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JP4133586B2 - 平面パネルディスプレイ用スペーサ基材、平面パネルディスプレイ用スペーサ基材の製造方法、平面パネルディスプレイ用スペーサ、及び、平面パネルディスプレイ - Google Patents

平面パネルディスプレイ用スペーサ基材、平面パネルディスプレイ用スペーサ基材の製造方法、平面パネルディスプレイ用スペーサ、及び、平面パネルディスプレイ Download PDF

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JP4133586B2 JP2003146798A JP2003146798A JP4133586B2 JP 4133586 B2 JP4133586 B2 JP 4133586B2 JP 2003146798 A JP2003146798 A JP 2003146798A JP 2003146798 A JP2003146798 A JP 2003146798A JP 4133586 B2 JP4133586 B2 JP 4133586B2
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正弘 伊東
賢一 神宮寺
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、平面パネルディスプレイ用スペーサ基材、平面パネル用ディスプレイ用スペーサ基材の製造方法、平面パネルディスプレイスペーサ、及び、平面パネルディスプレイに関する。
【0002】
【従来の技術】
電界放出型ディスプレイ(FED)は、従来の陰極線管(CRT)を応用した自発光型の平面パネルディスプレイとして知られている。FEDは多くの陰極(電界放出素子)を二次元状に配列してなる陰極構造体を備えており、減圧環境下において陰極から放出される電子を、各蛍光画素領域に衝突させて発光画像を形成している。蛍光画素領域は燐層を含んでなる。
【0003】
この平面パネルディスプレイは、陰極構造体を有する背板を備えている。このような平面パネルディスプレイの一例は特許文献1に記載されている。このディスプレイの背板はガラス板上に陰極構造体を堆積することによって形成される。
【0004】
この平面パネルディスプレイは燐層が堆積されたガラス面板を備えている。ガラスまたは燐層の上には電界印加用の導電性層が堆積される。
【0005】
面板は背板から0.1mm〜1mm乃至2mm離間されている。面板と背板との間には壁体からなる短冊状スペーサが垂直に介在している。このスペーサは正確な位置に配置されることが望ましいが、ディスプレイ内を減圧すると、大気圧によってスペーサには大きな荷重が加えられる。
【0006】
この荷重は10インチのディスプレイでは1トンにも達するといわれている。この荷重によって、スペーサが不整列状態になったり傾斜したりすると、放出された電子が偏向し、ディスプレイ上に目視可能な欠陥が生じる。スペーサは面板及び背板間の非常に大きな圧縮力に耐える必要があり、スペーサ毎の高さは等しく、且つ、平坦である必要もある。また、スペーサの熱膨張率は面板としてのガラス板に近く、且つ、温度依存性も小さくなければならないとされている。
【0007】
また、面板と背板との間には例えば1kV以上の高電圧が印加されるので、スペーサには高電圧に対する耐性と2次放射特性が要求される。従来のスペーサとしては、アルミナからなる絶縁材料を導電材料でコーティングしてなるものや(例えば、特許文献2〜3参照)、酸化物微粒子等により形成された凹凸膜を有するもの(例えば、特許文献4参照)や、遷移金属酸化物が分散されたセラミックよりなるもの(例えば、特許文献5参照)等が知られている。
【特許文献1】
米国特許第5541473号明細書
【特許文献2】
特表2002−508110号公報
【特許文献3】
特表2001−508926号公報
【特許文献4】
特開2001−68042号公報
