JP4244244B2 - 防藻塗料およびそれからなる塗装品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、防藻塗料およびそれからなる塗装品に関する。さらに詳しくは、長期にわたる防藻性などの耐久性にとくにすぐれ、建築内外装材や道路関係資材などの景観材料の塗装に適用し得る防藻塗料およびそれからなる塗装品に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、建築内外装材や道路関係資材などの景観材料において、藻の発生による汚れが問題になっている。たとえば「防かび、防藻塗料の最近の動向」(平田忠光著、塗装と塗料、1989年11月号(No.457)、50〜58頁)に記載されているように、陸上では建築様式および建築材料の多様化、住宅周辺の環境の変化により、築後1〜2年で建築物が藻で汚染されるという被害が増大している。
【0003】
しかしながら、たとえば「最近の防かび、防藻塗料について」(岸直行著、塗装と塗料、1989年11月号(No.457)、35〜49頁)にあるように、建築用の防藻塗料については、我が国ではいまだ充分検討されていないのが現状である。
【0004】
従来提案されている防藻塗料は、一般に、アクリルエマルジョンなどの有機系バインダーに防藻剤を添加したものである。防藻剤としては、より安全で、低毒性であり、効果が高く、かつ効果が持続し、塗料や塗膜に影響を与えないものが望まれるが、たとえば特公平1−12724号公報、特公平4−74104号公報、特公平9−241544号公報に記載されている尿素系化合物、トリアジン系化合物などの有機系防藻剤や、たとえば特公平8−6053号公報、特開平5−59308号公報に記載されている金属系、金属塩系の無機系防藻剤が使用されている。
【0005】
前記有機系防藻剤には、主に紫外線による分解などの耐候性、耐水性などの長期寿命や安全性に問題がある。また無機系防藻剤については、耐候性などはかなり改善されるものの、塗料への分散性、塗料の安定性や変色などの塗膜への影響の問題がある。
【0006】
さらに前記いずれの防藻剤についても、防藻剤が塗膜より溶出してその効果を発現するものであり、雨水などで自然界に排出され、人畜のみならず、有用微生物への影響ははかり知れない。すなわち、地球環境保護の目的からもより安全性の高い防藻剤の開発が要望されている。
【0007】
つぎに、防藻剤を添加するバインダーについては、前記公報に記載があるように、一般に天然植物油、天然樹脂、半合成樹脂、合成樹脂などの有機系樹脂が使用されている。これらの有機系樹脂には、耐候性、耐熱性、耐擦傷性などに問題がある。すなわち、屋外での長期使用において塗膜の変色、光沢の低下、傷つきが発生し、景観材料の美観を損ねる原因となるとともに、防藻性を長期間持続させることが困難である。さらに藻は炭素などの栄養源があって増殖するものであるから、有機系樹脂は藻の栄養源そのものになり得る。
【0008】
一方、水槽などに藻が発生するのを防止する目的で、主に酸化チタンなどの光触媒を利用する技術が提案されている。たとえば特開平8−310591号公報には、貯水槽の内壁表面に光触媒酸化チタンを担持する方法が、特開平9−227752号公報には、水槽用メタクリル系樹脂板の表面に光触媒粒子の薄膜または光触媒粒子を含有する薄膜を形成する方法がそれぞれ記載されている。
【0009】
しかしながら、これらの方法を景観材料の防藻方法として考えた場合、その効果は不充分である。すなわち、特開平8−310591号公報に開示の技術は、チタンアルコキシドなどの酸化チタンの前駆体とアクリル系、オレフィン系などの有機系樹脂との溶液をガラス質などの貯水槽の内面に塗装、乾燥、焼成する方法や、プラスチック質からなる貯水槽である場合は、酸化チタンの前駆体もしくは1μm以下の酸化チタン微粉末を有機系の接着剤に分散または混合させて貯水槽に塗装する方法であるが、いずれの方法もバインダーに有機系樹脂を使用しており、形成された塗膜には、耐候性がわるい、経時で変色する、耐擦傷性がわるいなどの欠点があり、長期的な防藻性や美観の維持に問題がある。
【0010】
また、特開平9−227752号公報では、酸化チタンなどの光触媒粒子と、フッ素系ポリマー、シリコン系ポリマー、アクリル系ポリマーなどの有機系バインダーや水ガラス、コロイダルシリカなどの無機系バインダーおよび溶媒とからなる塗料組成物を、メタクリル系樹脂板に塗装、乾燥する方法が提案されているが、かかる塗料組成物を建築内外装材などの景観材料に塗装する場合、つぎのような問題点がある。
