JP4248793B2 - 薄膜太陽電池の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高い光電変換効率を有する薄膜太陽電池の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、主要なエネルギー源として使用されている石油等の化石燃料は、将来の需給が懸念されており、かつ地球温暖化現象の原因となる二酸化炭素排出等の問題を有している。そこで、近年、石油等の化石燃料の代替エネルギー源として太陽電池が注目されている。
【0003】
この太陽電池としては、光エネルギーを電気に変換するためにpn接合を有するシリコン半導体が用いられており、光電変換効率の面からは単結晶シリコンを用いることが好ましい。しかし、単結晶シリコンを用いた太陽電池は、原料供給や大面積化、低コスト化等の問題を有している。
【0004】
この問題を解決する手段の一つとして、薄膜アモルファスシリコンを光電変換層とする太陽電池が一部実用化されている。
【0005】
さらには、より高い光電変換効率を得るため、アモルファス材料の替わりに、薄膜結晶質シリコンの光電変換層への導入が検討されている。この薄膜結晶質シリコンは、アモルファスと同様に化学的気相成長法(以下、CVD法とする)によって形成することが可能であり、膜質としては多結晶のシリコン薄膜である。以下では、このような薄膜結晶質シリコンを導入した太陽電池を多結晶シリコン薄膜太陽電池と示す。
【0006】
薄膜太陽電池においては、光電変換効率を高めるため、光閉込効果の有効な活用が重要となる。光閉込効果とは、光電変換層に接する透明導電層あるいは金属層の表面を凹凸化して、その界面で光を散乱させることで光路長を延長させ、光電変換層での光吸収を高めることができるという効果である。
【0007】
このような光閉込効果を有効に活用できる薄膜太陽電池として、特開2000−252504号公報には、光反射性金属層の表面凹凸構造と、該表面凹凸構造よりも微細な凹凸とを有する透明導電性酸化物層の表面テクスチャ構造が示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に開示された薄膜太陽電池は、微細な凹凸を形成する際に、その大きさを制御した複数の層を積層することが必要であるため、製造プロセスが複雑となり、製造コストの増大を招くという問題を有している。
【0009】
特に、上記のような薄膜太陽電池の製造方法では、一般的にホウ素が使用されており、そのホウ素源としてジボラン等を用いるため、特殊材料高圧ガス設備等が必要になり、多大な設備投資が必要となる。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、透明導電層に対して、安価かつ容易に所望の凹凸を形成することで、十分な光閉込効果を得ることができ、高い光電変換効率を有する薄膜太陽電池の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の薄膜太陽電池の製造方法は、上記の課題を解決するために、基板、透明導電層、光電変換層を少なくとも備えた薄膜太陽電池において、上記透明導電層の表面を、下記の構造式(1)で示されるアルコール誘導体を少なくとも1種類含むエッチング液を用いてエッチングすることを特徴としている。
A−(OH)n ・・・・・(1)
(nは1〜4の整数、Aは炭素原子を介して水酸基と結合した脂肪族炭化水素残基である)。
【0012】
上記の製造方法によれば、エッチング液に含まれるアルコール誘導体の性質により、透明導電層の表面に、良好な光閉込効果を得るために有効な複数の穴、その穴の部分の微細な凹凸を形成することができるため、光電変換層において良好な光閉込効果を得て、高い光電変換効率を有する薄膜太陽電池を安価かつ容易に製造することができる。
【0013】
すなわち、従来、多結晶薄膜である酸化亜鉛等の透明導電層は、酸あるいはアルカリ性のエッチャントを用いてエッチングすることにより、エッチングの初期段階では、結晶粒界に沿って結晶粒の特定の部分だけが選択的にエッチングされ、複数の穴を形成することができる。しかし、さらにエッチングを進めると、全体的にエッチングが進行するとともに、エッチング初期に形成された穴がエッチング時間の経過とともに大きくなり、最終的には膜自体が完全にエッチングされてなくなってしまい、光閉込効果に有効な微小な凹凸を穴部分に形成することはできない。特に、水溶液によるエッチャントにおいてはその傾向が著しく、良好な光閉込効果を得ることができる薄膜太陽電池を製造することは困難であった。
【0014】
そこで、本発明の薄膜太陽電池の製造方法によれば、上記構造式で示したアルコール誘導体を含むエッチング液を用いてエッチングを行うため、アルコール誘導体の性質により、穴を拡大する方向に進行する異方性エッチングの働きを適度に抑え、エッチングの初期段階で生じた穴の表面に対してエッチングが進行し、穴が形成された部分にさらに微細な凹凸を形成することができる。つまり、上記構造式で示したアルコール誘導体を含む酸あるいはアルカリ性溶液を用いれば、穴の大きさを拡大する方向にはエッチングが進行せず、所望の複数の穴とその穴の表面に複数の微細な凹凸を形成することができる。
【0015】
よって、大掛かりな設備等を必要とせずに、透明導電層に形成された複数の穴と微細な凹凸により、太陽光スペクトルの中心波長400〜650nm程度の光だけでなく、これらより長い波長の光に対しても十分な光散乱を生じさせて、光電変換層における良好な光閉込効果を利用して、高い光電変換効率を有する薄膜太陽電池を安価かつ容易に得ることができる。
【0016】
なお、本発明の薄膜太陽電池の製造方法は、スーパーストレート型薄膜太陽電池、サブストレート型薄膜太陽電池等の薄膜太陽電池の構造に関わらず適用可能である。
【0017】
上記アルコール誘導体は、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールである。
【0018】
これにより、アルコール誘導体の働きにより、異方性エッチングを抑制することで、形成された穴が拡大されることを防止し、良好な光散乱を実現する所望の穴および凹凸を安価かつ容易に形成することができる。
【0019】
上記エッチング液は、上記アルコール誘導体を全溶液のうち10wt%以上含有している。
【0020】
これにより、エッチング液にアルコール誘導体を含有させることによって得られる効果を十分に得ることができ、所望の穴および凹凸を形成して、高い光電変換効率を有する薄膜太陽電池を製造できる。
【0021】
上記透明導電層は、酸化亜鉛を含有している。
【0022】
薄膜太陽電池に用いる透明導電層は、入射する太陽光を損失させること無く光電変換層に導くために高い透過率を有することが要求される。しかし、酸化亜鉛を含有しないSnO2等を透明導電層に用いた場合には、透明導電層上にプラズマCVD法を用いて光電変換層を堆積させる際に、プロセスガスに含まれる水素プラズマにより還元されて黒化が生じ、透明導電層の透過率を低下させ、ひいては薄膜太陽電池の特性を低下させる。本発明の薄膜太陽電池の製造方法では、上記のように、透明導電層に酸化亜鉛を含有させているため、耐プラズマ性が得られ、プラズマCVD法による光電変換層堆積時における水素プラズマによる透明導電層の透過率低下を生じさせること無く、良好な特性を有した薄膜太陽電池を得ることができる。
【0023】
上記エッチングは、エッチング液の温度範囲を5℃以上40℃以下として行われることがより好ましい。
【0024】
上記アルコール誘導体を含むエッチング液の温度を40℃より高い温度でエッチングを行った場合には、揮発性の高いアルコール誘導体においては、酸あるいはアルカリ性のエッチャントによる異方性エッチングの働きが強くなり、好適な光閉込効果を得られる穴および凹凸を形成することが困難になる。一方、5℃より低い温度では、エッチング処理速度の低下を招き、生産効率の低下を招く。