【特許文献5】
特表平11−500856号公報
【特許文献6】
特表2002−515133号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のスペーサを用いた場合には画像の歪み等が発生する場合があった。本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、画像の歪み等の発生を低減できる平面パネルディスプレイ用スペーサ基材、その製造方法、平面パネルディスプレイ用スペーサ、及び、平面パネルディスプレイを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は鋭意検討した結果、Al23、TiC、及び、TiO2を所定の比率で含有する焼結体がスペーサ基材として好適であることを見出し、本発明に想到するに至った。
【0010】
本発明に係る平面パネルディスプレイ用スペーサ基材は、Al23、TiC、及び、TiO2を含む焼結体を有し、この焼結体はAl23、TiC、及び、TiO2の全重量に対して、TiCを6.5〜10重量%含み、かつ、TiO2を1.0〜2.5重量%含む。
【0011】
本発明に係る平面パネルディスプレイ用スペーサ基材の製造方法は、Al23粉末、TiC粉末、及び、TiO2粉末を、Al23粉末、TiC粉末、及び、TiO2粉末の全重量に対してTiC粉末が6.5〜10重量%、かつ、TiO2粉末が1.0〜2.5重量%となるように混合して混合物を得る工程と、上記混合物を焼成し焼結体を得る工程と、を含む。
【0012】
本発明に係る平面パネルディスプレイ用スペーサは、Al23、TiC、及び、TiO2を含み、Al23、TiC、及び、TiO2の全重量に対して、TiCを6.5〜10重量%、かつ、TiO2を1.0〜2.5重量%含む焼結体から形成されると共に、陰極構造体を有する背板と蛍光画素領域を有する面板との間に介在される。
【0013】
本発明に係る平面パネルディスプレイは、陰極構造体を有する背板と、光画素領域を有する面板と、上記背板及び上記面板間に介在されると共にAl23、TiC、及び、TiO2を含み、Al23、TiC、及び、TiO2の全重量に対して、TiCを6.5〜10重量%、かつ、TiO2を1.0〜2.5重量%含む焼結体から形成された平面パネルディスプレイ用スペーサと、を備える。
【0014】
これらの発明において、焼結体はTiCとAl23とを含む複合セラミクスであり、このような複合セラミクスは高硬度の導電性セラミクスであるアルティック(AlTiC)の性質を示し、圧縮力による変形に耐えることができる。このため、このような焼結体であるスペーサ基材を平面パネルディスプレイ用スペーサとすると、画像の歪み等を低減することができる。
【0015】
さらに、この焼結体は、Al23、TiC、及び、TiO2の全重量に対して、TiCを6.5〜10重量%含み、かつ、TiO2を1.0〜2.5重量%含んでいる。このような焼結体は、この焼結体に印加する電界を0〜10000V/mm程度の範囲で変化させて比抵抗値を測定した場合に、電界が大きくなるにつれて比抵抗値が漸減し、この範囲におけるある電界の大きさを超えると急激に比抵抗値が低下するようなことがない。また、この範囲内でTiCやTiO2の組成を変動させることにより、比抵抗値が約1.0×106Ω・cm〜1.0×1011Ω・cmとなるような焼結体を、容易に得ることができる。このため、このような焼結体を有するスペーサ基材を平面パネルディスプレイ用スペーサとすると、電界が印加されても所望の導電性を示し、帯電が起こりにくくなると共に過電流が流れることによる熱暴走も抑制され、平面パネルディスプレイにおける画像の歪み等をより低減することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
