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JP4132381B2 - 太繊度ポリエステルフィラメントの直接紡糸延伸方法 - Google Patents

太繊度ポリエステルフィラメントの直接紡糸延伸方法 Download PDF

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JP4132381B2 JP09994199A JP9994199A JP4132381B2 JP 4132381 B2 JP4132381 B2 JP 4132381B2 JP 09994199 A JP09994199 A JP 09994199A JP 9994199 A JP9994199 A JP 9994199A JP 4132381 B2 JP4132381 B2 JP 4132381B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、単糸繊度が3デニ−ル以上の太繊度ポリエステルフィラメントの直接紡糸延伸法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルフィラメントの直接紡糸延伸法は、一般的に紡糸口金から吐出したフィラメントを油剤を付与しながら集束し、一定速度で引き取りながら供給ロ−ラへ糸条を導き、ガラス転移点温度付近まで予熱した後、熱セットロ−ラへ導いて、供給ロ−ラと熱セットロ−ラ間で目的とする倍率で延伸し、巻取機へ導いてパッケ−ジの形成を行なう連続した糸条の製造方法である。
【0003】
この直接紡糸延伸法を用いて、供給ロ−ラに導かれる糸条速度が2500m/分以上で、延伸糸を構成する単糸が3デニ−ル未満の場合は、得られる延伸糸に品位的な欠点は見られないが、糸条速度が2500m/分未満で、延伸糸を構成する単糸が3デニ−ル以上の場合は、未延伸糸の配向度が高まらず、歪みが大きい状態で加熱供給ロ−ラ上を通過するため、延伸中に斑が発生し、糸斑や染斑など品質面での欠点が生じるだけではなく、単糸切れを誘発し、糸切れや毛羽を発生する。
【0004】
このため、特開昭60−104516号公報には、供給ロ−ラの前に糸条の張力調整装置を設けて0.03〜0.06g/dの張力を付与してから加熱延伸することにより、供給ロ−ラ上の糸条の糸揺れを抑制し、延伸中に発生する糸斑を解消させる方法が開示されている。
また、特開平3−161545号公報には、供給ロ−ラの前にプリテンションロ−ラを設けて、延伸倍率1.03〜1.10で冷延伸する方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、前者の方法では、糸切れや毛羽の欠点については、かなり解消されるものの、得られる糸条の糸斑や染斑などの品質面で不十分であった。また、後者の方法では、糸切れや毛羽の欠点についても糸条の糸斑や染斑などの品質面についてもかなり解消されたが、この方法においても糸条の単糸繊度が5デニ−ル以上になると、糸条の糸斑や染斑などの品質面で満足できないことが多い。また、この方法の場合、既存の設備に新しくプリテンションロ−ラを設ける必要があり、経済的、設備配置の面からも問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題を解決し、糸斑や染斑など品質面での欠点がなく、糸切れや毛羽の発生がない、太繊度フィラメントを安価に製造できる太繊度ポリエステルフィラメントの直接紡糸延伸方法を提供することを技術的な課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、1500m/分〜2500m/分の速度で引き取る場合でも、溶融紡糸された糸条を集束し、集束点直下の糸条張力を特定の範囲に設定することにより未延伸糸の配向度が十分に高まり、その未延伸糸状態で表面温度が常温の供給ロ−ラで引き取った後、延伸することで、糸斑や染斑などの品質面での欠点がないだけではなく、糸切れや毛羽の発生がない太繊度フィラメントが得られることを見い出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は、単糸繊度が3デニ−ル以上のポリエステルフィラメントを紡糸延伸するに際し、ポリエステルフィラメントを溶融紡糸して集束し、集束点直下の糸条張力を0.2〜0.7g/dにして、表面温度が40℃以下の供給ロ−ラにより、1500m/分〜2500m/分の速度で引き取った後、延伸することを特徴とする太繊度ポリエステルフィラメントの直接紡糸延伸方法を要旨とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施態様を示す直接紡糸延伸装置の説明図である。まず、紡糸口金1から紡糸された糸条Yは、冷却装置2で冷却された後、オイリングロ−ラ3で集束され、油剤が付与される。