【0025】
よって、本発明の薄膜太陽電池の製造方法では、上記エッチング液の温度を上記範囲内になるように管理してエッチングを行うことにより、光閉込効果に有効な穴および凹凸を形成することができる。
【0026】
本発明により製造される薄膜太陽電池は、上記製造方法により製造されたことを特徴としている。
【0027】
これにより、光閉込効果を得るために有効な穴および凹凸を上記透明導電層の表面に形成することができ、安価な製造方法で、結晶質シリコン光電変換層の膜質を損なうことなく、十分な光散乱に起因する光閉込効果を活用して、高い光電変換効率を有する薄膜太陽電池を得ることができる。
【0028】
上記エッチングにより上記透明導電層の表面に形成される穴の直径は200〜2000nm、穴の深さは50〜1200nmであって、微細な凹凸の高低差は10〜300nmである。
【0029】
これにより、上記透明導電層に形成された複数の穴と微細な凹凸により、太陽光スペクトルの中心波長400〜650nm程度の光だけでなく、これらより長い波長の光に対しても十分な光散乱を生じさせて有効な光閉込効果を得ることができ、高い光電変換効率を有する薄膜太陽電池を得ることができる。
【0030】
本発明のエッチング液は、上記の課題を解決するために、上記薄膜太陽電池の製造方法で用いられることを特徴としている。
【0031】
上記の構成によれば、光閉込効果を得るために有効な穴および凹凸を上記透明導電層の表面に形成することができ、安価な方法で、十分な光散乱に起因する光閉込効果の活用により、高い光電変換効率を有する薄膜太陽電池を得ることができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
本発明の薄膜太陽電池の製造方法に関する一実施形態について、図1〜図5に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0033】
本実施形態の薄膜太陽電池は、図1に示すように、基板11a側から光を入射させて、光電変換層17において光電変換を行うスーパーストレート型の薄膜太陽電池20である。
【0034】
薄膜太陽電池20は、基板11aとその上に形成された透明導電層11bからなる太陽電池用基板11上に、光電変換層17、裏面反射層15、裏面電極16がこの順に積層されて構成されている。
【0035】
光電変換層17は、p型シリコン層12、i型シリコン層13およびn型シリコン層14を備えている。
【0036】
本実施形態の薄膜太陽電池20は、透明導電層11bと裏面電極16とからそれぞれ電極18を引き出し、該電極18を介して、光電変換されて発生した電気を取り出すことができる。
【0037】
基板11aには、透光性絶縁基板として、例えば、ガラスあるいはアクリル等のプラスチック基板が用いられる。
【0038】
透明導電層11bは、基板11a上に形成されており、耐プラズマ性が高い酸化亜鉛(ZnO)を用いて形成されている。ただし、透明導電層11bは、これに限定されるものではなく、例えば、SnO2、InO3、ITO等の単層またはこれらを積層した複合層であってもよい。
【0039】
透明導電層11bは、膜厚が0.1nm〜2μmであって、透明導電層11bの透過率や抵抗率を結晶質シリコン薄膜太陽電池に適したものに制御しやすいことからスパッタ法で形成されている。また、抵抗率を低減するために、不純物が含有されていてもよい。この不純物は、ガリウムやアルミニウム等のIII族元素等があり、その濃度は、例えば、5×1020〜5×1021/cm3である。なお、スパッタ法以外にも、真空蒸着法、EB蒸着法、常圧CVD法、減圧CVD法、ゾルゲル法、電析法等によって形成することも可能である。
【0040】
透明導電層11bの表面は、アルコール誘導体を含むエッチング液を用いた表面処理により、基板11aまでは達しない概略球形の穴が多数形成され、その穴の表面にはさらに微細な凹凸が形成されている。
【0041】
これらの穴および微細な凹凸は、光電変換層17の光吸収特性に適した太陽光の散乱または反射状態を生じさせるとともに、この上に積層する結晶質光電変換層の欠陥密度低減のために適した数、大きさ、形状、深さ等を有している。これらの穴および微細な凹凸の詳しい説明については、後段にて詳述する。
【0042】
光電変換層17は、透明導電層11b上に形成されており、通常、pin接合で形成されている。ここで、光電変換層17は、結晶質シリコンあるいは非晶質シリコンを含む層であってもよいが、図1に示す単接合型の薄膜太陽電池20では、光電変換層17が結晶質シリコンを含む層であることがより好ましい。
【0043】
光電変換層17は、pin接合のp型シリコン層12、i型シリコン層13、n型シリコン層14の全ての層が結晶質シリコンで形成されている。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、i型シリコン層13に加えて、p型シリコン層12、n型シリコン層14のうち、上記透明導電層11bに接する1つの層のみが結晶質シリコンからなる層であってもよい。
【0044】
また、結晶質シリコンには、合金化されたシリコン、例えば、炭素が添加されたSixC1-x、ゲルマニウムが添加されたSixGe1-x、またはその他の不純物等が添加されたシリコンが含まれる。
【0045】
光電変換層17を構成するp型シリコン層12は、III族元素(例えば、ボロン、アルミニウム、ゲルマニウム、インジウム、チタン等)が含有された層である。p型シリコン層12は、単層であってもよいし、III族元素濃度が異なる、または積層した各層毎に徐々に変化する複合層により形成されていてもよい。III族元素濃度は、例えば、0.01〜8原子%程度であって、p型シリコン層12の膜厚は、例えば、1〜200nm程度であればよい。
【0046】
p型シリコン層12は、p型の導電型を有するシリコン層を形成することができれば、どのような方法で形成されてもよく、シリコン層を形成する一般的な方法としてはCVD法がある。ここで、このCVD法は、常圧CVD、減圧CVD、プラズマCVD、ECRプラズマCVD、高温CVD、低温CVD等の何れであってもよいが、RFからVHFの周波数帯の高周波によるもの、ECRプラズマCVD法、これらの組み合わせによる方法で形成することが好ましい。例えば、プラズマCVD法を用いる場合には、その条件は、周波数10〜200MHz程度、パワー数W〜数kW程度、チャンバー内圧力0.1〜20Torr程度、基板温度は室温〜600℃程度であればよい。
【0047】
上記シリコン層を形成するために用いられるシリコン含有ガスとしては、例えば、SiH4、Si2H6、SiF4、SiH2Cl2、SiCl4等が挙げられる。シリコン含有ガスは、通常、希釈ガスとして、H2、Ar、He、Ne、Xe等の不活性ガスとともに使用され、なかでもH2ガスを用いることが好ましい。シリコン含有ガスと希釈ガスとの混合比は、一定あるいは変化させながら、例えば、容量比で1:1〜1:100程度であればよい。
【0048】
また、ドーピングガスとしては、任意にIII族元素を含有するガス、例えばB2H6等を用いることができる。この場合、シリコン含有ガスとIII族元素を含有するガスとの混合比は、CVD等の製膜装置の大きさ、所望のIII族元素濃度等に応じて適宜調整することができ、一定あるいは変化させながら、例えば、容量比で1:0.001〜1:1程度とすることができる。なお、III族元素のドーピングは、上記のように結晶質シリコン層の製膜と同時に行ってもよいし、シリコン膜を形成した後、イオン注入、結晶質シリコン層の表面処理または固層拡散等の手法を用いて行ってもよい。さらに、シリコン含有ガス等にフッ素ガスを添加してもよい。ここで用いるフッ素含有ガスとしては、例えば、F2、SiF4、SiH2F2等があり、この場合のフッ素含有ガスの仕様量としては、例えば、水素ガスの0.01〜10倍程度である。
