JP4132467B2 - Production method of vinyl alcohol polymer - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はビニルアルコール系重合体の製法に関する。さらに詳しくは、ビニルエステル系重合体をアルコールを主成分とする溶媒中で特定の条件下にけん化するビニルアルコール系重合体の製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ポリビニルアルコール(以下、ポリビニルアルコールをPVAと略記する)は、数少ない結晶性の水溶性高分子として、優れた造膜性、透明性、強度特性及び界面活性を有することから、紙用コーティング剤及び紙用内添剤などの紙用改質剤、紙、木材及び無機物等の接着剤、経糸糊剤、乳化重合や懸濁重合用の安定剤、各種バインダー等に幅広く利用されているほか、ポリビニルアルコール系フィルムやポリビニルアルコール系繊維及びポリビニルアルコール系シート等の原料として重要な地位を占めている。
【0003】
PVAは、通常、塩基性触媒を用いて、ポリ酢酸ビニル(以下、ポリ酢酸ビニルをPVAcと略記する)のけん化反応により製造されている。例えば、米国特許第2642419号明細書には、濃度24〜40重量%のPVAcのメタノール溶液と苛性ソーダのメタノール溶液との混合物を、沸点以下の温度で連続的にベルトコンベア上に供給し、PVAcのけん化反応により生成するゲル状物を粉砕及び乾燥してPVAとする方法が開示されており、特公昭45−33191号及び特公昭46−9826号明細書には、アルカリ触媒の存在下、重合体の濃度が1%以下になるように連続的に供給して行うけん化方法により、まずPVAcをメタノール溶液中で10〜40モル%のけん化度までけん化し、次いでさらに97〜98.5モル%までけん化し、反応生成物を抜き取り、脱液及び乾燥してPVAを得る方法が開示されている。
【0004】
また、英国特許第1199651号明細書には、界面活性剤を用いて分散重合して得られた平均粒径0.05〜50μmのPVAcを非水性分散液中でアルカリ触媒を用いてけん化し、 PVAの微粒子を得る方法、特開平8−188619号明細書には、特定の条件で分散させたPVAcを、アルカリ触媒(0.01〜0.03モル比)の存在下、温度40℃、PVAc濃度20〜50重量%でけん化する方法が知られている(以下、この条件下に行うけん化を常法によるけん化という)。さらに、特願平8−138240号明細書には、けん化度20〜60モル%の低けん化度PVAとPVAcを混合した溶液をニーダー等を使用してけん化し、水への溶解性に優れたPVAを製造する方法が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これら公知のPVAの製法では、いずれも触媒の存在下に、溶媒の沸点以下の温度でけん化反応を行うものであり、けん化反応時に酢酸ソーダ等の不純物が副生され、得られるPVAにはこれらの不純物が含有される。最近、特開平10−265507号明細書で、電子吸引基を有するポリマーを、高温高圧のアルコールと接触させることにより水酸基を導入する方法が提案されている。この方法は、高温高圧のアルコールのポリマーに対する溶解力、ポリマー粒子内部への浸透力などを利用するものであり、水酸基を効率的に導入することが期待できる方法ではあるが、この方法により、効率的に水酸基を導入することはできるものの、上述した不純物の問題は依然として解決されない。したがって、本発明の目的は、けん化触媒に由来する酢酸ソーダ等の不純物を含有せず、生産性にも優れる工業的に有利なビニルアルコール系重合体の製法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、けん化反応に係る温度、圧力、及び流体の密度について詳細に検討した結果、アルコールを主成分とする溶媒中、触媒の不存在下において、特定の温度、圧力、及び流体密度でビニルエステル系重合体をけん化することによって上記目的を達成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、アルコールを主成分とする溶媒中、触媒の不存在下において、該溶媒の臨界温度(Tc)+5℃〜295℃の温度、該溶媒の臨界圧力(Pc)〜40MPaの圧力、反応開始時の流体密度0.1〜0.4g/cm 3 でビニルエステル系重合体をけん化することを特徴とするビニルアルコール系重合体の製法である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられるビニルエステル系重合体としては、公知のビニルエステル系重合体全てを使用することができる。このようなビニルエステル系重合体としては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル及びバーサティック酸ビニル等のビニルエステル系単量体の重合体をあげることができる。工業的実施の点からは酢酸ビニルが好ましく、反応効率の点からは、ピバリン酸ビニルが好ましい。
【0008】
本発明のビニルエステル系重合体は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、ビニルエステル単位と共重合可能な他の単量体単位を含有していてもよい。このような単位としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン等のα−オレフィン類、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド等のアクリルアミド誘導体、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド誘導体、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、エチレングリコールビニルエーテル、1,3−プロパンジオールビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテル等のヒドロキシ基含有のビニルエーテル類、アリルアセテート、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル等のアリルエーテル類、オキシアルキレン基を有する単量体、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル類、酢酸イソプロペニル、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等のヒドロキシ基含有のα−オレフィン類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等に由来するスルホン酸基を有する単量体;ビニロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシブチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシエチルジメチルアミン、ビニロキシメチルジエチルアミン、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドジメチルアミン、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルアミン、アリルエチルアミン等に由来するカチオン基を有する単量体、ポリオキシアルキレン基を有すアリルエーテル類、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸または無水イタコン酸等に由来するカルボキシル基を有する単量体、アクリル酸及びその塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸及びその塩、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル等のメタクリル酸エステル類、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド等のアクリルアミド誘導体、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド誘導体、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド誘導体があげられる。
【0009】
これらの単量体の含有量は、使用される目的や用途等によって異なるが、通常20モル%以下、好ましくは10モル%以下である。とくに、上記単量体の単位がエチレンの場合、エチレンの含有量は通常60モル%以下である。さらに、本発明で用いられるビニルエステル系重合体は、2−メルカプトエタノール、n−ドデシルメルカプト、3−メルカプトプロピオン酸などのチオール化合物の存在下で、酢酸ビニルなどのビニルエステル系単量体を重合することによって得られる末端変性物でもよい。
【0010】
ビニルエステル系単量体の重合の方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の方法があげられる。その中でも、無溶媒あるいはアルコールなどの溶媒中で重合を行う塊状重合法や溶液重合法が通常採用される。溶液重合時に溶媒として使用されるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどの低級アルコールがあげられる。本発明のビニルアルコール系重合体の製法においては、アルコールを主成分とする溶媒を用いることが必須となることから、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法が適し、アルコールを溶媒として用いた溶液重合法が最も好ましい。
【0011】
重合開始剤としては、α,α'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−バレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、nープロピルパーオキシカーボネート、シクロヘキシルパーオキシカーボネートなどのアゾ系開始剤または過酸化物系開始剤などの公知の開始剤を使用することができる。重合温度についてはとくに制限はないが、通常0℃〜200℃の範囲で実施される。
【0012】
けん化反応時に溶媒として使用されるアルコールとしては、とくに制限はないが、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどの低級アルコールが好ましく、工業的実施の見地からメチルアルコールがとくに好ましい。本発明の製法において、これらのアルコールは混合して使用してもよく、水、ヘキサンなどのアルカン類、二酸化炭素、エタン、ブタンなどの炭化水素などを本発明の効果を阻害しない範囲で使用してもよい。また、けん化反応速度を調整するために、不活性物質を使用してもよい。
【0013】
けん化反応時のビニルエステル系重合体の濃度は、ビニルエステル系重合体の重合度やけん化反応の条件にもよるが、あまり低いと生産性が低下し、またあまり高いと溶液の粘度が高くなり、作業性が低下したり、副生成物であるエステルとビニルエステル系重合体とのアルコリシスが平衡反応により十分にけん化反応が進まない場合があるので、好ましくは0.1〜50重量%、さらに好ましくは0.1〜40重量%、さらに好ましくは0.2〜30重量%で実施するのが望ましい。
【0014】
けん化反応の温度は、Tc+5℃〜295℃で実施する必要があり、Tc+10℃〜290℃がより好ましい。けん化反応温度が臨界温度(Tc)+10℃未満の場合は、けん化反応速度が小さく、本発明の目的とする生産性が得られない。一方、けん化反応温度が295℃より高い場合は、原料であるビニルエステル系重合体及び得られるビニルアルコール系重合体の熱分解が起こり、分子量の低下や架橋によるゲル化及び着色が起こることがある。
【0015】
けん化反応の圧力は、Pc〜40MPaで実施する必要があり、Pc+0.5MPa〜35MPaが好ましく、Pc+1MPa〜30MPaがより好ましく、Pc+1.5MPa〜20MPaがさらに好ましい。けん化反応圧力が臨界圧力未満の場合には、けん化反応速度が小さく、本発明の目的とする生産性が得られない。一方、けん化反応圧力が40MPaより大きい場合には、けん化反応速度が大きすぎてけん化度の制御が困難となったり、原料であるビニルエステル系重合体及び得られるビニルアルコール系重合体の分解が起こることがある。
【0016】
本発明のビニルアルコール系重合体の製法において、ビニルエステル系重合体をけん化反応する時の反応系の流体密度は、アルコールのポリマーに対する溶解度及び浸透力を発現させる因子となる点で重要であり、反応開始時の流体密度を0.1〜0.4g/cm3で実施する必要がある。反応系の流体密度が0.1g/cm3未満の場合には、アルコールのポリマーに対する溶解度及び浸透力が不足して、高い生産性が得られない。一方、反応系の流体密度が0.4g/cm3より大きい場合には、けん化反応速度が大きすぎてけん化度の制御が困難となったり、圧力が高くなりすぎることがある。反応系の流体密度は0.12〜0.38g/cm3とするのが好ましく、0.14〜0.36g/cm3とするのがさらに好ましい。
【0017】
けん化反応の時間は、使用する溶媒、重合体の濃度、けん化反応の温度及び圧力によって異なるのでとくに制限はないが、PVAの生産性、原料であるビニルエステル系重合体及び得られるビニルアルコール系重合体の分解を抑制する点から、下記の式(I)を満足するようにけん化反応を行うのが好ましい。
−T/60+5.1≦t≦−5T/3+520 (I)
ここで、tはけん化反応時間(分)を表し、Tはけん化反応の温度(℃)を表す。
【0018】
けん化反応の時間をあまり長くすると、生産性が低下すると同時に原料であるビニルエステル系重合体及び得られるビニルアルコール系重合体の分解が起こることがあるので、PVAを工業的に有利に製造する観点からはけん化反応の時間は短い方が好ましい。具体的なけん化反応の時間としては、60分間以下が好ましく、30分間以下がより好ましい。10分間以下で実施するとさらに好ましい。けん化反応の速度を大きくするには、例えば、原料であるビニルエステル系重合体及び得られるビニルアルコール系重合体の分解を抑制しながら、けん化反応温度、けん化反応圧力及びけん化反応時間を前記の範囲内で厳しく制御すればよい。