【0010】
糸条Yは、引き続いてセパレ−トロ−ラを有する供給ロ−ラ4に引き取られるが、ここで糸条は加熱されることはない。次いで、糸条Yは、セパレ−トロ−ラを有する熱セットロ−ラ5に数回巻き回され、供給ロ−ラ4と熱セットロ−ラ5との間で延伸され、熱セットロ−ラ5で必要な収縮率に調整され、巻取機6で巻き取られる。
【0011】
上記の工程において、装置に関しては公知の直接紡糸延伸装置を用いることができる。
本発明で重要なことは、溶融紡糸の段階で糸条Yに0.2〜0.7g/dの糸条張力を掛けることにある。溶融紡糸された状態で0.2〜0.7g/dの糸条張力を掛けることにより、糸条Yの配向度は糸条長さ方向の歪みが小さい状態で著しく高められることになる。糸条張力を0.2〜0.7g/dにする方法は、空気抵抗を利用する方法が一般的であるが、本発明の場合、紡糸口金1からオイリングロ−ラ3までの集束距離は3〜6mが好ましい。ただし、糸条張力を高める方法は、特に限定されるものではない。
糸条張力が0.2g/d未満では、糸条Yの配向度が十分に高まらず、糸条長さ方向の歪みが大きい状態になり、糸斑や染斑が発生する。また、糸条張力が0.7g/dを超えると、溶融紡糸の段階で糸条Yにかかる応力が高過ぎるために逆に糸切れや毛羽が発生する。
【0012】
前述した特開平3−161545号公報記載の、供給ロ−ラの前にプリテンションロ−ラを設けて、延伸倍率1.03〜1.10の冷延伸する方法などのように、溶融紡糸工程で十分に配向度が上がらない状態の糸条Yを予備延伸する形で配向度を上げようとすると、糸条長さ方向の配向度斑が緩和されず、逆に増幅されることになり、糸斑や染斑などの品質面が悪化するだけで、糸切れや毛羽が発生することになる。
【0013】
本発明において、他の重要なことは、供給ロ−ラ4の表面温度を40℃以下とすることである。通常、供給ロ−ラ4は80℃程度に加熱され、糸条Yをガラス転移点温度付近に予熱して延伸するが、本発明のように、未延伸糸Yの配向度が極めて高い状態で、単糸繊度が3デニ−ル以上の太繊度フィラメントの場合、糸条が延伸時に発生する自己発熱だけで延伸斑のない延伸が可能となる。逆に、供給ロ−ラ4で加熱された場合、糸条の受熱斑から糸斑が増幅さるることになる。
供給ロ−ラ4の表面温度は、40℃以下の常温に設定すればよいが、20℃以上が好ましい。供給ロ−ラ4の表面温度を20℃未満にするためには、通常は供給ロ−ラ4を冷却する必要があり、経済的に高価なものになる。
【0014】
本発明により品質が最も顕著に改善される糸条は、単糸繊度が3デニ−ル以上、特に5デニ−ル以上の太繊度フィラメントである。また、紡糸引取り速度は、1500m/分〜2500m/分であるが、好ましくは2000m/分近傍が有効である。2500m/分を超える高速紡糸引取り速度では、集束距離に関わらずに未延伸糸の配向度が十分に高まることから、本発明は必要とされない。逆に、1500m/分未満の紡糸引取り速度では、未延伸糸の配向度を十分に高めるのに必要な集束距離を長くする必要があり、直接紡糸延伸装置を設置する建屋の構造上の制約が生じる。
【0015】
本発明におけるポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート、又はこれらを主成分とし、必要に応じてイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などを共重合したものを採用することができ、また、酸化チタンなどの艶消し剤、顔料、抗菌剤、難燃剤、導電性付与剤などを配合したものでもよい。
【0016】
【作用】
本発明においては、溶融紡糸の段階で糸条に掛かる張力を高くすることにより、紡糸された糸条の配向度が溶融紡糸の段階で極めて高い状態になることから、常温延伸が可能になり、常温延伸することにより、糸斑や染斑などの品質面での欠点がないだけではなく、糸切れや毛羽の発生がない太繊度フィラメントを安定して得ることが可能となる。
