JP4252875B2 - 難着雪テープ及びこの難着雪テープを装着した難着雪架空線 - Google Patents
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雪国や雪山のように、電線への着雪が生じ易いルートに建設されているこの種の架空送電線では、架空送電線上に付着した雪片は、架空送電線の最外層の撚りに沿って移動し、これが表面張力によって落下せずに増大し、やがて筒雪となり架空送電線を損傷させる。このような電線着氷雪による事故防止のためこれまで様々な対策が講じられている。
そしてこの難着雪テープにより架空送電線上に付着する雪片を架空送電線から容易に滑り落とし、雪片の架空送電線上での成長を防止している。
ここで使用される難着雪テープの場合も、雪の滑り易い撥水性材料からなる難着雪テープの作用により、架空送電線表面に付着した雪片を架空送電線から滑り落とすことにより架空送電線上での雪片の成長を防止している。
その結果、この難着雪テープが巻回された架空送電線の熱放散が阻害され、例えば最大定格電流を通電したような場合には、架空送電線が過熱してしまい、架空送電線が長手方向に延び、設計値以上に弛度が増大して基準離隔距離を確保するのが困難になる、といった問題があった。
このようにしてなる本願請求項1記載の難着雪テープにより、架空送電線の難着雪化を向上せしめるだけでなく、この難着雪テープは熱放散性も優れているため、仮に架空送電線に最大定格電流を通電したとしても、その際に架空送電線が過熱してその弛度が設計値以上に増大する、といった問題が起こり難くなる。
図1 において符号1 は低明度化処理された難着雪テープで、この難着雪テープ1 の表面側である樹脂製耐熱性テープ2 は、例えばP T F E 樹脂( 四フッ化エチレン樹脂) やシリコーン樹脂等の撥水性材料からなるテープ、あるいはポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートその他のプラスチックからなる樹脂製耐熱性テープ表面にオルガノポリシロキサン系樹脂やフッ素系樹脂等の撥水性材料をコーテイングしたテープであって、かつこのテープは灰黒色あるいは茶褐色化して低明度化( マンセル値5.5以下) すると共に熱の放射率が0.7以上となるように処理されている。
また放射率は、例えば測定装置として、日本電子製JIR−5500形フーリエ変換赤外分光光度計及び放射測定ユニットIRR−200を使用し、試料を試料載置板上に置いて前記装置で試料及び黒体の分光放射強度を測定し、試料の分光放射強度を黒体の分光放射強度で除して分光放射率を求め、これをもとに求めた値である。
因みに、分解能は16cm−1、積算回数は200回、測定温度は約150℃、波長範囲は4.5μm〜15.4μmである。
また前記実施例1では撥水性の樹脂製耐熱性テープ2に低明度化処理を施して樹脂製耐熱性テープ2の明度を5.5(マンセル値)以下にしているが、樹脂製耐熱性テープ2を低明度化すると共に、前記接着層3には暗色系の着色顔料あるいはカーボンなどを混入することにより、あるいは樹脂製耐熱性テープ2と接着層3の両方に低明度化処理を施す等して難着雪テープ1全体として明度を5.5(マンセル値)以下、かつ放射率を0.7以上にしてもよい。このようにしても前記実施例1と同様の効果を得ることができる。
加えて、この難着雪テープ1は低明度化され、その明度が5.5以下(マンセル値)、放射率0.7以上にされているため、架空送電線11の熱放散が妨げられ難く、そのため過熱が防止されて架空送電線11の延びが抑制され、その結果電線弛度が増加する、という問題も解決できる。
尚、難着雪テープ1は図示しない巻付け装置により架空送電線11に巻き付けられる関係上、通常の架空送電線11等の1径間長分の長さ以上を必要とするものである。
ここで、本願発明者等は、本願発明の難着雪テープ1として幅が50mmと100mmの2種類のテープを用いて、同一条件でこの難着雪テープ1を架空送電線11に巻き付け、そのピッチを種々変えて着雪防止効果比較試験を行った。
その結果、架空送電線11の最外層の撚りピッチをPC、前記難着雪テープ1の前記架空送電線11への巻き付けピッチをPtとしたとき、0.1Pc≦Pt≦0.5Pcとなるように前記難着雪テープ1を架空送電線11にらせん状に巻き付ければ、難着雪性が十分保持できることを確認した。また同時に幅広の難着雪テープ1の方が幅の狭いテープより若干難着雪効果が優れることをも見出した。
