本発明は、積層母基板から個々の単位表示装置基板を分離する表示装置の製造方法及び製造装置に関する。
平板型の表示装置は、複数の単位表示装置の画素領域を作り込んで貼り合わせた第1の基板(一般にガラス基板、以下単に基板)と第2の基板からなる2枚の大形基板(積層母基板)を個々の単位表示装置基板に分離し、該画素領域から引き出された端子に駆動回路を組み込んで表示装置を構成している。この積層母基板を個々の単位表示装置基板に分離するには、例えば「特許文献1」に記載されたように、第1の基板にスクライブ線を加工し、表裏反転後該スクライブ線に沿ってブレークする。次いで、第2の基板にスクライブ線を加工し、再度表裏反転し、このスクライブ線に沿ってブレークする。その後、端子部分を露出させるための周辺部分を破材として除去する。
このブレークでは、スクライブ線を加工した積層母基板をゴムやスポンジ等のクッションシートの上にステンレス板などの金属板を敷いたブレークテーブル上に、ブレークするスクライブ線を該ブレークテーブル側にして載置し、スクライブ線に沿って該スクライブ線と反対側からゴム材等からなるブレークバーで叩く、または押し圧力を加えてブレークする、所謂スクライブ・アンド・ブレーク方法が採用されている。
又、「特許文献2」ではスクライブ線を挟んで一対のクランプでそれぞれ積層ガラス基板を挟持し、前記クランプの一方を回動させてスクライブ線でブレークするスクライブ・アンド・ブレーク方法が開示されている。
図19は従来のスクライブ・アンド・ブレーク法におけるスクライブ線の加工例の説明図である。ここでは、2枚の基板SUB1とSUB2からなる積層母基板から計9枚の単位表示装置基板を取る場合を例として示す。第1の基板SUB1の表面(図22では積層母基板の表面)にはX方向に4本、Y方向に4本の計8本のスクライブ線SBL1を加工し、第2の基板SUB2の表面(積層母基板の背面)に加工されるスクライブ線SBL2は、第1の基板SUB1のスクライブ線と同一位置に加工される8本のスクライブ線の外にさらに4本のスクライブ線が加工される。したがって、スクライブ線は表裏合計で20本必要となる。
すなわち、積層母基板の周辺には第1および第2の基板で表裏同一位置にスクライブ線が加工され、このスクライブ線で分離される部分は破材となる。また、積層母基板の内側に加工されるスクライブ線は表裏で同一位置に加工されるものと、第2の基板SUB2にのみスクライブ線SBL1と異なる位置にスクライブ線が加工される。第2の基板SUB2にのみ加工されるスクライブ線と第1の基板のスクライブ線と一致するスクライブ線との間の基板は個々の単位表示装置基板の端子部を露出させるために除去される破材となる。
図20はスクライブ線を加工した積層母基板をブレークして単位表示装置基板に分離する工程の説明図である。第1の基板SUB1側のスクライブ線SBL1でブレーク済の積層母基板PNを、その第2の基板SUB2側のスクライブ線SBL2でブレークする様子を示す。第1の基板SUB1をブレークした積層母基板は移載装置TFDでブレークテーブルBKT上に載置される。このとき、ブレークすべき第2の基板SUB2のスクライブ線SBL2をブレークテーブルBKT側に置く(a)。次に、第2の基板SUB2側のスクライブ線SBL2の直上からブレークバーで矢印Pで示す叩き、加圧を施してブレーク端BK2で示すブレークを行う(b)。
その結果、第1の基板SUB1のブレーク端BK1と第2の基板SUB2のブレーク端BK2とで単位表示装置基板PNLに分離される(c)。符号WT1とWT2は不要な周辺破材、WTMは各単位表示装置基板PNLの端子露出部分の不要な破材の中間破材(中抜き破材とも称する)である。
特開平6−48755号公報
特開平6−3633号公報
従来のスクライブ・アンド・ブレーク法では、スクライブ線の加工とブレークは全て積層母基板をスクライブテーブルやブレークテーブル上に水平に載置して行われる。そのため、積層母基板を構成する第1の基板と第2の基板のそれぞれにスクライブ線を加工する工程、第1の基板と第2の基板のそれぞれをブレークする工程はすべてスクライブテーブルやブレークテーブルに対して反転させる工程が必要となる。したがって、煩雑な工程を複数経ることになり、その途上で基板の破壊、クラックの発生頻度が多くなって、結果的に歩留り向上の阻害要因となっている。
図21はスクライブ・アンド・ブレーク法を用いた基板分離例を図20の中間破材部分のブレークの説明図である。図中、積層母基板PNはクッション材CSNと金属板MTLで構成される。積層母基板PNをブレークテーブルBKTの金属材MTL上に水平に載置し、第2の基板SUB2のスクライブ線SBL2で該第2の基板SUB2にのみブレークを施す際、スクライブ線の無い第1の基板SUB1までブレークされる場合がある(符号NG1で示す)。これは積層母基板PNに備えられる第1の基板SUB1及び第2の基板SUB2の各々の厚さが0.5〜1.1mmと薄く、加圧Pの印加でブレークテーブルBKTのクッション材CSNの局部的な沈み込みで積層母基板PNが撓むことに起因する。
図22は従来のスクライブ・アンド・ブレーク法による不整ブレークの一例を説明する平面図である。図21と同様の原因でスクライブ線からはみ出た部分でブレークされると符号NG2で示したように、単位表示装置基板PNLにおける第2の基板に不整形状をもたらす。その結果、端子露出部分に充分なスペースを確保できず、不良となって歩留り低下をもたらす。
図23は従来のスクライブ・アンド・ブレーク法における基板取扱い途上での典型的な傷発生例の説明図である。スクライブ・アンド・ブレーク加工の工程でスクライブテーブルやブレークテーブルに対して頻繁な反転あるいは搬送載置する際に(a)〜(c)に示したような欠けた分離残が発生する。これらもまた不良となり、歩留り低下をもたらす。
また、従来はスクライブ線を加工した積層母基板を定盤(スクライブテーブルやブレークテーブル)間で搬送し、あるいは基板反転して加工をしていたため、スクライブ加工、定盤からの剥離時にスクライブ線から不所望なクラックが進行し、基板割れをもたらすことがある。図24はスクライブ線を加工した積層母基板の基板割れ発生例と中間破材の除去困難性の説明図である。上記した積層母基板PNの搬送、スクライブ加工、スクライブテーブルからの剥離等の基板取扱い時、図24(a)に示したようにスクライブ線SBL1からクラックNG3が発生する。このため、液晶滴下法により積層母基板に形成された複数の表示領域の各々に液晶を予め封入した場合、積層母基板をなす2枚の基板間から液晶が漏れ出し、積層母基板PNに形成された表示領域全てを不良にする。図24では、第1の基板SUB1の表面を示すが第2の基板SUB2についても同様である。このようなクラックの発生は、積層母基板PNが大サイズになる程著しい。
また、図20(c)に示した中間破材WTMをブレークし、これを除去(中貫き)する時に、図24(b)に示した第2の基板SUB2に示した当該中間破材WTM部分の隣接スクライブ線SBL2が接近しているため、一方のスクライブ線をブレークする際に隣接する他方のスクライブ線にまで不所望なクラックNG4が生じてしまうことがある。さらに、図24(c)のように、ブレークが正常であっても、中間破材WTMが第1の基板SUB1と密着(鏡面接着ADMとして示す)しているために除去が困難となり、また積層母基板PNが大サイズになる程、この中間破材WTMが長くなって抜け難くなる。
本発明の目的は、従来技術における上記した様な種々の課題を解消することにあり、積層母基板をスクライブ・アンド・ブレーク法で個々の単一表示装置基板に効率よく分離するための表示装置の製造方法及び製造装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明では、対向して貼り合わされた一対の基板と当該基板間に互いに離間されて形成された複数の表示領域とを含む被加工物(積層母基板)を当該表示領域毎に分断し、前記複数の表示領域の一つを夫々備える複数の表示装置(表示パネル)に切り出す表示装置の製造方法、及びこの被加工物を前記複数の表示領域の少なくとも一つ毎に分断し、また被加工物から余剰な部分を破材として切り離す表示装置の製造装置において、以下の手法(technique)を導入する。
手法1:前記被加工物を重力方向に起こした状態で分断する。
手法2:前記被加工物に含まれる前記一対の基板を、当該被加工物を反転させることなく夫々分断する。
手法3:前記被加工物に含まれる前記一対の基板の少なくとも一つを、当該被加工物を折り曲げて分断する。当該被加工物は、一対の基板を重ねた状態で、分断すべき基板主面を外側にして(分断すべき基板主面が仰け反るように)折り曲げられる。被加工物をこれに形成された複数の表示領域の少なくとも一つ毎(任意数毎)に分割する場合は、前記一対の基板の夫々を、分断される基板毎に異なる方向に当該被加工物を折り曲げる。
手法4:前記被加工物に含まれる前記一対の基板の少なくとも一つを、その主面へのスクライブ線(溝)形成とこれに続く当該スクライブ線の開裂による当該基板のブレーク(分断)とで分断する。前記一対の基板の夫々を分断する場合、一方の基板へのスクライブ線形成及びこれによる当該基板のブレークの後、他方の基板へのスクライブ線形成及びこれによる当該他方の基板のブレークが行われ、基板へのスクライブ線の形成工程が基板のブレーク工程を飛ばして繰り返されることはない。
以上に述べた手法は、その一つを表示装置の製造方法に採用するだけでも、従来の表示装置の製造方法に生じる上述の技術的な問題を抑止しえるが、これらを組み合わせる毎に、その効果は高められる。
本発明による表示装置の製造方法及び製造装置にて、その被加工物は表示装置の製造の所謂前工程を経た形状を呈する。この被加工物は、対向させて貼り合わされた一対の基板とその基板間に形成された複数の表示領域を含む。一対の基板の各々は、例えばマザーガラスと呼ばれるガラス基板を分断せずにそのまま用いることが多い。また、被加工物は、本発明による表示装置の製造方法及び製造装置により、最終的に一対の基板間に形成された複数の表示領域が一つずつ分離される。これにより、被加工物から複数の表示装置(表示パネル)が切り出される。このような事情に鑑み、上述の被加工物は、以降、積層母基板とも記す。
この積層母基板から複数の表示装置を切り出す過程において、積層母基板をなす一つの基板の少なくとも一方が、これに対するスクライブ工程とブレーク工程により分断され、その不要な部分は破材として除去される。スクライブ工程は、分断される基板の主面にスクライブ線という溝を罫書く工程であり、このスクライブ線が当該基板の分断位置を決める。ブレーク工程は、スクライブ線が形成された基板をこのスクライブ線の溝を当該基板の厚さ方向に開裂(cleave)して、このスクライブ線を境に当該基板を分断する工程である。本発明に係る表示装置の製造装置は、このスクライブ工程とブレーク工程とを行うスクライブ・ブレーク装置として具現化されるが、その形態は例えばスクライブ工程を行うスクライブ装置とブレーク工程を行うブレーク装置との組み合わせであってもよい。
