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JP4259151B2 - 耐熱材料 - Google Patents

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JP4259151B2 JP2003077922A JP2003077922A JP4259151B2 JP 4259151 B2 JP4259151 B2 JP 4259151B2 JP 2003077922 A JP2003077922 A JP 2003077922A JP 2003077922 A JP2003077922 A JP 2003077922A JP 4259151 B2 JP4259151 B2 JP 4259151B2
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國夫 福田
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研治 高尾
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の排気系部材や加熱炉、ボイラー、タービン、熱交換器、原子力設備、化学工業装置、燃料電池などの各種耐熱部品に用いて好適な耐酸化性に優れた耐熱材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車排気系部材や加熱炉用部材、熱交換器用部材のような耐熱部品には、JISのSUS310S、SUS321H、SUS347Hなどのオーステナイト系ステンレス鋼や、SUH409、SUS444等の高Crフェライト鋼やフェライト系ステンレス鋼が用いられてきた。しかし、これらの鋼はいずれも、耐酸化性が不十分であり、要求特性に十分に応えられていない。また、特許文献1には、加熱と冷却を繰り返す各種耐熱部品に適した耐酸化性に優れた耐熱合金として、Cu,Ti等を含むFe−Ni−Cr合金が開示されているが、Niを20〜35wt%と多量に含むために、コストが高いという問題がある。そのため、Niを多量に添加しない耐熱材料の開発が望まれている。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−192205号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
さて、高温において使用される材料は、耐酸化性を保つために保護性酸化皮膜の生成が不可欠である。中でもAl系酸化物による保護性皮膜は、耐酸化性が非常に高い。しかし、一般に、Al系酸化物が連続的な保護性皮膜を形成するためには3%以上のAlの添加が必要であり、製造性を著しく悪化させたり、コストアップの原因となったりする。
【0005】
そこで、本発明の目的は、Niを含まず、かつ低Alの成分組成を有し、製造性が良好で、高温において高強度かつ耐酸化性に優れる耐熱材料を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上述した課題を解決するために耐酸化性に及ぼす添加元素の影響に着目し鋭意検討した。その結果、MoとNbを複合添加した場合には、高温・長時間の使用環境下において、多量の金属間化合物が母材の結晶粒界に析出し、これらの析出物がCr,Fe,Si等の元素の拡散を抑制する結果、耐酸化性が著しく向上することを見出した。もちろん、MoまたはNbの単独添加によっても金属間化合物は析出するが、耐酸化性向上効果は得られない。つまり、複合添加した場合にのみ、耐酸化性を著しく向上させることができる。さらに、この作用によって、Al含有量が3.0mass%と低い場合でも、鋼板表面にAl系酸化物の保護皮膜が生成しやすくなり、さらに耐酸化性が向上することを見出した。さらに、Mo−Nb添加鋼特有の、高温時における酸化物の剥離量が増大するという問題も、Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Zr,Hfの添加によって防止できることを見出した。
【0007】
上記知見に基づき開発された本発明は、C:0.20mass%以下、Si:0.02〜1.0mass%、Mn:2.0mass%以下、Cr:10〜40mass%、Al:0.01〜3.0mass%、Mo:0.03〜5.0mass%およびNb:0.1〜3.0mass%を含み、かつMoとNbとは、
5.29≦Mo/Nb≦30
の関係を満たして含み、さらにCrとAlとは、
19.85≦Cr+10Al≦50
の関係を満たして含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする耐熱材料である。
【0008】
また、本発明は、C:0.20mass%以下、Si:0.02〜1.0mass%、Mn:2.0mass%以下、Cr:10〜40mass%、Al:0.01〜3.0mass%、Mo:0.03〜5.0mass%およびNb:0.1〜3.0mass%を含み、かつMoとNbとは、
5.29≦Mo/Nb≦30
の関係を満たして含み、さらにCrとAlとは、
19.85≦Cr+10Al≦50
の関係を満たして含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、母材の結晶粒界にはMoおよびNbを含む金属間化合物が析出し、表面にはAl系の酸化物層が形成されてなることを特徴とする耐熱材料である。
【0009】
さらに、本発明は、C:0.20mass%以下、Si:0.02〜1.0mass%、Mn:2.0mass%以下、Cr:10〜40mass%、Al:0.01〜3.0mass%、Mo:0.03〜5.0mass%およびNb:0.1〜3.0mass%を含み、かつMoとNbとは、
5.29≦Mo/Nb≦30
の関係を満たして含み、さらにCrとAlとは、
19.85≦Cr+10Al≦50
の関係を満たして含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、露点30℃の大気中における800℃で1000時間の酸化増量が2.0g/m以下であることを特徴とする耐熱材料である。
【0010】
なお、本発明の材料は、上記成分組成に加えてさらに、Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,ZrおよびHfの中から選ばれる1種または2種以上を合計で1.0mass%以下含有したものであることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の材料は、上記母材の結晶粒界に析出したMoおよびNbを含む金属間化合物の最近接距離の平均が20μm以下であることが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の耐熱材料が耐熱性を発揮する理由について説明する。
本発明の特徴は、MoとNbを複合添加することにより、高温・長時間の使用環境下において、多量の金属間化合物が母材の結晶粒界に析出し、これらの析出物がCr,Fe,Si等の元素の拡散を抑制する結果、鋼板表面にはCr23等を含む主としてAl23からなる酸化皮膜が形成され、その結果、耐酸化性が著しく向上することにある。ここで、上記金属間化合物とは、Fe−Cr−Si−Mo−Nb系の複合金属間化合物のことであり、Cr,Fe,Si等の元素の拡散を抑制するが、Alの拡散にはさほど影響しない。その結果、Alを3.0mass%より多く含有していなくとも、高温酸化雰囲気中で鋼板表面にAlの拡散のみが進行し、ひいては鋼板表面に耐酸化性に優れたAl23系の酸化皮膜を形成させることができるのである。
【0013】
なお、Fe−Cr−Si−Mo−Nb系の金属間化合物が上記拡散を抑制する作用を発揮するためには、結晶粒界に密に析出することが必要であり、走査型電子顕微鏡で観察したときに検出される大きさ200nm以上の金属間化合物が、相互の最近接距離が20μm以下で析出していることが好ましい。これ以上の間隔では、十分か拡散抑制効果が得られない。なお、この金属間化合物は、本発明鋼板を使用する段階から析出させておくか、あるいは、高温での使用中に結晶粒界に析出させ、鋼板表面に耐酸化性に優れた、主としてAl23からなる酸化皮膜を形成させてもよい。
【0014】
次に、本発明に係る耐熱材料の成分組成について説明する。
C:0.20mass%以下
Cは、炭化物を形成して高温強度を高める作用を有するが、加工性を劣化させ、また、Crと結合することにより耐酸化性に有効なCr量を減少させるため、0.20mass%以下に制限する。より好適には0.10mass%以下である。
【0015】
Si:0.02〜1.0mass%
Siは、金属間化合物の析出を促進する作用を有する。しかし、過度の添加は加工性の劣化を招くので、0.02〜1.0mass%に限定する。好ましくは0.05〜1.0mass%である。
【0016】
Mn:2.0mass%以下
Mnは、酸化皮膜の密着性を向上させるのに必要である。しかし、過度に添加すると、酸化速度の増大を招くため、2.0mass%以下に限定する。好ましくは、1.5mass%以下である。
【0017】
Cr:10〜40mass%
Crは、Cr23皮膜の生成により、耐酸化性を維持するために重要な元素であり、10mass%未満では耐酸化性向上効果が得られず、一方、40mass%を超えると加工性の劣化を招くので、10〜40mass%に限定する。より好適には10〜30mass%である。
【0018】
Al:0.01〜3.0mass%でかつ、19.85≦Cr+10Al≦50