まず、本実施形態に係る平面パネルディスプレイ用スペーサ基材及びその製造方法について説明する。本実施形態においては、平面パネルディスプレイ用スペーサ基材として、Al23(アルミナ)、TiC(炭化チタン)、及び、TiO2(チタニア)を含有し、Al23、TiC、及び、TiO2の全重量に対してTiCを6.5〜10重量%、かつ、TiO2を1.0〜2.5重量%含む複合セラミクス焼結体を用いる。
【0018】
このようなスペーサ基材は、Al23粉末、TiC粉末、及び、TiO2の粉末を、Al23粉末、TiC粉末、及び、TiO2粉末の全重量に対してTiC粉末を6.5〜10重量%、かつ、TiO2粉末を1.0〜2.5重量%含むように混合し、成形し、成形体を所定の温度で焼成し、放冷することにより得られる。
【0019】
以下に、本実施形態に係るスペーサ基材の製造方法について詳しく説明する。まず、原料となる、Al23粉末、TiC粉末、及び、TiO2粉末を用意する。ここで、原料のAl23粉末は、微粉であることが好ましく、平均粒子径が0.1〜1μm、特に0.4〜0.6μmであることが好ましい。またTiC粉末は、微粉であることが好ましく、平均粒子径が0.1〜3μm、特に0.5〜1.5μmであることが好ましい。また、TiO2粉末は、微粉であることが好ましく、平均粒子径が0.1〜3μm、特に0.5〜1μmであることが好ましい。
【0020】
そして、これらの粉末の各々を、Al23粉末、TiC粉末、及び、TiO2粉末の全重量に対して、TiC粉末を6.5〜10重量%、かつ、TiO2粉末を1.0〜2.5重量%含むように混合し、混合粉末を得る。
【0021】
ここで、粉末の混合は、ボールミルやアトライター中で行うことが好ましい。また、好適に混合すべく、水以外の、例えば、エタノール、IPA、95%変性エタノール等を溶剤として用いることが好ましい。また、10〜100時間程度混合することが好ましい。なお、ボールミルやアトライター中の混合メディアとしては、例えば、直径1〜20mm程度の、アルミナボールや、ジルコニアボールを使用することが好ましい。
【0022】
次に、混合された混合粉末を、スプレー造粒する。ここでは、例えば、酸素をほとんど含まない窒素やアルゴン等の不活性ガスの、60〜200℃程度の温風中で噴霧乾燥すればよく、これによって、上記の組成の混合粉末の造粒物が得られる。ここで、例えば、造粒物の粒径は、50μm〜200μm程度が好ましい。
【0023】
次に、必要に応じて溶剤等を添加して造粒物の液体含有量の調節を行い、0.1〜10重量%程度、造粒物中に溶剤が含まれるようにする。
【0024】
次に、この造粒物を所定の型内に充填し、冷間プレスにより一次成形を行って成形体を得る。ここでは、例えば、内径150mmの円板形成用の金属製あるいはカーボン製の型内に造粒物を充填し、例えば、5〜15MPa(50〜150kgf/cm2)程度の圧力で冷間プレスすればよい。
【0025】
続いて、一次成形された成形体をホットプレスし焼結体を得る。ここで、例えば、焼成温度を1200〜1700℃、圧力を10〜50MPa(100〜500MPa)、雰囲気を真空、窒素、アルゴン中とすることが好ましい。なお、非酸化性雰囲気とするのは、TiCの酸化を防ぐためである。また、カーボン製の型を用いることが好ましい。焼結時間は1〜3時間程度が好ましい。
【0026】
そして、外観等を検査した後に、ダイヤモンド砥石等によって機械仕上げ加工を行い、平面パネルディスプレイ用スペーサ基材が完成する。最終的な平面パネルディスプレイ用スペーサ基材の具体的形状は、例えば、直径6インチ、厚み2mm程度の円板状の基板である。
【0027】
このようにして得られるスペーサ基材は、TiCとAl23とを含む複合セラミクス焼結体であるので高硬度の導電性セラミクスであるアルティック(AlTiC)の性質を示し、圧縮力による変形に耐えることができる。このため、平面パネルディスプレイのスペーサとして用いると、スペーサが不整列状態になったり傾斜したりしにくくなり、画像の歪みが低減される。
【0028】
