JP4264460B1 - 破断分割性および被削性に優れた破断分割型コネクティングロッド用鋼 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】破断分割性および被削性に優れた破断分割型コネクティングロッド用鋼は、C:0.25〜0.5%(質量%の意味、以下同じ)、Si:2.0%以下(0%を含まない)、Mn:0.50〜2.0%、P:0.015〜0.080%、S:0.01〜0.2%、V:0.20%以下(0%を含まない)、Cr:1.0%以下(0%を含まない)、Ti:0.01〜0.10%、およびN:0.01%以下(0%を含まない)を含有しており、下記式で表されるf値が0.003以上である。また硫化物系介在物の平均アスペクト比が15以下になっている。
f=[Ti]−[N]×48/14
[式中、[Ti]および[N]は、それぞれ鋼中におけるTiおよびNの含有量(質量%)を示す。]
【選択図】なし
Description
断分割性を高める為には、合金元素の添加が有効である(図1のTi量0.125%の例を参照)。しかし、Tiを多く添加すると、被削性が低下する。従来技術から考えれば、破断分割性と被削性とはトレードオフの関係にあり、これらを両立するための具体策は示されていなかった。
に、この幅1μm以上の硫化物系介在物の平均アスペクト比(長さ/幅)が15以下である点に要旨を有する。
f=[Ti]−[N]×48/14 … (1)
[式中、[Ti]および[N]は、それぞれ鋼中におけるTiおよびNの含有量(質量%)を示す。]
は、以下の通りである。
Cは、強度を確保するため、および破断分割性を高めるために必要な元素である。そこでC量の下限を0.25%と定めた。C量は、好ましくは0.30%以上、より好ましくは0.35%以上である。しかしC量が過剰であると被削性が低下する。そこでC量を、0.5%以下と定めた。C量は、好ましくは0.48%以下、より好ましくは0.45%以下である。
Siは、鋼を溶製する際の脱酸元素として有用である。この効果を充分に発揮させるためにSi量は、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.05%以上、さらに好ましくは0.10%以上である。しかしSi量が過剰であると被削性および熱間加工性が低下する。そこでSi量を2.0%以下と定めた。Si量は、好ましくは1%以下、より好ましくは0.7%以下である。
Mnは、溶製時に脱酸および脱硫元素として作用すると共に、鋳造時の割れを防止する元素である。さらにMnは、Sと結合して硫化物系介在物(例えば、MnS等)を形成して、破断分割時に切欠効果を発揮し、破断分割性を向上させる。これらの効果を充分に発揮させるために、Mn量を0.50%以上と定めた。Mn量は、好ましくは0.70%以上、より好ましくは0.90%以上である。しかしMn量が過剰であると、金属組織中にベイナイトが生成し、被削性および破断分割性が低下する。そこでMn量を2.0%以下と定めた。Mn量は、好ましくは1.8%以下、より好ましくは1.5%以下である。
Pは粒界に偏析して靭延性を低下させるため、破断分割性を向上させるのに有効な元素である。そこでこの効果を十分に発揮させるため、P量を0.015%以上と定めた。P量は、好ましくは0.020%以上、より好ましくは0.030%以上である。また、Pは過剰になると、鋼の熱間加工性が低下する。そこでP量を0.080%以下と定めた。P量は、好ましくは0.070%以下、より好ましくは0.060%以下である。
Sは、硫化物系介在物(例えばMnS等)を形成して、破断分割時の切欠効果を発揮して破断分割性を向上させると共に、被削性を向上させる元素である。これらの効果を充分に発揮させるために、S量は、0.01%以上と定めた。S量は好ましくは0.020%以上、より好ましくは0.030%以上である。しかしS量が過剰になると、熱間加工性が低下する。そこでS量を0.2%以下と定めた。S量は、好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.07%以下である。
Vは、鋼の強度を確保するため、および破断分割性を向上させるために有用な元素である。この効果を十分に発揮させるために、V量は好ましくは0.02%以上、より好ましくは0.05%以上である。しかしV量が多すぎてもその効果は飽和し、また過剰添加は被削性の低下やコスト上昇を招く。そこでV量を0.20%以下と定めた。V量は好ましくは0.19%以下、より好ましくは0.17%以下である。
Crは、耐力や疲労強度等の強度上昇に寄与する元素である。この効果を充分に発揮させるには、Cr量は、好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.10%以上、さら
に好ましくは0.13%以上である。しかしCr量が過剰になると、鋼の被削性が低下する。そこでC量を1.0%以下と定めた。Cr量は、好ましくは0.90%以下、より好ましくは0.70%以下である。
