JP4261894B2 - 振動型駆動装置 - Google Patents
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- General Electrical Machinery Utilizing Piezoelectricity, Electrostriction Or Magnetostriction (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧電素子等の電気−機械エネルギ変換素子に駆動信号を供給することによって振動を発生する振動体と、この振動体に接触する接触体とを有する振動型駆動装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
振動波モータ等を含む振動型駆動装置に関する提案は、これまでに数多くなされている。
【0003】
例えば、底面に電気−機械エネルギ変換素子である圧電素子が接着された円板型の振動子を備え、振動子の表面にはリング状の突起が形成されており、このリング状の突起が振動子に発生する振動波の変位が最大となる振動子の部位に設けられ、この突起にロータを接触させる構成としたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、底面に電気−機械エネルギ変換素子である圧電素子が接着された円環の振動子を備え、圧電素子に駆動信号が供給されると、振動子には互いに位相が90度ずれている同次数のA相定在波とB相定在波が発生し、これらの定在波を合成することで振動子の表面に進行波を発生させるものであって、振動子には進行波の振動変位を拡大するための突起が形成されており、突起にロータを接触させる構成としたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
さらに、金属等からなる2つの弾性体の間に積層圧電素子を固定した振動子を備え、圧電素子に駆動信号が供給されると、振動子には互いの位相が90度ずれているA相定在波とB相定在波が発生し、これらの定在波を合成することで振動子は首振り運動を行い、振動子の表面に1次の進行波を発生させ、この振動子の端面にロータを接触させる構成としたものがある(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開昭60−174078号公報(第3−4頁、第4図)
【特許文献2】
特開2002−142472号公報(第4−5頁、第1、2図)
【特許文献3】
特開2001−352768号公報(第4−5頁、第1、3図)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1に記載された振動型駆動装置では、ロータと接触する突起が振動変位の最も大きくなる振動子の中心と外周端とのほぼ中間となる位置に形成されている。この構成では振動子(突起)とロータとの接点によって形成される円周の直径が、振動子の直径の略半分になってしまう。
【0008】
この振動型駆動装置では、振動子とロータとの接点によって形成される円の直径が出力を決定する要因の1つとなっており、出力を高めようとすると振動子の直径が大きく(装置の大型化)なってしまう。
【0009】
これに対し特許文献2に記載された振動型駆動装置では、圧電素子と突起が同じ円環上に配置されており、振動子(突起)とロータとの接点によって形成される円の直径は、振動子の直径とほぼ同じとすることができる。しかし、振動子全体の大きさと比較すると圧電素子が占める面積は小さい。
【0010】
一方、特許文献3に記載された振動型駆動装置では、2つの弾性体の間に積層圧電素子を固定しており、積層圧電素子の面積は振動子の大きさと比較すると割合大きくすることができる。また、振動子とロータとが接触する駆動面は、振動子の外周とほぼ同じ外径とすることができる。しかしながら、振動の固有周波数を実用的な値に抑えるためには振動子の動剛性を低下させる必要があり、振動子の軸方向の長さをある程度長くする(装置の大型化)必要がある。
【0011】
このように従来の振動型駆動装置では、実用的な出力を維持したまま更なる小型化を達成することは困難である。
【0012】
そこで、本発明はこのような問題点を鑑みてなされたものであり、振動体を大きくすることなく、振動型駆動装置の出力トルクおよび回転速度を向上させることを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本願発明は、電気−機械エネルギ変換素子への駆動信号の供給により振動を発生する振動体と、この振動体に接触し、振動体からの振動を受けて駆動される接触体とを有する振動型駆動装置において、振動体が、電気−機械エネルギ変換素子を含む基部と、この基部に生じる振動を増幅するための複数の振動増幅部とを備え、前記基部に生じる振動は、前記基部に、前記振動体と前記接触体の接触面に垂直な方向の曲げ振動であり、前記曲げ振動を励起することで、前記複数の振動増幅部のうち一部の振動増幅部を前記接触体の駆動方向と異なる方向に変位させ、前記基部での前記曲げ振動による前記振動増幅部の変位を伝達させるように、前記接触体の駆動方向において隣り合う振動増幅部同士が、前記基部以外の位置で連結されていることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
図1に本発明の第1実施形態である振動型駆動装置における振動子の外観斜視図(a)と断面図(b)を示す。
【0015】
同図において、1は振動子(振動体)の基盤(基部)であり、円盤状に形成された金属等の弾性体と、この弾性体の底面全体に接着された圧電素子(電気−機械エネルギ変換素子)とで構成されている。ここで、基盤1を円盤状に形成された圧電素子だけで構成することもできる。