さらに、このスペーサ基材は、Al23、TiC、及び、TiO2の全重量に対して、TiCの含有量が6.5〜10重量%、かつ、TiO2の含有量が1.0〜2.5重量%となる焼結体である。このようなスペーサ基材は、このこのスペーサ基材に印加する電界を0〜10000V/mm程度まで変化させて比抵抗値を測定すると、この範囲内では電界が大きくなるにつれて比抵抗値が漸減し、この範囲内におけるある電界の大きさを超えると急激に比抵抗値が低下するようなことがない。また、この範囲内でTiCやTiO2の組成を変動させることにより、比抵抗値が約1.0×106Ω・cm〜1.0×1011Ω・cmとなるようなスペーサ基材を、容易に得ることができる。
【0029】
このため、このようなスペーサ基材を平面パネルディスプレイのスペーサとして用いると、電界が印加されても所望の導電性を示し、帯電が起こりにくくなる。このため、帯電による電子軌道の偏向が抑制されると共に、過電流が流れることによる熱暴走も抑制され、平面パネルディスプレイにおける画像の歪み等をより低減することができる。
【0030】
ここで、TiCの含有量が6.5重量%を下回る、または、10重量%を超えると、電界が10000V/mmに達する前に、比抵抗値が急減する。また、TiO2の含有量が1.0重量%を下回る、または、2.5重量%を超えると、スペーサ基材の比抵抗値を、スペーサの比抵抗値として好適とされる1.0×106〜1.0×1011Ω・cmとすることが困難となる。そして、例えば、比抵抗値がこの範囲を超えて高くなりすぎると、帯電が起こりやすくなって歪み等が発生する場合がある。また、比抵抗値がこの範囲を下回って低くなりすぎると、過電流が流れて熱暴走する場合がある。
【0031】
なお、本実施形態に係る焼結体の組成範囲では、例えば、TiCやTiO2の組成が変動した場合における、焼結体の比抵抗値の変動が比較的少ない。このため、1×106〜1×1011Ωcm程度の比抵抗値のスペーサ基材を、比抵抗値のバラツキを少なくしつつ高い歩留まりで容易に製造することができる。
【0032】
次に、本実施形態に係るスペーサ基材の実施例について説明する。
【0033】
(実施例1−1〜実施例1−4)
まず、Al23粉末(平均粒径0.5μm、純度99.9%)、TiC粉末(平均粒径0.5μm、純度99%、炭素含有量19%以上でその1%以下は遊離黒鉛である)、及び、TiO2粉末(平均粒径0.1μm)を各々所定量秤量し、ボールミル中でエタノールと共に30分粉砕混合し、窒素中で150℃でスプレー造粒し造粒物を得た。ここで、実施例1−1〜実施例1−4において、Al23粉末、TiC粉末、及び、TiO2粉末を合わせた全重量に対して、TiO2粉末の含有量をいずれも1.0重量%とした。また、全重量に対するTiC粉末の含有量を、実施例1−1において10.0重量%、実施例1−2において8.0重量%、実施例1−3において7.0重量%、実施例1−4において6.5重量%とした。
【0034】
続いて、これらの混合物を各々約0.5MPa(50kgf/cm2)で一次成形し、ホットプレス法によって真空雰囲気で1時間、焼結温度1600℃、プレス圧力約30MPa(約300kgf/cm2)で焼成し各々の実施例についてスペーサ基材を得た。
【0035】
(比較例1−1、比較例1−2)
全重量に対するTiO2の含有量を何れも実施例1−1と同様に1.0重量%とする一方、全重量に対するTiCの含有量を、各々12.0重量%、6.0重量%とする以外は、実施例1−1と同様にして比較例1−1、比較例1−2のスペーサ基材を得た。実施例1−1〜実施例1−4と、比較例1−1、比較例1−2における各成分の組成ついて図1の表に示す。
【0036】
(実施例2−1〜実施例2−4)
TiO2の含有量を全て1.5%とすると共に、TiCの含有量を各々実施例1−1〜実施例1−4と同様に、実施例2−1から順に、10.0重量%、8.0重量%、7.0重量%、6.5重量%とする以外は実施例1−1と同様にして、実施例2−1〜実施例2−4のスペーサ基材を各々得た。
【0037】
(比較例2−1、比較例2−2)