【0011】
まず、有機系バインダーを使用した塗料組成物では、前記したように、形成された塗膜に耐候性、耐擦傷性、経時変色などの問題がある。
【0012】
つぎに、無機系バインダーを使用した塗料組成物では、形成された塗膜の耐候性は幾分改善されるものの、耐擦傷性、長期の防藻性および防汚性などはいまだ不充分である。さらに、かかる無機系バインダーを使用した塗料は、塗装作業性がわるいという、工業的見地からして大きな問題を有している。すなわち、かかる無機系バインダーの固形分濃度が10数%と低く、かつ塗料粘度も低いため、厚塗りができないなどの塗装作業性がわるいという欠点がある。景観材料には種々の材料および形状があり、これらの塗料組成物を塗装する際には、タレ、ワキなどが生じやすく、また膜厚のムラが大きい。とくに膜厚1μm未満の薄膜では、長期の防藻性は期待できない。
【0013】
このように、従来の防藻塗料には何らかの欠点があり、景観材料の美観を長期にわたって維持することができ、かつ安全性の高い防藻塗料はいまだ提供されていないのが現状である。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記従来技術に鑑みてなされたものであり、塗装した景観材料の表面での藻の発生を防止するとともに、長期にわたって美観を維持することができる防藻塗料およびそれからなる塗装品を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
▲1▼シリカとオルガノヒドロキシシランおよびオルガノヒドロキシシランの部分縮合物とからなる固形分を主成分とする無機系バインダーに、光触媒酸化チタンを分散混合させてなり、シリカ/オルガノヒドロキシシランおよびオルガノヒドロキシシランの部分縮合物(重量比)が40/60〜70/30である防藻塗料、および
▲2▼基材に前記防藻塗料が塗装され、塗膜が形成されてなる塗装品
に関する。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の防藻塗料は、前記したように、シリカとオルガノヒドロキシシランおよびオルガノヒドロキシシランの部分縮合物とからなる固形分を主成分とする無機系バインダーに、光触媒酸化チタンを分散混合させて得られ、シリカ/オルガノヒドロキシシランおよびオルガノヒドロキシシランの部分縮合物(重量比)が40/60〜70/30であるものである。
【0017】
本発明においては、このように、特定組成の無機系バインダーに光触媒酸化チタンを分散混合させるので、得られる防藻塗料がとくに長期にわたってすぐれた防藻性などの耐久性を示すのである。
【0018】
前記シリカとしては、たとえばコロイド状シリカが好ましく用いられる。かかるコロイド状シリカは、通常分散液として用いられ、該コロイド状シリカ分散液としては、無水ケイ酸を水に分散させた水系コロイド状シリカ分散液とアルコール系溶媒に分散させた非水系コロイド状シリカ分散液とがあげられる。
【0019】
前記コロイド状シリカ分散液中のシリカの平均粒子径は、好ましくは150mμm以下であり、さらに好ましくは30mμm以下である。
【0020】
前記コロイド状シリカ分散液中のシリカの含有量は、分散液が安定である範囲内で適宜調整される。
【0021】
なお、前記コロイド状シリカのpHは、保存安定性の点から、酸性であることが望ましい。
【0022】
前記オルガノヒドロキシシランおよびオルガノヒドロキシシランの部分縮合物は、オルガノアルコキシシランを加水分解することにより得られる。
【0023】
前記オルガノアルコキシシランの代表例としては、たとえば一般式(II):
R1Si(OR2)3 (II)
(式中、R1は炭素数1〜3のアルキル基、ビニル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基、γ−グリシドキシプロピル基、γ−メタクリルオキシプロピル基、γ−メルカプトプロピル基およびγ−クロロプロピル基からなる群より選ばれた基、R2は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシエチル基およびアリール基からなる群より選ばれた基を示す)で表わされる化合物があげられる。
【0024】
前記オルガノアルコキシシランを加水分解して得られる、本発明に用いられるオルガノヒドロキシシランの代表例としては、たとえば一般式(I):