【0016】
2は基盤1に励起された振動の変位を拡大するための変位拡大部材であって、金属等の弾性体で形成されている。この変位拡大部材2は、基盤1の平面に対して垂直方向に延びる複数(図1では20個)の柱部3(振動増幅部)と、基盤1の周方向で隣り合う2つの柱部3をこれらの一端で連結する結合部4と、柱部3に連結し、基盤1に接着剤等で固定される固定部5とで構成されている。
【0017】
複数の柱部3は、基盤1と中心を同じくした円周上に配置されており、固定部5は、柱部3よりも基盤1の径方向内側に突出している。また、柱部3、結合部4および固定部5からなる変位拡大部材2は、例えばステンレス鋼等の単版をカットし、プレス加工することによって一体に成形される。
【0018】
図2に示すように、圧電素子の両面には、4分割された電極膜が形成され、分極処理が施されている。すなわち、図2中上側の圧電素子においては、隣接する2つの電極領域でプラス(+)に分極され(分極方向が下向き)、他の2つの電極領域でマイナス(−)に分極されている(分極方向が上向き)。
【0019】
図2中下側に示す圧電素子も、上記圧電素子と同様の分極処理が施されている。上述した2つの圧電素子は、図2に示すように相対的に180度回転させた状態で重ね合わされる。ここで、上下に重なる圧電素子の電極領域においては、分極方向が互いに逆向きとなる。
【0020】
2つの圧電素子を重ね合わせて構成された圧電素子においては、図3に示すように、一方の表面の電極膜がグランドとされ、他方の表面の電極膜に交番信号が供給される。ここで、180度位相のずれた電極膜A(+)、A(−)には同一の交番信号が供給され、他の電極膜B(+)、B(−)には電極膜A(+)、A(−)とは時間的位相が90度ずれた交番信号が供給される。これにより、圧電素子には互いの位相が90度ずれたA相定在波とB相定在波が発生する。
【0021】
図4に電極膜A(+)、A(−)のみに交番信号を供給したときの定在波(A相定在波)の振動形態を示す。同図は、図2に示す圧電素子を直線a−aで切断したときの断面図を示し、図中の矢印は分極方向を示している。
【0022】
図4(a)に示す状態にある圧電素子(電極膜A(+)、A(−))に交番電圧を供給すると、分極方向に応じて、上下に配置された圧電素子のうち一方の圧電素子における分極領域は膨張し、他方の圧電素子における分極領域は収縮する。これにより、図4(b)に示す状態となる。一方、圧電素子に供給される電圧の向きが逆になれば、上下に配置された圧電素子の分極領域において膨張と収縮が入れ替わり、図4(c)に示す状態となる。
【0023】
このように圧電素子に供給される電源を交番電圧とすることで、圧電素子が図4中(b)→(a)→(c)→(a)→(b)の状態を繰り返すことにより、2次の曲げ振動の定在波(A相定在波)を発生する。2次の曲げ振動の場合には、圧電素子の動剛性分布や電極膜が形成される位置にもよるが、圧電素子の電極領域の略中央部における振動変位が最も大きくなる。
【0024】
一方、電極膜B(+)、B(−)のみに交番信号を供給した場合についても、上述した振動形態(図4)と同様であり、圧電素子には2次の曲げ振動の定在波(B相定在波)が発生する。ここで、A相定在波とB相定在波はどちらも基盤1の中心を節としている。
【0025】
圧電素子は、例えば図5に示す構成であってもよい。図2で説明した圧電素子では、2枚の圧電素子でA相定在波とB相定在波を発生させていたが、図5に示す圧電素子では、図中上側2枚の圧電素子でA相定在波を発生させ、下側2枚の圧電素子でB相定在波を発生させている。
【0026】
すなわち、図5中上側2枚の圧電素子を重ね合わせることでA相定在波を発生させるための圧電素子を構成し、図5中下側2枚の圧電素子を重ね合わせることでB相定在波を発生させるための圧電素子を構成する。そして、図6に示すように、A相定在波を発生させるための圧電素子とB相定在波を発生させるための圧電素子の間にグランド用の電極を挟みこむ。
【0027】
上述した構成において、図6中上側の圧電素子の端面に形成された電極と、下側の圧電素子の端面に形成された電極には、互いの時間的位相が90度ずれた交番信号が供給される。このような圧電素子でも、図2に示す圧電素子と同様に、互いの空間的位相(波長方向)が90度ずれ、かつ、時間的位相が90度ずれた2つの2次の曲げ振動の定在波(A相定在波およびB相定在波)を発生させることができる。
【0028】
圧電素子に交番信号を供給する手段としては、各電極領域に応じた電圧を供給できる電極パターンを形成したフレキシブル基板が用いられ、これを圧電素子の表面に固定して振動子を組み立てればよい。
【0029】
圧電素子にA相定在波とB相定在波とを同時に発生させると、圧電素子には周方向に沿って回転する1次の進行波が生じる。つまり、図4(b)又は図4(c)に示す振動形態が圧電素子の中心部を軸として周方向に回転する振動が発生する。
【0030】
なお、圧電素子の構成としては、上述した2つの構成に限定されるものではなく、互いの空間的位相と時間的位相を等分割した複数の曲げ振動の定在波を発生させることができるものであればどのような構成であってもよい。
【0031】
図7は、柱部3を連結する結合部4が形成されていない点以外は本実施形態と同じ構成とした振動子の振動形態を有限要素法によって示した図である。これに対し、図8は柱部3を連結する結合部4が形成された本実施形態における振動子の振動形態を有限要素法によって示した図である。これらの図は、各振動子をこの直径を通る平面で切断したときの断面図であり、柱部3の長手方向をZ軸、Z軸と直交し紙面と平行な軸をX軸、X軸およびZ軸と直交する軸をY軸とする。
【0032】
