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JP4243397B2 - 新規な不飽和2級アルコールおよびその製造法 - Google Patents

新規な不飽和2級アルコールおよびその製造法 Download PDF

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JP4243397B2
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tert
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な不飽和2級アルコールに関し、またその製造法に関する。
【0002】
さらに詳しくは、本発明は、医薬、農薬、液晶などの製造の原料として有用である新規な不飽和2級アルコールとしての1-(p-またはm-tert-ブトキシフェニル)-2-プロペンまたは-プロピン-1-オールに関し、またこれら不飽和2級アルコールの製造法に関する。
【0003】
【従来の技術】
従来、本発明の新規な不飽和2級アルコールに類似の化学構造を有する不飽和2級アルコールは、例えば下記のいくつかが知られている。
【0004】
▲1▼ 1-(p-メトキシフェニル)-2-プロペン-1-オールが知られ、これはp-メトキシベンズアルデヒドとビニルマグネシウムクロライドの反応により収率79%で製造される(「ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサイエティ(Journal of American Chemical Society)」第100巻、第6407頁〜第6413頁(1978年)参照)。
▲2▼ 1-(p-メトキシフェニル)-2-プロピン-1-オールが知られ、これはp-メトキシベンズアルデヒドとエチニルマグネシウムブロマイドの反応により収率95%で製造される(「ジャーナル オブ ケミカル ソサイエティ、パーキン トランス I(Journal of Chemical Society., Perkin Trans.I)」第6巻、第1425頁〜第1430頁(1988年)、参照)。
▲3▼ 1-(p-tert-ブトキシ)-1-エタノールは、p-tert-ブトキシベンズアルデヒドとメチルマグネシウムクロライドの反応により収率97.9%で製造される(特開昭61-115040号公報、参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、医薬、農薬、液晶などの製造に原料または中間体原料として有用である新しい不飽和2級アルコールを提供すること、またこれを工業的に容易な操作で高収率で得る製造法を提供することが望まれている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討した。その結果、1-(p-またはm-tert-ブトキシフェニル)-2-プロペンまたはプロピン-1-オールを合成することに成功し、これら不飽和2級アルコールが新規な化合物であることを見出し、またこの新規化合物を工業的に容易な操作で高収率で得るのに有効な製造法を見出して本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、第1の本発明においては、一般式(I)
Figure 0004243397
〔式中、Rはビニル基-CH=CH2またはエチニル基-C≡CHであり、また式中に示されたフェニル基上のtert-ブトキシ基は該フェニル基のパラ位またはメタ位にある〕で表される不飽和2級アルコールが提供される。
第1の本発明による一般式(I)の不飽和2級アルコールの好ましい例には、1-(p-tert-ブトキシフェニル)-2-プロペン-1-オール、1-(m-tert-ブトキシフェニル)-2-プロペン-1-オール、1-(p-tert-ブトキシフェニル)-2-プロピン-1-オールまたは1-(m-tert-ブトキシフェニル)-2-プロピン-1-オールがある。
【0008】
また、第2の本発明においては、一般式(II)
R-MgX (II)
〔式中、Rはビニル基またはエチニル基であり、Xはハロゲン原子、好ましくは塩素、臭素またはヨウ素原子である〕で表されるビニルまたはエチニル・マグネシウムハライドと一般式(III)
Figure 0004243397
で表わされるp-またはm-tert-ブトキシベンズアルデヒドとをグリニヤール反応により反応させ、次いで加水分解させることを特徴とする、一般式(I)
Figure 0004243397