【0049】
i型シリコン層13は、実質的にp型およびn型の導電型を示さない層であるが、光電変換機能を損なわない程度の非常に弱いp型またはn型の導電型を示す層であってもよい。i型シリコン層13は、例えば、プラズマCVDによって形成することができ、その膜厚は、例えば、0.1〜10μm程度である。i型シリコン層13は、使用ガスがIII族元素を含んでいない点以外は、p型シリコン層12と実質的に同様な方法で形成することができる。
【0050】
n型シリコン層14は、例えば、膜厚10〜100nm程度であって、ドーパントガスとしてV族元素を含むガス、例えば、PH3等を使用する以外は、p型シリコン層12およびi型シリコン層13と同様に形成することができる。ドナーとなる不純物としては、例えば、リン、砒素、アンチモン等が挙げられ、不純物濃度は1018〜1020cm-3程度であればよい。
【0051】
光電変換層17は、光電変換層17を構成する層のうち、少なくとも1つの活性層が、結晶質を含むシリコンまたはシリコン合金からなる構成とすることにより、アモルファスシリコンでは、光電変換に利用できない波長700nm以上の長波長光を十分に利用することができる。
【0052】
これは、短波長感度が高いアモルファスシリコンと長波長感度が高い結晶質シリコンとの光感度の違いによるものである。
【0053】
特に、上記結晶質を含むシリコンまたはシリコン合金からなる活性層の(220)X線回折ピークの積分強度I220および(111)X線回折ピークの積分強度I111の比I220/I111が5以上である場合には、非常に欠陥の少ない活性層が形成されており、高品質な光電変換層17を得ることができる。
【0054】
光電変換層17上には、必要に応じて裏面反射層15として透明導電層が形成される。この透明導電層も上記光入射側の透明導電層11bと同様に、例えば、SnO2、InO3、ZnO、ITO等の透明導電材等の単層、あるいはこれらを積層した複合層により、スパッタ法、真空蒸着法、EB蒸着法、常圧CVD法、減圧CVD法、ゾルゲル法、電析法等によって形成することができ、透明導電層11bと同様に、透過率や抵抗率を結晶質シリコン太陽電池に適した値に制御し易いという利点を考慮すれば、スパッタ法を用いて形成することが好ましい。
【0055】
さらに、裏面電極16として、比較的高い反射率を有する、例えば、銀、アルミ等の金属の単層、あるいはこれらを積層した複合層が、スパッタ法、真空蒸着法、EB蒸着法、常圧CVD法、減圧CVD法、ゾルゲル法、電析法等によって形成される。
【0056】
ここで、透明導電層11bの表面における複数の穴と、その表面に生じる微細な凹凸の詳細について説明する。
【0057】
通常、透明導電層11bとして用いる酸化亜鉛等は、電極として用いられるため低抵抗であることが望ましく、膜質としては結晶質を多分に含むものが用いられる。このため、膜表面および膜中には、複数の粒界を有しており、走査電子顕微鏡やX線回折によって、数10nm〜数100nmの粒径を有する多結晶薄膜であることが観察される。透明導電層11bが基板面に対して特定軸方向に配向することにより、エッチング等の処理における面方位依存性の影響がなくなり、透明導電層11bの光電変換層17側の表面に形成される上記複数の穴および穴の表面に生じる微細な凹凸を均一に形成することができる。よって、薄膜太陽電池20の光電変換特性を均一化することができる。また、配向性の向上と共にエッチング処理後に形成される穴の深さが大きくなり、波長700nm以上の長波長光を効果的に吸収することができる。
【0058】
以上のことから、例えば、酸化亜鉛を透明導電層11bに用いた場合には、X線回折法で得られる(0001)回折ピークの積分強度が、全回折ピークの積分強度の和に対して70%以上になることが、電気的、光学的特性の面から好ましい。
【0059】
そして、光閉込効果を得るために好適な構造として、透明導電層11bの表面に複数の穴とその穴の表面に微細な凹凸とを形成するためには、以下のような手段により、透明導電層11bの表面処理を行えばよいことがわかった。
【0060】
この具体的な方法は、以下のようなものである。
【0061】
すなわち、本実施形態の薄膜太陽電池20の製造方法では、透明導電層11bの表面を下記構造式(1)で示されるアルコール誘導体を少なくとも1種類を含む酸あるいはアルカリ性のエッチング液によりエッチングする。
A−(OH)n ・・・・・(1)
(nは1〜4の整数、Aは炭素原子を介して水酸基と結合した脂肪族炭化水素残基である)。
【0062】
通常、多結晶薄膜である酸化亜鉛等の透明導電層は、酸あるいはアルカリ性のエッチャントでエッチングすることにより、エッチング初期においては、結晶粒界に沿って結晶粒の特定の面だけが支配的にエッチングされ複数の穴が生じる。さらにエッチングを進めると、全体的にエッチングが進行するとともに、エッチング初期に形成された穴がエッチング時間の経過とともに大きくなり、最終的には透明導電層自体がなくなってしまう。特に、水溶液によるエッチャントにおいてはその傾向が著しい。よって、穴が下地の基板や膜に至らない程度でエッチングを止めた場合には、該穴を形成している透明導電層の表面に良好な光閉込効果を得るために有効な微細な凹凸を形成することができない。
【0063】
そこで、本発明の薄膜太陽電池の製造方法によれば、上記構造式で示したアルコール誘導体を含有させた酸あるいはアルカリ性溶液によってエッチングすることにより、エッチング初期に生じた穴の大きさを拡大することなく、穴の表面に所望の複数の穴を形成し、さらにその穴の表面に複数の微細な凹凸を形成することができる。
【0064】
これは、エッチング液に含有されたアルコール誘導体が、穴を拡大する方向に進行する異方性エッチングの働きを適度に抑え、エッチングの初期段階で生じた穴の表面に対してエッチングを促す働きをしているためであると考えられる。
【0065】
透明導電層11bの表面をエッチングする酸あるいはアルカリ性溶液に含有させるアルコール誘導体は、異方性エッチングを抑える働きがあって、水和性を有するものであればよい。具体的には、例えば、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールでも同様のエッチングを行うことができる。
【0066】
また、上記エッチング液において、上記アルコール誘導体が全溶液量のうち10%以上含有されていることが好ましい。10%未満では、上記アルコール誘導体を含有させることによる十分な効果が得られないからである。
【0067】
さらに、アルコール誘導体を含有させた酸あるいはアルカリ性溶液によって、透明導電層11b表面をエッチングする際には、エッチング液を5℃以上40℃以下の温度範囲でエッチングを行うことが好ましい。
【0068】
これは、エッチング液にアルコール誘導体を含有しているため、40℃より高い温度では、揮発性の高いアルコール誘導体においては、その効果を十分に発揮できないだけでなく、酸あるいはアルカリ性のエッチャントによる異方性エッチングの働きが強くなり、好適な光閉込構造を形成することが困難になるからである。逆に、5℃以下では、エッチング処理速度の低下を招き、生産上効率的でなくなるからである。製造コストの点から考えると、エッチング液の昇温・降温の設備が不要な室温での処理が好ましく、本発明は室温においてもその効果を十分に発揮することが可能である。
【0069】
アルコール誘導体を含有させた酸性溶液における溶融液としては、塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸、過塩素酸等の無機酸の1種または2種以上の混合物が挙げられるが、なかでも塩酸を用いることが好ましく、例えば、0.05〜5重量%程度の濃度の酸性溶液として使用できる。
