JP4134039B2 - シート用クッションパッド及びその製造方法 - Google Patents
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Description
この種のクッションパッドにおいて、座り心地や乗り心地等の向上を目的として、例えば、硬度の異なる2種の発泡ウレタン等の樹脂発泡層を、直接あるいは薄いシート状の補強層を介在させて積層した積層構造のパッドが提案されている。
この積層構造のクッションパッドは、通常、パッド表面を成形する下型と、該下型に対しそれぞれ開閉自在な表層用の第1の上型及び裏層用の第2の上型を備えてなる成形型を用い、先ず、表層としての第1の発泡層を成形し、その後、支持材への取付側になる裏層(下層)としての第2の発泡層を成形して積層することにより製造される(例えば、特開昭62−240091号公報、特開昭63−120610号公報)。
かかるクッションパッドにおいて、表皮材を装着する手段としては、クッションパッドにスリットを形成するとともに、該スリットの溝底近傍にスリットワイヤと称する棒状の係止部材を埋設配置しておいて、該係止部材に対して表皮材に取着された係止手段を係止して固定し、これにより縫製された表皮材の端縁部もしくは縫合部を前記スリットの部分に挟み込んで装着するのが一般的である。
ところで、前記の積層構造のクッションパッドにおいては、表皮材を装着するためのスリット及びワイヤ等の係止部材が、表層となる第1の発泡層に設けられている。例えば、図11に示すように、第1の発泡層41の表面における座部等の中央部41aと、両側部41b,41bとの間に表皮材装着用スリット43が形成されるとともに、該スリット43の溝底43aの近傍に前記係止部材45が埋設されている。
この埋設構造において、前記係止部材45の埋込み代は、前記第2の発泡層42との接合面との間には少なくとも10mm、また前記スリット43の溝底43aとの間には少なくとも5mmは必要とされている。また、成形時における型内での液流れ性を確保し、発泡層の均質性を確保する必要がある。そのため、スリット43の深さは第1の発泡層41の厚みによって制限されることになる。
例えば、図12のように、前記第1の発泡層41と第2の発泡層42とが比較的平坦な面で接合され積層されているもので、前記第1の発泡層41の厚みtが25mmのものにおいて前記の係止部材45を第1の発泡層41に埋設する場合、該発泡層41と前記第2の発泡層42との接合面46に対する前記係止部材45の埋込み代cとして最低10mmを、また前記溝底43aに対する前記係止部材45の埋込み代aとして最低5mmをそれぞれ確保しようとすれば、前記スリット43の深さbは10mmになってしまう。従って、第1の発泡層41の厚みtを薄くした場合には、深溝のスリットを設定することができない。
一方、使用者からはシートの外観的な見栄え向上等のために、スリット43の深溝感を出すことが強く要求されているが、前記のようにスリット深さが制限されることからその要求に応えられないのが実情である。
本発明は、上記に鑑みてなしたものであり、積層構造のクッションパッドとして、各発泡層の厚み配分と、表皮材装着用のスリットの深さの設定の自由度が高く、第1の発泡層の厚みを薄くしても、スリットワイヤ等の係止部材の抜けを防止できる充分な埋込み代を確保して、しかも深溝のスリットを設定することができる、シート用クッションパッドを提供するものであり、さらにはこのクッションバッドを従来と同様の発泡成形により容易に得ることができる製造方法を提供するものである。
このシート用クッションパッドによれば、表層である第1の発泡層におけるスリット形成部位の裏面側が膨らみ形状をなしているため、この膨らみ部分の厚みを利用して、スリット深さを深く設定することが可能になり、第1の発泡層の全体の厚みを大きくしなくても、係止部材の抜け防止のために必要な埋込み代を確保することができる。
したがって、前記の第1の発泡層の膨らみ部分を有することにより、第1の発泡層と第2の発泡層の厚み配分、スリットの深さを、それぞれ任意に設定でき、その設定の自由度を高めることができる。
前記係止部材が、前記第2の発泡層との接合面との間には少なくとも10mmの埋込み代、スリットの溝底との間には少なくとも5mmの埋込み代を、それぞれ保有して埋設されているのが好ましく、これにより、前記のようにスリット深さを深く設定した場合にも、係止部材の抜けを確実に防止できる。
