジイミド変性、オキサゾリドン変性、アミド変性、イミド変性したもの等が挙げられる。
本発明においては、1分子中にイソシアネート基を2個以上含む化合物として、芳香族系イソシアネートあるいは芳香族系イソシアネートの一部をイソシアヌレート変性、ビウレット変性、アロファネート変性、ウレトジオン変性、ウレトイミン変性、カルボジイミド変性、オキサゾリドン変性、アミド変性、イミド変性したものを使用するのが好ましく、MDIあるいはMDIの一部をイソシアヌレート変性、ビウレット変性、アロファネート変性、ウレトジオン変性、ウレトイミン変性、カルボジイミド変性、オキサゾリドン変性、アミド変性、イミド変性したものを使用するのがより好ましい。中でも、作業環境に優れ、且つ、得られる膜シール材に要求される物性として好適なものが得られる等の観点から、MDIあるいはMDIの一部をカルボジイミド変性したものを使用するのがより好ましい。
本発明においてはさらに、イソシアネート成分(A)として、作業環境に優れ、得られる膜シール材に要求される物性として好適なものが得られ、且つ、膜シール材の生産性にも優れる等の観点から、これら一連の1分子中にイソシアネート基を2個以上含む化合物と、活性水素を2個以上有する化合物とを反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマーを使用するのが好ましい。
該イソシアネート基末端プレポリマーは、イソシアネート基と活性水素基の当量比が1.1〜100.0、好ましくは3.0〜90.0、中でも、膜シール材の製造時に於いて成形加工性に優れるとの観点から5.0〜80.0の範囲で反応させて得ることが好ましい。なお、該イソシアネート基末端プレポリマーを得るための反応は、通常行われるウレタン化反応を用いることができる。該イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基含有量は3〜30質量%、好ましくは5〜28質量%、中でも、膜シール材の製造時に於いて成形加工性に優れるとの観点から10〜26質量%であることが好ましい。
活性水素を2個以上有する化合物としては、例えば、低分子グリコール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリラクトン系ポリオール、ヒマシ油系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール等があげられる。これらは、単独もしくは2種類以上の混合物として使用することができる。
低分子グリコールとしては、例えば、2価のもの、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−、1,3−または1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサングリコール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、水添ビスフェノールAなど、また、3〜8価のもの、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられる。低分子グリコールの分子量は50〜200である。
ポリエーテル系ポリオールとしては、上記低分子ポリオールのアルキレンオキシド(炭素数2〜4個のアルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等)付加物、およびアルキレンオキサイドの開環重合物があげられ、具体的にはポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、PTMG、またはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合物であるチップドエーテル等が挙げられる。ポリエーテル系ポリオールの分子量は200〜7000である。なお、イソシアネート基末端プレポリマーを得るうえでポリエーテル系ポリオールを用いる場合、膜シール材の製造時に於いて成形加工性に優れるとの観点から、分子量は500〜5000であることが好ましい。