表示装置の製造の前工程では、積層母基板をなす一対の基板を夫々の主面が重力方向に直交する状態で重ねて貼り合わされる。このため、積層母基板は、その主面を概ね水平にした状態でスクライブ・ブレーク装置に搬入される。上記手法1では、このような状態にある積層母基板を重力方向に起こして、これに上述のスクライブ工程とブレーク工程とを順次施す。
積層母基板からこれに形成された複数の表示領域を少なくとも一つ切り出す際に、積層母基板に含まれる前記一対の基板を夫々分断する工程を上記手法2では、積層母基板を反転させずに行う。従って、スクライブ工程前の積層母基板における当該一対の基板の配置は、そのブレーク工程が終わるまで互いに置き換わることなく維持される。
積層母基板に含まれる前記一対の基板の少なくとも一方を分断する工程において、上記手法3では、積層母基板をこれに含まれる基板の一方に形成されたスクライブ線の両側で挟み、積層母基板のスクライブ線から見て一方の側をその他方の側に対して折り曲げることにより、このスクライブ線(が形成された主面)から当該一方の基板をその厚み方向に開裂させる。
積層母基板に含まれる前記一対の基板の夫々を分断する工程において、上記手法4では基板毎にスクライブ工程とこれによりスクライブ線が形成された基板を開裂させるブレーク工程とを続けて行う。
以上に記した積層母基板のスクライブ工程及びブレーク工程は、積層母基板やこれを分割したものの周縁に存在する不要部分を破材として切り離して破棄する工程にも適用できる。また、N個(Nは1より大きい自然数)の表示領域が形成された積層母基板からM個(MはNより小さい自然数)の表示領域を含む短冊状の積層母基板(サブ積層母基板)を切り離す工程にも適用できる。サブ積層母基板が複数の表示領域を含む場合、これを表示領域毎に、個々の単位表示装置基板(破材となる部分を含む)に分離する工程にも適用できる。さらに、単位表示装置基板に含まれる前記一対の基板の少なくとも一方から不要部分を破材として分離する工程にも適用できる。
本発明による表示装置の製造方法は、上記手法1乃至4の少なくとも一つを反映させて定義される。その代表的な一例は、以下に記す一連の工程の流れとして規定される。
対向させて貼り合わされた第1基板及び第2基板とこれらの間に形成された少なくとも一つの表示領域とを含む積層母基板をその主面(第1基板又は第2基板の主面でもある)が重力方向となす角度を小さくするように起こす積層母基板の起立工程、
前記第1基板の主面に第1スクライブ線を形成する第1スクライブ工程、
前記積層母基板を前記第2基板側に折り曲げて(前記第1基板の第1スクライブ線が形成された主面を仰け反らせて)、前記第1基板を前記第1スクライブ線で分断する第1ブレーク工程、
前記第2基板の主面に第2スクライブ線を形成する第2スクライブ工程、及び
前記積層母基板を前記第1基板側に折り曲げて(前記第2基板の第2スクライブ線が形成された主面を仰け反らせて)、前記第2基板を前記第2スクライブ線で分断する第2ブレーク工程をこの順に行い、
前記積層母基板の前記少なくとも一つの表示領域が形成された部分とこれに隣接する部分とを分離する。
このように規定された表示装置の製造方法において、積層母基板の少なくとも一つの表示領域が形成された部分に隣接する他の部分は例えば破材として廃棄される。また、第1基板と第2基板との間に複数の表示領域が形成された積層母基板においては、この一連の工程により、当該表示領域の少なくとも一つが当該表示領域の残りから分離される。第1基板と第2基板との間に形成される当該複数の表示領域は、積層母基板の主面(第1基板又は第2基板の主面)内に二次元的に互いに離間して配置される。換言すれば、この表示装置の製造方法にて加工せんとする積層母基板には、一つの表示領域と、当該表示領域以外の表示領域及び破材となる余剰領域の少なくとも一方がその主面内に二次元的に配置される。積層母基板の主面内に前記複数の表示領域の3列以上が主面内に並ぶ場合や、前記余剰領域と前記複数の表示領域とが並ぶ場合は、前記第2ブレーク工程に続き、前記第1スクライブ工程、前記第1ブレーク工程、前記第2スクライブ工程、及び前記第2ブレーク工程の一連の流れを繰り返すか、又はこの流れを部分的に変更した前記第2スクライブ工程、前記第2ブレーク工程、前記第1スクライブ工程、及び前記第1ブレーク工程からなる一連の流れを加える。
上述の一連の工程で分割された積層母基板の一部には、その主面内に少なくとも一つの表示領域とこれに隣接する端子領域が配置される。この積層母基板の一部は、積層母基板と同様に対向して貼り合わされた一対の基板を含む。また前記端子領域は、分割される前の積層母基板において、前記少なくとも一つの表示領域と他の表示領域又は破材となる余剰領域とを離間する領域に設けられ、当該少なくとも一つの表示領域に信号又は電力を供給する端子や配線が前記一対の基板の一方に形成された領域として設けられる。従って、この表示領域を備えた表示装置(表示パネル)を完成させるためには、端子や配線が形成された一方の基板主面に対向する(端子領域を覆う)他方の基板を除去しなければならない。即ち、対向して貼り合わされた一対の基板を含む表示装置において、その一方の基板に形成された端子領域は、その他方の基板から突き出されて当該表示装置の外部回路への結線に提供される。
積層母基板から切り出された表示領域とこれに対応する端子領域とを含む一部分(上述の如く表示装置に加工される部分)で、この端子領域が積層母基板に含まれる基板により覆われた状態であるものを、本明細書では「単位表示装置基板」とも呼ぶ。この単位表示装置基板から、これに含まれる一対の基板の不要部分を破材として除去して上記端子領域を露出する本発明による表示装置の製造方法の代表的な一例は、以下に記す一連の工程の流れとして規定される。
対向させて貼り合わされた第1基板及び第2基板、これらの間に形成された表示領域、及びこの第1基板の第2基板側主面に形成された当該表示領域に信号又は電力を送る電極を含み且つ当該表示領域に隣接する端子領域を含み且つ前記電極は前記第2基板で覆われている単位表示装置基板を用意する工程、
前記単位表示装置基板を前記表示領域及び前記端子領域で夫々挟む工程、
前記第2基板の主面を前記表示領域と前記端子領域との境界に対応する部分にスクライブ線を形成する工程、
前記単位表示装置基板を前記第1基板側に折り曲げて(前記第2基板の前記スクライブ線が形成された主面を仰け反らせて)、前記第2基板を前記スクライブ線で分断する工程、及び
前記スクライブ線で分断された前記第2基板の前記端子領域側の部分をその前記表示領域とは反対側の一辺で前記第1基板側に圧して該第2基板の端子領域側の部分を該第1基板及び前記第2基板の前記表示領域側の部分から剥離する工程(第2基板の端子領域側の部分を破材として除去する工程)により、
前記端子領域に形成された前記電極を露出させる。
端子領域が第1基板の隣接する2辺に沿う端部に設けられる場合、前記第2基板の前記端子領域側の部分の剥離する工程の後、単位表示装置基板をその主面(第1基板又は第2基板の主面)内に回転させた後、前記単位表示装置基板を表示領域及び端子領域で夫々挟む工程から前記第2基板の前記端子領域側の部分の剥離する工程に到る一連の工程を繰り返す。
また、以上に述べた積層母基板の分割及び単位表示装置基板からの破材除去の工程に代えて、以下に示す一連の工程で積層母基板から表示装置を切り出してもよい。
水平に搬入された積層母基板を鉛直方向に対して僅かに傾斜させて起立させる積層母基板の起立工程と、
前記積層母基板に含まれる第1基板の表面に、この積層母基板の主面内に並ぶ破材部分及び複数の単位表示装置基板部分の夫々の境界に対応させて、第1の方向及びこれに交差する第2の方向に夫々延在する複数の第1のスクライブ線を形成する第1スクライブ工程と、
前記積層母基板に含まれ且つ前記第1基板に対向する第2基板の表面に、前記複数の第1スクライブ線に夫々対向する複数の第2スクライブ線を形成する第2スクライブ工程と、
前記複数の第1スクライブ線及び前記複数の第2スクライブ線の前記破材部分に隣接する夫々に沿って前記積層母基板を分断し、前記複数の単位表示装置基板部分が形成された積層母基板から前記破材部分を分離する第1ブレーク工程と、
前記破材部分が切り離された前記積層母基板を前記第1スクライブ線と前記第2スクライブ線の前記第1方向に延在する夫々に沿って分断し、前記複数の単位表示装置基板部分の一つと前記第2方向沿いにこれに隣接する他の一つとを分離して、前記複数の単位表示装置基板部分の少なくとも一つを有し且つ前記第1方向に延在する短冊状の積層基板に分離する第2ブレーク工程と、
前記短冊状の積層基板を前記第1スクライブ線と前記第2スクライブ線の前記第2方向に延在する夫々に沿って分断し、これに形成された単位表示装置基板を切り出す第3ブレーク工程と、
前記分離された単位表示装置基板に含まれる前記第1基板及び前記第2基板の一方の主面端部にその隣接する2辺に沿う第3スクライブ線と第4スクライブ線とを夫々形成する第3スクライブ工程と、
前記第3のスクライブ線に沿って前記第1基板及び前記第2基板の前記一方を分断して、前記2辺の一方に沿うその周縁を破材として分離する第4ブレーク工程と、
前記第4のスクライブ線に沿って前記第1基板及び前記第2基板の前記一方を分断して、前記2辺の他方に沿うその周縁を破材として分離する第5ブレーク第2工程とを、
前記積層母基板、前記短冊状の積層基板、及び前記単位表示装置基板を夫々起立させた状態に保ちながら順次行う。
一方、以上に述べた積層母基板の分割方法に対応した本発明による表示装置(表示パネル)の製造装置は、
第1の方向及びこれに交差する第2の方向に広がる2つの主面を有する被加工物を第1の方向に搬送する搬送機構、
前記被加工物の前記2つの主面に夫々当てられる一対の治具(Jig)を含み且つこの一対の治具で被加工物を挟む第1の保持機構、
前記第1の方向沿いに前記第1の保持機構と並び且つ前記被加工物の前記2つの主面に夫々当てられる一対の治具を含み且つこの一対の治具で被加工物を挟む第2の保持機構、及び
前記第1の保持機構と前記第2の保持機構との間において前記第1の方向及び前記第2の方向に夫々交差する第3方向沿いに移動し且つ前記被加工物の前記2つの主面のいずれかにスクライブ線を形成するスクライブ機構を備え、
前記第1の保持機構及び前記第2の保持機構に夫々備えられる前記治具の各々は前記第1方向及び前記第3方向沿いに広がる平面で並進運動し、
前記第1の保持機構及び前記第2の保持機構の少なくとも一方に備えられる前記一対の治具の各々は前記第1方向及び前記第3方向沿いに広がる平面で回転運動する。
