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JP4134381B2 - 可変容量形ピストンポンプ - Google Patents

可変容量形ピストンポンプ Download PDF

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JP4134381B2
JP4134381B2 JP17455098A JP17455098A JP4134381B2 JP 4134381 B2 JP4134381 B2 JP 4134381B2 JP 17455098 A JP17455098 A JP 17455098A JP 17455098 A JP17455098 A JP 17455098A JP 4134381 B2 JP4134381 B2 JP 4134381B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧液を各種アクチュエータに供給してこれらアクチュエータを作動させる液圧ピストンポンプに関する。さらに詳しくは、本発明は、ピストンの往復動ストロークを可変斜板の傾斜角度によって調整する可変容量形のピストンポンプに係る。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ショベル等の建設機械には、特開平9−280161号公報に開示されているように、可変容量形のアキシャルピストンポンプが使用されている。このポンプは、例えば、ショベルの右側走行系、左側走行系及び旋回系にそれぞれ圧油を供給する3系統の独立した油圧供給系統を備えている。
【0003】
以下、この種のポンプの構成について説明する。図10(ポンプのシリンダブロック周辺部を示す断面図)に示すように、シリンダブロック(a)には、内周側に位置する内側シリンダ列(b)と外周側に位置する外側シリンダ列(c)とが形成されている。各シリンダ列(b,c)のシリンダ室(b1,c1)にはピストン(d,d)が往復動可能に収容されている。シリンダブロック(a)のポート側端面(e)には、ポンプ軸(f)を中心とする互いに異なる直径を有する同心円周位置に形成された3つのポート群(e1,e2,e3)が形成されている。内側シリンダ列(b)の各シリンダ室(b1,b1,…)のうちの半分は、上記3つのポート群(e1,e2,e3)のうち最も外側に位置する第1ポート群(e1)に連通している。他の半分のシリンダ室(b1,b1,…)は、第1ポート群(e1)の内側に位置する第2ポート群(e2)に連通している。また、外側シリンダ列(c)のシリンダ室(c1,c1,…)は、第2ポート群(e2)の更に内側に位置する第3ポート群(e3)に連通している。
【0004】
上記シリンダブロック(a)のポート側端面(e)に摺接するバルブプレート(g)の吐出側には、図11に示すように、上記各ポート群(e1,e2,e3)に個別に連通可能なように内外周方向に3つの円弧状の吐出側貫通孔(g1,g2,g3)が形成されている。つまり、これらの各吐出側貫通孔(g1,g2,g3)を介して各々独立に圧油を吐出する。尚、図11における(g4)は各シリンダ室(b1,c1)に油を吸入するための吸入側貫通孔である。(h,h,…)は各貫通孔(g1,g2,g3,g4)に形成されたノッチである。このノッチ(h)は、バルブプレート(g)の各貫通孔(g1,g2,g3,g4)と各シリンダ室(b1,c1)との連通面積をシリンダブロック(a)の回転に伴って徐々に拡大し、油圧の急激な変動を回避する。
【0005】
この構成により、1つのポート群からは右側走行系に、他の1つのポート群からは左側走行系に、残りの1つのポート群からは旋回系にそれぞれ油圧が独立して供給される。つまり、1つのシリンダブロック(a)から3本の独立した吐出流が供給可能である。
【0006】
また、上記各ピストン(d,d,…)の先端面は、可変斜板(i)に摺動可能に当接している。この可変斜板(i)は、ピストン(d,d,…)の往復動方向に対して所定角度だけ傾斜している。この可変斜板(i)の傾斜角度によりピストン(d)の往復動の行程を調整する。つまり、この可変斜板(i)の傾斜角度によってピストン(d)の往復動ストロークが決定される。
【0007】
この可変斜板(i)の傾斜角度の調整機構としては、該可変斜板(i)の一端縁(図10における上端縁)に図示しないスプリングの付勢力(P)が、可変斜板(i)の傾斜角度を大きくする側(ピストン(d)の往復動ストロークを大きくする側)に作用している。一方、この可変斜板(i)には、各ピストン(d,d,…)を介してポンプ吐出圧(F1,F1)を受けている。この可変斜板(i)は、ポンプ軸(f)の軸線よりも図中僅か上側に回動中心(A)が設定されている。この回動中心(A)回りに発生するモーメントにより、ポンプ吐出圧が可変斜板(i)の傾斜角度を小さくする側(ピストン(d)の往復動ストロークを小さくする側)に作用する。つまり、このスプリングの付勢力(P)とポンプ吐出圧により発生する反力(F2)とのバランスにより可変斜板(i)の傾斜角度が所定角度に決定される。
【0008】
この構成により、ポンプ吐出圧(F1,F1)が比較的低い状態では、スプリングの付勢力(P)により可変斜板(i)の傾斜角度が大きく設定される一方、ポンプ吐出圧(F1,F1)が高くなると、上記反力(F2)がスプリングの付勢力(P)に抗して可変斜板(i)の傾斜角度を小さくする。この可変斜板(i)の傾斜角度が小さくなることで、吐出流量を抑え、駆動源にかかる負荷を小さくし、該駆動源がオーバロード状態になることを回避するいわゆる定馬力制御が行われている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来の可変容量形のピストンポンプでは、バルブプレート(g)の吐出側貫通孔(g1,g2,g3)の開口位置、特に上記ノッチ(h)の形成位置について特に考察した技術は提案されていない。つまり、この吐出側貫通孔(g1,g2,g3)の開口位置としては、ピストン(d)が可変斜板(i)によって押し下げられる領域であればよく、また、各ノッチ(h)は、油圧の急激な変動を回避する機能を備えておればよいといったことのみが考慮されて形成位置が設定されていた。つまり、吐出側貫通孔(g1,g2,g3)やノッチ(h)に関してその他の機能について特に提案されていない。
