JP4247399B2 - 塊状重合用触媒および該触媒を用いた重合方法 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、新規な塊状重合触媒およびこの塊状重合触媒を用いた重合方法に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
従来から、例えばアクリル酸、メタクリル酸、スチレンおよびこれらの誘導体のような重合性二重結合を有する重合性化合物は、ラジカル重合開始剤の存在下に乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法および塊状重合法によって重合可能であり、こうして得られる重合物は、成形体、粘着剤、塗料、繊維など種々の用途に利用されている。こうした重合体のうち、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法によって製造される重合体は、反応溶媒や分散媒を用いて重合させるため、重合温度を制御しやすく、しかも重合率が高い場合であっても反応液が流動性を有するという利点がある。
【0003】
しかしながら、こうした乳化重合法、懸濁重合法によって得られる重合体は、用途によっては生成した重合体を反応溶媒や分散媒から分離するための沈殿、濾過、洗浄、乾燥などの操作が必要であり、工程が煩雑となる。こうした中で塊状重合法は、溶媒や分散媒を使用しないことから有機溶剤、分散剤、乳化剤などを用いる必要がなく、重合に関与する有機溶剤のような不純物を含まないので、反応系が簡潔となるばかりでなく、得られる重合体中に乳化剤や分散剤などの不純物の混入がなく、さらには目的の重合体を得るために、溶媒や分散媒の除去も不要である。こうした点からすると、工業的に有利な重合法である。
【0004】
しかしながら、一般に、こうした塊状重合法では、重合反応速度が著しく速く、事実上この塊状重合法を制御することはきわめて困難である。また、重合速度が制御できずに高温度で生成した重合体は、不均化停止により分子の末端基が不安定な状態となったり、低分子量体化したり、逆に先に生成していた重合体からの水素引き抜きなどにより、重合体の分岐化やゲル化が起こりやすい。このため重合体の分子量、分子量分布などの分子設計が困難になることはもとより、重合体の分岐化や不均化停止末端などの生成などにより、明確な分子構造の設計が困難となる。さらに、ゲル化物が急激にかつ大量に生成することがあり、最悪の場合、暴走反応による爆発の危険すらある。
【0005】
こうした中でも、例えば、スチレン、メタクリル酸メチルは、比較的重合速度が遅いという特性を有していることから、塊状重合によっても反応制御が可能であり、古くからその制御法は検討がなされている。そして、こうしたスチレン、メタクリル酸メチル等の塊状重合において、分子量、分子量分布を制御するために、メルカプタンが使用されることがある。
【0006】
しかしながら、こうしたメルカプタンを用いた塊状重合反応では、均一に反応を制御することが困難であることが多く、また、塊状重合に供されるモノマーにも制限がある。ところで、重合反応は使用するモノマーによって触媒が異なり、例えばエチレン等の重合の触媒としてチタノセンのようなメタロセン化合物が用いられているが、このメタロセン化合物は、光重合において増感剤と共に使用することを除けば、このメタロセン化合物はα-オレフィン以外のモノマーの重合触媒として使用することはほとんど知られていない。
特開平9-5996号公報には、付加重合可能なエチレン性不飽和二重結合を少なくとも1個有する化合物並びに光重合開始系としてチタノセン化合物および該チタノセン化合物を増感し得る増感剤とを含む光重合組成物において、該組成物がさらに、複素環式チオール化合物を含有するものである光重合性組成物の発明が開示されている。この公報に開示されている発明では、チタノセン化合物は光重合触媒として使用されているのであり、チタノセン化合物を塊状重合の触媒として使用することに関する記載はない。また、この公報に記載されている複素環式チオール化合物は、可視光増感剤である。
【0007】
一般に、チタノセン化合物のようなメタロセン化合物において、硫黄含有化合物は、メタロセン化合物の触媒作用を低減させる化合物であり、上記のように可視光増感剤のような特定の作用効果を示す化合物として硫黄含有化合物を使用することは触媒としてのメタロセン化合物の使用に際しては極めて例外的な使用方法である。即ち、一般には硫黄含有化合物は、触媒としてのメタロセン化合物に対しては触媒毒となる化合物であり、従って、硫黄化合物は、メタロセン化合物を触媒とする反応系に添加されることは通常は考えられない組み合わせである。
【0008】
【発明の目的】
本発明は、塊状重合に用いる新規な触媒を提供することを目的としている。さらに詳しくは本発明は、アクリル系モノマーのような重合性不飽和結合を有する単量体を用いて反応を暴走させることなく塊状重合を行うことができる新規な触媒を提供することを目的としている。
【0009】
さらに、本発明は、こうした触媒を用いた新規な塊状重合方法を提供することを目的としている。
【0010】
【発明の概要】
本発明の塊状重合用触媒は、不活性ガス雰囲気中で、次式[B]、[B−1]および[B−2]で表わされる重合性不飽和化合物を塊状重合反応を行なうために用いる、次式[I]で表される有機金属化合物とチオール類とからなることを特徴としている。
【0027】
【化9】
【0028】