【0017】
【実施例】
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。
なお、実施例における評価は次の方法で行った。
(1)糸斑
計測器工業製EVENNESS−TESTERを使用し、巻取った糸条の糸斑を、Normal Testで測定し、測定した20cmのチャ−トの中で5%を超える糸斑がいくつあるかで評価した。
0個:◎、 1〜3個:○、 4〜8個:△、 9個以上:×
なお、条件は次の通りである。
▲1▼糸条速度:25m/分
▲2▼チャ−ト速度:2.5cm/分
(2)染斑
巻取った糸条を筒編みして精練した後、染料(テラシ−ル)で染色処理を行い、風乾して得た編地の染斑について官能検査を実施した。
評価は、良好な方から◎、○、△、×の4段階で評価とした。
(3)紡糸糸切れ評価
4錘で7日間の紡糸を行つた時の切糸回数を、一日当たりの糸切れ回数で評価した。
(4)糸条張力
オイリングロ−ラ直下の糸条張力をロッシルド社製 タイプRの張力計で測定し、未延伸糸の糸条繊度で除して、1デニ−ル当たりの糸条張力とした。
【0018】
実施例1、2 比較例1、2
極限粘度〔η〕(フェノ−ルと四塩化エタンの等重量混合溶媒を用い、20℃で測定した。)が0.68のポリエチレンテレフタレ−トチップを温度300℃で加熱溶融し、図1に示す直接紡糸延伸装置を用いてポリエステルフィラメントを製造した。
この時、加熱溶融したポリマ−は、30孔の紡糸口金1に供給し、溶融紡糸して300デニ−ルの4糸条を紡糸した。引き続き、紡糸口金1下流に設けた冷却装置2で糸条を固化し、オイリングロ−ラ3で紡糸油剤を付与した。
【0019】
糸条Yは、そのまま2000m/分で30℃の供給ロ−ラ4で引き取り、数回巻き回した後、糸条Yの残留伸度が35%になるように、延伸倍率を決めて延伸し、温度130℃の熱セットロ−ラ5に数回巻き回し熱処理した後、巻取機6で巻き取った。
この時、オイリングロ−ラ3の距離を移動させ、オイリングロ−ラ3の直下で測定した糸条張力を0.2g/d、0.7g/dとし、得られた糸条の評価を表1に記載した。
また、オイリングロ−ラ3の直下で測定した糸条張力を0.1g/d、0.8g/dとした以外は、実施例1と同様にして巻き取った時の評価を比較例1、2として表1に記載した。
【0020】
実施例3、4、比較例3
オイリングロ−ラ3の直下で測定した糸条張力を0.4g/dとし、供給ロ−ラ4の表面温度を20℃、40℃とした以外は、実施例1と同様な条件で巻き取った場合の評価を実施例3、4として表1に記載した。
また、供給ロ−ラ4の表面温度を70℃とした以外は、実施例3と同様な条件で巻き取った時の評価を比較例3として表1に記載した。
【0021】
【表1】
Figure 0004132381
【0022】
表1から明らかなように、実施例1〜4で得られた太繊度フィラメントは、糸斑、染斑が少なく、また、紡糸時の糸切れ発生も少なかった。
一方、糸条張力が本発明の範囲外である比較例1、2は、糸斑、染斑、紡糸時の糸切れの評価が相反する結果となり、総合的に判断すると実用化が不可能なものであった。また、供給ロ−ラの温度を通常の70℃前後とした比較例3は、糸斑、染斑、紡糸時の糸切れともに悪くなり、得られたフィラメントは製品として扱えないものであった。
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、直接紡糸延伸方法で糸斑や染斑など品質面での欠点がなく、糸切れや毛羽の発生がない太繊度フィラメントを安価に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様を示す直接紡糸延伸装置の説明図である。
【符号の説明】
1 紡糸口金
2 冷却装置
3 オイリングロ−ラ
4 供給ロ−ラ
5 熱セットロ−ラ
6 巻取機

Claims (1)

  1. 単糸繊度が3デニ−ル以上のポリエステルフィラメントを紡糸延伸するに際し、ポリエステルフィラメントを溶融紡糸して集束し、集束点直下の糸条張力を0.2〜0.7g/dにして、表面温度が40℃以下の供給ロ−ラにより、1500m/分〜2500m/分の速度で引き取った後、延伸することを特徴とする太繊度ポリエステルフィラメントの直接紡糸延伸方法。
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