又、他の製造装置は、上記製造装置に加え前記第1の保持機構と前記第2の保持機構との間において前記被加工物を挟んで前記スクライブ機構と対向配置され、前記第1の方向及び前記第2の方向と夫々交差する第3の方向沿いに移動し且つ前記被加工物の一つの主面に形成されたスクライブ線を他の主面側から押圧して前記スクライブ線の開裂を進行させる押圧機構を備えている。
これらの製造装置において、第1の保持機構及び第2の保持機構の少なくとも一方に備えられる一対の治具の、第1方向及び第3方向沿いに広がる平面内、換言すれば、被加工物の主面に交差し且つその搬送方向に沿う平面内での回転運動により、スクライブされた被加工物(の一部)は、その場で分断(ブレーク)される。治具は第2方向に延びて被加工物の主面に接する「バー」状に形成するとよい。スクライブ機構は、第2方向沿いに動く罫書き針やスクライブ・ホイールを備え、これらを被加工物の両側に設けてもよい。
また、被加工物の主面の一方を保持し又はこれに吸着するステージを備えた回転機構で、被加工物を第1方向及び第2方向沿いに広がる平面(被加工物の主面に沿う平面)内で回転させてもよい。被加工物の回転は、所定の角度(例えば90°)毎に段階的に行うとよい。
さらに、上述した単位表示装置基板からの破材の除去方法に対応した本発明による表示装置の製造装置では、前記第1の保持機構及び前記第2の保持機構の少なくとも一方に備えられる一対の治具の少なくとも一つに、前記第2方向に延びる複数の軸のいずれかを適宜選択させ、前記第1方向及び前記第3方向沿いに広がる平面にて夫々の軸に応じた複数種の回転運動を行わせる。これにより、ブレーク工程で生じた破材を被加工物から容易に分離することができる。
以上に記した本発明による表示装置の製造方法及び製造装置により、積層母基板内部に生じる基板の不要部分(中間破材、中抜き破材とも称する)を抜く工程が不要となる。積層母基板から生じる全ての破材は、被加工物(上述の積層母基板や単位表示装置基板)のスクライブ工程とこれに続くブレーク工程、又はこの一対の工程の繰り返しにより、当該被加工物の端部(周辺)にシフトする。従って、積層母基板の主面が大面積化しても、これから生ずる破材の寸法は抑えられ、表示装置に設けられる上述の端子領域に応じて破材の幅が狭められても、従来の中抜き破材のように被加工物内に残留することもなくなる。また、ブレーク工程を複数回のスクライブ工程の後に行わず、スクライブ工程毎にこれで形成されたスクライブ線で順次被加工物を開裂させることで、積層母基板から表示装置を切り出す過程における基板の破壊も抑えられる。
本発明によれば、積層母基板から複数の表示装置を切り出す工程において、これらの表示装置に対応する単位表示装置基板の夫々を切り出すスクライブ工程及びブレーク工程と、これに残る不要部分を破材として除去するスクライブ工程及びブレーク工程とを分ける。このため、一度に多くのスクライブ線が被加工物に形成されることは無くなり、スクライブ線に起因する被加工物のクラック発生確率も抑えられる。従って、積層母基板から表示装置を高い歩留りで製造される。
以上説明したように、本発明によれば、水平状態において積層母基板を表裏反転してスクライブ・アンド・ブレークするものに比較して基板のクラック発生が大幅に低減されると共に、中間破材の除去を含めた破材処理が容易であり、高品質かつ歩留りを高めた表示装置の製造方法及び製造装置を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態につき、実施例の図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明によるスクライブ線の加工形態の説明図である。本実施例においては、表示装置の一例として液晶表示装置に本発明による製造方法を適用する。以下に述べる積層母基板(Stacked Mother Substrates)PNとは、一対の基板SUB1,SUB2を互いに対向させて貼り合わせて形成され、これらの基板間には、その主面内に複数の表示領域が形成される。これら複数の表示領域は、積層母基板PNを以下に述べるスクライブ(Scribe)工程及びブレーク(Brake)工程を通して分割することにより、互いに分離される。これにより、積層母基板PNから前記複数の表示領域の一つを夫々有する複数の表示装置(表示パネル)が得られる。
液晶表示装置の製造工程における積層母基板の一例において、前記複数の表示領域の各々は積層母基板をなす一対の基板間にシール剤で仕切られた複数の空間として形成される。また、電界放射型表示装置の製造工程における積層母基板の一例において、前記複数の表示領域の各々は前記一対の基板間にフリット・ガラスで仕切られ且つ夫々排気された複数の空間として形成される。このように一対の基板間に複数の表示領域を形成し且つ当該一対の基板を互いに対向させて貼り合わせる作業は、表示装置の製造における前工程にて行われる。なお、本実施例で述べる液晶表示装置の製造方法は、その前工程にて貼り合わせられる前に一対の基板の一方にシール剤で囲まれて形成された複数の表示領域(となる部分)の各々に液晶組成物を予め滴下した後、一対の基板を貼り合わせて表示領域毎に液晶組成物を当該基板間に封入する液晶滴下法(One Drop Fill Method)にも適用できる。
図1(a)は、本実施例に拠る製造方法にて個々の表示装置(表示パネルPNL)に分断される積層母基板とその主面内に形成された複数の表示領域の配列の一例を図示し、図1(b)は図1(a)に示す積層母基板PNから切り出された表示装置の一つPNLを示す。
図1(a)に示された積層母基板PNは、前記前工程にて、マザーガラスとして用意された2枚のガラス基板SUB1,SUB2の一方の主面に複数の表示領域(その夫々に応じた複数の電極パターン)を形成し、且つこの主面にガラス基板の他方の主面を対向させて当該2枚のガラス基板を貼り合わせられる。積層母基板PNをなす2枚のガラス基板SUB1,SUB2は、図1(a)の下端及び左端に示される積層母基板PNのx方向及びy方向沿いの側面図の如く、主面の面積が互いに略等しく(加工誤差を含めて)、且つ夫々の端部を揃えて貼り合わされる。
図1(a)に示される積層母基板PNの一例には、その主面内に9個の表示領域が3行×3列で形成される。これらの表示領域は、積層母基板PNに施されるスクライブ工程にて積層母基板PNをなす2枚の基板(ガラス基板)SUB1,SUB2の主面に夫々形成されるスクライブ線SBL1,SBL2のx方向に延びる一対とこのx方向と交差するy方向に延びる一対とで囲まれた夫々の領域に形成される。個々の表示パネルとして切り出される当該表示領域PNLは、以降の説明にて、単位表示装置基板(Display Device Substrates-Unit)という名称でも呼ぶ。また、ガラス基板SUB1,SUB2のスクライブ線SBL1,SBL2から端部側の領域は、破材(Wastage)として廃棄される。
図1(a)に示されたx−y座標は、積層母基板PNの主面がx−y平面に沿うことを示す。本実施例において、x−y平面は重力方向に交差するように広がる。前記2枚の基板SUB1,SUB2を重ね合わせて積層母基板PNが完成する段階(前工程の終了段階)において、積層母基板PNはその主面が前記x−y平面に沿うように作業台上に配置され、または搬送されることが多い。本発明による表示装置の製造装置は、このような状態にある積層母基板PNの主面を重力方向に起こした後、そのスクライブ工程及びブレーク工程を順次行う。本実施例にて、積層母基板PNはその主面が重力方向に平行となる(前記x−y平面に対して鉛直方向に)ように起こされるより、この重力方向に対して若干の角度で傾斜させることが望ましい。いずれにしても、積層母基板PNは、その主面の重力方向となす角度が、当該積層母基板を組み上げた時点(前工程の終了時)又は本発明による表示装置の製造装置に搬入する時点より小さくなるように起こして、その主面にスクライブを施す。従って、本実施例の表示装置の製造方法において、図1(a)に示される如くx−y平面内に横たわる積層母基板PNの主面には、実際上、図示されるようなスクライブ線SBL1,SBL2は形成されない。図1(a)は、これらのスクライブ線SBL1,SBL2を、以下に記す夫々の定義の説明にて参照させるためのみに示す。
積層母基板PNは、上述のようにその主面を重力方向に向けて起こされた後、スクライブ・テーブルに立てかけられる。この状態で、積層母基板PNのスクライブ工程が開始される。積層母基板PNをなす第1の基板SUB1の主面(第2の基板SUB2とは反対側にある積層母基板PNの主面の一方ともなる外面)には、スクライブ線SBL1が形成される。スクライブ線SBL1は、第1の基板SUB1の主面に「溝」として形成される。この溝は、第2の基板SUB2に対向する第1の基板SUB1のもう一つの主面に向かうが、第1の基板SUB1のもう一つの主面に到ることは稀であり、この溝(スクライブ線SBL1)により第1の基板SUB1が分断されることはない。積層母基板PNをなす第2の基板SUB2の主面(第1の基板SUB1とは反対側にある積層母基板PNの主面の他方ともなる外面)においても、スクライブ線SBL2は、これにより第2の基板SUB2を分断することのない深さの「溝」として形成される。第1の基板SUB1の主面に形成されたスクライブ線SBL1の「溝」は、続くブレーク工程にて第1の基板SUB1のもう一つの主面に到り、この第1の基板SUB1を所望の位置(スクライブ線SBL1が形成された位置)で分断する。第2の基板SUB2の主面に形成されたスクライブ線SBL2の「溝」も、続くブレーク工程にて第2の基板SUB2のもう一つの主面に到り、この第2の基板SUB2を所望の位置(スクライブ線SBL2が形成された位置)で分断する。積層母基板PNの主面沿いに形成された複数の単位表示装置基板PNLの各々は、スクライブ線SBL1を開裂(Cleave)させるブレーク工程で第1の基板SUB1を分割し、且つスクライブ線SBL2を開裂させるブレーク工程で第2の基板SUB2を分割して初めて、隣接する他の単位表示装置基板PNL又は破材となる部分から切り離される。
図1(a)に示された積層母基板PNには、そのX方向(長辺)沿い及びY方向(短辺)沿いに夫々3個の単位表示装置基板PNLが並べて形成され、その周縁(4辺)は破材として破棄される。従って、この積層母基板PNから合計9個の単位表示装置基板PNLを切り出す過程で、第1の基板SUB1には、8本のスクライブ線SBL1が、X方向に延びる4本とY方向に延びる4本とで形成される。また、第2の基板SUB2にも、8本のスクライブ線SBL2が、X方向に延びる4本とY方向に延びる4本とで形成される。しかし、本実施例では、このように図示される合計16本のスクライブ線SBL1,SBL2のX方向又はY方向のいずれかに延びる8本を、第1の基板SUB1及び第2の基板SUB2に順次形成し且つこれらの溝をブレーク工程により開裂させて、単位表示装置基板PNLを3個ずつ含む積層母基板PNに分ける。更に本実施例では、斯様に分割された積層母基板PNをその主面内にて例えば90°回転させた後、Y方向又はX方向のいずれかに延びる残り8本のスクライブ線SBL1,SBL2を分割された積層母基板PNに順次形成し且つこれらの溝をブレーク工程により開裂させて、3個の単位表示装置基板PNLを得る。