ただし、上記式[B]において、R 7 〜R 9 はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、R 10 は、水素原子、アルカリ金属原子、炭素数1〜22の炭化水素基(該炭化水素基は直鎖状であっても側鎖を有していてもよく、また、該炭化水素基あるいは側鎖を形成する基中の水素原子の一部が、−OH、−F、−COOH、−Cl、−NH 2 、−Si(OCH 3 ) 3 、−Si(OCH 3 ) 2 (CH 3 )、−Si(CH 3 ) 2 (OCH 3 )よりなる群から選ばれる少なくとも一種類の極性基またはハロゲン原子、反応性官能基で置換されていてもよく、また該炭化水素基は二重結合を有していてもよく、さらに該炭化水素基は、環状構造を有していてもよい)である。即ち、このR 10 の例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルコキシ基、アルキルエーテル基を挙げることができる。この基R 10 を構成する水素原子の少なくとも一部は、ハロゲン原子、スルホン酸基、グリシジル基等で置換されていてもよい。
【0029】
【化10】
【0030】
ただし、式[B−1]において、R 11 〜R 13 は、前記R 7 〜R 9 と同じ意味であり、R 14 は、水酸基、−CO−NH 2 、−CN、グリシジル基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基、アリルエーテル基、アルキルエーテル基、アルコキシシリル基、シラノール基、ハロゲン化シリル基のいずれかの基である。この基R 14 を構成する水素原子の少なくとも一部は、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。また、この基R 14 は、アルキレングリコールから誘導される構成単位、アルコキシシリル基、アルキルアルコキシシリル基、メチロール基、アルコキシアミド基を有する基であってもよい。
【0031】
【化11】
【0032】
ただし、式[B−2]において、R 15 およびR 17 は、前記R 7 〜R 9 と同じ意味であり、R 16 およびR 18 は、それぞれ独立に、カルボキシル基、水酸基、−CO−NH 2 、−CN、グリシジル基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基のいずれかの基である。この基R 16 およびR 18 を構成する水素原子の少なくとも一部は、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。また、この基R 16 およびR 18 はR 15 およびR 17 の結合した2個の炭素原子と共同して環状構造を形成していてもよく、この環状構造が2重結合を有していてもよい。
【0011】
【化12】
【0012】
ただし、上記式[I]において、Mは、チタン、ジルコニウム、ハフニウムおよびルテニウムよりなる群から選ばれる金属であり、R1およびR2は、それぞれ独立に、置換基を有することもある脂肪族炭化水素基、置換基を有することもある脂環族炭化水素基、置換基を有することもある芳香族炭化水素基、置換基を有することもあるケイ素含有基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の基、もしくは、水素原子または単結合のいずれかであり、さらに、R1およびR2が共同して該2個の5員環を結合していてもよく、また、複数の隣接するR1またはR2は、共同して環状構造を形成していてもよく、aおよびbは、それぞれ独立に、1〜4の整数であり、Xはハロゲン原子または水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換されていることもある炭化水素基であり、nは0または金属Mの価数−2の整数である。
【0013】
また、本発明の重合方法は、上記式[I]で表される有機金属化合物とチオール類とからなる塊状重合用触媒の存在下に、不活性ガス雰囲気中で、上記式[B]、[B−1]および[B−2]で表わされる重合性不飽和化合物を塊状重合させることを特徴としている。本発明者は、アクリル系モノマーの塊状重合について検討を重ねた結果、メタロセン化合物とチオール類とを併用することにより、従来塊状重合が困難であったアクリル系モノマーを用いた塊状重合において、メタロセン化合物とチオール類とからなる触媒が、非常に良好な触媒作用を有することを見出して本発明を完成した。
【0014】
上記式[I]で表される有機金属化合物とチオール類とからなる本発明の塊状重合用触媒を用いることにより、アクリル系重合体のような重合性不飽和結合を有する単量体を安定に塊状重合させることができる。
【0015】
【発明の具体的説明】
次に本発明の塊状重合用触媒およびこの塊状重合用触媒を用いた重合方法について具体的に説明する。
本発明の触媒は、重合性不飽和結合を有する化合物を用いて、安定に塊状重合を行うことができる触媒である。
【0016】
本発明で塊状重合触媒として使用される有機金属化合物は、次式[I]で表すことができる。
【0017】
【化13】
【0018】
ただし、上記式[I]において、Mは、周期律表4A属、4B属、5A属、5B属の金属、クロム、ルテニウムおよびパラジウムよりなる群から選ばれる金属である。具体的にはMは、チタン、ジルコニウム、クロム、ルテニウム、バナジウム、パラジウム、錫などである。また、式[I]において、R1およびR2は、それぞれ独立に、置換基を有することもある脂肪族炭化水素基、置換基を有することもある脂環族炭化水素基、置換基を有することもある芳香族炭化水素基、置換基を有することもあるケイ素含有基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の基、もしくは、水素原子または単結合のいずれかである。