ポリエステル系ポリオールとしては、ポリカルボン酸(脂肪族飽和もしくは不飽和ポリカルボン酸、アゼライン酸、ドデカン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、リシノール酸、2量化リノール酸および/または芳香族ポリカルボン酸、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸)とポリオール(上記低分子ポリオールおよび/またはポリエーテルポリオール)との縮合重合により得られるポリオールが挙げられる。ポリエステル系ポリオールの分子量は200〜5000である。なお、イソシアネート基末端プレポリマーを得るうえでポリエステル系ポリオールを用いる場合、膜シール材の製造時に於いて成形加工性に優れるとの観点から、分子量は500〜3000であることが好ましい。
ポリラクトン系ポリオールとしては、グリコール類やトリオール類の重合開始剤に、ε−カプロラクトン、α−メチル−ε−カプロラクトン、ε−メチル−ε−カプロラクトン等、および/またはβ−メチル−δ−バレロラクトン等を有機金属化合物、金属キレート化合物、脂肪酸金属アシル化合物等の触媒の存在下で付加重合させたポリオールが挙げられる。ポリラクトン系ポリオールの分子量は200〜5000である。なお、イソシアネート基末端プレポリマーを得るうえでポリラクトン系ポリオールを用いる場合、膜シール材の製造時に於いて成形加工性に優れるとの観点から、分子量は500〜3000であることが好ましい。
ヒマシ油系ポリオールとしては、ヒマシ油脂肪酸とポリオール(上記低分子ポリオール及び/又はポリエーテルポリオール)との反応により得られる線状または分岐状ポリエステル、例えばヒマシ油脂肪酸のジグリセライド、モノグリセライド、ヒマシ油脂肪酸とトリメチロールアルカンとのモノ、ジ、またはトリエステル、ヒマシ油脂肪酸とポリプロピレングリコールとのモノ、ジ、またはトリエステル等が挙げられる。ヒマシ油系ポリオールの分子量は300〜4000である。なお、イソシアネート基末端プレポリマーを得るうえでヒマシ油系ポリオールを用いる場合、膜シール材の製造時に於いて成形加工性に優れるとの観点から、分子量は500〜3000であることが好ましい。
ポリオレフィン系ポリオールとしては、ポリブタジエンもしくはブタジエンとスチレンあるいはアクリロニトリルとの共重合体の末端に水酸基を導入したポリブタジエン系ポリオールが挙げられる。
その他、末端にカルボキシル基および/またはOH基を有するポリエステルにアルキレンオキシド、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等を付加反応させて得られるポリエーテルエステルポリオールも挙げられる。
本発明においては、イソシアネート成分(A)として上記のイソシアネート基末端プレポリマーを用いる場合、該イソシアネート基末端プレポリマーを得るための活性水素を2個以上有する化合物、即ちポリオール成分(B)として、ポリエステル系ポリオール及び/又はヒマシ油系ポリオールを選択することが好ましい。中でも、作業環境に優れ、得られる膜シール材に要求される物性として好適なものが得られ、且つ、膜シール材の生産性にも優れる等の観点から、ヒマシ油系ポリオールを選択することがより好ましい。
本発明におけるポリオール成分(B)としては、ヒマシ油及び/又はヒマシ油脂肪酸(ヒマシ油やヒマシ油脂肪酸に水素を導入して飽和化させた水素添加ヒマシ油や水素添加ヒマシ油脂肪酸も含まれる)と、トリメチロールアルカン(例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、トリメチロールペンタン、トリメチロールヘキサン、トリメチロールヘプタン、トリメチロールオクタン、トリメチロールノナン、トリメチロールデカン)から成る、例えばエステル交換反応等により得られる変性体(B−1)を用いる。
本発明における最大の特徴はこの点にある。即ち、該変性体(B−1)を選択して用いることで、優れた耐熱性能を有することが可能になる。この耐熱性能の付与により、スチーム滅菌後のハウジング接着強度の低下率を抑えることができるという優れた効果を得ることが可能な中空或いは平膜状繊維分離膜の膜シール材を得ることが可能となり、また、高温下において長時間使用可能な中空或いは平膜状繊維分離膜の膜シール材を得ることが可能となる。
本発明においては、該変性体(B−1)の数平均分子量は150〜2000であることが好ましく、中でも、中空或いは平膜状繊維分離膜の膜シール材としての所望される機械物性等の性能を具備できるとの観点から300〜1200であることがより好ましい。