Alは、Crと同様、耐酸化性を維持するために重要な元素である。しかし、過度の添加は製造性が悪くなりコストの増大を招くので3.0mass%以下に限定する。より好適には0.05〜2.0mass%である。ここでCr+10Alの値を19.85〜50の範囲に限定する理由は、まず、CrとAlはともに、保護性の酸化皮膜を形成する元素であるため、CrとAlはその合計量(Cr+10Al)で規制する必要があり、このCr+10Alの値が19.85未満では耐酸化性が不十分であり、一方、その値が50超えの場合には製造性が著しく悪化するためである。
【0019】
Mo:0.03〜5.0mass%、Nb:0.1〜3.0mass%でかつ5.29≦Mo/Nb≦30
本発明の耐熱材料は、Fe−Cr系の合金を基本とし、この成分組成にさらに、MoとNbを複合添加することにより、高温・長時間の使用環境において、多量の金属間化合物を母材の粒界に析出させて、Cr,Fe,Si等の元素の拡散機構を制御し、耐酸化性の向上を図っている。さらに、これらの元素は高温強度を高める作用も有する。しかし、MoおよびNbの過剰な添加は加工性を劣化させるため、Mo:0.03〜5.0mass%、Nb:0.1〜3.0mass%の範囲に限定する。より好適には、Mo:0.1〜3.0mass%、Nb:0.1〜2.0mass%である。ここでMoとNbの比であるMo/Nbの値を5.29〜30の範囲に限定する理由は、Mo/Nbは、Fe−Cr−Si−Mo−Nb系の金属間化合物の生成量を表す指標であり、5.29未満の場合、あるいは30超えの場合には、NbあるいはMoの単独添加と同様になり、耐酸化性の向上に有効な金属間化合物の生成量が少なくなるためである
【0020】
Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Zr,Hf:合計で1.0mass%以下
Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,ZrおよびHfは、少量の添加で酸化皮膜の密着性を向上させることによって耐酸化性を改善する効果を有する。しかし、過度の添加は熱間加工性を劣化させるので、1.0mass%以下に限定する。より好ましくは、0.005〜0.5mass%である。
【0021】
なお、本発明においては、上記の必須成分のほかに、必要に応じて下記の元素を含有してもよい。
P:0.05mass%以下、S:0.05mass%以下、N:0.5mass%以下、Cu:0.20mass%以下、Ni:1.0mass%以下、V:1.0mass%以下、W:3.0mass%以下、Ta:2.0mass%以下、Ti:0.5mass%以下、Mg:0.05mass%以下、Ca:0.05mass%以下、Co:5.0mass%以下
【0022】
次に、本発明の金属材料の製造方法について、簡単に説明する。
本発明に係る金属材料の溶製方法は、通常公知の方法がすべて適用できるので、特に限定する必要はないが、例えば、製鋼工程は、転炉、電気炉等で溶製し、強攪拌・真空酸素脱炭処理(SS−VOD)により2次精錬を行うのが好適である。鋳造方法は、生産性、品質の面から連続鋳造が好ましい。鋳造により得られたスラブは、必要により再加熱し、熱間圧延し、700〜1200℃で熱延板焼鈍したのち酸洗する。上記熱延板をさらに冷間圧延し、あるいはさらに700〜1200℃の
焼鈍・酸洗処理を施しても構わない。
【0023】
【実施例】
表1に示す成分組成を有する種々の鋼を、転炉−2次精錬により溶製し、連続鋳造により200mm厚のスラブとした。これらのスラブを1100〜1300℃に加熱したのち、熱間圧延して板厚5mmの熱延板とし、700〜1200℃の熱延板焼鈍と酸洗処理を施した。次いで、冷間圧延により板厚1mmの冷延板とし、700〜1200℃の焼鈍を行った。この冷延焼鈍板から、1mm×30mm×30mmのサンプルを切り出し、下記の耐酸化性試験に供した。
【0024】
・酸化増量測定:上記試験片を、800℃に加熱された露点30℃の大気雰囲気の炉中に1000時間、加熱保持する酸化試験を行い、試験前後の試験片の重量差から酸化増量を測定した。
・耐剥離性評価:ナイロンブラシを用いて上記酸化焼鈍後の試料表面を擦り、剥離が全く無い場合を○、少しでも剥離がある場合を×と評価した。
・金属間化合物の平均間隔測定:酸化試験後の試料断面(30μm×50μm)を走査型電子顕微鏡等で撮影し、大きさ200nm以上の金属間化合物が有する最近接金属間化合物との距離を測定し、その平均値を求めた。
【0025】
上記試験の結果を表2に示した。表2から明らかなように、Fe−Cr合金に、Mo,Nb,Alを複合添加した本発明の条件を満たすNo.1からNo.18の材料は、いずれも酸化増量が少なく、耐酸化性向上の効果が顕著に現れている。また、耐酸化性の優れたNo.1からNo.18の材料はいずれも、析出した金属間化合物の平均間隔が20μm以下となっている。
【0026】