【0019】
さらに、R1およびR2が共同して該2個の5員環を結合していてもよく、また、複数の隣接するR1またはR2は、共同して環状構造を形成していてもよい。また、式[I]において、aおよびbは、それぞれ独立に、1〜4の整数であり、Xは塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子または水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換されていることもある炭化水素基であり、nは0または金属Mの価数−2の整数である。
【0020】
このような有機金属化合物の例としては、ジシクロペンタジエン−Ti−ジクロライド、ジシクロペンタジエン−Ti−ビスフェニル、ジシクロペンタジエン−Ti−ビス-2,3,4,5,6- ペンタフルオロフェニ-1-イル、ジシクロペンタジエン−Ti−ビス-2,3,5,6- テトラフルオロフェニ-1-イル、ジシクロペンタジエン−Ti−ビス-2,5,6- トリフルオロフェニ-1-イル、ジシクロペンタジエン−Ti−ビス-2,6- ジフルオロフェニ-1-イル、ジシクロペンタジエン−Ti−ビス-2,4- ジフルオロフェニ-1-イル、ジメチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス-2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニ-1-イル、ジメチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス-2,3,5,6-テトラフルオロフェニ-1-イル、ジメチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス-2,6-ジフルオロフェニ-1-イル、ジメチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス-2,6-ジフルオロ-3-(ピル-1-イル)-フェニ-1-イルのようなチタノセン化合物;ジシクロペンタジエニル−Zr−ジクロライド、ジシクロペンタジエン−Zr−ビスフェニル、ジシクロペンタジエン−Zr−ビス-2,3,4,5,6- ペンタフルオロフェニ-1-イル、ジシクロペンタジエン−Zr−ビス-2,3,5,6- テトラフルオロフェニ-1-イル、ジシクロペンタジエン−Zr−ビス-2,5,6- トリフルオロフェニ-1-イル、ジシクロペンタジエン−Zr−ビス-2,6- ジフルオロフェニ-1-イル、ジシクロペンタジエン−Zr−ビス-2,4- ジフルオロフェニ-1-イル、ジメチルシクロペンタジエニル−Zr−ビス-2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニ-1-イル、ジメチルシクロペンタジエニル−Zr−ビス-2,3,5,6-テトラフルオロフェニ-1-イル、ジメチルシクロペンタジエニル−Zr−ビス-2,6-ジフルオロフェニ-1-イル、ジメチルシクロペンタジエニル−Zr−ビス-2,6-ジフルオロ-3-(ピル-1-イル)-フェニ-1-イルのような)のようなジルコノセン化合物;ジシクロペンタジエニル−V−クロライド、ビスメチルシクロペンタジエニル−V−クロライド、ビスペンタメチルシクロペンタジエニル−V−クロライド、ジシクロペンタジエニル−Ru−クロライド、ジシクロペンタジエニル−Cr−クロライドなどを挙げることができる。これらの有機金属化合物は単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0021】
この有機金属化合物は、通常の触媒量で使用することができ、具体的には、重合させようとする重合性不飽和化合物100重量部に対して、通常は1〜0.001重量部、好ましくは0.01〜0.005重量部の量で使用される。また、本発明で使用されるチオール類の例としては、エチルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、ターシャリードデシルメルカプタン、ノルマルドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン等のチオール基以外の官能基を有さないアルキルチオール類、フェニルメルカプタン、ベンジルメルカプタン等のチオール基以外の官能基を有さない芳香族系チオール類等のチオール化合物や、β-メルカプトプロピオン酸、メルカプトエタノール、3−メルカプトプロピルートリメトキシシラン、チオフェノールなどのような、チオール基以外にも官能基を有するチオール類、更には、トリチオグリセリンやペンタエリスリトールをβ−メルカプトプロピオン酸にてエステル化した多官能チオール化合物、また、ポリサルファイド系ポリマーのような活性のチオール基を有すポリマー型チオールを挙げることができる。
【0022】
上記チオール類の使用量は得ようとする重合体の特性を考慮して適宜設定することができる。即ち、反応系におけるチオール濃度が増大すると単位時間あたりの重合率が高くなり、また、到達重合率も高くなる。この際、有機金属化合物の量が多くなると単位時間あたりの重合率が高くなるが、到達重合率には大きな影響を及ぼさない。また、有機金属化合物の使用量は、得られる重合体の分子量に対してほとんど影響を与えないが、この有機金属化合物を使用しないと、反応は進行しない。さらに、チオール類の使用量を多くすると重合速度が早くなる。こうした傾向から、本発明の触媒において、有機金属化合物が反応全体において活性化触媒的に作用し、チオール類は、重合開始作用がある(即ち、重合開始種的に作用する)と考えられる。このように本発明の触媒において、チオール類の使用量は、分子量、重合率へ大きく影響すると考えられる。