本発明は、前記のシート用クッションパッドを製造する方法として、パッド表面を成形する下型と、該下型に対しそれぞれ開閉自在な表層用の第1の上型及び裏層用の第2の上型を備えてなる成形型を用い、表層としての第1の発泡層と、その裏面に接合される裏層としての第2の発泡層とを順次発泡成形して積層するとともに、前記第1の発泡層に、表皮材装着用のスリットを形成し、該スリットの溝底近傍に棒状の係止部材を埋設する、クッションパッドの製造方法において、前記第1の上型の前記スリット形成部位の裏面側に相当する部分を、型閉じ状態において下型内に配置されるスリット形成片及び係止部材を迂回する上方への膨出形状をなすように形成しておき、前記下型に第1の発泡樹脂原液を注入し前記第1の上型を閉じて前記第1の発泡層を発泡成形する際、前記第1の上型により、第1の発泡層の前記スリット形成部位の裏面側を上方に膨らみを持たせるように成形することを特徴とする。
これにより、従来と同様の成形工程において、第1の発泡層の前記スリット形成部位の裏面側に膨らみを持たせることができる。そして、この第1の発泡層の上に、従来と同様にして第2の発泡層を発泡成形して積層することにより、上記した特徴を有する積層構造のクッションパッドを容易に得ることができる。
図2は、同上のクッションパッドの一部の拡大断面図である。
図3は、同上のクッションパッドを製造する成形型の概略断面図である。
図4は、同上の成形型による第1の発泡層の発泡成形状態を示す図3とは直角方向の断面における一部の拡大断面図である。
図5は、同上の成形型による第2の発泡層の発泡成形状態を示す一部の拡大断面図である。
図6は、本発明に係るクッションパッドの第2の実施例を示す断面図である。
図7は、同上のクッションパッドの一部の拡大断面図である。
図8は、同上のクッションパッドを製造する成形型の下型と第1の上型と第2の上型をそれぞれ分離して示す一部の断面図である。
図9は、同上の成形型による第1の発泡層の発泡成形状態を示す一部の断面図である。
図10は、同上の成形型による第2の発泡層の発泡成形状態を示す一部の断面図である。
図11は、従来のクッションパッドを例示する断面図である。
図12は、同上の一部の拡大断面図である。
図13は、従来のクッションパッドの他の例を示す断面図である。
図14は、同上のクッションパッドを製造する従来の成形型による成形時の一部の断面説明図である。
図1は、本発明に係るクッションパッドの第1の実施例を示す断面図、図2は同クッションパッドの一部の拡大断面図である。
本発明に係るシート用のクッションパッドA1は、硬度の異なる2種の発泡ウレタン等の樹脂発泡層よりなり、図に示すように、使用者との対接側になる表層としての第1の発泡層1と、この第1の発泡層1よりも密度が高くてやや硬く、該第1の発泡層1の裏面に接合される裏層(下層)としての第2の発泡層2とが積層されてなる。図中の1aはパッド表面における座部となる中央部、1b,1bは前記中央部1aよりやや高く盛り上がった両側部を示す。
前記表層としての第1の発泡層1には、パッド表面側の所要の箇所、例えば前記の中央部1aと両側部1b,1bとの間に、表皮材装着用のスリット3が形成され、さらに前記スリット3の溝底近傍にスリットワイヤと称する棒状の係止部材5が埋設配置されており、布地やレザー等の表皮材(図示せず)の端部に有する係止手段を係止することにより、前記スリットに挟み込んだ状態に装着できるようになっている。
前記第1の発泡層1は、前記第2の発泡層2との接合面6が前記スリット形成部位の裏面側において第2の発泡層2側への膨らみ形状をなすように成形されている。すなわち、前記接合面6は、前記スリット形成部位の裏面側で従来形状の接合面位置6a(仮想線で示す)よりも第2の発泡層2側へ凹入する曲線凸形状をなすように成形されている。そして、この凸形の膨らみ部分7により、前記スリット3の深さbを、前記従来形状の接合面位置6aの近くまで、あるいは該位置よりも深く形成した場合にも、該スリット3の溝底3aと前記接合面6との間に所要の間隔を保有して、この部分に埋設される係止部材5が所定以上の埋込み代を保有できるように形成されている。
前記係止部材5の前記接合面6に対する埋込み代cは少なくとも10mm、また前記溝底3aに対する埋込み代aは少なくとも5mmを保有するように、前記膨らみ部分7の高さを設定しておくのがよく、これにより係止部材5の抜けを確実に防止できる。