【0010】
このため、各シリンダ列(b,c)のポンプ吐出圧が可変斜板(i)に与える圧力の変化状態は常に一定の比率に固定されていた。つまり、ポンプ吐出圧の変化に伴う可変斜板(i)の傾斜角度は、上記スプリングの付勢力(P)によって支配されており、このスプリングの付勢力(P)により定馬力特性が決定されるものであって、この定馬力特性の変更自由度が極めて低いものであった。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、斜板式の容量可変形ピストンポンプに対し、構成を大幅に変更することなしに、ポンプの定馬力特性の変更自由度を高めることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、バルブプレートの排出ポート(吐出側貫通孔)の形状を改良することにより、所望の定馬力特性を有する容量可変形ピストンポンプが得られるようにした。
【0013】
具体的に、第1の解決手段は、図1及び図6に示すように、ピストン(41,42)が収容された複数のシリンダ(24,25)を備えて回転するシリンダブロック(2)と、該シリンダブロック(2)に摺接し、吸入ポート(31)及び円弧状の複数の排出ポート(32,33,34)を備えたバルブプレート(3)と、傾斜角度の調整によりピストン(41,42)の往復動ストロークを変更する可変斜板(5)とを備え、上記複数の排出ポート (32,33,34) は、上記バルブプレート (3) の吐出側に、内外周方向に配列されている可変容量形ピストンポンプを前提とする。この可変容量形ピストンポンプに対し、上記各排出ポート(32,33,34)それぞれの形成領域のうち少なくとも1つ(34)の形成領域は、周方向の角度範囲が、他の排出ポート(32,33)の形成領域における上記周方向の角度範囲とは異なっているものである。
【0014】
この特定事項により、シリンダブロック(2)の回転により、ピストン(41,42)は、可変斜板(5)の傾斜角度に応じた往復動ストロークで往復動する。この往復動により、吸入ポート(31)からシリンダ(24,25)内に流体が吸入すると共に、この流体を排出ポート(32,33,34)から排出するポンプ動作が行われる。
【0015】
また、上記可変斜板(5)の傾斜角度の調整は、ピストン(41,42)が可変斜板(5)を押圧することで行われる。そして、バルブプレート(3)における各排出ポート(32,33,34)の少なくとも一つ(34)の形成領域の角度範囲が他の排出ポート(32,33)の角度範囲と異っているため、これら角度範囲に応じてピストン(41,42)が可変斜板(5)を押圧する領域が異なる。その結果、この角度範囲を任意に設定することにより可変斜板(5)のいわゆる自己復帰モーメントを任意に設定でき、所望の定馬力特性が得られる。
【0016】
第2の解決手段は、各排出ポート(32,33,34)の形成領域の角度範囲を互いに異ならせるための手段を特定したものである。つまり、上記第1の解決手段において、バルブプレート(3)の各排出ポート(32,33,34)に、シリンダ(24,25)内の圧力変動を抑制するためのノッチ(35,36,37)を設ける。この各ノッチ(35,36,37)のうち少なくとも1つのノッチ(37)先端の周方向の角度位置を、他のノッチ(35,36)先端の上記周方向の角度位置と異ならせている。
【0017】
この特定事項により、各排出ポート(32,33,34)に設けられたノッチ(35,36,37)を改良するといった簡単な構成で所望の定馬力特性を得ることができる。
【0018】
第3の解決手段は、上記第1の解決手段において、可変斜板(5)の傾斜角度を、ピストン(41,42)を介して受けるポンプ吐出と、該吐出圧に反する方向の付勢力を発生する付勢手段(6)の圧力とのバランスにより調整するようにしている。
【0019】
この特定事項により、バルブプレート(3)の各排出ポート(32,33,34)を改良することで上記付勢手段(6)の圧力に反する圧力(いわゆる可変斜板(5)の自己復帰モーメント)を変更し、これによって定馬力特性を変更できる。
【0020】
第4の解決手段は、第1の解決手段において、シリンダブロック(2)のシリンダ(24,25)を、回転中心軸(X)を中心とする互いに異なる直径の同心円周位置に形成された外側シリンダ(25)及び内側シリンダ(24)で構成する。上記シリンダブロック(2)のバルブプレート側端面(2a)に回転中心軸(X)を中心とする互いに異なる直径の同心円周位置に形成された第1,第2及び第3のポート群(21,22,23)を形成する。内側シリンダ(24)の一部を第1ポート群(21)に、他を第2ポート群(22)にそれぞれ連通する。外側シリンダ(25)を第3ポート群(23)に連通する。更に、上記バルブプレート(3)の排出ポート(32,33,34)を、上記第1ポート群(21)に連通する第1排出ポート(32)、第2ポート群(22)に連通する第2排出ポート(33)、第3ポート群(23)に連通する第3排出ポート(34)より構成する。
【0021】