【0023】
従って、チオール類の使用量は、得ようとする重合体の分子量、重合速度等を考慮して適宜設定することができるが、反応を円滑に進め、かつ反応を暴走させないためには、有機金属化合物とチオール類とは通常は100:1〜1:50000の範囲内のモル比、好ましくは10:1〜1:10000のモル比で使用される。
【0024】
なお、このチオール類は、反応開始時に全量添加することもできるし、チオール類を最初に加えて、所望の時間反応させた後、さらにチオール類を追加添加することもできるし、チオール類と重合性不飽和化合物の両者を追加添加することもできる。このようにチオール類の追加添加、チオール類と重合性不飽和化合物との追加添加により、重合率が向上する。
【0025】
本発明の塊状重合用触媒において、重合開始触媒としての上記有機金属化合物およびチオール類以外に、重合速度や重合度を調整することを目的として、ジスルフィド化合物、トリスルフィド化合物、テトラスルフィド化合物を使用することができる。本発明で使用することができる重合調整剤として使用されるジスルフィド化合物、トリスルフィド化合物、テトラスルフィド化合物の例としては、ジエチルトリスルフィド、ジブチルテトラスルフィド、ジフェニルジスルフィド、ビス(2−ヒドロキシエチル)ジスルフィド)、ビス(4−ヒドロキシブチル)テトラスルフィド、ビス(3−ヒドロキシプロピル)トリスルフィド、ビス(3−カルボキシプロピル)トリスルフィド、ビス(3−カルボキシプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−プロピルトリメトキシシラン)ジスルフィド、ビス(3−プロピルトリエトキシシラン)テトラスルフィドなどを挙げることができる。これらのスルフィド化合物は、単独であるいは組み合わせて使用することができる。このようなスルフィド化合物は、本発明の塊状重合において、重合を失活させない程度に使用することができ、具体的には、重合させようとする重合性不飽和化合物100重量部に対して、通常は50〜0重量部、好ましくは20〜0.005重量部の量で使用される。
【0026】
本発明の有機金属とチオール類とからなる塊状重合用触媒を用いることにより、重合性不飽和化合物の塊状重合を行うことができる。本発明の触媒を用いて塊状重合される重合性不飽和化合物としては、例えば、次式[B]、[B−1]および[B−2]で表される重合性不飽和化合物を使用することが好ましい。
【0027】
【化14】
【0028】
ただし、上記式[B]において、R7〜R9はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、R10は、水素原子、アルカリ金属原子、炭素数1〜22の炭化水素基(該炭化水素基は直鎖状であっても側鎖を有していてもよく、また、該炭化水素基あるいは側鎖を形成する基中の水素原子の一部が、−OH、−F、−COOH、−Cl、−NH2、−Si(OCH3)3、−Si(OCH3)2(CH3)、−Si(CH3)2(OCH3)よりなる群から選ばれる少なくとも一種類の極性基またはハロゲン原子、反応性官能基で置換されていてもよく、また該炭化水素基は二重結合を有していてもよく、さらに該炭化水素基は、環状構造を有していてもよい)である。即ち、このR10の例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルコキシ基、アルキルエーテル基を挙げることができる。この基R10を構成する水素原子の少なくとも一部は、ハロゲン原子、スルホン酸基、グリシジル基等で置換されていてもよい。
【0029】
【化15】
【0030】
ただし、式[B−1]において、R11〜R13は、前記R7〜R9と同じ意味であり、R14は、水酸基、−CO−NH2、−CN、グリシジル基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基、アリルエーテル基、アルキルエーテル基、アルコキシシリル基、シラノール基、ハロゲン化シリル基のいずれかの基である。この基R14を構成する水素原子の少なくとも一部は、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。また、この基R14は、アルキレングリコールから誘導される構成単位、アルコキシシリル基、アルキルアルコキシシリル基、メチロール基、アルコキシアミド基を有する基であってもよい。
【0031】
【化16】
【0032】
ただし、式[B−2]において、R15およびR17は、前記R7〜R9と同じ意味であり、R16およびR18は、それぞれ独立に、カルボキシル基、水酸基、−CO−NH2、−CN、グリシジル基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基のいずれかの基である。この基R16およびR18を構成する水素原子の少なくとも一部は、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。また、この基R16およびR18はR15およびR17の結合した2個の炭素原子と共同して環状構造を形成していてもよく、この環状構造が2重結合を有していてもよい。
【0033】