なお、前記の第1の発泡層1の前記接合面6の膨らみ部分7の形状は、図のような曲線をなすものが好ましいが、断面略台形状等の角張った膨らみ形状をなすものであってもよい。
いずれにしても、前記第1の発泡層1の裏面に積層される第2の発泡層2については、前記膨らみ部分7の形状に対応した凹入形状をなして第1の発泡層1の裏面に全面的に接合され積層一体化される。
前記のクッションパッドA1の製造方法について、その製造に使用する装置と共に以下に説明する。
図3は、前記の積層構造のクッションパッドA1を成形する成形型の概略を示しており、図4及び図5はそれぞれ同上の成形型による第1の発泡層と第2の発泡層の発泡成形状態を示している。
成形型は、前記クッションパッドA1の表裏を反転した状態で成形するものであり、凹形状をなす下型10と、該下型に対し開閉可能な二つの上型、すなわち表層用の第1の上型11と、裏層用の第2の上型12とを備えてなる。各型は、それぞれアルミニウム等の金属材から形成されている。
前記下型10は、パッド表面を成形するものであり、その型内に、表皮材装着用のスリット3を形成するためのスリット形成片13が突設されるとともに、発泡体内部に埋設される係止部材5を脱着可能に固定支持するための固定支持部(図示省略)が設けられている。例えば図1のように座部となる中央部1aと、両側部1b,1bとの間に、スリット3及び係止部材5を設ける場合、該位置に相当する型内の位置に前記スリット形成片及び固定支持部が配設される。
前記第1の上型11と第2の上型12とは、それぞれ前記下型10に対しヒンジ結合されて、交互に型閉じ、型開きできるようになっており、第1の上型11を型閉じした状態で表層としての第1の発泡層1を、また第2の上型12を型閉じした状態で第2の発泡層2を成形するもので、両発泡層1、2を順次発泡成形することにより積層一体化できるようになっている。図中の14a、14bはそれぞれヒンジ結合部を示す。なお、前記両上型11,12の開閉のための機構は、従来と同じものを利用できるので、これらの図示説明は省略する。
本発明において使用する成形型の前記第1の上型11は、前記スリット形成部位の裏面側に相当する部分が、前記下型10に対して型閉じした状態において該下型10内に配置されている前記スリット形成片13及び係止部材5を迂回するように上方へ曲線凸形状に膨出した形状をなしている。17は該第1の上型11の膨出部を示し、上記した第1の発泡層1の膨らみ部分7の形状に対応する。
前記の成形型によりクッションパッドを成形する場合、従来と同様の手順で成形する。先ず、加熱調整された型を開いて、ワイヤ等の係止部材5を固定支持した状態において、下型10の上に、第1の発泡層に適合するように配合した発泡樹脂原液、特にはウレタン原液を注入ヘッド20により所要量注入する。そして前記第1の上型11を閉じて、図4のように発泡成形を行い、発泡体中に前記スリット形成片13及び前記係止部材5を埋設した状態で第1の発泡層1を成形する。また、前記第1の上型11の前記スリット形成部位の裏面側に相当する部分が上方へ膨出した形状をなしているため、前記第1の発泡層1の前記スリット形成部位の裏面側に膨らみ部分7が形成され、この膨らみ部分7に前記係止部材5が埋設される。この膨らみ部分7の高さや形状は、前記第1の上型11の膨出部17によって決定される。従って、該膨出部17の高さを適宜設定することにより、任意の高さや形状の膨らみ部分7を形成できる。
この後、前記第1の上型11を開いて、前記第1の発泡層1の上に、第2の発泡層に適合するように配合した発泡樹脂原液、例えばウレタン原液を所要量注入し、前記第2の上型12を閉じ、図5のように第2の発泡層2を発泡成形し、第1の発泡層1と接合一体化させる。すなわち、第2の発泡層2は、前記第1の発泡層1の裏面側の前記膨らみ部分7に対応した形状に発泡成形されて積層される。
こうして第2の上型12を開いて成形品を取り出せばよく、これにより、硬度を異にする表層になる第1の発泡層1と、その裏面に接合された下層としての第2の発泡層2とからなる、図1に示す積層構造のクッションパッドA1を、従来と同様の成形工程で得ることができる。
このクッションパッドA1は、表層である第1の発泡層1のスリット形成部位の裏面側、すなわち第2の発泡層2との接合面側に膨らみ部分7が形成されているため、この第1の発泡層1の全体の厚みを大きくしなくても、前記の膨らみ部分7の厚みを利用して、スリット3の深さbを深く設定することが可能になり、しかも溝底近傍に配置されている係止部材5が、スリット3の溝底3a及び接合面6に対して必要かつ充分な埋込み代a,cを確保することができる。