【0019】
本発明の方法は、ビニルエステル系重合体を高温高圧のアルコールを主成分とする流体中でけん化反応を行うための耐圧性の容器、冷却器及びこれらに付随する各種の機器から構成される反応装置を使用して実施することができる。本発明のけん化方法としてはバッチ法や連続法などの方法が適用可能である。けん化反応系中に酸素が存在する場合には、分解によるPVA系重合体の着色や重合度の低下がおこる場合があるので、十分に脱酸素を行うことが好ましい。本発明のPVA系重合体の製法は、特定の条件下でアルコールを主成分とする流体中で触媒を添加することなくビニルエステル系重合体をけん化することを特徴とし、得られたPVA系重合体は、けん化触媒に由来するアルカリ金属及びアルカリ土類金属などの不純物を実質的に含有しない。
【0020】
本発明のビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度(以下、重合度(P)と略記する)はとくに制限はないが、通常20〜20000であり、30〜15000が好ましく、40〜10000がさらに好ましく、50〜8000がとくに好ましい。重合度が20未満の場合にはPVAの機械的強度が小さく、PVA系重合体の特徴である皮膜の強度、伸度が小さくなったり、バインダー力が小さくなったりしてPVA系重合体本来の特徴が損なわれる傾向がある。重合度が20000を越えると、原料である高重合度のビニルエステル系重合体を工業的に製造することができなかったり、ビニルエステル系重合体のアルコール溶液の粘度が高くなり、作業性に難があるため好ましくない。
【0021】
PVA系重合体の重合度(P)は、JIS−K 6726に準じて測定される。すなわち、PVA系重合体を再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](dl/g)から次式(II)により求められるものである。P=([η]×103/8.29)(1/0.62) (II)
本発明のビニルアルコール系重合体のけん化度についてもとくに制限はないが、通常20モル%以上である。上記PVA系重合体の特徴を発現させる点から好ましいけん化度は25〜99.99モル%であり、30〜99.98モル%がより好ましい。
【0022】
本発明の製法で得られるPVA系重合体は、固体状である。固体状のPVA系重合体の形状及び粒度は、けん化反応の条件、攪拌や取り出し等の設備特性、PVA系重合体の重合度及びけん化度等によって任意に制御可能である。さらに、PVA系重合体を洗浄することも可能である。洗浄液としては、メタノール、アセトン、酢酸メチル、酢酸エステル、ヘキサン、水などがあげられ、これらの中でもメタノール、酢酸メチル、水の単独もしくは混合液を使用するのが好ましい。洗浄液の量は目的に応じて適宜設定されるが、通常、PVA100重量部に対して、30〜10000重量部が好ましく、50〜3000重量部がより好ましい。洗浄温度としては、5〜80℃が好ましく、20〜70℃がより好ましい。洗浄時間としては20分間〜10時間が好ましく、1時間〜6時間がより好ましい。洗浄方法としてはバッチ法や向流洗浄法など公知の方法が適用可能である。
【0023】
本発明の製法で得られるPVA系重合体には、本発明の目的や効果を損なわない範囲で、必要に応じて充填材、銅化合物等の等の加工安定剤、耐候安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、他の可塑剤樹脂、潤滑剤、香料、発泡剤、消臭剤、増量剤、剥離剤、離型剤、補強材、防かび剤、防腐剤、結晶化速度遅延剤などの通常の添加剤を適宜配合することができる。
【0024】
本発明の製法で得られるビニルアルコール系重合体は、公知のPVA系重合体の用途に使用することができる。具体的には、繊維糊剤、繊維処理剤、繊維加工剤、繊維製品用サイズ剤、紙のクリアーコーテイング、紙の顔料コーティング剤、紙の内添サイズ剤、感熱紙のオーバーコート用バインダー等の紙加工剤、感圧接着剤、防曇剤、塗料、有機及び無機顔料用の分散剤、染料等の有機化合物の分散剤、エマルジョン用重合分散安定剤、塩ビ用重合分散安定剤、紙や木材及びプラスチックなどの接着剤、不織布用バインダー、繊維用バインダー、セラミックス用バインダー、石膏ボードや繊維板などの各種建材用バインダー、セメントやモルタル用添加剤、ホットメルト接着剤、画像形成材料、感光性樹脂、ホルマール樹脂やブチラール樹脂等のポリビニルアセタール用原料、ゲル用基材、フィルム、繊維、シート、成形物(フィルム、繊維、シート、チューブ、不織布など)、土壌改良剤などに用いることができる。また、単独あるいは無変性PVAや他の変性PVAとの併用、でんぷん(及びその変性物)、セルロース誘導体、ガム類、ゼラチン、カゼイン等の他種ポリマーとの併用、可塑剤と併用して利用してもよい。
【0025】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、得られたPVA系重合体の分析はとくに記載のない限りはJIS−K6726に従って行った。本発明により得られたPVA系重合体のけん化度は、d6―DMSO溶媒にて500MHzの1H―NMR(JEOL GX―500)装置を使用し、4.1〜4.7ppmの水酸基と1.9〜2.0ppmのアセチル基の値から求めた。
【0026】
重合度は得られたPVAを大過剰のメタノールに浸し、ポリマーに対する水酸化ナトリウムのモル比0.5以上の水酸化ナトリウムを添加し、60℃で2時間加熱した後に、メタノールソックスレーを2日間実施し、次いで60℃で1日間乾燥したけん化度99.5モル%以上のPVAを用いて30℃、水中で測定した極限粘度から算出した。得られたPVAの着色は、60℃で1日間乾燥した後に目視で判断した。また、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量は原子吸光法で求めた。
【0027】
【実施例】
実施例1
内容積50mlの耐圧容器に、メタノールを使用した溶液重合により製造したPVAc(常法のアルカリけん化により重合度1700のPVAとなる)の30重量%メタノール溶液0.40g及びメタノール11.60gを仕込み、5℃に冷却して攪拌しながら窒素バブリングを30分間行った。次いで、耐圧容器を260℃のシリコーン浴に浸し、圧力を16MPaに保持し、7分後に反応器をシリコーン浴から取り出し急冷した。内容物を取り出し、60℃で1日間乾燥した。生成物は白色の固体状であり、d6―DMSOに溶解し、NMRでけん化度を測定したところ97.3モル%であった。NMRにより測定した結果を図1に示す。
【0028】
該PVAを10gのメタノールに浸し、ポリ酢酸ビニル中の酢酸ビニルユニットに対してモル比0.30のアルカリ溶液(NaOHの10重量%メタノール溶液)を添加して60℃、2時間のけん化を行った。次いで、メタノールソックスレーを2日間実施した後、60℃で1日間乾燥してけん化度99.9モル%の重合度測定用の乾燥PVAを得た。30℃、水中で測定した極限粘度から求めた該PVAの重合度は1690であり、常法のけん化で得られるPVAの重合度と同一であった。得られたPVAのアルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量を原子吸光法で測定したところ、含有量は0であった。