【0070】
アルコール誘導体を含有させたアルカリ性溶液としては、水酸化ナトリウム、ヒドラジン、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の1種または2種以上の混合物が挙げられるが、これらの中でも、水酸化ナトリウムを用いることが好ましい。また、これらのアルカリ性溶液は、1〜10重量%程度の濃度で使用することが好ましい。
【0071】
なお、光電変換層17の吸収特性に適した穴の直径は、200〜2000nm程度であって、特に、400〜1200nm程度であることが好ましい。また、穴の深さは50〜1200nm程度であって、特に、100nm〜800nm程度であることが好ましい。さらに、微細な凹凸の高低差は、10〜300nm程度であって、特に、20〜200nm程度であることが好ましい。
【0072】
また、さらに良好な光散乱または反射状態を生じさせるためには、上記透明導電層11b表面において形成された穴の部分以外の表面にも微細な凹凸が形成されていることが好ましい。これにより、さらに光散乱効果を高め、光電変換層17において有効な光閉込効果を得ることができ、高い光電変換効率を有する薄膜太陽電池を得ることができる。なお、この場合の凹凸の高低差は、10〜300nm程度であって、特に、20〜200nm程度であることがより好ましい。
【0073】
以上により、太陽光スペクトルの中心波長400〜650nm程度の光だけでなく、これらより長い波長の光に対しても十分な光散乱を生じさせることができる。よって、この十分な光散乱を受けて、光電変換層17においても十分な光閉込効果を得ることができ、結果として、高い光電変換効率を有する薄膜太陽電池を得ることができる。なお、光散乱は、凹凸形状により得られる効果の大小はあるものの、その形状により効果が得られなくなるようなものではなく、例えば、略立方体、直方体、円柱、円錐、球、半球等の形状、またはこれらが組み合わされた形状であればよい。
【0074】
良好な光閉込効果は、光電変換層17の各層の膜厚を低減することができるという効果につながる。特に、アモルファスシリコン太陽電池の場合には、Stabler-Wronski効果に起因する光電変換効率の劣化を抑制できる。また、光吸収特性のためにアモルファスシリコンと比較して数倍から十数倍となる数μmオーダーもの厚さが必要とされる結晶質シリコン太陽電池の場合には、製膜時間を大幅に短縮することができる。すなわち、光閉込は薄膜太陽電池の実用化に向けての大きな課題である高効率化、安定化、低コスト化の全ての面について改善することができる。
【0075】
また、本発明を図1に示すようなスーパーストレート型構造の薄膜太陽電池に適用した場合には、透明導電層11bの穴の表面の微細な凹凸は、透明導電層11bとその上に堆積されるシリコン薄膜との中間的な光学特性を有する薄い層として作用し、透明導電層11bとその上に堆積されるシリコン薄膜との界面における反射を低減して、光電変換層17への効果的な光入射を促進することができる。よって、スーパーストレート型構造の薄膜太陽電池として、高い光電変換効率を得ることができる。
【0076】
一方、本発明を図3に示すようなサブストレート型構造の薄膜太陽電池50に適用した場合には、透明導電層44の穴の表面に形成された微細な凹凸は、透明導電層44とその上に堆積される保護膜あるいは雰囲気との中間的な光学特性を有する薄い層として作用し、透明導電層44とその上に堆積される保護膜あるいは雰囲気との界面における反射を低減することができる。よって、サブストレート型の薄膜太陽電池50として、光電変換層45に対する効果的な光入射を促進して、高い光電変換効率を得ることができる。
【0077】
このように、本発明の薄膜太陽電池20の構造形態としては、本実施形態で説明した図1に示すような、基板11a側から光を入射させるスーパーストレート型の薄膜太陽電池20以外にも、図3に示すような、各結晶質シリコン層41〜43側から光を入射させるサブストレート型構造の薄膜太陽電池50であってもよい。
【0078】
本発明の薄膜太陽電池の製造方法は、凹凸制御が施された複数の層を堆積することなく、アルコール誘導体を含むエッチング液を用いた簡便な透明導電層11bに対する表面処理によって、スーパーストレート型、サブストレート型等の構造に関わらず、高い光電変換効率を有する薄膜太陽電池を得ることができる。ただし、スーパーストレート型構造の薄膜太陽電池20においては、透明導電層11b上に高品質な多結晶半導体層の形成することができることからより好ましい。
【0079】
なお、本実施形態では、図1に示す単接合型の薄膜太陽電池20を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、図4に示すような複数のpin接合を有する多接合型の薄膜太陽電池60であってもよい。
【0080】
この多接合型の薄膜太陽電池60においては、すべての第1・第2シリコン光電変換層27・37が、結晶質シリコンまたは非晶質シリコンを含む層でなくてもよく、例えば、結晶質シリコンを含む層と非晶質シリコンとを含む層とが積層されていてもよい。
【0081】
図4に示す多接合型の薄膜太陽電池60においては、結晶質シリコンを含む層と非晶質シリコンを含む層とが混在していることが好ましい。結晶質シリコンを含む第1・第2シリコン光電変換層27・37は、特に注意することがない限り、多結晶および単結晶の他、いわゆる微結晶またはマイクロクリスタルと呼ばれる結晶成分等の全ての結晶状態を含んでいる。これらの結晶状態は、第1・第2シリコン光電変換層27・37の全体に渡って存在していてもよいし、第1・第2シリコン光電変換層27・37を構成する各層において全体的あるいは部分的に存在していてもよい。
【0082】
以下、本発明に係る薄膜太陽電池の製造方法に関する実施例について具体的に説明する。
【0083】
(実施例1)
本実施例1に係る単接合型薄膜太陽電池は、上記実施形態で説明した図1のスーパーストレート型の単接合型薄膜太陽電池と同様の構成である。
【0084】
本実施例1に係るスーパーストレート型の単接合型薄膜太陽電池の製造方法について、以下で説明する。
【0085】
まず、表面が平滑なガラス板を基板11aとして用い、この基板11a上にマグネトロンスパッタリング法により基板温度150℃、製膜圧力0.3mTorrで、透明導電層11bとして酸化亜鉛を厚さ1200nmで形成し、太陽電池用基板11を形成した。
【0086】
透明導電層11bには、1×1021/cm3程度のガリウムが添加されている。この結果、得られた透明導電層11bのシート抵抗は10Ω/□であり、波長800nmの光に対する透過率は80%であった。また、透明導電層11bに対してX線回折法を行ったところ、(0001)回折ピークの積分強度が、全回折ピークの積分強度の和に対して75%であった。
続いて、透明導電層11b表面のエッチングを行った。
エッチング液として用いた酸性溶液は、最終的に全容液中にエチルアルコールを30重量%含むように調合したエチルアルコールと水との混合液に、塩酸濃度0.35重量%となるように塩酸を加えて作製した。太陽電池用基板11を液温25℃で、このエッチング液に150秒浸した後、太陽電池用基板11の表面を純水で十分に洗浄した。エッチング後の透明導電層11b表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、概略円形の形状の穴が形成されており、穴の最大直径範囲は、300〜1000nmで、その個数密度はおよそ1個/μm2程度であった。
【0087】
この穴および周辺の表面をさらに詳細に調べるため、原子間力顕微鏡での観察を行った。
【0088】