これに対して、No.19の材料は、C量が高いために、CがCrと結びついて有効Cr量が減少し、耐酸化性が低下している。また、No.22の材料は、Crが少ないために、酸化皮膜の保護性が乏しく、耐酸化性が低下している。同様に、No.23の材料は、Alが少ないために、耐酸化性が低下している。さらに、19.85≦Cr+10Al≦50の条件を満たさない場合(No.22,No.24)は、酸化皮膜の保護性が乏しく、耐酸化性が低下している。
【0027】
Mnは、酸化物の剥離を抑制するが、Cr皮膜中の拡散速度が速いために、表層に酸化物を生成する。そのため、No.21の材料のようにMn量が多いと、酸化速度の増大を招く。また、No.25の材料のようにMo量が少ないと金属間化合物の析出量が少なく、耐酸化性向上の効果が小さい。また、No.26の材料のようにNb量が少ないと金属間化合物の析出量が少なく、耐酸化性向上の効果が小さい。また、5.29≦Mo/Nb≦30の条件を満たさない場合(No.25,No.27,No.28)も、金属間化合物の析出量が少なく、耐酸化性向上の効果が小さい。また、Si量の低いNo.20の材料は、金属間化合物の析出が促進されず、耐酸化性が低下している。
【0028】
【表1】
Figure 0004259151
【0029】
【表2】
Figure 0004259151
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、Fe−Cr合金に、Mo,Nb,Alを適正範囲で複合添加することにより、耐酸化性に優れた耐熱材料を得ることができる。さらにこの材料に、Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,ZrおよびHfの中から選ばれる1種または2種以上を添加することにより、高温で形成される酸化皮膜の耐剥離性をより向上することができる。そして、本発明の耐熱材料を用いることにより、高温・長時間の使用による材料劣化を抑制できるので、材料費の低減に大きく寄与する。

Claims (5)

  1. C:0.20mass%以下、Si:0.02〜1.0mass%、Mn:2.0mass%以下、Cr:10〜40mass%、Al:0.01〜3.0mass%、Mo:0.03〜5.0mass%およびNb:0.1〜3.0mass%を含み、かつMoとNbとは、
    5.29≦Mo/Nb≦30
    の関係を満たして含み、さらにCrとAlとは、
    19.85≦Cr+10Al≦50
    の関係を満たして含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする耐熱材料。
  2. C:0.20mass%以下、Si:0.02〜1.0mass%、Mn:2.0mass%以下、Cr:10〜40mass%、Al:0.01〜3.0mass%、Mo:0.03〜5.0mass%およびNb:0.1〜3.0mass%を含み、かつMoとNbとは、
    5.29≦Mo/Nb≦30
    の関係を満たして含み、さらにCrとAlとは、
    19.85≦Cr+10Al≦50
    の関係を満たして含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、母材の結晶粒界にはMoおよびNbを含む金属間化合物が析出し、表面にはAl系の酸化物層が形成されてなることを特徴とする耐熱材料。
  3. C:0.20mass%以下、Si:0.02〜1.0mass%、Mn:2.0mass%以下、Cr:10〜40mass%、Al:0.01〜3.0mass%、Mo:0.03〜5.0mass%およびNb:0.1〜3.0mass%を含み、かつMoとNbとは、
    5.29≦Mo/Nb≦30
    の関係を満たして含み、さらにCrとAlとは、
    19.85≦Cr+10Al≦50
    の関係を満たして含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、露点30℃の大気中における800℃で1000時間の酸化増量が2.0g/m以下であることを特徴とする耐熱材料。
  4. 上記成分組成に加えてさらに、Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,ZrおよびHfの中から選ばれる1種または2種以上を合計で1.0mass%以下含有したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐熱材料。
  5. 上記母材の結晶粒界に析出したMoおよびNbを含む金属間化合物の最近接距離の平均が20μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐熱材料。
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