切り出された個々の単位表示装置基板PNLは、これに含まれる第1の基板SUB1及び第2の基板SUB2の一方がその他方から部分的に突出するように加工される。この一方の基板が他方の基板から突き出た部分には、表示装置の駆動に係る信号や電力を受ける端子が形成され、又はこれらを受けて表示装置を駆動させる集積回路素子が搭載される。このため、第1の基板SUB1及び第2の基板SUB2の一方の他方から突き出た部分は、これらの基板間に形成される表示領域に対して、これに対応する端子領域とも呼ばれる。本実施例では、積層母基板PNの分割と分割された積層母基板からの単位表示装置基板PNLの切り出しとを第1の基板SUB1(又は第2の基板SUB2)の主面が重力方向に起こされた状態で行うため、単位表示装置基板PNLから第1の基板SUB1及び第2の基板SUB2の一方をその他方から突き出させる加工も同様な状態で行える。例えば、図1(b)に示される単位表示装置基板PNLから第2の基板SUB2の2辺に沿う周縁を切り離して、この2辺に沿う第1の基板SUB1の周縁を突き出させる加工は、次のように行われる。まず、図1(b)に示された2本のスクライブ線SBL2’の一方を第2の基板SUB2の主面に形成し、この溝をブレーク工程で開裂させて当該2辺に沿う第2の基板SUB2の周縁の一方を切り離す。次に、単位表示装置基板PNLを第1の基板SUB1(又は第2の基板SUB2)の主面内で例えば90°回転させ、最後に、スクライブ線SBL2’の他方を第2の基板SUB2の主面に形成し、この溝をブレーク工程で開裂させて当該2辺に沿う第2の基板SUB2の周縁の残り(他方)を切り離す。
このようにして、積層母基板PNをその主面に第1の方向に延びるスクライブ線を形成した後、この第1の方向に交差する第2の方向に延びるスクライブ線を形成することなく第1の方向に延びるスクライブ線で形成された溝を順次開裂させるブレーク工程で分割するため、多数のスクライブ線が形成されることに因る積層母基板PNへの負荷が軽減される。また、積層母基板PNから単位表示装置基板PNLを切り出す一連の工程を、この積層母基板PNに含まれる基板主面を重力方向に起こした状態で行うことにより、基板の自重により誘発されるスクライブ線からの不測のクラック発生が抑えられる。さらに、本実施例における一連の工程が、積層母基板PNを逆転させることなく(貼り合わされた2つの基板の位置を変えることなく)行えることも、クラックを抑止する一因となる。さらに、単位表示装置基板PNLに切り出された状態で第1の基板SUB1(又は第2の基板SUB2)の表示装置(表示パネル)として余剰な部分を切り離すことにより、これに因り生じる破材(中抜き破材…Internal Wastage)は表示装置から容易に除去される。
従って、図12に示す如く、積層母基板PNの両面に合計20本のスクライブ線を形成し、その両側から夫々圧力を掛けて個々の表示装置を切り出す従来の手法に比べて、本実施例の手法では、積層母基板PNに形成された複数の単位表示装置基板(表示領域)PNLの各々が表示装置として確実に切り出せる。
以上に述べた本実施例に拠る表示装置の製造方法を、次の実施例1における積層母基板PNの分割、及び単位表示装置基板PNLからの基板の余剰部分切り離しの夫々により、図2及び図3を参照して具体的に説明する。
図2は、積層母基板PNの分割工程を、その周縁から破材を切り離す一連の流れを例に挙げて説明する図面である。図2(a)は、この工程に用意された装置を模式的に示し、重力方向に起こされた状態でこの装置に搬送される積層母基板PNも示す。図2(a)に示される積層母基板PNは、図2(a)に続く図2(b)乃至図2(i)の一連の工程で、その端部(図2(a)にて右端)から破材(周辺破材)が切り離される。
積層母基板PNは、互いに重ね合わされた第1の基板SUB1と第2の基板SUB2とを含み、その間には複数の表示領域AR1,AR2が形成される。夫々の表示領域は、液晶組成物が封入される空間又はこの空間に液晶滴下法により供給された液晶組成物を封止してなる。また、表示領域AR1,AR2の夫々の周囲には、これを囲むようにシール材の壁が形成され、これにより第1の基板SUB1と第2の基板SUB1とは互いに貼り合わされる。従って、図2(a)に示される積層母基板PNは、図1(a)に示されるそれの側面図のいずれかと同じ視点で描かれる。但し、図2(a)に示される積層母基板PNは重力方向に起こされているため、その主面(第1の基板SUB1や第2の基板SUB2の主面)は図示された座標軸のx−z平面に沿う。大文字のX,Yで記される図1(a)の座標軸に対して、図2(a)の座標軸を小文字のx,y,zで記した理由は、このz軸が重力方向より僅かに傾いているためである。本実施例において、z軸は重力方向に対して5〜10°の範囲のいずれかの角度で傾いているが、図2(a)に示される装置の性能に応じて、この範囲外の角度でz軸を傾けてもよい。
図2(a)に示される装置は、積層母基板PNの搬送及び保持を担う定盤FBS1,FBS2、積層母基板PNの位置を監視するカメラTVC、積層母基板PNをその両側から挟み込む第1の保持部材HB1,HB2、積層母基板PNの夫々の主面にスクライブ線を形成するスクライブ・ホイールSWH1,SWH2、及びスクライブ・ホイールSWH1,SWH2の反対側で積層母基板PNをその両側から挟み込む第2の保持部材BB1,BB2を備える。積層母基板PNの第1の基板SUB1に対向する定盤FBS1,FBS2の面は、重力方向に対して上記z軸と同様な角度で傾き、この面から吹き出される圧縮空気(Air Blow)でこの面に伸し掛かる第1の基板SUB1の主面をこの面から僅かに浮き上がらせる。積層母基板PNの下側には、これを太い矢印方向に搬送するベルトコンベヤが配置されるが、図2(a)では割愛されている(ベルトコンベアは実施例3にて説明される)。積層母基板PNは定盤FBS1,FBS2の夫々の面から僅かに浮いているため、x方向に搬送される積層母基板PNには唯一ベルトコンベアが接触する。なお、ベルトコンベアは積層母基板PNのスクライブ工程及びブレーク工程を担う第1の保持部材HB1,HB2、スクライブ・ホイールSWH1,SWH2、及び第2の保持部材BB1,BB2が配置される定盤FBS1及び定盤FBS2の間で断続される。
一方、図2(a)に示される矩形の第1の保持部材HB1,HB2、及び第2の保持部材BB1,BB2の各々は、その第1の基板SUB1又は第2の基板SUB2に対向する一辺がz方向に延びて第1の基板SUB1又は第2の基板SUB2の主面に接する面をなす。従って、これらの保持部材はx−z平面沿いに長く延びた「バー」状に形成され、夫々の機能的な特徴に即し、第1の保持部材HB1,HB2を押えバー(Holding Bar)、第2の保持部材BB1,BB2を折り曲げバー(Bending Bar)又はブレークバー(Break Bar)とも呼ぶ。また、第1の保持部材HB1,HB2と第2の保持部材BB1,BB2との間に配置されたスクライブ・ホイールSWH1,SWH2には、その円周にブレード(Blade)が形成された既知のものを用いる。第1の保持部材HB1,スクライブ・ホイールSWH1,並びに第2の保持部材BB1、及び第1の保持部材HB2,スクライブ・ホイールSWH2,並びに第2の保持部材BB2の夫々の群において、第1の保持部材,スクライブ・ホイール,並びに第2の保持部材は、そのx軸に沿う配置関係を維持しながら自由自在に動くように組み立てられている。本実施例では、図2(a)に示された上述の装置をその機能に鑑み、以降、スクライブ・ブレーク装置と呼ぶ。
図2(a)に示す如く、スクライブ・ブレーク装置に搬入された積層母基板PNには、図2(b)乃至図2(i)に示されるように、その第1の基板SUB1に対するスクライブ工程並びにブレーク工程、及びその第2の基板SUB2に対するスクライブ工程並びにブレーク工程が順次施される。
まず、図2(b)に示す工程では、積層母基板PNの切断すべき部分がスクライブ・ブレーク装置の作業領域(Working Area)に挿入されたことをカメラTVCにて検知するや、上述のベルトコンベアを止めて積層母基板PNの搬送を中断する。次に、第1の保持部材(押えバー)HB1及び第2の保持部材(折り曲げバー)BB1を第1の基板SUB1の主面(外側主面)に、第1の保持部材HB2及び第2の保持部材BB2を第2の基板SUB2の主面(外側主面)に、夫々押し当てて積層母基板PNの被加工部分の位置をスクライブ・ホイールに対して固定する。この工程では、スクライブ・ホイールSWH1をy軸沿いに第1の基板SUB1の主面に近づける。スクライブ・ホイールSWH1は、第1の基板SUB1の主面に当てられてz軸方向に移動し始めると、その円周に形成されたブレードが第1の基板SUB1の主面を罫書きながら回転する。このような状態でスクライブ・ホイールSWH1の回転軸をz軸方向に移動させると、第1の基板SUB1にはz軸方向に延在するスクライブ線(溝)が形成される。なお、図2(b)に破線で示される第1の保持部材,スクライブ・ホイール,並びに第2の保持部材は、その直前の工程(図2(b)に対しては図2(a))における夫々の位置を示す。
図2(b)の工程の完了により、第1の基板SUB1の主面にz軸方向に沿うスクライブ線SBL1が形成されると、図2(c)の工程が始まる。この工程では、スクライブ・ホイールSWH1を第1の基板SUB1の主面から離した後、x軸に沿い第1の保持部材HB1及び第2の保持部材BB1をスクライブ線SBL1に向けて寄せる。第1の保持部材HB1及び第2の保持部材BB1のいずれも第1の基板SUB1の主面を擦らないように、一旦第1の基板SUB1から離してx軸沿いに動かした後、再び第1の基板SUB1の主面に押し当てられる。第2の基板SUB2側の第1の保持部材HB2及び第2の保持部材BB2も同様にスクライブ線SBL1に向けて寄せられる。
図2(d)に示す工程では、積層母基板PNを挟む第2の保持部材BB1,BB2をx−y平面内で回転させて、積層母基板PNをその第2の基板SUB2側主面のスクライブ線SBL1を挟むA側(Side A)とB側(Side B)とが180°未満の角度θ1を示すように反らす。このとき、第1の保持部材HB,HB2は図示される如く殆ど動かない。従って、積層母基板PNはそのスクライブ線SBL1が形成される主面の反対側に折り曲げられ、スクライブ線SBL1が形成された(第1の基板SUB1側の)主面は、スクライブ線SBL1の中心(一点鎖線CSL1で示す)の両側で180°超の角度をなす。このように第1の基板SUB1の主面が、そのスクライブ線SBL1の形成された部分でのけぞると、第1の基板SUB1にスクライブ線SBL1として形成された溝は第1の基板SUB1の厚さ方向に開裂してブレーク部分BRL1を形成する。このブレーク部分BRL1は、スクライブ線SBL1の軌跡を辿って第1の基板SUB1をz軸方向に分断するため、ブレーク線とも呼べる。