R1Si(OH)3 (I)
(式中、R1は前記と同じ)で表わされる化合物があげられる。
【0025】
また本発明に用いられるオルガノヒドロキシシランの部分縮合物としては、たとえば前記一般式(I)で表わされるオルガノヒドロキシシランを部分縮合することにより得られるオリゴマーがあげられる。
【0026】
前記シリカとオルガノヒドロキシシランおよびオルガノヒドロキシシランの部分縮合物との配合割合(シリカ/オルガノヒドロキシシランおよびオルガノヒドロキシシランの部分縮合物(重量比))は、形成される塗膜の硬度が低下しないようにするためには、40/60以上、好ましくは42/58以上である。また形成される塗膜が脆くならないようにするためには、前記配合割合(重量比)は70/30以下、好ましくは60/40以下である。
【0027】
なお、前記オルガノヒドロキシシランとオルガノヒドロキシシランの部分縮合物との割合にはとくに限定がない。
【0028】
本発明に用いられる無機系バインダーは、前記シリカとオルガノヒドロキシシランおよびオルガノヒドロキシシランの部分縮合物とからなる固形分を主成分とするものであるが、該無機系バインダーには、通常溶媒が含まれ、好ましくは水、アルコールおよびエチレングリコールモノブチルエーテルから構成される溶媒が含まれる。
【0029】
前記水は、通常水性のコロイド状シリカ分散液中の水分およびオルガノヒドロキシシランの縮合水からなる。
【0030】
前記アルコールは、通常オルガノヒドロキシシランを得る際に、オルガノアルコキシシランの加水分解によって生成する、たとえばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メトキシエチルアルコール、エトキシエチルアルコール、アリールアルコールなどのアルコールであるが、さらにたとえばイソプロパノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールなどの炭素数1〜4の1価の低級アルコールなども用いることができる。
【0031】
前記エチレングリコールモノブチルエーテルは、無機系バインダーの保存安定性を向上させ、かつ塗装作業性も向上させることができるものであり、かかる作用を考慮すると、溶媒中のエチレングリコールモノブチルエーテルの含有量は、20重量%以上、好ましくは25重量%以上であることが望ましい。またエチレングリコールモノブチルエーテルの含有量が多すぎると、塗膜の乾燥時間が長くなるという点を考慮すると、溶媒中のかかるエチレングリコールモノブチルエーテルの含有量は、50重量%以下であることが好ましい。
【0032】
なお、前記無機系バインダーはオルガノヒドロキシシランや、好ましくはエチレングリコールモノブチルエーテルなどを含むものであるが、本明細書においては、これらの有機系物質を含むものを無機系バインダーと定義する。
【0033】
前記無機系バインダーの固形分含量は、たとえば前記溶媒にて調整すればよいが、塗膜の膜厚を調整することが困難にならないようにするには、10重量%以上、好ましくは15重量%以上であることが望ましく、また保存安定性が低下しないようにするには、30重量%以下、好ましくは25重量%以下であることが望ましい。
【0034】
また無機系バインダーのpHは、たとえばアンモニア水やトリエタノールアミンなどの有機アミンなどを用いて適宜調整すればよいが、無機系バインダーの保存安定性が低下しないようにするには、3以上、好ましくは4以上であることが望ましく、また6.5以下、好ましくは5以下であることが望ましい。
【0035】
無機系バインダーの製造法としては、たとえば
(イ)コロイド状シリカ分散液にオルガノアルコキシシランを添加し、加水分解させてオルガノヒドロキシシランおよび該オルガノヒドロキシシランの部分縮合物を生成させ、反応物を溶媒で希釈する方法、
(ロ)コロイド状シリカ分散液を溶媒で希釈したのち、これにオルガノアルコキシシランを添加し、加水分解させる方法
などがあげられるが、本発明においてはいずれの方法を採用してもよい。
【0036】
前記コロイド状シリカ分散液にオルガノアルコキシシランを添加し、加水分解させる際には、液温を10〜80℃に保ち、常圧下で約1〜24時間撹拌して反応させることが好ましい。なお、前記非水性コロイド状シリカ分散液を用いる場合、その一部は反応終了後に加えてもさしつかえない。
【0037】