また、該変性体(B−1)の平均水酸基価は80〜1500(mgKOH/g)であることが好ましく、中でも、中空或いは平膜状繊維分離膜の膜シール材としての所望される機械物性等の性能を具備できるとの観点から、120〜600(mgKOH/g)であることがより好ましい。中でも、得られる膜シール材に要求される物性として好適なものが得られ、且つ、膜シール材の生産性にも優れる等の観点から、平均水酸基価が200〜400(mgKOH/g)であることが最も好適である。
該変性体(B−1)は、GPCで測定したトリメチロールアルカンヒマシ油脂肪酸モノエステルの数平均分子量(Mn)を450とした場合、GPCで測定した該変性体(B−1)の数平均分子量(Mn)450以上の面積比が90%以上、且つ、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.4以下であることが、得られる膜シール材の使用時に於ける溶出物を許容レベルに抑えることができるとの観点から好ましい。GPCで測定したトリメチロールアルカンヒマシ油脂肪酸モノエステルの数平均分子量450を基にGPCで測定した数平均分子量(Mn)450以上の面積比が90%未満、又は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.4を超える場合、過マンガン酸カリウム消費量として表される溶出物の増加が起こり、好ましくない。なお、該GPC測定はいずれも、3官能のポリプロピレングリコールから得られた検量線を用いた値である。
該溶出物の多少については、日本薬局方収載の「プラスチック製医薬品容器試験法」に於ける「水性注射剤容器試験」に準じた溶出物試験方法により測定され、過マンガン酸カリウム消費量の差として表される。本発明に於いては、該差は1.0ml以下、中でも0.7ml以下であることが好ましく、とりわけ、本発明に於けるシール材の用途を鑑み、溶出物が著しく少ないと認められる0.5ml以下であることが最も好ましい。
本発明においては、ポリオール成分(B)として、該変性体(B−1)以外の活性水素基含有化合物を、該変性体(B−1)と併用することができる。
この、該変性体(B−1)と併用可能な活性水素基含有化合物としては、前述の低分子グリコール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリラクトン系ポリオール、ヒマシ油系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール等、イソシアネート成分(A)として上記のイソシアネート基末端プレポリマーを得る際に用いられる活性水素を2個以上有する化合物が挙げられる。
この、該変性体(B−1)と併用可能な活性水素基含有化合物としてはまた、低分子ポリアミンや低分子アミノアルコール(例えば、アミノ化合物のオキシアルキル化誘導体であるN,N,N´,N´−テトラキス[2−ヒドロキシプロピル]エチレンジアミン、N,N,N´,N´−テトラキス[2−ヒドロキシエチル]エチレンジアミン等の、エチレンジアミン等のアミノ化合物のプロピレンオキサイドもしくはエチレンオキサイド付加物、モノ、ジおよびトリエタノールアミン、N−メチル−N,N´−ジエタノールアミン等)等といったアミン系化合物も挙げることができる。
本発明に於ける膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物としては、ポリイソシアネート成分(A)に於けるイソシアネート基とポリオール成分(B)に於ける活性水素基との当量比が、イソシアネート基/活性水素基で0.8〜1.6の範囲内、中でも0.9〜1.2の範囲内となるようにするのが好ましい。
なお、本発明に於いては、必要に応じて、ポリオール中の活性水素含有基と有機ポリイソシアネート中のイソシアネート基の反応を促進させる有機スズ化合物などの金属化合物系触媒やトリエチレンジアミン(TEDA)、テトラメチルヘキサメチレンジアミン(TMHMDA)、ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、ジメチルシクロヘキシルアミン(DMCHA)、ビスジメチルアミノエチルエーテル(BDMAEA)などの3級アミン触媒等、公知のウレタン化触媒を使用することができる。
本発明に於ける膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物を用いて中空或いは平膜状繊維分離膜の膜シール材を得る場合、該組成物を室温下で反応させるか、又はゲル化時間の短縮や混合粘度の低下を図るべく、ポリイソシアネート成分(A)とポリオール成分(B)を各々30〜60℃に加温して反応させても良い。