これらの観察により得られた透明導電層11bの表面における、透明導電層11bの表面に形成された穴の深さ21は、図2に示すように、100〜800nm程度であった。さらに、上記穴を形成する透明導電層11bの表面部分には、微細な凹凸が形成されており、この微細な凹凸の大きさ(凹凸の高低差)23は20〜150nm程度で、その凹凸の間隔24は80〜400nm程度であった。また、穴の部分以外にも微細な凹凸が形成されており、その微細な凹凸の大きさは30〜60nm程度であった。つまり、透明導電層11bは、形成された穴の部分にさらに微細な凹凸が形成された構造になっていることがわかった。
【0089】
続いて、得られた太陽電池用基板11の上に、高周波プラズマCVD法により、透明導電層11bの上に厚さ約20nmのp型シリコン層12、厚さ約2μmのi型シリコン層13、厚さ約30nmのn型シリコン層14をこの順に積層することで、結晶質シリコンからなる光電変換層17を作製した。製膜時の基板温度は、各々の層において200℃とした。
【0090】
p型シリコン層12形成時には、SiH4ガスを流量比で5倍のH2ガスにより希釈したものを原料ガスとして用いるとともに、さらにB2H6ガスをSiH4ガス流量に対して0.1%添加して製膜した。また、i型シリコン層13の形成時には、p型シリコン層12と同様の原料ガスを、n型シリコン層14の形成時には、SiH4ガス流量に対してPH3ガスを0.01%添加して用いた。
【0091】
プラズマCVD装置(図示せず)から一旦取り出した後、得られた光電変換層17に対してX線回折法を行ったところ、(220)X線回折ピークの積分強度I220と(111)X線回折ピークの積分強度I111との比I220/I111は5.5であった。
【0092】
ここで、実際に得られたX線回折ピークは、光電変換層17中のi型シリコン層13単体の情報ではないが、i型シリコン層に比べて、p型シリコン層12およびn型シリコン層14の膜厚は非常に薄いため、i型シリコン層13の結晶配向性を反映しているものと考えることができる。
【0093】
この後、マグネトロンスパッタリング法により、酸化亜鉛を裏面反射層15として厚さ約50nm、電子ビーム蒸着法により、銀を裏面電極16として厚さ約500nmにそれぞれ形成し、基板11a側から光を入射するスーパーストレート型構造で単接合型の薄膜太陽電池20を得た。
【0094】
(実施例2〜4)
実施例2〜4として、0.35重量%の塩酸溶液中に含有するエチルアルコールの量を、全溶液量に対して8重量%、10重量%および90重量%となるようにエッチング液を作製し、エチルアルコール8重量%含有時の処理時間を130秒、10重量%含有時の処理時間は140秒、90重量%含有時の処理時間を180秒とし、それ以外は実施例1と同様にして、実施例2〜4に係るスーパーストレート型構造で単接合型の薄膜太陽電池をそれぞれ製造した。そして、各々のエッチング液で、透明導電層11b表面にエッチング処理を施した時の透明導電層11bの表面形状および薄膜太陽電池の特性を調べた。
【0095】
結晶質シリコンを含む光電変換層17の形成前に、透明導電層11bの表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、穴の最大直径は、エチルアルコール8重量%の処理では100〜1800nm、エチルアルコール10重量%の処理では200〜1400nm、エチルアルコール90重量%の処理では200〜1000nmの範囲であった。形状は、いずれも概略円形の穴で、個数密度は、エチルアルコール8重量%の処理では2個/μm2、エチルアルコール10重量%の処理では1.6個/μm2、エチルアルコール90重量%の処理では1個/μm2程度であった。
【0096】
そして、実施例1と同様にして、この穴および周辺の表面を更に詳細に調べるため、原子間力顕微鏡での観察を行った。実施例1で示した図2を用いて、透明導電層11bの表面の概略を模式的に説明する。
【0097】
その結果、上記穴の深さ21は、実施例2に係るエチルアルコール8重量%の処理では300〜1100nm、実施例3に係るエチルアルコール10重量%の処理では200〜1000nm、実施例4に係るエチルアルコール90重量%の処理では80〜700nmであった。
【0098】
また、上記穴の表面、および穴が形成されていない表面にも微細な凹凸が形成されており、穴表面の微細な凹凸の大きさ23(凹凸の高低差)は、エチルアルコール8重量%の処理では10〜40nm、エチルアルコール10重量%の処理では10〜80nm、エチルアルコール90重量%の処理では30〜250nmであった。そして、その微細な凹凸の間隔24は、エチルアルコール8重量%の処理では300〜1000nm、エチルアルコール10重量%の処理では200〜800nm、エチルアルコール90重量%の処理では80〜500nmであった。さらに、穴が形成されていない表面の微細な凹凸の大きさは、エチルアルコール8重量%の処理では100〜300nm、エチルアルコール10重量%の処理では100〜200nm、エチルアルコール90重量%の処理では20〜40nmであった。
【0099】
ここで、実施例1〜4に係る薄膜太陽電池を比較したところ、アルコール含有量を減らすと、穴が大きくなり数が増えるのに対し、逆に穴表面の微細な凹凸は小さくなり、数が減る傾向がみられた。これは、アルコール誘導体の含有量の低下によって、異方性エッチングが強くなっていくためであると考えられる。
【0100】
(実施例5〜9)
実施例5〜9として、透明導電層11b表面のエッチングに用いる0.35重量%の塩酸溶液中に含有するアルコール誘導体として、それぞれメチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールを所定の濃度になるように水と調合したものを用い、それ以外は、実施例1と同様にして、実施例5〜9に係るスーパーストレート型構造で単接合型の薄膜太陽電池を作製した。
【0101】
(実施例10)
実施例10として、透明導電層11b表面のエッチング液として、フッ酸に対して硝酸を1:200の体積比で混合したフッ酸と硝酸の混酸であるフッ硝酸が0.1重量%になるように、水とエチレングリコールを用いて酸性溶液を作製し、全溶液中に含有するエチレングリコールの量を30重量%とし、処理時間を60秒とした以外は、実施例1と同様にして、スーパーストレート型構造で単接合型の薄膜太陽電池を作製した。
【0102】
(実施例11)
実施例11として、透明導電層11b表面のエッチング液として、1重量%の水酸化ナトリウム溶液となるように、水とエチルアルコールを用いてアルカリ性溶液を作製し、全溶液中に含有するエチルアルコールの量を30重量%とし、処理時間を100秒とした以外は、実施例1と同様にして、スーパーストレート型構造で単接合型の薄膜太陽電池を作製した。
【0103】
(比較例1)
比較例1として、アルコール誘導体を含有せず、水に所定量の塩酸を加えて作製した0.35重量%の塩酸溶液を用いて、透明導電層表面のエッチング処理を120秒間行い、これ以外は実施例1と同様にして、スーパーストレート型構造で単接合型の薄膜太陽電池を作製した。
【0104】
なお、本比較例1に係る薄膜太陽電池において、光電変換層の形成前に、透明導電層表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、概略円形形状の穴が形成されており、穴の最大直径範囲は80〜2000nmで、その個数密度はおよそ2.5個/μm2程度形成されていた。
【0105】
実施例1と同様にして、この穴および周辺の表面をさらに詳細に調べるため、原子間力顕微鏡での観察を行った。
【0106】