図2(b)乃至図2(d)に亘る一連の工程で第1の基板SUB1のスクライブ工程及びブレーク工程が完了すると、第1の保持部材HB,HB2及び第2の保持部材BB1,BB2は図2(e)に示す如く積層母基板PNから離されて、スクライブ・ホイールSWH1,SWH2とともに図2(a)で示される位置に一旦戻る。
次に、図2(f)に示す工程で第2の基板SUB2のスクライブが開始される。第2の基板SUB2を第1の基板SUB1と同じ位置で切断する場合は、上述の図2(b)乃至図2(d)に亘る一連の工程を、図2(b)の工程におけるスクライブ・ホイールSWH1の動作をスクライブ・ホイールSWH2のそれに置き換え、図2(d)に示す工程で第2の基板SUB2の主面を、そのスクライブ線の形成された部分で仰け反らせて繰り返せばよい。しかし、ここでは、第2の基板SUB2を第1の基板SUB1とは異なる位置で切断して、第2の基板SUB2の端部を第1の基板SUB1から突き出させる一連の工程について述べる。
図2(f)に示す工程では、図2(b)に示す工程と同様に第1の保持部材HB1及び第2の保持部材BB1を第1の基板SUB1の主面に、第1の保持部材HB2及び第2の保持部材BB2を第2の基板SUB2の主面に、夫々押し当てて積層母基板PNの被加工部分の位置をスクライブ・ホイールSWH2に対して固定する。被加工部分は、図2(b)に示す工程で述べた位置よりx軸方向にシフトするため、積層母基板PNの第1の保持部材HB,HB2により挟まれる部分及び第2の保持部材BB1,BB2により挟まれる部分はともに図2(b)に示されるそれらよりx軸方向にシフトされる。続いて、スクライブ・ホイールSWH2を回転させながらy軸沿いに第2の基板SUB2の主面に近づけ、スクライブ・ホイールSWH2が第2の基板SUB2の主面を罫書き始めたら、その回転軸をz軸方向に移動させる。
図2(f)の工程の完了により、第2の基板SUB2の主面にz軸方向に沿うスクライブ線SBL2が形成されると、図2(g)に示す工程が始まる。この工程では、スクライブ・ホイールSWH2を第2の基板SUB2の主面から離した後、x軸に沿い第1の保持部材HB2及び第2の保持部材BB2をスクライブ線SBL2に向けて寄せる。また、第1の基板SUB1の主面に押し当てられている第1の保持部材HB1及び第2の保持部材BB1も同様にスクライブ線SBL2に向けて寄せられる。図2(c)の工程と同様に、第1の保持部材HB2及び第2の保持部材BB2は第2の基板SUB2の主面を擦らないように、第1の保持部材HB1及び第2の保持部材BB1は第1の基板SUB1の主面を擦らないように、夫々積層母基板PNから一旦離されてx軸方向沿いに移動する。
しかし、図2(g)に示す工程では、既に第1の基板SUB1に形成されたブレーク部分BRL1が、これから始まる第2の基板SUB2のブレーク工程にて第2の基板SUB2に不測の傷やクラックを起こす可能性が配慮される。本実施例では、図2(g)に示す工程において、第1の保持部材HB1をこれが第1の基板SUB1のブレーク部分BRL1を覆う位置に押し当てる。また、第1の保持部材HB2を第1の保持部材HB1に対向させて第2の基板SUB2の主面に押し当て、第1の基板SUB1のブレーク部分BRL1が形成された部分の強度を第2の基板SUB2側から補う。
続いて図2(h)に示す工程により、積層母基板PNを挟む第2の保持部材BB1,BB2をx−y平面内で回転させて、積層母基板PNをその第1の基板SUB1側主面のスクライブ線SBL1を挟むA’側(Side A’)とB’側(Side B’)とが180°未満の角度θ2を示すように反らす。この工程においても、図2(d)に示す工程と同様に、第1の保持部材HB1,HB2は図示される如く殆ど動かない。従って、第2の基板SUB2の主面は、スクライブ線SBL2の中心(一点鎖線CSL2で示す)の両側で180°超の角度をなす。このように第2の基板SUB1の主面が、そのスクライブ線SBL2の形成された部分で仰け反ると、第2の基板SUB2にスクライブ線SBL2として形成された溝は第2の基板SUB2の厚さ方向に開裂してブレーク部分BRL2を形成する。このブレーク部分BRL2も、スクライブ線SBL2の軌跡を辿って第2の基板SUB2をz軸方向に分断する。
一方、第2の基板SUB2を第1の基板SUB1側に向けて折り曲げる図2(h)の工程では、ブレーク部分BRL1で分断された第1の基板SUB1の端部(B側…図2(e)参照)が第2の基板SUB2に圧され、そのA側に対向する端辺がこれに対向する第2の基板SUB2の主面(内側主面)を擦ることが予想される。しかし、本実施例では、図2(g)に示すように第1の基板SUB1主面(外側主面)のブレーク部分BRL1及びその周辺に第1の保持部材の一方HB1を、第2の基板SUB2主面(外側主面)のブレーク部分BRL1に対向する(ブレーク部分BRL1が投影される)領域及びその周辺に第1の保持部材の他方HB2を夫々押し当てることで、第2の基板SUB2の折り曲げに伴う第1の基板SUB1端部(B側)の動きが抑えられる。従って、積層母基板PNの前工程で第2の基板SUB2主面(図2(h)では内側主面)に形成された導体膜(電極や端子)又はこれを保護する絶縁膜が、当該第1の基板SUB1の端部で削られて損傷を受ける可能性は抑えられる。
図2(h)の工程が終了した後、図2(i)に示す工程で第1の保持部材HB,HB2及び第2の保持部材BB1,BB2を積層母基板PNから離すと、この積層母基板PNの端部(図2(a)にて右端)から破材となる第1の基板SUB1及び第2の基板SUB2の端部が自ずと離れる。従って、第1の基板SUB1及び第2の基板SUB2から発生した破材は、スクライブ・ブレーク装置からスムーズに排出される。一方、図2(a)乃至図2(i)に示す一連の工程で、N個の単位表示装置基板PNLが形成された積層母基板PNからM個(Mは自然数且つ、N>M>1)の単位表示装置基板PNLを含む言わばサブの積層母基板を分離する場合、この分離されたサブの積層母基板は図2(h)の右側に示される。図2(h)に示す積層母基板の破材に比べて、分離されたサブの積層母基板はx軸方向に沿い図2(h)の右端に延びるため、図2(i)の工程で積層母基板本体から切り離されると、定盤FBS2沿いに設けられたベルトコンベアでx軸方向に搬送される。
図2(i)に示される積層母基板PNは、その一部分(端部)が破材又はサブの積層母基板として切り離された後の形状を有する。この積層母基板PNは、その第1の基板SUB1及び第2の基板SUB2の次に切断すべき部分がスクライブ・ブレーク装置の作業領域に入るよう、x軸に沿い矢印が示す如くシフトし、所望の位置で再び停止する。図2(i)に示される積層母基板PNの第1の基板SUB1及び第2の基板SUB2に切断すべき部分が最早存在しないときは、定盤FBS1沿いに設けられたベルトコンベアから定盤FBS2沿いに設けられたベルトコンベアに矢印方向沿いに受け渡される。
図2(a)乃至図2(i)の工程は、これらが示す如く、積層母基板PN(その第1の基板SUB1や第2の基板SUB2)の主面がx−z平面に沿う状態を維持して行われる。換言すれば、積層母基板PNはこれから切り離されるこの端部をも含めて重力方向に起こされた状態を保つ。これにより、基板の自重による積層母基板PNの撓みを抑え、スクライブ線等から生じる不測の基板クラックを抑える。
また、図2(a)の工程でスクライブ・ブレーク装置の作業領域に挿入された積層母基板PNは、第1の基板SUB1及び第2の基板SUB2の夫々に施されるスクライブ工程及びブレーク工程が終了する(図2(i)の工程)まで、搬送されない。従って、スクライブ・ブレーク装置における第1の基板SUB1及び第2の基板SUB2の位置は、図2(d)及び図2(h)の折り曲げられる夫々の端部の僅かな動きを除き、図2(a)の工程から図2(i)の工程に到る期間内で変わらない。このため、第1の基板SUB1は、これにスクライブ線SBL1が形成されてからこのスクライブ線SBL1沿いに分断されるまで、同じ位置に留まる。また、第2の基板SUB2も、これにスクライブ線SBL2が形成されてからこのスクライブ線SBL2沿いに分断されるまで、同じ位置に留まる。
これにより、スクライブ線が形成された積層母基板PNの搬送による破損が回避される。
さらに、図2(a)の工程から図2(i)の工程に到る期間で、積層母基板PNを反転させることなく、第1の基板SUB1及び第2の基板SUB2の夫々にスクライブ工程及びブレーク工程が施される。換言すれば、積層母基板PNがスクライブ・ブレーク装置に搬送された時点でその第1の基板SUB1が定盤FBS1と向かい合う関係は、第1の基板SUB1及び第2の基板SUB2に施されるスクライブ工程及びブレーク工程が終了するまで維持され、その途中で第2の基板SUB2が第1の基板SUB1に代わって定盤FBS1と向かい合うことはない。これにより、積層母基板PNを反転する過程で生じる重力による基板主面の撓みを防ぎ、その一部に集中する応力を緩和する。
以上のように、積層母基板PNのスクライブ工程及びブレーク工程を、積層母基板PNの位置を変えずに(所謂シフト・フリー:Shift−freeで)且つ積層母基板PNを反転させずに(所謂反転レス:Inversion−lessで)行える理由は、スクライブ線が形成された積層母基板PNを折り曲げるブレーク工程にある。この積層母基板PNを折り曲げるブレーク工程は、スクライブ工程毎(スクライブ線毎)に順次行うとなおよい。
本実施例では、積層母基板PNをシフト・フリー且つ反転レスでサブの積層母基板又は単位表示装置基板PNLへ分割するにあたり、積層母基板PNをその分割される位置の両側で挟む前記第1の保持部材及び前記第2の保持部材の動きが重要な役割を果たす。図2(a)乃至図2(i)に示された第1の保持部材(押さえバー)HB1,HB2及び第2の保持部材(折り曲げバー)BB1,BB2の夫々の動きから明らかなように、これらの第1の保持部材、第2の保持部材は、積層母基板PNに含まれる第1の基板SUB1や第2の基板SUB2のスクライブ工程及びブレーク工程に応じて、積層母基板PN(これに含まれる第1の基板SUB1や第2の基板SUB2)の主面(図2(a)にてx−z平面)に交差する平面(図2(a)にてx−y平面)内を移動し又この平面の法線を中心として回転する。これら第1の保持部材及び第2の保持部材が動き回る平面は、積層母基板PNの搬送方向(x軸)沿いに広がり、望ましくは当該搬送方向に平行に広がる。この平面は、積層母基板PNの主面と直交することが望ましい。