TiO2の含有量を何れも実施例2−1と同様に1.5重量%とし、TiCの含有量を、各々12.0重量%、6.0重量%として混合する以外は、実施例2−1と同様にして比較例2−1、比較例2−2のスペーサ基材を得た。実施例2−1〜実施例2−4と、比較例2−1、比較例2−2における各成分の組成ついて図2の表に示す。
【0038】
(実施例3−1〜実施例3−4)
TiO2の含有量を全て2.0重量%とすると共に、TiCの含有量を各々実施例1−1〜実施例1−4と同様に、実施例3−1から順に、10.0重量%、8.0重量%、7.0重量%、6.5重量%とする以外は実施例1−1と同様にして、実施例3−1〜実施例3−4のスペーサ基材を各々得た。
【0039】
(比較例3−1、比較例3−2)
TiO2の含有量を何れも実施例3−1と同様に2.0重量%とし、TiCの含有量を、各々12.0重量%、6.0重量%として混合する以外は、実施例3−1と同様にして比較例3−1、比較例3−2のスペーサ基材を得た。実施例3−1〜実施例3−4と、比較例3−1、比較例3−2における各成分の組成ついて図3の表に示す。
【0040】
(実施例4−1〜実施例4−4)
TiO2の含有量を全て2.5重量%とすると共に、TiCの含有量を各々実施例1−1〜実施例1−4と同様に、実施例4−1から順に、10.0重量%、8.0重量%、7.0重量%、6.5重量%とする以外は実施例1−1と同様にして、実施例4−1〜実施例4−4のスペーサ基材を各々得た。
【0041】
(比較例4−1、比較例4−2)
TiO2の含有量を何れも実施例3−1と同様に2.5重量%とし、TiCの含有量を、各々12.0重量%、6.0重量%として混合する以外は、実施例4−1と同様にして比較例4−1、比較例4−2のスペーサ基材を得た。実施例4−1〜実施例4−4と、比較例4−1、比較例4−2における各成分の組成ついて図4の表に示す。
【0042】
(比較例5−1〜比較例5−5)
TiO2の含有量を全て0.5重量%とすると共にTiCの含有量を実施例5−1から順に、10.0重量%、8.0重量%、7.0重量%、6.5重量%、6.0重量%、とする以外は実施例1−1と同様にして、比較例5−1〜比較例5−5のスペーサ基材を各々得た。比較例5−1〜比較例5−5における各成分の組成について図5の表に示す。
【0043】
(比較例6−1〜比較例6−5)
TiO2の含有量を3.0重量%とすると共にTiCの含有量を実施例6−1から順に、12.0重量%、10.0重量%、8.0重量%、7.0重量%、6.5重量%、6.0重量%とする以外は実施例1−1と同様にして、比較例6−1〜比較例6−7のスペーサ基材を各々得た。比較例6−1〜比較例6−5における各成分の組成について図6の表に示す。
【0044】
また、このようにして得られた各スペーサ基材について、種々の電界を印加することにより測定されたスペーサ基材の比抵抗値を図1〜図6の表に各々示す。また、TiO2の含有量が1.5重量%であるスペーサ基材(実施例2−1〜2−4、及び、比較例2−1〜2−2)における、印加する電界と比抵抗値との関係を図7に示す。さらに、TiCの含有量およびTiO2の含有量と、10000V/mmの電界を印加した時のスペーサ基材の比抵抗値と、の関係を図8に示す。
【0045】
図7よりわかるように、TiCの含有量が6重量%以下となる場合(比較例2−1)やTiCの含有量が12重量%以上となる場合(比較例2−2)は、0〜10000V/mmの電界の大きさの範囲内で、電界の大きさが所定の値を超えると比抵抗値が急減してしまうのに対し、TiCの含有量が6.5%重量以上10重量%以下(実施例2−1〜実施例2−4)であれば、電界が0〜10000V/mmの範囲内で、比抵抗値は急減せず漸減するのみである。
【0046】
このことは、TiO2の含有量を1.0%にした場合(実施例1−1〜実施例1−4、比較例1−1、比較例1−2)、TiO2の含有量を2.0%にした場合(実施例3−1〜実施例3−4、比較例3−1、比較例3−2)、TiO2の含有量を2.5%にした場合(実施例4−1〜実施例4−4、比較例4−1、比較例4−2)等でも各々同様であることが図1から図6の表によって理解される。
【0047】