図7および図8に示す振動子(基盤1)には、周方向に沿って回転する1次の進行波が生じており、両図には1次の進行波の腹が図の断面上に位置している瞬間の振動形態が示されている。なお、図示していないが、図7および図8に示す振動子の上側端部には、ロータ(接触体)が配置される。
【0033】
図7および図8では、振動子(基盤1)の中心と外周端との間におけるほぼ中間となる位置が、1次の進行波において振動変位の最も大きい腹の位置となっている。また、基盤1の径方向において柱部3が設けられた位置よりもやや内側の位置と、振動子の基盤1の中心位置が、1次の進行波において振動変位が最も小さい節の位置となっている。
【0034】
つまり、柱部3は、基盤1において、下記式(1)を満たす位置に配置される。
【0035】
Z(r)*dZ(r)/dr≧0 ・・・(1)
ここで、rは、基盤1の中心から柱部3を設けた位置までの距離であり、Z(r)は、振動子とロータの接する面に直交する方向(Z軸方向)における基盤1の変位量である。
【0036】
以下、式(1)について図9を用いて具体的に説明する。図9は、図7に示す状態(結合部4のない状態)を模式的に示したものである。同図において、1aは、図7に示す基盤1の断面における振動変位を示す。3a、3bは、基盤1の周方向に配置された複数の柱部3のうち図7に示す振動子の両端に位置する柱部に相当する。3cは、複数の柱部3のうち図7に示す振動子において中央に位置する柱部に相当する。1bは、基盤1の外周におけるZ軸方向の変位(周上変位)を示す。1cは基盤1の中心に対してZ軸方向に延びる中心線を示す。
【0037】
ここで、図9に示すように、柱部3a、3bは、振動変位1aの節からずれた位置に配置されており、柱部3cは振動変位1aの節に相当する位置に配置されている。そして、基盤1に振動を励起したとき、柱部3cは、周上変位4の直線に対して直交する方向に変位する。
【0038】
振動変位1aのうち図9中斜線で示す領域に柱部3a、3bを配置した場合、図9(a)、(b)に示すように、柱部3a〜3cは同一方向(X軸方向)に傾く。一方、振動変位1aのうち図9中の斜線以外の領域に柱部3a、3bを配置した場合、図9(c)に示すように、柱部3a、3bは図中右側(X軸正方向)に傾くが、柱部3cは図中左側(X軸負方向)に傾く。
【0039】
ここで、図9(a)、(b)に示す柱部の配置関係では、柱部3a〜3cが同一方向に傾くため、柱部3a〜3cを本実施形態(図8)のように連結すると、柱部3a、3bの変位が柱部3cに伝達され、柱部3cを大きく傾かせることができる。すなわち、柱部3a、3bの先端におけるX軸方向での変位量は、図7に示すように、柱部3cにおける変位量よりも大きくなっているため、柱部3a、3bと柱部3cを結合部4を介して連結することで、柱部3cの先端におけるX軸方向での変位量を大きくすることができる。
【0040】
後述するように、柱部3cの先端における変位方向(X軸方向)はロータの回転方向と同じとなるため、柱部3cの変位量が大きくなることで、装置の出力トルクを大きくしたり、ロータの回転速度を速くしたりすることができる。
【0041】
一方、図9(c)に示す柱部の配置関係では、柱部3cが柱部3a、3bの傾く方向と反対方向に傾くため、柱部3a〜3cを本実施形態(図8)のように連結した場合には、柱部3a、3bの先端におけるX軸方向の変位量を柱部3cにおけるX軸方向の変位量に十分に反映させることができない。
【0042】
このように、上記式(1)は、図9において、振動変位1aのうち斜線に示す領域に柱部3を配置するための条件式を示すものである。言い換えると、柱部3は、振動変位1a(定在波)の節に対して振動子(基盤1)の径方向外側であって、励起した定在波の1/4波長の範囲内(図9中斜線に示す領域)に設けられることになる。
【0043】
図7および図8では、図中左端に位置する柱部3aの先端が最もZ軸正方向(ロータ側)に変位している。これは、2次の曲げ振動によって定在波の節よりも内側に位置する基盤1がZ軸負方向に変位し、節よりも外側に位置する柱部3がZ軸正方向に変位するためである。
【0044】
このとき、柱部3aの先端は、ロータに最も強く接触し、最もロータを強く押し出す。逆に、図中右端に位置する柱部3bの先端は最もZ軸負方向に変位している。また、図7および図8に示す状態では、全ての柱部3の先端がX軸正方向に変位している。
【0045】
上述したように基盤1に1次の進行波を発生させることにより、各柱部3の先端には、基盤1の外周に対する接線とZ軸とを含む面内において、楕円又は円の軌跡を描く運動が生じる。この楕円運動又は円運動によって柱部3は、ロータと接触してロータを押し出すようにして回転させる。
【0046】
ここで、結合部4を形成していない振動子(図7)に生じる駆動力と、結合部4を形成した振動子(図8)に生じる駆動力の差について説明する。
【0047】
図7に示す状態にある振動子では、2次の曲げ振動によって柱部3a、3bの先端が最もX軸正方向に変位している。逆に、柱部3cの先端は、2次の曲げ振動の影響をあまり受けないため、X軸正方向の変位が最も小さい。
【0048】
図8に示す状態にある振動子では、結合部4によって柱部3の一端が連結されているため、柱部3a、3bの先端におけるX軸方向の変位が、柱部3cの先端に伝達される。したがって、柱部3cの先端は、図7の柱部3cの先端よりもX軸正方向に大きく変位する。
【0049】
図8の柱部3aの先端における変位方向(X軸方向)は、基盤1の周方向、つまりロータの回転方向と一致する。ここで、図8の柱部3cの先端は、図7の柱部3cの先端よりもロータの回転方向に大きく変位している。このように図中柱部3cの先端が、ロータの回転方向に大きく変位することによって、柱部3cに連結された他の全ての柱部3の先端がロータの回転方向に引っ張られ、ロータに最も強く接触する柱部3aの先端におけるロータの回転方向の変位速度、変位の角速度が増す。