それに対して前述したように架空送電線11の最外層の撚りピッチをPc、前記難着雪テープ1の前記架空送電線11への巻き付けピッチをPtとしたとき、0.1Pc≦Pt≦0.5Pcとなるように、前記難着雪テープ1を架空送電線11にらせん状に巻き付けた場合、架空送電線11の難着雪性を保持しながら、しかも難着雪テープ1の架空送電線11へのらせん巻きピッチPtを大きくとれるため、テープ巻き付け作業時間を短縮でき、その結果工事費用も削減できる。またピッチPtを比較的大きく取れる、ということは難着雪テープ1の必要長さも短尺化できることを意味するので、難着雪テープ1の資材費用も低減できる。従来方法に比較して数分の1とすることができ、極めて安価に難着雪架空送電線を得ることができる。
またPt>0.5Pcでは架空送電線11への巻き付けピッチが長くなり過ぎて架空送電線11の難着雪効果を十分確保できなくなるからである。
ここで中実芯材5 、6及び7は半導電性または導電性のポリプロピレン樹脂やシリコーン樹脂及びその他の耐熱性樹脂など、あるいはアルミ等の金属材料から選定される。また図示した形状の中実芯材5、6及び7の代わりに、半導電性または導電性の中空のパイプ材あるいはスポンジ状に発泡させた軽量な樹脂や金属材料等も用いることもできる。
一例として突起部8の幅Bと厚さまたは高さt及び介在位置は、難着雪テープ1の幅Wが30〜60mmの場合、以下の値が採用される。
すなわち、突起部8の幅Bは、0.02W≦W≦0.5W の範囲、突起部8の厚さまたは高さtは、t≦0.5〜2mmの範囲であることが好ましく、一般的には1.5mm程度が望ましい。そして芯材の介在位置は、テープのほぼ中央である。
このように突起付きの難着雪テープ1を架空送電線11にらせん状に巻回した場合、撥水性の難着雪テープ1による雪片の滑り易さによる難着雪効果及び低明度化した難着雪テープ1の過熱防止効果に加えて、この突起付きの難着雪テープ1の突起部8のらせん状巻き付けピッチPpにより、架空送電線11上に付着した雪片の回転方向を規制できるようにもなる。それ故、ピッチPpを比較的小さく、例えば5〜10cm程度にすれば、あたかも架空送電線11に多数の難着雪リングを狭間隔で取り付けたものと同様な作用を発揮する。すなわち、雪片が適当な大きさになると撥水性の本願難着雪テープ1の滑り易さと相俟って、雪片の自然落下が促進される。その結果筒雪のような過大な着雪に発達しなくなり雪害事故を未然に、かつ確実に防止することができる。
図5(a)は、前述した図3(c)に示したような突起付きの難着雪テープ1を、接着層3を内側にして、表面が比較的平滑な電線であって通称平滑電線と呼ばれているタイプの架空送電線11へ取り付けた状態を示す一部斜視図、図5(b)はこの架空送電線11からの落雪状況を示す模式図を各々示している。
この実施例5では、突起付きの難着雪テープ1を架空送電線11の長手方向に縦添えし、かつ接着層3を介して貼着し、突起部8が架空送電線11の略上部側長手方向に位置するようにしたものである。
このような範囲が好ましい理由は、0.5πD≧Wでは経時的にこの難着雪テープ1が架空送電線11から剥がれる危険性が高くなるためであり、W>0.95πDにすると難着雪テープ1で覆われない架空送電線11の外周露出部分の周長、すなわちギャップ幅Gs(Gs=πD―W)が狭くなり過ぎて、架空送電線11内に沁みこんだり、難着雪テープ1と架空送電線11との間に入った雨水等の水分が外部に排水され難くなって電線腐食の恐れが出てきたり、難着雪テープ1の資材費が高くなったりするからである。
すなわち、直線状の突起部8が架空送電線11の長手方向上部に形成される結果、架空送電線11上に付着した雪片Stは図5(b)に示すように、直線状の突起部8により架空送電線11の外周上部で左右に分割される。さらには表面が撥水性に優れる難着雪テープ1の効果と相俟って、雪片Stと架空送電線11との間の付着力が弱められるため落雪が促進されるので、架空送電線11が平滑電線であっても過大な筒雪に成長するのを確実に防止することができる。
尚、通常の裸の架空送電線で行われるように、適当な間隔で平滑電線であるこの架空送電線11上に、着雪による電線自身の回転捩れを防止する、いわゆる「捩れダンパ」等を併用すると、難着雪効果を一層高めることができる。