比較例1の薄膜太陽電池において、エッチング処理により得られた透明導電層の表面は、図5に示すように、上記穴の深さ101は、300〜1100nm程度であった。また、穴の表面に形成されている微細な凹凸は10nm以下と小さく、その数も少なかった。一方、上記穴が形成されていない表面の凹凸は大きく、穴と凹凸との区別が困難であった。個数密度2.5個/μm2は、先の実施例1〜11では穴のない表面における微細な凹凸として分類していたものが、本比較例においては、穴と分類されるほど凹凸のサイズが大きくなったことにより密度が増加したものと考えられる。
【0107】
(比較例2)
比較例2として、透明導電層表面のエッチング液として、フッ酸に対して硝酸を1:200の体積比で混合したフッ酸と硝酸の混酸であるフッ硝酸が0.1重量%となるように水とn−ブタノールを用いて酸性溶液を作製し、全溶液中に含有するn−ブタノールの量を30重量%とし、処理時間を60秒とした以外は、実施例1と同様にして、スーパーストレート型構造で単接合型の薄膜太陽電池を作製した。
【0108】
以上のような、本発明の薄膜太陽電池の製造方法に係る実施例1〜11および比較例1・2について、透明導電層11bの表面形状および光電変換層17の配向性について表1に、この薄膜太陽電池のAM1.5(100mW/cm2)照射条件下における電流−電圧特性を表2にそれぞれ示した。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
以下に実施例1〜11および比較例1および2について、表1と表2を用いて詳細に説明する。
【0112】
実施例1〜11における透明導電層のエッチング処理後の表面形状は、何れも図2に示すような表面形状に形成されており、透明導電層の表面には複数の穴が形成され、その穴の内部と穴が形成されていない部分の何れの表面にも微細な凹凸が形成されていた。しかし、比較例1および2では、実施例1〜11と比較して、穴の最大直径範囲が広がり、穴の数が増加し、逆に穴の内部における微細な凹凸はより小さくなり、数も減少していた。
【0113】
また、光電変換層の配向性I220/I111は、実施例1〜11および比較例1および2ともに、5.0もしくはそれ以上の値が得られたことから、何れの薄膜太陽電池の光電変換層についても欠陥の少ない良好な膜が形成されていると考えられる。
【0114】
実施例1〜11および比較例1・2の薄膜太陽電池の電流−電圧特性を比較すると、何れの薄膜太陽電池も同程度の開放電圧および形状因子が得られているにも関わらず、比較例1および2の短絡電流が実施例1〜11と比較して低くなっている。つまり、実施例1〜11に比べて、比較例1および2の光閉込効果が十分でないことがわかる。透明導電層11bの表面形状については、実施例1〜11に見られた穴の表面の微細な凹凸が光閉込に大きく寄与しているものと考えられる。これは、穴の表面に微細な凹凸が形成されていることで、入射光に対して十分な光散乱を生じさるとともに、透明導電層とその上に堆積されるシリコン薄膜との界面における反射を低減し、光電変換層17への効果的な光入射を促進することができたことによるものと考えられる。
【0115】
また、実施例1〜11の中では、実施例2が最も低い短絡電流値となった。これは、アルコール誘導体の含有量が少なかったため、光閉込に十分な微細な凹凸が穴表面に形成されていなかったことによるものと考えられる。
【0116】
したがって、透明導電層にアルコール誘導体を含むエッチング液を用いた表面処理を施すことにより、表面が十分な光散乱を促し、光電変換層において十分な光閉込効果を得て、高い光電変換効率を有する薄膜太陽電池を容易に製造することが可能となることがわかった。
【0117】
なお、実施例1〜11では、基板11a上に形成された透明導電層11bのみにエッチングによる表面処理を施したが、裏面電極16側の裏面反射層15として用いた透明導電層にも同様の処理を施した場合でも同様の効果を得ることができる。
【0118】
(実施例12)
実施例12として、図3に示すような、サブストレート型構造で単接合型の薄膜太陽電池50を形成した。
【0119】
実施例12に係る薄膜太陽電池50は、図3に示すように、ステンレス基板40aとその上に形成された裏面電極40bと透明導電層40cとからなる太陽電池用基板40上に、光電変換層45、透明導電層44がこの順に積層されて形成されている。
【0120】
光電変換層45は、n型結晶質シリコン層41、i型結晶質シリコン層42およびp型結晶質シリコン層43を備えている。
【0121】
このようなサブストレート型構造で単接合型の薄膜太陽電池50を、以下のような手順で形成した。
【0122】
まず、表面が平滑なステンレス基板40a上に、電子ビーム蒸着法により裏面電極40bとして銀を厚さ500nmで形成し、その後、マグネトロンスパッタリング法により裏面反射層として、透明導電層40cを酸化亜鉛を用いて厚さ50nmで形成し、太陽電池用基板40とした。
【0123】
次いで、得られた太陽電池用基板40の上に、高周波プラズマCVD法により、透明導電層40cの上に厚さ30nmのn型結晶質シリコン層41、厚さ2μmのi型結晶質シリコン層42、厚さ20nmのp型結晶質シリコン層43を順に積層することで、光電変換層45を作製した。製膜時の基板温度は各々の層において200℃とした。
【0124】
n型結晶質シリコン層41の形成時には、SiH4ガスを流量比で5倍のH2ガスにより希釈したものを原料ガスとして用いるとともに、さらにPH3ガスをSiH4ガス流量に対して0.01%添加して製膜した。また、i型結晶質シリコン層42の形成時にはn型結晶質シリコン層41と同様の原料ガスを、p型結晶質シリコン層43の形成時には、さらにB2H6ガスをSiH4ガス流量に対して0.1%添加して用いた。
【0125】
その後、マグネトロンスパッタリング法により基板温度150℃、製膜圧力0.3mTorrで、透明導電層44として酸化亜鉛を厚さ1000nmとなるように形成した。透明導電層44には、1×1021/cm3程度のガリウムが添加されている。この結果、得られた透明導電層44のシート抵抗は10Ω/□であり、波長800nmの光に対する透過率は80%であった。また、透明導電層44に対してX線回折法を行ったところ、(0001)回折ピークの積分強度が全回折ピークの積分強度の和に対して75%であった。
【0126】
続いて、透明導電層44表面に対してエッチング処理を行った。エッチング液として用いた酸性溶液は、最終的に全容液中にエチルアルコールを30重量%含むように調合したエチルアルコールと水との混合液に、塩酸濃度0.35重量%となるように塩酸を加えることで作製した。順次、透明導電層44まで堆積した基板を、液温25℃で、上記エッチング液に100秒浸した後、表面を純水で十分に洗浄し、透明導電層44側から光を入射するサブストレート型構造で単接合型の薄膜太陽電池50を得た。
【0127】
エッチング後の透明導電層44の表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、形状は概略円形の穴で、穴の最大直径範囲は200〜1000nmで、その個数密度はおよそ0.8個/μm2程度であった。
【0128】
この穴および周辺の表面を更に詳細に調べるため、原子間力顕微鏡での観察を行った。
【0129】
実施例1で示した図2を用いて、透明導電層44の表面の概略を模式的に説明すれば、透明導電層44の表面に形成された穴の深さ21は80〜600nm程度であった。さらに上記穴の表面には微細な凹凸が形成されており、この凹凸の大きさ(凹凸の高低差)23は10〜180nm程度で、凹凸の間隔24は80〜600nm程度であった。また、穴表面以外の部分に形成されている微細な凹凸の大きさは10〜50nm程度であった。
【0130】
(比較例3)
比較例3として、アルコール誘導体を含有させず、水に所定量の塩酸を加えて作製した0.35重量%の塩酸溶液を用いて、透明導電層表面のエッチング処理を行い、それ以外は実施例12と同様にしてサブストレート型構造で単接合型の薄膜太陽電池を作製した。