【0029】
比較例1
けん化反応の温度を310℃、圧力を24MPaに変更する以外は実施例1と全く同様にしてけん化反応を実施した。反応後の重合体を実施例1と全く同様にして処理したものは褐色の粉体であった。この重合体は90℃のDMSOに不溶であった。
【0030】
実施例2〜5、比較例2〜3及び参考例
けん化反応条件を表1及び表2に示す条件に変更した以外は、実施例1と同様にしてけん化反応、後処理及び得られた重合体の分析を行った。得られたPVAの結果を表2に示す。本発明の製法により得られたPVAは白色であった。一方、臨界温度より低い温度で反応を実施した場合には、けん化度は0モル%であり原料のポリ酢酸ビニルと全く同一であった。また、圧力を45MPaにした場合には、90℃のDMSOに不溶物が残った。
【0031】
比較例4
けん化触媒に水酸化ナトリウムを使用して表1及び表2に示す条件でけん化反応を実施した。反応後の重合体を実施例1と全く同様にして処理したものは褐色の粉体であった。この重合体は90℃のDMSOに不溶であった。
【0032】
実施例6〜7
実施例1の溶媒をメタノールからi−プロパノール及びメタノール/水の混合溶媒に変更し、表1及び表2に示す条件を採用して実施例1と同様にしてけん化反応、後処理及び得られた重合体の分析を行った。結果を表2に示す。アルコールを主体とする溶媒ではメタノールと同様にけん化反応が起こることがわかる。
【0033】
実施例8
けん化反応の時間を2時間に延長する以外は実施例2と全く同様にしてけん化反応、後処理及び得られた重合体の分析を行った。結果を表2に示す。反応時間を延長することにより、けん化度は高くなっていたが、得られたPVAは黄色に着色し、PVAの重合度は1540であり、ポリマーは若干分解していた。
【0034】
実施例9〜12
ポリ酢酸ビニルに代えて、エチレンを共重合した酢酸ビニル共重合体(実施例9〜10)、N−ビニルアセトアミドを共重合した酢酸ビニル系共重合体(実施例11)及びポリピバリン酸ビニル(実施例12)をビニルエステル系重合体に用いて、表1及び表2に示す条件でけん化反応を実施し、実施例1と全く同様にして後処理及び得られた重合体の分析を行った。結果を表2に示す。通常のけん化条件ではけん化されにくいコモノマーを共重合したビニルエステル系重合体及びポリピバリン酸ビニルでも、本発明の方法によればポリマーが分解することなくけん化反応が可能であることがわかる。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【発明の効果】
本発明により、けん化触媒に由来する酢酸ソーダなどの不純物を含有せず、生産性にも優れるビニルアルコール系重合体の製法を提供することができる。また、本発明によれば、ビニルアルコール系重合体の製造プロセスを簡略化することができ、産業上の有用性が大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製法により得られたPVAをd6―DMSO溶媒にて500MHz の1H―NMRを使用して分析したチャートである。[0001]
[Industrial application fields]
The present invention relates to a method for producing a vinyl alcohol polymer. More specifically, the present invention relates to a method for producing a vinyl alcohol polymer in which a vinyl ester polymer is saponified in a solvent containing alcohol as a main component under specific conditions.
[0002]
[Prior art]
Conventionally, polyvinyl alcohol (hereinafter, polyvinyl alcohol is abbreviated as PVA) is one of the few crystalline water-soluble polymers, and has excellent film-forming properties, transparency, strength properties, and surface activity. Widely used in paper modifiers such as adhesives and paper additives, adhesives such as paper, wood and inorganics, warp glues, stabilizers for emulsion polymerization and suspension polymerization, various binders, etc. It occupies an important position as a raw material for polyvinyl alcohol films, polyvinyl alcohol fibers and polyvinyl alcohol sheets.
[0003]
PVA is usually produced by a saponification reaction of polyvinyl acetate (hereinafter, polyvinyl acetate is abbreviated as PVAc) using a basic catalyst. For example, in US Pat. No. 2,642,419, a mixture of a methanol solution of PVAc having a concentration of 24 to 40% by weight and a methanol solution of caustic soda is continuously fed onto a belt conveyor at a temperature below the boiling point. JP-A-45-33191 and JP-B-46-9826 disclose a method of pulverizing and drying a gel-like material produced by a saponification reaction to form a PVA. In the saponification method, the PVAc is saponified in a methanol solution to a saponification degree of 10 to 40 mol%, and then further increased to 97 to 98.5 mol%. A method is disclosed in which PVA is obtained by saponification, extraction of the reaction product, draining and drying.