【0050】
各柱部3を結合部4によって連結することで、ロータに最も強く接触する柱部3(図8中の柱部3a)の先端における角速度を増加させることができ、ロータの回転速度を増加させることができる。また、振動子の径と、振動子(変位拡大部材2)とロータとの接触面の径をほぼ同じ大きさとすることが可能である。駆動効率を最も高くすることができるからである。
【0051】
以下、振動子の振動形態を周方向に1次、径方向に2次としたときの結合部4の効果について説明する。
【0052】
図10は、本実施形態の振動子を上方から見た図であって、周方向に1次であって径方向に2次となる振動を発生させたときの柱部3の変位を模式的に示したものである。同図では、複数の柱部3のうち図8における柱部3a、3b、3cだけを示し、結合部4を簡略化して表している。また、同図に示す矢印A、Bは、柱部3a〜3cにおける振動変位の方向を示している。
【0053】
同図における振動変位Bは、図8の矢印Bに示す振動変位に相当する。柱部3a、3bは、ロータの駆動とは直接関係しない振動子の径方向に大きく変位しており、柱部3a、3bにおける振動変位の方向は振動子(基盤1)の径方向において互いに逆向きとなっている。そして、柱部3a、3bは、複数の柱部3のうち振動子の径方向において最も大きく変位している。
【0054】
一方、図10における振動変位Aは、図8の矢印Aに示す振動変位に相当する。結合部4を形成しない振動子(図7)において、柱部3cは複数の柱部3のうち振動子1の周方向(ロータの回転方向)に最も大きく変位するものである。なお、柱部3cの周方向の変位量は、柱部3a、3bの径方向の変位量に比べると小さいものである。
【0055】
本実施形態では、柱部3cが結合部4を介して柱部3a、3bに連結されているため、柱部3cに柱部3a、3bの変位が伝達され、柱部3cは図10中矢印A方向(基盤1の周方向)に大きく変位する。すなわち、本実施形態の振動子(図8)では、結合部4のない振動子(図7)に比べて矢印A方向の振動変位が大きくなる。
【0056】
ここで、図10中の2つの柱部3cに生じる振動変位Aは、振動子の周方向で互いに逆向きとなっている。しかし、振動子を駆動する際には、図10に示す定在波振動と、この振動に対して位相が90度異なる定在波振動が生じるため、2つの柱部3cはそれぞれ、Z軸方向の変位が異なり、一方の柱部3cだけがロータに接触することになる。これにより、ロータは振動子からの振動を受けて一方向に回転する。
【0057】
次に、振動子の振動形態を周方向に2次としたときの結合部4の効果について図11を用いて説明する。同図における振動変位Bは、図8の矢印Bに示す振動変位に相当する。振動変位Bが生じる柱部(以下、柱部B)は、ロータの駆動とは直接関係しない振動子の径方向に大きく変位しており、図中4つの柱部Bのうち振動子の周方向で隣り合う柱部Bにおける振動変位の方向は、振動子の径方向において互いに逆向き(径方向内側と径方向外側)となっている。そして、柱部Bは、複数の柱部3のうち振動子の径方向で最も大きく変位している。
【0058】
一方、図11における振動変位Aは、図8の矢印Aに示す振動変位に相当する。結合部4を形成しない振動子において、振動変位Aが生じる柱部(以下、柱部A)は、複数の柱部3のうち振動子の周方向(ロータの回転方向)に最も大きく変位する。なお、柱部Aの周方向の変位量は、柱部Bの径方向の変位量に比べると小さいものである。
【0059】
図11において、柱部Aは結合部4を介して柱部Bに連結されているため、柱部Aに柱部Bの振動変位が伝達され、柱部Aはロータの回転方向となる振動子の周方向に大きく変位する。そして、柱部Aの振動変位がロータに伝達されることでロータの回転速度を増加させることができる。
【0060】
また、図11に示すように振動子の振動形態を周方向に2次としたとき、4つの柱部Bにおける変位方向と、4つの柱部Aにおける変位方向とが、直交座標系において45度の角度を有しており、ロータの回転速度を増加させる効果が大きくなる。
【0061】
一方、図11に示した4つの柱部Aのうち振動子の中心を挟んで向かい合う2組の柱部Aは、振動子の周方向において逆向きに変位している。ここで、振動子を駆動する際には、図11に示す定在波振動と、この振動に対して位相が45度異なる定在波振動が生じるため、2組の柱部Aはそれぞれ、Z軸方向における振動変位が異なるようになる。このため、一方向に変位する1組の柱部Aだけがロータと接触するようになる。これにより、ロータには回転方向(一方向)の変位が加えられ、ロータの回転速度を増加させることができる。
【0062】
次に、振動子の振動形態を周方向に3次としたときの結合部4の効果について図12を用いて説明する。同図における振動変位Bは、図8の矢印Bに示す振動変位に相当する。振動変位Bが生じる柱部(以下、柱部B)は、ロータの駆動とは直接関係しない振動子の径方向に大きく変位しており、図中6つの柱部Bのうち振動子の周方向で隣り合う柱部Bにおける振動変位の方向は、振動子の径方向において互いに逆向き(径方向内側と径方向外側)となっている。そして、柱部Bは、複数の柱部3のうち振動子の径方向で最も大きく変位している。
【0063】
一方、図12における振動変位Aは、図8の矢印Aに示す振動変位に相当する。結合部4を形成しない振動子において、振動変位Aを有する柱部(以下、柱部A)は、複数の柱部3のうち振動子の周方向(ロータの回転方向)に最も大きく変位する。なお、柱部Aの周方向の変位量は、柱部Bの径方向の変位量に比べると小さいものである。
【0064】