また、オルガノアルコキシシランを加水分解させる際には、たとえば無機酸、有機酸などの加水分解触媒を少量添加してもよい。
【0038】
つぎに、本発明に用いられる光触媒酸化チタンは、低エネルギー光で光触媒機能を発現する酸化チタンであり、これを前記無機系バインダーに分散混合させることにより、得られる防藻塗料にすぐれた防藻性が付与される。かかる光触媒酸化チタンのなかでも、より活性の高いアナターゼ形酸化チタンが好ましい。また、光触媒酸化チタンは微粉末でもよいし、水またはアルコールなどに分散させたチタニアゾルや酸化チタンの前駆体であるアルコキシチタンなども同様に用いることができる。
【0039】
光触媒酸化チタンの量は、得られる防藻塗料に充分にすぐれた防藻性を付与するためには、無機系バインダーの固形分100重量部(以下、部という)に対して30部以上、好ましくは50部以上であることが望ましく、また防藻塗料から形成される塗膜の表面が粗くなり、耐汚染性が低下しないようにするには、無機系バインダーの固形分100部に対して400部以下、好ましくは300部以下であることが望ましい。
【0040】
なお、本発明においては、酸化チタン以外の光触媒、たとえば酸化亜鉛、酸化スズ、酸化タングステン、酸化鉄などの光触媒性半導体を酸化チタンと併用することができる。また、酸化チタンの光触媒機能を増強する目的で、パラジウム、バナジウムなどの金属や金属化合物を添加してもよい。さらに、防藻塗料から形成される塗膜に抗菌性や帯電防止剤などのさらなる機能を付与するために、用途に適した添加剤を加えることもできるほか、他の防藻剤を併用してもかまわない。
【0041】
前記光触媒酸化チタンを無機系バインダーに分散混合させて本発明の防藻塗料を得る方法としては、通常の方法が採用され、たとえばボールミル、サンドミルなどの分散機を使用することができる。なお、光触媒酸化チタンを分散させる際には、希釈剤(溶剤)、分散剤、沈降防止剤、増粘剤、顔料、体質顔料などを必要に応じて添加することができる。
【0042】
かくして得られる本発明の防藻塗料の固形分含量は、塗装作業性などを考慮すると、通常30〜60重量%程度であることが好ましい。
【0043】
本発明の防藻塗料は、防藻性などの耐久性にすぐれ、塗装物の美観を長期にわたって維持することができるので、たとえば建築内外装材や道路関係資材などの景観材料の塗装に好適に使用することができる。
【0044】
本発明の塗装品は、基材に前記防藻塗料が塗装され、塗膜が形成されたものである。
【0045】
本発明の防藻塗料を塗装することができる前記基材としては、たとえばアルミニウム、ステンレススチールなどの金属材料;ガラス、石材、セメント材、コンクリート材、スレート板などの無機系材料;プラスチック、木材などの有機系材料や、これら金属材料、無機系材料および有機系材料の2種以上の組み合わせや、金属材料、無機系材料および有機系材料の2種以上の積層体などがあげられ、該防藻塗料は通常景観材料として使用されているほとんどの基材に塗装することができる。
【0046】
防藻塗料を基材に塗装し、硬化させて塗膜を形成させる方法について説明する。
【0047】
まず、塗装法としては、たとえばスプレー塗装法、浸漬法、フローコーティング法、ロールコート法、静電塗装法などの従来より知られている通常の方法を採用することができる。
【0048】
つぎに、防藻塗料が塗装された基材をたとえば80〜200℃程度で10〜120分間程度加熱することにより、基材との密着性にすぐれた塗膜が形成される。塗膜の厚さは、かかる塗膜が形成される基材の種類や用途などによって異なるため、一概には決定することができないが、通常1〜100μm程度、なかんづく5〜50μm程度となるように調節されることが好ましい。
【0049】
なお、前記防藻塗料が呈するすぐれた防藻性などを考慮すると、その最表面に防藻塗料にて塗膜が形成された塗装品が好ましい。
【0050】
さらに、防藻塗料にて形成された塗膜の下層部に下塗り層が設けられ、該下塗り層が、着色化粧などの目的で、本発明で用いた無機系バインダーなどを使用した無機系塗料、アクリル樹脂などを使用した有機系塗料または無機系バインダーおよび有機系樹脂を併用した無機・有機複合系塗料にて形成されたものであってもよい。かかる下塗り層を形成する際、密着性や耐候性の観点から、無機系塗料を用いることが好ましい。なお、かかる下塗り層の厚さにはとくに限定がなく、たとえば5〜50μm程度であればよい。
【0051】