したがって、前記の第1の発泡層1の膨らみ部分7を有することにより、第1の発泡層1と第2の発泡層2の厚み配分、スリット3の深さbを、それぞれ任意に設定でき、その設定の自由度を高めることができる。また、第1の発泡層1の全体的な厚みを薄く設定しながら、深溝のスリット3を付与することができる。
次に、本発明のクッションパッドの第2の実施例と、その製造装置について、図6〜図10に基づいて説明する。
この第2の実施例においては、上記同様の積層構造をなすシート用クッションパッドA2において、第1の発泡層1の裏面側の膨らみ部分7の構成とは別に、パッド外周におけるパーティングライン部の凸感や硬さ感等の問題を解決する対策を講じた場合を示している。
すなわち、積層構造のクッションパッドの場合、例えば図13のように、パッド外周には、表層である第1発泡層41と裏層である第2発泡層42との境界線46が現れるとともに、成形型の下型と、第1の上型及び第2の上型との接合部によるパーティングラインPL’が生じる。特に、従来のクッションパッドの場合、図14に鎖線で示すように、成形型の下型60と第1上型61との接合部内端、および下型60と第2上型62との接合部内端が同じ位置にあって、パッド外周面における前記下型60と第1の上型61とによるパーティングラインと、前記下型60と前記第2の上型62とによるパーティングラインとが同じ位置になり、かつ前記境界線46上に位置することになる。そのため、前記のパーティングラインPL’の部分では、前記第1発泡層41を成形した後、前記第2の発泡層42を成形する際に、該第2発泡層用に配合した発泡樹脂原液が第1発泡層41に含浸することによって、該第1発泡層41の前記境界線46に沿う部分が本来の硬さよりも硬くなり、これが、成形品であるクッションパッド外周において凸感及び硬さ感となって現れ、パッドに表皮材を被せた使用状態においても、前記凸感が生じたり、手触りによる異物感となったりして、質感を低下させるおそれがある。この第2の実施例で採用した構造は、前記のパーティングライン部の凸感や硬さ感等の問題を解決する。
なお、この第2の実施例において、第1の発泡層1のスリット形成部位の裏面側に膨らみ部分7を設ける点及びその関連構成、並びにその構成を得るための製造方法等については、上記した第1の実施例の場合と同様であるので、同構成の部位に同じ符号を付し、詳しい説明は省略する。
第2の実施例のクッションパッドA2の特徴的な構成について説明する。前記クッションパッドA2の外周には、成形型によるパーティングラインが形成されるが、図6及び図7に示すように、この第2の実施例のパッド外周におけるパーティングライン部PLは、該ラインに沿って例えば前記第1の発泡層1の側が切欠されることにより溝状の凹部8が形成され、該第1の発泡層1とこれに積層される前記第2の発泡層2とのパッド外周に現れる境界線9が前記凹部8内の、特に内奥部に位置している。また、第1の発泡層1の成形時のパーティングラインL1は、後述するように前記境界線9と同じ位置に形成され、第2の発泡層2の成形時のパーティングラインL2は、前記凹部8の開口端側に形成されている。
前記のクッションパッドA2を得るための製造装置としての成形型は、図3に示す成形型と基本的に同様の構成をなしており、パッド表面側を成形する下型10と、該下型に対し開閉可能な表層用の第1の上型11と、裏層用の第2の上型12とを備えてなる。
そして、図8〜図10に示すように、前記下型10には、その周側部における前記第1の上型11および第2の上型12との接合部16の内周縁に、内方に向かって突出して周方向にリブ状に延びる凸部15が設けられている。この凸部15は、先端部が断面半円状の丸みを有する凸形状のほか、断面略台形状や断面略三角状をなす凸形状であってもよい。
前記の凸部15の突出高さ及び幅は、それぞれ約3〜8mmのものが好ましい。すなわち、前記凸部15の突出高さや幅が前記寸法より小さくなると、該凸部15により凹部8を形成することによる凸感や硬さ感等の防止効果が充分に得られないし、浮き上がり防止効果も少なくなる。また凸部15の幅が小さくなりすぎると、凸部自体の強度が得られないおそれもある。また前記凸部15の突出高さや幅が前記より大きくなると、凸部15により形成される凹部8がかえって外観に凹凸感を生じさせることになり好ましくない。従って前記の効果の点から、凸部の突出高さや幅は5mm前後のものが最も好ましい。