この特定事項により、シリンダブロック(2)の回転に伴う各ピストン(41,42)の往復動により、バルブプレート(3)に形成された3つの排出ポート(32,33,34)からそれぞれ独立に圧液が吐出される。このため、1台のピストンポンプの1個のシリンダブロック(2)から圧液を3本の独立した吐出流として供給することが可能になる。また、各ピストン(41,42)の往復動ストロークが1個の可変斜板(5)により増減変更調整されるため、これらの各シリンダ(24,25)から吐出される3本の吐出流の全てについて、その吐出量を吐出圧の変化に応じて増減変更調整することが可能になる。
【0022】
第5の解決手段は、本発明に係る可変容量形ピストンポンプの適用形態を特定したものである。つまり、このピストンポンプを油圧ショベルに適用している。つまり、上記第4の解決手段において、シリンダブロック(2)が油圧ショベルの原動機の出力を受けて回転するようにし、第1排出ポート(32)が油圧ショベルの一方の走行系に、第2排出ポート(33)が油圧ショベルの他方の走行系に、第3排出ポート(34)が油圧ショベルの旋回系にそれぞれ液圧を供給するようにしている。
【0023】
この特定事項により、可変容量形ピストンポンプの適用形態が具体化でき、また、第1の解決手段における作用により、油圧ショベルの定馬力特性を任意に変更することが可能になる。
【0024】
第6の解決手段は、上記第4の解決手段において、図6に示すように、第3ポート群(23)に対する第3排出ポート(34)の連通開始点の角度位置を、第1及び第2ポート群(23)に対する第1及び第2排出ポート(32,33)の連通開始点の角度位置よりもシリンダブロック回転方向の前側に位置させている。
【0025】
第7の解決手段は、上記第4の解決手段において、図9に示すように、第3ポート群(23)に対する第3排出ポート(34)の連通開始点の角度位置を、第1及び第2ポート群(23)に対する第1及び第2排出ポート(32,33)の連通開始点の角度位置よりもシリンダブロック回転方向の後側に位置させている。
【0026】
これら特定事項により、走行系に対する旋回系の影響度合いを任意に設定することができる。つまり、第6の解決手段では、油圧ショベルの旋回系に供給される流体が可変斜板(5)を押圧する面積が小さくなるため、この影響度合いが小さくなる。逆に、第7の解決手段では、上記面積が大きくなるため、この影響度合いが大きくなる。特に、第6の解決手段では、油圧ショベルの走行中に旋回系を駆動しても走行性能に悪影響を与えにくい構成とすることができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本形態は、本発明に係る可変容量形ピストンポンプを油圧ショベルの油圧ポンプに適用した場合について説明する。
【0028】
−ポンプの全体構成の説明−
図1は、本実施形態に係る可変容量形のアキシャルピストンポンプ(以下、単にポンプという)を示している。図中(1)は図示しない原動機(エンジン)により回転駆動されるポンプ軸、(2)はこのポンプ軸(1)と一体に回転する円柱状のシリンダブロック、(3)はこのシリンダブロック(2)のポート側端面(2a)に対して油密に摺動可能に接合されて上記シリンダブロック(2)から吐出される圧油を分配するバルブプレートである。また、(4a)は上記シリンダブロック(2)の内周側部分に配設された第1シリンダ列、(4b)はその外周側部分に配設された第2シリンダ列、(41,41,…,42,42,…)はこれらのシリンダ列(4a,4b)を構成する本発明でいうシリンダとしての各シリンダ室(24,24,…,25,25,…)内に収容されたピストン、(5)はこれらピストン(41,41,…,42,42,…)の往復動の行程を増減変更調整する可変斜板、(6)はこの可変斜板(5)をその傾斜角度が増加する方向に付勢する付勢手段としてのバネ機構である。さらに、(7)は上記第2シリンダ列(4b)からの吐出圧を受けて上記ポンプ軸(1)の先端面(1a)を押圧するバランスピストン機構、(8)は上記シリンダブロック(2)の外周面に全周にわたって配設された滑り軸受により構成されたジャーナル軸受、(9)は上記シリンダブロック(2)等を収容するケーシング本体、(10)はこのケーシング本体(9)の開口端(図中左側端)を閉止するエンドキャップである。上記ケーシング本体(9)は、円筒状のセンタボディ(9a)と、該センタボディ(9a)の一端面(図1の右側端面)に取り付けられたフロントキャップ(9b)とを備えている。そして、上記ケーシング本体(9)及びエンドキャップ(10)により構成されるポンプケーシングの内部が油に満たされている。
【0029】
上記ポンプ軸(1)は、基端側(同図の右側)で軸受(1b)により中心軸(X)の回りに回転自在に支持されている。このポンプ軸(1)の先端側(同図の左側)は、シリンダブロック(2)の中心部に対し斜板側(同図の右側)から途中まで挿入されて非貫通状態になっている。このポンプ軸(1)の先端部は、スプライン(1c)を介してシリンダブロック(2)と結合している。これによって、シリンダブロック(2)とポンプ軸(1)とは、互いに上記中心軸(X)方向に相対変位可能な状態で一体に回転するように組み付けられている。
【0030】
上記シリンダブロック(2)の内部には、図2(図1におけるY−Y線に沿った断面図)及び図3(シリンダブロック(2)の斜板側端面を示す図)にも示すように、ポンプ軸(1)を中心として円周方向に列状に形成され、上記ピストン(41,41,…)をポンプ軸(1)の長手方向に往復摺動可能に収容する10個の上記シリンダ室(24,24,…)が形成されている。これらシリンダ室(24,24,…)により上記第1シリンダ列(4a)が構成される。また、この第1シリンダ列(4a)の外周側には、上記ピストン(42,42,…)をポンプ軸(1)の長手方向に往復摺動可能に収容する5個の上記シリンダ室(25,25,…)が形成されている。これらシリンダ室(25,25,…)により上記第2シリンダ列(4b)が構成される。
【0031】