一方、図8より明らかなように、TiCの含有量が6.5%重量以上10重量%以下である場合、比較例5−1〜比較例5−5のようにTiO2の含有量が0.5重量%以下となる場合や、比較例6−1〜比較例6−5のようにTiO2の含有量が約3.0重量%以上となる場合には、スペーサ基材の比抵抗値を、平面パネルディスプレイ用スペーサとして好ましい比抵抗値である1.0×106Ω・cm〜1.0×1011Ω・cmにすることが困難である。
【0048】
これに対して、実施例1−1〜実施例1−4、実施例2−1〜実施例2−4、実施例3−1〜実施例3−4、実施例4−1〜実施例4−4、のように、TiO2の含有量が1.0重量%以上かつ2.5重量%以下の場合には、TiCやTiO2の組成をこの範囲で調節することによりスペーサ基材の比抵抗値を平面パネルディスプレイ用スペーサとして好ましい比抵抗値である1.0×106Ω・cm〜1.0×1011Ω・cmにすることができる。
【0049】
また、上述の実施例のスペーサ基材は、密度3.9〜4.2g/cm2、ビッカーズ強度2000〜2200(Hv20)、抗折強度500〜800MPa、ヤング率380〜410GPa、熱伝導率22〜33W/mK、熱膨張係数 7.0×10-6〜7.3×10-6[1/℃]であって、強度等いずれの観点からも、平面パネルディスプレイのスペーサ基材として好ましいことが確認された。
【0050】
さらに、本実施形態に係る焼結体の組成範囲では、例えば、TiCの組成が1重量%程度変動しても、比抵抗値が1×102倍程度以下しか変動せず、また、TiO2の組成が0.5%程度変動した場合でも、比抵抗値は1×102倍程度以下しか変動しない。このため、TiO2やTiCの組成に製造上の誤差等が発生しても、製造されるスペーサ基材の比抵抗値の変動が比較的少なくなる。このため、1×106〜1×1011Ωcm程度の比抵抗値のスペーサ基材を高い歩留まりで容易に得ることができる。
【0051】
次に、上述のスペーサ基材から形成される平面パネルディスプレイ用スペーサと、このスペーサが適用される平面パネルディスプレイであるFEDの概要について説明する。
【0052】
図9は平面パネルディスプレイ10の平面図、図10は平面パネルディスプレイ10のX−X矢印断面図、図11は平面パネルディスプレイ面板側内部構造を示す平面パネルディスプレイ側面図である。
【0053】
ガラス製の面板101上には、ブラックマトリックス構造体102が形成されている。ブラックマトリックス構造体102は燐層からなる複数の蛍光画素領域を含んでいる。燐層は高エネルギー電子が衝突すると、光を放出して可視ディスプレイを形成する。特定の蛍光画素領域から発した光は、ブラックマトリックス構造を介して外部に出力される。ブラックマトリックスは、互いに隣接する蛍光画素領域からの光の混合を抑制するための格子状黒色構造体である。
【0054】
面板101上には、その表面に対して垂直に立設した壁体であるスペーサ103−119が取り付けられている。
【0055】
面板101上にはスペーサ103〜119(103,104,105,106,107,108,109,110,111,112,113,114,115,116,117,118,119)を介して背板201が設けられる(図10参照)。スペーサ103〜119は、面板101と背板201との間の間隔を均等に保持している。背板201の能動領域面は陰極構造体202を含んでいる。この陰極構造体202は電子を放出するための突起からなる陰極(電界(電子)放出素子)を複数有している。
【0056】
陰極構造体202の形成領域は背板201の面積よりも小さい。面板101の外周領域と背板201の外周領域との間にはガラスシール203が介在しており、中央部に密閉室を提供している。この密閉室内は電子が飛行可能な程度に減圧されている。また、この密閉室内には、陰極構造体202、ブラックマトリックス構造体102及びスペーサ103〜119が配置されることとなる。シール203は融解ガラスフリットによって形成される。
【0057】