このように、本発明の塗装品は、防藻性などの耐久性にすぐれ、その美観が長期にわたって維持され得るものである。
【0052】
【実施例】
つぎに、本発明の防藻塗料およびそれからなる塗装品を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0053】
実施例1
水系コロイド状シリカ分散液(シリカ含有率:30重量%、平均粒子径:5〜20mμm、pH3.0)184部およびメチルトリメトキシシラン100部を混合し、30℃で5時間撹拌して加水分解を完了させた。つぎに、得られた加水分解物にエチレングリコールモノブチルエーテル125部およびイソプロパノール113部を添加し(溶媒中のエチレングリコールモノブチルエーテルの含有量:約30重量%)、さらにアンモニア水を添加してpHを4.5に調整し、無機系バインダー(A)を得た。この無機系バインダー(A)の固形分含量は約20重量%であった。
【0054】
つぎに、前記無機系バインダー(A)300部に光触媒酸化チタン(アナターゼ形酸化チタン、石原テクノ(株)製、ST−21)120部を添加し、サンドミルにて分散混合させて防藻塗料No.1を得た。この防藻塗料No.1の固形分含量は約43重量%であった。
【0055】
前記防藻塗料No.1をスプレー塗装法によりアルミニウム板に塗装し、160℃で20分間加熱処理して膜厚約20μmの硬化膜を有する塗装品を得た。
【0056】
比較例1
実施例1で用いた水系コロイド状シリカ分散液100部およびメチルトリメトキシシラン100部を混合し、30℃で5時間撹拌して加水分解を完了させた。つぎに、得られた加水分解物にエチレングリコールモノブチルエーテル100部およびイソプロパノール90部を添加し、さらにアンモニア水を添加してpHを4.5に調整し、固形分含量約20重量%の無機系バインダー(B)を得た。
【0057】
つぎに、前記無機系バインダー(B)300部に実施例1で用いた光触媒酸化チタン120部を添加し、サンドミルにて分散混合させて塗料No.2を得た。この塗料No.2の固形分含量は約43重量%であった。
【0058】
前記塗料No.2をスプレー塗装法によりアルミニウム板に塗装し、160℃で20分間加熱処理して膜厚約20μmの硬化膜を有する塗装品を得た。
【0059】
比較例2
実施例1で用いた水系コロイド状シリカ分散液921部およびメチルトリメトキシシラン100部を混合し、30℃で5時間撹拌して加水分解を完了させた。つぎに、得られた加水分解物にエチレングリコールモノブチルエーテル350部およびイソプロパノール315部を添加し、さらにアンモニア水を添加してpHを4.5に調整し、固形分含量約20重量%の無機系バインダー(C)を得た。
【0060】
つぎに、前記無機系バインダー(C)300部に実施例1で用いた光触媒酸化チタン120部を添加し、サンドミルにて分散混合させて塗料No.3を得た。この塗料No.3の固形分含量は約43重量%であった。
【0061】
前記塗料No.3をスプレー塗装法によりアルミニウム板に塗装し、160℃で20分間加熱処理して膜厚約20μmの硬化膜を有する塗装品を得た。
【0062】
比較例3
実施例1で調製した無機系バインダー(A)に、光触媒酸化チタンのかわりにルチル形酸化チタン(石原産業(株)製、SR−97)を分散させたほかは、実施例1と同様にして塗料No.4を得た。この塗料No.4の固形分含量は約43重量%であった。
【0063】
前記塗料No.4をスプレー塗装法によりアルミニウム板に塗装し、160℃で20分間加熱処理して膜厚約20μmの硬化膜を有する塗装品を得た。
【0064】
実施例2
比較例3で得られた塗料No.4をフローコーティング法によりスレート板に塗装し、80℃で10分間乾燥させ、膜厚約15μmの下塗り層を得た。
【0065】
つぎに、実施例1で得られた防藻塗料No.1を下塗り層の上にフローコーティング法により塗装し、160℃で20分間加熱処理して膜厚約15μmの上塗り硬化膜を有する塗装品を得た。
【0066】
(塗膜性能試験)
つぎに、実施例1〜2および比較例1〜3で得られた塗装品について、以下の塗膜性能試験を行なった。その結果を表1に示す。
【0067】
(1)塗装外観
塗膜の平滑性を目視にて観察した。
【0068】
(2)塗膜の密着性
JIS D−0202に規定の方法に準拠し、碁盤目テープ剥離試験を行なった。
【0069】
(3)塗膜の鉛筆硬度
JIS K−5400に規定の方法に準拠して測定した。
【0070】