さらに、このような重合性不飽和化合物の例としては、以下に示す化合物を挙げることができる。アクリル酸およびアクリル酸アルカリ金属塩などの塩;メタアクリル酸およびメタクリル酸アルカリ金属塩などの塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシルのようなアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジルのようなアクリル酸アリールエステル;アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸プロポキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸エトキシプロピルのようなアクリル酸アルコキシアルキル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシルのようなメタアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジルのようなメタクリル酸アリールエステル;メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸エトキシエチル、メタクリル酸プロポキシエチル、メタクリル酸ブトキシエチル、メタクリル酸エトキシプロピルのようなメタクリル酸アルコキシアルキル;エチレングリコールのジアクリル酸エステル、ジエチレングリコールのジアクリル酸エステル、トリエチレングリコールのジアクリル酸エステル、ポリエチレングリコールのジアクリル酸エステル、プロピレングリコールのジアクリル酸エスエル、ジプロピレングリコールのジアクリル酸エスエル、トリプロピレングリコールのジアクリル酸エステルのような(ポリ)アルキレングリコールのジアクリル酸エステル;エチレングリコールのジメタクリル酸エステル、ジエチレングリコールのジメタクリル酸エステル、トリエチレングリコールのジメタクリル酸エステル、ポリエチレングリコールのジアクリル酸エステル、プロピレングリコールのジメタクリル酸エスエル、ジプロピレングリコールのジメタクリル酸エステル、トリプロピレングリコールのジメタクリル酸エステルのような(ポリ)アルキレングリコールのジメタアクリル酸エステル;トリメチロールプロパントリアクリル酸エステルのような多価アクリル酸エステル;トリメチロールプロパントリメタクリル酸エステルのような多価メタクリル酸エステル;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;酢酸ビニル;塩化ビニリデン;アクリル酸-2-クロロエチル、メタクリル酸-2-クロロエチルのようなハロゲン化ビニル化合物;アクリル酸シクロヘキシルのような脂環式アルコールのアクリル酸エステル;メタクリル酸シクロヘキシルのような脂環式アルコールのメタクリル酸エステル;2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリンのようなオキサゾリン基含有重合性化合物;アクリロイルアジリジン、メタクリロイルアジリジン、アクリル酸-2-アジリジニルエチル、メタクリル酸-2-アジリジニルエチルのようなアジリジン基含有重合性化合物;アリルグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジルエーテル、メタクリル酸グリシジルエーテル、アクリル酸グリシジルエーテル、アクリル酸-2-エチルグリシジルエーテル、メタクリル酸-2-エチルグリシジルエーテルのようなエポキシ基含有ビニル単量体;アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸またはメタクリル酸とポリプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールとのモノエステル、ラクトン類と(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチルとの付加物のようなヒドロキシル基含有ビニル化合物;フッ素置換メタクリル酸アルキルエステル、フッ素置換アクリル酸アルキルエステル等の含フッ素ビニル単量体;(メタ)アクリル酸を除く、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸のような不飽和カルボン酸、これらの塩並びにこれらの(部分)エステル化合物および酸無水物;2-クロルエチルビニルエーテル、モノクロロ酢酸ビニルのような反応性ハロゲン含有ビニル単量体;メタクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N-メトキシエチルメタクリルアミド、N-ブトキシメチルメタクリルアミドのようなアミド基含有ビニル単量体;ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルアリルアミン、2-メトキシエトキシトリメトキシシランのような有機ケイ素基含有ビニル化合物単量体;ならびに、エチルデンノルボルネン、イソプレン、ペンタジエン、ビニルシクロヘキセン、クロロプレン、ブタジエン、メチルブタジエン、シクロブタジエン、メチルブタジエンのようなジエン化合物。
【0034】
その他、ビニル基を重合したモノマー末端にラジカル重合性ビニル基を有するマクロモノマー類等(例えば、フッ素系モノマー、シリコン含有モノマー、マクロモノマー、スチレン、シリコン等)を例示することができる。これらの重合性不飽和化合物は、単独であるいは組み合わせて使用することができる。これらの重合性不飽和化合物は、反応条件において、液体であっても固体であってもよく、また気体であってもよいが、操作の簡便さから反応の際に液体であるモノマーを用いることが好ましい。
【0035】