上記シリンダブロック(2)のバルブプレート側端面としてのポート側端面(2a)(図4参照)には、上記ポンプ軸(1)を中心とする3個の同心円周位置にポート群(21,22,23)が形成されている。外周寄りの第1円周位置には第1ポート群(21)を構成する各ポート(21a)が等間隔に5個形成されている。これらの各ポート(21a)は、上記第1シリンダ列(4a)内に一つおきに配設された第1グループの5個のシリンダ室(24a,24a,…)の各々に対し、これらの各シリンダ室(24a)の略中心位置から上記ポンプ軸(1)方向に延びる連通路により個別に連通されている(図5参照)。また、その内側の第2円周位置には第2ポート群(22)を構成する各ポート(22a)が等間隔にかつ上記第1ポート群(21)の各ポート(21a)に対して交互に5個形成されている。この第2ポート群(22)の各ポート(22a)は、上記第1シリンダ列(4a)のうちの上記第1グループ以外の第2グループの5個のシリンダ室(24b,24b,…)に対し、これらの各シリンダ室(24b)の上記ポンプ軸(1)寄りの位置からそのポンプ軸(1)方向に延びる連通路により個別に連通している。さらに、最も内周寄りの第3円周位置には第3ポート群(23)を構成する5個のポート(23a,23a,…)が等間隔に形成されている。これら各ポート(23a)は、シリンダブロック(2)の半径方向に内周側から外周側まで延びるように放射状に形成された第1連通路(26,26,…)により、上記第2シリンダ列(4b)を構成する第3グループの各シリンダ室(25)と個別に連通している。
【0032】
なお、上記ポート側端面(2a)には、ポンプ軸(1)の中心軸(X)を中心として第3ポート群(23)の内周側に円形凹部(2c)が、また、第3ポート群(23)と第2ポート群(22)との中間位置には円環状の第1環状溝部(2d)が、更に、第1ポート群(21)の外周側には円環状の第2環状溝部(2e)がそれぞれ同心状に形成されている。そして、上記円形凹部(2c)と第1環状溝部(2d)とがそれぞれ図示しない連通路によりケーシング本体(9)内に連通されてドレン通路とされている。また、上記第2環状溝部(2e)がその外周縁から半径方向外方へ延びる5本の凹溝部(2f,2f,…)により上記ケーシング本体(9)内に連通されてドレン通路とされている。さらに、上記円形凹部(2c)と第1環状溝部(2d)との間及びこの第1環状溝部(2d)と第2環状溝部(2e)との間は、それぞれ、上記第1,第2又は第3ポート群(21,22,23)を囲むシール部となっている。
【0033】
上記シリンダブロック(2)の斜板側端面(2b)(図1参照)には、その内周側において上記第1シリンダ列(4a)を構成するシリンダ室(24,24,…)が開口し、また外周側において上記第2シリンダ列(4b)を構成するシリンダ室(25,25,…)が開口している。また、これらシリンダ室(24,25)に挿通される各ピストン(41,42)はその基端側が上記各シリンダ室(24,25)内に収容される一方、その先端側が上記開口から可変斜板(5)に向かって突出してその先端部に配設されたスリッパ(43,44)を介して上記可変斜板(5)に摺動可能に当接している。そして、上記各ピストン(41,42)は、上記シリンダブロック(2)の回転により、上記ポンプ軸(1)の回りを公転するとともにこのポンプ軸(1)の長手方向に可変斜板(5)の傾斜角度に応じて往復動する。なお、図1において、(45)は上記各ピストン(41,42)とスリッパ(43,44)とを連結する押え板であり、(46)はこの押え板(45)をポンプ軸(1)に対して回転可能に連結する押え板ガイドである。
【0034】
上記バルブプレート(3)(図6参照)は、上記エンドキャップ(10)の内面に接合される一方、上記シリンダブロック(2)のポート側端面(2a)に対して摺動可能に接合されている。このバルブプレート(3)における上記ポンプ軸(1)を中心とする円周方向の略半分を占める吸入側範囲(同図における左側範囲)には、幅広の略円弧形状の吸入ポートとしての吸入側貫通孔(31)が、上記ポート側端面(2a)に配設された3つのポート群(21,22,23)の各ポート(21a,…,22a,…,23a,…)の略半数に対し同時に連通可能に配設されている。そして、この吸入側貫通孔(31)は、上記エンドキャップ(10)内に形成された後述の吸入側通路(10a)と上記ポート(21a,…,22a,…,23a,…)とを連通させて図示しない油タンクからシリンダ室(24,24,…,25,25,…)内に油を供給する。
【0035】
また、上記バルブプレート(3)の上記ポンプ軸(1)を中心とする円周方向の略半分を占める吐出側範囲(図6における右側範囲)には、上記ポンプ軸(1)を中心とする同心円周位置に3列の略円弧形状の排出ポートとしての吐出側貫通孔列(32,33,34)が形成されている。各吐出側貫通孔列(32,33,34)は、それぞれ同心円弧状の複数の開口を備えている。最外周側の第1吐出側貫通孔列(32)は、第1から第4の4個の開口(32a,32b,32c,32d)を備え、第1ポート群(21)を構成するポート(21a,21a,…)のうちの略半数と同時に連通可能に配設されている。また、この第1吐出側貫通孔列(32)の内周側に形成された第2吐出側貫通孔列(33)は、第1から第3の3個の開口(33a,33b,33c)を備え、第2ポート群(22)を構成するポート(22a,22a,…)のうちの略半数と同時に連通可能に配設されている。更に内周側の第3吐出側貫通孔列(34)は、第1から第3の3個の開口(34a,34b,34c)を備え、第3ポート群(23)を構成するポート(23a,23a,…)のうちの略半数と同時に連通可能に配設されている。ここで、上記第3吐出側貫通孔列(34)は、3つの吐出側貫通孔列(32,33,34)のうちの最も内周側に形成されており、その総開口面積が他の吐出側貫通孔列(32,33)の総開口面積よりも小さめになっている(図例では、第1吐出側貫通孔列(32)の半分程度)。そして、上記ピストン(41,41,…,42,42,…)の往復動により、上記各グループのシリンダ室(24a,…,24b,…,25,…)内の圧油が上記各群のポート(21a,…,22a,…,23a,…)から吐出され、各々独立に上記各吐出側貫通孔列(32,33,34)の開口(32a〜34c)を通過してエンドキャップ(10)内に形成された後述の第1吐出側通路(10b),第2吐出側通路(10c)又は3吐出側通路(10d)へと分配されるようになっている。尚、図6に破線で示す矢印は、このバルブプレート(3)に対するシリンダブロック(2)の回転方向を示している。