図12において、柱部Aは結合部4を介して柱部Bに連結されているため、柱部Aに柱部Bの振動変位が伝達され、柱部Aの振動変位が大きくなる。これにより、ロータのうち振動子と接触する接触面には、ロータの回転方向となる周方向における大きな力が伝達され、ロータの回転速度を増加させることができる。
【0065】
また、図12に示すように振動子の振動形態を周方向に3次としたとき、6つの柱部Bにおける変位方向と、6つの柱部Aにおける変位方向とが、直交座標系において60度の角度を有しており、ロータの回転速度を増加させる効果が大きくなる。
【0066】
一方、6つの柱部Aは、図12に示すように、振動子の周方向において互いに逆方向に変位する2組の柱部Aからなる。各組の柱部Aは、振動子の周方向において120度の間隔をもって配置された3つの柱部Aを有している。
【0067】
ここで、振動子を駆動する際には、図12に示す振動と、この振動に対して位相が30度異なる振動が生じるため、2組の柱部Aはそれぞれ、Z軸方向における振動変位が異なるようになる。このため、一方向に変位する1組の柱部Aだけがロータと接触するようになる。これにより、ロータには回転方向(一方向)の変位が加えられ、ロータの回転速度を増加させることができる。
【0068】
図13に、上述した本実施形態における振動子を備えた振動型駆動装置(振動波モータ)の構成図を示す。
【0069】
51は接触体であるロータである。52はロータ51に接着された摺動材であり、振動子の変位拡大部材2の端部と接触する。53はロータ51の中心を貫通する軸であり、振動子を支持する役目を果たす。54は板バネであり、振動子の固定部と軸53に固定され、振動子をロータ51に接着された摺動材52に押し付ける。
【0070】
55は軸受けであり、ロータ51と軸53との間に配置され、ロータ51を軸53に対して回転可能に支持する。56は振動型駆動装置を固定する地板である。57はナットであり、軸53の端部にナット57を締め付けることで軸53が地板56に固定される。
【0071】
振動子の基盤1(圧電素子)に不図示の電源より交番信号が供給されると、変位拡大部材2の一端には上述した1次の進行波が発生する。ここで、変位拡大部材2は、板バネ54により摺動材52に圧接されているため、ロータ51は、変位拡大部材2および摺動材52間の摩擦によって変位拡大部材2からの振動(進行波)を受けて回転する。
【0072】
以下に本発明の他の実施形態である振動型駆動装置における振動子について説明する。なお、以下に説明する実施形態では、第1実施形態で説明した振動子(図1)と異なる構成を中心に説明を行う。
【0073】
(第2実施形態)
図14に本発明の第2実施形態である振動型駆動装置における振動子の外観斜視図を示す。ここで、第1実施形態で説明した部材と同じ部材については同一符号を付して説明を省略する。
【0074】
図14に示す振動子(振動体)の変位拡大部材102は、円筒状に形成され、この周方向には略等間隔に丸穴部106が設けられている。このように円筒状の部材に丸穴部106を形成することで、本実施形態の振動子は、第1実施形態で説明した柱部および結合部と同様の機能を備えた構成となっている。すなわち、変位拡大部材102の周方向で隣り合う2つの丸穴部106間に位置する部分が、柱部としての機能を備え、丸穴部106の図中上側の部分が結合部としての機能を備える。
【0075】
なお、変位拡大部材102の一端には、振動子の径方向内側に延びる固定部105が形成されており、この固定部105は基盤1に接着剤等で固定されている。
【0076】
第1実施形態における変位拡大部材2では、柱部3および結合部4の側面が平面となっているが、本実施形態のように柱部および結合部に曲面をもたせることもできる。ここで、基盤1に対して柱部を配置する位置や、振動子の振動形態は第1実施形態で説明した場合と同様である。
【0077】
本実施形態においても振動子の周方向に並んで配置された2つの柱部が結合部を介して互いに連結されているため、第1実施形態と同様の効果、すなわちロータの回転トルクや回転速度を向上させることができる。また、本実施形態の変位拡大部材102を成形する場合、円筒状の部材に丸穴部106を形成するだけであるので、第1実施形態の変位拡大部材2を成形する場合に比べて加工が容易になる。
【0078】
(第3実施形態)
図15に本発明の第3実施形態である振動型駆動装置における振動子の外観斜視図を示す。なお、第1実施形態で説明した部材と同じ部材については同一符号を付して説明を省略する。また、本実施形態においても、基盤1に対して柱部を配置する位置や、振動子の振動形態は第1実施形態で説明した場合と同様である図15に示す振動子の変位拡大部材202では、リング状の固定部205の外周に、基盤1の平面に対して直交する方向に延びる柱部(振動増幅部)203が結合されている。そして、基盤1には、柱部203の一端および固定部205が固定されている。一方、振動子(基盤1)の周方向で隣り合う2つの柱部203の間には、結合部204が設けられており、2つの柱部203の他端同士を連結する。
【0079】
本実施形態においても振動子の周方向に並んで配置された2つの柱部203が結合部204を介して連結されているため、第1実施形態と同様の効果、すなわちロータの回転トルクや回転速度を向上させることができる。しかも、本実施形態における振動子の構成によれば、ロータの回転トルクや回転速度を更に向上させることができる。
【0080】
すなわち、本実施形態における振動子では、柱部203の内側に固定部205が設けられており、振動子の径方向において柱部3と同じ位置に固定部5が設けられている第1実施形態の振動子に比べて、柱部203および基盤1の結合部分における機械的剛性を小さくすることができる。これにより、振動子の径方向における柱部203の変位量を大きくすることができるため、結合部204を介して振動子の周方向に変位する柱部203の変位量を大きくすることができ、ロータの回転トルクや回転速度を向上させることができる。