〔式中、Rはビニル基-CH=CH2またはエチニル基-C≡CHであり、また式中に示されたフェニル基上のtert-ブトキシ基は該フェニル基のパラ位またはメタ位にある〕で表される不飽和2級アルコールの製造法が提供される。
【0009】
さらに、第3の本発明においては、一般式(IV)
Figure 0004243397
(式中、Xは、ハロゲン原子を示す)で表わされるp-またはm-tert-ブトキシフェニル・マグネシウムハライドと、一般式(Va)
Ra-CHO (Va)
〔式中、Raはビニル基である〕のアクロレインとをグリニヤール反応により反応させ、次いで加水分解させることを特徴とする、一般式(Ia)
Figure 0004243397
〔式中、Raはビニル基-CH=CH2であり、また式中に示されたフェニル基上のtert-ブトキシ基は該フェニル基のパラ位またはメタ位にある〕で表される不飽和2級アルコールの製造法が提供される。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
第1の本発明による一般式(I)の化合物のうち、下記の一般式(I′)の新規な1-(p-またはm-tert-ブトキシフェニル)-2-プロペン-1-オールは、以下の反応式による第2の本発明方法に準ずるの反応経路(A)あるいは第3の本発明方法に準ずる反応経路(B)で合成するのが都合よい。
【0011】
Figure 0004243397
(式中、Xは、ハロゲン原子を示す)。
【0012】
Figure 0004243397
(式中、Xは、ハロゲン原子を示す)。
【0013】
まず、第2の本発明方法で用いられる合成原料であるグリニヤール試薬の式(II′)の化合物は、公知の化合物であり、公知の方法により得るか、または市販品を用いればよい。また、式(III)のアルデヒド化合物は、公知の化合物であり、公知の方法により得ることができる。
【0014】
式(II′)の化合物のXは、ハロゲン原子であり、好ましくは、塩素、ヨウ素、臭素などが挙げられる。この式(II′)の化合物の溶液中に式(III)のアルデヒド化合物を滴下し、1〜2時間攪拌して合成経路(A)に従って反応を行う。この反応に用いる溶媒としては、テトラヒドロフランの単独、あるいはこれとベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒との混合溶媒、またジエチルエーテル、ジブチルエーテルなどが挙げられる。反応温度は10〜40℃が好ましい。
【0015】
また別法として、第3の本発明方法で用いる合成原料であるグリニヤール試薬の式(IV)の化合物は、公知の化合物であり、公知の方法により得ることができる。また、式(V′)のアルデヒド化合物すなわちアクロレインは、公知の化合物であり、公知の方法により得ることができる。
【0016】
式(IV)の化合物のXは、ハロゲン原子であり、好ましくは、塩素、ヨウ素、臭素などが挙げられる。この式(IV)の化合物の溶液中に式(V′)のアクロレインを滴下し、1〜2時間攪拌して合成経路(B)に従って反応を行う。この反応に用いる溶媒としては、テトラヒドロフランの単独あるいはこれとベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒との混合溶媒、またジエチルエーテル、ジブチルエーテルなどが挙げられる。反応温度は10〜40℃が好ましい。
反応終了後は、飽和の塩化アンモニウム水または水を、反応液に加え10〜30℃の温度で加水分解すると、式(I′)の1-(p-又はm-tert-ブトキシフェニル)-2-プロペン-1-オールが生成する。さらに式(I′)の化合物を含む有機層を分取し、溶媒を留去して残留物を減圧蒸留すると、高純度の式(I′)の化合物を得ることができる。
【0017】
また、第1の本発明による一般式(I)の化合物のうち、下記の一般式(I″)で表される新規な1-(p-又はm-tert-ブトキシフェニル)-2-プロピン-1-オールを、以下の反応式により第2の本発明方法に準ずる反応経路(C)で合成できる。
【0018】
Figure 0004243397
(式中、Xは、ハロゲン原子を示す)。
【0019】
第2の本発明方法で用いられる合成原料であるグリニヤール試薬の式(II″)のハライド化合物は、公知の化合物であり、公知の方法により得るか、または、市販品を用いればよい。また、式(III)の化合物は、公知の化合物であり、公知の方法により得ることができる。
【0020】