なお、全てのスペーサ103〜119の構造は同一であるので、以下では、一つのスペーサ103に着目して説明を行う。
【0058】
スペーサ(平面パネルディスプレイ用スペーサ)103は、図11に示すように、その長手方向の両端に設けられた接着剤301,302によって面板101に固定されている。本例の接着剤301,302の材料はUV硬化性ポリイミド接着剤であるが、熱硬化性接着剤または無機接着剤を使用することができる。なお、接着剤301,302はブラックマトリックス構造体102の外側に配置される。
【0059】
次に、スペーサ103について詳説する。
【0060】
図12はスペーサ103の製造方法の一例を説明するための説明図である。このスペーサの製造方法は、上述の陰極構造体(202)を有する背板(201)と蛍光画素領域(ブラックマトリックス構造体102)を有する面板(101)との間に介在する平面パネルディスプレイ用スペーサを製造する方法である。このスペーサ103は、例えば、以下の工程▲1▼〜▲7▼を順次実行することによって製造することができる。
▲1▼上述の複合セラミクス焼結体の基板(平面パネルディスプレイ用スペーサ基材)A103を用意する(図12(a))。
▲2▼次に、基板A103の両面に、膜厚が数nm〜1μm、材料がTi,Au,Cr,Pt等の金属からなる金属膜Mをスパッタリング法によって形成する(図12(b)。なお、この金属膜Mは分離後には金属膜mとして記載する。
▲3▼基板A103の平面形状が四角形となるように周囲を切断し、周辺部を除去する(図12(c))。
▲4▼基板A103の厚み(D)よりも小さい間隔(W)で基板を短冊状に切断し、これらの短冊体を分離し、しかる後、洗浄を行う(図12(d))。
▲5▼短冊状に切断されてなる短冊体の切断面を、全て短冊体の切断面に垂直な方向の寸法Wが300±50μm以内となるように同時に研磨する(図12(e))。
▲6▼スペーサ103の厚み方向及びスペーサ103の長手方向を含む平面に平行な端面上に金属膜eをパターニングして形成する(図12(f))。この形成には、まず、この端面を洗浄し、続いて、この端面上にスパッタリング法によってTi,Au,Cr,Pt等の金属膜を100nm堆積し、ドライエッチング用のマスクを金属膜上にパターニングした後、イオンミリングによって当該金属膜をエッチングし、金属膜eを形成する。なお、金属膜eの長手方向はスペーサ103の長手方向に一致する。
【0061】
また、厚み方向Dに関し、金属膜eのスペーサ103の一端部からの距離D1、金属膜eの寸法D2、金属膜eのスペーサ103の他端部からの距離D3は、製品公差及び誤差が±5μm以内となるように設定される。
▲7▼複数の短冊体の前記端面とは反対側の端面を同時に研磨し、その幅W1を50〜100μmから選択される値に設定する(図12(g))。この値が小さいほどスペーサ103は目立たないが、圧縮力に耐えにくくなる傾向があるため、本例では50〜100μmから選択して設定する。なお、上述の研磨とは、機械研磨及び/又は化学研磨を含むものとする。
【0062】
また、いずれの工程においても、その平坦度は少なくとも50μm以下に抑制される。
【0063】
このスペーサ103は、上述の焼結体、すなわち、Al23とTiCとTiO2とを含み、Al23及びTiC及びTiO2を合わせた重量を100重量%としたときにTiCを6.5重量%以上10重量%以下、かつ、TiO2を1.0重量%以上2.5重量%以下含む複合セラミクス焼結体である。このため、上述したように、圧縮力による変形に耐え、また電界が印加されても所望の導電性を示し、帯電や熱暴走が起こりにくくなるので、画像の歪みを効果的に抑制することができる。
【0064】
また、このスペーサ103は、厚み方向の両端面に金属膜mを有する。この金属膜mは、切断前に形成された金属膜Mの一部分である。この金属膜mは、背板及び面板との接触抵抗の面内不均一性等を低減させ、スペーサ全体としての抵抗率、導電率の設定に寄与する。
【0065】