具体的に図6に示す難着雪架空送電線を形成する場合には、例えば線材9を巻き付けたリールを有する線材敷設装置(図示せず)を、架空送電線11上を走行させて線材9を添設(縦添え)し、その後難着雪テープ1をらせん状に巻回して架空送電線11と線材9とを一体化する方法がある。このように簡単な方法で架空送電線11に線材9を添設できる。
ところで線材9の架空送電線11からの突起高さまたは厚さtを1〜3mmとすると、難着雪テープ1による難着雪効果や過熱防止効果に加えて風騒音防止効果も期待できる。
さらにまた、図6に示す実施例6のものを、図5で示す実施例5で説明した、いわゆる架空送電線11が平滑電線である場合の難着雪対策の一つとしても用いることができる。
尚、本実施例6では線材9が円形断面の場合を示しているが、他の形状の線材あるいは条材であっても使用できることはいうまでもない。さらに線材9は1本である必要はなく、複数本を並列して添設してもよい。
因みに、難着雪テープ1に代えて特許文献1に記載の従来難着雪テープを使用するだけでも難着雪効果や風騒音防止効果は期待できる。但し、架空送電線11の過熱防止効果は期待できないことはいうまでもない。
本実施例は、本願発明の難着雪テープ1を使用することにより架空送電線11に期待される難着雪効果や過熱防止効果に加え、線材10、10をらせん巻きしたことによりコロナ特性を改善し、かつ風騒音の低減効果をも高め得る架空送電線11を提供するものである。
具体的には、半導電性または導電性の耐熱樹脂あるいはアルミ線材等からなる外径1〜3mm程度の線材10、10を、例えば2本を密着して1組とした2組の線材を対向するようにして所定のピッチP1(例えば20〜100cm程度の範囲)でらせん状に架空送電線11に巻き付けて電線表面にらせん状の突起を少なくとも1箇所以上形成し、さらにこれら線材10を難着雪テープ1で架空送電線11に巻回一体化したものである。ここで難着雪テープ1のらせん巻きピッチはPtである。
尚、単に難着雪効果やコロナ対策のみに注目するなら、本願発明の難着雪テープ1の代わりに特許文献1に記載の従来の難着雪テープ等も使用できるが、この場合には架空送電線11の過熱防止効果は期待できない。
一方、コロナ騒音に対しても線材10を密着させて所定のピッチでらせん状に架空送電線11に巻き付け、電線表面にらせん状の突起を少なくとも1箇所以上形成した上に、線材10、10の突起形状が単独設置の場合に比して平滑化されて電線表面の突起部分の電位傾度が緩和される。その結果コロナ騒音レベルが低減される。
以上の結果、風騒音及びコロナ騒音レベルをより一層低減できる。
また、密着した線材10、10が形成する突起を前記図7(b)に示すように、電線の任意断面で対向して形成することにより、見かけの電線外径が増加して雨滴等により最大電位傾度が発生し易い電線下面方向の電位傾度を緩和できるので、超高圧送電線に適用しても何ら問題を生じない。
なお、難着雪テープ1の巻き付けピッチPtと線材10の巻き付けピッチP1との関係はPt<P1である。このようにすると難着雪テープ1の巻回が容易になる。
さらに線材10、10は架空送電線11にらせん状に巻回して装着されるため、仮に難着雪テープ1が部分的に破損しても線材10、10が垂れ下がるようなことはなく電気的な安全性が高い。
なお、線材10、10を樹脂などで製作する場合には両者を密着一体化して、例えば断面形状が瓢箪型になるように押出成形するなどして成形すれば、架空送電線11に巻回する時に両者が遊離せず外観美麗に均一な施工ができ、安定した特性が得られるので都合がよい。
2 樹脂製耐熱性テープ
3 接着層
5、6、7 芯材
8 突起部
9 線材
10 線材
11 架空送電線
Claims (1)
- 架空線と
撥水性の樹脂製耐熱性テープと該樹脂製耐熱性テープの一方の面に設けられ暗色系の着色顔料またはカーボンが添加され、明度が5.5 以下(マンセル値) 、かつ放射率が0.7 以上である接着層を有し、前記樹脂製耐熱性テープと前記接着層の間に中実芯材を介在させ、略中央長手方向に突起部を有した難着雪テープと
を有した難着雪架空線であって、
前記架空線上に前記難着雪テープをらせん状に巻回したことを特徴とする難着雪架空線。
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