本発明に於ける中空或いは平膜状繊維分離膜の膜シール材は、例えば、121℃雰囲気下で20分間継続してスチーム滅菌処理を行った後でも接着強度が衰えない(具体的には、121℃雰囲気下で20分間継続してスチーム滅菌処理を行う前と行った後に於ける接着強度保持率が70%以内、好ましくは85%以内)という、膜シール材として所望される優れた性能を具備することができる。
また、本発明に於ける中空或いは平膜状繊維分離膜の膜シール材は、50℃で5万回程度の繰り返し加圧を行っても破損しないという、膜シール材として所望される優れた耐熱性能をも具備することができる。
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらの例になんら限定して解釈されるものではない。
製造例1:主剤(イソシアネート成分)の製造
温度計、攪拌機、窒素シール管、冷却管を備えた2Lサイズの4つ口フラスコの内部を窒素置換した。これに、MDI(1)を208g、MDI(2)を530gを仕込み、撹拌を開始した。液温度を50℃としたところで、ポリオール(1)を262g仕込み、窒素雰囲気下、70℃で3時間混合撹拌しながら反応させて、イソシアネート基末端プレポリマー(A−1)を得た。該プレポリマーのイソシアネート基含有量は19.0質量%、25℃に於ける粘度は1700mPa・sであった。
製造例2:主剤(イソシアネート成分)の製造
温度計、攪拌機、窒素シール管、冷却管を備えた2Lサイズの4つ口フラスコの内部を窒素置換した。これに、MDI(1)を157g、MDI(2)を400gを仕込み、撹拌を開始した。液温度を50℃としたところで、ポリオール(2)を443g仕込み、窒素雰囲気下、70℃で3時間混合撹拌しながら反応させて、イソシアネート基末端プレポリマー(A−2)を得た。該プレポリマーのイソシアネート基含有量は15.0質量%、25℃に於ける粘度は1200mPa・sであった。
MDI(1):
4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、商品名「ミリオネートMT(日本ポリウレタン工業(株)製)」
MDI(2):
上記MDI(1)をカルボジイミド変性したもの、商品名「ミリオネートMTL(日本ポリウレタン工業(株)製)」、イソシアネート基含有量=28.6(質量%)
ポリオール(1):
ヒマシ油、商品名「Uric H−30(伊藤製油(株)製)」、平均官能基数=2.7、水酸基価=160(mgKOH/g)、トリメチロールアルカンヒマシ油脂肪酸モノエステルの数平均分子量(Mn)を450とした場合に於けるGPC測定値:Mn=450以上のピーク面積比99%:Mw/Mn=1.03
ポリオール(2):
ヒマシ油のポリプロピレングリコール変性体、商品名「#489X(伊藤製油(株)製)」、平均官能基数=2.0、水酸基価=51(mgKOH/g)、トリメチロールアルカンヒマシ油脂肪酸モノエステルの数平均分子量(Mn)を450とした場合に於けるGPC測定値:Mn=450以上のピーク面積比98%:Mw/Mn=1.20
ポリオール(3):
ヒマシ油のトリメチロールプロパン変性体、商品名「#1296X(伊藤製油(株)製)」、平均官能基数=3.0、水酸基価=267(mgKOH/g)、トリメチロールアルカンヒマシ油脂肪酸モノエステルの数平均分子量(Mn)を450とした場合に於けるGPC測定値:Mn=450以上のピーク面積比94%:Mw/Mn=1.23
ポリオール(4):
ヒマシ油脂肪酸のトリメチロールオクタン変性体、商品名「#1298X(伊藤製油(株)製)」、平均官能基数=3.0、水酸基価=245(mgKOH/g)、トリメチロールアルカンヒマシ油脂肪酸モノエステルの数平均分子量(Mn)を450とした場合に於けるGPC測定値:Mn=450以上のピーク面積比95%:Mw/Mn=1.21
ポリオール(5):
ヒマシ油のトリメチロールプロパン変性体、商品名「#1160X(伊藤製油(株)製)」、平均官能基数=3.0、水酸基価=360(mgKOH/g)、トリメチロールアルカンヒマシ油脂肪酸モノエステルの数平均分子量(Mn)を450とした場合に於けるGPC測定値:Mn=450以上のピーク面積比92%:Mw/Mn=1.30
ポリオール(6):