上述のスペーサ103は直方体であるが、これは厚み方向及び長手方向を含む平面に平行な端面を有し、この端面上にパターニングされた金属膜eを有している。このパターンは内部電界分布を規定するものであるが、その基板厚み方向に沿った形成位置精度は、厚み方向の精度が高いため、元々の基板表面に形成した場合の形成位置精度よりも高くすることができる。
【0066】
なお、上述のスペーサは反射型のFEDにも適用することができる。また、上述のスペーサ基材は特性に大きな影響を与えない程度に他の材料を含んでいてもよい。
【0067】
【発明の効果】
上述したように、本発明によれば、画像の歪み等の発生をより低減できる平面パネルディスプレイ用スペーサ基材、その製造方法、平面パネルディスプレイ用スペーサ、及び、平面パネルディスプレイが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1−1〜1−4、及び、比較例1−1〜1−2のスペーサ基材の組成及び特性を示す図表である。
【図2】実施例2−1〜2−4、及び、比較例2−1〜2−2のスペーサ基材の組成及び特性を示す図表である。
【図3】実施例3−1〜3−4、及び、比較例3−1〜3−2のスペーサ基材の組成及び特性を示す図表である。
【図4】実施例4−1〜4−4、及び、比較例4−1〜4−2のスペーサ基材の組成及び特性を示す図表である。
【図5】比較例5−1〜5−5のスペーサ基材の組成及び特性を示す図表である。
【図6】比較例6−1〜6−5のスペーサ基材の組成及び特性を示す図表である。
【図7】実施例2−1〜2−4、及び、比較例2−1〜2−2におけるスペーサ基材の比抵抗と印加電圧との関係を示す図である。
【図8】TiCの添加量と印加電界10000V/mmの時のスペーサ基材の比抵抗値との関係を示す図である。
【図9】平面パネルディスプレイの平面図である。
【図10】平面パネルディスプレイのX−X矢視断面図である。
【図11】平面パネルディスプレイ面板側の内部構造を示す平面パネルディスプレイ側面図である。
【図12】スペーサの製造方法を説明するための説明図である。
【符号の説明】
10…平面パネルディスプレイ、101…面板、102…ブラックマトリックス構造、102…ブラックマトリックス構造体、103…スペーサ(平面パネルディスプレイ用スペーサ)、201…背板、202…陰極構造体、203…ガラスシール、301,302…接着剤、A103…基板(平面パネルディスプレイ用スペーサ基材)、e…金属膜、M…金属膜、m…金属膜。

Claims (4)

  1. Al23、TiC、及び、TiO2を含む焼結体を有し、前記焼結体はAl23、TiC、及び、TiO2の全重量に対して、TiCを6.5〜10重量%含み、かつ、TiO2を1.0〜2.5重量%含む、平面パネルディスプレイ用スペーサ基材。
  2. Al23粉末、TiC粉末、及び、TiO2粉末を、Al23粉末、TiC粉末、及び、TiO2粉末の全重量に対してTiC粉末が6.5〜10重量%、かつ、TiO2粉末が1.0〜2.5重量%となるように混合して混合物を得る工程と、
    前記混合物を焼成し焼結体を得る工程と、
    を含む平面パネルディスプレイ用スペーサ基材の製造方法。
  3. Al23、TiC、及び、TiO2を含み、Al23、TiC、及び、TiO2の全重量に対して、TiCを6.5〜10重量%、かつ、TiO2を1.0〜2.5重量%含む焼結体から形成されると共に、陰極構造体を有する背板と蛍光画素領域を有する面板との間に介在される平面パネルディスプレイ用スペーサ。
  4. 陰極構造体を有する背板と、
    蛍光画素領域を有する面板と、
    前記背板及び前記面板間に介在されると共に、Al23、TiC、及び、TiO2を含み、Al23、TiC、及び、TiO2の全重量に対して、TiCを6.5〜10重量%、かつ、TiO2を1.0〜2.5重量%含む焼結体から形成された平面パネルディスプレイ用スペーサと、
    を備える平面パネルディスプレイ。
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