【0131】
エッチング後の透明導電層の表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、形状は概略円形の穴で、穴の最大直径範囲は400〜1200nmであり、個数密度はおよそ2.8個/μm2程度形成されていることが分かった。
【0132】
実施例12と同様にしてこの穴および周辺の表面を更に詳細に調べるため、原子間力顕微鏡での観察を行った。本比較例3における透明導電層の表面は、比較例1に係る薄膜太陽電池の透明導電層の表面として示した図5と同様である。よって、本比較例3に係る薄膜太陽電池の透明導電層について、図5を用いて説明する。なお、本比較例3における上記穴の深さ101は、300〜800nm程度であり、穴の表面に形成されている微細な凹凸は10nm以下と小さく、その数も少なかった。
【0133】
一方、上記穴が形成されていない表面の凹凸は大きく、穴と凹凸の区別が困難となる。なお、個数密度2.8個/μm2は、先の実施例12では穴のない表面における微細な凹凸として分類していたものが、本比較例においては、穴と分類されるほど凹凸のサイズが大きくなったことにより密度が増加したものと考えられる。
【0134】
以上のような実施例12および比較例3に係る薄膜太陽電池のAM1.5(100mW/cm2)照射条件下における電流−電圧特性を表3に示す。
【0135】
【表3】
【0136】
表3において、実施例12と比較例3とを比較したところ、開放電圧および形状因子の値はほとんど変わらないが、短絡電流については実施例12の方が比較例3よりも高い値が得られたことがわかる。
【0137】
すなわち、実施例12に係るサブストレート型構造の薄膜太陽電池50の透明導電層44については、本発明の実施例12に係る簡便なエッチング処理により、透明導電層44の表面に複数の穴が形成され、かつその穴の表面に微細な凹凸が生じることで、光閉込に有効な光散乱効果と透明導電層44表面上における反射低減効果とを得ることができ、短絡電流が比較例3に係る薄膜太陽電池よりも大きくなったものと考えられる。
【0138】
なお、実施例12は、透明導電層44のみにエッチングによる表面処理を施した薄膜太陽電池であったが、裏面電極40b側の裏面反射層として用いた透明導電層40cにも同様の処理を施した場合でも、同様の効果を得ることができる。
【0139】
(実施例13)
実施例13に係るスーパーストレート型構造で多接合型の薄膜太陽電池60は、図4に示すように、基板11aとその上に形成された透明導電層11b、第1シリコン光電変換層27、第2透明導電層11c、第2シリコン光電変換層37、裏面反射層15、裏面電極16がこの順に積層されて構成されている。
【0140】
第1シリコン光電変換層27は、p型非晶質シリコン層12a、i型非晶質シリコン層13aおよびn型非晶質シリコン層14aから構成されており、第2シリコン光電変換層37は、p型シリコン層12b、i型シリコン層13bおよびn型シリコン層14bから構成されている。
【0141】
以上のような構成の多接合型薄膜太陽電池は、以下のように製造することができる。
【0142】
まず、実施例1と同様にして、表面が平滑な基板11a上に、マグネトロンスパッタリング法により、基板温度150℃、製膜圧力0.3mTorrで、透明導電層11bとして酸化亜鉛を厚さ1200nmとなるように形成し、続いて、透明導電層11b表面のエッチングを行うことで太陽電池用基板11を形成した。透明導電層11bに対しては、実施例1と同様に、アルコール誘導体を含むエッチング液により表面処理を行うことにより、透明導電層11bの表面に、基板11aには至らない概略円形の穴が多数形成され、さらにその穴の内部には多数の微細な凹凸が形成されていることが原子間力顕微鏡で確認できた。
【0143】
このようにして得られた太陽電池用基板11上に、高周波プラズマCVD装置を用いて、高周波プラズマCVD法により、厚さ20nmのp型非晶質シリコン層12a、厚さ300nmのi型非晶質シリコン層13a、厚さ30nmのn型非晶質シリコン層14aを順に積層することで、第1シリコン光電変換層27を作製した。なお、製膜時の基板温度は、各々の層において200℃とした。
【0144】
p型非晶質シリコン層12a形成時には、SiH4ガスを流量比で5倍のH2ガスにより希釈したものを原料ガスとして用いるとともに、さらにB2H6ガスをSiH4ガス流量に対して0.01%添加して製膜した。また、i型非晶質シリコン層13aは、p型非晶質シリコン層12aと同様の原料ガスを、n型非晶質シリコン層14aは、さらにPH3ガスをSiH4ガス流量に対して0.01%添加して用いた。
【0145】
第1シリコン光電変換層27を堆積した太陽電池用基板11を、プラズマCVD装置から一旦取り出し、再度、マグネトロンスパッタリング法により第2透明導電層11cとして、酸化亜鉛を透明導電層11bと同じ条件で膜厚5nm製膜した。
【0146】
次いで、第2透明導電層11c上に、実施例1の光電変換層17と同じ条件で、第2シリコン光電変換層37を作成した。
【0147】
第2シリコン光電変換層37を形成した後にX線回折法を行ったところ、(220)X線回折ピークの積分強度I220と(111)X線回折ピークの積分強度I111の比I220/I111は5.5であり、実施例1の場合と差はなかった。
【0148】
その後、実施例1と同様に、裏面反射層15および裏面電極16を形成し、基板11aから光を入射するスーパーストレート型構造で多接合型の薄膜太陽電池60を得た。
【0149】
(比較例4)
比較例4として、アルコール誘導体を含有せず、水に所定量の塩酸を加えて作製した0.35重量%の塩酸溶液を用いて、透明導電層11b表面のエッチング処理を行った以外は、実施例13と同様にして、比較例4に係る多接合型の薄膜太陽電池を作製した。
【0150】
第2シリコン光電変換層37を形成した後でX線回折法を行ったところ、(220)X線回折ピークの積分強度I220と(111)X線回折ピークの積分強度I111の比I220/I111は5.0であった。
【0151】
以上のような実施例13および比較例4で得られた多接合型の薄膜太陽電池のAM1.5(100mW/cm2)照射条件下における電流−電圧特性を表4に示す。
【0152】
【表4】
【0153】
表4において、実施例13と比較例4を比較すると、開放電圧および形状因子の値はほとんど変わらないが、短絡電流については実施例13の方が高い値が得られたことがわかる。
【0154】
これは、多接合型構造の薄膜太陽電池における透明導電層についても、本発明による簡便なエッチング処理により、透明導電層11b表面に複数の穴が形成され、かつその穴の表面に微細な凹凸が生じることで、光閉込に有効な光散乱効果と透明導電層11bと第1シリコン光電変換層27との界面における反射低減の効果とが得られたためであると考えられる。
【0155】
なお、実施例13に係る薄膜太陽電池では、透明導電層11bのみにエッチングによる表面処理を施したが、裏面電極側の裏面反射層15として用いた透明導電層や第1シリコン光電変換層27と第2シリコン光電変換層37との間に挿入される第2透明導電層11cにも同様の処理を施してもよい。
【0156】
以上、透明導電層11b・44として酸化亜鉛層を有する薄膜太陽電池を用いて、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態および実施例に限定されるものではない。上記にて説明した透明導電層の種類、およびエッチャントの種類以外にも、本発明と同様の効果を得ることができ、さらに、酸強度もしくはアルカリ強度の異なるエッチング液を用いた場合でも、基本的には本発明と同様の効果を得ることができる。
【0157】
【発明の効果】