上記のような重合性不飽和化合物は、上記式[I]で表される有機金属化合物とチオール類とからなる本発明の塊状重合用触媒を用いることにより、安定に塊状重合する。ここで塊状重合とは、実質的に溶剤の存在しない状態で重合性不飽和化合物を重合させる反応であり、通常この反応系には反応溶媒は含有されていない。ここで、「実質的に溶媒を使用しない」とは、反応溶媒を使用しないことを意味し、たとえば触媒として使用する式[I]で表される有機金属化合物とチオール類とからなる本発明の塊状重合用触媒を単量体全体に均一に分散させるために、極微量の溶媒に溶解もしくは分散させる際に使用する溶媒、原材料中に残存する溶媒などをも排除するものではない。
【0036】
この塊状重合反応は、通常は、不活性ガス雰囲気中で行われ、従って、この塊状重合反応系には、酸素のような活性ガスは存在しない。ここで使用される不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスおよび炭酸ガスを挙げることができる。この塊状重合において、触媒として使用される上述の式[I]で表される有機金属化合物とチオール類とからなる本発明の塊状重合用触媒は、通常の触媒量で使用することができるが、上記重合性不飽和化合物の不飽和基モル数1に対し、式[I]で表される有機金属化合物は通常は0.0000001〜0.0001モル、好ましくは、使用するチオール類のモル数に合わせ、有機金属化合物とチオール類のモル比が10:1〜1:10000になるように使用する。チオール類は、通常は0.00001〜0.7モル、好ましくは0.0001〜0.5モルの範囲内で使用される。
【0037】
本発明の触媒を用いた塊状重合反応は、重合性不飽和化合物の種類によって、加熱あるいは加温下に行うこともできるし、冷却しながら行うこともできるが、この塊状重合反応温度を0〜150℃の範囲内に設定することが好ましく、さらに25〜120℃の範囲内に設定することが特に好ましい。塊状重合反応温度を上記範囲内に設定することにより、反応を暴走させることなく安定に進行させることができる。使用する重合性不飽和化合物の不飽和基の活性にもよるが、比較的重合性の高いアクリル酸エステル系の重合性不飽和化合物を用いた場合でも、反応温度を0℃以下とした場合、式[I]で表す有機金属化合物およびチオール類の触媒としての活性が低くなり、充分な重合率を達成するために必要な時間が長くなり、効率が悪い。さらに、スチレン型不飽和化合物のように重合活性が低い化合物を用いた場合でも、25℃以上の条件であれば、充分な重合率を達成することができる。
【0038】
また、反応温度を150℃以上とした場合は重合反応中に著しい発熱による暴走反応の危険性が生ずる。重合温度を120℃以下と設定することにより反応を暴走させることなく、反応の円滑な進行を維持することができる。本発明の塊状重合において、反応時間は、重合率、分子量等を考慮して適宜設定することができるが、例えば上記のような条件では反応時間は、通常は2〜12時間、好ましくは2〜8時間の範囲内に設定することが好ましい。
【0039】
この塊状重合反応は、反応物の温度を下げ、さらに好ましくはベンゾキノンなどの重合反応停止剤を添加することにより停止することができる。上記のように塊状重合を行うことにより、通常は40%以上、好ましくは60%以上の重合率の重合体が得られる。そして、反応系内にある未反応モノマー、残留チオール類、その他低沸点化合物は、例えばエバポレーターを用いて減圧下に除去することができる。こうして得られた重合体の150℃における加熱残分は、通常は90%以上、好ましくは95%以上である。
【0040】
また、得られた重合体について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定した重量平均分子量(Mw)は、通常は500〜1000000、好ましくは1000〜300000の範囲内にあり、数平均分子量(Mn)は、通常は500〜1000000、好ましくは1000〜100000の範囲内にある。また、分散指数は、通常は1.02〜9.0、好ましくは1.2〜3.0の範囲内にある。
【0041】
こうして得られた重合体は、通常は粘稠な液体であることが多く、23℃で測定した粘度は、通常は100〜1000000センチポイズ(cps)、好ましくは1000〜100000センチポイズ(cps)の範囲内にある。本発明の塊重合触媒を用いて重合させることにより得られる重合体中には、特に脱灰工程を設けない場合には、有機金属化合物が混在している。また、得られる重合体の分子の末端の少なくとも一部には、用いたチオール類から誘導される硫黄含有基が結合している。即ち、本発明の触媒を用いた塊状重合では、重合開始種として、チオール基を有す化合物を用いているが、通常これらチオール類は単独では重合開始種としての活性を有していない。しかし、本発明における有機金属化合物を用いた場合、チオール化合物から誘導され得るチオール基が、有機金属触媒により重合開始可能な活性種となり、モノマーに対し開始種となり得る。この為、この反応においてモノマー量に対するチオール類の量が増大することにより、単位時間当たりの重合率は向上する。そして、得られる重合体の重合開始末端には、用いたチオール類から誘導される硫黄含有基が結合することとなる。但し、ここで用いたチオール類は、重合開始種として作用する以外に、連鎖移動剤としても作用しており、チオール類の量により、分子量(重合度)および重合率が大きく左右される。これらの現象から推察するに、本反応での重合の進行および、停止は、ラジカル重合であると推察できる。また、連鎖移動により水素引き抜きをされたチオール類の有するチオラジカル(・S)は、再び、重合開始種として、モノマーを攻撃する。この為、本重合法にて得られるポリマーは、チオールの使用量に拘わらず、生成した重合体の末端に、用いたチオール類から誘導される硫黄含有基が結合することとなる。