(4)耐擦傷性試験
塗膜面をナイロン製タワシで200回往復後、塗膜の表面状態を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0071】
(評価基準)
○:変化なし。
△:若干の傷が認められる。
×:著しい傷が認められる。
【0072】
(5)耐沸騰水性試験
塗装品試験片(7cm×15cm)を沸騰水に10時間浸漬させたのち、塗膜の表面状態を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0073】
(評価基準)
○:変化なし。
△:塗膜に若干のクラックが生じている。
×:塗膜にはがれやクラックが生じている。
【0074】
(6)塩水噴霧試験
JIS K−5400に規定の方法に準拠して1000時間試験を行なったのち、塗膜の外観を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0075】
(評価基準)
○:変化なし。
△:若干のさびが認められる。
×:塗膜のはがれが認められる。
【0076】
(7)促進耐候性試験
JIS K−5400に規定の方法に準拠して5000時間試験を行ない、5000時間後に塗膜の変色の程度を色差計にて判定し、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0077】
(評価基準)
○:変色なし(ΔE:0.5未満)。
△:やや変色している(ΔE:0.5以上、1未満)。
×:著しく変色している(ΔE:1以上)。
【0078】
(8)屋外曝露試験
JIS K−5400に規定の方法に準拠し、塗装品試験板(30cm×30cm)を屋外で耐候試験台に取り付け、1年間経過後の塗膜の変色の程度(汚れの付着による変色も含む)を色差計にて判定し、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0079】
(評価基準)
○:変色なし(ΔE:0.5未満)。
△:やや変色している(ΔE:0.5〜1未満)。
×:著しく変色している(ΔE:1以上)。
【0080】
なお、前記試験(7)、(8)におけるΔEは、試験前の塗膜と試験後の塗膜との色差を示す。
【0081】
(9)耐熱性試験
塗装品試験片(7cm×15cm)を100℃、200℃および300℃の雰囲気中に放置し、24時間後に塗膜の外観の変化を調べ、塗膜に変化が認められない温度を耐熱温度とした。
【0082】
(10)耐汚染性試験
塗装品試験片(7cm×15cm)に5%カーボンブラック水懸濁液を塗布し、50℃で5時間保持したのち、試験片表面を布で拭って汚れの除去性を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0083】
(評価基準)
○:汚れなし。
△:若干の汚れがある。
×:著しい汚れがある。
【0084】
(11)殺藻性(防藻性)試験
建築物の外壁面より採取したクロレラピレノイドーサ(Chlorella pyrenoidosa)、プロトコッカスビリディス(Protococcus viridis)、クロロコックム種(Chlorococcum sp.)およびホルミディウム種(Hormidium sp.)より構成される藻類をBold's Basal寒天培地で2週間培養した。なお、Bold's Basal寒天培地は、936mlの蒸留水に以下に示す1〜6の成分からなる溶液を10ml、7から10の溶液を各1ml、および寒天15gを加え、加温溶解して調製した。
【0085】
【0086】
つぎに、前記のようにして培養した各藻類を混合し、塗膜前面に塗布して殺藻性評価用試験片とした。この試験片を、1500ルクス(蛍光燈)、25℃、相対湿度90%以上の条件で塗膜面を上にして放置した。2週間経過後、試験片上の藻類の生残面積を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0087】
(評価基準)
○:塗膜面に藻類による生残が認められない。
△:藻類の生残面積が塗膜面の1/3未満である。
×:藻類の生残面積が塗膜面の1/3以上である。
【0088】
なお、表1中には、無機系バインダーにおけるシリカ/オルガノヒドロキシシランおよびオルガノヒドロキシシランの部分縮合物(重量比)をあわせて示す(表1中、SiO2/CH3Si(OH)3とする)。
【0089】
【表1】
【0090】