【0081】
(第4実施形態)
図16に本発明の第4実施形態である振動型駆動装置における振動子の部分断面図を示す。なお、第1実施形態で説明した部材と同じ部材については同一符号を付して説明を省略する。また、本実施形態においても、基盤1に対して柱部を配置する位置や、振動子の振動形態は第1実施形態で説明した場合と同様である。
【0082】
本実施形態における振動子は、第1実施形態における振動子とほぼ同じ形状となっており、柱部(振動増幅部)303が基盤1の周方向に並んで配置され、この周方向に並んで配置された2つの柱部303の間には、2つの柱部303の一端同士を連結する結合部304が設けられている。また、柱部303の他端には、固定部305が設けられており、この固定部305は基盤1に接着剤等で固定されている。
【0083】
一方、本実施形態では、第1実施形態に比べて柱部303および固定部305の形状が異なっている。すなわち、柱部303および固定部305のうち基盤1と結合する部分における外周形状がR形状となっている。
【0084】
柱部303および固定部305を上述したような形状とすることにより、柱部303および固定部305と基盤1との結合部分における機械的剛性を小さくすることができる。これにより、第3実施形態と同様に、柱部303の変位量を大きくすることができ、ロータの回転トルクや回転速度を向上させることができる。
【0085】
(第5実施形態)
図17に本発明の第5実施形態である振動型駆動装置における振動子の外観斜視図を示す。
【0086】
本実施形態における振動子は、六角形の板状に形成され、圧電セラミックスからなる基盤(基部)401を有しており、この基盤401の表面には、断面が四角形である12個の柱部403が固定されている。これらの柱部403は、円を描くように並んで配置されている。
【0087】
また、柱部(振動増幅部)403の長手方向中央には、六角形の板状に形成された結合部404が連結されている。上述した実施形態では、柱部の一端に結合部を設けているが、本実施形態のように柱部403の一端以外の部分に結合部404を設けることもできる。すなわち、本実施形態においても、振動子の周方向で隣り合う2つの柱部403が結合部404を介して連結されているため、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0088】
柱部403において結合部404を設ける位置は、柱部403のうち基盤401に固定された一端とは異なる位置であって、柱部403同士を連結できる位置であればどのような位置としてもよい。ただし、柱部403においては、他端(基盤401に結合する側と反対側)での変位が最も大きくなるため、結合部404を柱部403の他端に近い位置に設けるほど、柱部403の大きな変位を他の柱部403に伝達させることができ、ロータの回転速度を増加させることができる。
【0089】
なお、例えば、矩形状に形成された1つの圧電セラミックスから複数の基盤を切り出すのであれば、基盤の形状を本実施形態のように六角形とするほうが、円形とするよりも材料の無駄をなくすことができる。また、本実施形態においても、基盤401に対して柱部403を配置する位置や、振動子の振動形態は第1実施形態で説明した場合と同様である。
【0090】
(第6実施形態)
図18に本発明の第6実施形態である振動型駆動装置における振動子の外観斜視図を示す。
【0091】
本実施形態における振動子は、4角形の板状に形成され、圧電セラミックスからなる基盤(基部)501を有しており、この基盤501の表面には、4つの円柱の柱部(振動増幅部)503が固定されている。これらの柱部503は、同一円周上において略等間隔に配置されている。また、柱部503の一端側には結合部504が連結されており、この結合部504は、4つの柱部503の中心で交差する十字状に形成されている。
【0092】
本実施形態においても、周方向で隣り合う2つの柱部503が結合部504を介して連結されているため、上述した実施形態のように柱部503の変位を大きくすることができ、ロータの回転速度を向上させることができる。しかも、本実施形態の構成では、4本の柱部503という少ない部品でロータの回転速度を増加させることができる。なお、本実施形態においても、基盤501に対して柱部503を配置する位置や、振動子の振動形態は第1実施形態で説明した場合と同様である。
【0093】
(第7実施形態)
図19に本発明の第7実施形態である振動型駆動装置における振動子の外観斜視図(a)と部分断面図(b)を示す。
【0094】
本実施形態の振動子では、第1実施形態における振動子のうち基盤の構成が異なっており、他の構成(変位拡大部材)は第1実施形態と同様である。ここで、第1実施形態で説明した部材と同じ部材については同一符号を用いて説明を省略する。
【0095】
本実施形態では、基盤(基部)601の中央に貫通孔を設けずに、基盤601の片面に周方向に延びる凹部601aが形成されている。凹部601aを形成することにより基盤601の剛性が下がるため、振動子の固有周波数を下げることができる。
【0096】
振動子の固有周波数が高いと、圧電素子からの加振力と加圧接触するロータからの加振力との合力による不要振動が生じやすくなる。この不要振動はいわゆる鳴きの原因となるため、振動子の固有周波数は低いほうが好ましい。また、基盤601の剛性を下げることで、変位拡大部材2の振幅を増加させてロータの駆動効率を高めることもできる。
【0097】
ここで、凹部601aを形成する位置を、基盤601に発生する進行波の振幅の腹に相当する位置とすると、変位拡大部材2の振幅を増加させるのに最も効果がある。基盤601に生じる振動形態が、図1に示す振動形態であれば、凹部601aを形成する位置は、基盤601の中心と外周との略中央の位置となる。