【0036】
本形態の特徴は、各吐出側貫通孔列(32,33,34)において吐出開始側(各吐出側貫通孔列(32,33,34)の図6における反時計回り方向側)に位置する第1開口(32a,33a,34a)に形成されたノッチ(35,36,37)の形状にある。このノッチ(35,36,37)は、吐出側貫通孔列(32,33,34)と各シリンダ室(24a,24b,25)との連通面積をシリンダブロック(2)の回転に伴って徐々に拡大し、作動油の吐出開始時における油圧の急激な変動を回避している。また、吸入側貫通孔(31)にも同様のノッチ(38)が形成されている。
【0037】
第1吐出側貫通孔列(32)及び第2吐出側貫通孔列(33)の第1開口(32a,33a)に形成されているノッチ(35,36)の先端位置は、バルブプレート(3)の周方向の同一の位相位置(半径方向に延びる同一直線上の位置)に設定されている。これに対し、第3吐出側貫通孔列(34)の第1開口(34a)に形成されているノッチ(37)の先端位置は、上記第1吐出側貫通孔列(32)及び第2吐出側貫通孔列(33)のノッチ(35,36)の先端位置よりも図中時計回り方向側に僅かにずれた位置に設定されている。この図6において一点鎖線で囲む領域は高圧領域である。この高圧領域は、シリンダブロック(2)の各ポート(21a〜23a)からの吐出圧力が作用する領域であって、可変斜板(5)に対する押圧力を発生する部分である。従って、上述の如く、この第3吐出側貫通孔列(34)のノッチ(37)の長さを短くすることで、第3吐出側貫通孔列(34)の第1開口(34a)の吐出開始点が図中時計回り方向側に短縮されている。言い換えると、第1吐出側貫通孔列(32)及び第2吐出側貫通孔列(33)の形成領域の角度範囲(一点鎖線で囲まれた領域)に対して、第3吐出側貫通孔列(34)の形成領域の角度範囲が僅かに小さくなっている。このため、第3吐出側貫通孔列(34)の形成領域では、この押圧力を与える領域が小さく設定されている。
【0038】
上記可変斜板(5)は、その上面(図1の左側面)に摺動面(51a)を有するドーナツ形状の本体部(51)と、この本体部(51)の中心位置に対しバネ機構(6)側にオフセットした回転中心位置(A)を通るようにその本体部(51)の外周面から外方に突出して形成された回転軸(52)と、上記本体部(51)に対しその回転軸(52)に直交する方向の一端側(図1の上端側)で外周面から外方に突出する突出部(53)とにより構成されている。そして、上記可変斜板(5)は、上記回転軸(52)のオフセット配置により、圧油を吐出するピストン(41,41,…,42,42,…)の反力を受けて傾斜角度が減少する向き(図1における反時計回り)の自己復帰モーメントが発生するようになっている。また、上記可変斜板(5)は、その突出部(53)がケーシング本体(9)の底壁部(図1の右側壁部)に当接してそれ以上の回動が阻止された状態で傾斜角度が最大(例えば、17度)の傾斜状態になる一方、反対側に回動して本体部(51)が上記ケーシング本体(9)の底壁部に当接してそれ以上の回動が阻止された状態で傾斜角度が零度の中立状態になるように構成されている。そして、この可変斜板(5)の傾斜角度により、上記摺動面(51a)に対しスリッパ(43,43,…,44,44,…)を介して摺接しているピストン(41,41,…,42,42,…)の往復動の行程が増減変更調整されるようになっている。
【0039】
上記バネ機構(6)は、互いに同軸に配置された2つのコイルスプリング(61,62)を備えている。これらコイルスプリング(61,62)は、エンドキャップ(10)に摺動自在に装着された支持部材(63)と、可変斜板(5)の突出部(53)に当接された当接部材(64)との間に縮装されている。これにより、コイルスプリング(61,62)は、可変斜板(5)を、その傾斜角度に略比例する両コイルスプリング(61,62)の押圧付勢力で最大傾斜側(図1の時計回り)へ付勢している。
【0040】
上記バランスピストン機構(7)(図1,図2及び図7参照)は、シリンダブロック(2)内のポート側において、ポンプ軸(1)の中心軸(X)を中心とする最内周側に周方向に等間隔に配設され、それぞれ、そのポンプ軸(1)の先端面(1a)に対向して開口する一方、上記中心軸(X)方向に延びるように形成された円形断面を有する5個のバランスシリンダ室(71,71,…)と、これら各バランスシリンダ室(71)内に、基端側を各バランスシリンダ室(71)に対し液密かつ相対摺動可能に収容される一方、先端側を上記ポンプ軸(1)の先端面(1a)に当接するように配設された略円柱形状のバランスピストン(72,72,…)とにより構成されている。また、上記各バランスシリンダ室(71)は、第2連通路(27,27,…)によって第1連通路(26,26,…)と個別に連通されて第2シリンダ列(4b)から吐出圧が導かれるように構成されており、この吐出圧を受けたバランスピストン(72,72,…)がポンプ軸(1)の先端面(1a)を押圧する反力により、シリンダブロック(2)にバルブプレート(3)側への押圧力が加わるようになっている。
【0041】