ヒマシ油のトリメチロールプロパン変性体、商品名「#1297X(伊藤製油(株)製)」、平均官能基数=3.0、水酸基価=340(mgKOH/g)、トリメチロールアルカンヒマシ油脂肪酸モノエステルの数平均分子量(Mn)を450とした場合に於けるGPC測定値:Mn=450以上のピーク面積比88%:Mw/Mn=1.42
ポリオール(7):
N,N,N´,N´−テトラキス[2−ヒドロキシプロピル]エチレンジアミン、平均官能基数=4.0、水酸基価=760(mgKOH/g)

[GPCの測定条件及び方法]
装置名:HLC−8120(商品名、東ソー(株)製)
カラム:充填剤として、TSKgel G2000HXL、TSKgel G3000HXL(いずれも商品名、東ソー(株)製)をそれぞれ2本ずつ充填した4本のカラムを接続して、カラム温度40℃にて測定
検出器:RI(屈折率)計
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)(流量:1ml/min.、40℃)
検量線:以下の3官能のポリプロピレングリコールを用いて、検量線を得た。サンニックスGP−250(三洋化成工業(株)製、数平均分子量=250)、サンニックスGP−400(三洋化成工業(株)製、数平均分子量=400)、サンニックスGP−600(三洋化成工業(株)製、数平均分子量=600)、サンニックスGP−1000(三洋化成工業(株)製、数平均分子量=1000)、サンニックスGP−3000(三洋化成工業(株)製、数平均分子量=3000)、サンニックスGP−4000(三洋化成工業(株)製、数平均分子量=4000)、サンニックスGP−5000(三洋化成工業(株)製、数平均分子量=5000)
サンプル:サンプル0.05gのTHF10ml溶液
測定:始めにトリメチロールアルカンヒマシ油脂肪酸モノエステルについて、3官能のポリプロピレングリコールを検量線として、屈折率差により検出して得られたチャートから、ピーク面積比、Mw及びMnを求めた。次に調製した各サンプルについて、同じ検量線に基づき屈折率差により検出して得られたチャートから、始めに測定したトリメチロールアルカンヒマシ油脂肪酸モノエステルのMnを450とした場合における、ピーク面積比、Mw及びMnを求め、さらに、これを基にMw/Mnを算出した。
製造例3:硬化剤(ポリオール成分)の調製
以下に示す配合比により、硬化剤を調製した(合計100質量部)。
(B−1):
ポリオール(3)100質量部。
(B−2):
ポリオール(4)100質量部。
(B−3):
ポリオール(5)100質量部。
(B−4):
ポリオール(1)44質量部、ポリオール(3)44質量部、ポリオール(7)12質量部。
(B−5):
ポリオール(1)82質量部、ポリオール(7)18質量部。
(B−6):
ポリオール(6)100質量部。
実施例1〜6、比較例1・2
主剤(A−1)並びに(A−2)、硬化剤(B−1)〜(B−6)を表1の組み合わせで、液温35℃、イソシアネート基/活性水素基=1.00(当量比)になるように主剤と硬化剤を混合して、膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物を得た。
[硬化物の硬度測定]
主剤と硬化剤からなる表1に示す組み合わせによる膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物各々を減圧脱泡(10〜20kPaで3分間)した後、ステンレス製金型(100mm×100mm×8mm)に仕込んだ。これを25℃で7日間静置キュアした後に脱型し、硬化物を得た。得られた硬化物について、25℃に於けるショアD硬度を測定した。結果を表1に示す。
[ハウジングとの接着性]
主剤と硬化剤からなる表1に示す組み合わせによる膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物各々を減圧脱泡(10〜20kPaで3分間)した後、ポリカーボネート製ハウジング(44mm×10mm)に仕込み、25℃で7日間静置キュアして、硬化物を得た。得られた硬化物について、剥離したときの力を接着面積で除した値を接着強度とし、スチーム滅菌処理を行う前と行った後の接着強度を各々測定、両方の値を基に接着強度保持率を算出した。なお、スチーム滅菌処理は121℃雰囲気下で20分間行った。結果を表1に示す。
[溶出物試験]