式(II′)のハライド化合物のXは、ハロゲン原子であり、好ましくは、塩素、ヨウ素、臭素などが挙げられる。この式(II″)の化合物の溶液中に式(III)のアルデヒド化合物を滴下し、1〜2時間攪拌して合成経路(C)に従って反応を行う。この反応に用いる溶媒としては、テトラヒドロフランの単独あるいはこれとベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒との混合溶媒、またジエチルエーテル、ジブチルエーテルなどが挙げられる。反応温度は10〜40℃が好ましい。
反応終了後は、飽和の塩化アンモニウム水または、水を反応液に加え10〜30℃の温度で加水分解すると式(I″)の1-(p-又はm-tert-ブトキシフェニル)-2-プロピン-1-オールが生成する。さらに式(I″)の化合物を含む有機層を分取し、溶媒を留去して残留物を減圧蒸留すると、高純度の式(I″)の化合物を得ることができる。
【0021】
【実施例】
次に、本発明の実施例を示す。
実施例1 1-(p-tert-ブトキシフェニル)-2-プロペン-1-オールの合成(第2の本発明方法による)
窒素置換した1l容量の4つ口フラスコに削り状の金属マグネシウム9.7 g(0.4 mol)と無水テトラヒドロフラン30 mlを加え、さらに臭化エチル約2 mlを加えて攪拌し、発泡による反応を確認した。次いで、無水テトラヒドロフランを300 ml加えた後、塩化ビニル8960 ml(0.4 mol)を30〜40℃で5時間を要して吹き込みで(マグネシウムが消失した)、ビニル・マグネシウムクロライドの溶液(0.4 mol)を調製した。
【0022】
この溶液にp-tert-ブトキシベンズアルデヒド71.3 g(0.4 mol)を30〜40℃で2時間を要して滴下し、さらに同温度で1時間攪拌を続けた。反応終了後、この反応液を室温まで冷却し、水60 mlを、30℃以下で加えて加水分解した。
次いで、通常の後処理を行った後(すなわち、反応混合物を食塩水で洗浄し、水層と有機層とに層分離させ、得られる有機層から溶媒を留去した後)、得られた粗生成物に重合防止剤として第三級ブチルカテコールを添加し、減圧条件下で蒸留を行うことにより、1-(p-tert-ブトキシフェニル)-2-プロペン-1-オールが72.5 g(ガスクロマトグラフィーによる純度99.0%、収率88.0%)得られた。得られた化合物の物性値は以下のとおりであった。
沸点:133℃/8 mmHg
1H-NMR(CDCl3)のピーク値
δ:1.35(s、9H)、2.40(s、1H)、5.20-5.75(m、3H)、5.90-6.15(m、1H)、6.93(d、2H)、7.60(d、2H)
【0023】
実施例2 1-(m-tert-ブトキシフェニル)-2-プロペン-1-オールの合成
実施例1において、p-tert-ブトキシベンズアルデヒドの代りにm-tert-ブトキシベンズアルデヒドを用いた以外は、実施例1と同様な操作を行い、1-(m-tert-ブトキシフェニル)-2-プロペン-1-オールが70.9 g(ガスクロマトグラフィーによる純度99.0%、収率86.0%得られた。得られた化合物の物性値は以下のとおりであった。
沸点:135℃/9 mmHg
1H-NMR(CDCl3)のピーク値
δ:1.34(s、9H)、2.60(s、1H)、5.20-5.75(m、3H)、5.90-6.10(m、1H)、7.05-7.40(m、4H)
【0024】
実施例3 1-(p-tert-ブトキシフェニル)-2-プロペン-1-オールの合成(第3の本発明方法による)
窒素置換した1l容量の4つ口フラスコに削り状の金属マグネシウム9.7 g(0.4 mol)と無水テトラヒドロフラン30 mlを加え、さらに臭化エチル約2 mlを加えて攪拌し、発泡による反応を確認した。次いでp-tert-ブトキシクロルベンゼン73.9 g(0.4 mol)を、300 mlの無水テトラヒドロフランに溶解し、これを還流温度(70℃)で5時間を要して滴下した。さらに2時間同温度で攪拌を続けて、p-tert-ブトキシフェニルマグネシウムクロライドの溶液(0.4 mol)を調製した。
【0025】
この溶液に、純度90%のアクロレイン24.9 g(0.4 mol)を30〜40℃で2時間を要して滴下し、さらに同温度で1時間攪拌を続けた。反応終了後、この反応液を室温まで冷却し、水60 mlを、30℃以下で加えて加水分解した。
次いで、通常の後処理を行った後(すなわち、反応混合物を食塩水で洗浄し、水層と有機層とに層分離させ、得られる有機層から溶媒を留去した後)、得られた粗生成物に重合防止剤として第三級ブチルカテコールを添加し、減圧条件下で蒸留を行うことにより、1-(p-tert-ブトキシフェニル)-2-プロペン-1-オールが70.0 g(ガスクロマトグラフィーによる純度98.9%、収率85.0%)得られた。