【0098】
なお、本実施形態では、第1実施形態における変位拡大部材2を有しているため、第1実施形態と同様に柱部3の変位を大きくすることができ、ロータの回転速度を向上させることができる。また、本実施形態は、第1実施形態の振動子に凹部(601a)を形成したものであるが、他の実施形態(第2実施形態から第6実施形態)の振動子に対して本実施形態で説明した凹部を形成してもよい。さらに、本実施形態においても、基盤601に対して変位拡大部材(柱部)を配置する位置や、振動子の振動形態は第1実施形態で説明した場合と同様である。
【0099】
(第8実施形態)
図20に本発明の第8実施形態である振動型駆動装置における振動子の外観斜視図を示す。
【0100】
本実施形態の振動子では、第1実施形態における振動子のうち基盤の構成が異なっており、他の構成(変位拡大部材)は第1実施形態と同様である。ここで、第1実施形態で説明した部材と同じ部材については同一符号を用いて説明を省略する。
【0101】
基盤(基部)701は、円盤状に形成され、金属等からなる弾性体と、この弾性体の裏面に接着された圧電素子とで構成されている。本実施形態では、基盤701の中心に貫通孔部を設けずに、所定の径を有する貫通孔部701aを同心円状に並べて配置している。本実施形態によれば、第7実施形態と同様に、基盤701の剛性を下げることができるため、振動変位部2の振幅を増加させてロータの駆動効率を高めることができる。しかも、振動子の固有周波数を下げることができるため、振動子に不要振動が生じるのを防止することができる。
【0102】
なお、本実施形態では、第1実施形態における変位拡大部材2を有しているため、第1実施形態と同様に柱部3の変位を大きくすることができ、ロータの回転速度を向上させることができる。また、本実施形態は、第1実施形態の振動子(基盤)に複数の貫通孔部(701a)を形成したものであるが、他の実施形態(第2実施形態から第6実施形態)の振動子に対して本実施形態で説明した貫通孔部を形成してもよい。さらに、本実施形態においても、基盤701に対して変位拡大部材(柱部)を配置する位置や、振動子の振動形態は第1実施形態で説明した場合と同様である。
【0103】
(第9実施形態)
図21に本発明の第9実施形態である振動型駆動装置における振動子の部分断面図を示す。
【0104】
本実施形態において、基盤(基部)801は、円盤状に形成され、金属等からなる弾性体と、この弾性体の裏面に接着される圧電素子とで構成されている。この基盤801の表面には、基盤801の平面に対して垂直方向に延びる柱部(振動増幅部)803が直接固定されている。柱部803は、基盤801の周方向に並んで配置されており、周方向で隣り合う2つの柱部803の間には、両者の一端同士を連結する結合部804が設けられている。
【0105】
基盤801は、この中央の領域が他の領域よりも薄くなるように形成されており、上記中央領域は基盤801に生じる進行波の腹を含む位置まで形成されている。
【0106】
本実施形態の振動子の構成によれば、振動子の周方向で隣り合う2つの柱部803が、この一端において結合部804を介して連結されているため、第1実施形態と同様に、柱部803の変位を大きくすることができ、ロータの回転速度を向上させることができる。
【0107】
また、柱部803が直接、基盤801に固定されているため、柱部803および基盤801の結合部分における機械的剛性を小さくすることができる。これにより、上述した第3実施形態および第4実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、基盤801の中央領域は、振動波の腹を含む位置まで他の領域に比べて薄く形成されているため、基盤801の剛性を下げることができるとともに、振動子の固有周波数を下げることができる。これにより、第7実施形態および第8実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0108】
また、本実施形態においても、基盤801に対して柱部803を配置する位置や、振動子の振動形態は第1実施形態で説明した場合と同様である。
【0109】
(第10実施形態)
図22に本発明の第10実施形態である振動型駆動装置における振動子の部分断面図を示す。
【0110】
基盤(基部)901は、円盤状に形成され、金属等からなる弾性体と、この弾性体の裏面に接着される圧電素子とで構成されている。この基盤901の表面には、基盤901の平面に対して垂直方向に延びる柱部(振動増幅部)903が直接固定されている。柱部903は、基盤901の周方向に並んで配置されており、周方向で隣り合う2つの柱部903の間には、両者の一端同士を連結する結合部904が設けられている。
【0111】
基盤901は、進行波の腹の位置に相当する領域(図中斜線部)が、他の領域よりも剛性の小さい材料で形成されている。
【0112】
本実施形態の振動子によれば、振動子の周方向で隣り合う2つの柱部903が、この一端において結合部904を介して連結されているため、第1実施形態と同様に、柱部903の変位を大きくすることができ、ロータの回転速度を向上させることができる。
【0113】
また、柱部903が直接、基盤901に固定されているため、柱部903および基盤901の結合部分における機械的剛性を小さくすることができる。これにより、上述した第3実施形態および第4実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、基盤901のうち振動波の腹の位置に相当する領域は、他の領域よりも剛性の小さい材料で形成されているため、基盤901の剛性を下げることができるとともに、振動子の固有周波数を下げることができる。これにより、第7実施形態および第8実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0114】