[0004]
In addition, in British Patent No. 1199651, PVAc having an average particle size of 0.05 to 50 μm obtained by dispersion polymerization using a surfactant is saponified using an alkali catalyst in a non-aqueous dispersion, In a method for obtaining fine particles of PVA, Japanese Patent Application Laid-Open No. 8-188619, PVAc dispersed under specific conditions is prepared in the presence of an alkali catalyst (0.01 to 0.03 molar ratio) at a temperature of 40 ° C. and PVAc. A method of saponification at a concentration of 20 to 50% by weight is known (hereinafter, saponification performed under this condition is referred to as saponification by a conventional method). Furthermore, in Japanese Patent Application No. 8-138240, a solution obtained by mixing a low saponification degree PVA and PVAc having a saponification degree of 20 to 60 mol% using a kneader or the like was used, and was excellent in solubility in water. A method of manufacturing PVA is disclosed.
[0005]
[Problems to be solved by the invention]
However, in these known methods for producing PVA, the saponification reaction is performed at a temperature below the boiling point of the solvent in the presence of a catalyst. Impurities such as sodium acetate are by-produced during the saponification reaction, and the resulting PVA is obtained. Contains these impurities. Recently, Japanese Patent Application Laid-Open No. 10-265507 has proposed a method of introducing a hydroxyl group by bringing a polymer having an electron-withdrawing group into contact with a high-temperature and high-pressure alcohol. This method utilizes the dissolving power of high-temperature and high-pressure alcohol in the polymer and the penetrating power into the polymer particles, and is a method that can be expected to introduce a hydroxyl group efficiently. Although the hydroxyl group can be introduced, the above-mentioned problem of impurities still cannot be solved. Accordingly, an object of the present invention is to provide a process for producing an industrially advantageous vinyl alcohol polymer which does not contain impurities such as sodium acetate derived from a saponification catalyst and is excellent in productivity.
[0006]
[Means for Solving the Problems]
In order to achieve the above-mentioned object, the present inventors have studied in detail the temperature, pressure, and fluid density involved in the saponification reaction. As a result, in the absence of a catalyst in a solvent containing alcohol as a main component, The present inventors have found that the above object can be achieved by saponifying a vinyl ester polymer at temperature, pressure, and fluid density, and have completed the present invention. That is, in the present invention, in a solvent containing alcohol as a main component, in the absence of a catalyst, the solvent has a critical temperature ( Tc) of + 5 ° C. to 295 ° C. , and the solvent has a critical pressure (Pc) of 40 MPa. a method of vinyl alcohol polymer, which comprises saponifying the vinyl ester polymer in fluid density 0.1 to 0.4 g / cm 3 at the start of the reaction.
[0007]
DETAILED DESCRIPTION OF THE INVENTION
As the vinyl ester polymer used in the present invention, all known vinyl ester polymers can be used. Examples of such vinyl ester polymers include vinyl formate, vinyl acetate, vinyl propionate, vinyl valelate, vinyl caprate, vinyl laurate, vinyl stearate, vinyl benzoate, vinyl pivalate and versatic acid. Examples thereof include polymers of vinyl ester monomers such as vinyl. From the point of industrial implementation, vinyl acetate is preferable, and from the point of reaction efficiency, vinyl pivalate is preferable.
[0008]
The vinyl ester polymer of the present invention may contain other monomer units copolymerizable with the vinyl ester unit as long as the effects of the present invention are not impaired. Examples of such units include α-olefins such as ethylene, propylene, 1-butene, isobutene, and 1-hexene, acrylamide derivatives such as acrylamide, N-methylacrylamide, and N-ethylacrylamide, methacrylamide, and N-methylmethacrylate. Amides, methacrylamide derivatives such as N-ethylmethacrylamide, methyl vinyl ether, ethyl vinyl ether, n-propyl vinyl ether, i-propyl vinyl ether, vinyl ethers such as n-butyl vinyl ether, ethylene glycol vinyl ether, 1,3-propanediol vinyl ether, Hydroxy group-containing vinyl ethers such as 1,4-butanediol vinyl ether, allyl acetate, propyl allyl ether, butyl allyl ether, hexyl allyl Allyl ethers such as ether, monomers having an oxyalkylene group, vinylsilyls such as vinyltrimethoxysilane, isopropenyl acetate, 3-buten-1-ol, 4-penten-1-ol, 5-hexene-1 Hydroxy groups-containing α-olefins such as -ol, 7-octen-1-ol, 9-decen-1-ol, 3-methyl-3-buten-1-ol, ethylene sulfonic acid, allyl sulfonic acid, meta Monomers having a sulfonic acid group derived from allylsulfonic acid, 2-acrylamido-2-methylpropanesulfonic acid, etc .; vinyloxyethyltrimethylammonium chloride, vinyloxybutyltrimethylammonium chloride, vinyloxyethyldimethylamine, vinyloxymethyl Diethylamine, N-acrylamidomethylto Monomer having a cationic group derived from methylammonium chloride, N-acrylamidoethyltrimethylammonium chloride, N-acrylamidodimethylamine, allyltrimethylammonium chloride, methallyltrimethylammonium chloride, dimethylallylamine, allylethylamine, polyoxyalkylene group Monomers having a carboxyl group derived from fumaric acid, maleic acid, maleic acid, itaconic acid, maleic anhydride or itaconic anhydride, acrylic acid and its salts, methyl acrylate, ethyl acrylate, acrylic Acrylic acid esters such as n-propyl acid, i-propyl acrylate, methacrylic acid and salts thereof, methyl methacrylate, ethyl methacrylate, n-propyl methacrylate, meta Methacrylic acid esters such as i-propyl crylate, acrylamide derivatives such as acrylamide, N-methyl acrylamide and N-ethyl acrylamide, methacrylamide derivatives such as methacrylamide, N-methyl methacrylamide and N-ethyl methacrylamide, N- Examples thereof include N-vinylamide derivatives such as vinylformamide and N-vinylacetamide.