上記ジャーナル軸受(8)は、シリンダブロック(2)の外周面と、ケーシング本体(9)の内周面との間に配設されており、シリンダブロック(2)の外周面との間に油膜を形成して、この油膜によりシリンダブロック(2)を径方向に支持している。
【0042】
上記エンドキャップ(10)には、吸入側通路(10a)(図7参照)と第1、第2、第3の3個の吐出側通路(10b,10c,10d)とが形成され、各々バルブプレート(3)に形成された各吐出側貫通孔列(32,33,34)と吸入側貫通孔(31)とを介してシリンダ室(24a,…,24b,…,25,…)と個別に連通している。そして、上記第1吐出側通路(10b)は図示省略のショベルの左側走行系統と、上記第2吐出側通路(10c)は上記ショベルの右側走行系統と、上記第3吐出側通路(10d)は上記ショベルの旋回系統と各々油圧配管により独立に接続している。また、上記吸入側通路(10a)は油圧配管により上記ショベルに配設された油タンク(図示省略)に接続している。さらに、その吸入側通路(10a)はドレン通路(10e)によりケーシング本体(9)の内部に連通しており、シリンダブロック(2)の吐出側でそのポート側端面(2a)とバルブプレート(3)との隙間から上記ケーシング本体(9)内に漏出する圧油がこのケーシング本体(9)内から上記吸入側通路へ還流するようになっている。
【0043】
なお、図1において、(11)はポンプ軸(1)により回転駆動されるトロコイドポンプである。このトロコイドポンプ(11)は、ケーシング本体(9)内の油を吸込み、そのケーシング本体(9)に形成された通路(11b)を介してショベルの図示しないパイロット操作回路に圧油を供給するようになっている。
【0044】
−ポンプの運転動作の説明−
次に、本実施形態に係るポンプの作動及びその作用・効果を説明する。
【0045】
まず、原動機の運転によりポンプ軸(1)を回転させると、ピストン(41,41,…,42,42,…)が最大傾斜状態の可変斜板(5)に沿って最大の往復行程を往復動することにより最大量の油を吸入して最大量の圧油を吐出する。この際、第1グループのシリンダ室(24a,24a,…)内の圧油は第1ポート群(21)と第1吐出側貫通孔列(32)の開口(32a〜32d)とを通過して第1吐出側通路(10b)に、第2グループのシリンダ室(24b,24b,…)内の圧油は第2ポート群(22)と第2吐出側貫通孔列(33)の開口(33a〜33c)とを通過して第2吐出側通路(10c)に、そして、第3グループのシリンダ室(25,25,…)内の圧油は第3ポート群(23)と第3吐出側貫通孔列(34)の開口(34a〜34c)とを通過して第3吐出側通路(10d)にそれぞれ独立に流通し、油圧配管を介してショベルの各油圧系統に独立に供給される。ここで、上記第1グループのシリンダ室(24a,24a,…)から吐出される第1吐出流と第2グループのシリンダ室(24b,24b,…)から吐出される第2吐出流とは、どちらも第1シリンダ列(4a)を構成する等容積のシリンダ室(24)から吐出される等量の吐出流であり、この両吐出流をそれぞれ上記ショベルの左右の走行系に独立に供給することにより、このショベルの走行直進性を良好なものとすることができる。また、上記第3グループのシリンダ室(25,25,…)から吐出される第3吐出流をショベルの旋回系に供給することにより、この旋回系を上記左右の走行系の作動に影響されずに操作することができ、その操作性を良好なものとすることができる。つまり、1個のシリンダブロック(2)からショベルの3系統の油圧系統に独立に圧油を供給することができ、ポンプ全体としてのコンパクト化を図ることができる。
【0046】
また、可変斜板(5)が、吐出側のピストン(41,42)を介して作用するポンプの吐出圧を受け、バネ機構(6)の押圧付勢力に抗して傾斜角度が減少する向きに回転するようになっているため、この可変斜板(5)は、上記吐出側の油圧力とバネ機構(6)の押圧付勢力とが均衡した状態で角度維持されることになる。これにより、上記第1吐出流、第2吐出流及び第3吐出流のそれぞれをそれらの吐出圧の増大に従い減少させることができるため、走行系及び旋回系の油圧の増大に伴い原動機がオーバーロード運転となることを防止し、かつ、リリーフ弁を開放する頻度を低減して動力損失を低減させることができる。つまり、上記ポンプの流量・圧力制御として負荷の合計に基づく総合的な全馬力制御を行うことにより原動機の出力のさらなる有効利用が図られる。
【0047】
−実施形態の効果−
上述したように、本実施形態では、バルブプレート(3)の第3吐出側貫通孔列(34)の第1開口(34a)に形成されているノッチ(37)の先端位置が、他の吐出側貫通孔列(32,33)のノッチ(35,36)の先端位置よりも図6の時計回り方向側に位置している。このため、バルブプレート(3)における内周側部分の領域(第3吐出側貫通孔列(34)が形成されている部分の円周領域)では、従来のものに比べて高圧域が縮小されている(図6で一点鎖線により囲まれた領域)。つまり、可変斜板(5)を図1において反時計回り方向に回動させるための圧力領域が小さい。その結果、ポンプの吐出圧が比較的高い所定値に達するまで、可変斜板(5)は反時計回り方向に回動せず、ポンプの吐出圧が比較的高い所定値に達した時点で、可変斜板(5)が反時計回り方向に回動してバネ機構(6)のコイルスプリング(61,62)とつり合う位置に設定される。
【0048】
これを図8のグラフを用いて説明する。このグラフは、ポンプにおける吐出圧力と吐出流量との関係を示している。(α)は、図11に示す従来例のバルブプレートを採用した場合である。つまり、吐出圧力が所定値(I)に達するまでは可変斜板(5)が回動せず、この所定値(I)に達したときにバネ機構(6)の付勢力に抗して可変斜板(5)が回動して定馬力制御に移る。
【0049】