【0026】
実施例4 1-(p-tert-ブトキシフェニル)-2-プロピン-1-オールの合成(第2の本発明方法による)
窒素置換した1l容量の4つ口フラスコに削り状の金属マグネシウム9.7 g(0.4 mol)と無水テトラヒドロフラン30 mlを加え、さらに臭化エチル約2 mlを加えて攪拌し、発泡による反応を確認した。次いで、無水テトラヒドロフランを300 ml加えた後、塩化メチル8960 ml(0.4 mol)を30〜40℃で5時間を要して吹き込んで(マグネシウムが消失した)、メチルマグネシウムクロライドの溶液(0.4 mol)を調製した。さらにこの溶液を20℃以下に冷却し、アセチレン8960 ml(0.4 mol)を10〜20℃で5時間を要して吹き込んでエチニルマグネシウムクロライドの溶液(0.4 mol)を調製した。
【0027】
この溶液にp-tert-ブトキシベンズアルデヒド71.3 g(0.4 mol)を30℃〜40℃で2時間を要して滴下し、さらに同温度で1時間攪拌を続けた。反応終了後、この反応液を室温まで冷却し、水60 mlを、30℃以下で加えて加水分解した。
次いで、通常の後処理を行った後(すなわち、反応混合物を食塩水で洗浄し、水層と有機層とに層分離させ、得られる有機層から溶媒を留去した後)、得られた粗生成物に重合防止剤として第三級ブチルカテコールを添加し、減圧条件下で蒸留を行うことにより、1-(p-tert-ブトキシフェニル)-2-プロピン-1-オールが74.2 g(ガスクロマトグラフィーによる純度99.8%、収率91.0%)得られた。得られた化合物の物性値は以下のとおりであった。
沸点:135℃/5 mmHg
1H-NMR(CDCl3)のピーク値
δ:1.15(s、9H)、2.55(s、1H)、2.80(d、1H)、5.25(d、1H)、6.85(d、2H)、7.35(d、2H)
【0028】
【発明の効果】
本発明による一般式(I)の不飽和2級アルコールは、医薬、農薬、液晶などの原料として有用である。また、本発明方法によると、高収率で、しかも簡単な操作で高純度品が得られるため、工業的に極めて有利である。

Claims (4)

  1. 一般式(I)
    Figure 0004243397
    〔式中、Rはビニル基-CH=CH2またはエチニル基-C≡CHであり、また式中に示されたフェニル基上のtert-ブトキシ基は該フェニル基のパラ位またはメタ位にある〕で表される不飽和2級アルコール。
  2. 一般式(I)の不飽和2級アルコールが1-(p-tert-ブトキシフェニル)-2-プロペン-1-オール、1-(m-tert-ブトキシフェニル)-2-プロペン-1-オール、1-(p-tert-ブトキシフェニル)-2-プロピン-1-オールまたは1-(m-tert-ブトキシフェニル)-2-プロピン-1-オールである請求項1に記載の2級アルコール。
  3. 一般式(II)
    R-MgX (II)
    〔式中、Rはビニル基またはエチニル基であり、Xはハロゲン原子、好ましくは塩素、臭素またはヨウ素原子である〕で表されるビニルまたはエチニル・マグネシウムハライドと一般式(III)
    Figure 0004243397
    で表わされるp-またはm-tert-ブトキシベンズアルデヒドとをグリニヤール反応により反応させ、次いで加水分解させることを特徴とする、一般式(I)
    Figure 0004243397
    〔式中、Rはビニル基-CH=CH2またはエチニル基-C≡CHであり、また式中に示されたフェニル基上のtert-ブトキシ基は該フェニル基のパラ位またはメタ位にある〕で表される不飽和2級アルコールの製造法。
  4. 一般式(IV)
    Figure 0004243397
    (式中、Xは、ハロゲン原子を示す)で表わされるp-またはm-tert-ブトキシフェニル・マグネシウムハライドと、一般式(Va)
    Ra-CHO (Va)
    〔式中、Raはビニル基である〕のアクロレインとをグリニヤール反応により反応させ、次いで加水分解させることを特徴とする、一般式(Ia)
    Figure 0004243397
    〔式中、Raはビニル基-CH=CH2であり、また式中に示されたフェニル基上のtert-ブトキシ基は該フェニル基のパラ位またはメタ位にある〕で表される不飽和2級アルコールの製造法。
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