【0042】
本発明の反応系が、アルコールなどの極性有機溶媒や、水などの分散媒中においても、塊状重合で行った場合と同様に重合ができることから、重合における反応はラジカル反応が支配的と考えられる。その為、得られる重合体の反応停止末端は、チオール類からの連鎖移動による水素、または、ラジカル化したチオラジカルを有すチオール類および、成長ポリマーラジカルとのラジカルカップリングによるチオール類から誘導される硫黄含有基であると考えられる。
【0043】
得られる重合体中には、有機金属化合物が、そのままの形で、あるいは他の有機基と結合して、さらには金属として残留する。また、チオール類は、直接重合体の生成反応に寄与し、自らが分解しながら反応が進行することから、チオール類から誘導される末端基が、重合体末端に導入される。ただし、上記の推定および反応進行は、本発明の反応における種々の現象から本発明者が最も合理的に推定できると考えているものであり、本発明がこれによって限定されるものではないことは勿論である。
【0044】
本発明の方法で得られた重合体は、通常粘稠な液体であるが、硬化剤等を配合して反応させることにより硬化する。そして、この硬化体は、弾性を有している。本発明の方法により得られた重合体は、硬化性を有するとの特性を利用した用途、あるいは、硬化体の弾性を利用した用途、さらにこの重合体が粘稠な液体であることを利用した用途等の使用することができる。例えば、本発明の方法で得られた重合体は、塗料、シーリング材、塗膜防水材の他に粘着剤、接着剤、シート成形品(通気性シート、保護シート、遮水シート、制振シート、転写シート、調光シート、帯電防止シート、導電シート、養生シート、遮音シート、遮光シート、化粧シート、マーキングシート、難燃シート)およびこれらの原料、フィルム成形品(マーキングフィルム、保護フィルム、インキ定着フィルム、ラミネートフィルム)およびこれらの原料、発泡体(硬質、軟質、半硬質、難燃)およびこれらの原料、インキ用ビヒクル、反応性可塑剤、可塑剤、希釈剤、相溶化剤、中間原料として、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネイト樹脂や各種ブロックポリマーなどの樹脂用原料または、改質用原料、添加剤、更には、繊維改質剤、繊維表面処理剤、紙加工剤、紙改質剤、界面活性剤、分散安定剤、分散媒、溶剤、粘度調整剤、吸着剤、毛髪処理剤、トナー用添加剤、帯電制御剤、帯電防止剤、低収縮剤、防曇剤、防汚剤、親水性付与剤、親油性付与剤、医薬担体、農薬用担体、化粧品用配合剤、滑剤、ポリマーアロイ用添加剤、ゲルコート剤、FRP用樹脂、FRP樹脂用添加剤、人工大理石用樹脂、人工大理石用樹脂添加剤、注入成型品用樹脂、UV・EV硬化樹脂用原料、粘着付与剤、各種バインダー(磁気記録媒体、鋳造用、焼成体用、グラスファイバーサイジング材)、RIM用ウレタン改質剤、合わせガラス用樹脂、制振材、遮音材、分離膜用樹脂、防音材、吸音材、人工皮革、人工皮膚、合成皮革、各種工業用部品、日用品、トイレタリー用成型品、アクリルウレタンゴム、アクリルウレタンゴム改質剤、アクリルウレタンフォーム改質剤、ウレタンゴム改質剤、ウレタンフォーム可塑剤、ウレタンフォーム改質剤、アクリルゴム改質剤として使用することができる。
【0045】
【発明の効果】
本発明の触媒を用いることにより、例えばアクリル系単量体のように塊状重合において重合反応制御が比較的困難であった重合性不飽和化合物を用いた場合であっても、反応を暴走させることなく、安定に塊状重合させることができる。しかも、本発明の触媒を用いて、主としてチオール類に使用量を調整することにより、重合率、分子量、重合速度など、得られる重合体の特性および重合状態を制御することができる。
【0046】
また、本発明の触媒を用いて製造された重合体は、チオール類から誘導される基が分子末端に導入されることから、重合体分子の少なくとも1の末端に、用いたチオール化合物が確実に導入でき、用いるチオール類が、チオール基以外の官能基を有していた場合、得られる重合体分子の少なくとも1の末端に、官能基を導入することが出来る。そして、これら導入された官能基を利用して、硬化反応等種々の反応を行うことができる。
【0047】
【実施例】
次に本発明の実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0048】
【実施例1】
攪拌装置、窒素ガス導入管、温度計および環流冷却管を備えたフラスコに、エチルアクリレート100重量部と金属触媒としてルテノセン0.05重量部を仕込みフラスコ内に窒素ガスを導入しながらフラスコの内容物を70℃に加熱した。
【0049】
次いで、充分に窒素ガス置換したβ-メルカプトプロピオン酸、6重量部を攪拌下にフラスコ内に添加した。β-メルカプトプロピオン酸添加後、攪拌中のフラスコ内の内容物の温度が70℃に維持できるように、冷却および加温を2時間行った。さらに、充分に窒素ガス置換したβ-メルカプトプロピオン酸6重量部を攪拌下にフラスコ内に追加添加した。β-メルカプトプロピオン酸を追加添加後、攪拌中のフラスコ内の内容物の温度が70℃に維持できるように、さらに冷却および加温を行いながら、反応を4時間行った。
【0050】
上記のようにして合計で6時間の反応後、反応物の温度を室温に戻し、反応物にベンゾキノン溶液(95%THF溶液)を20重量部添加して重合を停止させた。こうして得られた反応物のTHF溶液について、モノマー残存率をガスクロマトグラフィーを用いて測定し、重合率を求めた。
【0051】