本発明の薄膜太陽電池の製造方法は、以上のように、透明導電層の表面を、下記の構造式(1)で示されるアルコール誘導体を少なくとも1種類含むエッチング液を用いてエッチングする製造方法である。
A−(OH)n ・・・・・(1)
(nは1〜4の整数、Aは炭素原子を介して水酸基と結合した脂肪族炭化水素残基である)。
【0158】
それゆえ、エッチング液に含まれるアルコール誘導体の性質により、透明導電層の表面に、良好な光閉込効果を得るために有効な複数の穴、その穴の部分の微細な凹凸を形成することができるため、光電変換層において良好な光閉込効果を得て、高い光電変換効率を有する薄膜太陽電池を安価かつ容易に製造することができるという効果を奏する。
【0159】
すなわち、本発明の薄膜太陽電池の製造方法によれば、上記構造式で示したアルコール誘導体を含むエッチング液を用いてエッチングを行うため、アルコール誘導体の性質により、穴を拡大する方向に進行する異方性エッチングの働きを適度に抑え、エッチングの初期段階で生じた穴の表面に対してエッチングが進行し、穴が形成された部分にさらに微細な凹凸を形成することができる。つまり、上記構造式で示したアルコール誘導体を含む酸あるいはアルカリ性溶液を用いれば、穴の大きさを拡大する方向にはエッチングが進行せず、所望の複数の穴とその穴の表面に複数の微細な凹凸を形成することができる。
【0160】
よって、大掛かりな設備等を必要とせずに、透明導電層に形成された複数の穴と微細な凹凸により、太陽光スペクトルの中心波長400〜650nm程度の光だけでなく、これらより長い波長の光に対しても十分な光散乱を生じさせて、光電変換層における良好な光閉込効果を利用して、高い光電変換効率を有する薄膜太陽電池を安価かつ容易に得ることができる。
【0161】
上記アルコール誘導体は、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールである。
【0162】
それゆえ、アルコール誘導体の働きにより、異方性エッチングを抑制することで、形成された穴が拡大されることを防止し、良好な光散乱を実現する所望の穴および凹凸を安価かつ容易に形成することができるという効果を奏する。
【0163】
上記エッチング液は、上記アルコール誘導体を全溶液のうち10wt%以上含有している。
【0164】
それゆえ、エッチング液にアルコール誘導体を含有させることによって得られる効果を十分に得ることができ、所望の穴および凹凸を形成して、高い光電変換効率を有する薄膜太陽電池を製造できるという効果を奏する。
【0165】
上記透明導電層は、酸化亜鉛を含有している。
【0166】
それゆえ、酸化亜鉛の特性である耐プラズマ性が得られ、プラズマCVD法による光電変換層堆積時における水素プラズマによる透明導電層の透過率低下を生じさせること無く、良好な特性を有した薄膜太陽電池を得ることができるという効果を奏する。
【0167】
上記エッチングは、エッチング液の温度範囲を5℃以上40℃以下として行われることがより好ましい。
【0168】
上記アルコール誘導体を含むエッチング液の温度を40℃より高い温度でエッチングを行った場合には、揮発性の高いアルコール誘導体においては、酸あるいはアルカリ性のエッチャントによる異方性エッチングの働きが強くなり、好適な光閉込効果を得られる穴および凹凸を形成することが困難になる。一方、5℃より低い温度では、エッチング処理速度の低下を招き、生産効率の低下を招く。
【0169】
それゆえ、本発明の薄膜太陽電池の製造方法では、上記エッチング液の温度を上記範囲内になるように管理してエッチングを行うことにより、光閉込効果に有効な穴および凹凸を形成することができるという効果を奏する。
【0170】
本発明により製造される薄膜太陽電池は、上記製造方法により製造された構成である。
【0171】
それゆえ、光閉込効果を得るために有効な穴および凹凸を上記透明導電層の表面に形成することができ、安価な製造方法で、光電変換層の膜質を損なうことなく、十分な光散乱による光閉込効果を活用して、高い光電変換効率を有する薄膜太陽電池を得ることができるという効果を奏する。
【0172】
上記エッチングにより上記透明導電層の表面に形成される穴の直径は200〜2000nm、穴の深さは50〜1200nmであって、微細な凹凸の高低差は10〜300nmである。
【0173】
それゆえ、上記透明導電層に形成された複数の穴と微細な凹凸により、太陽光スペクトルの中心波長400〜650nm程度の光だけでなく、これらより長い波長の光に対しても十分な光散乱を生じさせて有効な光閉込効果を得ることができ、高い光電変換効率を有する薄膜太陽電池を得ることができるという効果を奏する。
【0174】
本発明のエッチング液は、以上のように、上記薄膜太陽電池の製造方法で用いられることを特徴としている。
【0175】
それゆえ、光閉込効果を得るために有効な穴および凹凸を上記透明導電層の表面に形成することができ、安価な方法で、十分な光散乱に起因する光閉込効果の活用により、高い光電変換効率を有する薄膜太陽電池を得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態および実施例1に係るスーパーストレート型の単接合型薄膜太陽電池の構造を概略的に示す断面図である。
【図2】本発明の実施例1に係る薄膜太陽電池における酸化亜鉛を含む透明導電層の表面形状を概略的に示す断面図である。
【図3】本発明の実施例12に係るサブストレート型の薄膜太陽電池の構造を概略的に示す断面図である。
【図4】本発明の実施例13に係る多接合型薄膜太陽電池の構造を概略的に示す断面図である。
【図5】比較例1に係る薄膜太陽電池における酸化亜鉛を含む透明導電層の表面形状を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
11 太陽電池基板
11a 基板
11b 透明導電層
11c 第2透明導電層
12 p型シリコン層
12a p型非晶質シリコン層
13 i型シリコン層
13a i型非晶質シリコン層
14 n型シリコン層
14a n型非晶質シリコン層
15 裏面反射層
16 裏面電極
17 光電変換層
21 穴の深さ
22 穴の直径
23 凹凸の大きさ(凹凸の高低差)
24 凹凸の間隔
27 第1シリコン光電変換層
37 第2シリコン光電変換層
40 太陽電池用基板
40a 基板
40b 裏面電極
40c 透明導電層
41 n型シリコン層
42 i型シリコン層
43 p型シリコン層
44 透明導電層
45 光電変換層
Claims (2)
- 基板、透明導電層、光電変換層を少なくとも備えた薄膜太陽電池において、
上記透明導電層の表面を、下記の構造式(1)で示されるアルコール誘導体を少なくとも1種類含むエッチング液を用いてエッチングし、
上記エッチング液は、酸あるいはアルカリ性溶液であり、
上記エッチング液は、水を含んでおり、
上記アルコール誘導体は、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールであり、
上記エッチング液は、塩酸、フッ硝酸または水酸化ナトリウムを用いて作製されており、
上記エッチング液は、上記アルコール誘導体を全溶液のうち10wt%以上含有しており、
上記透明導電層は、酸化亜鉛を含有しており、
上記エッチングにより上記透明導電層の表面に形成される穴の直径は200〜2000nm、穴の深さは50〜1200nmであって、微細な凹凸の高低差は10〜300nmであることを特徴とする薄膜太陽電池の製造方法。
A−(OH)n ・・・・・(1)
(nは1〜4の整数、Aは炭素原子を介して水酸基と結合した脂肪族炭化水素残基である。) - 上記エッチングは、エッチング液の温度範囲を5℃以上40℃以下として行われることを特徴とする請求項1に記載の薄膜太陽電池の製造方法。
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