表1に示された結果から、本発明の防藻塗料を用いて実施例1〜2で得られた塗装品は、塗膜の平滑性が良好で高硬度であり、密着性、耐擦傷性、耐沸騰水性、促進耐候性、耐汚染性および殺藻性(防藻性)のいずれにもすぐれ、また塩水噴霧(実施例1)および屋外曝露に対する耐性にもすぐれ、耐熱温度も高い(実施例1)といった、すぐれた塗膜性能を兼備するものであることがわかる。
【0091】
これに対して、無機系バインダー中のシリカ/オルガノヒドロキシシランおよびオルガノヒドロキシシランの部分縮合物(重量比)が40/60〜70/30の範囲外である塗料を用いた比較例1〜2および光触媒酸化チタンが用いられていない塗料の比較例3で得られた塗装品は、いずれも殺藻性(防藻性)に劣るものであり、その他の塗膜性能をすべて兼備するものではないことがわかる。
【0092】
なお、実施例1〜2のように本発明の防藻塗料がすぐれた殺藻性(防藻性)を示すのは、光触媒酸化チタンの光励起により発生する活性酸素種(O2 -や・OH)の酸化還元反応に起因していると考えられる。
【0093】
【発明の効果】
本発明の防藻塗料は、光触媒酸化チタンを特定の無機系バインダーに分散混合させて得られるものであるので、すぐれた防藻性を有するとともに、藻のみならず、藻と寄生あるいは共生している地衣類や菌類などの発生をも防止することができる。
【0094】
さらに本発明の防藻塗料は、景観材料用塗料として要求される耐候性、耐水性、耐擦傷性、耐汚染性などの塗膜性能にもすぐれているので、長期にわたって景観材料の美観を維持することができる。また、安全性の高い光触媒酸化チタンを防藻剤として使用しているので、環境保護の点からも有用である。
【0095】
さらにまた本発明の防藻塗料は、塗装作業性が良好で、かつ種々の基材に適用することができるので、建築内外装材や道路関係資材などの景観材料の防藻塗料としてきわめて有用である。
【0096】
前記のごとき防藻塗料からなる本発明の塗装品は、防藻性をはじめとする種々の特性にすぐれ、その美観が長期にわたって維持され得るものである。
Claims (13)
- シリカとオルガノヒドロキシシランおよびオルガノヒドロキシシランの部分縮合物とからなる固形分を主成分とする無機系バインダーに、光触媒酸化チタンを分散混合させてなり、シリカ/オルガノヒドロキシシランおよびオルガノヒドロキシシランの部分縮合物(重量比)が40/60〜70/30である防藻塗料。
- 無機系バインダーが、固形分と、水、アルコールおよびエチレングリコールモノブチルエーテルから構成される溶媒とからなるものである請求項1記載の防藻塗料。
- 溶媒中のエチレングリコールモノブチルエーテルの含有量が20重量%以上である請求項2記載の防藻塗料。
- 無機系バインダーの固形分含量が10〜30重量%である請求項1記載の防藻塗料。
- 無機系バインダーのpHが3〜6.5である請求項1記載の防藻塗料。
- シリカがコロイド状シリカである請求項1記載の防藻塗料。
- オルガノヒドロキシシランが一般式(I):
R1Si(OH)3 (I)
(式中、R1は単素数1〜3のアルキル基、ビニル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基、γ−グリシドキシプロピル基、γ−メタクリルオキシプロピル基、γ−メルカプトピロピル基およびγ−クロロプロピル基からなる群より選ばれた基を示す)で表わされる化合物である請求項1記載の防藻塗料。 - 光触媒酸化チタンがアナターゼ形酸化チタンである請求項1記載の防藻塗料。
- 光触媒酸化チタンの量が無機系バインダーの固形分100重量部に対して30〜400重量部である請求項1記載の防藻塗料。
- 基材に請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9記載の防藻塗料が塗装され、塗膜が形成されてなる塗装品。
- 基材が金属材料、無機系材料もしくは有機系材料、または金属材料、無機系材料および有機系材料の2種以上の組み合わせ、または金属材料、無機系材料および有機系材料の2種以上の積層体である請求項10記載の塗装品。
- その最表面に防藻塗料にて塗膜が形成されてなる請求項10記載の塗装品。
- 防藻塗料にて形成された塗膜の下層部に下塗り層が設けられ、該下塗り層が無機系塗料、有機系塗料または無機・有機複合系塗料にて形成されたものである請求項10記載の塗装品。
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