また、前記の凸部15は、前記接合部16の全長に渡って形成する等、少なくともパッド両側部および前部に設けておくのが、外観的に目立ち易い部分のパーティングラインの質感向上等の点から好ましい。もちろん、両側部あるいは前後部のみに設けて実施することもできる。
一方、前記第1の上型11は、前記下型10に対し型閉じした状態において、図9のように、外周部における前記下型10との接合部の内端側が前記凸部15の上面に当接して、該下型10と該第1の上型11との接合部内端18が前記凸部15の先端部に位置するように設けられている。
また、前記第2の上型12は、前記下型10に対し型閉じした状態において、図10のように、外周部における前記下型10との接合部が前記凸部15の上面に当接することなく、該下型10と該第2の上型12との接合部内端19が前記凸部15の基部に位置するように設けられている。
なお、前記下型10の型内の所要の箇所に表皮材装着用のスリット3を形成するスリット形成片13が突設されるほか、スリットワイヤ等の係止部材5の支持部(図示せず)等の、この種のクッションパッドの成形に必要な手段が設けられる。また、第1の上型11には前記スリット形成部位の裏面側に膨らみ部分7を成形するための膨出部17が形成される。
前記の成形型を備える製造装置によれば、従来装置の場合と同様に、下型10と第1の上型11により表層になる第1の発泡層1を、また下型10と第2の上型12とにより裏層になる第2の発泡層2を、それぞれ順次発泡成形して積層し一体化させることにより、前記の特徴を備えるクッションパッドA2を製造できる。その作用動作について説明する。
先ず、加熱調整された型を開いて、下型10の上に、第1の発泡層1に適合するように配合した発泡樹脂原液、特にはウレタン原液を注入ヘッド20により所要量注入する。そして前記第1の上型11を図9のように閉じる。この型閉じ状態においては、該第1の上型11の接合部の内端側が前記凸部15の上に当接し、前記下型10と第1の上型11との接合部内端18が前記凸部15の先端部に位置することになる。そのため、この状態で第1の発泡層1を成形すると、図のように該第1の発泡層1の外周部上端に前記凸部15による凹部8が形成され、前記接合部内端18によるパーティングラインが該凹部8の内奥部に形成されることになる。なお、前記第1の発泡層1のスリット形成部位の裏面側には、第1の実施例の場合と同様に、膨出部17によって膨らみ部分7が形成される。
この成形の後、成形された第1の発泡層1をそのままにして前記第1の上型11を開くが、この際、前記第1の発泡層1の外周部が前記凸部15に係合しているために、該第1の発泡層1が第1の上型11に追従して浮き上がるのを防止でき、該第1の発泡層1を前記下型10内に安定性よく保持しておくことができる。
そして、前記の型開き状態で、前記第1の発泡層1の上に、第2の発泡層に適合するように配合したウレタン原液等の樹脂原液を注入して、さらに前記第2の上型12を閉じ、図10のように第2の発泡層2を成形する。このとき、前記第2の上型12は前記凸部15の上面には当接せず、前記下型10と前記第2の上型12との接合部内端19が該凸部15の上面基部に位置している。従って、第1の発泡層1の上に成形され積層される第2の発泡層2は、図のように前記凸部15の上面を覆う状態で成形されて、パッド外周に該凸部15による溝状の凹部8が形成されるとともに、前記接合部内端19によるパーティングラインが該凹部8の開口端に形成されることになる。
これにより、前記第1の発泡層1と第2の発泡層2が積層一体化されて図6に示す形態のクッションパッドA2が得られる。このクッションパッドA2の外周のパーティングライン部PLにおいては、図7に拡大して示すように、第1の発泡層1の成形時の下型10と第1上型11との接合部内端18によるパーティングラインL1と、第2発泡層2の成形時の下型10と第2の上型12との接合部内端19によるパーティングラインL2とが、前記凹部8の内奥部と開口端とに形成される。また前記接合部内端18によるパーティングラインL1と一致する前記第1の発泡層1と第2の発泡層2との境界線9が、前記凹部8の内奥部に位置し、パッド外周面には現れない。