その結果、重合率が78%の反応物が得られ、この重合に際して重合反応の暴走は全く認められなかった。続いて得られた反応物をエバポレーターに移し、減圧下に80℃まで徐々に加熱しながらTHFおよび残存モノマー、残存チオール化合物を除去した。こうして得られた重合体の150℃加熱残分は99.2%であった。
【0052】
また、得られた重合体についてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した分子量は、Mw=4400、Mn=2800であり、分散指数=1.6であり、23℃における粘度は48500センチポイズ(cps)であった。
【0053】
【実施例2】
撹拌装置、窒素ガス導入管、温度計および乾留冷却管を備えたフラスコに、メチルアクリレート100重量部、トリメチロールプロパントリアクリレート10重量部と、金属触媒としてジルコノセンジクロライドを0.02重量部仕込み、フラスコ内に窒素ガスを導入しながらフラスコ内の内容物を80℃に穏やかに加熱した。
【0054】
次いで、充分に窒素ガス置換した3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン50重量部を攪拌下にフラスコ内に添加した。3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン添加後、攪拌中のフラスコ内の内容物の温度が80℃に維持できるように、冷却および加温を行いながら8時間反応を行った。反応後、反応物の温度を室温に戻し、反応物の、ベンゾキノン溶液(95%THF溶液)を20重量部添加して重合を停止させた。
【0055】
こうして得られた反応物のTHF溶液について、モノマー残存率をガスクロマトグラフィーを用いて測定して、重合率を求めた。その結果、重合率は82%であり、上記の重合の際に重合反応の暴走は全く認められなかった。続いて得られた反応物をエバポレーターに移し、減圧下に80℃まで徐々に加熱しながら、THFおよび残存モノマー、残存チオール化合物を除去した。
【0056】
こうして得られた重合体の150℃加熱残分は98.7%であった。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した分子量は、Mw=1400、Mn=800であり、分散指数=1.8であり、23℃における粘度は1300センチポイズ(cps)であった。
【0057】
【実施例3】
撹拌装置、窒素ガス導入管、温度計および環流冷却管を備えたフラスコに、スチレン80重量部、パーフルオロオクチルエチレン20重量部と、金属触媒としてチタノセンジクロライドを0.1重量部仕込み、フラスコ内に窒素ガスを導入しながらフラスコの内容物を80℃に加熱した。
【0058】
次いで、充分に窒素ガス置換した2-メルカプトエタノール10重量部を攪拌下にフラスコ内に添加した。2-メルカプトエタノール添加後、攪拌中のフラスコ内容物の温度が80℃に維持できるように冷却および加熱を行いながら、2時間反応させた。その後、2-メルカプトエタノール10重量部を攪拌下にフラスコ内に添加し、さらに2時間反応させた。さらに、その後、2-メルカプトエタノール20重量部を攪拌下にフラスコ内に添加して、さらに4時間反応させた。
【0059】
合計8時間経過後、反応物の温度を室温に戻し、反応物にベンゾキノン溶液(95%THF溶液)を20重量部添加して、重合反応を停止させた。こうして得られた反応物のTHF溶液について、モノマー残存率をガスクロマトグラフィで測定して重合率を求めたその結果、重合率は、68%であり、上記重合の際に重合反応の暴走は全く認められなかった。
【0060】
【比較例1】
実施例1において、金属触媒であるルテノセンを添加しなかった以外は同様にして反応を行ったが、重合率は9%であった。
【0061】
【比較例2】
実施例1において、チオール化合物であるβ-メルカプトプロピオン酸を添加しなかった以外は同様にして反応を行ったが、重合率は1%であった。
Claims (5)
- 不活性ガス雰囲気中で、次式[B]、[B−1]および[B−2]で表わされる重合性不飽和化合物を塊状重合反応を行なうために用いる、次式[I]で表される有機金属化合物とチオール類とからなる塊状重合用触媒;
、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基、アリルエーテル基、アルキルエーテル基、アルコキシシリル基、シラノール基、ハロゲン化シリル基のいずれかの基であり、この基R14を構成する水素原子の少なくとも一部は、ハロゲン原子等で置換されていてもよく、また、この基R14は、アルキレングリコールから誘導される構成単位、アルコキシシリル基、アルキルアルコキシシリル基、メチロール基、アルコキシアミド基を有する基であってもよい。];
- 前記式[I]で表される有機金属化合物とチオール類とを、10:1〜1:10000モルの範囲内の量で用いることを特徴とする請求項第1項記載の塊状重合用触媒。
- 次式[I]で表される有機金属化合物とチオール類とからなる塊状重合用触媒の存在下に、不活性ガス雰囲気中で、次式[B]、[B−1]および[B−2]で表わされる重合性不飽和化合物を塊状重合させることを特徴とする重合方法;
- 前記式[I]で表される有機金属化合物とチオール類とを10:1〜1:10000モルの範囲内の量で用いることを特徴とする請求項第3項記載の重合方法。
- 前記チオール類を、重合性不飽和化合物1モルに対して0.0001〜0.5モルの範囲内の量で使用することを特徴とする請求項第3項記載の重合方法。
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