この図8の(β)は本実施形態を示している。つまり、吐出圧力が比較的高い所定値(II)に達するまでは可変斜板(5)が回動せず、この所定値(II)に達したときにバネ機構(6)の付勢力に抗して可変斜板(5)が回動して定馬力制御に移る。
【0050】
尚、図8の(δ)は、ショベルの旋回系を無負荷状態にした場合の定馬力線である。このように、本形態では、ショベルの旋回系に給油を行う際にも定馬力線を理想的な定馬力線に近づけることができ、エンジン馬力を効率良く使用することができる。
【0051】
また、ショベルの旋回系を無負荷状態で走行している状態で、定馬力線(δ)の(D)点にある状態から旋回系を駆動すると、従来のものでは、(E)点に移行する。つまり、作動油の吐出流量が極端に低下することになり、ショベルの走行安定性に支障を来す虞れがある。これに対し、本形態のものでは、旋回系を駆動すると、(F)点に移行する。つまり、作動油の吐出流量の低下を抑制でき、ショベルの走行安定性を良好に維持できる。言い換えると、3つの油圧供給系のうち旋回系が他の走行系に与える影響度合いを小さくすることができる。
【0052】
このように、本形態では、第3吐出側貫通孔列(34)のノッチ(37)の長さを僅かに短くするのみで定馬力特性を変更することができる。
【0053】
また、このように各ノッチ(35,36,37)の先端位置を異ならせることにより、個々のシリンダ室(24,25)における昇圧カーブの周期を異ならせることができる。つまり、シリンダ内圧が最高圧になる時期をずらすことができ、ポンプの運転音の低減を図ることができる。
【0054】
<他の実施形態>
上述した実施形態では、第3吐出側貫通孔列(34)の第1開口(34a)に形成されているノッチ(37)の先端位置を、第1吐出側貫通孔列(32)及び第2吐出側貫通孔列(33)のノッチ(35,36)の先端位置よりも図6の時計回り方向側に位置させた。本発明は、これに限らず、図9に示すように、第3吐出側貫通孔列(34)の第1開口(34a)に形成されているノッチ(37)の先端位置を、第1吐出側貫通孔列(32)及び第2吐出側貫通孔列(33)のノッチ(35,36)の先端位置よりも図中反時計回り方向側に位置させてもよい。この場合の定馬力線は、図8の(γ)のようになる。つまり、吐出圧力が比較的低い所定値(III)に達した時点でバネ機構(6)の付勢力に抗して可変斜板(5)が回動して定馬力制御に移る。
【0055】
このように、第3吐出側貫通孔列(34)の第1開口(34a)に形成されているノッチ(37)の先端位置を変更することで、任意の定馬力特性を得ることができる。
【0056】
また、本発明は、第3吐出側貫通孔列(34)のノッチ(37)の先端位置を変更するものに限らない、つまり、第1吐出側貫通孔列(32)や第2吐出側貫通孔列(33)のノッチ(35,36)の先端位置を変更して任意の定馬力特性を得るようにすることもできる。
【0057】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、上記実施形態では、可変容量形ピストンポンプとして油圧ピストンポンプに適用しているが、これに限らず、油以外の液体を用いる液圧ポンプに適用してもよい。
【0058】
上記実施形態では、可変斜板(5)の傾斜角度を調整する機構として、可変斜板(5)の回転中心をバネ機構(6)側へオフセット配置するようにしているが、これに限らず、種々の機構が適用可能である。
【0059】
上記実施形態では、第1シリンダ列(4a)を10本のシリンダ室で構成するとともに、第2シリンダ列(4b)を5本のシリンダ室で構成するようにしているが、これに限らず、第1シリンダ列を10本以外のシリンダ室で構成してもよく、また、第2シリンダ列を5本以外のシリンダ室で構成してもよい。
【0060】
上記実施形態では、シリンダブロック(2)の外周面にジャーナル軸受を配設するようにしているが、これに限らず、例えば、コロ軸受等他の軸受を配設することも可能である。
【0061】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば以下に述べるような効果が発揮される。請求項1記載の発明では、斜板式の可変容量形ピストンポンプに対し、バルブプレート(3)の排出ポート(32,33,34)の形成領域の角度範囲を異ならせることにより、所望の定馬力特性を有する可変容量形ピストンポンプが得られるようにした。このため、バルブプレート(3)の排出ポート(32,33,34)の形成領域を改良するといった簡単な構成でポンプの定馬力特性の変更自由度を高めることができる。また、排出ポート(32,33,34)の形成領域の角度範囲を異ならせることにより、個々のシリンダ(24,25)における昇圧カーブの周期を異ならせることができる。このため、シリンダ内圧が最高圧になる時期をずらすことができ、ポンプの運転音の低減を図ることができる。
【0062】
請求項2記載の発明では、バルブプレート(3)の各排出ポート(32,33,34)に設けたノッチ(35,36,37)先端における回転中心軸(X)を中心とする周方向の角度位置を異ならせることによって排出ポート(32,33,34)の形成領域の角度範囲を異ならせている。このため、比較的簡単な構成で所望の定馬力特性を得ることができ、発明の実用性の向上を図ることができる。
【0063】
請求項3記載の発明では、可変斜板(5)に作用するポンプ吐出と付勢手段(6)の圧力とのバランスにより傾斜角度を調整するようにした。このため、可変斜板(5)の角度調整機構が具体化され、これによっても発明の実用性の向上を図ることができる。
【0064】
請求項4記載の発明は、1つのシリンダブロック(2)から複数系統の流体供給を行い得るようにしたものである。このため、1台のピストンポンプの1個のシリンダブロック(2)から圧液を複数の独立した吐出流として供給することが可能になる。
【0065】