[0009]
The content of these monomers varies depending on the purpose and application used, but is usually 20 mol% or less, preferably 10 mol% or less. In particular, when the monomer unit is ethylene, the ethylene content is usually 60 mol% or less. Furthermore, the vinyl ester polymer used in the present invention polymerizes vinyl ester monomers such as vinyl acetate in the presence of thiol compounds such as 2-mercaptoethanol, n-dodecyl mercapto and 3-mercaptopropionic acid. It may be a terminally modified product obtained by
[0010]
Examples of the polymerization method of the vinyl ester monomer include known methods such as a bulk polymerization method, a solution polymerization method, a suspension polymerization method, and an emulsion polymerization method. Among them, a bulk polymerization method or a solution polymerization method in which polymerization is performed without solvent or in a solvent such as alcohol is usually employed. Examples of the alcohol used as a solvent during solution polymerization include lower alcohols such as methyl alcohol, ethyl alcohol, and propyl alcohol. In the production method of the vinyl alcohol polymer of the present invention, it is essential to use a solvent containing alcohol as a main component. Therefore, bulk polymerization, solution polymerization, and suspension polymerization are suitable, and alcohol is used as a solvent. The solution polymerization method is most preferred.
[0011]
As polymerization initiators, α, α′-azobisisobutyronitrile, 2,2′-azobis (2,4-dimethyl-valeronitrile), benzoyl peroxide, n-propyl peroxycarbonate, cyclohexyl peroxycarbonate Known initiators such as azo-based initiators or peroxide-based initiators can be used. Although there is no restriction | limiting in particular about superposition | polymerization temperature, Usually, it implements in 0 to 200 degreeC.
[0012]
The alcohol used as a solvent during the saponification reaction is not particularly limited, but lower alcohols such as methyl alcohol, ethyl alcohol, and propyl alcohol are preferable, and methyl alcohol is particularly preferable from the viewpoint of industrial implementation. In the production method of the present invention, these alcohols may be used as a mixture, and water, alkanes such as hexane, hydrocarbons such as carbon dioxide, ethane, and butane are used within a range that does not impair the effects of the present invention. May be. An inert substance may be used to adjust the saponification reaction rate.
[0013]
The concentration of the vinyl ester polymer during the saponification reaction depends on the degree of polymerization of the vinyl ester polymer and the conditions of the saponification reaction, but if it is too low, the productivity decreases, and if it is too high, the viscosity of the solution increases. The saponification reaction may not sufficiently proceed due to the equilibrium reaction of the alcoholysis between the ester and the vinyl ester polymer as a by-product, and the workability is reduced. It is desirable to carry out at 0.1 to 40% by weight, more preferably 0.2 to 30% by weight.
[0014]
The temperature of the saponification reaction needs to be carried out at Tc + 5 ° C. to 295 ° C., and more preferably Tc + 10 ° C. to 290 ° C. When the saponification reaction temperature is less than the critical temperature (Tc) + 10 ° C. , the saponification reaction rate is low, and the target productivity of the present invention cannot be obtained. On the other hand, when the saponification reaction temperature is higher than 295 ° C. , thermal decomposition of the vinyl ester polymer as a raw material and the resulting vinyl alcohol polymer may occur, and gelation and coloring due to molecular weight reduction or crosslinking may occur. .
[0015]
The pressure of the saponification reaction needs to be carried out at Pc to 40 MPa, preferably Pc + 0.5 MPa to 35 MPa, more preferably Pc + 1 MPa to 30 MPa, and further preferably Pc + 1.5 MPa to 20 MPa. When the saponification reaction pressure is less than the critical pressure, the saponification reaction rate is low, and the target productivity of the present invention cannot be obtained. On the other hand, when the saponification reaction pressure is higher than 40 MPa, the saponification reaction rate is too high to control the degree of saponification, or the vinyl ester polymer as a raw material and the resulting vinyl alcohol polymer are decomposed. Sometimes.
[0016]
In the production method of the vinyl alcohol polymer of the present invention, the fluid density of the reaction system when the saponification reaction of the vinyl ester polymer is important in that it becomes a factor for expressing the solubility and penetrating power of the alcohol in the polymer. It is necessary to carry out the fluid density at the start of the reaction at 0.1 to 0.4 g / cm 3 . When the fluid density of the reaction system is less than 0.1 g / cm 3 , the solubility and osmotic power of the alcohol in the polymer are insufficient, and high productivity cannot be obtained. On the other hand, if the fluid density of the reaction system is greater than 0.4 g / cm 3 , the saponification reaction rate may be too high, making it difficult to control the degree of saponification, or the pressure may be too high. Fluid density of the reaction system may preferably be 0.12~0.38g / cm 3, more preferably to a 0.14~0.36g / cm 3.
[0017]
The time for the saponification reaction varies depending on the solvent used, the concentration of the polymer, the temperature and pressure of the saponification reaction, and is not particularly limited. However, the productivity of PVA, the vinyl ester polymer used as a raw material, and the obtained vinyl alcohol polymer weight From the viewpoint of suppressing decomposition of the coalescence, it is preferable to carry out the saponification reaction so as to satisfy the following formula (I).
-T / 60 + 5.1≤t≤-5T / 3 + 520 (I)
Here, t represents the saponification reaction time (minutes), and T represents the temperature (° C.) of the saponification reaction.