本実施例のスクライブ・ブレーク装置では、その被加工物(積層母基板PN)の搬入側に配置された第1の保持部材HB1,HB2の上記平面(x−y平面)内における並進運動(Translational Motion)と、当該被加工物の搬出側に配置された第2の保持部材BB1,BB2の当該平面(x−y平面)内における並進運動及び回転運動(Rotational Motion)とにより、積層母基板PNを折り曲げて夫々の基板SUB1,SUB2をブレーク(分断)し、更に第1の保持部材HB1,HB2と第2の保持部材BB1,BB2との間に配置されたスクライブ・ホイールSWH1,SWH2でスクライブ工程毎にスクライブされた基板をブレークする。なお、上述した保持部材の並進運動とは、この保持部材の言わば直線的な移動を指し、図2(a)に示す矩形の保持部材をその四隅が互いに平行な軌跡を描くように移動させる運動として例示される。また、上述した保持部材の回転運動は、図2(d)及び図2(h)に示される第2の保持部材BB1,BB2の、基板SUB1,SUB2に接する夫々の一端(左側)に対して、その夫々の他端(右側)をy軸方向に傾ける動き(第2の保持部材の当該一端を中心とする回転)として例示される。
上述の如き積層母基板PNの折り曲げによるブレーク工程は、上記スクライブ・ブレーク装置における、第1の保持部材HB1,HB2の上記平面(x−y平面)内での並進運動及び回転運動と、第2の保持部材BB1,BB2の当該平面(x−y平面)内での並進運動とによっても行える。また、第1の保持部材HB1,HB2及び第2の保持部材BB1,BB2に当該平面(x−y平面)内における並進運動と回転運動とを与えてもよい。
スクライブ・ブレーク装置における被加工物の搬送方向沿いに、当該被加工物を挟む第1の保持部材と第2の保持部材とを並設し、これらの第1保持部材及び第2保持部材の当該被加工物の主面(被加工面)に交差し且つ被加工物の搬送方向に沿う平面での並進運動と回転運動とにより当該被加工物のブレーク工程を行う手法は、被加工物をその主面が重力方向に直交するように(水平に)搬送するスクライブ・ブレーク装置においても適用でき、被加工物を撓ませることなくブレークする効果を奏する。この場合、図2(a)に示された定盤FBS1,FBS2を、夫々の積層母基板PN(被加工物)に対向する面が重力方向に直交するように配置し、その面から吹き出す圧縮空気で被加工物を浮上させるとよい。また、第1保持部材と第2保持部材との間にスクライブ・ホイールを配置してもよい。従って、本実施例で述べたスクライブ・ブレーク装置は、要素技術として被加工物(積層母基板PN)を重力方向に起こさない他の製造装置に適用され得る。
以上、図2(a)乃至図2(i)を参照して述べた積層母基板PNのスクライブ工程及びブレーク工程により、図1(a)に示す積層母基板PNは、その第1の基板SUB1及び第2の基板SUB2に8本ずつ示されるスクライブ線SBL1,SBL2のX方向又はY方向のいずれかに延びる一群(4本のスクライブ線SBL1と4本のスクライブ線SBL2)に応じて単位表示装置基板PNLを3個ずつ含むサブの積層母基板と破材とに分離される。また、サブの積層母基板から単位表示装置基板PNLを切り出す工程にも、図2(a)乃至図2(i)を参照して述べたスクライブ工程及びブレーク工程が適用できる。
このようにして得られた単位表示装置基板PNLから、これに含まれる一対の基板の一方の周縁を切り離し、当該一対の基板の他方を当該一方の基板から突き出させる一連の工程について、図3(a)乃至図3(e)を参照して説明する。
図3(a)は、この一連の工程に用いられるスクライブ・ブレーク装置の一例の概要を、単位表示装置基板PNLをなす一対の基板の一方(第1の基板SUB1)にスクライブ線を形成する状態で示す。従って、図3(a)に実線で示される第1の保持部材(押さえバー)HB1,HB2及び第2の保持部材(折り曲げバー)BB1,BB2は、スクライブ・ホイールSWH1による第1の基板SUB1主面へのスクライブ線形成に備えて、図2(b)に示されるそれらと同様に、第1の基板SUB1及び第2の基板SUB2の主面に夫々押し当てられる。
図3(a)に示されるスクライブ・ブレーク装置に備えられる第1の保持部材HB1,HB2、スクライブ・ホイールSWH1,SWH2、第2の保持部材BB1,BB2、定盤FBS1、及びカメラTVCの構造及び機能の夫々は、同じ参照符号で図2(b)に示される構成要素の夫々と共通する。また、図3(a)に示されないベルトコンベアが定盤FBS1沿いに設けられ、カメラTVCから得られる被加工物(単位表示装置基板PNL)の位置情報に基づき、これをx軸方向沿いに搬送する。さらに、図3(a)のスクライブ・ブレーク装置には、被加工物(単位表示装置基板PNL)の一方の主面に接するステージSTGを備えた基板回転機ROTが設けられる。この基板回転機ROTは、ステージSTGにエアチャック機能を持たせ、これを被加工物の主面に吸着させて、被加工物をその主面(図3(a)に示される座標で規定されるx−z平面)内で回転させる。この機能は、図1(b)に示す単位表示装置基板PNLの基板SUB2の周縁を、その隣接する2辺沿いに描かれたスクライブ線SBL2’の夫々で切り離す加工に役立つ。
図3(a)に示される工程で第1の基板SUB1主面にスクライブ線を形成する動作は、上述した図2(b)の工程と同様に行われる。図3(a)の工程に続く図3(b)に示される工程での第1の保持部材HB1,HB2及び第2の保持部材BB1,BB2をスクライブ線SBL1に寄せて被加工物(単位表示装置基板PNL)を保持する動作は、上述した図2(c)の工程と同様に行われる。さらに、図3(c)に示す、第2の保持部材の一方BB1をその第1の基板SUB1に接する一端(左端)を中心として、第2の保持部材の他方BB2をその第2の基板SUB2に接する一端(左端)を中心として、夫々時計回りに回転させて、被加工物(単位表示装置基板PNL)を第2の基板SUB2側に折り曲げ、第1の基板SUB1にスクライブ線SBL1として形成された溝をその中心CSLにて開裂させて第1の基板SUB1をブレークする工程は、上述した図2(d)の工程と同様に行われる。
図3(a)のスクライブ・ブレーク装置に特有な動作は、図3(c)の工程に続く図3(d)及び図3(e)に示される工程に現れる。図3(c)の工程で、時計回りに(π−θ1)だけ回転した第2の保持部材BB1,BB2のうち、第1の基板SUB1に接する一方BB1は、図3(d)に示される如く、その第1の基板SUB1に対向する面の他端(右端)を中心に時計回りに回転する。これに対して、第2の基板SUB2に接する他方の第2の保持部材BB2は、その第2の基板SUB2に接する一端(第2の基板SUB2に対向する面の左端)を中心に反時計回りに回転し、図3(b)に示された位置に戻る。従って、図3(c)の工程でy軸方向に撓った第2の基板SUB2は、そのA側とB側との間に生じた角度θ1をπ(180°)に戻すように第2の保持部材BB2で圧される。
一方、図3(d)に示された第1の基板SUB1のB側は、図3(c)のブレーク工程により、そのA側から分離されて破材WT1に変わる。積層母基板PNを作製する前工程において、第1の基板SUB1と第2の基板SUB2とを貼り合わせるシール剤やフリットグラスのような接着性の材料は、第1の基板SUB1主面にその破材WTとなる領域を避けるように供給されるが、実際には破材WTとなる領域にも接着性の材料がはみ出ることがある。また、スクライブ工程により第1の基板SUB1に生じた静電気が、被加工物からの破材WT1の剥離を妨げることもある。本実施例では、図3(d)に示される如く、第1の基板SUB1(破材WT1となるB側)に接する第2の保持部材BB1を第2の基板SUB2の主面に対して傾斜するように回転させ、且つ第2の保持部材BB2で第2の基板SUB2(破材WT1に接するB側)を第1の基板SUB1に向けて圧すことにより、第1の基板SUB1(A側)から切り離されながら被加工物(単位表示装置基板PNL)から離れにくい破材WT1をその被加工物との接触面から浮き上がらせる。重力方向に起こされている被加工物では、第2の保持部材BB1の回転により破材WT1が第1の基板SUB1(A側)及び第2の基板SUB2との接触面から浮くや否や、重力方向に落下する。従って、図13を参照して述べた従来技術における中間破材(Internal Wastage)WTMの問題も確実に解決される。
図3(d)に示された破材WT1の除去工程が終了すると、第1の保持部材HB1,HB2及び第2の保持部材BB1,BB2は、図3(e)に示す如く、夫々の待機位置(図3(a)では破線で表示)に戻る。被加工物(単位表示装置基板PNL)の別の辺から破材を切り出す必要性が残る場合、その主面(第2の基板SUB2主面)に基板回転機ROTのステージSTGを当てて、被加工物をその主面(x−z平面)内で回転させる。
図3(a)に示すスクライブ・ブレーク装置は、図2(a)に示すそれに比べて、第2の保持部材BB1の被加工物の主面に交差し且つ被加工物の搬送方向に沿う平面における回転運動の中心が変えられるという特徴を有する。このスクライブ・ブレーク装置は、積層母基板PNの分割、及び(分割された)積層母基板からの単位表示装置基板PNLの分離にも利用できる。
実施例1では、積層母基板PNのスクライブ工程とブレーク工程とを、積層母基板PNをシフト・フリー且つ反転レスで行い、且つ積層母基板PNを折り曲げてブレークする本発明による表示装置の製造方法について、具体的に述べた。
実施例2では、スクライブ工程とブレーク工程との間にて積層母基板PNをシフトする表示装置の製造方法について図4及び図5を参照して述べる。この実施例でも、実施例1と同様に積層母基板PN及びこれを分割して得られる単位表示装置基板PNLは、重力方向に対して起こされた状態で搬送され且つ加工される。また、被加工物(基板)主面のスクライブ線(溝)が形成された部分の両側をバー状の保持部材で挟み、その一方を基板主面に交差する面内での回転運動により被加工物を折り曲げるブレーク工程も、概ね実施例1で述べたそれに共通する。
図4は、実施例2における積層母基板から個々の単位表示装置基板を分離する工程の説明図である。ここでは、説明を簡単にするため、4枚(2×2)の単位表示装置基板を有する積層母基板で説明する。先ず、(a)短辺スクライブポジションで第1の基板SUB1と第2の基板SUB2の両面の短辺側にスクライブ線SBL11とSBL21を同時加工する。短辺方向の全スクライブ線の加工後、(b)積層母基板PNを面内で90°回転させて長辺スクライブポジションに搬送し、(c)第1の基板SUB1と第2の基板SUB2の両面の長辺側にスクライブ線SBL12とSBL22を同時加工する。
長辺側にスクライブ線SBL12とSBL22を同時加工した積層母基板PNを長辺ブレークポジションに搬送する。(d)長辺ブレークポジションにおいて、積層母基板PNの周辺スクライブ線の両側を押さえバーBHBと折り曲げブレークバーVBBで挟む。押さえバーBHBは積層母基板PNを固定し、折り曲げブレークバーVBBを矢印方向に当該基板の表裏方向に変角させ、周辺破材をブレークする。次に、(e)他の長辺方向のスクライブ線の両側を押さえバーBHBと折り曲げブレークバーVBBで挟み、押さえバーBHBで積層母基板PNを固定し、折り曲げブレークバーVBBを同様に変角させ、2枚の短冊状の単位表示装置基板毎にブレークする。周辺破材WT1、WT2は破棄される。長辺方向の全スクライブ線に沿って基板ブレークを完了後、短辺ブレークポジションに搬送する。