請求項5記載の発明は、本発明に係るピストンポンプを油圧ショベルに適用したものである。このため、ピストンポンプの適用形態が具体化でき、また、請求項1記載の発明に係る効果が油圧ショベルの各駆動系に対して得ることができ、油圧ショベルの旋回系及び走行系の定馬力特性を任意に得ることが可能になる。
【0066】
請求項6及び請求項7記載の発明では、ポート群に対する排出ポートの連通開始点の角度位置を変更することで、油圧ショベルの走行系に対する旋回系の影響度合いを任意に設定することが可能になる。特に、請求項6記載の発明では、油圧ショベルの走行中に旋回系を駆動しても走行性能に悪影響を与えにくい構成とすることができ、走行安定性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係る可変容量形ピストンポンプを示す縦断面図である。
【図2】 図1のY−Y線における横断面図である。
【図3】 シリンダブロックの斜板側端面を示す図である。
【図4】 シリンダブロックのポート側端面を示す図である。
【図5】 第1及び第2シリンダ列とポート群との連通状態を示す模式図である。
【図6】 バルブプレートを示す平面図である。
【図7】 図2のZ−Z線における部分断面図である。
【図8】 吐出側貫通孔のノッチ長さを変更した場合の定馬力線を示す図である。
【図9】 変形例における図6相当図である。
【図10】 可変斜板の傾斜角度調整原理を説明するための図である。
【図11】 従来のバルブプレートを示す図6相当図である。
【符号の説明】
(2) シリンダブロック
(2a) シリンダブロックのポート側端面
(21〜23) ポート群
(24,25) シリンダ室(シリンダ)
(3) バルブプレート
(31) 吸入側貫通孔(吸入ポート)
(32〜34) 吐出側貫通孔列(排出ポート)
(4a,4b) シリンダ列
(41,42) ピストン
(5) 可変斜板

Claims (7)

  1. ピストン(41,42)が収容された複数のシリンダ(24,25)を備えて回転するシリンダブロック(2)と、該シリンダブロック(2)に摺接し、吸入ポート(31)及び円弧状の複数の排出ポート(32,33,34)を備えたバルブプレート(3)と、傾斜角度の調整によりピストン(41,42)の往復動ストロークを変更する可変斜板(5)とを備え
    上記複数の排出ポート (32,33,34) は、上記バルブプレート (3) の吐出側に、内外周方向に配列されている可変容量形ピストンポンプにおいて、
    上記各排出ポート(32,33,34)それぞれの形成領域のうち少なくとも1つ(34)の形成領域は、周方向の角度範囲が、他の排出ポート(32,33)の形成領域における周方向の角度範囲とは異なっていることを特徴とする可変容量形ピストンポンプ。
  2. 請求項1記載の可変容量形ピストンポンプにおいて、
    バルブプレート(3)の各排出ポート(32,33,34)は、シリンダ(24,25)内の圧力変動を抑制するためのノッチ(35,36,37)を有しており、各ノッチ(35,36,37)のうち少なくとも1つのノッチ(37)先端は、周方向の角度位置が、他のノッチ(35,36)先端の上記周方向の角度位置とは異なっていることを特徴とする可変容量形ピストンポンプ。
  3. 請求項1記載の可変容量形ピストンポンプにおいて、
    可変斜板(5)は、ピストン(41,42)を介して受けるポンプ吐出圧と、該吐出圧に反する付勢力を発生する付勢手段(6)の圧力とのバランスにより傾斜角度が調整されることを特徴とする可変容量形ピストンポンプ。
  4. 請求項1記載の可変容量形ピストンポンプにおいて、
    シリンダブロック(2)のシリンダ(24,25)は、回転中心軸(X)を中心とする互いに異なる直径の同心円周位置に形成された外側シリンダ(25)及び内側シリンダ(24)であり、
    上記シリンダブロック(2)のバルブプレート側端面(2a)には、回転中心軸(X)を中心とする互いに異なる直径の同心円周位置に形成された第1,第2及び第3のポート群(21,22,23)が形成されていて、
    内側シリンダ(24)の一部は第1ポート群(21)に、他は第2ポート群(22)にそれぞれ連通している一方、外側シリンダ(25)は第3ポート群(23)に連通しており、
    上記バルブプレート(3)の排出ポート(32,33,34)は、上記第1ポート群(21)に連通する第1排出ポート(32)、第2ポート群(22)に連通する第2排出ポート(33)、第3ポート群(23)に連通する第3排出ポート(34)であることを特徴とする可変容量形ピストンポンプ。
  5. 請求項4記載の可変容量形ピストンポンプにおいて、
    シリンダブロック(2)は、油圧ショベルの原動機の出力を受けて回転する一方、第1排出ポート(32)は油圧ショベルの一方の走行系に、第2排出ポート(33)は油圧ショベルの他方の走行系に、第3排出ポート(34)は油圧ショベルの旋回系にそれぞれ液圧を供給することを特徴とする可変容量形ピストンポンプ。
  6. 請求項4記載の可変容量形ピストンポンプにおいて、
    第3ポート群(23)に対する第3排出ポート(34)の連通開始点の角度位置は、第1及び第2ポート群(23)に対する第1及び第2排出ポート(32,33)の連通開始点の角度位置よりもシリンダブロック回転方向の前側に位置していることを特徴とする可変容量形ピストンポンプ。
  7. 請求項4記載の可変容量形ピストンポンプにおいて、
    第3ポート群(23)に対する第3排出ポート(34)の連通開始点の角度位置は、第1及び第2ポート群(23)に対する第1及び第2排出ポート(32,33)の連通開始点の角度位置よりもシリンダブロック回転方向の後側に位置していることを特徴とする可変容量形ピストンポンプ。
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