[0018]
If the time for the saponification reaction is too long, the productivity is lowered, and at the same time, the vinyl ester polymer as a raw material and the resulting vinyl alcohol polymer may be decomposed. It is preferable that the saponification reaction time is short. The specific saponification reaction time is preferably 60 minutes or less, and more preferably 30 minutes or less. More preferably, it is carried out for 10 minutes or less. In order to increase the speed of the saponification reaction, for example, the saponification reaction temperature, the saponification reaction pressure, and the saponification reaction time are controlled within the above ranges while suppressing the decomposition of the raw material vinyl ester polymer and the resulting vinyl alcohol polymer. It may be strictly controlled within.
[0019]
The method of the present invention is a reaction comprising a pressure-resistant container, a cooler, and various devices associated therewith for conducting a saponification reaction of a vinyl ester polymer in a fluid mainly composed of high-temperature and high-pressure alcohol. It can be implemented using an apparatus. As the saponification method of the present invention, methods such as a batch method and a continuous method are applicable. When oxygen is present in the saponification reaction system, the PVA polymer may be colored or the degree of polymerization may be reduced due to decomposition. Therefore, it is preferable to sufficiently deoxygenate. The process for producing a PVA polymer of the present invention is characterized in that a vinyl ester polymer is saponified without adding a catalyst in a fluid containing alcohol as a main component under specific conditions. The coalescence is substantially free of impurities such as alkali metals and alkaline earth metals derived from the saponification catalyst.
[0020]
The viscosity average degree of polymerization (hereinafter abbreviated as polymerization degree (P)) of the vinyl alcohol polymer of the present invention is not particularly limited, but is usually 20 to 20000, preferably 30 to 15000, more preferably 40 to 10,000. 50 to 8000 is particularly preferable. When the degree of polymerization is less than 20, the mechanical strength of the PVA is small, the strength and elongation of the film, which are the characteristics of the PVA polymer, and the binder force are reduced. Features tend to be impaired. When the degree of polymerization exceeds 20000, the vinyl ester polymer having a high degree of polymerization, which is a raw material, cannot be produced industrially, or the viscosity of the alcohol solution of the vinyl ester polymer becomes high, making it difficult to work. This is not preferable.
[0021]
The degree of polymerization (P) of the PVA polymer is measured according to JIS-K 6726. That is, after re-saponifying and purifying the PVA polymer, the intrinsic viscosity [η] (dl / g) measured in water at 30 ° C. is obtained by the following formula (II). P = ([η] × 10 3 /8.29) (1 / 0.62) (II)
Although there is no restriction | limiting in particular also about the saponification degree of the vinyl alcohol-type polymer of this invention, Usually, it is 20 mol% or more. A preferable saponification degree is 25-99.99 mol%, and 30-99.98 mol% is more preferable from the point which expresses the characteristic of the said PVA-type polymer.
[0022]
The PVA polymer obtained by the production method of the present invention is solid. The shape and particle size of the solid PVA polymer can be arbitrarily controlled by the conditions of the saponification reaction, the equipment characteristics such as stirring and taking out, the degree of polymerization and the degree of saponification of the PVA polymer. Furthermore, it is possible to wash the PVA polymer. Examples of the cleaning liquid include methanol, acetone, methyl acetate, acetic acid ester, hexane, and water. Among these, it is preferable to use methanol, methyl acetate, water alone or a mixed liquid. The amount of the cleaning liquid is appropriately set depending on the purpose, but is usually preferably 30 to 10,000 parts by weight and more preferably 50 to 3000 parts by weight with respect to 100 parts by weight of PVA. As washing | cleaning temperature, 5-80 degreeC is preferable and 20-70 degreeC is more preferable. The washing time is preferably 20 minutes to 10 hours, and more preferably 1 hour to 6 hours. As a cleaning method, a known method such as a batch method or a countercurrent cleaning method can be applied.
[0023]
In the PVA polymer obtained by the production method of the present invention, a processing stabilizer such as a filler and a copper compound, a weathering stabilizer, a colorant, and the like, as long as the purpose and effect of the present invention are not impaired. UV absorbers, light stabilizers, antioxidants, antistatic agents, flame retardants, plasticizers, other plasticizer resins, lubricants, fragrances, foaming agents, deodorants, extenders, release agents, release agents, Ordinary additives such as reinforcing materials, fungicides, preservatives, and crystallization rate retarders can be appropriately blended.
[0024]
The vinyl alcohol polymer obtained by the production method of the present invention can be used for the use of a known PVA polymer. Specifically, fiber paste, fiber treatment agent, fiber processing agent, textile product sizing agent, paper clear coating, paper pigment coating agent, paper internal sizing agent, thermal paper overcoat binder, etc. Paper processing agents, pressure-sensitive adhesives, anti-fogging agents, paints, dispersants for organic and inorganic pigments, dispersants for organic compounds such as dyes, polymerization dispersion stabilizers for emulsions, polymerization dispersion stabilizers for vinyl chloride, paper and wood Adhesives such as plastics, binders for nonwoven fabrics, binders for fibers, binders for ceramics, binders for various building materials such as gypsum board and fiberboard, additives for cement and mortar, hot melt adhesives, image forming materials, photosensitive resins , Raw materials for polyvinyl acetal such as formal resin and butyral resin, base material for gel, film, fiber, sheet, molded product (film, fiber, sheet Tubes, such as a nonwoven fabric) may be used for soil improvement agent. It can also be used alone or in combination with non-modified PVA and other modified PVA, in combination with other polymers such as starch (and modified products thereof), cellulose derivatives, gums, gelatin, casein, and plasticizers. May be.
[0025]
EXAMPLES Hereinafter, although an Example and a comparative example demonstrate this invention further in detail, unless otherwise indicated, the analysis of the obtained PVA polymer was performed according to JIS-K6726. The degree of saponification of the PVA polymer obtained according to the present invention was determined by using a 500 MHz 1 H-NMR (JEOL GX-500) apparatus in a d 6 -DMSO solvent and a hydroxyl group of 4.1 to 4.7 ppm and 1 It calculated | required from the value of acetyl group of 0.9-2.0 ppm.