主剤と硬化剤からなる表1に示す組み合わせによる膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物各々を減圧脱泡(10〜20kPaで3分間)した後、離型紙上に約1〜2mmの厚みになるように仕込み、25℃で7日間静置キュアして、硬化物を得た。該硬化物について、日本薬局方収載の「プラスチック製医薬品容器試験法」に於ける「水性注射剤容器試験」に準じた溶出物試験方法により、得られた樹脂を細断・浸水し121℃による1時間の高圧蒸気滅菌処理を施した試験液を得た。他方、、ブランクとして樹脂を浸水していない(即ち水のみ)液について同様の処理を施した空試験液を得た。これら両者について各々過マンガン酸カリウム消費量を測定、両者の消費量の差を求めた(差としての値が小さいほど、溶出物は少ないことになる)。結果を表1に示す。
Figure 0004264976
実施例7
表1に示す主剤と硬化剤の組み合わせのうち、実施例1の組み合わせによる組成物を用い、ポリスルホン中空糸9000本を束ねた集束体の両端部における中空糸膜相互間、および集束体を挿入したカートリッジケース(内径15.4cm、PVC製)と集束体との間を、90分、35℃の遠心接着により膜シールした。さらに、このカートリッジケースをハウジング内にシール材を介して着脱自在に収納して中空糸型膜モジュールを形成した。これを、最高水圧200kPaで温度50℃の水の濾過運転と逆圧濾過を50000サイクル繰り返したが、膜シール材部分や中空糸膜に破損は生じなかった。
比較例3
表1に示す主剤と硬化剤の組み合わせのうち、比較例1の組み合わせによる組成物を用いた以外は、実施例5と同様にして中空糸型膜モジュールを形成し、実施例5と同様に濾過運転と逆圧濾過を繰り返した。しかし、20000サイクルを経た時点で膜シール材部分に破損が生じた。
表3に示すように、実施例においては高温での長時間スチーム滅菌後に於ける接着強度の変化が殆どない結果となった。これに対し、比較例では高温での長時間熱蒸気滅菌後に於ける接着強度の低下が現れる結果となった。
また、実施例7において、繰返加圧後の状態が良好であるという結果が得られた。これに対し、比較例3では繰返加圧中に破損が見受けられるという結果となった。
本発明に於ける中空或いは平膜状繊維分離膜の膜シール材は、前述のような優れた耐熱性能を有する。従って、中空繊維分離膜を用いた医療用、工業用分離装置の中空繊維結束材として好適に使用することが可能である。これらの医療用、工業用分離装置としては、具体的には、血漿分離器、人工肺、人工腎臓、人工肝臓、家庭用・工業用水処理装置等が挙げられる。
なお、本発明に於ける膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物は、その属性としての各種物性、例えば硬度、引張り強さ、接着性等に優れていることから、各種の産業用シール材、例えば電気用、自動車用、建築用、土木用シール材或いは各種の緩衝材として、また製紙、製鉄、印刷等の工業用ロール、紙送りロール等のOA機器部品を得るための組成物としても用いることが可能である。

Claims (2)

  1. イソシアネート成分(A)と、ポリオール成分(B)とから成る中空或いは平膜状繊維分離膜の膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物において、ポリオール成分(B)として、ヒマシ油及び/ 又はヒマシ油脂肪酸とトリメチロールアルカンから成る変性体(B−1)を用いることを特徴とする、中空或いは平膜状繊維分離膜の膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物。
  2. ヒマシ油及び/又はヒマシ油脂肪酸とトリメチロールアルカンから成る変性体(B−1)が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したトリメチロールアルカンヒマシ油脂肪酸モノエステルの数平均分子量(Mn)を450とした場合、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)450以上の面積比が90%以上、且つ、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.4以下であることを特徴とする、請求項1に記載の中空或いは平膜状繊維分離膜の膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物。
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