また、本実施形態においても、基盤901に対して柱部903を配置する位置や、振動子の振動形態は第1実施形態で説明した場合と同様である。
【0129】
【発明の効果】
本発明によれば、振動子を大きくせずに出力トルクおよび回転速度を従来よりも向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態である振動型駆動装置における振動子の外観斜視図(a)と断面図(b)。
【図2】振動子に形成される電極膜の一例を説明するための図。
【図3】電極膜が形成された振動子に供給する交番電圧を説明するための図。
【図4】電極膜が形成された振動子に発生する振動を説明するための図(a〜c)。
【図5】振動子に形成される電極膜の別の例を説明するための図。
【図6】電極膜が形成された振動子に供給する交番電圧を説明するための図。
【図7】柱部が互いに連結されていない振動子の振動形態を有限要素法によって示す図。
【図8】第1実施形態における振動子の振動形態を有限要素法によって示す図。
【図9】基盤における柱部の配置位置を説明するための図(a〜c)。
【図10】振動子の振動形態を周方向に1次としたときの柱部の振動変位を示す図。
【図11】振動子の振動形態を周方向に2次としたときの柱部の振動変位を示す図。
【図12】振動子の振動形態を周方向に3次としたときの柱部の振動変位を示す図。
【図13】第1実施形態における振動子を用いた振動型駆動装置の断面図。
【図14】本発明の第2実施形態である振動型駆動装置における振動子の外観斜視図。
【図15】本発明の第3実施形態である振動型駆動装置における振動子の外観斜視図。
【図16】本発明の第4実施形態である振動型駆動装置における振動子の部分断面図。
【図17】本発明の第5実施形態である振動型駆動装置における振動子の外観斜視図。
【図18】本発明の第6実施形態である振動型駆動装置における振動子の外観斜視図。
【図19】本発明の第7実施形態である振動型駆動装置における振動子の外観斜視図(a)と部分断面図(b)。
【図20】本発明の第8実施形態である振動型駆動装置における振動子の外観斜視図。
【図21】本発明の第9実施形態である振動型駆動装置における振動子の部分断面図。
【図22】本発明の第10実施形態である振動型駆動装置における振動子の部分断面図。
【符号の説明】
1、401、501、601、701、801、901:基盤
2、102、202、302:変位拡大部材
3、203、303、403、503、803、903:柱部
4、204、304、404、504、804、904:結合部
5、105、205、305:固定部
106 丸穴部
601a 凹部
701a 貫通孔部
51 ロータ(接触体)
52 摺動材
53 軸
54 バネ
55 軸受け
56 地板
57 ナット
Claims (9)
- 電気−機械エネルギ変換素子への駆動信号の供給により振動を発生する振動体と、この振動体に接触し、前記振動体からの振動を受けて駆動される接触体とを有する振動型駆動装置において、
前記振動体が、前記電気−機械エネルギ変換素子を含む基部と、この基部に生じる振動を増幅するための複数の振動増幅部とを備え、
前記基部に生じる振動は、前記基部に、前記振動体と前記接触体の接触面に垂直な方向の曲げ振動であり、前記曲げ振動を励起することで、前記複数の振動増幅部のうち一部の振動増幅部を前記接触体の駆動方向と異なる方向に変位させ、
前記基部での前記曲げ振動による前記振動増幅部の変位を伝達させるように、前記接触体の駆動方向において隣り合う振動増幅部同士が、前記基部以外の位置で連結されていることを特徴とする振動型駆動装置。 - 前記振動体は、1つの節が同じ位置となる複数の定在波を発生させ、この複数の定在波を合成することで進行波を発生させることを特徴とする請求項1に記載の振動型駆動装置。
- 前記振動体に発生する振動が1次の進行波であることを特徴とする請求項2に記載の振動型駆動装置。
- 前記振動増幅部が、前記基部において、
Z(r)*dZ(r)/dr≧0
r:基部の中心から振動増幅部までの距離
Z(r):振動体および接触体の接触面に対して直交する方向における基部の変位量の関係を満たす位置に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の振動型駆動装置。 - 前記複数の振動増幅部が、前記基部の中心に対して同心円上の位置に配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の振動型駆動装置。
- 前記複数の振動増幅部は、この振動増幅部に一体的に形成された固定部を介して前記基部に固定されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の振動型駆動装置。
- 前記複数の振動増幅部が一体的に形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の振動型駆動装置。
- 前記基部は、定在波の腹に位置する領域の剛性が他の領域の剛性よりも小さくなるように構成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の振動型駆動装置。
- 前記基部が、電気−機械エネルギ変換素子であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の振動型駆動装置。
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