このため、前記クッションパッドA2は、仮に第2の発泡層2の樹脂原液が第1の発泡層1に含浸することがあっても、パッド外周面において従来のパーティングラインのような凸感や硬さ感は生じず、当該クッションパッドA2に表皮材を被せた使用状態での質感を良好に確保できるものとなる。
特に、前記凸部15が少なくともパッド両側部および前部に設けられていると、これにより得られるクッションパッドA2は、その使用状態において外観的に目立ち易い部分のパーティングライン部PLにおいて、凸感や手触りに異物感を生じさせないものとなる。
なお、上記した実施例においては、凸部15による凹部8を、第1の発泡層1の側に形成した場合を示したが、このほか、前記凸部15により、第1の発泡層1と第2の発泡層2の両者にわたる凹部を形成して実施することもできる。
また、前記の第2の実施例のパーティングライン部PLの構造、すなわち、パーティングラインの凸感および硬さ感等を解消するために、該ラインに沿って溝状の凹部8を設けて、第1の発泡層1の成形時のパーティングラインL1と、第2の発泡層2の成形時のパーティングラインL2とを前記凹部8の内奥部と開口端とに形成する点は、前記第1の発泡層1のスリット形成部位の裏面側に膨らみ部分を有さない形態のクッションパッドにも適用できる。
この第2の実施例のクッションパッド及びその製造装置については、その特徴を次のようにまとめることができる。
(a) 硬度の異なる2種の樹脂発泡層を表裏層とする積層構造のシート用クッションパッドであって、パッド外周におけるパーティングライン部は、該ラインに沿って少なくとも表層としての第1の発泡層の側に溝状の凹部が形成されており、該第1の発泡層とこれに積層される第2の発泡層との境界線が該凹部内に位置しているもの。
(b) 硬度の異なる2種の樹脂発泡層を表裏層とする積層構造のシート用クッションパッドの製造装置であって、パッド表面を成形する下型と、該下型に対しそれぞれ開閉自在な表層用の第1の上型及び裏層用の第2の上型とを備える成形型よりなり、表層としての第1の発泡層と、裏層としての第2の発泡層とを順次発泡成形して積層するようにした製造装置において、前記下型には、前記第1の上型および第2の上型との接合部の内周縁に、内方に向かって突出する凸部が設けられ、該下型と該第1の上型との接合部内端が前記凸部の先端側に、該下型と該第2の上型との接合部内端が前記凸部の上面基部側に位置するように設けられてなるもの。
(c) 前記シート用クッションパッドの製造装置において、前記凸部が少なくともパッド両側部および前部に設けられてなるもの。
(d) 前記シート用クッションパッドの製造装置において、前記凸部の突出高さ及び幅がそれぞれ約3〜8mmであるもの。
Claims (3)
- 硬度の異なる2種の樹脂発泡層を積層した積層構造をなし、表層としての第1の発泡層に、表皮材装着用のスリットが形成され、該スリットの溝底近傍に棒状の係止部材が埋設されてなるクッションパッドであって、
前記第1の発泡層は、前記スリット形成部位における裏面側が、その裏面に接合される第2の発泡層側への膨らみ形状をなすように成形されており、この膨らみ部分により前記係止部材が所定以上の埋込み代を保有して埋設されていることを特徴とするシート用クッションパッド。 - 前記係止部材が、前記第2の発泡層との接合面との間には少なくとも10mmの埋込み代、スリットの溝底との間には少なくとも5mmの埋込み代を、それぞれ保有して埋設されている請求項1に記載のシート用クッションパッド。
- パッド表面を成形する下型と、該下型に対しそれぞれ開閉自在な表層用の第1の上型及び下層用の第2の上型を備えてなる成形型を用い、表層としての第1の発泡層と、その裏面に接合される下層としての第2の発泡層とを順次発泡成形して積層するとともに、前記第1の発泡層に、表皮材装着用のスリットを形成し、該スリットの溝底近傍に棒状の係止部材を埋設する、クッションパッドの製造方法において、
前記第1の上型の前記スリット形成部位の裏面側に相当する部分を、型閉じ状態において下型内に配置されるスリット形成片及び係止部材を迂回する上方への膨出形状をなすように形成しておき、前記下型に第1の発泡樹脂原液を注入し前記第1の上型を閉じて前記第1の発泡層を発泡成形する際、前記第1の上型により、第1の発泡層の前記スリット形成部位の裏面側を上方に膨らみを持たせるように成形することを特徴とするシート用クッションパッドの製造方法。
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