(f)短辺ブレークポジションにおいては、上記の長辺ブレークと同様にして周辺破材をブレークし、次いで、単位表示装置基板を短辺方向2枚の短冊状毎に一括ブレークし、(g)個々の単位表示装置基板に分離する。周辺破材WT3、WT4は破棄される。単位表示装置基板に分離の終了後、単位表示装置基板の中間破材ブレークポジションに搬送する。なお、単位表示装置基板に分離された場合には、第2基板SUB2の除去部分は中間破材ではないが、従来技術との対応を目逸支うにするため、この部分を中間破材と呼ぶことにする。
図5は図4の処理で分離された単位表示装置基板の中間破材を分離する工程の説明図である。中間破材の部分は図1の(b)に示した第2の基板SUB2の隣接する周辺部分である。図5において、(h)単位表示装置基板PNLの第2の基板SUB2の短辺の1つにスクライブ線SBL3を加工する。(i)スクライブ線SBL3を加工した単位表示装置基板PNLを面内で90°回転させ、(j)第2の基板SUB2の長辺の1つにスクライブ線SBL4を加工する。全スクライブ線を加工した単位表示装置基板PNLをブレークポジションに搬送する。
ブレークポジションでは、(k)スクライブ線SLB4の両側を押さえバーBHBと折り曲げブレークバーVBBで挟む。押さえバーBHBは積層母基板PNを固定し、折り曲げブレークバーVBBを矢印方向に当該基板の表裏方向に変角させて、第2基板SUB2の長辺側の中間破材WT1をブレークする。(l)長辺側の中間破材WT1をブレークした単位表示装置基板PNLを面内で90°回転させる。中間破材WT1は破棄される。次に、(m)短辺側の中間破材を上記と同様にしてブレークし、(n)中間破材WT2を除去し、破棄する。
以上したように、積層母基板および単位表示装置基板を起立させた状態でスクライブ・アンド・ブレークの各工程を経ることにより、従来技術における中間破材の中抜きが不要となり、全ての破材を端面破材として処理できる。そのため、(1)大サイズの積層母基板の長い破材の除去に伴うクラックの発生、クラックに伴う液晶の漏れが低減でき、スクライブ線の加工数が少ないことによるクラックの発生が低減する。また、分離箇所が確実となり、大形の積層母基板を用いた多数枚の単位表示装置基板とりが歩留りよく実現できる。
本実施例では、本発明による表示装置の製造方法及び製造装置に利用される被加工物の搬送方法及び搬送装置の一例を具体的に示す。
図6は積層母基板にスクライブ線を加工しブレークして単位表示装置基板を分離する本発明の製造装置における基板搬送と加工面の反転動作の説明図である。図6において、スクライブ線の加工を行うスクライブ加工機のスクライブテーブルSBT、基板加工面の反転(傾斜角の変角)を行う反転テーブルRT1、ブレーク加工機のブレークテーブルBKT、加工面反転時の基板受取りを行う反転受けテーブルRT2は、鉛直方向を挟んで、その近傍(鉛直方向に対して5〜10°反対側に傾斜させた角度)で向き合っている。動作時、上流側からスクライブテーブルSBT、反転テーブルRT1、反転受けテーブルRT2、ブレークテーブルBKTの順に配置されている。
各テーブルの下側には、スクライブ線の加工後の積層母基板PNを搬送するたの各テーブル面と同様の傾斜を有するベルトコンベヤーがある。スクライブテーブルSBTおよびブレークテーブルBKTの下にはベルトコンベヤー自体の上下機構を伴ったベルトコンベヤーCOV1、COV3が、反転テーブルRT1、反転受けテーブルRT2の下には反転テーブルRT1と同期した傾斜角で変角するベルトコンベヤーCOV2が配置されている。各テーブルには基板を保持するためのエアーの吸引および剥離のためのエアーブローを行う吸着穴を有し、図示しない真空吸着ブロー機構が配置されている。
積層母基板PNは鉛直方向近傍に起立させた状態でスクライブテーブルSBTに吸着保持されている。この状態から、ベルトコンベヤーCOV1を上昇させて該積層母基板PNの下端に接触させ、次にスクライブテーブルSBTの吸着穴から極弱いエアーをブローさせながらベルトコンベヤーCOV1を下降させ、積層母基板PNをベルトコンベヤーCOV1に受け渡す。この状態でベルトコンベヤーCOV1、ベルトコンベヤーCOV2を前進させると共に、スクライブテーブルSBT、反転テーブルRT1の吸着穴から極弱いエアーをブローさせ、基板PNを各テーブルから浮かせて搬送し、反転テーブルRT1側に受け渡す。
次に、基板PNを反転テーブルRT1に吸着させた後、ベルトコンベヤーCOV2と同期させながら反転テーブルRT1の傾斜角を反転受けテーブルRT2側の傾斜角近くまで変角させる。そして、この状態から反転テーブルRT1の吸着を開放しことで基板PNの加工面を反転すると共に、反転受けテーブルRT2側に受け渡す。次に、ベルトコンベヤーCOV2、ベルトコンベヤーCOV3を前進させると共に反転受けテーブルRT2、ブレークテーブルBKTの吸着穴から極く弱いエアーをブローさせ、基板PNを各テーブルから浮かせた状態で搬送し、ベルトコンベヤーCOV3側に受け渡す。また、受渡し完了後にベルトコンベヤーCOV2と反転テーブルRT1の傾斜角度を元の状態に戻す。
次に、ブレークテーブルBKTの吸着穴から極く弱いエアーをブローさせながらベルトコンベヤーCOV3を上昇させ、上昇完了後にブレークテーブルBKTで基板PNを吸着保持させて受け渡す。ベルトコンベヤーCOV3は吸着完了後に元の位置に下降させる。
尚、図6において、例えばベルトコンベヤーによる基板搬送をシャトル方式にしたり、反転テーブルや反転受けテーブルを介することなく直接スクライブテーブルSBTを前進させ、変角させてブレークテーブルに受け渡すようにしてもよい。
本実施例により、スクライブ・アンド・ブレークの各ポジション間の基板受渡し搬送におけるクラックの発生や局部的なギャップむらの発生を回避して高品質で歩留りの高い表示装置を得ることができる。
図7〜図9は本発明の表示装置の製造装置における基板ブレーク分離装置の説明図であり、図7は上面図、図8は要部正面図、図9は要部側面図である。図7〜図9において、積層母基板PNはスクライブ線下降の完了後、ベルトコンベヤーで上流から搬送されてブレーク加工機に受け渡される。ベルトコンベヤーCOV2、COV3を駆動、停止させることで任意の分離位置に基板PNを移動させる。ブレークして分離後の基板PNはベルトコンベヤーCOVによって下流側に搬送する。基板を搬送する際は、基板の倒れ防止のために鉛直方向に5〜10°の傾斜角を持たせると共に、基板面の壊れを防止するために固定側の定盤FBS、変角側定盤VBSの吸着穴からエアーブローを行い、基板を浮かせた状態で搬送する。
また、基板をブレークし分離する際には、固定側の基板押さえバーBHB、変角側の基板押させバーVBBを前進させ、それぞれ固定側の定盤FBS、変角側定盤VBSとの間で基板を挟み込んだ状態でベルトコンベヤーCOV1、COV2を下降後退させ、スクライブ線に引張り応力を加える方向に変角側定盤VBSを変角側の基板押させバーVBB毎折り曲げてブレークする。また、このブレークにおいて発生した破材は、各基板押さえバーに吸着させた状態で当該バーを後退させ、破材収納箱BXに向けてエアーブローノズルNZでブローしながら各バーの吸着を開放して該破材収納箱BXに廃棄する。
図10は図7〜図9に示した表示装置の製造装置による基板ブレーク分離プロセスの説明図である。上記したように、(a)ベルトコンベヤーCOV1とベルトコンベヤーCOV2を駆動させ、積層母基板PNを一本目のスクライブ線SBL1位置まで搬送する。(b)固定側の基板押さえバーBHBと変角側定盤VBSとの間で基板を挟み込んだ状態でベルトコンベヤーCOV1、COV2を下降後退させる。(c)スクライブ線SBL1に沿って引張応力を加える方向に変角側定盤VBSを変角側の基板押させバーVBB毎折り曲げてブレークする。
(d)再びベルトコンベヤーCOV1とベルトコンベヤーCOV2を駆動させ、積層母基板PNを二本目のスクライブ線SBL2位置まで搬送する。(e)上記(b)(c)を繰り返して二本目のスクライブ線SBL2に沿ってブレークする。(f)破材WTを変角側の基板押させバーVBBで吸着保持したまま該基板押させバーVBBを後退させ、その後エアーブローを行いながら吸着を開放することで破材を破材収納箱BXに廃棄する。以上を必要なスクライブ線毎に繰り返すことで積層母基板のブレークを行う。
図11及び図12は本発明の表示装置の製造方法及び製造装置の他の実施例を説明する図で、図11は製造方法を説明するための模式図、図12は図2(a)に対応する製造装置の模式図である。
この実施例では、被加工物を挟んで対向する位置に、スクライブホイールと、このスクライブホイールによって形成されたスクライブ線を反対側から押し広げスクライブ線の開裂を進行させるためのブレークローラとを配置し、これらを略同時もしくはブレークローラを追従させるようにして前記被加工物面を分断したい方向に移動させることで1工程での分断を可能にしたものである。
図11はこの製造方法を説明するための模式図で、図11(a)は正面図、図11(b)は側面図である。
図11において、被加工物であるガラス板GPの一面をスクライブホイールSWH1で矢印方向に移動させてスクライブし、スクライブ線SBLを形成する。
一方、被加工物であるガラス板GPを挟んで他面側に配置されたブレークローラBRRを前記他面に押圧し、この押圧状態で前記スクライブホイールSWH1と同方向で且略同時かもしくは図示の如くやや遅れて追従させ、前記スクライブ線SBLの開裂を進行させてブレークし、前記被加工物を前記スクライブ線SBLで分断する。
図12は装置内にブレークローラBRRを組み込んだ本発明の製造装置の1例の模式図で、前述した図2(a)に対応する。
図12において、スクライブ線SBLの開裂を進行させるブレークローラBRR1は、積層母基板PNの第1の基板SUB1の主面にスクライブ線を形成するスクライブ・ホイールSWH1の反対側で、積層母基板PNをその両側から挟み込む第1の保持部材HB2と同じく積層母基板PNをその両側から挟み込む第2の保持部材BB2間に配置される。
このブレークローラBRR1は、前記スクライブ・ホイールSWH1がスクライブする状態、すなわち積層母基板PNを第1の保持部材HB1、HB2と第2の保持部材BB1、BB2で挟持して固定した状態の下で作動し、第1の基板SUB1の主面に形成されたスクライブ線を第2の基板SUB1の主面側から順次押圧して、前記スクライブ線の開裂を進行させる。
この実施例では、積層母基板PNのような被加工物を工程毎に反転、移動させること無く1工程で分断が可能となる。