[0026]
The degree of polymerization was obtained by immersing the obtained PVA in a large excess of methanol, adding sodium hydroxide with a molar ratio of sodium hydroxide to polymer of 0.5 or more, heating at 60 ° C. for 2 hours, and then performing methanol soxhlet for 2 days. Then, it was calculated from the intrinsic viscosity measured in water at 30 ° C. using PVA having a saponification degree of 99.5 mol% or more dried at 60 ° C. for 1 day. The coloration of the obtained PVA was judged visually after drying at 60 ° C. for 1 day. The content of alkali metal and alkaline earth metal was determined by atomic absorption method.
[0027]
【Example】
Example 1
A pressure-resistant container having an internal volume of 50 ml was charged with 0.40 g of a 30 wt% methanol solution of PVAc produced by solution polymerization using methanol (which becomes a PVA having a polymerization degree of 1700 by conventional alkali saponification) and 11.60 g of methanol. Nitrogen bubbling was performed for 30 minutes while cooling to 5 ° C. and stirring. Next, the pressure vessel was immersed in a 260 ° C. silicone bath, the pressure was maintained at 16 MPa, and after 7 minutes, the reactor was removed from the silicone bath and rapidly cooled. The contents were removed and dried at 60 ° C. for 1 day. The product was a white solid, dissolved in d 6 -DMSO, and the degree of saponification measured by NMR was 97.3 mol%. The result measured by NMR is shown in FIG.
[0028]
The PVA is immersed in 10 g of methanol, an alkali solution (molar solution of NaOH of 10% by weight) of 0.30 is added to the vinyl acetate unit in polyvinyl acetate, and saponification is performed at 60 ° C. for 2 hours. It was. Subsequently, methanol Soxhlet was carried out for 2 days and then dried at 60 ° C. for 1 day to obtain a dry PVA for measuring the degree of polymerization having a saponification degree of 99.9 mol%. The degree of polymerization of the PVA determined from the intrinsic viscosity measured in water at 30 ° C. was 1690, which was the same as the degree of polymerization of PVA obtained by a conventional saponification. When the content of alkali metal and alkaline earth metal in the obtained PVA was measured by atomic absorption spectrometry, the content was 0.
[0029]
Comparative Example 1
The saponification reaction was carried out in the same manner as in Example 1 except that the temperature of the saponification reaction was changed to 310 ° C. and the pressure was changed to 24 MPa. The polymer after the reaction was treated in the same manner as in Example 1 was a brown powder. This polymer was insoluble in 90 ° C. DMSO.
[0030]
Examples 2 to 5 , Comparative Examples 2 to 3 and Reference Example Saponification reaction, post-treatment and polymer obtained in the same manner as in Example 1 except that the saponification reaction conditions were changed to the conditions shown in Tables 1 and 2. Was analyzed. The results of the obtained PVA are shown in Table 2. PVA obtained by the production method of the present invention was white. On the other hand, when the reaction was carried out at a temperature lower than the critical temperature, the degree of saponification was 0 mol%, which was exactly the same as the raw material polyvinyl acetate. In addition, when the pressure was 45 MPa, insoluble matter remained in 90 ° C. DMSO.
[0031]
Comparative Example 4
The saponification reaction was carried out under the conditions shown in Tables 1 and 2 using sodium hydroxide as the saponification catalyst. The polymer after the reaction was treated in the same manner as in Example 1 was a brown powder. This polymer was insoluble in 90 ° C. DMSO.
[0032]
Examples 6-7
The solvent of Example 1 was changed from methanol to a mixed solvent of i-propanol and methanol / water, and the conditions shown in Table 1 and Table 2 were adopted and saponification reaction, post-treatment and obtained were performed in the same manner as in Example 1. The polymer was analyzed. The results are shown in Table 2. It can be seen that a saponification reaction occurs in a solvent mainly composed of alcohol as in the case of methanol.
[0033]
Example 8
The saponification reaction, post-treatment and analysis of the obtained polymer were performed in the same manner as in Example 2 except that the saponification reaction time was extended to 2 hours. The results are shown in Table 2. By extending the reaction time, the degree of saponification increased, but the obtained PVA was colored yellow, the degree of polymerization of PVA was 1540, and the polymer was slightly decomposed.
[0034]
Examples 9-12
Instead of polyvinyl acetate, a vinyl acetate copolymer copolymerized with ethylene (Examples 9 to 10 ), a vinyl acetate copolymer copolymerized with N-vinylacetamide (Example 11 ), and vinyl polypivalate (implemented) Using Example 12 ) as a vinyl ester polymer, a saponification reaction was carried out under the conditions shown in Table 1 and Table 2, and the post-treatment and analysis of the resulting polymer were performed in exactly the same manner as in Example 1. The results are shown in Table 2. It can be seen that a saponification reaction can be carried out without decomposing the polymer according to the method of the present invention, even with a vinyl ester polymer and vinyl polypivalate copolymerized with a comonomer that is difficult to saponify under normal saponification conditions.
[0035]
[Table 1]
[0036]
[Table 2]
[0037]
【The invention's effect】
The present invention can provide a method for producing a vinyl alcohol polymer that does not contain impurities such as sodium acetate derived from a saponification catalyst and is excellent in productivity. In addition, according to the present invention, the process for producing a vinyl alcohol polymer can be simplified, and industrial utility is great.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a chart obtained by analyzing PVA obtained by the production method of the present invention using 500 MHz 1 H-NMR in a d 6 -DMSO solvent.
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