Tiは、鋼の破断分割性を向上させるために重要な元素である。この効果を充分に発揮させるためにTi量を0.01%以上と定めた。Ti量は、好ましくは0.018%以上、より好ましくは0.020%以上である。しかしTi量を多くすると、鋼の被削性が低下する。さらに後述する有効Ti量(f値)が高まるようにしておけば、Tiを僅かに添加しただけで急激に破断分割性が向上し、さらに添加量を増やしても破断分割性は向上しない。従ってTiは、後述の有効Ti量(f値)を確保できる限り、極力少なくするのが望ましい。そこでTiを0.10%以下と定めた。Ti量は、好ましくは0.08%以下、より好ましくは0.07%以下、特に0.06%以下である。
本発明は、被削性改善のためにTi添加量を低減する一方、この少量のTiを有効に利用して破断分割性も効果的に改善しようとするものである。鋼中のN量を制限することによってTiNの形成を抑制でき、少量のTiを有効利用できる。そこでN量を0.01%以下と定めた。N量は、好ましくは0.009%以下、より好ましくは0.007%以下である。なお、N量の下限については特に限定されないが、0.002%以上であっても良い。
Ca:0.005%以下(0%を含まない)、
Mg:0.005%以下(0%を含まない)、
Te:0.1%以下(0%を含まない)、
REM:0.3%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種
Zr、Ca、Mg、TeおよびREMは、硫化物系介在物(MnS等)を球状化して、破断分割性を向上させるのに有用な元素であり、必要に応じて鋼に含有させてもよい。特にMnが多くなるほど破断分割性が低下し易くなるため、この影響を極力避けるためには、Zr、Ca、Mg、Te又はREMなどを添加することが推奨される。この効果を充分に発揮させるために、Zr量は、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.05%以上、Ca量は、好ましくは0.0001%以上、より好ましくは0.001%以上であり、Mg量は、好ましくは0.0001%以上、より好ましくは0.001%以上であり、Te量は、好ましくは0.0001%以上、より好ましくは0.001%以上であり、REM量は、好ましくは0.0001%以上、より好ましくは0.001%以上である。
れぞれを単独で添加してもよく、組み合わせて添加してもよい。
Nb:0.05%以下(0%を含まない)
Al、Nbは脱酸および結晶粒微細化に有用な元素であり、強度向上に寄与する。この効果を十分に発揮させるためには、Al量は好ましくは0.01%超、より好ましくは0.02%以上、Nb量は好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.02%以上である。しかしこれらの添加が多すぎてもその効果は飽和するため、その上限を上記のように定めた。Al量は、より好ましくは0.04%以下(特に0.035%以下)、Nb量は、より好ましくは0.045%以下(特に0.040%以下)である。なお本発明では上述したように鋼にCaを添加する場合がある。Caを添加するとノズルが詰まりやすくなるため、Caを添加する場合には、Al量は、好ましくは0.01%以下、より好ましくは0.007%以下にすることが望ましい。
Ni:1.0%以下(0%を含まない)、
Mo:1.0%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種
Cu、NiおよびMoは、鋼の強度向上に寄与する元素であり、必要に応じて鋼に含有させてもよい。この効果を充分に発揮させるために、Cu量は、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.05%以上であり、Ni量は、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.1%以上であり、Mo量は、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.1%以上である。しかし、Cu量が過剰になると、製造時に鋼表面に疵が発生する。また、Ni量は多すぎてもその効果は飽和し、過剰添加はコスト上昇を招く。さらに、Mo量が過剰になると鋼の被削性が低下する。そこでこれらの元素を含有させる場合、その上限を上記のように定めた。Cu量は、より好ましくは0.5%以下、Ni量は、より好ましくは0.5%以下、Mo量は、より好ましくは0.7%以下である。
Biは被削性向上に寄与する元素である。この効果を十分に発揮させるために、Bi量は、好ましくは0.001%以上、より好ましくは0.01%以上である。しかし、Biの添加量が多すぎてもその効果は飽和するため、その上限を上記のように定めた。Bi量は、より好ましくは0.08%以下である。
f=[Ti]−[N]×48/14 … (1)
[式中、[Ti]および[N]は、それぞれ鋼中におけるTiおよびNの含有量(質量%)を示す。]
当たり100個以上存在しており、この幅1μm以上の硫化物系介在物のアスペクト比(長さ/幅)の算術平均値(平均アスペクト比)が15以下である。