図13は本発明の表示装置の製造方法及び製造装置の他の実施例を説明するための模式図である。
この実施例では、前記積層母基板PNのような第1、第2基板の貼り合わせ構造の被加工物の分断に適した方法及び装置で、両基板を同時に並行して分断可能とした。
図13において、積層母基板PNの第1の基板SUB1の主面にスクライブ線SBL5を形成する第1のスクライブ・ホイールSWH1と、これの前記積層母基板PNを挟んで反対側に配置され、前記第1の基板SUB1の主面に形成されたスクライブ線SBL5の開裂を進行させる第1のブレークローラBRR1と、第2の基板SUB2の主面にスクライブ線SBL6を形成する第2のスクライブ・ホイールSWH2と、これの前記積層母基板PNを挟んで反対側に配置され、前記第2の基板SUB2の主面に形成されたスクライブ線SBL6の開裂を進行させる第2のブレークローラBRR2とを備え、前記積層母基板PNの第1、第2の基板を同時に並行して分断可能としている。
この実施例では、積層母基板PNのような被加工物を工程毎に反転、移動させること無く、しかも両主面を同時に分断が可能となる。
図14及び図15は本発明の表示装置の製造方法及び製造装置の他の実施例を説明するための模式図で、図14は製造方法を説明するための図で、図14(a)は正面図、図14(b)は側面図、図15は図12に対応する製造装置の模式図である。
この実施例では、図13に示す実施例に更に改良を加えたもので、スクライブ時の作業性の向上を可能にした。
図14及び図15において、第1の基板SUB1の主面にスクライブ線SBL5を形成するスクライブホイールSWH1を配置したのに対し、第2の基板SUB2に対してはその主面にスクライブ線SBL6を形成するスクライブホイールSWH2と、これに対向して第1の基板SUB1の主面側にスクライブ補助ローラSWR2を配置し、更にブレークローラBRR2に対向して、第1の基板SUB1の主面側にブレーク補助ローラBRR21を配置したものである。このブレークローラBRR2とブレーク補助ローラBRR21とは同軸に配置されている。
なお、参照符号CHUは基板分断ユニットで、二点鎖線で囲った範囲の構成を示しており、この例では第2の基板SUB2の基板分断ユニットである。
又、この実施例では前記スクライブ補助ローラSWR2は平ローラで、このスクライブ補助ローラSWR2はスクライブホイールSWH2のスクライブ時の反力押さえとして働く。
一方、ブレーク補助ローラBRR21は凹状ローラが用いられ、凸状ローラのブレークローラBRR2と対で協働してスクライブ線SBL6の開裂の進行を促進して分断を図る。
このブレークローラBRR2とブレーク補助ローラBRR21とは前述したように同軸に配置されるが、両者の中心軸をずらすことで分断面の形状の制御も可能である。
この実施例では、片側(第2の基板SUB2)の基板のスクライブの開裂深さを他方に比べて深くすることが出来、分断の信頼性の向上が図れる。
図16は本発明の表示装置の製造方法及び製造装置の他の実施例を説明するための模式図で、図16(a)は正面図、図16(b)は側面図である。
この図16に示す実施例では、前述の実施例7の構成にさらに第1の基板SUB1の基板分断ユニットCHU1を追加した構成である。
この実施例では、スクライブ及び分断の信頼性の更なる向上が図れる。
次に、図17は前述の実施例5乃至8で説明した本発明のスクライブ・ローラ分断方法の一例の分断工程の説明図である。
図17において、先ず、(a)は第1の基板SUB1と第2の基板SUB2を貼り合わせてなる積層母基板PNを用いる。
なお、図17では平面図とその下側に示される側面図を用いて説明する。
(b)は、スクライブホイールSHW1,SHW2でスクライブを行い、並行してブレークローラでスクライブ線に開裂を進行させて分断線BKLで端部を分断し、周辺破材WTは破棄する。この工程後(c)に示す位置に第1の基板SUB1にスクライブ線SBL7を形成し、同時にもしくは追随して第2の基板SUB2側からブレークローラで押圧して前記第1の基板SUB1に形成されているスクライブ線SBL7の開裂を進行させ分断する。次に(d)で前記スクライブ線SBL7から中間破材WTM幅に相当するだけ離れた位置で両基板SUB1,SUB2をスクライブとブレークローラの組み合わせで分断し、及端子部分が露呈した単位表示装置基板PNL1及び中間破材WTMを分離する。一方残部の積層母基板PNの第1の基板SUB1に(e)でスクライブ線SBL8を形成し、同時にもしくは追随して第2の基板SUB2側からブレークローラで押圧して前記第1の基板SUB1に形成されているスクライブ線SBL8の開裂を進行させ分断する。このスクライブ線SBL8で分断された端部WT5及びこの端部WT5に対応する第2の基板SUB2の部分を端子部分に相当する寸法に(f)で再度分断し、端子部分が露呈した単位表示装置基板PNL2と、周辺破材WT51及び周辺破材WT52を分離する。得られた2枚の単位表示装置基板PNL1、2の長辺端部を(g)で周辺破材WT6部分で分断し、更に短辺側に端子部分を露呈するために(h)で周辺破材WT7部分で分断し、長短各一辺に連続して露呈した端子部を持つ単位表示装置基板PNL3、4を得る。次に長短各一辺に端子部を持つ単位表示装置基板PNL3、4を(i)で長辺の略中央で分断し、単位表示装置基板PNL5と、短辺のみに端子部を持つ単位表示装置基板PNL6を得る。この分断も勿論スクライブとブレークローラの組み合わせで行なう。分断された単位表示装置基板PNL6の長辺端部を(j)で分断し、長短各一辺に連続して端子部を持つ単位表示装置基板PNL61を得た後、この位表示装置基板PNL61の端子部の存在しない長辺端部を分断し周辺破材WT8を廃棄して単位表示装置基板PNL7を得る。
<表示装置の製造工程の全容>
図18は本発明による表示装置の工程に配置される製造装置の全体構成例の説明図である。上段は装置の配置構成、下段は各工程での基板形状を示す。図18において、符号LDは搬入ポジションであり、大サイズの積層母基板PNはカセットローダーで搬入される。搬入された積層母基板PNは水平多間接ロボットRBT1で基板起立機VSに渡されて前記した大サイズ基板→短冊状スクライブ/ブレーク装置MSCの定盤に起立される。符号TFUは前記したコンベヤーからなる基板搬送ユニット、SBTは定盤、SB/BK1は第1基板用スクライブ・アンド・ブレークユニット、SB/BK2は第2基板用スクライブ・アンド・ブレークユニットである。
大サイズ基板→短冊状スクライブ/ブレーク装置MSCの下流には基板回転ユニットSRRが位置している。符号TTは基板回転テーブル、RRは回転機構である。大サイズ基板→短冊状スクライブ/ブレーク装置MSCで短冊状にブレークされた基板は大サイズ基板→短冊状スクライブ/ブレーク装置MSCと同様の構成を有し、処理サイズが短冊状基板に対応した短冊→単位表示装置基板スクライブ/ブレーク装置SPCに渡される。短冊→単位表示装置基板スクライブ/ブレーク装置SPCで単位表示装置基板に分離された基板(単位表示装置基板)は端子部破材すなわち中間破材のスクライブ・アンド・ブレーク装置WTCに渡され、前記したように中間破材が分離される。中間破材のスクライブ・アンド・ブレーク装置WTCは第2基板にみにスクライブ・アンド・ブレークを行う構成を有し、スクライブ線の加工とブレーク加工は上流のスクライブ・アンド・ブレーク装置と略同様の構造を有する。スクライブ・アンド・ブレーク装置MSC、SPC、WTCでの基板90度回転は基板回転装置SRRで行われる。
破材を分離した個々の単位表示装置基板は基板水平戻し装置HSに渡されて水平に戻される。水平に戻された単位表示装置基板は水平多間接ロボットRBT2で面取り/コーナーカット加工装置FCMに渡され、図示したように面取りとコーナーカットがなされる。その後、基板洗浄装置RCで洗浄された後、水平多間接ロボットRBT3で基板カセットアンローダーUDに収納される。
なお、以上は液晶表示装置のガラス基板を例として説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、大サイズの積層母基板を用いる各種の表示装置、あるいはその他の積層基板の分離にも同様に適用可能であることは言うまでもない。
本発明によるスクライブ線の加工形態の説明図である。
本発明による表示装置の製造方法の実施例1における積層母基板から単位表示装置基板を分離する工程の説明図である。
本発明による表示装置の製造方法の実施例1における単位表示装置基板から不要部分(破材)を分離する工程の説明図である。
本発明による表示装置の製造方法の実施例2における積層母基板から単位表示装置基板を分離する工程の説明図である。
本発明による表示装置の製造方法の実施例2における単位表示装置基板から不要部分(破材)を分離する工程の説明図である。
本発明による表示装置の製造方法の実施例3における被加工物(積層母基板)の搬送とその加工面の反転動作の説明図である。
本発明の表示装置の製造装置における基板ブレーク分離装置の上面を示す説明図である。
本発明の表示装置の製造装置における基板ブレーク分離装置の要部正面を示す説明図である。
本発明の表示装置の製造装置における基板ブレーク分離装置の要部側面を示す説明図である。
図7〜図9に示した表示装置の製造装置による基板ブレーク分離プロセスの説明図である。
本発明の表示装置の製造方法を説明するための模式図である。
本発明の表示装置の製造装置における図2(a)に対応する模式図である。
本発明の表示装置の製造方法及び製造装置の他の実施例を説明するための模式図である。
本発明の表示装置の製造方法を説明するための模式図で、図14(a)は正面図、図14(b)は側面図である
本発明の表示装置の製造装置における図12に対応する模式図である。
本発明の表示装置の製造装置を説明するための模式図で、図16(a)は正面図、図16(b)は側面図である。
本発明のスクライブ・ローラ分断方法の一例の分断工程の説明図である。
本発明による表示装置の工程に配置される製造装置の全体構成例の説明図である。
従来のスクライブ・アンド・ブレーク法におけるスクライブ線の加工例の説明図である。
スクライブ線を加工した積層母基板をブレークして単位表示装置基板に分離する工程の説明図である。
スクライブ・アンド・ブレーク法を用いた基板分離例を図13の中間破材部分のブレークの説明図である。
従来のスクライブ・アンド・ブレーク法による不整ブレークの一例を説明する平面図である。
従来のスクライブ・アンド・ブレーク法における基板取扱い途上での典型的な傷発生例の説明図である。
スクライブ線を加工した積層母基板の基板割れ発生例と中間破材の除去困難性の説明図である。
符号の説明
PN・・・・積層母基板、SUB1・・・・第1の基板、SUB2・・・・第2の基板、SBL1,SBL2・・・・スクライブ線、WT1,WT2,WT3,WT4・・・・周辺破材、BRR・・・・ブレークローラ。