より好ましくは400個以上である。しかし硫化物系介在物の個数が多くなると、圧延時や熱間鍛造時に割れ等の弊害が生じ易くなる。従って幅1μm以上の硫化物系介在物は、1mm2当たり、4000個以下とした。好ましくは、1mm2当たり、3000個以下、より好ましくは2500個以下とするのが推奨される。
することにより求めた値である。
表1に示す化学組成の鋼を通常の溶製方法に従って溶解し、鋳造、分塊した後、開始温度1050℃、終了温度900℃の圧延を行ってφ50mmの棒鋼を得た。
得られた棒鋼の特性を以下の様にして調べた。
棒鋼表面からD/4(Dは直径)の位置の縦断面において、1mm2の視野を光学顕微
鏡(1000倍)で観察し、幅が1μm以上の硫化物系介在物の個数を数えた。またこの幅が1μm以上の硫化物系介在物のアスペクト比を測定し、その算術平均値を求めた。
実験例で得られた棒鋼を適当な長さに切断した後、温度1200℃に加熱し、厚さ25mmに平潰し鍛造加工した後、空冷処理した。得られた平板体を切削し、図3に示すような試験片に加工した。図3中、(a)は試験片の上面図、(b)は試験片の側面図を示し、aはノッチ、bはボルト穴、cは圧延方向を示す矢印である。試験片は、65mm×65mm×厚さ22mmの板状で、中央はφ43mmの円筒状の孔が抜き取られている。中央の孔の端部には、ノッチa(R0.2mm、深さ0.5mm)が設けられている。また、試験片には圧延方向に沿ってボルト孔b(φ8.3mm)が設けられている。
実験例で得られた棒鋼の切断面にフライス加工した後、該フライス加工面に、下記の条件で穴空け加工し、工具が折損または溶損するまでに加工した距離(合計長さ)を測定した。
切削工具:SKH51(φ10ストレートドリル)
切削速度:30m/min
送り:0.15mm/rev
穴深さ:30mm
潤滑状態:乾式
穴空け位置:D/4(Dは、棒鋼の直径)
工具寿命=L/LA1
表2、3に示す化学組成の鋼を用いる以外は、実験例1と同様にした。工具寿命については、B〜H、Jの各グループごとに、Ti無添加の鋼種の工具寿命を1としたときの相対値で示した。
表2に示す鋼種H2を用い、圧延開始温度及び圧延終了温度を下記表8に示す通りにする以外は、実験例1と同様にした。
2 支持台
3a,3b ホルダー
4,5 くさび
6 試験片
Claims (7)
- C :0.25〜0.5%(質量%の意味、以下同じ)、
Si:2.0%以下(0%を含まない)、
Mn:0.50〜2.0%、
P :0.015〜0.080%、
S :0.01〜0.2%、
V :0.20%以下(0%を含まない)、
Cr:1.0%以下(0%を含まない)、
Ti:0.01〜0.10%、
N :0.01%以下(0%を含まない)
を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなり、
下記式(1)で表されるf値が0.003以上であり、
鋼表面からD/4(Dは鋼の厚さ又は直径)の位置における縦断面において、幅1μm以上の硫化物系介在物が1mm2当たり100〜4000個存在すると共に、この幅1μ
m以上の硫化物系介在物の平均アスペクト比(長さ/幅)が15以下であることを特徴とする破断分割性および被削性に優れた破断分割型コネクティングロッド用鋼。
f=[Ti]−[N]×48/14 … (1)
[式中、[Ti]および[N]は、それぞれ鋼中におけるTiおよびNの含有量(質量%)を示す。] - Tiが0.08%以下であり、f値が0.04以下である請求項1に記載の破断分割型コネクティングロッド用鋼。
- V:0.10%以下(0%を含まない)である請求項1または2に記載の破断分割型コネクティングロッド用鋼。
- 更に、
Zr:0.15%以下(0%を含まない)、
Ca:0.005%以下(0%を含まない)、
Mg:0.005%以下(0%を含まない)、
Te:0.1%以下(0%を含まない)、
REM:0.3%以下(0%を含まない)
よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の破断分割型コネクティングロッド用鋼。 - 更に、
Al:0.05%以下(0%を含まない)及び/または、
Nb:0.05%以下(0%を含まない)
を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の破断分割型コネクティングロッド用鋼。 - 更に、
Cu:1.0%以下(0%を含まない)、
Ni:1.0%以下(0%を含まない)、
Mo:1.0%以下(0%を含まない)
よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の破断分割型コネクティングロッド用鋼。 - 更に、
Bi:0.1%以下(0%を含まない)
を含有する請求項1〜6のいずれかに記載の破断分割型コネクティングロッド用鋼。
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